説明

有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法とその装置

【課題】有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法とその装置に関し、可搬型でエネルギー消費の少ない装置を提供し、複数地点に点在している汚染汚泥を順次処理することができ、1箇所あたりの浄化処理費用を低廉化させうることを課題とする。
【解決手段】有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離し、分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理するとともに、分離された液を膜分離装置で濾過することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法とその装置、さらに詳しくは、ポリ塩化ビフェニル、ダイオキシン、農薬等の有機ハロゲン化合物や、水銀、カドミウム、鉛、砒素等の重金属類で汚染された土壌、土石等の汚染汚泥を浄化して無害化するための浄化方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
周知のように、有機ハロゲン化合物の一種であるポリ塩化ビフェニルは非常に安定で分解され難く、しかも絶縁性(電気抵抗)が高いことから、従前においては変圧器やコンデンサー等の絶縁材料や熱媒体或いはカーボンレス複写紙等に用いられていたが、現在では環境上の理由から使用が禁止されている。
【0003】
しかし、従前から用いられていたものが残存する等、現在でも土壌や汚泥等の固形物中に微量成分として残存している場合があり、これらをどのように分解,処理するかは重要な課題となっている。
【0004】
一方、上記のような各種の有機ハロゲン化合物の他に、水銀、カドミウム、鉛、砒素等の重金属類が汚泥に含有されている場合もあり、このように有機ハロゲン化合物と重金属類とで複合汚染された汚泥の処理はいっそう煩雑である。
【0005】
このように有機ハロゲン化合物と重金属類とで複合汚染された汚泥を処理する技術として、たとえば図9に示すように固液分離する方法が考えられるが、分離された濾過水にも有機ハロゲン化合物と重金属類が含有されているおそれがあり、濾過水をそのまま放流することはできない。
【0006】
また、図10に示すように、固液分離後の濾過水を蒸発させることも考えられるが、その場合は多量の水分を蒸発させなければならず、加熱量が多くなり、多大なエネルギーを要することになる。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、可搬型でエネルギー消費の少ない装置を提供し、複数地点に点在している汚染汚泥を順次処理することができ、1箇所あたりの浄化処理費用を低廉化させうることを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような課題を解決するために、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法とその装置としてなされたもので、汚染汚泥の浄化方法としての特徴は、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離し、分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理するとともに、分離された液を膜分離装置で濾過することである。膜分離装置で分離された固形分は、好ましくは前記固液分離工程へ返送される。
また、汚染汚泥の浄化装置としての特徴は、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離する固液分離装置1と、該固液分離装置1で分離された液を濾過する膜分離装置と、前記固液分離装置1で分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理する脱ハロゲン化処理設備とを具備させたことである。
【0009】
固液分離装置1で分離された固形分中の有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化処理としては、たとえば固形分を還元雰囲気下で加熱して有機ハロゲン化合物を分解するような処理手段が採用される。この場合、還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物を、アルカリ金属によって分解することも可能である。
また有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解した後、有機ハロゲン化合物と反応していないアルカリ金属を、膜分離装置で分離された透過水で水和することも可能である。
【0010】
また、還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物を油水分離により油分側に抽出させるとともに、排ガス中の重金属類を水分側に抽出し、油水分離後の有機ハロゲン化合物を含有した油分を、アルカリ金属によって分解する工程へ供給するとともに、油水分離後の重金属類を含有した水分を固液分離工程へ返送することも可能である。
【0011】
膜分離装置としては、たとえば多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置2を使用することが可能である。
【0012】
さらに、膜分離装置で濾過した濾過水を、逆浸透膜装置3で濃縮水と透過水とに分離し、分離された濃縮水を脱ハロゲン化処理工程へ供給することも可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について、図面に従って説明する。
【0014】
(実施形態1)
先ず、一実施形態としての、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置について説明する。
【0015】
本実施形態の汚染汚泥の浄化装置は、図1に示すように、固液分離装置1と、限外濾過膜装置2及び逆浸透膜装置3と、脱塩素化処理設備とを具備している。脱塩素化処理設備は、さらに還元加熱脱塩素化装置4と、金属ナトリウム処理設備5とからなる。
【0016】
固液分離装置1は、有機ハロゲン化合物の一例としてのポリ塩化ビフェニルと、水銀、カドミウム、鉛、砒素等の重金属類とが含有された汚染汚泥を、固形分と液とに分離するもので、たとえばフィルタープレスや遠心分離器等が固液分離器1として用いられる。
【0017】
限外濾過膜装置2は、前記固液分離装置1で分離された液分を、さらに固形スラッジ分(SS成分)と透過水とに分離するための装置であり、本実施形態の限外濾過膜装置2には、平膜モジュールを有する限外濾過膜が用いられている。
【0018】
より具体的には、図2及び図3に示すように、ABS樹脂製の支持板の両面にポリエチレン製の処理水スペーサーと平膜とが1枚ずつ重ね合わされ外周部がシールされて形成された封筒状平膜32が、多層に積層されて構成されている。そして、このように封筒状平膜32が多層に積層されたものが、図2に示すように1対の半割体33,33からなる内側ケーシング34内に収容され、さらに図3に示すように、圧力容器35内に収容されている。
【0019】
圧力容器35の一端側には、前記固液分離器1で分離された液の入口部36が形成され、圧力容器35の他端側には、濃縮水出口部37が形成されている。
前記内側ケーシング34の内部であって、多層積層された封筒状平膜32の側方には、透過水排出路39が形成されている。そして、前記積層された封筒状平膜32には貫通孔41が穿設され、該貫通孔41内にパイプ38が挿入されている。そして貫通孔41及びパイプ38は、前記透過水排出路39に連通状態とされている。40は、入口部36側の近辺に設けられた整流板を示す。
【0020】
逆浸透膜装置3は、ディスクタイプの平膜がディンプルの付いたスペーサーと交互に積層された構造からなるものである。すなわち、この逆浸透膜装置は、図4に示すように、円筒状の装置本体11内に、円板状の平膜12が同じく円板状のスペーサ13の間に設けられた逆浸透膜部14が複数組積層されて構成されている。
【0021】
該逆浸透膜装置2の装置本体11の内周面には原水を導入する原水流路15が設けられ、該原水流路15から逆浸透膜12表面に原水が導入される。
【0022】
また、該逆浸透膜部14の上部にはエンドプレート16が設けられ、浸透圧以上の圧力に耐えられるようになっている。
【0023】
18は逆浸透膜部14の中央部に貫通された透過水パイプで、該透過水パイプ18は逆浸透膜12によって分離された処理水を排出させる。
【0024】
また、19は濃縮水パイプで、各逆浸透膜12によって濃縮された濃縮水を装置本体11外へ排出させる。
【0025】
還元加熱脱塩素化装置4は、還元加熱によって脱塩素化処理を行うもので、図5に示すように、円筒状の加熱分解装置6と、オイルトラップユニット7とを具備している。
【0026】
加熱分解装置6は、空気及び窒素ガスを供給する通路を有しており、ほぼ中央の長手方向に回転軸8が回転自在に取り付けられている。そして、回転軸8には、複数のパドル翼9が取り付けられている。
【0027】
また、加熱分解装置6の外周部分には、ブロア20によって給送される燃焼ガスからなる熱媒を貯留する貯留部10が形成されている。加熱分解装置6とオイルトラップ7間には、熱交換器21が具備されている。
【0028】
さらに、オイルトラップユニット7には、スクラバー槽25と、活性炭カラム23とが具備されている。
【0029】
金属ナトリウム処理設備5には、図6に示すように、油水混合器24と、スクラバー槽25と、減圧蒸留槽26と、金属ナトリウム分散剤槽27と、水和槽28とが具備されている。
【0030】
油水混合器24は、前記逆浸透膜装置3からの濃縮水を洗浄油と混合させるためのものである。この油水混合器24は、配管に挿入し、配管内で濃縮水中のポリ塩化ビフェニルが油中に抽出されるように構成されたものである(スタティックミキサータイプ)。また、スクラバー槽25は、該油水混合器24で濃縮水側から洗浄油側に抽出されたポリ塩化ビフェニルを供給してさらに洗浄油と混合させるともに、前記還元加熱脱塩素化装置4からの排ガスを供給して洗浄油と混合させるためのものである。
【0031】
金属ナトリウム分散剤槽27は、金属ナトリウムの粉末を絶縁油に分散させたナトリウム分散剤を添加して、前記スクラバー槽25から供給される洗浄油中のポリ塩化ビフェニルを分解するためのもので、この金属ナトリウム分散剤槽27には、さらに反応促進物質である水やイソプロピルアルコール等が添加される。
【0032】
減圧蒸留槽26は、ポリ塩化ビフェニルを金属ナトリウムと反応させる前に、予め洗浄油中の水分を減圧蒸留で除去するためのもので、前記金属ナトリウム分散剤槽27の前段に設けられている。
【0033】
水和槽28は、前記金属ナトリウム分散剤槽27で消費されなかったナトリウム分散剤を水和させるためのもので、水和のための液としては、前記逆浸透膜装置3からの透過水が用いられる。
【0034】
本実施形態の汚染汚泥の浄化装置には、さらに活性炭フィルター29、凝集沈殿槽30が具備されている。
【0035】
活性炭フィルター29は、前記スクラバー槽25から排出される排ガスを通過させるためのもの、凝集沈殿槽30は、前記水和槽28からの排水中の重金属類を凝集沈殿させるためのものである。
【0036】
次に、上記のような浄化装置を用いて、有機ハロゲン化合物の一例としてのポリ塩化ビフェニル及び重金属類で汚染された汚泥を浄化する方法の実施形態について説明する。
【0037】
先ず、ポリ塩化ビフェニル及び重金属類を含有する汚染土壌を固液分離装置1へ供給し、その固液分離装置1で固形分と液分とに分離する。
【0038】
固液分離装置1で分離された液分(スラリー)は限外濾過膜装置2へ供給し、その限外濾過膜装置2で濾過された濾過水(透過水)は、さらに逆浸透膜装置3に供給される。一方、限外濾過膜装置2で分離された固形分(SS分)は、前記固液分離装置1へ返送される。
より具体的に説明すると、固液分離装置1で分離された液分(スラリー)は、入口部36から限外濾過膜装置2の内部に流入し、濾過水(透過水)は、透過水排出路39から外部に排出され、逆浸透膜装置3に供給され、固形分(SS分)を含んだ濃縮水は、濃縮水出口部37から排出されて固液分離装置1へ返送されるのである。
【0039】
この限外濾過膜装置2として、本実施形態では上記のような構造のものを用いたため、流路面積が大きいので閉塞しにくく、逆洗浄も可能であり、図7に示すように膜表面の堆積物を容易に除去することができる。また、原水性状に合わせて膜間流路の変更も可能であり、耐SS性に優れている。そして、SS分が除去されるので、大規模な沈殿や砂濾過等の前処理を必要とすることがない。
【0040】
次に、逆浸透膜装置3に供給された濾過水は、すでに限外濾過膜装置2で濾過されているので、ポリ塩化ビフェニル及び重金属類が残存している可能性が少ないが、仮に残存していたとしても、それらの残存するポリ塩化ビフェニル及び重金属類は逆浸透膜装置3で除去され、ポリ塩化ビフェニル及び重金属類が除去された脱塩水が系外に放流されることとなる。この脱塩水の一部は、金属ナトリウム処理設備5の水和槽28に供給される。
【0041】
この逆浸透膜装置3における逆浸透膜(平膜)は、浸透圧以上の圧力をかけると分子レベルで濾過できる半透膜で、上記ポリ塩化ビフェニルや重金属類は、この逆浸透膜装置3で好適に除去される。
【0042】
上述のように、逆浸透膜装置2は、円板状の逆浸透膜12が積層された構造で、該逆浸透膜12の表面とスペーサ13の間を原水が流れる時に圧力をかけると逆浸透膜12は水のみを透過して膜の内側に脱塩された処理水が溜まり、該処理水は装置本体11の中央部に縦設された処理水パイプ18を経て逆浸透膜装置2から処理水として排出される。
【0043】
一方、原水は逆浸透膜12とスペーサー13の間を通り濃縮水パイプ19を経て、逆浸透膜装置2から濃縮水として排出される。
【0044】
次に、固液分離装置1で分離された固形分は、還元加熱脱塩素化装置4に供給される。この還元加熱脱塩素化装置4では、ポリ塩化ビフェニルが分解されるとともに、重金属類は不溶化して溶出しない状態にして系外に排出される。
【0045】
より具体的に説明すると、固液分離装置1で分離された固形分は、還元加熱脱塩素化装置4の加熱分解装置6に供給され、またその加熱分解装置6には、空気及び窒素ガスも供給されて還元雰囲気で加熱処理される。
【0046】
加熱分解装置6内では、図5に示すように回転軸8が回転されることにより、その回転軸8に取り付けられた複数のパドル翼9で固形分が攪拌されることとなる。これにより、固形分中の相当量のポリ塩化ビフェニルは分解されることとなる。
【0047】
加熱分解装置6からの排ガスは、図5に示すようにオイルトラップユニット7へ供給され、そのオイルトラップユニット7のスクラバー槽25を経由した後、活性炭カラム23(活性炭フィルター29)を介して排出される。スクラバー槽25の機能については後述する。
【0048】
還元加熱脱塩素化装置4で排出される排ガス中にポリ塩化ビフェニルが含まれている場合には、次の金属ナトリウム処理設備5へ供給されて分解されることとなる。
【0049】
これをより具体的に説明すると、逆浸透膜装置3で分離除去されたポリ塩化ビフェニル,重金属類は、図1及び図6に示すように油水混合器24へ供給された後にスクラバー槽25へ供給される。
【0050】
油水混合器24では、水中に分散されていたポリ塩化ビフェニルは油中に抽出され、スクラバー槽25に貯留されていた洗浄油と混合される。洗浄油と混合されることで、ポリ塩化ビフェニルは洗浄油中に抽出されることとなる。この場合において、油水混合器24は、上述のように配管内で濃縮水中のポリ塩化ビフェニルが油中に抽出されるように構成されたスタティックミキサータイプのものであるため、抽出のための攪拌を行う必要がなく、油水分離を効果的に行うことができる。
【0051】
また、重金属類は、そのほとんどが前記逆浸透膜装置3からの濃縮水中に残留しているが、一部は洗浄油中に抽出されることとなる。
【0052】
一方、還元加熱脱塩素化装置4で排出される排ガス中に含まれていたポリ塩化ビフェニルは、図1及び図6に示すように直接スクラバー槽25に供給される。そして、濃縮水と同一槽内(スクラバー槽25内)でポリ塩化ビフェニルは洗浄油中に抽出される。
【0053】
スクラバー槽25内では、ポリ塩化ビフェニルの抽出と同時に、油水分離も行われる。そして、スクラバー槽25で重金属類は濃縮水中に含有されたままの状態であるが、ポリ塩化ビフェニルは濃縮水から除去されるので、その濃縮水が固液分離装置1に返送される。
【0054】
重金属類は固液分離装置1の脱水ケーキ中に含有されて還元加熱脱塩素化を経由して不溶化処理を行い、系外に排出される。
【0055】
次に、スクラバー槽25中の洗浄油は図1及び図6のように減圧蒸留槽26へ供給されるが、洗浄油中の水分は減圧蒸留槽26で蒸留されて除去されることとなる。これは、次工程での金属ナトリウムの消費量を減らすためであるとともに、洗浄油中に水分が多量が含有されていると、後に添加される金属ナトリウムが水分と反応して苛性ソーダになるおそれがあり、金属ナトリウムとポリ塩化ビフェニルとの反応に支障を生ずるおそれがあるため、減圧蒸留によって予め水分が除去されるのである。
【0056】
次に、減圧蒸留槽26で水分が除去された洗浄油は、図1及び図6に示すように金属ナトリウム分散剤槽27に供給され、その金属ナトリウム分散剤槽27中の金属ナトリウムによってポリ塩化ビフェニルが分解される。
【0057】
すなわち、金属ナトリウムの粉末を絶縁油中に分散させたナトリウム分散剤が金属ナトリウム分散剤槽27に添加され、そのナトリウム分散剤中の金属ナトリウムが洗浄油中のポリ塩化ビフェニルと反応し、ポリ塩化ビフェが脱塩素化されて分解されるのである。
【0058】
そして、金属ナトリウム分散剤槽27で消費されなかった過剰の金属ナトリウムは、図1及び図6のように水和槽28へ供給される。水和槽28へは前記逆浸透膜装置3で濾過した透過水が供給され、その脱塩水で前記未消費の金属ナトリウムが水和されることとなる。
【0059】
水和槽28の底部の水には重金属が残留するので、油水分離後に凝集沈殿槽30へ供給され、凝集沈殿によって固液分離されて回収される。
【0060】
固液分離後の液分は、限外濾過膜装置2へ返送される。
【0061】
一方、前記水和槽28で油水分離された洗浄油(再生油)は、前記スクラバー槽25へ返送される。
【0062】
上述のように、本実施形態においては、固液分離装置1で分離された液分が、限外濾過装置2及び逆浸透膜装置3へ供給されるので、逆浸透膜装置3からの脱塩水にはポリ塩化ビフェニルや重金属類が含有されていることがない。
【0063】
一方、固液分離装置1で分離された固形分は、還元加熱脱塩素化装置4へ供給されて、固形分中のポリ塩化ビフェニルが分解されることとなる。
【0064】
また分解されないポリ塩化ビフェニルは、還元加熱脱塩素化装置4から排出される排ガス中に含有された状態で、金属ナトリウム処理設備5へ供給され、分解処理される。
【0065】
さらに、重金属類は、還元加熱脱塩素化装置4で不溶化処理されるとともに、金属ナトリウム処理設備5でも凝集沈殿処理される。
【0066】
従って、本実施形態においては、処理対象となる汚染汚泥中のポリ塩化ビフェニルや重金属類は一切系外に排出されることがなく、またポリ塩化ビフェニルも完全に分解されることとなるのである。
【0067】
(実施形態2)
本実施形態では、図8に示すように、限外濾過膜装置2の後段側に逆浸透膜装置3が設けられておらず、この点で逆浸透膜装置3が設けられていた実施形態1と相違する。従って、本実施形態では限外濾過膜装置2で濾過された濾過水は、そのまま系外に排出され、その濾過水の一部は、水和槽28へ供給されることとなる。一方、限外濾過膜装置2で分離された固形分(SS分)は、実施形態1と同様に固液分離装置1へ返送されることとなる。
【0068】
本実施形態では、上述のように逆浸透膜装置3が設けられていないので、逆浸透膜装置3からの濃縮水を洗浄油と混合させるための油水混合器24も設けられていない。
【0069】
また、本実施形態では、スクラバー槽25中の洗浄油は、油水分離器42へ供給されて油水分離される。この点で、減圧蒸留される実施形態1の場合と相違している。従って、実施形態1のような凝縮器も設けられていない。
【0070】
本実施形態では、上述のように逆浸透膜装置3が設けられていないが、限外濾過膜装置2で分離された固形分(SS分)にポリ塩化ビフェニルや重金属類のほとんどが吸着され、それが固液分離装置1へ返送されるので、系外に排出される処理水、すなわち限外濾過膜装置2で濾過された濾過水中のポリ塩化ビフェニルや重金属類の含有量は、一般の排水の基準値以下に抑制することができるのである。
【0071】
逆浸透膜装置3が設けられていない点を除けば、本実施形態の汚染汚泥の浄化装置の構成は、実施形態1の汚染汚泥の浄化装置とほぼ同様である。
すなわち、本実施形態の汚染汚泥の浄化装置は、図8に示すように、固液分離装置1と、限外濾過膜装置2と、脱塩素化処理設備とを具備し、脱塩素化処理設備は、実施形態1と同様に還元加熱脱塩素化装置4と、金属ナトリウム処理設備5とからなる。
【0072】
固液分離装置1、限外濾過膜装置2、還元加熱脱塩素化装置4の構成は実施形態1と同じである。従って、本実施形態においても限外濾過膜装置2は図2及び図3に示すような構成からなり、還元加熱脱塩素化装置4は図5に示すような構成からなる。
【0073】
金属ナトリウム処理設備5の構成もほぼ同様であるが、上述のように油水混合器24や減圧蒸留槽26が設けられていない点で実施形態1と相違する。
【0074】
そして、本実施形態においても、先ずポリ塩化ビフェニル及び重金属類を含有する汚染土壌を固液分離装置1へ供給し、その固液分離装置1で固形分と液分とに分離され、固液分離装置1で分離された液分(スラリー)は限外濾過膜装置2へ供給される。
【0075】
限外濾過膜装置2で濾過された濾過水(透過水)は、そのまま系外へ排出され、また濾過水の一部は水和槽28へ供給されて、実施形態1で逆浸透膜装置3からの透過水が利用されていたのと同様に、金属ナトリウム分散剤槽27で消費されなかったナトリウム分散剤を水和するために用いられる。
【0076】
一方、限外濾過膜装置2で分離された固形分(SS分)は、実施形態1と同様に固液分離装置1へ返送される。
【0077】
固液分離装置1で分離された固形分は、実施形態1と同様に還元加熱脱塩素化装置4に供給され、ポリ塩化ビフェニルが分解されるとともに、重金属類は不溶化して溶出しない状態にして系外に排出される。
【0078】
還元加熱脱塩素化装置4における加熱分解装置6からの排ガスは、実施形態1と同様にオイルトラップユニット7のスクラバー槽25へ供給される。
従って、排ガス中に含まれていたポリ塩化ビフェニルは、スクラバー槽25内で洗浄油中に抽出される。この洗浄油は金属ナトリウム処理設備5へ供給される。従って、還元加熱脱塩素化装置4で排出される排ガス中にポリ塩化ビフェニルが含まれている場合には、この金属ナトリウム処理設備5で分解されることとなる。これらの点も実施形態1と同様である。
【0079】
本実施形態においても、固液分離装置1で分離された液分が、限外濾過装置2で濾過されるので、その濾過水にはポリ塩化ビフェニルや重金属類が含有されている可能性が少なく、また固液分離装置1で分離された固形分は、実施形態1と同様に還元加熱脱塩素化装置4へ供給されて、固形分中のポリ塩化ビフェニルが分解されることとなる。
【0080】
また分解されないポリ塩化ビフェニルは、実施形態1と同様に還元加熱脱塩素化装置4から排出される排ガス中に含有された状態で、金属ナトリウム処理設備5へ供給され、分解処理される。
【0081】
さらに、重金属類も、実施形態1と同様に還元加熱脱塩素化装置4で不溶化処理されるとともに、金属ナトリウム処理設備5でも凝集沈殿処理される。
【0082】
従って、本実施形態においても、実施形態1と同様に処理対象となる汚染汚泥中のポリ塩化ビフェニルや重金属類は一切系外に排出されることがなく、またポリ塩化ビフェニルも完全に分解されることとなるのである。
【0083】
一方、本実施形態では、上記実施形態1のように逆浸透膜装置3が設けられていないので、装置全体の構造が簡易化されるという利点がある。
【0084】
尚、上記実施形態1では、逆浸透膜装置3として円板状の多数の平膜を配設した逆浸透膜装置を使用したため、膜のファウリング等を好適に防止することができ、また前処理も省力できるという好ましい効果が得られたが、逆浸透膜装置3の種類は該実施形態1に限定されるものではない。
【0085】
また、上記実施形態1及び2では、限外濾過装置2として平膜を多数積層した構造のものを用いたため、上記のような好ましい効果得られたが、限外濾過装置の種類も該実施形態に限定されない。
【0086】
尚、膜分離装置の種類も上記実施形態のような限外濾過装置2に限定されるものではない。
【0087】
さらに、上記実施形態の金属ナトリウム処理設備5でポリ塩化ビフェニルの分解反応を行わせるものとして用いた金属ナトリウムは安価で一般的に入手し易い利点があるが、これに限らず、金属カリウム、金属ストロンチウム、金属リチウム或いはこれらの合金を用いることも可能である。つまりアルカリ金属を油等の分散媒に分散させた分散剤が用いられればよいのである。
【0088】
さらに、上記実施形態では、ポリ塩化ビフェニルを処理する場合について説明したが、処理すべき有機ハロゲン化合物の種類も、上記実施形態のポリ塩化ビフェニルに限定されるものではなく、たとえばダイオキシンのようなものであってもよい。
【0089】
また、コプラナーPCBやDDTやBHC等の農薬類であってもよい。
ここで、コプラナーPCBとは、PCBの異性体のうち、その化学構造でオルト位(2,2’,6及び6’) に置換塩素を持たないもの、1個或いは2個のみ持つ4塩化体以上の異性体の数種は共平板状(コプラナー)の構造を示すPCBで、一般のPCBに比べて強い毒性を有し、ダイオキシン類と類似した作用を示す。
【0090】
要は、処理すべき土壌に有機ハロゲン化合物が含有されていればよいのである。
【0091】
尚、本発明における汚染汚泥とは、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚泥状物質を広く含み、たとえば汚染土壌のようなものに本発明を適用することも可能である。
【0092】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離し、分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理するとともに、分離された液を膜分離装置で濾過するものであるため、膜分離装置からの濾過水には有機ハロゲン化合物や重金属類が含有されている可能性が非常に少なく、また固液分離装置で分離された固形分中の有機ハロゲン化合物は、脱ハロゲン化処理手段によって分解されることとなり、いずれにしても処理対象となる汚染汚泥中の有機ハロゲン化合物や重金属類はほとんど系外に排出されることがないという効果がある。
【0093】
特に、固形分離された固形分中の有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化処理を、還元雰囲気下で加熱して有機ハロゲン化合物を分解する場合には、
有機ハロゲン化合物の分解を完全に行うことができるという効果がある。
【0094】
さらに、還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する場合には、有機ハロゲン化合物の分解効果がさらに良好となる。
【0095】
さらに、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置を、逆浸透膜装置の前段側に設けた場合には、固液分離装置で分離された液に多く含まれているSS分を好適に除去することができ、沈殿槽や砂濾過等の前処理が不要になるという効果がある。
【0096】
さらに、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解した後、有機ハロゲン化合物と反応していないアルカリ金属を、膜分離装置で分離された透過水で水和する場合には、装置全体の系で生ずる透過水を用いるので、水和のための水を別途必要としないという効果がある。
【0097】
また、還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物を油水分離により油分側に抽出させるとともに、排ガス中の重金属類を水分側に抽出し、油水分離後の有機ハロゲン化合物を含有した油分を、アルカリ金属によって分解する工程へ供給するとともに、油水分離後の重金属類を含有した水分を固液分離工程へ返送する場合には、有機ハロゲン化合物と重金属類とをそれぞれ分離抽出して処理することができるという効果がある。
【0098】
さらに、有機ハロゲン化合物と反応していないアルカリ金属を膜分離装置で分離された透過水で水和した後の液を油水分離した後、水分側に残存する重金属類を凝集沈殿させ、その後、限外濾過膜装置へ返送する場合には、最終的に残存するおそれのある重金属類を好適に処理することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】一実施形態としての有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置の概略ブロック図。
【図2】浄化装置中の限外濾過膜装置の分解斜視図。
【図3】同限外濾過膜装置の断面図。
【図4】浄化装置中の逆浸透膜装置の半裁断面図。
【図5】浄化装置中の脱ハロゲン化処理設備の概略ブロック図。
【図6】浄化装置中の金属ナトリウム処理設備の概略ブロック図。
【図7】限外濾過膜装置の作用を示す概略説明図。
【図8】他の実施形態の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置の概略ブロック図。
【図9】従来の処理システムの概略ブロック図。
【図10】従来の処理システムの概略ブロック図。
【符号の説明】
1…固液分離装置     2…限外濾過装置
3…逆浸透膜装置     4…還元加熱脱塩素化装置
5…金属ナトリウム処理設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離し、分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理するとともに、分離された液を膜分離装置で濾過することを特徴とする有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項2】
膜分離装置で分離した固形分を、固液分離工程へ返送する請求項1記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項3】
固液分離された固形分中の有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン化処理が、前記固形分を還元雰囲気下で加熱して有機ハロゲン化合物を分解する処理である請求項1又は2記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項4】
還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物を、さらにアルカリ金属によって分解する請求項3記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項5】
有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解した後、有機ハロゲン化合物と反応していないアルカリ金属を、膜分離装置で濾過された濾過水で水和する請求項4記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項6】
還元雰囲気下での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物を油水分離により油分側に抽出させるとともに、排ガス中の重金属類を水分側に抽出し、油水分離後の有機ハロゲン化合物を含有した油分を、アルカリ金属によって分解する工程へ供給するとともに、油水分離後の重金属類を含有した水分を固液分離工程へ返送する請求項3乃至5のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項7】
膜分離装置が、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置(2) である請求項1乃至6のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項8】
膜分離装置で濾過した濾過水を、逆浸透膜装置(3) で濃縮水と透過水とに分離し、分離された濃縮水を脱ハロゲン化処理工程へ供給する請求項1乃至7のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項9】
逆浸透膜装置(3) で分離された濃縮水に油分を混合し、該濃縮水中の有機ハロゲン化合物を油分側に抽出させるとともに、濃縮水中の重金属類を水分側に残存させ、該油分と水分との混合液を油水分離し、油水分離後の有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する工程へ供給する請求項8記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化方法。
【請求項10】
有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥を固液分離する固液分離装置(1) と、該固液分離装置(1) で分離された液を濾過する膜分離装置と、前記固液分離装置(1) で分離された固形分中の有機ハロゲン化合物を脱ハロゲン化処理する脱ハロゲン化処理設備とを具備することを特徴とする有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項11】
膜分離装置が、多数の平膜が積層されて略封筒状に構成された膜モジュールを具備する限外濾過膜装置(2) である請求項10記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項12】
脱ハロゲン化処理設備が、固液分離装置(1) で分離された固形分を還元雰囲気下で加熱して固形分中の有機ハロゲン化合物を分解する還元加熱脱ハロゲン化装置(4) と、該還元加熱脱ハロゲン化装置(4) での加熱により分解することなく排ガス中に含有された有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する処理設備(5) とを具備したものである請求項10又は11記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項13】
還元加熱脱ハロゲン化装置(4) から発生する排ガス中の有機ハロゲン化合物を油分で抽出させるためのスクラバー槽(25)が、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する処理設備(5) の前段側に具備されている請求項12記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項14】
有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解した後、有機ハロゲン化合物と反応していないアルカリ金属を、膜分離装置で分離された透過水で水和するための水和槽(28)が、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する処理設備(5) の後段側に具備されている請求項12又は13記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項15】
膜分離装置で濾過した濾過水を、さらに濃縮水と透過水とに分離する逆浸透膜装置(3) が、前記膜分離装置の後段側に設けられている請求項10乃至14のいずれかに記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。
【請求項16】
逆浸透膜装置(3) で分離された濃縮水中の有機ハロゲン化合物を油分側に抽出させるとともに、濃縮水中の重金属類を水分側に残存させるべく、該濃縮水に油分を混合するための油水混合器(24)と、該油水混合器(24)で混合された油分と水分との混合液を油水分離するためのスクラバー槽(25)とが、有機ハロゲン化合物をアルカリ金属によって分解する処理設備の前段側に具備されている請求項15記載の有機ハロゲン化合物及び重金属類で汚染された汚染汚泥の浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2004−58052(P2004−58052A)
【公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−162627(P2003−162627)
【出願日】平成15年6月6日(2003.6.6)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】