説明

有機ナノ粒子水性分散体、その製造方法及びその用途

【課題】有機ナノ粒子水性分散体の乾燥物が、油性系媒体に高度に一次再分散する有機ナノマテリアルなる水性エマルジョン型分散体及びその簡便な製造方法を提供することである。また、この有機ナノマテリアルを介してなす有機造膜材、機能性フィルム、有機ナノフィラー等を提供することである。
【解決手段】平均粒子径80nm以下の超微細粒有機ナノ粒子が、一次分散する水性エマルジョン分散体の乾燥物粉体が、油性系分散媒体への再分散時に、一次分散性を表す再分散分布指数(RDN)値=CV(2)/CV(1)[式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を示し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を示す。]=1〜2.0の範囲にある再分散性に優れる有機ナノ粒子マテリアルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再分散性に優れる有機ナノ粒子水性分散体に関し、より詳細には、超微細粒の有機ナノ粒子が水性エマルジョンとして分散する有機ナノ粒子水性分散体であって、その有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体に高度に一次分散する再分散性に優れるナノマテリアルとして用いられる有機ナノ粒子の水性エマルジョン型分散体及びその簡便な製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、このように油性系分散媒体に高度に一次再分散する有機ナノ粒子素材をナノマテリアル造膜材として用いてなる機能性薄膜及び有機ポリマー成型材として用いてなる機能性フィルムに関する。
【0003】
また、本発明は、このように油性系分散媒体に高度に一次再分散性を発揮する有機ナノ粒子をナノフィラーとして含有する油性インキ及び油性塗料にも関する。
【背景技術】
【0004】
従来から、有機・無機をとわず各種の微細粒フィラー、微細粒染顔料、その他の微細粒機能材等が、プラッスチック成型物、塗料、インキ等の産業分野における有機質分散媒体中に、高度に分散・含有されている。そのために、通常、工業的には極めて煩雑な分散化処理となる強制撹拌処理又は混練処理等を施すことになる。また、このような微細粒な工業部材は、例えば、粒子径が0.02〜0.2μmの有機・無機微細粒子の水性分散体を濾過分離することで、その濾過ケーキを形成する微細粒は0.5〜2μm程度に凝集し、その濾過ケーキを、例えば、100℃程度の温度下に乾燥・脱水させることで、更に凝集して40〜100μm程度の粗大化凝集体になると言われている。このような乾燥物凝集体を、再度、水性系又は油性系分散媒体に再分散させるには、極めて煩雑な分散化処理を要して、通常、過大なコストロスの要因となるのが一般的である。
【0005】
そこで、このような煩雑な再分散化処理から逃れる対処法として、例えば、印刷用の油性インキを製造するに際して、顔料合成時における微細粒分散状態を維持させたままに印刷インキ用の顔料とするために、この顔料合成時の水性分散体に、インク成分の油性系ビヒクルを添加させて、撹拌下に、一次分散状態にある微細粒顔料を、水相系からビヒクルの油相系に相転換させるフラッシング法なる対処法が提案されている。
【0006】
しかしながら、当然の如く、このような「水相/油相」の分散相置換処理においては、ビヒクル等の油相系へ移相置換させることで、通常、分散粒子濃度を著しく低下させるのが一般的である。また、両相の移相接触下に「移相油相系」への水相分の混入を完全に防止させることは極めて困難である等から、このような分散相置換処理法で得られる「油相分散体なる有機素材」は、取り扱いハンドリング性を著しく低下させてしまう。
また、このような分散相置換法では、従来からの周知の事実として、その分散粒子径が更に微細粒になると、例えば、分散粒子の粒子径が数十nm以下のような超微細サイズにあっては、「水相/油相」を移相する分散粒子は、その界面で凝集化傾向にあって、その凝集を防止させることも極めて困難であるとも言われている。
【0007】
そこで、従来から粒子分散系における凝集による粒子粗大化に係わって、例えば[特許文献1]には、水性媒体中に、界面活性剤を用いてポリウレタンプレポリマーの強制乳化下に、乳化重合させてエマルジョンの安定性からエマルジョン粒子径が100nm〜100μm範囲にあるポリウレタン系エマルジョンの製造方法が提案されている。その界面活性剤として、ポリオコシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオコシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオコシエチレンラウリルエーテル、ポリオコシエチレンステアリルエーテル等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、その中でも、HLB値が6〜20のノニオン性界面活性剤が好適に用いられると記載されている。
【0008】
また、本発明では、その乾燥粉末の水への再分散性をより向上させるために、乾燥前にPVA、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドや、各種の水溶性樹脂等の水溶性添加剤や、また、その粉末の貯蔵安定性、再分散性向上のため、無水珪酸微粉末、タンカル、クレー等の無機微粒子系のブロッキング防止剤を添加させてから、乾燥させてエマルジョン粉末を得るとも記載されている。
【0009】
また、[特許文献2]には、エチレン性不飽和カルボン酸単位を含有する水分散性共重合体を水分散媒体中に分散させて、これを保護コロイドとして、このエチレン性不飽和カルボン酸に共重合させる(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアルキルエステル、スチレン、グリシジルメタクリーレート、アクリル酸アミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル等の何れかの不飽和モノマーを乳化重合させて、水性媒体中には、動的光散乱法によるその樹脂の平均粒子径が30〜80nmの範囲にある超微細粒子の水性樹脂エマルジョンの製造方法が提案されている。
【0010】
また、本提案による乳化重合法においては、得られる水性樹脂エマルジョン粒子中に乳化剤が含まれるが、その乳化剤として、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪酸のアルカリ金属塩等のアニオン性界面活性剤が好適に用いられる。また、乳化重合においては、分子量制御のために連鎖移動剤を用いることが必須で、しかも、この連鎖移動剤と共に連鎖移動性の高いメチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール等の極性有機溶剤が有効に用いられると記載されている。
【0011】
また、[特許文献3]には、(メタ)アクリル酸エステル等の水不溶性ラジカル重合性モノマーを、親油性ノニオン系界面活性剤及びノニオン性水溶性高分子の存在下に、水性縣濁重合させて、平均粒子径が20〜500μmの単分散性重合体球状粒子の製造方法が提案されている。本提案における親油性ノニオン系界面活性剤として、HLBが1〜10範囲にあるポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が好適に用いられると記載されている。
【0012】
また、[特許文献4]には、アニオン系、カチオン系、ノニオン系の重合性乳化剤の重合物を保護コロイドとして、アクリル系単量体を乳化重合させて得られたエマルジョンを噴霧乾燥させてなる平均粒子径が数十μmの樹脂粉末は、水への再分散性に優れて、元のエマルジョン状態に再乳化されるアクリル系樹脂エマルジョンの製造方法が提案されている。また、本提案には、乳化重合時に単に界面活性剤を介在させても、本提案による水溶性保護コロイドのように乾燥時に発生させるアクリル系樹脂粒子を融着から保護させる効果がなく、そのアクリル系樹脂粉末の乾燥物は全く再分散されないと記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開2000−136227
【特許文献2】特開平11−29608
【特許文献3】特開2000−186104
【特許文献4】特開平7−53730
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のような状況下にあって、近年、無機・有機の工業素材に求められる技術課題は、益々高機能化、多機能化又は多様化の方向にあって、その課題の技術的動向も、益々微細・薄膜・高性能化が求められている。また、その技術的課題を達成させるために、近年、「ナノマテリアル」なる素材を用いて対処させる「ナノテク」技術分野が注目・期待されている。すなわち、例えば、その樹脂粒子径サイズ又は転着・被覆コート膜厚サイズが、数100nm以下であって、特に10nm〜数10nmの超微細粒子又は極薄膜をターゲットにしなければならない。
【0015】
そこで、本発明の目的は、微細化、薄膜化、高機能化なる技術課題を達成させるための適材として、近年、その技術動向が注目されている「ナノマテリアル」としての超微細粒の有機ナノ粒子素材を、例えば、極薄膜材、極薄手フィルム材、内添型又は被覆型のプラスチック改質材及び充填型の有機ナノフィラー等の技術分野に対処すべく、
(1)その適材なる有機樹脂の超微細粒子が、300nm以下で、特に100nm以下であって、更には50〜80nm以下で、しかも、強架橋された有機ナノ粒子であって、
(2)その有機ナノ粒子が、著しく簡便でシンプルな製造方法で、しかも、工業的に容易に調製することができて、
(3)しかも、その製造方法で調製される有機ナノ粒子が、一次分散状態で含有している有機ナノ粒子の水性分散体として調製され、
(4)その水性分散体の乾燥物が、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤を介在させる等の施しをすることなく、油性系分散媒体に容易且つ高度に一次再分散させ、
(5)更にはその再分散系が、各種の用途に実使用する有機質分散媒体系にあっても、例えば、強制撹拌等による格別の分散化処理を要することなく、容易に一次再分散性を発揮させる有機ナノ粒子の水性分散体を提供させることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そこで、本発明者は、上記する課題を鋭意検討した結果、水性反応系で、親油性の重合性モノマーを乳化重合させて超微細粒の有機粒子を調製するに際して、本発明者の従来からの種々なる知見を活かして、反応系に用いる乳化剤のイオン性及びその「親油性/親水性」の極性値(又はHLB値)等に着目させて、特定する乳化剤を介在させて、強架橋されたナノ粒子サイズの有機ポリマー粒子が分散する水性エマルジョン型の有機ポリマー粒子分散体を調製させた。次いで、得られた水性エマルジョン分散体を噴霧乾燥させた乾燥物を、MEKなる油性媒体中で緩やかに振盪させたところ、極めて容易に一次再分散することを見出して、本発明を完成させるに至った。
【0017】
本発明によれば、特定する乳化剤を用いて乳化重合法で調製した水性エマルジョン型分散体中に一次分散状態で含有する体積基準で表す平均粒子径が、300nm以下で、特に100nm以下であって、更には80〜50nm以下である超微粒の有機ナノ粒子の乾燥物凝集体においても、例えば、分散化剤を介在させることなく、しかも、機械的な強制撹拌を施すことなく、油性系分散媒体中に高度に一次再分散性を発揮させることを特徴とする水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を提供する。
【0018】
すなわち、本発明によれば、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を乾燥させた乾燥物中の体積基準で表す平均粒子径が300nm以下で、特に100nm以下であって、更には80〜50nm以下の超微細有機ポリマー粒子が、油性系分散媒体への再分散時において、高度に一次分散状態になる水性エマルジョン型の前駆体有機ナノ粒子水性分散体である。
この乾燥物の前駆体である本発明による有機ナノ粒子水性分散体中には、超微細粒な有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度で含有している。
その乾燥物が、油性系分散媒体への再分散時に発揮する分散化特性であって、一次再分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にある分散化特性を発揮させるものである。
(RDN)=CV(2)/CV(1) ・・・(1)
式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。
また、併せて、下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜1.5の範囲にある。
(RAv)=Av(2)/Av(1) ・・・(2)
式中、Av(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。
これらの(RDN)及び(RAv)数値から明らかなように、油性系分散媒体へ極めて優れた一次再分散性を発揮する有機ナノ粒子水性分散体であると言える。
【0019】
また、本発明によれば、このように油性系分散媒体に、高度に一次再分散性を発揮させる体積基準で表す平均粒子径が300nm以下にある有機ナノ粒子の乾燥物凝集体の前駆体であって、特に、その平均粒子径が100nm以下で、更には80〜50nm以下の超微細な有機ナノ粒子が一次分散状態にある水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を、工業的にも著しく簡便でシンプルに乳化重合させて調製させることを特徴とする有機ナノ粒子水性分散体の製造方法を提供する。
【0020】
本発明によれば、この前駆体の有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させた乾燥物凝集体は、油性系分散媒体への再分散時に、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にあって、且つ下記関係式(8)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜1.5の範囲にある。
(RDN)=CV(2)/CV(1) ・・・(1)
式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後の粒度分布のCV値を示し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を示す。
(RAv)=Av(2)/Av(1) ・・・(2)
式中、Av(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。
【0021】
すなわち、撹拌下に、100〜1000質量部の水相系に、10〜100質量部の親油性の重合性モノマーと、その重合性モノマー100質量部当たり、0.1〜30質量部のHLB値=1〜5の範囲にあるノニオン系親油性乳化剤と、0.5〜50質量部の架橋剤とを添加させる。
次いで、撹拌下の70〜80℃の温度範囲で乳化重合させて、体積基準で表す平均粒子径が300nm以下であって、しかも、充分に架橋された超微細有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度範囲に亘って、一次分散状態で含有する前記前駆体としての水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体が調製される。
【0022】
更には、本発明によれば、このように工業的にも著しく簡便でシンプルに乳化重合させて得られる水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を介して、その乾燥物凝集体が発揮する油性系分散媒体への顕著な再分散特性を活かすことで、各種の実用途に係わる有機質分散媒体系となる所定の油性系分散媒体中に、高度に一次分散されてなる有機質素材は、下記(イ)〜(ハ)に記載することを特徴とする各種の用途を提供する。
(イ)その「ナノマテリアル」としての有機質素材が有する特性を薄膜系に反映させる有機ポリマー造膜材として用いてなる機能性薄膜。
(ロ)その「ナノマテリアル」としての有機質素材が有する特性をフィルム系に反映させる有機ポリマー成型材として用いてなる機能性フィルム。
(ハ)その油性系分散媒体に高度に一次再分散性を発揮させる有機ナノ粒子をナノフィラーとして用いてなる油性インキ及び油性塗料。
【発明の効果】
【0023】
以上から、本発明によれば、油性系分散媒体系において、高度に一次再分散性を発揮させる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体は、その前駆体が、体積基準で表して平均粒子径が、特に100nm以下であって、更には80〜50nm以下にある超微細粒の有機ポリマー粒子が、高度に一次分散状態にある水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体である。この水性分散体を乳化重合法で調製するに際しては、既に説明する如く水性反応系に、HLB値が1〜5の範囲にある特定するノニオン系親油性乳化剤を介在させて、親油性重合性モノマーを乳化重合させる。
【0024】
このような調製法による本発明の水性エマルジョン型有機ナノ粒子分散体には、有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%の広範な分散濃度に亘って、一次分散状態になるように含有させることができる。また、この乳化重合させる反応系は、「所定質量部の水相」系に「所定の親油性重合性モノマー」/「上記するノニオン系親油性乳化剤」=「100質量部」/「0.1〜30質量部の配合割合」なる如く、工業的にも著しく簡便でシンプルな水性反応系であると言える。
【0025】
従って、このような水性反応系で調製される水性分散体を、例えば、スプレー乾燥下に乾燥・脱水させてなる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体には、本発明で用いる特定する親油性乳化剤が、恰もブロッキング防止剤の如く凝集物有機ナノ粒子の表面を被覆するように介在する。また、この介在する特定乳化剤が、スプレー乾燥下に有機ナノ粒子同士の融着を効果的に防止させることにもなる。
【0026】
なお、本発明における特定する親油性乳化剤が、粒子表面を被覆するように介在しているとは、乳化剤の一部が粒子に内包・頭出しする乳化剤分子に絡むようにして粒子表面及びその近傍に、被覆・介在しているものと理解される。
【0027】
また、このような構造特性を有する有機ナノ粒子の乾燥物凝集体を、油性系分散媒体中に浸漬(又は再分散)させると、親油性である介在乳化剤は、各種の用途に実使用される所定の油性系分散媒体中に容易に溶出・解離して、乾燥物凝集体を形成する有機ナノ粒子を効果的に油性系分散媒体中に離散させるものと理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体及びその簡便でシンプルに乳化重合させる製造方法について、その実施に係わる最良の形態について更に説明する。
【0029】
以上から、既に説明する如く、本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体中に含有する有機微細粒子は、以下の(A)〜(E)なる記載事項を特徴とする。
(A)体積基準で表す平均粒子径が、300nm以下にあって、特に100nm以下で、更には80〜50nm以下にあって、しかも、強架橋された超微細粒の有機ナノ粒子が、水性エマルジョン型の有機粒子分散体中に一次分散状態に含有されている。
(B)その水性エマルジョン型有機ナノ粒子分散体は、「所定量の水相」/「所定量の親油性重合性モノマー」/「所定量のHLB値=1〜5の範囲にある特定のノニオン系親油性乳化剤」を介在する反応系において、通常の乳化重合法で調製される。
(C)また、既に説明する如く、特定する親油性乳化剤を介在させる有機ナノ粒子水性分散体は、
その分散体を乾燥・脱水させてなる乾燥物凝集体が、油性系分散媒体への再分散時に発揮させる一次分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表すことができる。その(RDN)値=1〜1.5の範囲にある如く、油性系分散媒体に、著しく優れた一次再分散性を発揮させる乾燥物有機ナノ粒子凝集体である。
(RDN)=CV(2)/CV(1) ・・・(1)
式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性溶媒中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。
(D)そこで、このような特徴を有する有機質素材は、微細化、薄膜化、高機能化なる技術課題を達成させるための適材として、また、ナノテクの材料分野(「ナノマテリアル」)の一翼を担う超微細粒の有機ナノ粒子素材として、例えば、極薄膜材、極薄手フィルム材、内添型又は被覆型のプラスチック改質材及び充填型の有機ナノフィラー等の技術分野に好適に用いられる。
(E)また、既に説明する如く、各種の用途に実使用する有機質分散媒体系において、例えば、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施さずに、容易に一次再分散性を発揮させる水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体である。
【0030】
そこで、再分散分布指数(RDN)を発揮させる油性系分散媒体として、アクリル、メタクリル、ケトン系溶媒を適宜用いることができるが、とくに、HEMA、MMA、EMA、BMA、MEK、HIBKを挙げることができる。本発明においては、これらの群から選ばれる何れかの有機溶剤単独又は少なくとも2種以上の混合物溶剤として用いることができる。また、これらの油性系分散媒体としては、必要に応じて、BTX、シンナー等の芳香族系溶剤やラッカーの一部を混合さて適宜使用することができる。更にはまた、この油性系分散媒体は、例えば、フィルム成型時に用いる加熱溶融下に流延性有機質となる各種の有機ポリマー質素材や、各種の油性塗料及び油性インク用ビヒクルやラッカーも本発明における油性系分散媒体として挙げることができる。
【0031】
また、本発明における優れた一次再分散性に係わって、上記する油性系分散媒体系で発揮させる再分散分布指数(RDN)は、1≦(RDN)≧2.0の範囲にあって、その油性系分散媒体系においては、好ましくは、1.02≦(RDN)≧1.3の範囲として適宜対処させることができる。また、このような分散媒体系にあって、本発明による有機ナノ粒子分散体の再分散平均粒子径指数(RAv)は、1≦(RAv)≧1.5の範囲にあって、その油性系分散媒体系においては、好ましくは、1.02≦(RAv)≧1.3の範囲として適宜対処させることができる。
【0032】
また、本発明においては、油性系分散媒体に、上記する如く優れた一次再分散性を発揮させる微細粒の有機ポリマーナノ粒子は、その前駆体分散体である水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体中に、体積基準で表して特に100nm以下で、5nm以上の範囲にある有機ナノ粒子であって、本発明においては、特に体積基準平均粒子径が20〜80nmの範囲で、更に好ましくは30〜50nmの範囲にある有機ナノ粒子を適宜好適に対処させることができる。
【0033】
このような水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を、通常の水性反応系における乳化重合法で適宜調製させることができる。本発明においては、特に限定されるものではないが、その有機ナノ粒子のポリマー質としては、例えば、好ましくは、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系等の有機ナノ粒子を適宜好適に調製させて用いられる。
【0034】
そこで、これらの有機ナノ粒子に用いる親油性の重合性モノマーにおいて、アクリル系モノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)アクリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸イソプロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メタ)アクリル酸イソブチル,(メタ)アクリル酸ペンチル,(メタ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸ノニル,(メタ)アクリル酸デシル,(メタ)アクリル酸ドデシル,(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル,(メタ)アクリル酸プロポキシエチル,(メタ)アクリル酸ブトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシプロピル等のアクリル酸アルキルエステル;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類並びにグリシジル(メタ)アクリレート;エチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジエチルグリコールのジアクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジアクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジアクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジアクリル酸エステル類;エチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリエチレングリコールのジメタクリル酸エステル,ポリエチレングリコールのジアクリル酸エステル,プロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,ジプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル,トリプロピレングリコールのジメタクリル酸エステル等の(ポリ)アルキレングリコールのジメタクリル酸エステル類等を挙げることができる。
【0035】
また、スチレン系モノマーの具体例としては、例えば、アルキルスチレンとしては;スチレン,メチルスチレン,ジメチルスチレン,トリメチルスチレン,エチルスチレン,ジエチルスチレン,トリエチルスチレン,プロピルスチレン,ブチルスチレン,ヘキシルスチレン,ヘプチルスチレン及びオクチルスチレン等が挙げられ、ハロゲン化スチレンとしては;フロロスチレン,クロルスチレン,ブロモスチレン,ジブロモスチレン,クロルメチルスチレン等が挙げられ、その他、ニトロスチレン,アセチルスチレン,メトキシスチレン、α−メチルスチレン,ビニルトルエン,p−スチレンスルホン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0036】
また、特に有機ポリマー質の耐熱性等を考慮した場合の重合性モノマーとして、例えば、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミドなどのアクリルアミド系誘導体、p−アミノスチレンなどのアミノスチレン類、マレイミド,N−メチルマレイミド,N−フェニルマレイミド,N−シクロヘキシルマレイミド,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のイミド類、更には、重合性二重結合を二個有するブタジエン,イソプレイン,シクロペンタジエン,1,3−ペンタジエン,ジシクロペンタジエン等のジエン類を挙げることができる。また、N,N−ジメチルアクリルアミド,N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体,アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,N−アミノスチレン等のアミノスチレン類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等のアミノ基含有エチレン性不飽和結合を有するモノマーが適宜好適に使用することができる。
【0037】
また、有機ポリマー質に発揮させる機能性に係わって、必要に応じて、官能基を有するモノマーとして、例えば、アクリル酸、メタアクリル酸、テトラヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、メチレンマロン酸、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノオクチル、 カルボキシアルキルビニルエーテル、カルボキシアルキルビニルエステル、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられ、また、これらの誘導体として、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、また、例えば、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチルなどのアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミンなどのビニルアミン系誘導体類、アリルアミン、メタクリルアミン、N−メチルアクリルアミン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドなどのアリルアミン系誘導体等を挙げることができる。
【0038】
また、少なくとも1種の官能基及び/又は置換基を分子内に有する重合性モノマーにおいて、その官能基又は置換基としては;例えば、カルボニル基,ビニル基,フェニル基,アミノ基,アミド基,イミド基,ヒドロキシル基,ハロゲン基,スルホン酸基,エポキシ基及びウレタン結合等を挙げることができる。本発明においては、このような重合性モノマーにおける官能基又は置換基を有するモノマー種の単独又は2種以上の複数種を組み合わせて適宜好適に使用することができる。
【0039】
また、モノマー種から明らかなように、本発明に用いる重合性モノマーの官能基又は置換基の種類によって、それぞれ(−)帯電性と(+)帯電性を示す傾向にあるモノマー種を挙げることができる。従って、少なくとも2種以上の複数種のモノマーを本発明における重合性モノマーとして使用する場合には、その(+)及び(−)帯電性を示す傾向を周知のうえで、好ましくは、同種帯電性の傾向にあるモノマー同士を複数組み合わせて適宜好適に使用することができる。
【0040】
そこで、(−)帯電性の傾向にある重合性モノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸アニールエステル類としては;(メタ)アクリル酸フェニル,(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられ、ハロゲン基としては;サリチル酸ビニル,塩化ビニリデン,クロロヘキサンカルボン酸ビニル,アクリル酸−2−クロロエチル,メタクリル酸−2−クロロエチル等が挙げられ、ニトリル系としては;アクリルニトリル,メタクリロニトリル等が挙げられ、一方、(+)帯電性の傾向にある重合性モノマーとして、例えば、アミド基含有ビニル単量体類としては;メタクリルアミド,N−メチロールメタクリルアミド,N−メトキシエチルメタクリルアミド,N−ブトキシメチルメタクリルアミド等が挙げられ、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物類としては;(メタ)アクリル酸アミノエチル,(メタ)アクリル酸プロピルアミノエチル,メタクリル酸ジメチルアミノエチル,(メタ)アクリル酸アミノプロピル,メタクリル酸フェニルアミノエチル,メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル等のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル系誘導体類,N−ビニルジエチルアミン,N−アセチルビニルアミン等のビニルアミン系誘導体類,アリルアミン,メタクリルアミン,N−メチルアクリルアミン,N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアリルアミン系誘導体,アクリルアミド,N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド系誘導体,p−アミノスチレン等のアミノスチレン類,N-メチロール(メタ)アクリルアミド及びジアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類,6−アミノヘキシルコハク酸イミド,2−アミノエチルコハク酸イミド等が挙げられる。
【0041】
また、その他の重合性モノマーとして、エポキシ基含有重合性化合物類としては;グリシジルメタクリレート,マレイン酸のモノ及びジグリシジルエステル,フマル酸のモノ及びジグリシジルエステル,クロトン酸のモノ及びジグリシジルエステル,テトラヒドロフタル酸のモノ及びジグリシジルエステル,イタコン酸のモノ及びグシジルエステル,ブテントリカルボン酸のモノ及びジグリシジルエステル,シトラコン酸のモノ及びジグリシジルエステル,アリルコハク酸のモノ及びグリシジルエステル等のジカルボン酸モノ及びアルキルグリシジルエステル,p−スチレンカルボン酸のアルキルグリシジルエステル等が挙げられ、また、アリルグリシジルエーテル,アクリル酸グリシジルエテール,メタアクリル酸グリシジルエテール,アクリル酸−2−エチルグリシジルエテール,メタアクリル酸−2−エチルグリシジルエテール,2−メチルアリルグリシジルエーテル,スチレン−p−グリシジルエーテル,グリシジルアクリレート等が挙げられ、また、ヒドロキシ基含有重合性化合物類としては;アクリル酸−2−ヒドリキシエチル,メタクリル酸−2−ヒドリキシエチル,アクリル酸−2−ヒドリキシプロピル,アクリル酸又はメタクリル酸とポリプロピレングリコール又はポリエチレングリコールとのモノエステル,ラクトン類と(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとの付加物等が挙げられ、また、フッ素置換(メタ)アクリル系モノマーとしては;(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル,(メタ)アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロメチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル−2−パ−フルオロブチルエチル,(メタ)アクリル酸−2−パ−フルオロエチル,(メタ)アクリル酸パ−フルオロメチル,(メタ)アクリル酸ジパ−フルオロメチルメチル等を挙げられ、また、ビニルエステル類としては;酢酸ビニル,プロピオン酸ビニル,n−酪酸ビニル,イソ酪酸ビニル,ピバリン酸ビニル,カプロン酸ビニル,パーサティック酸ビニル,ラウリル酸ビニル,ステアリン酸ビニル,安息香酸ビニル,p−t−ブチル安息香酸ビニル,サリチル酸ビニル等が挙げられ、その他としては;塩化ビニリデン,クロロヘキサンカルボン酸ビニル,アクリル酸−2−クロロエチル,メタクリル酸−2−クロロエチル,3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクレート,β−メタクロリロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート,フェノキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクレレート等が挙げられる。
【0042】
また、本発明においては、特に、形成される有機ナノ粒子の機械的強度を高め、しかも、耐溶剤性を高める観点から、架橋構造を適宜導入させることができる。このような架橋構造を形成させるに、2官能性以上の多官能性モノマーを適宜好適に使用することができる。その多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート,トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート,ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート,ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート,トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレート,1,1,1−トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート,N−メチロールアクリルアマイド等を挙げることができる。また、このような多官能性モノマーは、既に上述した親油性の重合性モノマー100質量部に対して、通常、0.5〜50質量部、好ましくは、10〜30質量部で適宜好適に使用される。
【0043】
<その他の添加剤及び機能剤>
また、本発明による再分散性に優れる「ナノマテリアル」としての超微細粒の有機ナノ粒子素材を、例えば、極薄膜材、極薄手フィルム材、内添型又は被覆型のプラスチック改質材及び充填型の有機ナノフィラー等としての有機ナノ粒子の形成、再分散性を阻害させたりしない限りにおいて、必要に応じて、それ自体公知のその他の添加剤(配合剤)を配合させて、これらの添加剤によって反映されるその他の機能を発揮させることができる。本発明においては、例えば、熱安定剤、分散剤、防腐剤、撥水剤、粘度調節剤、タレ止め防止剤、表面張力調整剤、PH調整剤、消泡剤、キレート化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、近赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、抗菌・防カビ剤、芳香剤、蛍光剤、各種の薬効成分等の添加剤及び機能材を適宜添加させることができる。
【0044】
<本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体の調製>
そこで、以上のような特徴を発揮させる水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を工業的に著しく簡便で、反応系も著しくシンプルである製造方法について、更に説明する。
【0045】
既に説明する如く、本発明によって調製される水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体の乾燥物凝集体を、油性系分散媒体に再分散させると、従来の乾燥物凝集体とは著しく相違して、従来の如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施すことなく、容易に一次再分散性を発揮させる。その一次分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にある如く、油性系分散媒体に、著しく優れた再分散性を発揮させる乾燥物有機ナノ粒子凝集体である。
(RDN)=CV(2)/CV(1) ・・・(1)
式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。
この乾燥物凝集体の前駆体である本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中には、体積基準で表す平均粒子径が、300nm以下にあって、特に100nm以下にあって、更には80〜50nm以下にあつ超微細粒の有機ナノ粒子を、体積基準で表して5〜40%分散濃度に亘って、一次分散状態で含有させることができる。
【0046】
そこで、乳化重合下に調製される本発明における有機ナノ粒子の有機ポリマー質としては、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系等に係わる有機ナノ粒子を含有する有機ナノ粒子分散体を適宜調製することができる。
すなわち、
(1−a);100〜1000質量部の水相系に、上記有機ポリマー質に相当する10〜100質量部の親油性の重合性モノマーと、その重合性モノマー100質量部当たり、0.1〜30質量部で、好ましくは0.5〜20質量部の範囲で、HLB数値が1〜5の範囲にある本発明において特定するノニオン系親油性乳化剤とを適宜添加させる。
(2−b);更には、本発明においては、その重合性モノマー100質量部当たり、0.5〜50質量部で、好ましくは10〜30質量部の範囲で、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールトリメタクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋剤成分を適宜添加させる。
(3−c);次いで、撹拌下の70〜80℃の温度範囲で乳化重合させて、体積基準で表す平均粒子径が300nm以下で、特に100nm以下にあって、更には80〜50nm以下で、しかも、充分に架橋された超微細有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度範囲に亘って、好ましくは、粒子の重合安定性、分散安定性等の観点から、10〜30%分散濃度に亘って、一次分散状態に含有する前駆体としての水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体が調製される。
【0047】
<本発明に用いる乳化剤>
そこで、本発明において、上記する乳化重合に用いる乳化剤は、本発明において特定する乳化剤として、HLB値=1〜5の範囲で、好ましくは、粒子表面吸着、及び内部に含有されやすく、かつ粒子作製時の重合安定性を保持できる等の観点から、HLB値=2〜4の範囲にある親油性のノニオン系界面活性剤を挙げることができ、例えば、エステル型乳化剤として、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ポロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール等を挙げることができる。また、エーテル型乳化剤として、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、イソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル等を挙げることができる。中でも、本発明においては、粒子作製時の粒子形成、保護ロイド形成、分散安定性の観点から、エーテル型乳化剤であるモノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ポロピレングリコールを適宜好適に用いることができる。
【0048】
<本発明による有機ナノ粒子水性分散体の用途>
本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を前駆体とするその有機ナノ粒子水性分散体の乾燥物凝集体は、既に上記する各種の油性系分散媒体系に、既に説明する如く格別の強制的な分散化処理及び/又は格別の分散剤介在等を施すことなく、容易に一次再分散性を発揮させる。本発明においては、この一次再分散性特性を活かすことで、有機ナノマテリアルとしての有機造膜材、有機成型材及び超微細粒の有機ナノフィラーとして、以下のような用途に、適宜好適に用いることができる。
(イ)油性系分散媒体に有機ナノ粒子が、高度に一次分散する有機質素材を、薄膜系に反映させる有機造膜材として用いてなる機能性薄膜又は機能性超薄膜を提供できる。
(ロ)油性系分散媒体に有機ナノ粒子が、高度に一次分散する有機質素材を、フィルム系に反映させる有機成型材として用いてなる機能性薄手フィルムを提供できる。
(ハ)塗膜になる主成分の樹脂粒子であるアクリル樹脂、アルキット樹脂、ウレタン樹脂等に、その油性系分散媒体に高度に一次分散性を発揮させる有機ナノ粒子をナノフィラーとして用いてなる油性インキや、油性塗料を提供できる。
【0049】
また、本発明による水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体や、上記する有機造膜材、有機成型材、油性インキや、油性塗料物を被覆コート、転写、印刷塗工、薄膜成型させるには、従来から公知の方法及び装置であるブレードコータ、エアーナイフコート、ロールコート、バーコータ、グラビヤコータ、ロッドブレードコータ、ダイコータ、インクジェット塗工、または、スクリーン印刷、インクジェット法、スピンコート、エアロジル塗工(又は噴霧塗工)等を挙げられ適宜好適に用いられる。
【0050】
また、上記する機能性薄手フィルムとして、例えば、平均粒子径が20〜70nmサイズの有機ナノ粒子を油性系分散媒体に、超微細粒子が高度に一次分散させた有機質素材を用いて、フィルム化させてなる偏光フィルムを提供することができる。このような有機素材を用いることで、全光線透過率が高く(透明性フィルム)、ヘイズが高いことから、偏光性が現行の実用フィルムに匹敵し、しかも、従来の系とは異なり、粒径の異なる大粒子と小粒子との如く粒子径の異なる煩雑な組み合わせを要さない。
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例にいささかも限定されるものではない。
【0051】
(実施例)
<有機ナノ粒子水性分散体の調製>
<PMMA架橋ナノ粒子;試料−(a)、試料−(b)>
温度計と窒素導入管とを装着した、容量1リットルの四つ口フラスコに、・イオン交換水400質量部、・ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩7質量部を添加して、85℃に昇温後、・ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。
次いで、76〜78℃に保ちながら、・メタクリル酸メチル(MMA)75質量部、・エチレングリコールジメタクリレート25質量部、・HLB=2のモノステアリン酸エチレングリコール5質量部、・ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部、・イオン交換水40質量部とからなる水性エマルション溶液を滴下して重合を行った。
次いで、30分保持した後、85℃に昇温させて1.5時間保持した。その結果、エマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は48nmで、この水性分散体を試料−(a)とした。
同様にしてフラスコ中の・ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩を5質量部にして、平均粒子径80nmの有機ナノ粒子を調製して、この水性分散体を試料−(b)とした。
【0052】
なお、本発明における平均粒子径測定法;シスメックス製[ゼータサイザー3000HS]を用いた動的光散乱法によった。また、CV値測定;CV値=標準偏差/平均粒子径×100として測定した。
【0053】
<PS架橋ナノ粒子;試料−(c)>
同様の容量1リットルの四つ口フラスコに、・イオン交換水400質量部、・乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩7質量部を添加して85℃に昇温後、・ペルオキソニ硫酸アンモニウム(APS)0.5質量部を添加した。
次いで、76〜78℃に保ちながら、・スチレン75質量部、・ジビニルベンゼン25質量部、・モノステアリン酸エチレングリコール5質量部、・ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩1質量部、・イオン交換水40質量部とからなる水性エマルション溶液を滴下して重合を行った。
次いで、30分保持した後、85℃に昇温させて3時間保持した。その結果、エマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は45nmで、この水性分散体を試料−(c)とした。
【0054】
<水性分散体の乾燥物凝集体の調製>
得られた水性分散体の試料−(a)、−(b)、−(c)のそれぞれをスプレードライ法により粉体化し、それぞれ試料−D(a)、−D(b)、−D(c)とした。得られた乾燥物凝集体の含水分量は2%以下であった。また、このときの乾燥物の平均粒子径をそれぞれ(a)-sp、(b)-sp、(c)―spとした。
【0055】
<乾燥物凝集体の油性系分散媒体への再分散化>
得られた試料−D(a)、−D(b)、−D(c)のそれぞれ20gを80gのMEKに添加し、撹拌分散化(ホモジナイザー200rpm×5分)した。固形分量は約20%で、得られた分散体中の平均粒子径をそれぞれ(a)−MEK、(b)−MEK、(c)−MEKとした。
また、油性系分散媒体のMEKに換えて、MMAにそれぞれ同様にして再分散化させたその平均粒子径をそれぞれ(a)−MMA、(b)−MMA、(c)−MMAとした。
【0056】
(比較例1)
<ノニオン系乳化剤無添加の有機ナノ粒子水性分散体の調製>
<PMMA架橋粒子;試料−H(d)>
実施例の試料−(a)において添加した、・モノステアリン酸エチレングリコール5質量部のノニオン系乳化剤を添加させなかった以外は、実施例の試料−(a)と同様にしてPMMA粒子の有機ナノ粒子を調製し、その水性分散体を試料−H(d)とした。その結果、エマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒子径は50nmであった。
【0057】
(比較例2)
<ノニオン系乳化剤添加の未架橋有機ナノ粒子水性分散体の調製>
<PMMA未架橋粒子;試料−H(e)>
実施例の試料−(a)において添加した、・エチレングリコールジメタクリレート25質量部の架橋剤を添加させなかった以外は、実施例の試料−(a)と同様にしてPMMA粒子の有機ナノ粒子を調製し、その水性分散体を試料−H(e)とした。その結果、エマルションの重合率は約100%で、固形分は24%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は44nmであった。
【0058】
(比較例3)
<HLB=8であるノニオン系乳化剤添加による架橋有機ナノ粒子水性分散体の調製>
<PMMA架橋粒子;試料−H(f)>
試料−1において、モノステアリン酸エチレングリコール5質量部に換えて、HLB=8のモノオレイン酸ポリエチレングリコール5質量部を用いた以外は、実施例の試料−(a)と同様にしてPMMA粒子の有機ナノ粒子を調製し、その水性分散体を試料−H(f)とした。その結果、エマルションの重合率は約100%で、固形分は23%で、動的光散乱法で求めた平均粒径は60nmであった。
【0059】
<水性分散体の乾燥物凝集体の調製>
以下実施例で得た水性分散体と同様にして、水性分散体の試料−H(d)、試料−H(e)及び試料−H(f)のそれぞれをスプレードライ法により粉体化し、それぞれ試料−DH(d)、−DH(e)及び−DH(f)とした。得られた乾燥物凝集体の含水分量は2%以下であった。また、このときの平均粒子径をそれぞれH(d)-sp、H(e)-sp及びH(f)-spとした。
【0060】
<乾燥物凝集体の油性系分散媒体への再分散化>
得られた試料−DH(d)、−DH(e)及び−DH(f)のそれぞれ20gを80gのMEKに添加し、撹拌分散化(ホモジナイザー200rpm×5分)した。固形分量は約20%で、得られた分散体の平均粒子径をそれぞれH(d)−MEK、H(e)−MEK及びH(f)−MEKとした。粒子の乾燥方法重合後に得られた粒子エマルションは、スプレードライ法により粉体化した。この際の含水分量は2%以下であった。また、このときの平均粒子径をそれぞれH(d)−sp、H(e)−sp及びH(f)−spとした。
【0061】
(比較例4)
<アルコール類への再分散性>
実施例で得られた試料−D(a)、−D(b)及び−D(c)の乾燥物粉体のそれぞれ20gを80gのイソプロビルアルコール(IPA)に添加し、撹拌(ホモジナイザー5000rpm×10分)した。固形分量は約20%であった。得られた分散体の平均粒子径をそれぞれH(a)−IPA、H(b)−IPA及びH(c)−IPAとした。
【0062】
(比較例5)/(比較例6)
<フラッシング法(蒸留置換法)によるMEK分散体の調製>
平均粒子径48nmのPMMA架橋ナノ粒子水性分散体である実施例の試料−(a)の100gを90〜95℃の温度雰囲気下に水分を蒸発させながら、蒸発分エチルアルコールを加え、さらにアルコール置換した。
次いで、アルコール置換した分散体を80℃以上の雰囲気下でアルコール分を蒸発させながら、蒸発分だけメチルエチルケトン(MEK)を加えて、固形分20%のMEK分散体を調製し、試料−H(a)F−10とした。
<フラッシング法(塩せき法)によるMEK分散体の調製>
平均粒子径48nmのPMMA架橋ナノ粒子水性分散体の試料−(a)の100g中に重炭酸ナトリウム10%の水溶液を添加し、さらにMEK100gを添加した。この分散溶液を撹拌・静置後、油相/水相の二相に分かれた水相分をデカンテーションにて取り除き、固形分18%のMEK分散体を回収し、試料−H(a)F−20とした。
【0063】
以上から、実施例及び比較例を含めた結果を[表1]にまとめて示した。その結果、本発明による如く、HLB値=1〜5にあるノニオン系親油性乳化剤を用いて調製した有機ナノ粒子水性分散体は、その再分散分布指数(=RDN)及び再分散平均粒子径指数(=RAv)値から明らかなように、本発明による平均粒子径(45〜71nm)の超微細粒有機ナノ粒子の水性分散体を乾燥・脱水させた乾燥物凝集体(3900〜4200nm)が、殆ど凝集することなくMEK及びMMA等の油性系分散媒体に、高度に一次粒子分散状態にある。
【0064】
従って、本発明による有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させた乾燥物が、既に上記した各種の油性系分散媒体系に、極めて容易に高度に一次粒子分散する優れた再分散性を発揮する有機ナノ粒子部材(有機ナノマテリアル)であることが良く理解される。
【0065】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0066】
以上から、本発明によれば、工業的に極めて簡便にシンプルな反応系で調製される水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を前駆体とする有機ナノ粒子の乾燥物凝集体は、油性系分散媒体系に優れた一次再分散性を発揮させることを特徴とする。
このような一次再分散性特性を活かすことで、本発明による超微細粒の有機ナノ粒子を「ナノマテリアル」として有機ポリマー造膜材、有機ポリマー成型材及び有機ナノフィラーとして、以下のような用途に提供することができる。
(イ)油性系分散媒体に有機ナノ粒子が、高度に一次分散する有機質素材を、薄膜系に反映させる有機ポリマー造膜材として用いてなる機能性薄膜を提供できる。
(ロ)油性系分散媒体に有機ナノ粒子が、高度に一次分散する有機質素材を、フィルム系に反映させる有機ポリマー成型材として用いてなる機能性薄手フィルムを提供できる。
(ハ)塗膜になる主成分の樹脂粒子であるアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂等に、その油性系分散媒体に高度に一次分散性を発揮させる有機ナノ粒子のナノフィラーとして用いてなる油性インキや、油性塗料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準で表す平均粒子径が300nm以下で、且つ強架橋された超微細粒の有機ポリマー粒子が油性系分散媒体への再分散時に高度に一次分散する水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体であって、
前記有機ナノ粒子水性分散体は、水性媒体中に、前記超微細有機ポリマー粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度にあって、
前記分散体の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体への再分散時に発揮する一次分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜2.0の範囲にあって、且つ、下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜1.5の範囲にあることを特徴とする有機ナノ粒子水性分散体。
【数1】


[式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における粒度分布のCV値を表し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。]
【数2】


[式中、Av(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。]
【請求項2】
前記油性系分散媒体が、HEMA、MMA、EMA、BMA、MEK、HIBK、(メタ)アクリル系及びケトン系溶媒の群から選ばれる何れかの有機溶剤の単独又は少なくとも2種以上の混合溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の有機ナノ粒子水性分散体。
【請求項3】
前記有機ポリマー粒子の有機ポリマー質が、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系の群から選ばれる少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項1に記載の有機ナノ粒子水性分散体。
【請求項4】
体積基準で表す平均粒子径が300nm以下の超微細有機ナノ粒子が一次分散状態にある水性エマルジョン型の有機ナノ粒子水性分散体を、乾燥・脱水させた有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体への再分散時に発揮する再分散性を、下記関係式(1)に定義する再分散分布指数(RDN)で表して、(RDN)値=1〜1.5の範囲にあって、且つ、下記関係式(2)に定義する再分散平均粒子径指数(RAv)で表して、(RAv)=1〜1.5の範囲にある有機ナノ粒子水性分散体の製造方法であって、
撹拌下に、100〜1000質量部の水相系に、10〜100質量部の重合性モノマー、その重合性モノマー100質量部当たり、0.1〜30質量部のHLB値=1〜5の範囲にあるノニオン系親油性乳化剤と、0.5〜50質量部の架橋剤とを添加させ、撹拌・加温下に乳化重合させ、体積基準で表す平均粒子径が300nm以下で、強架橋された超微細粒の有機ナノ粒子が、体積基準で表して5〜40%分散濃度で、一次分散状態で含有する水性エマルジョン型の前記有機ナノ粒子水性分散体が調製されることを特徴とする有機ナノ粒子水性分散体の製造方法。
【数3】


[式中、CV(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後の粒度分布のCV値を表し、CV(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の粒度分布のCV値を表す。]
【数4】


[式中、Av(2)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体を乾燥させた後、油性系分散媒体中での緩い振揺後における平均粒子径値を表し、Av(1)は、水性エマルジョン型の有機ナノ粒子分散体中における有機ナノ分散粒子の平均粒子径値を表す。]
【請求項5】
前記ノニオン系親油性乳化剤が、モノステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸ポロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコールの群から選ばれる少なくとも何れか1種のエステル型乳化剤であることを特徴とする請求項4に記載する有機ナノ粒子水性分散体の製造方法。
【請求項6】
前記ノニオン系親油性乳化剤が、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、イソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテルの群から選ばれる少なくとも何れか1種のエーテル型乳化剤であることを特徴とする請求項4に記載する有機ナノ粒子水性分散体の製造方法。
【請求項7】
得られる前記有機ナノ粒子の有機ポリマー質が、(メタ)アクリル系、スチレン系、アクリル−スチレン系、アクリル−ジエン系、スチレン−ジエン系、アクリル−イミド系、スチレン−イミド系の群から選ばれる少なくとも何れか1種であることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載する有機ナノ粒子水性分散体の製造方法。
【請求項8】
請求項4〜7の何れかに記載する製造方法によって得られる有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させて得られる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体中に高度に一次分散する有機ポリマー造膜材として用いてなることを特徴とする機能性薄膜。
【請求項9】
請求項4〜7の何れかに記載する製造方法によって得られる有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させて得られる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体中に高度に一次分散する有機ポリマー成型材として用いてなることを特徴とする機能性フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載する機能性フィルムが、偏光性を有することを特徴とする光学フィルム。
【請求項11】
請求項4〜7の何れかに記載する製造方法によって得られる有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させて得られる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体中に高度に一次分散する有機ナノフィラーとして用いてなることを特徴とする油性塗料。
【請求項12】
請求項4〜7の何れかに記載する製造方法によって得られる有機ナノ粒子水性分散体を乾燥・脱水させて得られる有機ナノ粒子の乾燥物凝集体が、油性系分散媒体中に高度に一次分散する有機ナノフィラーとして用いてなることを特徴とする油性インキ。

【公開番号】特開2007−63379(P2007−63379A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250259(P2005−250259)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000202350)綜研化学株式会社 (135)
【Fターム(参考)】