説明

有機化合物の分解処理方法及びその装置

【課題】 溶融塩中で有機化合物を分解するための反応槽内で有機化合物を分解することにより分解率の向上を図ることができる有機化合物の分解処理方法及びその装置を提供する。
【解決手段】 有機化合物の分解処理方法は、反応槽2内の溶融塩中に有機化合物を投入して有機化合物を分解する分解工程と、分解工程おいて分解処理されない未分解ガスを含む気体を反応槽2内の溶融塩中に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるミスト発生工程と、反応槽2内に存在する気相部2aにおいて溶融塩のミストを浮遊させると共に気相部2aに設けられたじゃま板9にミストを付着させるミスト付着工程と、溶融塩のミストに有機化合物を接触させて有機化合物を分解するミストによる分解工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機系ハロゲン化合物、有機窒素化合物、有機イオウ化合物、有機リン化合物のような有機廃棄物、有害有機化合物を含む有機化合物の分解処理方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロン類、ダイオキシン類、PCB、BHC、DDT、有機窒素化合物、有機イオウ化合物及び有機リン化合物といった有害有機化合物は、難分解性であるために長期に亘って環境中に残留し、人体の健康被害、環境破壊を発生させ、社会問題となっている。
【0003】
このような有害有機化合物を分解・無害化するための方法としては、例えば以下のようなものが知られている。
【0004】
第一は、有害有機化合物を十分な酸素雰囲気の下で1200℃程度以上の非常な高温下で燃焼して二酸化炭素、水及び水素化合物にまで完全に分解する方法(焼却法)が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
第二の方法は、無酸素又は酸素不足の雰囲気中で、有害有機化合物を前述の焼却処理法の場合と同程度又はやや低い温度にまで加熱することにより分解を行う方法である(熱分解法)が知られている(例えば、特許文献3〜5参照)。この場合の分解物は、炭素及び水素等の無機化合物、又は元の化合物の基本骨格(ダイオキシン類の場合で言えばベンゼン環)までも分解した非常に簡単な構造の有機化合物(メタン類)になる。
【0006】
第三の方法は、化学反応によって有機化合物のハロゲン原子を水素原子等で置換することにより、ハロゲンを全く含まない無害な有機化合物に変換する方法(化学的分解法)が知られている(例えば、特許文献6、7参照)。
【0007】
第四の方法は、ある種の微生物に有害有機塩素化合物を取り込ませて、体内で分解(代謝)させることで、産物である二酸化炭素、水及び塩化水素に変える方法(微生物分解法)が知られている(例えば、特許文献8参照)。
【0008】
第五の方法は、温度380℃以上、圧力22MPa以上の超臨界水を用いて有害有機化合物を二酸化炭素と水、ハロゲン化水素酸などにまで分解する技術(超臨界水法)が知られている(例えば、特許文献9参照)。
【0009】

しかし、上述の従来技術においては、それぞれ以下のような難点がある。
【0010】
第一の焼却法においては、非常に高い燃焼温度の維持のために多量のエネルギーが必要であると共に、その過程でもし温度が下がると猛毒のダイオキシン類を副生する。また、水銀、鉛、カドミウム等の低沸点の有害重金属は、相当量が揮発して排ガス中に移行する。さらに、高温のハロゲン化水素ガスによって焼却炉の炉壁材質が腐食する。
【0011】
第二の熱分解法においては、多量のエネルギーが必要なこと、ダイオキシン生成の危険性、水銀、鉛、カドミウム等の排ガス中への移行、ハロゲン化水素ガスによる焼却炉の炉壁材質の腐食の問題があり、上述の焼却法の場合と変りない。その上、分解生成ガスを二次燃焼させる設備が必要であり、装置構成が非常に大規模となる。
【0012】
第三の化学的分解法においては、ナノグラム(ng)乃至ピコグラム(pg)レベルでも有害である化合物について、このようなng乃至pgレベルといった少ない残留レベルの到達まで分解することは不可能である。
【0013】
第四の微生物分解法においては、比較的低濃度で存在している場合には有効であるが、高濃度の試料や大量の試料の処理を行うには適さない。また、ある特定の有害有機化合物の分解には好適な微生物が存在しても、あらゆる種類の有害有機化合物に対して有効な微生物はないのでこの方法には一般性がない。
【0014】
さらに、第五の超臨界水酸化法の場合においては、水を超臨界状態にするのに多量のエネルギーを必要とすることに加えて、超高圧下で分解を行うことによる危険性がある。また、特に有害有機化合物が有害有機ハロゲン化合物である場合は、分解で生成したハロゲン化水素酸を含む高温高圧の水溶液は非常に強い腐食作用を有しているので、装置に用いることのできる材質は非常に強い耐食性を持つ特殊な材料で、高価なものに限定される。
【0015】
このため、これらの前述の技術の難点を解決すべく、溶融塩中に有機化合物を投入して有機化合物を分解する技術が知られている(例えば、特許文献10、11参照)。
【0016】
また、ガス状の有機化合物をノズルを用いて気泡として溶融塩中に供給し、この気泡を溶融塩中で上昇させながら、有機化合物のガスと溶融塩の気液接触面で分解反応を発生させる技術が知られている(例えば、特許文献10参照)。
【特許文献1】特公昭64−8242号公報
【特許文献2】特開平02−241586号公報
【特許文献3】特公平02−5100号公報
【特許文献4】特開平5−168728号公報
【特許文献5】特開平8−141547号公報
【特許文献6】特開昭49−13155号公報
【特許文献7】特開昭51−26852号公報
【特許文献8】特開昭64−68281号公報
【特許文献9】特開平09−327678号公報
【特許文献10】特開2000−42365号公報
【特許文献11】特開2001−70470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような溶融塩を用いた有機化合物の分解に際しては、溶融塩へガスを吹き込むことによって生じる気泡の大小が有機化合物の分解率に大きな影響を与える。すなわち、気泡と溶融塩との接触面積及び気泡の溶融塩中を上昇する際の接触時間により有機化合物の分解率が決定されるからである。このため、溶融塩中における気泡の小径化及び接触時間の増加のために、溶融塩の貯溜容器内における深さを深くしなければならいという課題があった。
【0018】
また、溶融塩中の分解有機化合物成分が所定量に達した時点で、使用済溶融塩の全量を装置から排出し、新溶融塩に取り替える必要がある。この溶融塩の取り替えのために、その間に装置を停止しなければならないという課題があった。
【0019】
本発明は、溶融塩中で有機化合物を分解するための反応槽内で有機化合物を分解する分解率の向上を図り、溶融塩の取替時間を短縮させることにより分解処理時間の低減を図ることができる有機化合物の分解処理方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するため、本発明の有機化合物の分解処理方法においては、反応槽内の溶融塩中に有機化合物を投入して有機化合物を分解する分解工程と、この分解工程おいて分解処理されない未分解ガスを含む気体を前記反応槽内の溶融塩中に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるミスト発生工程と、前記反応槽内に存在する気相部において前記溶融塩のミストを浮遊させると共に前記気相部に設けられたじゃま板に前記ミストを付着させるミスト付着工程と、前記溶融塩のミストに有機化合物を接触させて有機化合物を分解するミストによる分解工程と、を有することを特徴とするものである。
【0021】
また、上記目的を達成するため、本発明の有機化合物の分解処理装置においては、原料塩が投入され加熱されて溶融塩を形成する原料塩溶融槽と、この溶融塩を移送する原料塩移送配管と、有機化合物を流入する有機化合物流入管と、前記溶融塩中に前記有機化合物を投入して有機化合物を分解する反応槽と、前記反応槽において分解処理されない未分解ガスを含む気体を蓄圧する蓄圧タンクと、この蓄圧タンク内に蓄圧された未分解ガスを含む気体を反応槽内の溶融塩に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるミスト発生管と、前記反応槽内の気相部に設けられ前記溶融塩のミストを付着させるじゃま板と、前記反応槽の下部に沈澱した使用済塩が排出され貯溜される使用済塩受け容器と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、溶融塩中で有機化合物を分解するための反応槽の気相部で有機化合物を分解することにより有機化合物の分解率の向上を図り、さらに、原料溶融塩溶解槽を設けて連続的な分解を可能とすることにより溶融塩の取替時間を短縮して有機化合物の分解処理時間の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る有機化合物の分解処理方法及びその装置の実施の形態について、図1乃至図7を参照して説明する。ここで、互いに同一又は類似の部分には共通の符号を付すことにより、重複説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施の形態の有機ハロゲン廃棄物の分解処理装置の構成を示す構成図である。
【0025】
図1に示すように、溶融塩と有機化合物とが反応する反応槽2が設けられている。この反応槽2の側面に原料塩移送配管21が配設され、この原料塩移送配管21の他端は原料塩溶融槽19に連結されている。また、反応層2の下部にはドレン配管4が配設される。このドレン配管4の下流には、ドレン弁5を介して使用済塩受容器7が設置されている。
【0026】
反応槽2、原料塩移送配管21、原料塩溶融槽19、ドレン配管4、ドレン弁5の周囲には、それぞれ反応槽ヒータ3、原料塩移送配管ヒータ22、原料塩溶融槽ヒータ20、ドレン配管ヒータ6が設置されている。
【0027】
処理される有機化合物(ガス状の場合)が封入されている処理対象ガスボンベ1は、処理ガス流入管8を介して反応槽2に接続される。この処理ガス流入管8は、さらに反応槽2の内部に延長されている。この反応槽2内の処理ガス流入管8の内部には入口じゃま板9が設置され、処理ガス流入管8の外部には出口じゃま板10(図2も参照)が設置される。
【0028】
また、反応槽2の気相部2aには、凝縮器12が配管を介して接続されている。この凝縮器12の下流側にはセパレータ13、コンプレッサ14、分解生成ガス除去装置15が順次接続され、さらに蓄圧タンク16が設置されている。コンプレッサ14には、圧力調整弁17が閉ループを形成して設けられている。
【0029】
また、この蓄圧タンク16は、流量調整弁18を介して有機化合物流入管である処理ガス流入管8及びミスト発生管である溶融塩飛散用散気管11へ接続されている。
【0030】
さらに、N流入管23は蓄圧タンク16に接続され、N流入管24は原料塩溶融槽19に接続されている。
【0031】
図2は、図1の反応槽2の内部を透視して示す概略斜視図で、(a)は入口じゃま板を示す斜視図、(b)は出口じゃま板を示す斜視図である。
【0032】
図2(a)、(b)に示すように、この反応槽2内の処理ガス流入管8の内部には入口じゃま板9が設置され、処理ガス流入管8の外部には出口じゃま板10が設置される。この入口じゃま板9及び出口じゃま板10は、矩形の板より形成され、ミストの流れに沿って放射状に処理ガス流入管8に固定されている。また、この入口じゃま板9及び出口じゃま板10の一方が取り付けられてもよく又は両方を取り付けてもよい。
【0033】
このように構成された有機化合物の分解処理装置において、溶融塩は、まず原料塩溶融槽19に固体状の原料塩が投入される。この原料塩は、原料塩溶融槽ヒータ20で加熱しながら溶融塩状態とされる。
【0034】
次に、N流入管24からNで原料塩溶融槽19に圧力をかける。この溶融塩を、エアリフトの効果により、原料塩移送配管ヒータ22で加熱された原料塩移送配管21を介して、反応槽ヒータ3で加熱している反応槽2に移送する。
【0035】
処理対象ガスは、処理対象ガスボンベ1より処理ガス流入管8を介して供給され、処理ガス流入管8の内部に設けた入口じゃま板9を経由して、溶融塩2bを内包した反応槽2の中へ吹き込まれ分解処理される。
【0036】
未分解ガスを含んだ気体は、処理ガス流入管8の外部に設けた出口じゃま板10を通り反応槽2上部の気相部2aから排出され、凝縮器12で蒸気が凝縮され、セパレータ13で水分が分離され、コンプレッサ14で蓄圧タンク16に蓄圧される。コンプレッサ14による過吸引等による系統内の圧力変動は、コンプレッサ14に設けた圧力調整弁17にて制御することにより、一定値に制御される。
【0037】
蓄圧タンク16の圧力が所定の値に達すると、未分解ガスを含んだ気体は、流量調整弁18により一定流量に制御されながら循環ラインに吐出される。溶融塩飛散用散気管11より反応槽2内の溶融塩2bに吹き込み処理が行われる。Nガスバブリング管40により溶融塩2b内で気泡を発生させ、処理ガス流入管8の内部に設けた入口じゃま板9及び外部に設けた出口じゃま板10に溶融塩のミストを吹き付けるとともに付着させて入口じゃま板9及び出口じゃま板10を濡らす。この分解処理にて副生ガスが生成される場合は、分解生成ガス除去装置15にて系統内から分離除去を行う。
【0038】
一定量の分解処理が終了したら、処理ガス流入管8からの反応槽2へのガスの吹込みを続けたまま、溶融塩飛散用散気管11からの未分解ガスを含んだ気体の供給を停止する。反応槽2の下部に沈殿した分解処理によって発生した副次生成物を含む使用済塩の上方に、使用済塩と同量の新しい溶融塩を原料塩溶融槽19より反応槽2へ移送する。その後、反応槽2の下部にある使用済塩を使用済塩受容器7にドレンした後、溶融塩飛散用散気管11からの未分解ガスを含んだ気体の供給を再開し、処理対象ガスの分解を継続する。
【0039】
本実施の形態によれば、溶融塩飛散用散気管11に接続されたNガスバブリング管40により溶融塩2b内で気泡を発生させ、反応槽2の気相部2aに設置する入口じゃま板9及び出口じゃま板10に溶融塩2bの飛沫を浮遊させると共に構造物に付着させることにより、気相部2bにおいて有機化合物の分解を効率的に行うことができる。
【0040】
また、気相部が一定圧になるように、コンプレッサ14及び圧力調整弁17にて圧力変化を調整すること及び分解生成ガス除去装置15による生成ガスを選択的に除去することにより、形成された閉ループにおいて未分解ガスを含む気体を無排気状態にて完全分解することができる。さらに、反応槽2の溶融塩2bのうち、新しい溶融塩を原料塩溶融槽19より移送した後に、同量の下部に沈殿した副次生成物及び使用済塩をドレンすることにより、分解工程を停止することなしに連続して分解処理を行うことができる。
【0041】
なお、入口じゃま板9及び出口じゃま板10の変形例として、図3に短管状入口じゃま板25、短管状出口じゃま板26を示す。この短管状入口じゃま板25及び短管状出口じゃま板26は、短管を複数本束ねて構成され、ミストの流れに沿って処理ガス流入管8に固定されている。
【0042】
また、図4に格子状入口じゃま板27、格子状出口じゃま板28を示す。この格子状入口じゃま板27及び格子状出口じゃま板28は、ミストの流れに沿って処理ガス流入管8の内外に格子状を形成して固定されている。
【0043】
図5は、本発明の第2の実施の形態の有機ハロゲン廃棄物の分解処理装置の構成を示す構成図である。
【0044】
図5に示すように、溶融塩と有機化合物が反応する反応槽2の外側に原料塩循環配管31が設けられ、この下端と上端が溶融塩移送ポンプ32を介して接続されている。この原料塩循環配管31の下端近くには、原料塩移送配管21を介して原料塩溶融槽19が接続されている。
【0045】
上述の原料塩循環配管31、溶融塩移送ポンプ32の外周には、それぞれ溶融塩循環配管ヒータ33、溶融塩移送ポンプヒータ35が設置されている。
【0046】
処理される有機化合物(ガス状の場合)が封入される処理対象ガスボンベ1は、処理ガス流入管8を介して反応槽2に接続される。反応槽2の内部にはらせん状じゃま板30を設置し、反応槽2の中央部に処理ガス出口管29を配置する。
【0047】
未分解ガスを含んだ気体は、処理ガス出口管29を通って、反応槽2上部の気相部2aから排出される。この気体は、凝縮器12で蒸気が凝縮され、セパレータ13で水分が分離され、コンプレッサ14で蓄圧タンク16に蓄圧される。
【0048】
図6に示すとおり、反応槽2内には連続状態のらせん状じゃま板30が設けられている。このらせん状じゃま板30の上方には、溶融塩循環配管31が配設され、処理ガス流入管8が設けられている。また、中央部には処理ガス出口管29が配置されている。
【0049】
このように構成された有機化合物の分解処理装置においては、溶融塩は、まず原料塩溶融槽19に固体状の原料塩が投入され、原料塩溶融槽ヒータ20で加熱されて溶融塩状態となる。
【0050】
次に溶融塩移送ポンプヒータ35で加熱された溶融塩移送ポンプ32を使用して、溶融塩を原料塩溶融槽19から、溶融塩循環配管ヒータ33で加熱された溶融塩循環配管31を介して、反応槽ヒータ3で加熱した反応槽2に移送する。
【0051】
この移送された溶融塩は、反応槽2内のらせん状じゃま板30の上面を流下しながら反応槽2の下部へ貯溜される。反応槽2の下部に溜まった溶融塩は、溶融塩移送ポンプ32により溶融塩循環配管31を介して反応槽2上部へ戻される。
【0052】
処理対象ガスは、処理対象ガスボンベ1より処理ガス流入管8に導入され、反応槽2の内部に設置し溶融塩を付着したらせん状じゃま板30を経由して反応槽2の下部へ導かれる。
【0053】
未分解ガスを含んだ気体は、処理ガス出口管29を通り反応槽2上部から排出される。この気体は、凝縮器12で蒸気が凝縮され、セパレータ13で水分が分離され、コンプレッサ14により蓄圧タンク16に蓄圧される。
【0054】
蓄圧タンク16が一定圧力に達すると、未分解ガスを含んだ気体は、流量調整弁18により一定流量に制御された状態で循環ラインに排出され、再度、処理ガス流入管8を経由して反応槽2へ戻される。
【0055】
一定量の分解処理が終了した後に、反応槽2の下部に沈殿し、分解処理によって発生した副次生成物を含む使用済塩は、使用済塩受け容器7に排出される。また、この排出した量と同量の新しい溶融塩を原料塩溶融槽19から反応槽2へ移送する。
【0056】
本実施の形態によれば、溶融塩がらせん状じゃま板30の広範囲にわたって流下することにより処理ガスとの接触面積を増加させ気相部での有機化合物の分解を効率的に行うことができる。
【0057】
また、気相部が一定値になるように、コンプレッサ14及び圧力調整弁17にて圧力変化を調整すること及び分解生成ガス除去装置15により生成ガスを選択的に除去することにより、閉ループに形成された系統において未分解ガスを含む気体を無排気状態で完全分解することができる。
【0058】
さらに、反応槽2の溶融塩のうち、一定の処理を終了した使用済塩を排出しながら、排出したものと同量の新しい溶融塩を原料塩溶融槽19より供給することにより、分解処理運転を停止することなく連続運転中に新しい溶融塩との入れ替えを行うことができる。
【0059】
図7は、本発明の第3の実施の形態の有機ハロゲン廃棄物の分解処理装置の構成を示す構成図である。
【0060】
図7に示すように、溶融塩と有機化合物が反応する反応槽2の上部に原料塩循環配管31が設けられる。この原料塩循環配管31の他端には原料塩溶融槽19が設置される。
【0061】
処理される有機化合物(ガス状の場合)が封入される処理対象ガスボンベ1は、処理ガス流入管8を介して反応槽2に接続される。反応槽2の内部にはらせん状じゃま板30が設けられ、反応槽2の中央部には処理ガス出口管29が設置されている。
【0062】
このように構成された有機化合物の分解処理装置においては、溶融塩は、まず原料塩溶融槽19に固体状の原料塩が投入され、原料塩溶融槽ヒータ20で加熱し溶融塩状態とされる。
【0063】
次にN流入管24からNで原料塩溶融槽19に圧力を加えることにより、溶融塩は、溶融塩循環配管ヒータ33で加熱された溶融塩循環配管31を通って反応槽ヒータ3で加熱した反応槽2に移送される。
【0064】
移送された溶融塩は、らせん状じゃま板30の上面を流下しながら反応槽2下部へ貯溜される。反応槽2の下部に溜まった溶融塩2bは、ドレン配管4及び溶融塩循環配管31を介して、N
流入管34より加圧されたNガスによるエアリフト効果を利用して反応槽2上部へ戻される。
【0065】
処理対象ガスは、処理対象ガスボンベ1より処理ガス流入管8に導入され、反応槽2の内部に設置し溶融塩が付着したらせん状じゃま板30を通って反応槽2の下部へ流下される。
【0066】
未分解ガスを含んだ気体は、処理ガス出口管29を通り反応槽2上部から、凝縮器12で蒸気が凝縮され、セパレータ13で水分が分離され、コンプレッサ14で蓄圧タンク16に蓄圧される。
【0067】
蓄圧タンク16が一定圧力に達したときに、未分解ガスを含んだ気体は流量調整弁18により一定流量に制御されて循環ラインに吐出され、再度処理ガス流入管8より反応槽2へ戻される。
【0068】
この分解処理にて副生ガスが生成される場合は、この副生ガスは分解生成ガス除去装置15にて系統内から分離除去を行う。
【0069】
一定量の分解処理が終了したら、反応槽2下部に沈殿した分解処理によって発生する副次生成物を含む使用済塩を使用済塩受け容器7にドレンしつつ、ドレンした量と同量の溶融塩を原料塩溶融槽19より反応槽2へ移送する。
【0070】
本実施の形態によれば、らせん状じゃま板30を溶融塩が広範囲に流下することにより処理ガスとの接触面積を増加させ気相部での有機化合物の分解を効率的に行うことができる。
【0071】
また、気相部が一定圧になるように、コンプレッサ14及び圧力調整弁17にて圧力変化を調整すること及び分解生成ガス除去装置15により生成ガスを選択的に除去することにより、閉ループを形成した処理系統において未分解ガスを含む気体を無排気状態にて完全分解することができる。
【0072】
さらに、反応槽2の溶融塩のうち、一定の処理を終了した使用済塩をドレンしながら、ドレンしたのと同量の新しい溶融塩を原料塩溶融槽19より移送することにより、分解処理運転を停止することなく連続運転中に新しい溶融塩の入れ替えを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施の形態の有機化合物の分解処理装置の構成を示す構成図。
【図2】図1の反応槽の一例を切断して示す概略透視斜視図で、(a)は入口じゃま板を示す斜視図、(b)は出口じゃま板を示す斜視図。
【図3】図1の反応槽の他の例を切断して示す概略透視斜視図で、(a)は短管状入口じゃま板を示す斜視図、(b)は短管状出口じゃま板を示す斜視図。
【図4】図1の反応槽の他の例を切断して示す概略透視斜視図で、(a)は格子状入口じゃま板を示す斜視図、(b)は格子状出口じゃま板を示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施の形態の有機化合物の分解処理装置の構成を示す構成図。
【図6】図5の反応槽を切断して示す透視斜視図。
【図7】本発明の第3の実施の形態の有機化合物の分解処理装置の構成を示す構成図。
【符号の説明】
【0074】
1…処理対象ガスボンベ、2…反応槽、3…反応槽ヒータ、4…ドレン配管、5…ドレン弁、6…ドレン配管ヒータ、7…使用済塩受け容器、8…処理ガス流入管、9…入口じゃま板、10…出口じゃま板、11…溶融塩飛散用散気管、12…凝縮器、13…セパレータ、14…コンプレッサ、15…分解生成ガス除去装置、16…蓄圧タンク、17…圧力調整弁、18…流量調整弁、19…原料塩溶融槽、20…原料塩溶融槽ヒータ、21…原料塩移送配管、22…原料塩移送配管ヒータ、23…N注入管、24…N注入管、25…短管状入口じゃま板、26…短管状出口じゃま板、27…格子状入口じゃま板、28…格子状出口じゃま板、29…処理ガス出口管、30…らせん状じゃま板、31…溶融塩循環配管、32…溶融塩移送ポンプ、33…溶融塩循環配管ヒータ、34…N注入管、35…溶融塩移送ポンプヒータ、40…Nガスバブリング管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽内の溶融塩中に有機化合物を投入して有機化合物を分解する分解工程と、
この分解工程おいて分解処理されない未分解ガスを含む気体を前記反応槽内の溶融塩中に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるミスト発生工程と、
前記反応槽内に存在する気相部において前記溶融塩のミストを浮遊させると共に前記気相部に設けられたじゃま板に前記ミストを付着させるミスト付着工程と、
前記溶融塩のミストに有機化合物を接触させて有機化合物を分解するミストによる分解工程と、
を有することを特徴とする有機化合物の分解処理方法。
【請求項2】
前記ミスト発生工程は、窒素ガスを前記反応槽内の溶融塩中に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるものであること、を特徴とする請求項1記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項3】
前記ミスト発生工程は、前記反応槽内の溶融塩中に設けられたバブリング管の複数のノズルを介して気体を吹き込んで溶融塩のミストを発生させるものであること、を特徴とする請求項1又は2記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項4】
前記ミスト付着工程は、前記ミストを前記気相部に設けられたじゃま板に付着させるものであること、を特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項5】
前記ミストによる分解工程は、前記反応槽内に設けた螺旋状じゃま板の上方から下方に溶融塩を流下させ、さらにこの流下した溶融塩を循環ポンプにより循環配管を介して下方から上方に供給して、溶融塩を連続的に循環させるものであること、を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項6】
前記ミストによる分解工程は、前記反応槽内に設けた螺旋状じゃま板の上方から下方に溶融塩を流下させ、さらにこの流下した溶融塩を加圧された窒素ガスにより循環配管を介して下方から上方に供給して、溶融塩を連続的に循環させるものであること、を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項7】
前記ミストによる分解工程は、原料塩が投入され加熱されて溶融塩を形成する原料塩溶融槽より新たな溶融塩を反応槽に供給し、反応槽の下部に沈澱した使用済塩を使用済塩受け容器に排出し貯溜することにより、溶融塩を連続的に循環するものであること、を特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の有機化合物の分解処理方法。
【請求項8】
原料塩が投入され加熱されて溶融塩を形成する原料塩溶融槽と、
この溶融塩を移送する原料塩移送配管と、
有機化合物を流入する有機化合物流入管と、
前記溶融塩中に前記有機化合物を投入して有機化合物を分解する反応槽と、
前記反応槽において分解処理されない未分解ガスを含む気体を蓄圧する蓄圧タンクと、
この蓄圧タンク内に蓄圧された未分解ガスを含む気体を反応槽内の溶融塩に吹き込んで溶融塩のミストを発生させるミスト発生管と、
前記反応槽内の気相部に設けられ前記溶融塩のミストを付着させるじゃま板と、
前記反応槽の下部に沈澱した使用済塩が排出され貯溜される使用済塩受け容器と、
を有することを特徴とする有機化合物の分解処理装置。
【請求項9】
前記反応槽の外側に、前記反応槽下部の溶融塩を反応槽上部に移送する溶融塩循環配管が設けられていること、を特徴とする請求項8記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項10】
前記じゃま板は、前記有機化合物流入管の内側及び外側の少なくとも一方の気相部に設けること、を特徴とする請求項8又は9記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項11】
前記じゃま板は、前記有機化合物流入管の下流側の気相部に設けること、を特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項12】
前記じゃま板は、前記ミストの流れに沿って多数の面を有する板を具備すること、を特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項13】
前記じゃま板は、両端を開放した短管を複数本束ねて構成すること、を特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項14】
前記じゃま板は、矩形の板を格子状に組み合わせて構成すること、を特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の有機化合物の分解処理装置。
【請求項15】
前記じゃま板は、前記気相部の上方から下方まで連続した螺旋構造とすること、を特徴とする請求項8乃至14のいずれかに記載の有機化合物の分解処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−136621(P2006−136621A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−330641(P2004−330641)
【出願日】平成16年11月15日(2004.11.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390014568)東芝プラントシステム株式会社 (273)
【Fターム(参考)】