説明

有機エレクトロルミネッセンス素子

【課題】発光効率、駆動電圧に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
【解決手段】陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に該陽極に接して又は近接して設けられた正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層と、第1の有機層及び該陰極の間に第1の有機層に接して設けられた電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、該正孔輸送性高分子化合物及び該電子輸送性高分子化合物が特定のパラメータで規定されるものであり、第1の有機層及び第2の有機層の少なくとも一方が特定のパラメータで規定される発光性材料を含有し、かつ第1の有機層から、又は第1の有機層及び第2の有機層から特定の色で発光することを特徴とする上記有機エレクトロルミネッセンス素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、特には積層型高分子有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低電圧駆動、高輝度に加えて多数の色の発光が容易に得られる点から、有機エレクトロルミネッセンス素子が注目されている。そして、有機エレクトロルミネッセンス素子の作製に用いられる材料の一つとして、高分子材料が検討されている。
この高分子材料を積層してなる有機エレクトロルミネッセンス素子としては、ポリフェニレンビニレンとアルコキシ置換ポリフェニレンビニレンとを積層してなるもの、ポリフェニレンビニレンとシアノ化ポリフェニレンビニレンとを積層してなるもの等が提案されている(特許文献1〜2)。しかし、これらの素子には、十分な発光効率が得られないという問題がある。
その他にも、陽極と有機発光層(具体的には、陽極側に位置する正孔輸送材料を含む正孔輸送ポリマー層と、この正孔輸送ポリマー層上に積層され、該正孔輸送材料を含まず、該電子輸送層側に位置するドーパント発光材料を含有する発光ポリマー層とからなる。)と電子輸送層と陰極とが積層された有機エレクトロルミネッセンス素子が提案されている(特許文献3)。しかし、この素子には、発光効率、駆動電圧の観点で十分な性能が得られないという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平3−273087号公報
【特許文献2】国際公開第94/029883号パンフレット
【特許文献3】特開2001−052867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明の目的は、発光効率、駆動電圧に優れる有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明をなすに至った。
本発明は第一に、
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に該陽極に接して又は近接して設けられた正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層と、第1の有機層及び該陰極の間に第1の有機層に接して設けられた電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該正孔輸送性高分子化合物が下記式(1):
Ip1−Wa <0.5 (1)
(式中、Ip1は正孔輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは陽極の仕事関数の絶対値(eV)を表す。)
を満たすものであり、該電子輸送性高分子化合物が下記式(2)及び下記式(3):
Wc−Ea2 <0.5 (2)
Ip2−Wa ≧0.5 (3)
(式中、Wcは陰極の仕事関数の絶対値(eV)を表し、Ea2は電子輸送性高分子化合物の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip2は電子輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは上記と同じ意味を有する。)
を満たすものであり、第1の有機層及び第2の有機層の少なくとも一方が下記式(4)及び下記式(5):
|Ip3−Ip1| <0.5 (4)
|Ea2−Ea3| <1.0 (5)
(式中、Ip3は発光性材料のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Ea3は発光性材料の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip1及びEa2は上記と同じ意味を有する。)
を満たす発光性材料を含有し、第1の有機層から、又は第1の有機層及び第2の有機層から、CIE色座標上のx及びyの値が下記式(P)又は下記式(Q):
x<0.28又はx>0.44 かつ y≧0 (P)
0.28≦x≦0.44 かつ y≦0.24又はy≧0.46 (Q)
を満たす領域の色で発光する上記有機エレクトロルミネッセンス素子を提供する。
本発明は第二に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記第1の有機層を不溶化した後、不溶化された第1の有機層に接して第2の有機層を設けることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
本発明は第三に、前記有機エレクトロルミネッセンス素子又は前記製造方法で得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を用いてなる面状光源及び表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率、駆動電圧のバランスに優れる。この有機エレクトロルミネッセンス素子は、通常、長寿命であり、多様性に富んだ発光色を持つ。従って、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、曲面状光源、平面状光源等の面状光源(例えば、インテリア用照明等の照明等);セグメント表示装置(例えば、セグメントタイプの表示素子等)、ドットマトリックス表示装置(例えば、ドットマトリックスのフラットディスプレイ等)、液晶表示装置(例えば、液晶表示装置、液晶ディスプレイのバックライト等)、広告表示装置等の表示装置等に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−有機エレクトロルミネッセンス素子−
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に該陽極に接して又は近接して設けられた正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層と、第1の有機層及び該陰極の間に第1の有機層に接して設けられた電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層とを有するものであって、該正孔輸送性高分子化合物が前記式(1)を満たすものであり、該電子輸送性高分子化合物が前記式(2)及び前記式(3)を満たすものであり、第1の有機層及び第2の有機層の少なくとも一方が前記式(4)及び前記式(5)を満たす発光性材料を含有し、第1の有機層から、又は第1の有機層及び第2の有機層から、CIE色座標上のx及びyの値が前記式(P)又は前記式(Q)を満たす領域の色で発光するものである。ここで、「陽極に接して又は近接して設けられた」とは、陽極に直に接して設けられた場合及び陽極に接しないで近くに設けられた場合の両方を意味する。
【0008】
本明細書において、正孔輸送性高分子化合物、電子輸送性高分子化合物及び発光性材料のイオン化電位及び電子親和力は、サイクリックボルタンメトリー法によって測定した値である。測定では、作用極にはグラスカーボン電極、対極には白金、参照電極にはAg/Ag+を用い、作用極の上に測定する物質をキャスト法によって薄膜を形成させる。そして、電位測定は、0.1Mのテトラフルオロほう酸−テトラ−n−ブチルアンモニウム[CH3(CH23]4N・BF4のアセトニトリル溶液中で行う。走査範囲は、酸化側を0〜1500mVとし、還元側を−2900mV〜0mVとする。酸化電位及び還元電位は、それぞれ、電位波のカーブの変位点から読み取る。イオン化ポテンシャル(Ip)の絶対値と電子親和力(Ea)の絶対値は、酸化電位及び還元電位の値から次式により算出される。
Ip=[(酸化電位)+0.45+4.5]eV
Ea=[(還元電位)+0.45+4.5]eV
【0009】
本明細書において、陽極の仕事関数の値は、光電子分光装置(理研計器(株)製、商品名:AC−2)を用い、重水素ランプから照射された紫外線による光電子放出開始点として求められる。
【0010】
本明細書において、陰極の仕事関数は、熱電子放出法による測定から求めた値を用いるが、熱電子放出法による測定から求められない場合には、光電子放出法による測定から求めた値を用いる。
【0011】
前記式(1)は、正孔輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値Ip1と、陽極の仕事関数の絶対値Waとの差を表す。その差は、0.5eV未満であり、陽極又はそれに隣接する1種若しくは複数種の層から正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層への正孔注入の容易さの観点から、0.47eV未満であることが好ましく、0.3eV未満であることがより好ましい。
【0012】
前記式(2)は、陰極の仕事関数の絶対値Wcと、電子輸送性高分子化合物の電子親和力の絶対値Ea2との差を表す。その差は、0.5eV未満であり、陰極から電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層への電子注入の容易さの観点から、0.35eV未満であることが好ましく、0.3eV未満であることがより好ましい。
【0013】
前記式(3)は、電子輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値Ip2と、陽極の仕事関数の絶対値Waとの差を表す。その差は、0.5eV以上であり、第1の有機層のイオン化電位Ip1とIp2との間にギャップを設けて正孔をブロックし、第1の有機層内での再結合を促進する観点、かつ残余の正孔が第2の有機層に注入され層内で再結合する観点から、0.7〜1.5eVであることが好ましく、0.9〜1.2eVであることがより好ましい。
【0014】
前記式(4)は、発光性材料のイオン化電位の絶対値Ip3と、正孔輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値Ip1との差の絶対値を表す。その差の絶対値は、0.5eV未満であり、正孔輸送性高分子化合物から発光性材料への正孔注入の容易さの観点から、0.3eV未満であることが好ましく、0.2eV未満であることがより好ましい。
【0015】
前記式(5)は、電子輸送性高分子化合物の電子親和力の絶対値Ea2と、発光性材料の電子親和力の絶対値Ea3との差の絶対値を表す。その差の絶対値は、1.0eV未満であり、電子輸送性高分子化合物から発光性材料への電子注入の容易さの観点から、0.98eV未満であることが好ましく、0.7eV未満であることがより好ましい。
【0016】
前記式(P)及び(Q)は、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光色を、CIE色座標上のx及びyの値で定義したものである。この範囲を満たす発光色は、いわゆる白色ではなく、よりスペクトルの幅の狭い発光から得られるものであって、光の原色そのもの(即ち、赤、青又は緑)乃至それらに近い色である。
【0017】
・材料の説明
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陽極は、通常、透明又は半透明である。このような陽極としては、例えば、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物又は金属を用いることができ、通常、これらを薄膜にして用いる。陽極としては、光透過率が高いものが好適に利用でき、その他の有機層の種類によって、適宜、選択すればよい。陽極の材料としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、及びそれらの複合体であるインジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等からなる導電性ガラスを用いて作製された膜(例えば、NESA等)や、金、白金、銀、銅等が用いられ、ITO、インジウム・亜鉛・オキサイド、酸化スズが好ましい。陽極の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等の方法が用いられる。また、陽極として、ポリアニリン又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体等の有機の透明導電膜を用いてもよい。なお、陽極は、一層であっても二層以上であってもよい。前記陽極の材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0018】
陽極の厚さは、光の透過性と電気伝導度とを考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0019】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、電荷注入を容易にするために、陽極上に、第1の有機層とは別に正孔注入層(通常、平均厚さ1〜200nmの層)を形成してもよい。この場合には、公知の導電性高分子(フタロシアニン誘導体、ポリチオフェン誘導体等)、芳香族アミン含有ポリマー、銅フタロシアニン、モリブデン酸化物、アモルファスカーボン、フッ化カーボン、ポリアミン化合物等の材料を用いて前記正孔注入層を形成することができる。また、金属酸化物、金属フッ化物、有機絶縁材料等からなる層(通常、平均厚さ2nm以下の層)を設けてもよい。
【0020】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、陰極は、通常、透明又は半透明である。このような陰極の材料としては、仕事関数の小さいものが好ましく、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、及びそれらのうち2つ以上の合金、又はそれらのうち1つ以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1つ以上との合金、グラファイト、グラファイト層間化合物等が用いられる。合金としては、例えば、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等が挙げられる。なお、陰極は、一層であっても二層以上であってもよい。また、前記陰極の材料は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0021】
陰極の厚さは、電気伝導度や耐久性を考慮して、適宜調整することができるが、例えば、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0022】
陰極の作製には、真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法等の方法が用いられる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、陰極上に、第2の有機層とは別の電子注入層(通常、平均膜厚2nm以下の層)を構成してもよい。この場合には、アルカリ金属やアルカリ土類金属をドープした有機材料、これらの金属の有機酸との塩や錯体等の材料、導電性高分子、金属酸化物、金属フッ化物、有機絶縁材料等を用いて前記電子注入層を形成することができる。陰極を作製した後、さらに保護層を設けて素子を保護してもよい。
【0023】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記電極、第1の有機層、第2の有機層等は、通常、基板上に形成される。この基板は、電極を形成し、有機層を形成する際に変化しないものであればよく、その材料としては、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、シリコン等が例示されるが、透明又は半透明のものが好ましい。不透明な基板である場合には、反対の電極(即ち、該基板から遠い方の電極)が透明又は半透明であることが好ましい。基板には、平板、繊維状のものが使用できる。
【0024】
陽極と陰極とを基板上に形成する順番は特に制限されず、トップエミッション型、ボトムエミッション型の素子構造に応じて、適宜、選択することができる。
【0025】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1の有機層に含有される正孔輸送性高分子化合物としては、前記式(1)〜(5)を満たすものであれば、特に材料的には制限されないが、通常、陽極から、又は陽極側にある他の層から正孔が注入され、輸送する機能を有するものであり、例えば、π及びσ共役系高分子、アミン化合物を含有する高分子材料から適宜選択することができる。なお、正孔輸送性高分子化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0026】
正孔輸送性高分子化合物としては、「高分子EL材料」(大西敏博、小山珠美 共著 共立出版 2004年刊 初版版第1刷発行)33〜58頁に記載の材料から選択されるものが例示され、具体的には、WO99/13692号公開明細書、WO99/48160号公開明細書、GB2340304A、WO00/53656号公開明細書、WO01/19834号公開明細書、WO00/55927号公開明細書、GB2348316、WO00/46321号公開明細書、WO00/06665号公開明細書、WO99/54943号公開明細書、WO99/54385号公開明細書、US5777070、WO98/06773号公開明細書、WO97/05184号公開明細書、WO00/35987号公開明細書、WO00/53655号公開明細書、WO01/34722号公開明細書、WO99/24526号公開明細書、WO00/22027号公開明細書、WO00/22026号公開明細書、WO98/27136号公開明細書、US573636、WO98/21262号公開明細書、US5741921、WO97/09394号公開明細書、WO96/29356号公開明細書、WO96/10617号公開明細書、EP0707020、WO95/07955号公開明細書、特開2001-181618号公報、特開2001-123156号公報、特開2001-3045号公報、特開2000-351967号公報、特開2000-303066号公報、特開2000-299189号公報、特開2000-252065号公報、特開2000-136379号公報、特開2000-104057号公報、特開2000-80167号公報、特開平10-324870号公報、特開平10-114891号公報、特開平9-111233号公報、特開平9-45478号公報等に開示されているポリフルオレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレン、その誘導体及び共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体及び共重合体、芳香族アミン及びその誘導体の(共)重合体から選択されるものが例示される。
【0027】
これらの中でも、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位を有する正孔輸送性高分子化合物(以下、「ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物」という)が好ましい。ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物は、正孔の移動度の観点から、全繰り返し単位に占める”置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位及び置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位”の合計割合が20〜100モル%であるものが好ましく、50〜99モル%であるものがさらに好ましい。ここで、アリーレン基の環を構成する炭素数は、通常、6〜60程度である。なお、「環を構成する炭素数」には、後述の置換基の炭素数は含まず、以下、同じである。アリーレン基の具体例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ペンタレンジイル基、インデンジイル基、ヘプタレンジイル基、インダセンジイル基、トリフェニレンジイル基、ビナフチルジイル基、フェニルナフチレンジイル基、スチルベンジイル基、フルオレンジイル基等が挙げられる。2価の複素環基とは、複素環式化合物から水素原子2個を取り除いてなる原子団を意味する。2価の複素環基の環を構成する炭素数は通常3〜60程度である。2価の複素環基の具体例としては、ピリジン−ジイル基、ジアザフェニレン基、キノリンジイル基、キノキサリンジイル基、アクリジンジイル基、ビピリジルジイル基、フェナントロリンジイル基、下記式(6b)においてAが−O−、−S−、−Se−、−N(R’’)−又は−Si(R’)(R’)−である基等が挙げられる。ここで、R’及びR’’は、後述のとおりである。
【0028】
ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物としては、下記式(6a):

(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、又は炭素数1〜20のカルボキシル基を表す。ここで、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される”置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位”、及び/又は下記式(6b):

(式中、Aは、環X上の2個の炭素原子と環Y上の2個の炭素原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子群を表し、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2cは、前記と同じ意味を有する。ここで、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表される”置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位”を有するものが、正孔の移動度の観点から好ましい。
【0029】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、tert-ブチル基等の鎖中に1つ以上の分岐を持つ分岐アルキル基、炭素原子が3員以上の飽和環を構成したシクロアルキル基等が挙げられる。
【0030】
フェニルアルキル基、アルキルフェニル基、アルキルカルボニル基としては、例えば、これらの基におけるアルキル部分が前記アルキル基の項で説明し例示したものと同様であるもの等が挙げられる。
【0031】
カルボキシル基としては、例えば、これらの基におけるアルキル部分が前記アルキル基の項で説明し例示したものと同様であるもの等が挙げられる。
【0032】
炭素数1〜20のアルコキシ基としては、例えば、前記アルキル基の項で説明し例示したものが酸素原子を介して基を構成するもの等が挙げられる。
【0033】
フェニルアルコキシ基、アルコキシフェニル基、アルコキシカルボニル基としては、これらの基におけるアルコキシ部分が前記アルコキシ基の項で説明し例示したものと同様であるもの等が挙げられる。
【0034】
前記式(6b)中、Aで表される原子又は原子群の具体例としては、下記式で表される原子、基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。

(式中、R、R’及びR’’は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルボキシル基を表す。)
【0035】
前記R、R’及びR’’は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基及び/又は炭素数1〜20のアルコキシ基で1つ以上置換されたフェニル基であることが、該正孔輸送性高分子材料の溶媒への溶解性、及び該”置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位”の原料モノマーの合成の容易さの観点から好ましい。これらのR、R’及びR’’は、具体的には、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。
【0036】
上記式(6a)又は上記式(6b)で表される繰り返し単位としては、下記の構造が例示される。



(式中、R、R’及びR’’は、前述で定義したとおりである。また、式中、ベンゼン環上の水素原子は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルボキシル基で置換されていてもよい。ベンゼン環の隣接位に2つの置換基が存在する場合、それらが互いに結合して環を形成してもいてよい。)
【0037】
前記式(6a)で表される繰り返し単位としては、該正孔輸送性高分子材料の溶媒への溶解性、該”置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位”の原料モノマーの合成の容易さ、及び正孔輸送性の観点から、下記式(A):

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、又は炭素数1〜20のアルキル基でベンゼン環上の水素原子の1つ以上が置換されたフェニル基を表す。)
で表されるものが好ましい。
【0038】
これらの基は、具体的には、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。R1及びR2は、好ましくは炭素数1〜20のアルキル基である。
【0039】
前記正孔輸送性高分子化合物は、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位に加えて、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位を有することが好ましい。この場合、該アリーレン基からなる繰り返し単位及び該2価の複素環基からなる繰り返し単位の合計1モルに対する、芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位の割合は、通常、0.1〜10モルである。
【0040】
芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位としては、下記式(7):

(式中、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar8、Ar9及びAr10は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。o及びpは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
で表される繰り返し単位が好ましい。
【0041】
前記式(7)中、アリーレン基及び2価の複素環基の定義、具体例は、前記と同様である。アリール基は、炭素数が、通常、6〜60のものであり、具体的には、例えばフェニル基等である。また、1価の複素環基は、複素環式化合物から水素原子1個を取り除いてなる原子団を意味し、具体的には、例えばピリジル基等である。
【0042】
前記式(7)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式で表される繰り返し単位が挙げられる。

【0043】
上記式中、芳香環上の水素原子は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルボキシル基で置換されていてもよい。これらの基は、具体的には、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。また、芳香環の隣接位に2つの置換基が存在する場合、それらが互いに結合して環を形成していてもよい。
【0044】
上記式(7)で表される繰り返し単位の中で、下記式(8):

(式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の1つ以上の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルボキシル基を表す。x及びyはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、zは1又は2であり、wは0〜5の整数である。R7、R8及びR9が複数存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。R7が複数存在する場合には、2つのR7は互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表される繰り返し単位が好ましい。
【0045】
前記式(8)中、R7、R8及びR9で表される基は、具体的には、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。
【0046】
前記式(8)で表される繰り返し単位としては、下記式(B):

(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、wは0〜5の整数である。Rが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Rが複数存在する場合には、2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるものが、該正孔輸送性高分子材料の溶媒への溶解性、該”置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位”の原料モノマーの合成の容易さ、正孔輸送性及びイオン化ポテンシャルの観点から好ましい。また、前記式(7)、(8)、(B)で表される繰返し単位は、1種のみ含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
【0047】
前記式(B)中、Rで表される炭素数1〜20のアルキル基は、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。
【0048】
正孔輸送性高分子化合物としては、その他にも、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体、側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン誘導体、ピラゾリン誘導体、アリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体等が例示され、具体的には、特開昭63-70257号公報、特開昭63-175860号公報、特開平2-135359号公報、特開平2-135361号公報、特開平2-209988号公報、特開平3-37992号公報、特開平3-152184号公報に記載されているもの等から選択されるものが例示される。
【0049】
側鎖又は主鎖に芳香族アミンを有するポリシロキサン及びその誘導体としては、正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖又は主鎖に有するものが好ましい。
【0050】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1の有機層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0051】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2の有機層に含有される電子輸送性高分子化合物としては、前記式(1)〜(5)を満たすものであれば、特に材料的には制限されないが、通常、陰極から、又は陰極側にある他の層から電子が注入され、輸送する機能を有するものであり、π及びσ共役系高分子、電子輸送性基を分子中に含む高分子が適宜使用できる。具体的には、前記正孔輸送性高分子化合物の項で説明・例示したものや、前記正孔輸送性高分子化合物が記載された文献に記載されたもののうち、前記式(1)〜(5)の条件を満たす高分子材料が使用できる。なお、電子輸送性高分子化合物は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0052】
これらの中でも、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位を有する電子輸送性高分子化合物(以下、「ポリアリーレン系電子輸送性高分子化合物」という)が好ましい。ポリアリーレン系電子輸送性高分子化合物は、電子の移動度の観点から、全繰り返し単位に占める”置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位及び置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位”の合計割合が20〜100モル%であるものが好ましく、50〜99モル%であるものがさらに好ましい。ここで、アリーレン基の環を構成する炭素数、アリーレン基の具体例、2価の複素環基の環を構成する炭素数、及び2価の複素環基の具体例は、前記ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物の項で説明したものと同様である。
【0053】
ポリアリーレン系電子輸送性高分子化合物としては、前記式(6a)で表される”置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位”、及び/又は前記式(6b)で表される”置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位”を有するものが、電子の移動度の観点から好ましい。前記式(6b)中のAで表される原子、原子群は、前記で説明し例示したものと同様であり、前記式(6a)又は前記式(6b)で表される繰り返し単位は、前記ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物の項で説明し例示したものと同様である。
【0054】
前記電子輸送性高分子化合物は、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位に加えて、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位を有することが好ましく、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位及び置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位を有することがより好ましい。この場合、アリーレン基、2価の複素環基からなる繰り返し単位の合計1モルに対する、芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位のモル比率は、通常、0モルを超え0.1モル未満である。また、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位としては、前記式(A)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0055】
芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位としては、前記式(7)で表される繰り返し単位が好ましい。前記式(7)中のアリール基、アリーレン基、1価の複素環基、2価の複素環基の定義、具体例は、前記と同様である。前記式(7)で表される繰り返し単位の具体例は、前記ポリアリーレン系正孔輸送性高分子化合物の項で説明し例示したものと同様である。
【0056】
これら芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位のうち、下記式(C):

(式中、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、wは0〜5の整数である。複数存在するwは、同一であっても異なっていてもよい。R3及びR4が複数存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるものが、該電子輸送性高分子材料の溶媒への溶解性、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位”の原料モノマーの合成の容易さ、及び発光効率の観点から好ましい。
【0057】
前記式(C)中、R3、R4で表される炭素数1〜20のアルキル基は、前記式(6a)中のR1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dで表される基として具体的に説明し例示したものと同様である。好ましくは、wが0又は1であり、R3及びR4が炭素数1〜6のアルキル基である。
【0058】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第2の有機層の厚さは、用いる材料によって最適値が異なり、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように調整すればよいが、例えば、1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜200nmである。
【0059】
本発明に用いられる正孔輸送性高分子化合物及び電子輸送性高分子化合物は、交互共重合体、ランダム重合体、ブロック重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよいし、それらの中間的な構造を有する高分子、例えば、ブロック性を帯びたランダム共重合体であってもよい。高い電荷輸送性能を発現し、その結果、高効率化、低駆動電圧化、長寿命化できる観点から、完全なランダム共重合体よりブロック性を帯びたランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体が好ましい。なお、主鎖に枝分かれがあり末端部が3つ以上ある高分子や、所謂デンドリマーも含まれる。
【0060】
前記正孔輸送性高分子化合物及び前記電子輸送性高分子化合物の末端部分は、重合活性基がそのまま残っていると、素子の作製に用いた場合、得られる素子の発光特性や寿命が低下する可能性があるので、安定な基で保護されていることが好ましい。末端基としては主鎖の共役構造と連続した共役結合を有しているものが好ましく、例えば、炭素−炭素結合を介してアリール基又は1価の複素環基と結合している構造が挙げられる。具体的には、特開平9-45478号公報の化10に記載の置換基等が例示される。
【0061】
前記正孔輸送性高分子化合物及び前記電子輸送性高分子化合物は、数平均分子量がポリスチレン換算で103〜108程度であることが好ましく、104〜106程度であることがより好ましい。
【0062】
前記正孔輸送性高分子化合物及び前記電子輸送性高分子化合物の合成方法としては、例えば、所望の重合体に応じたモノマーからSuzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法、FeCl3等の酸化剤により重合する方法、電気化学的に酸化重合する方法、適切な脱離基を有する中間体高分子の分解による方法等が挙げられる。これらのうち、Suzukiカップリング反応により重合する方法、Grignard反応により重合する方法、Ni(0)触媒により重合する方法が、反応制御が容易である点で好ましい。
【0063】
前記正孔輸送性高分子化合物及び前記電子輸送性高分子化合物の純度は、素子の発光特性に影響を与えるため、重合前のモノマーを蒸留、昇華精製、再結晶等の方法で精製した後に重合することが好ましく、また合成後、再沈精製し、クロマトグラフィーによる分別等の純化処理をすることが好ましい。
【0064】
前記正孔輸送性高分子化合物及び前記電子輸送性高分子化合物は、電荷輸送機能以外に発光機能を有しているものも好適に利用できるが、本発明においては、発光性材料をこれらの高分子化合物のどちらか一方又は両方と混合して用いる。
【0065】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1の有機層及び/又は第2の有機層に含有される発光性材料としては、「有機ELディスプレイ」(時任静夫、安達千波矢、村田英幸 共著 株式会社オーム社 平成16年刊 第1版第1刷発行)17〜48頁、83〜99頁、101〜120頁に記載の蛍光材料又は三重項発光材料が利用できる。低分子の蛍光材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系等の色素類、8−ヒドロキシキノリンの金属錯体、8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン及びその誘導体、テトラフェニルブタジエン及びその誘導体等を用いることができる。前記発光性材料の具体例としては、下記式:



で表される繰り返し単位からなる共重合体、特開昭57-51781号公報、特開昭59-194393号公報に記載されているもの等が挙げられる。
【0066】
三重項発光材料である三重項発光錯体としては、例えば、イリジウムを中心金属とするIr(ppy)3、Btp2Ir(acac)、白金を中心金属とするPtOEP、ユーロピウムを中心金属とするEu(TTA)3phen等が挙げられる。







【0067】
三重項発光錯体の具体例は、Nature, (1998), 395, 151、Appl. Phys. Lett. (1999), 75(1), 4、Proc. SPIE-Int. Soc. Opt. Eng. (2001), 4105(Organic Light-Emitting Materials and DevicesIV), 119、J. Am. Chem. Soc., (2001), 123, 4304、Appl. Phys. Lett., (1997), 71(18), 2596、Syn. Met., (1998), 94(1), 103、Syn. Met., (1999), 99(2), 1361、Adv. Mater., (1999), 11(10), 852 、Jpn.J.Appl.Phys.,34, 1883 (1995)等に記載されている。
【0068】
前記蛍光材料、三重項発光材料と共に、これらの材料が有する構造を分子構造中に含む高分子発光材料、又はそれ自身が特定の発光を示す高分子発光材料も、正孔輸送性高分子化合物及び/又は電子輸送性高分子化合物に混合して用いられる(以下、前記蛍光材料、前記三重項発光材料及び前記高分子発光材料を総称して「発光性材料」という)。
【0069】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子において、第1の有機層に含有される正孔輸送性高分子化合物及び/又は第2の有機層に含有される電子輸送性高分子化合物に混合される発光性材料の割合は、各有機層において、該有機層に含まれる全成分の合計に対して、0.01重量%〜50重量%であり、好ましくは0.05重量%〜10重量%である。
【0070】
本発明のエレクトロルミネッセンス素子は、CIE色座標上のx及びyの値が前記式(P)又は前記式(Q)を満たす領域の色で発光する。このような発光色は、素子から出射される光の発光スペクトルが単一であることにより、又は光の発光スペクトルが2つ以上の場合には、1つの強度の強い発光スペクトルと他の強度の弱い発光スペクトルとの組み合わせ、若しくは互いに相似した発光スペクトルの組み合わせであることにより得られる。なお、「発光スペクトルが単一である」とは、1種の化合物又は材料のみから発光することを意味する。
【0071】
例えば、CIE色座標上の値でxが0.1〜0.2であり、yが0.1〜0.3である、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、青色発光を得るためには、第1の有機層に含有される正孔輸送性高分子化合物、第2の有機層に含有される電子輸送性高分子化合物、並びに第1及び/又は第2の有機層に含有される発光性材料の全てを、発光波長でおよそ400nm〜530nmの部分にピークを有するスペクトルで発光するものから選択すればよい。
【0072】
より具体的には、前記式(A)で表される繰り返し単位と、前記式(B)で表される繰り返し単位とを等モル有する共重合体を正孔輸送性高分子化合物とし、前記式(A)で表される繰り返し単位のみからなる重合体を電子輸送性高分子化合物とし、かつ前記式(A)で表される繰り返し単位を90モル%、前記式(C)で表される繰り返し単位を10モル%有する共重合体を発光性材料として第1の有機層に5重量%混合して用いた場合、青色発光が得られる。
【0073】
また、正孔輸送性高分子化合物及び電子輸送性高分子化合物は前記と同じであるが、発光性材料を、その蛍光スペクトルが赤色を示す材料から選択し、かつ該発光性材料を第1の有機層に50重量%混合して用いた場合、赤色発光が得られる。
【0074】
<製造方法>
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、如何なる方法で製造してもよいが、例えば、以下の方法で製造することができる。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子において、第1の有機層及び第2の有機層の製造には、溶液から製膜する方法等が用いられる。溶液からの製膜には、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の塗布法を用いることができる。これらの中でも、パターン形成や多色の塗分けが容易であるという点で、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェットプリント法等の印刷法が好ましい。
【0075】
上記の溶液からの製膜には、通常、インクが用いられる。このインクは、前記正孔輸送性高分子化合物又は前記電子輸送性高分子化合物と、溶媒とを含んでなるものである。この溶媒は、特に制限されないが、前記インクを構成する溶媒以外の成分、即ち、正孔輸送性高分子化合物、電子輸送性高分子化合物、発光性材料等を溶解又は均一に分散できるものが好ましい。前記溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が例示される。なお、前記溶媒は、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0076】
これらのうち、正孔輸送性高分子化合物、電子輸送性高分子化合物、発光性材料等の溶解性、成膜時の均一性、粘度特性等の観点から、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒が好ましく、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、トリメチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、n−ブチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、s−ブチルベンゼン、アニソール、エトキシベンゼン、1−メチルナフタレン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシル、シクロヘキセニルシクロヘキサノン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−ヘキシルシクロヘキサン、2−プロピルシクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、2−ノナノン、2−デカノン、ジシクロヘキシルケトンが好ましく、キシレン、アニソール、シクロヘキシルベンゼン、ビシクロヘキシルのうち少なくとも1種類を含むことがより好ましい。
【0077】
また、インク中の溶媒の割合は、溶質(即ち、正孔輸送性高分子化合物、電子輸送性高分子化合物、及び発光性材料の全重量)に対して1重量%〜99.9重量%であり、好ましくは60重量%〜99.5重量%であり、さらに好ましくは80重量%〜99.0重量%である。
【0078】
インクの粘度は印刷法によって異なるが、インクジェットプリント法等のようにインクが吐出装置を経由するものの場合には、吐出時の目づまりや飛行曲がりを防止するために、粘度が25℃において1〜20mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0079】
また、第1の有機層と第2の有機層とを積層する際に、両層の混合を防止するために、第1の有機層を不溶化することが好ましい。例えば、前記第1の有機層を不溶化した後、不溶化された第1の有機層に接して第2の有機層を設けることで行うことができる。前記第1の有機層を不溶化する処理としては、可溶性の前駆体や可溶性の置換基を有する高分子を用いて、熱処理により前駆体を共役系高分子に転換したり、該置換基を分解することで溶解性を低下させたりして不溶化する方法や、架橋基を分子内に有する正孔輸送性高分子を用いる方法、熱、光、電子線等により架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーを混合する方法等が例示される。
【0080】
前記架橋基を分子内に有する正孔輸送性高分子化合物としては、側鎖に架橋基を有する前記正孔輸送性高分子化合物が例示される。このような架橋基としては、例えば、ビニル基、アセチレン基、ブテニル基、アクリル基、アクリレート基、アクリルアミド基、メタクリル基、メタクリレート基、メタクリルアミド基、ビニルエーテル基、ビニルアミノ基、シラノール基、小員環(例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、エポキシ基、オキセタン基、ジケテン基、エピスルフィド基等)を有する基、ラクトン基、ラクタム基、又はシロキサン誘導体を含有する基等がある。また、これらの基の他に、エステル結合やアミド結合を形成可能な基の組み合わせ等も用いることができる。例えば、エステル基とアミノ基、エステル基とヒドロキシル基等の組み合わせである。その中でも、とりわけアクリレート基又はメタクリレート基を有するモノマーが好ましい。
【0081】
アクリレート基又はメタクリレート基を有する単官能モノマーの具体例としては、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等が挙げられる。アクリレート基又はメタクリレート基を有する2官能モノマーの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、3−メチルペンタンジオールジアクリレート、3−メチルペンタンジオールジメタクリレート等が挙げられる。その他のアクリレート基又はメタクリレート基を有する多官能モノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0082】
前記架橋基を分子内に有する正孔輸送性高分子化合物における該架橋基の含有率は、通常、0.01〜30重量%であり、好ましくは0.5〜20重量%であり、より好ましくは1〜10重量%である。
【0083】
架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量が2000以下であり、上記架橋基を二つ以上有するものが例示される。
【0084】
架橋基を有する高分子や架橋反応を生ずるモノマーやマクロマーの架橋反応としては、加熱や光、電子線等照射により起こる反応が例示される。熱重合開始剤、光重合開始剤、熱重合開始助剤、光重合開始助剤等の存在下で前記反応を行ってもよい。
【0085】
加熱して不溶化する場合、材料の分解により特性が低下する温度以下であれば特に制限はないが、例えば、50℃〜300℃であり、100℃〜250℃が好ましい。
【0086】
加熱して不溶化する場合、併用できる熱重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものが使用でき、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;及び過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を用いる場合には、過酸化物を還元剤とともに用いてレドックス型開始剤としてもよい。これらの熱重合開始剤はそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0087】
熱重合開始剤を併用する場合の反応温度は、例えば、40℃〜250℃であり、50℃〜200℃が好ましい。
【0088】
光重合開始剤を用いた光重合では、紫外線を0.01mW/cm2以上の照射強度で1秒〜3600秒間、好ましくは30秒〜600秒照射すればよい。
【0089】
光重合開始剤は、光を照射されることによって活性ラジカルを発生する活性ラジカル発生剤、酸を発生する酸発生剤等が挙げられる。活性ラジカル発生剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0090】
・用途
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、面状光源、セグメント表示装置、ドットマトリックス表示装置、液晶表示装置等の表示装置、該表示装置のバックライト等として用いることができる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
ポリスチレン換算の数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求める。また、GPC測定の際には、(株)東ソー製のTSKgel SuperHM-H(商品名)2本と(株)東ソー製のTSKgel SuperH2000(商品名)(4.6mm I.d.×15cm)1本とをカラムとして用い、ポリマー溶出時間の検出には、示差屈折率計(島津製作所製、商品名:SHIMADZU RID-10A)を用い、移動相にはテトラヒドロフラン(THF)を用いる。
【0093】
正孔輸送性高分子化合物、電子輸送性高分子化合物及び発光性材料のイオン化電位及び電子親和力は、サイクリックボルタンメトリー法によって測定する。その条件は以下の通りである。
【0094】
ファンクションジェネレーターとポテンショスタットを用いる。作用極としてグラスカーボン電極を用い、その上にサンプルをキャスト法によって薄膜を形成する。対極には白金、参照電極にAg/Ag+を用い、0.1Mのテトラフルオロほう酸−テトラ−n−ブチルアンモニウム[CH3(CH23]4N・BF4のアセトニトリル溶液中で電位測定を行う。走査範囲は酸化側を0〜1500mV、還元側を−2900mV〜0mVとする。酸化電位及び還元電位はそれぞれ、電位波のカーブの変位点から読み取る。イオン化ポテンシャル(Ip)と電子親和力(Ea)は、酸化電位及び還元電位の値から次式(8)(9)によって計算する。
Ip=[(酸化電位)+0.45+4.5]eV (8)
Ea=[(還元電位)+0.45+4.5]eV (9)
【0095】
陽極には、ITO(インジウム−スズ酸化物)を用いる。その仕事関数の値は、光電子分光装置(理研計器(株)製、商品名:AC−2)を用い、紫外線励起による光電子放出開始点として求める。
【0096】
陰極には、仕事関数の低い金属であるバリウムを用いる。その仕事関数の値は、文献(J.H.Michaelsonら、Journal of Applied Phisics Vol.48, No.11, P.4729(1977年))に記載から2.70eV(これは熱電子放出法によって求めた値である)とした。
【0097】
<合成例1>(正孔輸送性高分子化合物の合成)
ジムロートを接続した200mL三つ口丸底フラスコに、下記式:

で表される化合物A 1.59g(3.00mmol)、下記式:

で表される化合物B 1.17g(2.55mmol)、下記式:

で表される化合物C 0.19g(0.45mmol)、及びトルエン23mlを加えて、モノマー溶液を調製した。窒素雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、そこへ、50℃で酢酸パラジウム 1.2mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 9.5mg、及び20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 10.2gを注加した。次いで、得られた溶液を105℃に加熱した後、4時間攪拌した。そこへ、トルエン1.5mLに溶解したフェニルホウ酸 366mgを加え、105℃で2時間攪拌した。得られた溶液に、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 0.6g、及びイオン交換水 9mLを加え、65℃で2時間攪拌した。こうして得られた溶液の有機層を水層と分離した後、有機層を2M塩酸 約70mL(1回)、10重量%酢酸ナトリウム水溶液 約70mL(1回)、イオン交換水 約70mL(3回)の順番で洗浄した。有機層をメタノール 約800mLに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し固体を得た。この固体をトルエン 約90mLに溶解させて粗生成物溶液とし、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに粗生成物溶液を通液し、この粗生成物溶液をメタノール 約800mLに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し、正孔輸送性高分子化合物(イオン化電位:5.46eV)を得た。
こうして得られた正孔輸送性高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が9.3×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3.2×105であった。また、正孔輸送性高分子化合物は、仕込み原料から、下記構造式:





で示される繰り返し単位を、50:42.5:7.5(モル比)で有してなるものと推測される。
【0098】
<合成例2>(発光性材料の合成)
ジムロートを接続した200mLセパラブルフラスコに、前記化合物A 0.76g(1.4mmol)、下記式:

で表される化合物D 0.94g(1.5mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:アリコート336、アルドリッチ社製) 0.23g、及びトルエン20mlを加えて、モノマー溶液を調製した。窒素雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、そこへ、50℃で酢酸パラジウム 0.8mg、及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 4.5mgを加え、85℃に加熱した。次いで、得られた溶液を、2M炭酸ナトリウム水溶液 8.4gを滴下しながら105℃に加熱した後、1時間攪拌した。得られた溶液に、トルエン0.8mLに溶解したt−ブチルフェニルホウ酸 134mgを加え105℃で2時間攪拌した。得られた溶液に、N,N−ジエチルチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 0.3g、イオン交換水 5mLを加え、65℃で2時間攪拌した。こうして得られた溶液の有機層を水層と分離した後、有機層をイオン交換水 約20mLで3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール 約230mLに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し固体を得た。この固体をトルエン 約50mLに溶解させて粗生成物溶液とし、あらかじめトルエンを通液したシリカゲル/アルミナカラムに粗生成物溶液を通液し、この粗生成物溶液をメタノール 約230mLに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し、重合体(発光性材料)(イオン化電位:5.52eV、電子親和力:3.29eV)を得た。
こうして得られた重合体(発光性材料)は、ポリスチレン換算の数平均分子量が2.0×104であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が3.9×104であった。また、この重合体(発光性材料)は、仕込み原料から、下記式:



で示される繰り返し単位を、1:1(モル比)で有してなるものと推測される。
【0099】
<合成例3>(電子輸送性高分子化合物の合成)
ジムロートを接続した150mL筒型フラスコに、前記化合物A 2.65g(5.0mmol)、下記式:

で表される化合物E 2.58g(4.7mmol)、下記式:

で表される化合物F 0.21g(0.3mmol)、メチルトリオクチルアンモニウムクロライド(商品名:アリコート336、アルドリッチ社製) 0.65g、及びトルエン 50mlを加えて、モノマー溶液を調製した。窒素雰囲気下、このモノマー溶液を加熱し、そこへ、酢酸パラジウム 1.1mg、及びトリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 12.3mgを加えて得られた溶液を、17.5重量%炭酸ナトリウム水溶液 9.7gを滴下しながら95℃で5時間攪拌した。得られた溶液に、フェニルホウ酸0.09gを加え、95℃で3時間攪拌した。そこへ、トルエン60gを加え、得られた溶液を75℃で30分攪拌した。得られた溶液に、N,N−ジエチルチオカルバミド酸ナトリウム三水和物 3.0g、及びイオン交換水 30gを加え、得られた溶液を75℃で3時間攪拌した。こうして得られた溶液の有機層を水層と分離した後、有機層を、イオン交換水 約40mL(1回)、10重量%酢酸水溶液 約50mL(1回)、イオン交換水 約50mL(2回)の順番で洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール約1Lに滴下し、ポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し固体を得た。この固体をトルエン約500mLに溶解させて粗生成物溶液とし、あらかじめトルエンを通液したアルミナカラムに粗生成物溶液を通液し、この粗生成物溶液をメタノール約1.5Lに滴下しポリマーを沈殿させ、沈殿物を濾過後乾燥し、電子輸送性高分子化合物(イオン化電位:5.91eV、電子親和力:2.36eV)を得た。
こうして得られた電子輸送性高分子化合物は、ポリスチレン換算の数平均分子量が2.3×105であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が5.0×105であった。また、電子輸送性高分子化合物は、仕込み原料から、下記構造式:



で示される繰り返し単位を、1:0.03(モル比)で有してなるものと推測される。
【0100】
<合成例4>(正孔輸送性高分子化合物/発光性材料混合溶液の調製)
正孔輸送性高分子化合物及び発光性材料を同じ重量ずつキシレンに溶解し、正孔輸送性高分子化合物/発光性材料混合溶液(濃度:1.0重量%)を調製した。
【0101】
<合成例5>(電子輸送性高分子化合物溶液の調整)
電子輸送性高分子化合物をキシレンに溶解し、電子輸送性高分子化合物溶液(濃度:0.4重量%)を調製した。
【0102】
<実施例1>(有機エレクトロルミネッセンス素子の作製)
スパッタ法により150nmの厚みでITO膜を付けたガラス基板上に、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(スタルクヴィテック社製、商品名:BaytronP CH8000)の懸濁液を0.2μmメンブランフィルターで濾過した液を用いて、スピンコートにより60nmの厚みで薄膜を形成し、ホットプレート上で200℃、10分間乾燥した。次に、上記で得た正孔輸送性高分子化合物/発光性材料混合溶液を用いて、スピンコートにより40nmの膜厚で薄膜を形成した。その後、窒素雰囲気下のホットプレート上で200℃、15分間熱処理した。こうして形成した発光性材料を含む正孔輸送性高分子化合物層(第1の有機層)の上に、上記で得た電子輸送性高分子化合物溶液を用いて、スピンコートにより電子輸送性高分子化合物層(第2の有機層)を形成した。ここで、正孔輸送性高分子化合物層と電子輸送性高分子化合物層とを併せた厚さが約60nmとなるようにスピンコート時の回転数を調節した。その後、第1の有機層と第2の有機層を積層した該基板を、窒素雰囲気下のホットプレート上で130℃、10分間加熱し溶媒を除去した。こうして作製した素子を真空蒸着機に導入し、陰極として金属バリウムを約5nm、次いでアルミニウムを約80nm蒸着して有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。なお、真空度が1×10-4Pa以下に到達した後に金属の蒸着を開始した。また、陽極の仕事関数は5.0eVであり、陰極の仕事関数は2.7eVであった。
【0103】
<有機エレクトロルミネッセンス素子の評価>
(1)発光色の確認
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子に電圧を印加することにより、第1の有機層から、赤色EL発光が観測された。電圧を4V印加した際の発光輝度は82cd/m2であり、発光スペクトルのピーク波長は625nmであった。CIE色座標上のx及びyの値は、x=0.61、y=0.34であった。発光スペクトルより、正孔輸送性高分子化合物に混合した発光性材料に起因する赤色発光であることが確認できた。また、この時の電流効率は0.25cd/Aであった。
(2)寿命
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を150mA/cm2の定電流で駆動し、輝度の時間変化を測定したところ、初期の輝度が320cd/m2であり、輝度半減までの時間は107時間であった。
【0104】
<評価>
実施例1で得られた本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、4Vという低い駆動電圧において約100cd/m2の実用的な輝度で発光し、同電圧において0.25cd/Aという比較的高い発光効率を示す。したがって、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、発光効率、駆動電圧のバランスに優れるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に該陽極に接して又は近接して設けられた正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層と、第1の有機層及び該陰極の間に第1の有機層に接して設けられた電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層とを有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
該正孔輸送性高分子化合物が下記式(1):
Ip1−Wa <0.5 (1)
(式中、Ip1は正孔輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは陽極の仕事関数の絶対値(eV)を表す。)
を満たすものであり、該電子輸送性高分子化合物が下記式(2)及び下記式(3):
Wc−Ea2 <0.5 (2)
Ip2−Wa ≧0.5 (3)
(式中、Wcは陰極の仕事関数の絶対値(eV)を表し、Ea2は電子輸送性高分子化合物の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip2は電子輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは上記と同じ意味を有する。)
を満たすものであり、第1の有機層及び第2の有機層の少なくとも一方が下記式(4)及び下記式(5):
|Ip3−Ip1| <0.5 (4)
|Ea2−Ea3| <1.0 (5)
(式中、Ip3は発光性材料のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Ea3は発光性材料の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip1及びEa2は上記と同じ意味を有する。)
を満たす発光性材料を含有し、第1の有機層から、又は第1の有機層及び第2の有機層から、CIE色座標上のx及びyの値が下記式(P)又は下記式(Q):
x<0.28又はx>0.44 かつ y≧0 (P)
0.28≦x≦0.44 かつ y≦0.24又はy≧0.46 (Q)
を満たす領域の色で発光する上記有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
前記正孔輸送性高分子化合物が、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位を有するものである請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項3】
前記正孔輸送性高分子化合物が、さらに置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位を有する請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
前記置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位が、下記式(6a):


(式中、R1a、R1b、R1c、R1d、R2a、R2b、R2c及びR2dは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、又は炭素数1〜20のカルボキシル基を表す。ここで、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表されるものである請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
前記置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位が、下記式(6b):


(式中、Aは、環X上の2個の炭素原子と環Y上の2個の炭素原子と一緒になって5員環又は6員環を形成する原子又は原子群を表し、R1a、R1b、R1c、R2a、R2b及びR2cは、前記と同じ意味を有する。ここで、R1bとR1c、及びR2bとR2cは、それぞれ一緒になって環を形成していてもよい。)
で表されるものである請求項2又は3に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
前記式(6a)で表される繰り返し単位が、下記式(A):


(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基でベンゼン環上の水素原子の1つ以上が置換されたフェニル基を表す。)
で表されるものである請求項4に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
前記置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位が、下記式(7):


(式中、Ar4、Ar5、Ar6及びAr7は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。Ar8、Ar9及びAr10は、それぞれ独立に、アリール基又は1価の複素環基を表す。o及びpは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
で表されるものである請求項3〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
前記式(7)で表される繰り返し単位が、下記式(8):


(式中、R7、R8及びR9は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、該アルキル基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルキル基、該アルコキシ基の末端水素原子がフェニル基で置換されたフェニルアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルキル基で置換されたアルキルフェニル基、ベンゼン環上の1つ以上の水素原子が炭素数1〜20のアルコキシ基で置換されたアルコキシフェニル基、炭素数1〜20のアルキルカルボニル基、炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜20のカルボキシル基を表す。x及びyはそれぞれ独立に0〜4の整数であり、zは1又は2であり、wは0〜5の整数である。R7、R8及びR9が複数存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。R7が複数存在する場合には、2つのR7は互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるものである請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
前記式(8)で表される繰り返し単位が、下記式(B):

(式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、wは0〜5の整数である。Rが複数存在する場合には、それらは同一であっても異なっていてもよい。Rが複数存在する場合には、2つのRは互いに結合して環を形成していてもよい。)
で表されるものである請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位の合計1モルに対して、前記置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位の割合が0.1〜10モルである請求項3〜9のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記電子輸送性高分子化合物が、置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び/又は置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位を有するものである請求項1〜10のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記電子輸送性高分子化合物が、さらに、置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位を有する請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
前記置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位が、前記式(6a)で表されるものである請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
前記置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位が、前記式(6b)で表されるものである請求項11又は12に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
前記式(6a)で表される繰り返し単位が、前記式(A)で表されるものである請求項13に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
前記置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位が、前記式(7)で表されるものである請求項12〜15のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
前記式(7)で表される繰り返し単位が、前記式(8)で表されるものである請求項16に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
前記式(8)で表される繰り返し単位が、下記式(C):


(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に、炭素数1〜20のアルキル基を表し、wは0〜5の整数である。複数存在するwは、同一であっても異なっていてもよい。R3及びR4が複数存在する場合には、各々、同一であっても異なっていてもよい。)
で表されるものである請求項17に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
前記置換基を有していてもよいアリーレン基からなる繰り返し単位、及び置換基を有していてもよい2価の複素環基からなる繰り返し単位の合計1モルに対して、前記置換基を有していてもよい芳香族アミン化合物の2価の残基からなる繰り返し単位の割合が0モルを超え0.1モル未満である請求項12〜18のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
前記正孔輸送性高分子化合物が、加熱又は光若しくは電子線の照射により分子架橋するものである請求項1〜19のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項21】
陽極及び陰極からなる電極と、該電極間に該陽極に接して又は近接して設けられた正孔輸送性高分子化合物を含有する第1の有機層と、第1の有機層及び該陰極の間に第1の有機層に接して設けられた電子輸送性高分子化合物を含有する第2の有機層とを有し、
該正孔輸送性高分子化合物が下記式(1):
Ip1−Wa <0.5 (1)
(式中、Ip1は正孔輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは陽極の仕事関数の絶対値(eV)を表す。)
を満たすものであり、該電子輸送性高分子化合物が下記式(2)及び下記式(3):
Wc−Ea2 <0.5 (2)
Ip2−Wa ≧0.5 (3)
(式中、Wcは陰極の仕事関数の絶対値(eV)を表し、Ea2は電子輸送性高分子化合物の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip2は電子輸送性高分子化合物のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Waは上記と同じ意味を有する。)
を満たすものであり、第1の有機層及び第2の有機層の少なくとも一方が下記式(4)及び下記式(5):
|Ip3−Ip1| <0.5 (4)
|Ea2−Ea3| <1.0 (5)
(式中、Ip3は発光性材料のイオン化電位の絶対値(eV)を表し、Ea3は発光性材料の電子親和力の絶対値(eV)を表し、Ip1及びEa2は上記と同じ意味を有する。)
を満たす発光性材料を含有し、第1の有機層から、又は第1の有機層及び第2の有機層から、CIE色座標上のx及びyの値が下記式(P)又は下記式(Q):
x<0.28又はx>0.44 かつ y≧0 (P)
0.28≦x≦0.44 かつ y≦0.24又はy≧0.46 (Q)
を満たす領域の色で発光する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
前記第1の有機層を不溶化した後、不溶化された第1の有機層に接して第2の有機層を設けることを特徴とする上記有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
【請求項22】
前記第1の有機層を不溶化する工程が、前記第1の有機層に含有される正孔輸送性高分子化合物を加熱又は光若しくは電子線を照射することにより行われる請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いてなる面状光源。
【請求項24】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いてなる表示装置。

【公開番号】特開2008−98619(P2008−98619A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−225588(P2007−225588)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(506061668)サメイション株式会社 (51)
【Fターム(参考)】