説明

有機化合物

本発明は、式(I)で表され、式中Rは、メチル、エチルまたはビニルであり;C−3’とC−4’ との間の結合は、単結合であるか、または点線は、C−3’とC−4’との間の結合と共に二重結合を表し;また側鎖−CROHは、環の1’または4’位にある化合物に関する。本発明はさらに、それらの調製およびそれらを含むフレグランス利用品に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチョリ様の匂いノートを有する新規な化合物に関する。本発明はさらに、それらの製造方法およびそれらを含むフレグランス利用品に関する。
【背景技術】
【0002】
パチョリ様の匂いノートを有する化合物は、文献中に記載されており、それらは、例えば、エッセンシャルオイル中に天然に存在し、植物または植物の部分の水蒸気蒸留によって単離することができるセスキテルペンの群である。このプロセスは極めて多大なコストがかかり、単離された化合物の品質および匂いならびにフレーバー特徴は、気候および植物の起源によって変化し得る。さらに、パチョリエッセンシャルオイルの約35〜40重量%を構成するパチュロールは、天然材料の価格と競争することができる合成方法を可能にするには構造的に複雑すぎる。
【0003】
したがって、フレグランスおよびフレーバー産業において、パチョリ様の匂いノートを付与、増強または改善する新規な化合物について継続している要求がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らはここで、大いに求められているパチョリ様の匂いノートを有する新規な数種の化合物を見出した。
【0005】
したがって、本発明は、その局面の1つにおいて、式(I)
【化1】

式中、
は、メチル、エチルまたはビニルであり;
C−3’とC−4’ との間の結合は、単結合であるか、または点線は、C−3’とC−4’との間の結合と共に二重結合を表し;また
側鎖−CROHは、環の1’または4’位にある、
で表される化合物のフレーバーまたはフレグランスとしての使用に関する。
【0006】
式(I)で表される化合物は、いくつかのキラル中心を含み得、したがって立体異性体の混合物として存在し得るか、またはそれらを、異性体的に純粋な形態として分割してもよい。立体異性体を分割することにより、これらの化合物の製造および精製の複雑さが増大し、したがって単に経済理由のために、当該化合物をそれらの立体異性体の混合物として用いるのが好ましい。しかし、個々の立体異性体を調製するのが所望される場合には、これを、当該分野において知られている方法、例えば分取HPLCおよびGC、結晶化によって、またはキラルな出発物質から出発し、例えば鏡像異性的に純粋であるかもしくは豊富化された原料、例えばテルペノイドから出発し、かつ/または立体選択的合成を適用することによって達成することができる。
【0007】
特に好ましくは、
(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノール、
(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エニル)プロパ−2−エン−1−オール、
1−(2’,3’,3’−トリメチルシクロペンタ−1’−エニル)エタノール、
(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)エタノール、
(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)プロパ−2−エン−1−オールおよび
1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)プロパン−1−オールから選択された、式(I)で表される化合物またはこれらの混合物のフレーバーまたはフレグランスとしての使用である。
【0008】
本発明の化合物を、単独で、または現在入手できる広範囲の天然および合成の分子、例えばエッセンシャルオイルおよびエキス、アルコール、アルデヒドおよびケトン、エーテルおよびアセタール、エステルおよびラクトン、大員環および複素環から選択される既知のフレグランスと組み合わせて用いてもよい。
【0009】
他の態様において、式(I)で表される化合物を、当該分野において一般的に用いられる、フレグランス利用品においてフレグランスと共に慣用的に用いられている1種または2種以上の成分または賦形剤、例えば担体材料および他の補助剤、例えば溶媒(例えばジプロピレングリコール(DPG)、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)、クエン酸トリエチル(TEC)およびアルコール(例えばエタノール))と混合してもよい。
【0010】
以下のリストは、本発明の化合物と組み合わせてもよい既知のフレグランスの例を含む:
・エッセンシャルオイルおよびエキス、例えばオークモスアブソリュート、バジル油、トロピカルフルーツ油、例えばベルガモット油およびマンダリン油、マスチックアブソリュート、ギンバイカ油、パルマローザ油、パチョリ油、プチグレン油、ヨモギ油、ラベンダー油、バラ油、ジャスミン油、イランイラン油およびビャクダン油。
【0011】
・アルコール、例えばシス−3−ヘキセノール、ケイ皮アルコール、シトロネロール、Ebanol(登録商標)(3−メチル−5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−4−ペンテン−2−オール)、オイゲノール、ファルネソール、ゲラニオール、メントール、ネロール、ロジノール、Super Muguet(登録商標)(6−エチル−3−メチル−6−オクテン−1−オール)、リナロール、フェニルエチルアルコール、Sandalore(登録商標)(5−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテニル)−3−メチルペンタン−2−オール)、テルピネオールまたはTimberol(登録商標)(1−(2,2,6−トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン−3−オール)。
【0012】
・アルデヒドおよびケトン、例えばシトラール、ヒドロキシシトロネラール、Lilial(登録商標)(3−(4−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパナール)、メチルノニルアセトアルデヒド、アニスアルデヒド、アリルイオノン、ベルベノン、ヌートカトン、ゲラニルアセトン、α−アミルケイ皮アルデヒド、Georgywood(登録商標)(1−(1,2,8,8−テトラメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン−2−イル)エタノン)、ヒドロキシシトロネラール、Iso E Super(登録商標)(1−(2,3,8,8−テトラメチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン−2−イル)エタノン)、Isoraldeine(登録商標)(4−(2,6,6−トリメチル−2−シクロヘキセニル)−3−メチル−3−ブテン−2−オン)、Hedione(登録商標)((3−オキソ−2−ペンチルシクロペンチル)酢酸メチル)、マルトール、メチルセドリルケトンおよびバニリン。
【0013】
・エーテルおよびアセタール、例えばAmbrox(登録商標)(3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン)、ゲラニルメチルエーテル、ローズオキシドまたはSpirambrene(2,2,3’,7’,7’−ペンタメチルスピロ(1,3−ジオキサン−5,2’−ノルカラン))。
【0014】
・エステルおよびラクトン、例えば酢酸ベンジル、酢酸セドリル、γ−デカラクトン、Helvetolide(登録商標)(プロパン酸2−[1−(3,3−ジメチルシクロヘキシル)エトキシ]−2−メチルプロパン−1−オール)、γ−ウンデカラクトン、酢酸ベチベニル、プロピオン酸シンナミル、酢酸シトロネリル、酢酸デシル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、アセト酢酸エチル、アセチル酢酸エチル、イソ酪酸シス−3−ヘキセニル、酢酸リナリルおよび酢酸ゲラニル。
【0015】
・大員環、例えばAmbrettolide、エチレンブラシレートまたはExaltolide(登録商標)(オキサシクロヘキサデカン−2−オン)。
・複素環、例えばイソブチルキノリン。
【0016】
本発明の化合物を、芳香が付与された広範囲の利用品、例えばすべての分野の上質の、および機能的な香料、例えば香水、家庭用品、ランドリー製品、ボディケア用品および化粧品において用いることができる。
【0017】
式(I)で表される化合物を、具体的な用途およびフレグランスに対して意図する組成物または用途の性質、例えば共成分(co-ingredient)の性質および量、ならびに香料業者が求める個々の効果に依存して、広範囲に変化する量で用いることができる。一般的に、当該比率は、典型的には利用品の0.001〜20重量%である。1つの態様において、本発明の化合物を、布地柔軟剤において0.001〜0.05重量%の量で用いてもよい。他の態様において、本発明の化合物を、アルコール溶液中で0.1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の量で用いてもよい。しかし、経験のある香料業者がまた、より低いかまたはより高い濃度、例えば組成物を基準として約50重量%までで、効果を達成し得、または新規な調和を創出し得るため、これらの値を、例によってのみ示す。
【0018】
消費者製品ベース中に式(I)で表される化合物、その混合物またはそれを含むフレグランス組成物を混合することによって、本発明の化合物が、消費者製品ベース中に用られてもよく、かつ/またはそれらを、前段階において捕獲材料、例えばポリマー、カプセル、マイクロカプセルおよびナノカプセル、リポソーム、被膜形成剤、吸収剤、例えば炭素もしくはゼオライト、環状オリゴ糖およびそれらの混合物で捕獲してもよく、かつ/またはそれらを、それらが基質と共に前駆体を生成し、それらが外部の刺激、例えば光、酵素などを適用することにより式(I)で表される化合物を放出し、それから消費者製品ベースと混合するように、基質に化学的に結合させてもよい。
【0019】
本発明はさらに、フレグランス利用品を製造する方法であって、化合物を消費者製品ベースに混合することによって、または次に消費者製品ベースに慣用の手法および方法を用いて混合され得る式(I)で表される化合物もしくはその前駆体を含む組成物を混合することによって、式(I)で表される化合物をフレグランス成分として包含させることを含む、前記方法を提供する。感覚刺激的に許容し得る量の式(I)で表される化合物またはその混合物を加えることにより、消費者製品ベースの感覚刺激特性は、改善され、増強され、または修正される。
【0020】
本発明はさらに、消費者製品ベースを改善、増強または修正する方法であって、式(I)で表される化合物またはその混合物の嗅覚的に許容し得る量をそれに加えることによる、前記方法を提供する。
本発明はまた、以下のもの:
a)フレグランスとしての式(I)で表される化合物またはその混合物;および
b)消費者製品ベース
を含むフレグランス利用品を提供する。
【0021】
本明細書中で用いる「消費者製品ベース」は、特定の作用、例えばクリーニング、柔軟化およびケアすることなどを果たすための消費者製品として使用するための、処方物を意味する。そのような製品の例には、上質の香料類、例えば香水およびオードトワレ;布地ケア、家庭用品およびパーソナルケア用品、例えばランドリーケア洗剤、リンスコンディショナー、パーソナルクレンジング製品、食器洗い機用洗剤、表面清浄剤;ランドリー製品、例えば柔軟剤、漂白剤、洗剤;ボディケア用品、例えばシャンプー、シャワージェル;エアーケア用品および化粧品、例えばデオドラントおよびバニシングクリームが含まれる。製品のこのリストは、例示により示したものであり、いかなる方法によっても限定的であると見なすべきではない。
【0022】
本発明者らの知る限りにおいて、式(I)の定義の範囲内にある化合物の大部分は、文献中に記載されておらず、したがって独自に新規である。
【0023】
したがって、本発明は、他の局面において式(I)
【化2】

式中、
は、メチル、エチルまたはビニルであり;
C−3’とC−4’ との間の結合は、単結合であるか、または点線は、C−3’とC−4’との間の結合と共に二重結合を表し;また
側鎖−CROHは、環の1’または4’位にある、
で表され、ただし1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)エタノールを除く、化合物に関する。
【0024】
1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)エタノールは、2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エンカルバルデヒド誘導体を製造するための中間体生成物として、WO2008/046239に開示されている。
【0025】
本発明の化合物は、カンホリティック(campholytic)アルデヒド((S)−(+) カンホリティックアルデヒドまたは(R)−(−)−カンホリティックアルデヒド)から開始して調製されうる。1’位における置換の場合において、それらを、ハロゲン化メチル、エチルまたはビニルマグネシウムとのグリニヤール反応によって直接調製してもよい。4’位における置換を有する対応する生成物は、カンホリティックアルデヒドから、2,3,3−トリメチルシクロペンタ−1−エンカルバルデヒドを与える酸で媒介される転位、およびハロゲン化メチル、エチルまたはビニルマグネシウムとのその後のグリニヤール反応によって入手可能である。飽和した類似体を得るためには、当業者によく知られているように、C−3’=C−4’二重結合を、例えば炭素上のパラジウム触媒の下で水素添加する。
【0026】
ここで、組成物および方法を、以下の非限定的例を参照してさらに説明する。
これらの例は説明のみを目的としており、変更および修正が本発明の範囲を逸脱せずに当業者によってなされ得ることが理解される。記載した態様は選択的であるのみならず、組み合わせることもできることを理解するべきである。NMRデータを、内部のSiMe標準と相対させて示す。
【0027】
例1:(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノール(約20%ee)
室温にて、塩化メチルマグネシウム(66.0mL、198mmol)をTHFに溶解した3M溶液を、(S)−カンホリティックアルデヒド[(S)−2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エンカルバルデヒド、約20%ee)をTHF(260mL)に溶解した撹拌した溶液に45分間滴加し、それにより、反応混合物の温度は50℃に上昇した。3時間還流させた後に、加熱源を取り外し、反応混合物を放冷した。氷水浴で冷却することによって0〜11℃の間で、飽和水性塩化アンモニウム溶液(55mL)を撹拌しながら滴加し、続いて水(200mL)を滴加した。生成物を、エーテル(2×500mL)で抽出し、混ぜ合わせたエーテル抽出物を、水(500mL)およびブライン(250mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒をロータリーエバポレーターによって除去した後に、粗生成物(18.8g)を、フラッシュクロマトグラフィー(560g;シリカゲル、ペンタン/エーテル、4:1、R=0.40)によって精製して、(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノールを約20%eeで匂いを有する無色の液体として得た。
【0028】
匂いの説明:典型的な清浄なパチョリの香り、ウッディー−樟脳様−土様(earthy)、これと共にわずかにスパイシーなアクセントおよびフルーティー−グリーン(green)の様相、ならびにボルネオールを幾分想起させる。
【化3】

【0029】
例2:(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エニル)プロパ−2−エン−1−オール
臭化ビニル(110g、1mol)を1LのTHFに溶解した溶液を、マグネシウム粉末(turning)(24.6g、1mol)を300mLのTHFに懸濁させた懸濁液中に、0.5時間以内に加える(反応の開始を、約0.1gのヨウ素を加え、加熱することによって容易にする)。得られた混合物を、60℃に1時間加熱し、次に0℃に冷却する。カンホリティックアルデヒド(100g、0.72mol、20.6%ee(S))を100mLのTHFに溶解した他の溶液を、上記の溶液中に、混合物の温度を20℃より低温に保持するのを可能にする速度で滴加する。得られた混合物を、室温にて1時間撹拌し、次に氷冷2M HClで反応停止する。水層をMTBEで抽出し、混ぜ合わせた有機層をMgSOで乾燥し、次に蒸発させ、所望のアルコールを黄色液体として得る(121g、収率99%、純度93%)。この物質を、50℃/0.08Torr(0.107mbar)にて蒸留により精製して、(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エニル)プロパ−2−エン−1−オールを匂いを有する無色の液体として得る(約20%ee)。
【0030】
匂いの説明:パチョリ、スパイシー、アニス様(anisic)、バジアン(badiane)、直線的(linear);乾いて沈んだ(dry down):樟脳様、ウッディー、パチョリ、アニス様、ブラックリコリス、ケイ皮様、土様、蜂蜜。
【化4】

【0031】
例3:1−(2’,3’,3’−トリメチルシクロペンタ−1’−エニル)エタノール
100mlの2つ口丸底フラスコに、カンホリティックアルデヒド(10g、0.072mol)をシクロヘキサン(30ml)に溶解した溶液を入れ、Amberlyst 15(12g)を加える。窒素の雰囲気下で、磁気的に撹拌した混合物を、18時間加熱還流する。次に、混合物を放冷し、酸性樹脂を濾別し、濾液を減圧下において濃くして(reduced)、茶色の粘性のある油を得る。この粗生成物を、バルブツーバルブ(bulb-to-bulb)蒸留(70℃、0.08Torr)によって精製して、不純物のない中間体2,3,3−トリメチルシクロペンタ−1−エンカルバルデヒドを与える。これを、例1において概説した手順に従って所望の1−(2’,3’,3’−トリメチルシクロペンタ−1’−エニル)エタノールに変換し、匂いを有する無色の液体として単離する。
【0032】
匂いの説明:ハッカ様、田舎風(agrestic)、パチョリ、わずかに清涼(cooling)、幾分スパイシー;乾いて沈んだ:フレッシュ、樟脳様、パチョリ、土様。
【化5】

【0033】
例4:(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)エタノール(約20%ee)
2,2,3−トリメチルシクロペンタンカルバルデヒドを、α−カンホリティックアルデヒドから以下のようにして直接調製した:α−カンホリティックアルデヒド(5g、36mmol、20.6%ee(S))をn−ブタノール/酢酸エチル(1:1、36mL)に溶解した溶液に、木炭上のパラジウム(5%、0.3g)を加える。混合物を、水素の雰囲気(バルーンを取り付けた)下で18時間磁気的に撹拌し、その後、GCモニタリングにより反応が実質的に完了したことが示された。混合物を、セライトの栓を通して濾過し、濾液を減圧下において濃くして(reduced)、所望の2,2,3−トリメチルシクロペンタンカルバルデヒドを匂いを有する無色の液体(5.1g、定量的収率、純度>95%)として得る。この物質を、例1に記載した手順において直接用い、(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)エタノール(約20%ee)が、匂いを有する無色の液体(70℃/0.2Torr(0.266mbar)にて蒸留によって精製した)として、4種のジアステレオ異性体の複合混合物として得られた。
【0034】
匂いの説明:マツ様(piney)、フルーティー、田舎風(ボルネオール)、ウッディー、パチョリ(しかしあまり土様でない)、幾分スパイシー、樹脂様(resinous)(シュプラウス(sprouce))。
【化6】

【0035】
例5:(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)プロパ−2−エン−1−オール
例2に記載した手順に従って、(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)プロパ−2−エン−1−オールを、臭化ビニルマグネシウムを用いて2,2,3−トリメチルシクロペンタンカルバルデヒドから開始して調製し、匂いを有する無色の液体(83℃/0.2Torr(0.266mbar)にて蒸留によって精製した)として、4種のジアステレオ異性体の複合混合物として得た。
【0036】
匂いの説明:フルーティー、金属様(metallic)、ウッディー、田舎風、パチョリ、調理された野菜。
【化7】

【0037】
例6:1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)プロパン−1−オール
α−カンホリティックアルデヒド(10g、72mmol、20.6%ee(R))を11mLのTHFに溶解した溶液を、臭化エチルマグネシウム(40mL、87mmol、THFに溶解し、2.2M)の冷却された、機械的に撹拌された溶液中に、混合物の温度を−10℃〜0℃に保持するのを可能にする速度にて滴加する(約20分)。得られた溶液を2時間撹拌し、この間温度は0℃まで温まることができる。得られた不均質混合物を、100mLの2M HClで反応停止する。水層をMTBEで抽出し、混ぜ合わせた有機層をMgSOで乾燥し、次に蒸発させ、11.9gの黄色液体を得る(収率98%)。この物質を、蒸留またはクロマトグラフィーによって精製することができるが、次の段階においては直接用いた。
【0038】
匂いの説明:極めて自然、田舎風、パチョリ、幾分土様/コケ様(mossy)、フルーティー(酢酸フェンキルタイプ)、わずかにグリーン。
【化8】

【0039】
例6:シャワージェルのためのフジェール(Fougere)芳香性グリーン−フルーティー組成物
【表1】

【0040】
スペアミントの葉の効果およびリンゴの方向におけるフルーティーグリーンの香りを有するこのフジェールフレグランスは、グリーン−芳香性のフレッシュさをシャワージェル処方物に提供し、それは、(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノールのパチョリ特性によって大幅に増強される。この新規な匂い物質(odorants)の導入により、そのパチョリノートを有するフレグランスを支配することなく、組成物のフレッシュ−芳香性の主題を増強する自然な樹脂様−ウッディー、バルサム様特性が、もたらされる。(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノールもまた、新規なユーカリおよびスペアミント効果を強調するが、最も重要なことにそれは、オークモス取り込まずにフジェール主題を構成することを供与する。理想的に芳香性、ハーブ様、グリーン−フルーティーの主題の大部分を形成するそのわずかにスパイシーなアクセントおよびフルーティー−グリーンの様相を有する(+)−(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノールのウッディー−樟脳様−土様のパチョリの香りがなければ、当該フレグランスは、もはやフジェールとして認識可能ではなく、それに加えてそれは平坦であり、カビ臭い様相を呈する。
【0041】
例7:男性用オーデコロンのためのフジェール芳香性ラベンダー組成物
【表2】

【0042】
この組成物は、真の自然なラベンダーの効果に対する特定の強調を伴うフレッシュなコロン特性を提示する。ラベンダーは、豊富なウッディー、琥珀様(ambery)およびパウダリー背景とブレンドされ、一方核心は、水っぽい暗示的意味を有する柔らかなフローラルである。(+)−(1RS,1’S)−1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)プロパ−2−エン−1−オール(約20%ee、例2)を加えることにより、田舎風パチョリ特性が組成物にもたらされる。それはまた、さわやかであり自然な感覚を増強し、同時に気分の高揚およびフレッシュさを改善する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

式中、
は、メチル、エチルまたはビニルであり;
C−3’とC−4’ との間の結合は、単結合であるか、または点線は、C−3’とC−4’との間の結合と共に二重結合を表し;また
側鎖−CROHは、環の1’または4’位にある、
で表され;ただし1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)エタノールを除く、化合物。
【請求項2】
(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エニル)プロパ−2−エン−1−オール、1−(2’,3’,3’−トリメチルシクロペンタ−1’−エニル)エタノール、(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)エタノール、(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)プロパ−2−エン−1−オールおよび1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)プロパン−1−オールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(I)
【化2】

式中、
は、メチル、エチルまたはビニルであり;
C−3’とC−4’ との間の結合は、単結合であるか、または点線は、C−3’とC−4’との間の結合と共に二重結合を表し;また
側鎖−CROHは、環の1’または4’位にある、
で表される化合物の、フレーバーまたはフレグランスとしての使用。
【請求項4】
式(I)で表される化合物が、
(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エン−1’−イル)エタノール、
(1RS,1’S)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンタ−3’−エニル)プロパ−2−エン−1−オール、
1−(2’,3’,3’−トリメチルシクロペンタ−1’−エニル)エタノール、
(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)エタノール、
(+)−(1RS,1’S,3’RS)−1−(2’,2’,3’−トリメチルシクロペンチル)プロパ−2−エン−1−オールおよび
1−(2,2,3−トリメチルシクロペンタ−3−エニル)プロパン−1−オール;またはこれらの混合物から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
フレグランス利用品を改善、増強または修正する方法であって、請求項3において定義した式(I)で表される化合物またはその混合物の嗅覚的に許容し得る量をそれに加えることによる、前記方法。
【請求項6】
匂い物質としての請求項3において定義した式(I)で表される化合物またはその混合物;および消費者製品ベースを含む、フレグランス利用品。
【請求項7】
消費者製品ベースが上質のフレグランス、家庭用品、ランドリー製品、ボディケア用品、化粧品およびエアーケア用品から選択される、請求項6に記載のフレグランス利用品。

【公表番号】特表2011−511813(P2011−511813A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546195(P2010−546195)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【国際出願番号】PCT/CH2009/000054
【国際公開番号】WO2009/100555
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】