説明

有機半導体の堆積のための混合溶媒系

溶媒混合物に溶解した有機半導体を含む組成物が記述される。より具体的には、この溶媒混合物は、9〜16個の炭素原子を有するアルカンを1〜20重量パーセント量、及び芳香族化合物を80〜99重量パーセント量、含む。この半導体材料は、組成物の合計重量に対し、少なくとも0.1重量パーセント、この溶媒混合物に溶解している。この組成物を使用して半導体層を形成する、半導体デバイスの製造方法も記述される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は米国特許仮出願番号第61/060595号(2008年6月11日提出)に対する優先権を主張し、その全体が参考として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体産業においては無機材料が優位を占めてきた。例えば、ヒ化ケイ素及びヒ化ガリウムは半導体材料として使用されており、二酸化ケイ素は誘電性材料として使用されており、アルミニウム及び銅のような金属は電極材料として使用されている。しかしながら、近年、伝統的な無機材料よりも有機材料を半導体デバイスにおいて使用することを目的とした研究努力が高まってきている。他の利点の中でも、有機材料は、電気装置の製造コストを下げることを可能にし、大面積適用を可能にし、かつ、ディスプレイバックプレーン、集積回路RFIDタグ、及びセンサーなどの電子回路の支持体として可撓性の基材の使用を可能にする。
【0003】
様々な有機半導体材料が検討されており、最も一般的なのはアセン類に代表される縮合芳香族環化合物である。これらの有機半導体材料の少なくとも幾つかは、電荷キャリア移動度、オン/オフ電流比、及びサブ閾値電圧などの性能特性を有し、それらはアモルファスシリコン系デバイスと同等であるかあるいはそれより優れている。典型的にはこれらの材料は、多くの有機溶媒に対してあまり溶解度が高くないため、蒸着されている。有機半導体が溶液(例えば有機溶媒中に溶解した有機半導体溶液など)から堆積されると、良好又は最適な性能特性は達成が難しくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば薄膜トランジスタなどの半導体デバイスの作製に使用するための、有機溶媒に溶ける有機半導体材料を含む組成物のニーズが存在する。既知の組成物及び作製方法の使用では通常達成されないような性能特性(例えば高い飽和電界効果移動度(μ)など)を有する半導体デバイスを提供するための、そのような組成物のニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第一の態様では、(a)溶媒混合物と(b)その溶媒混合物に溶解する有機半導体材料とを含む組成物が提供される。この溶媒混合物には、(i)溶媒混合物の重量に対して1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカン、及び(ii)溶媒混合物の重量に対して80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する、式(I)の芳香族化合物、が含まれる。
【0006】
【化1】

【0007】
式(I)で、基Rはアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環である。各基Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択される。変数nは0〜5の範囲の整数である。溶媒混合物に溶解している有機半導体材料の量は、組成物の合計重量に対し、少なくとも0.1重量パーセントに等しい。
【0008】
第二の態様では、(a)溶媒混合物と(b)その溶媒混合物に溶解する有機半導体材料とを含む組成物が提供される。この溶媒混合物には、(i)溶媒混合物の重量に対して1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカン、及び(ii)溶媒混合物の重量に対して80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する、式(I)の芳香族化合物、が含まれる。
【0009】
【化2】

【0010】
式(I)で、基Rはアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環である。各基Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択される。変数nは0〜5の範囲の整数である。半導体材料は式(II)で表わされる。
【0011】
【化3】

【0012】
式(II)において、各Rは独立に、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、フェロセニル、又は式−Si(Rのシリル基から選択される。各Rは独立に、水素、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アルキニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、又はアセチルから選択される。アルキル又はヘテロアルキルの好適な置換基には、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基(すなわち−COOH)が挙げられる。アルケニル又はアルキニルの好適な置換基には、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基が挙げられる。アリール及びヘテロアリールの好適な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基が挙げられる。各Xは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、シアノ、又はヘテロアリールから選択される。溶媒混合物に溶解している有機半導体材料の量は、組成物の合計重量に対し、少なくとも0.1重量パーセントに等しい。
【0013】
第3の態様では、半導体デバイスの製造方法が提供されている。この方法には、(a)溶媒混合物と(b)その溶媒混合物に溶解する有機半導体材料とを含む組成物を提供することが含まれる。この溶媒混合物には、(i)溶媒混合物の重量に対して1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカン、及び(ii)溶媒混合物の重量に対して80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する、式(I)の芳香族化合物、が含まれる。
【0014】
【化4】

【0015】
式(I)で、基Rはアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合した環である。各基Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択される。変数nは0〜5の範囲の整数である。溶媒混合物に溶解している有機半導体材料の量は、組成物の合計重量に対し、少なくとも0.1重量パーセントに等しい。この方法には更に、1つの導電性材料に隣接して、又は1つの絶縁材料に隣接して、この組成物を堆積させることにより、堆積層を形成し、この堆積層から溶媒混合物の少なくとも80重量パーセントを除去することによって半導体層を形成することが含まれる。
【0016】
添付の図面と共に以下の本発明の様々な実施形態の詳細な説明を検討することで、本発明はより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この半導体組成物を使用するための代表的な印刷パターンを示す図。
【図2】溶媒としてアニソールだけを含む半導体組成物を使用して形成した半導体堆積物の光学顕微鏡写真。
【図3】溶媒としてアニソールとデカンの混合物を含む半導体組成物を使用して形成した半導体堆積物の光学顕微鏡写真。
【0018】
本発明は種々の修正及び代替の形態に容易に応じるが、その細部は一例として図面に示されており、また詳しく説明することにする。しかしながら、その意図は、記載された特定の実施形態に本発明を限定することにないことを理解するべきである。逆に、本発明は、本発明の趣旨及び範囲内に含まれる、すべての修正、等価な形態、及び代替形態を対象とすることを意図する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本出願の幾つかの箇所で、実施例の一覧として説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。それぞれの事例において、列挙される一覧は代表的な群としてのみ与えられるのであって、限定的な一覧として解釈されるべきではない。
【0020】
端点による数の範囲の任意の列挙には、その範囲内に包含されるすべての数が含まれる(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)。
【0021】
用語「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は交換可能に使用される。したがって、例えば、式Iの「1つの(a)」化合物は、式Iの「1つ以上の(one or more)」化合物を意味すると解釈することができる。
【0022】
本明細書で記述される組成物は、コストのかかる蒸着技法ではなく、印刷又はコーティング技法を用いて半導体層を形成するのに使用することができる。幾つかの組成物について、溶液又は分散液からの半導体堆積が知られているが、結果として得られる半導体層の多くは不均一になる傾向がある。例えば、インクジェット印刷を使用して、有機溶媒に溶解した有機半導体溶液を基材に送達し、蒸発によってその溶媒を除去した場合、半導体材料の濃度は、堆積の周辺部近くで最高になる傾向がある。より均一な半導体層が必要とされている。本明細書で開示される組成物は、これまでに半導体層を形成するのに使用されてきたものよりもいっそう均一な半導体層をしばしば形成することができる。より具体的には、本明細書で開示される組成物は、薄膜トランジスタの電界効果移動度などのより良い電気的特性を得ることができる結晶質モルホロジーを備えた半導体堆積をもたらす傾向にある。
【0023】
(a)溶媒混合物、及び(b)その溶媒混合物に溶解した有機半導体、を含む組成物が提供される。この溶媒混合物は(i)6〜16個の炭素原子を有するアルカン、及び(ii)式(I)の芳香族化合物を含む。
【0024】
【化5】

【0025】
式(I)で、基Rはアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環である。各基Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択される。変数nは0〜5の範囲の整数である。溶媒混合物は、1つを超えるアルカン、1つを超える式(I)の芳香族化合物、又は、1つ以上のアルカン並びに1つ以上の式(I)の芳香族化合物を含み得る。
【0026】
式(I)の幾つかの実施形態では、Rは炭素原子を少なくとも1つ有するアルキル基である。このアルキル基は、多くの場合、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。このアルキル基はしばしば、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、又は6個以下の炭素原子を有する。例えば、このアルキル基は、1〜10個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、3〜10個の炭素原子、4〜10個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、3〜6個の炭素原子、3〜5個の炭素原子、又は4個の炭素原子を有し得る。このアルキル基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。このアルキル基の非限定的な例には、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、2−ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロヘキシルメチレンが挙げられる。
【0027】
式(I)の別の実施形態では、Rは少なくとも2個の炭素原子を有するヘテロアルキル基である。このヘテロアルキル基は2つの炭素原子の間に少なくとも1つのヘテロ原子を有し、このヘテロ原子は、オキシ(−O−)、チオ(−S−)、又は−NH−基から選択される。多くの実施形態では、このヘテロ原子はオキシ基である(すなわち、ヘテロアルキル基はエーテル基又はポリエーテル基である)。このヘテロアルキル基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。このヘテロアルキル基はしばしば、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。このヘテロアルキル基はしばしば、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、又は6個以下の炭素原子、かつ、6個以下のヘテロ原子、5個以下のヘテロ原子、又は4個以下のヘテロ原子を有する。例えば、このヘテロアルキル基は、2〜10個の炭素原子と1〜5個のヘテロ原子、3〜10個の炭素原子と1〜5個のヘテロ原子、4〜10個の炭素原子と1〜5個のヘテロ原子、2〜8個の炭素原子と1〜4個のヘテロ原子、2〜6個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、3〜6個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、3〜5個の炭素原子と1〜2個のヘテロ原子、又は4個の炭素原子と1〜2個のヘテロ原子を有し得る。このヘテロアルキル基の非限定的な例には、メトキシメチレン(CHOCH−)、エトキシメチレン(CHCHOCH−)、メトキシエチレン(CHOCHCH−)、及びエトキシエチレン(CHCHOCHCH−)が挙げられる。
【0028】
式(I)の更に他の実施形態では、Rは少なくとも1個の炭素原子を有するアルコキシ基(すなわち、式−ORの基(Rはアルキル))である。例えば、このアルコキシ基は、少なくとも2個の炭素原子、少なくとも3個の炭素原子、又は少なくとも4個の炭素原子を有する。このアルコキシ基はしばしば、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、又は6個以下の炭素原子を有する。例えば、このアルコキシ基は、1〜10個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有し得る。このアルコキシ基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。具体的なアルコキシ基には、メトキシ(CHO−)、エトキシ(CHCHO−)、n−プロポキシ(CHCHCHO−)、イソプロポキシ((CHCHO−)、n−ブトキシ(CHCHCHCHO−)、イソブトキシ((CHCHCHO−)、tert−ブトキシ((CHCO−)、sec−ブトキシ(CHCHCH(CH)O−)、n−ペントキシ(CHCHCHCHCHO−)、n−ヘキソキシ(CHCHCHCHCHCHO−)、イソペントキシ((CHCHCHCHO−)、シクロヘキソキシ(C11O−)、及びシクロヘキシルメチレンオキシ(C11−CHO)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0029】
更に別の実施形態では、Rはヘテロアルコキシ基(すなわち、式−ORの基(Rはアルキル))である。ヘテロアルコキシ基は、2つの炭素原子の間に少なくとも1つのヘテロ原子を有する。このヘテロ原子は、オキシ基、チオ基、又は−NH−基であり得る。多くの実施形態では、このヘテロ原子は1つのオキシ基である。このヘテロアルコキシ基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。このヘテロアルコキシ基は少なくとも2個の炭素原子を有する。このヘテロアルコキシ基は、多くの場合、少なくとも3個の炭素原子、少なくとも4個の炭素原子、又は少なくとも5個の炭素原子を有する。幾つかのヘテロアルコキシ基は、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、又は6個以下の炭素原子を有する。より具体的には、このヘテロアルコキシ基は2〜10個の炭素原子と2〜5個のヘテロ原子、2〜8個の炭素原子と2〜4個のヘテロ原子、2〜6個の炭素原子と2〜3個のヘテロ原子、又は3〜6個の炭素原子と2〜3個のヘテロ原子を有し得る。非限定的なヘテロアルコキシ基の例には、(CHOCHO−)、(CHCHOCHO−)、(CHOCHCHO−)、及び(CHCHOCHCHO−)が挙げられる。
【0030】
更に別の実施形態では、Rは5〜6員の縮合環である。すなわち、Rは式(I)のベンゼン環に縮合した環である。縮合環は炭素環であり得、又は、オキシ、チオ若しくは−NH−基から選択されるヘテロ原子を含み得る。この環構造は飽和又は不飽和であり得る。縮合環構造を備えた代表的な芳香族化合物には、ベンゾフラン、2,3−ジヒドロベンゾフラン、及びテトラヒドロナフタレンが挙げられるがこれらに限定されない。
【0031】
式(I)において、nは0〜5の整数である。幾つかの実施形態では、nはゼロである。nがゼロより大きい場合、Rは、ハロ基(例えばクロロ、ブロモ、フルオロ、若しくはヨード)、アルキル、又はアルコキシから独立に選択される。Rの好適なアルキル基は、しばしば1〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルキル基には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、及びイソブチルが挙げられる。Rの好適なアルコキシ基は、しばしば1〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、及びtert−ブトキシが挙げられる。
【0032】
式(I)の幾つかの実施形態では、Rはメトキシ基であり、各Rは独立に、ハロ基、メチル基、又はメトキシ基であり、変数nは0、1、又は2である。幾つかの実施形態では、式(I)の芳香族化合物は、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、3,5−ジメチルアニソール、2−クロロアニソール、3−クロロアニソール、4−クロロアニソール、及び1,2−ジメトキシベンゼンから選択される。幾つかの特定の実施形態では、式(I)の芳香族化合物はアニソールである。別の具体的な実施形態では、式(I)の芳香族化合物は3,5−ジメチルアニソールである。
【0033】
式(I)の別の実施形態では、Rはアルキル基であり、変数nは0、1、又は2であり、各Rは独立にハロ基、メチル基、又はメトキシ基である。例えば、式(I)の化合物は、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、イソプロピルトルエン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)、及びメシチレンから選択される。幾つかの特定の実施形態では、式(I)の芳香族化合物はn−ブチルベンゼンである。
【0034】
式(I)の芳香族化合物に加え、この溶媒混合物には少なくとも1つのアルカンが含まれる。幾つかの溶媒混合物には、1つを超えるアルカンが含まれる。このアルカンは、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。好適なアルカンはしばしば、6〜16個の炭素原子を有する。このアルカンは、多くの場合、少なくとも8個の炭素原子、少なくとも9個の炭素原子、又は少なくとも10個の炭素原子を有する。このアルカンはしばしば、14個以下の炭素原子、又は12個以下の炭素原子を有する。幾つかの実施形態では、このアルカンは6〜14個の炭素原子、8〜14個の炭素原子、10〜14個の炭素原子、9〜13個の炭素原子、8〜12個の炭素原子、又は10〜12個の炭素原子を有する。非限定的なアルカンの例には、オクタン、イソ−オクタン、シクロオクタン、ノナン、2−メチルオクタン、3−メチルオクタン、デカン、2−メチルノナン、3−メチルノナン、4−メチルノナン、ウンデカン、2−メチルデカン、4−メチルデカン、5−メチルデカン、ドデカン、2−メチルウンデカン、トリデカン、3−メチルドデカン、テトラデカン、ペンタデカン、及びヘキサデカンが挙げられる。幾つかの実施形態では、このアルカンにはデカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
幾つかの代表的な溶媒混合物では、式(I)の芳香族化合物はアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物から選択され、アルカンはデカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物から選択される。幾つかのより具体的な溶媒混合物には、アニソールとデカン、3,5−ジメチルアニソールとドデカン、n−ブチルベンゼンとデカン、n−ブチルベンゼンとウンデカン、並びにn−ブチルベンゼンとドデカンが挙げられる。
【0036】
この溶媒混合物は典型的に、溶媒混合物の重量に対し、6〜16個の炭素原子を有するアルカンが1〜20重量パーセント、式(I)の芳香族化合物が80〜99重量パーセントを含む。例えば、この溶媒混合物は、アルカン1〜15重量パーセントと式(I)の芳香族化合物85〜99重量パーセント、アルカン1〜12重量パーセントと式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセント、アルカン2〜10重量パーセントと式(I)の芳香族化合物90〜98重量パーセント、アルカン3〜10重量パーセントと式(I)の芳香族化合物90〜97重量パーセント、アルカン4〜10重量パーセントと式(I)の芳香族化合物90〜96重量パーセント、又はアルカン4〜8重量パーセントと式(I)の芳香族化合物92〜96重量パーセントを含み得る。
【0037】
幾つかの代表的な溶媒混合物には、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物1〜12重量パーセントと、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、若しくはそれらの混合物88〜99パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物2〜10パーセントとアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、若しくはそれらの混合物90〜98重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物3〜10重量パーセントとアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、若しくはそれらの混合物90〜97重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜10重量パーセントとアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、若しくはそれらの混合物90〜96重量パーセント、又は、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜8重量パーセントとアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン92〜96重量パーセントが含まれる。
【0038】
幾つかの具体的な代表的溶媒混合物には、溶媒混合物の重量に対し、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物1〜12重量パーセントとn−ブチルベンゼン88〜99重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物3〜12重量パーセントとn−ブチルベンゼン88〜97重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物3〜10重量パーセントとn−ブチルベンゼン90〜97重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜10重量パーセントとn−ブチルベンゼン90〜96重量パーセント、又は、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜8重量パーセントとn−ブチルベンゼン92〜96重量パーセントが含まれる。
【0039】
他の更に具体的な代表的溶媒混合物には、溶媒混合物の重量に対し、デカン1〜12重量パーセントとアニソール88〜99重量パーセント、デカン3〜12重量パーセントとアニソール88〜97重量パーセント、デカン4〜10重量パーセントとアニソール90〜96重量パーセント、又は、デカン6〜10重量パーセントとアニソール90〜94重量パーセントが含まれる。
【0040】
更により具体的な代表的溶媒混合物には、溶媒混合物の重量に対し、ドデカン1〜12重量パーセントと3,5−ジメチルアニソール88〜99重量パーセント、ドデカン1〜10重量パーセントと3,5−ジメチルアニソール90〜99重量パーセント、ドデカン2〜8重量パーセントと3,5−ジメチルアニソール92〜98重量パーセント、ドデカン3〜6重量パーセントと3,5−ジメチルアニソール94〜97重量パーセントが含まれる。
【0041】
この組成物には、組成物の合計重量に対し、任意の好適な重量パーセンテージの溶媒混合物が含まれ得る。この組成物はしばしば、組成物の合計重量パーセンテージに基づき、70重量パーセント以上、80重量パーセント以上、90重量パーセント以上、又は95重量パーセント以上の溶媒混合物を含む。この組成物は、組成物の合計重量に対し、99.9重量パーセント以下、99.5重量パーセント以下、99重量パーセント以下、98.5重量パーセント以下、98.2重量パーセント以下、98重量パーセント以下、97重量パーセント以下、96重量パーセント以下、95重量パーセント以下、90重量パーセント以下、又は80重量パーセント以下の溶媒混合物を含み得る。
【0042】
この組成物には、溶媒混合物に溶解した有機半導体材料が少なくとも1つ含まれる。この組成物中の溶解した半導体材料の量は、個々の半導体材料と個々の溶媒混合物によって異なる。有機半導体の溶解度は、その溶媒混合物に含まれるどの1つの溶媒よりも、その溶媒混合物又は組成物において溶解度が大きいことがあり得る(例えば、重量パーセントで測定)。この組成物は典型的に、溶媒混合物中に0.1重量パーセント以上の有機半導体が含まれる。言い換えると、この組成物には、組成物の合計重量に対し、0.1重量パーセント以上の溶解した有機半導体が含まれる。例えば、この組成物は0.2重量パーセント以上、0.4重量パーセント以上、0.5重量パーセント以上、0.6重量パーセント以上、0.8重量パーセント以上、又は1.0重量パーセント以上の有機半導体材料を含み得る。幾つかの実施形態では、この組成物には、組成物の合計重量に対し、最大25重量パーセント、最大20重量パーセント、最大15重量パーセント、最大10重量パーセント、最大8重量パーセント、最大6重量パーセント、最大5重量パーセント、又は最大4重量パーセントの、溶解した有機半導体材料が含まれる。例えば、幾つかの組成物には、組成物の合計重量に対し、0.1〜25重量パーセント、0.1〜20重量パーセント、0.1〜10重量パーセント、0.1〜5重量パーセント、0.5〜5重量パーセント、0.5〜3重量パーセント、0.1〜3重量パーセント、0.5〜2重量パーセント、又は0.1〜2重量パーセントの、溶解した有機半導体材料が含まれる。
【0043】
この溶媒混合物に溶解し得る任意の有機半導体材料を使用することができる。有機半導体の非限定的な例としては、アセン類、ヘテロアセン類、ペリレン類(例えばペリレン−3,4,9,10−テトラカルボキシルジイミド類)、さまざまな有機基で置換されたバックミンスターフラーレン(例えば化合物[6,6]−フェニル−C61−酪酸メチルエステル)、ポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリアセチレン類、ポリ(フェニレンビニレン)類、及びポリ(チエニレンビニレン)類が挙げられる。幾つかの実施形態では、この有機半導体にはフタロシアニンなどの有機金属化合物が含まれる。非限定的な有機半導体の例には、例えば、米国特許第6,690,029号(Anthony et al.)、同第7,319,153号(Vogel et al.)、同第7,211,679号(Gerlach et al.)、同第6,864,396号(Smith et al.)、米国特許出願公開第2007/0158643号(Vogel et al.)、同第2007/0249087号(Zhu et al.)、同第2007/0146426号(Nelson,et al.)、並びに同第2007/0249802号(Zhu et al.)、及び同第2007/0232781号(Zhu et al.)に記述されているものが挙げられる。
【0044】
幾つかの実施形態では、この有機半導体には置換ペンタセンが含まれる。代表的な置換ペンタセンには、式(II)のものが挙げられる。
【0045】
【化6】

【0046】
式(II)において、各Rは独立に、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、フェロセニル、又は式−Si(Rのシリル基から選択される。各Rは独立に、水素、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アルキニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、又はアセチルから選択される。アルキル基又はヘテロアルキル基の好適な置換基には、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基(すなわち−COOH)が挙げられる。アルケニル及びアルキニル基の好適な置換基には、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基(すなわち−COOH)が挙げられる。アリール及びヘテロアリールの好適な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基が挙げられる。各Xは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、シアノ、又はヘテロアリールから選択される。溶媒混合物に溶解している有機半導体材料の量は、組成物の合計重量に対し、少なくとも0.1重量パーセントに等しい。
【0047】
式(II)において、好適なアルキル基Rは典型的に1〜18個の炭素原子を有する。例えばこのアルキル基は2〜12個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は3〜6個の炭素原子を有し得る。このアルキル基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。アルキル基の非限定的な例には、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、及びオクタデシル基が挙げられる。これらアルキル基のいずれも、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で所望により置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール置換基はしばしば、3〜10個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0048】
好適なヘテロアルキル基Rは典型的に、2〜18個の炭素原子と、オキシ、チオ、又は−NH−から選択される1〜10個のヘテロ原子とを有する。例えば、このヘテロアルキル基は1〜12個の炭素原子と1〜6個のヘテロ原子、1〜10個の炭素原子と1〜5個のヘテロ原子、1〜6個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、又は1〜4個の炭素原子と1〜2個のヘテロ原子を有する。このヘテロアルキル基はしばしばエーテル基又はポリエーテル基であり、すなわちヘテロ原子はオキシであり得る。このヘテロアルキル基の非限定的な例には、メトキシメチレン(CHOCH−)、エトキシメチレン(CHCHOCH−)、メトキシエチレン(CHOCHCH−)、及びエトキシエチレン(CHCHOCHCH−)が挙げられる。これらヘテロアルキル基のいずれも、所望により、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール基はしばしば、3〜10個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0049】
好適なアルケニル基Rは典型的に、2〜18個の炭素原子を有する。例えば、このアルケニル基は、2〜16個の炭素原子、2〜12個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有し得る。このアルケニル基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。アルケニル基の非限定的な例には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、1−デセニル基、2−デセニル基、3−デセニル基、1−ドデセニル基、1−テトラデセニル基、及び1−オクタデセニル基が挙げられる。これらアルケニル基のいずれも、所望により、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子、又は6〜10の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール基はしばしば、3〜10個の炭素原子、又は4〜8個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0050】
好適なアリール基Rは典型的に、6〜12個の炭素原子を有する。例えば、アリール基はしばしば、6〜10個の炭素原子、又は6〜8個の炭素原子を有する。このアリール基には、単芳香環、第二炭素芳香環に縮合した第一芳香環、又は非芳香族炭素環に縮合した第一芳香環が挙げられ得る。6〜12個の炭素原子を有するアリール基の非限定的な例には、フェニル、1−ナフチル、及び2−ナフチルが挙げられる。これらアリール基のいずれも、所望により、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアルキル置換基はしばしば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。1つ以上のアルキル基で置換されたアリール基の非限定的な例には、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−ブチルフェニル、2−ヘキシルフェニル、及び4−ヘキシルフェニルが挙げられる。好適なヘテロアルキル置換基はしばしば、2〜10個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子と、オキシ、チオ、又は−NH−から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0051】
好適なヘテロアリール基Rはしばしば、3〜10個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。例えば、ヘテロアリールはしばしば、3〜8個の炭素原子、4〜8個の炭素原子、又は4〜6個の炭素原子と、1〜3個のヘテロ原子又は1〜2個のヘテロ原子とを有する。このヘテロアリールには、単複素芳香環、炭素芳香環に縮合した複素芳香環、又は非芳香族炭素環に縮合した複素芳香環が挙げられ得る。ヘテロアリール基の非限定的な例には、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニル、及び3−チエニルが挙げられる。これらヘテロアリール基のいずれも、所望により、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアルキル置換基はしばしば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有する。好適なヘテロアルキル置換基はしばしば、2〜10個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子と、オキシ、チオ、又は−NH−から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0052】
の好適なフェロセニル基には、フェロセニル、メチルフェロセニル、ジメチルフェロセニル、テトラメチルフェロセニル、ペンタメチルフェロセニル、及びノナメチルフェロセニルが挙げられるがこれらに限定されない。
【0053】
の好適なシリル基は、式−Si(Rのものである。各Rは独立に、水素、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アルキニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、又はアセチルから選択される。アルキル又はヘテロアルキルの好適な置換基には、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基(すなわち−COOH)が挙げられる。アルケニル又はアルキニルの好適な置換基には、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、ハロ、シアノ、ヒドロキシル、又はカルボキシルが挙げられる。アリール又はヘテロアリールの好適な置換基には、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基が挙げられる。
【0054】
の好適なアルキル基は、典型的に1〜10個の炭素原子を有する。例えば、このアルキルは、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、1〜4個の炭素原子、2〜10個の炭素原子、2〜8個の炭素原子、又は2〜6個の炭素原子を有する。これらの基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの混合であり得る。環式アルキル基は、本明細書において「シクロアルキル」基と記載される。環状部分に加えて直鎖又は分枝状部分を有するアルキル基は、本明細書において「シクロアルキルアルキレン」基と記載される。1〜10個の炭素原子を有するアルキル基の非限定的な例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、シクロオクチル基、ノニル基、及びデシル基が挙げられる。更なる非限定的な例には、シクロプロピルメチレン、2,3−ジメチルシクロプロピル、及び2,2,3,3−テトラメチルシクロプロピルが挙げられる。これらアルキル基のいずれも、所望により、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール基はしばしば、3〜10個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択された1〜3個のヘテロ原子とを有する。アリールで置換されたアルキルは、「アリールアルキレン」又は「アリールアルキル」として互換可能に記載することができ、この一例はベンジルである。
【0055】
の好適なヘテロアルキル基は典型的に、1〜10個の炭素原子と、酸素、チオ、又は−NH−から選択される1〜3個のヘテロ原子とを有する。例えば、ヘテロアルキルは1〜8個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、1〜6個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、又は1〜4個の炭素原子と1〜2個のヘテロ原子を有し得る。ヘテロアルキルはしばしば、エーテル基又はポリエーテル基であり、すなわち各ヘテロ原子は酸素である。このヘテロアルキル基の非限定的な例には、メトキシメチレン(CHOCH−)、エトキシメチレン(CHCHOCH−)、メトキシエチレン(CHOCHCH−)、及びエトキシエチレン(CHCHOCHCH−)が挙げられる。これらヘテロアルキル基のいずれも、所望により、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール置換基はしばしば、3〜10個の炭素原子と、オキシ、チオ又は−NH−から選択された1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0056】
の好適なアルケニル基及びアルキニル基は典型的に、2〜10個の炭素原子を有する。例えば、このアルケニル基及びアルキニル基は、2〜8個の炭素原子、2〜6個の炭素原子、又は2〜4個の炭素原子を有し得る。これらの基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの混合であり得る。アルケニル基の非限定的な例には、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブト−1−エニル基、cis−2−ブト−2−エニル基、3−ブト−1−エニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、及び1−デセニル基が挙げられる。アルキニル基の非限定的な例には、エチニル、プロピニル、及びn−ブチニルが挙げられる。これらアルケニル基及びアルキニル基のいずれも、所望により、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され得る。好適なアリール置換基はしばしば、6〜12個の炭素原子を有する。好適なヘテロアリール置換基はしばしば、3〜10個の炭素原子と、酸素、硫黄、又は窒素から選択された1〜3個のヘテロ原子とを有する。
【0057】
で記述された同じアリール基及びヘテロアリール基は、Rにも使用することができる。好適なアリール基はしばしば、6〜12個の炭素原子又は6〜10個の炭素原子を有する。フェニルは、代表的なアリール基である。好適なヘテロアリール基はしばしば、3〜10個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子、又は3〜8個の炭素原子と1〜3個のヘテロ原子を有する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−フラニル、3−フラニル、2−チエニル、及び3−チエニルが挙げられる。これらのアリール基又はヘテロアリール基のいずれも、所望によりアルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基で置換され得る。アルキルで置換されたアリールの一例は、トリルである。アルキルで置換されたヘテロアリールの一例は、N−メチルピロル−2−イルである。
【0058】
幾つかの実施形態では、式−Si(Rのシリル基は、式‐Si(R’)(R’’)(R’’’)である。各R’は独立に、(a)未置換若しくは置換アルキル、(b)未置換若しくは置換シクロアルキル、又は(c)未置換若しくは置換シクロアルキルアルキレンから選択される。各R’’は独立に、(a)未置換若しくは置換アルケニル、(b)未置換若しくは置換シクロアルキル、又は(c)未置換若しくは置換シクロアルキルアルキレンから選択される。R’’’は、(a)水素、(b)未置換若しくは置換アルキニル、(c)未置換若しくは置換シクロアルキル、(d)未置換若しくは置換アリールアルキレン、(e)アセチル、又は(f)ヘテロアリールから選択される。変数xは1又は2に等しく、変数yは1又は2に等しく、変数zは0又は1に等しい。x+y+zの合計は3に等しい。
【0059】
式−Si(Rの一部のシリル基において、各R基は独立に、4個以下の炭素原子を有するアルケニル基と、最高4個の炭素原子を有するアルキル基とから選択される。これらの基は、直鎖、分枝状、環式、又はこれらの組み合わせであり得る。このような化合物の非限定的な例は、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、及び(X)の化合物である。
【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
これらの化合物はすべて式−Si(Rのシリル基を有し、これはまた、式−Si(R’)(R’’)(R’’’)である。式(IV)及び式(VIII)の化合物にある各シリル基は、3つのアルキル基Rを有する。式(IV)において、3つのアルキル基はすべて、分枝状である。式(VIII)において、2つのアルキル基は分枝状であり、1つのアルキル基は環状である。式(V)、式(VII)、式(IX)及び式(X)の化合物における各シリル基は、1つがアルケニル基Rであり、2つがアルキル基Rである。式(V)、(VII)、及び(IX)の2つのアルキル基は分枝状であり、式(X)の2つのアルキル基は環状である。式(VII)及び(X)におけるアルケニル基は直鎖状であるが、式(V)及び(IX)においては分枝状である。式(VI)の化合物における各シリル基は、2つのアルケニル基R及び1つのアルキル基Rを有する。この式では、このアルケニル基とアルキル基はすべて分枝状である。これらの化合物の多くにおいて、アセン基の最も外側の環の各X基は水素である。
【0063】
溶媒混合物に溶解した半導体材料に加え、この組成物は更にポリマーを含み得る。このポリマーはホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は同様物であり得る。このポリマーはしばしば、組成物のレオロジーを改変するため、又は、この組成物から形成される半導体層の機械的特性を改善するために加えられる。
【0064】
幾つかの実施形態では、このポリマーは組成物に完全に溶解する。別の実施形態では、このポリマーは組成物に部分的に溶解する。本明細書において、用語「部分的に溶解する」とは、溶媒混合物若しくは組成物中のそのポリマーの溶解度を超えている、又は、そのポリマーが、溶媒混合物若しくは組成物に完全に溶解しない構成成分又は不純物を含んでいることを意味し得る。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、少なくとも99.5重量パーセント、少なくとも99.8重量パーセント、又は少なくとも99.9重量パーセントのポリマーが、組成物中に溶解している。また別の実施形態では、ポリマーは組成物中に分散している。例えば、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、少なくとも99.5重量パーセント、少なくとも99.8重量パーセント、又は少なくとも99.9重量パーセントのポリマーが、組成物中に分散している。更に別の実施形態では、ポリマーの第一部分が組成物に溶解し、第二部分が組成物に分散している。例えば、幾つかの実施形態では、少なくとも98重量パーセント、少なくとも99重量パーセント、少なくとも99.5重量パーセント、少なくとも99.8重量パーセント、又は少なくとも99.9重量パーセントのポリマーが、組成物中に溶解又は分散している。
【0065】
この組成物には任意の好適なポリマーが含まれ得るが、このポリマーはしばしば、絶縁ポリマー(すなわちポリマーが電気的絶縁材)である。幾つかの実施形態では、絶縁ポリマーは、そのポリマーの主鎖に沿って共役炭素−炭素二重結合がないか、又は実質的にない状態であり得る。すなわち、絶縁ポリマーは高分子鎖の長さにわたって非導電性であり得る。しかし、絶縁ポリマーは、共役炭素−炭素二重結合を備える領域を有することができる。例えば、絶縁ポリマーは、ペンダント共役芳香族基を有することができる。別の実施形態では、この絶縁ポリマーは脂肪族構造を有し、ポリマーの主鎖に沿って、又はペンダント基内に、炭素−炭素二重結合を、たとえあったとしても、ほとんど有さない。
【0066】
ポリマーは非晶質ポリマーであり得る(すなわち、このポリマーは例えば、示差走査熱量測定法によって分析しても、結晶融点を示さない)。代表的なポリマーには、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリビニルフェノール、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリ(ジビニルテトラメチルジシロキサン−ビス(ベンゾシクロブテン))、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、部分的水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、スチレン−イソプレンブロックコポリマー、水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマー、部分的水素化スチレン−イソプレンブロックコポリマー、及び同様物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0067】
ポリマーは任意の重量平均分子量を有することができる。ポリマーの重量平均分子量は、組成物の粘度に影響を与え得る。より高分子量のポリマーは、通常、より高粘度のコーティング組成物をもたらす。幾つかの実施形態では、ポリマーの重量平均分子量は、1000グラム/モル以上、2000グラム/モル以上、5000グラム/モル以上、10,000グラム/モル以上、20,000グラム/モル以上、50,000グラム/モル以上、又は100,000グラム/モル以上である。重量平均分子量はしばしば、1,000,000グラム/モル以下、500,000グラム/モル以下、200,000グラム/モル以下、又は100,000グラム/モル以下である。例えば、重量平均分子量は1000〜1,000,000グラム/モルの範囲、2000〜500,000グラム/モルの範囲、又は2000〜200,000グラム/モルの範囲であり得る。
【0068】
組成物中のポリマー濃度は、組成物の合計重量に対して、0.1重量パーセント以上、0.2重量パーセント以上、0.5重量パーセント以上、又は1.0重量パーセント以上であり得る。組成物中のポリマー濃度はしばしば、20重量パーセント以下、15重量パーセント以下、10重量パーセント以下、5重量パーセント以下、4重量パーセント以下、3重量パーセント以下、又は2重量パーセント以下であり得る。例えば組成物には、その組成物の合計重量に対して、0.1〜20重量パーセント、0.1〜10重量パーセント、0.1〜5重量パーセント、0.1〜3重量パーセント、0.5〜5重量パーセント、又は0.5〜3重量パーセントのポリマーが含まれ得る。
【0069】
この組成物は、ポリマーに対して任意の重量比の有機半導体を含み得る。幾つかの実施形態では、有機半導体対ポリマーの重量比は、1:10〜20:1の範囲、1:10〜10:1の範囲、1:8〜8:1の範囲、1:5〜5:1の範囲、1:4〜4:1の範囲、1:3〜3:1の範囲、又は1:2〜2:1の範囲である。
【0070】
この組成物はしばしば、組成物の合計重量に対して、0.1〜25重量パーセントの有機半導体材料、0〜20重量パーセントのポリマー、及び55〜99.9重量パーセントの溶媒混合物を含む。幾つかの実施例では、この組成物は、0.1〜20重量パーセントの有機半導体材料、0〜10重量パーセントのポリマー、及び70〜99.9重量パーセントの溶媒混合物を含む。別の実施例では、この組成物は、0.1〜10重量パーセントの有機半導体材料、0〜5重量パーセントのポリマー、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物を含む。更に別の実施例では、この組成物は、0.5〜10重量パーセントの有機半導体材料、0〜5重量パーセントのポリマー、及び85〜99.5重量パーセントの溶媒混合物を含む。更に別の実施例では、この組成物は、0.5〜5重量パーセントの有機半導体材料、0.5〜5重量パーセントのポリマー、及び90〜99重量パーセントの溶媒混合物を含む。これら実施例のいずれにおいても、溶媒混合物は、6〜16個の炭素を有するアルカン1〜20重量パーセントと式(I)の芳香族化合物80〜99重量パーセント、8〜14個の炭素を有するアルカン1〜12重量パーセントと式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセント、又は9〜13個の炭素を有するアルカン1〜10重量パーセントと式(I)の芳香族化合物90〜99重量パーセントを含む。
【0071】
幾つかのより具体的な組成物は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(6〜16個の炭素を有するアルカン1〜12重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含む。例えば、この組成物は、0.5〜10重量パーセントの式(II)の半導体、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.5重量パーセントの溶媒混合物(6〜16個の炭素を有するアルカン1〜12重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含む。別の実施例では、この組成物は、0.5〜5重量パーセントの式(II)の半導体、0.5〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び90〜99重量パーセントの溶媒混合物(6〜16個の炭素を有するアルカン1〜12重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含む。更に別の実施例では、この組成物は、0.5〜5重量パーセントの式(II)の半導体、0.5〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び90〜99重量パーセントの溶媒混合物(8〜14個の炭素を有するアルカン1〜10重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物90〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含む。
【0072】
幾つかの更により具体的な実施例では、この組成物は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(9〜13個の炭素を有するアルカン1〜12重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物88〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含む。例えば、この組成物は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(9〜13個の炭素を有するアルカン1〜10重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物90〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含み得る。別の実施例において、この組成物は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(9〜13個の炭素を有するアルカン3〜10重量パーセントと、式(I)の芳香族化合物90〜97重量パーセントである溶媒混合物)を含み得る。
【0073】
更に別の実施例において、この組成物は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(デカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物から選択されるアルカン1〜12重量パーセントと、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物から選択される芳香族化合物88〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含み得る。これらの実施例は、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(デカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物から選択されるアルカン1〜10重量パーセントと、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物から選択される芳香族化合物90〜99重量パーセントである溶媒混合物)を含み得る。これらの実施例は更に、0.1〜10重量パーセントの式(II)の半導体(式中、Rは式−Si(Rのシリル)、0〜5重量パーセントのポリマー(絶縁ポリマーなど)、及び85〜99.9重量パーセントの溶媒混合物(デカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物から選択されるアルカン3〜10重量パーセントと、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物から選択される芳香族化合物90〜97重量パーセントである溶媒混合物)を含み得る。
【0074】
この組成物は、式(I)の芳香族化合物、アルカン、有機半導体、及び所望によるポリマーを、任意の順序で合わせることにより調製することができる。例えば、式(I)の芳香族化合物をアルカンと組み合わせて溶媒混合物を調製し、結果として得られた溶媒混合物を次に有機半導体及び任意のポリマーと組み合わせることができる。組成物に、所望によるポリマーが含まれる場合、このポリマーは無希釈のポリマー、任意の好適な有機溶媒に溶解したポリマー溶液、任意の好適な有機溶媒に分散したポリマー分散液、又はこれらの組み合わせとして加えることができる。
【0075】
幾つかの実施形態では、溶媒混合物を調製し、次に有機半導体及び所望によるポリマーを、室温(例えば約20〜30℃)で、攪拌、振盪、又は振り混ぜによって合わせられる。別の実施形態では、溶媒混合物を調製し、有機半導体及び所望によるポリマーを合わせてから、攪拌、振盪、又は振り混ぜながら室温より高い温度に加熱することによって調製される。この加熱は不活性雰囲気(例えば、21パーセント未満の酸素、15パーセント未満の酸素、10パーセント未満の酸素、5パーセント未満の酸素、1パーセント未満の酸素、又は0.1パーセント未満の酸素を有する雰囲気)の下で行うことができる。結果として得られた組成物は、使用まで暗所に保管することができる。
【0076】
別の態様では、半導体デバイスの製造方法が提供される。この方法には、(a)溶媒混合物と、(b)その溶媒混合物に、組成物重量に対して0.1重量パーセント以上の量溶解した有機半導体材料とを含む組成物を提供することが含まれる。溶媒混合物には、(i)溶媒混合物の重量に対して1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカン、及び(ii)溶媒混合物の重量に対して80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する、式(I)の芳香族化合物、が含まれる。この方法には更に、1つ以上の導電性材料に隣接して、又は1つの絶縁材料に隣接して、この組成物を堆積させることにより、堆積層を形成し、この堆積層から溶媒混合物の少なくとも80重量パーセントを除去することによって半導体層を形成することが含まれる。
【0077】
本明細書において、第一層及び第二層を参照したときの用語「隣接して」とは、第一層が第二層にごく近接していることを意味する。この2層は接触していてよく、又は接着層、プライマー層、若しくはその両方などの1層以上の介在層によって分離されていてもよい。多くの実施形態では、第一層が第二層に隣接しているとき、第一層は第二層に接触している。より具体的には、堆積層と結果として得られた半導体層は、1層以上の導電層と接触しているか、又は絶縁材料と接触している。
【0078】
この方法の1つの実施例では、半導体デバイスは薄膜トランジスタなどのトランジスタである。有機半導体を備えたトランジスタは例えば、米国特許出願公開第2007/0158643号(Vogel et al.)、同第2007/0146426号(Nelson et al.)、同第2004/0222412号(Bai et al.)、同第2007/0146426号(Nelson et al.)、及び同第2007/0249087号Zhu et al.)に記述されている。トランジスタはしばしば、異なる機能をもたらす異なる材料の複数層を有する。例えば、剛性(例えばシリコンウエハ)又は可撓性(例えばポリ(エチレンナフタレン)又はポリ(エチレンテレフタレート)膜)であり得る基材がしばしば存在する。加えて通常は、ゲート、ソース、及びドレイン電極など、絶縁材料並びに導電性材料が存在する。
【0079】
トランジスタを製造する方法には、上記の任意の組成物を提供することと、次にその組成物を、ソース電極及びドレイン電極を含んだ構造上に堆積させることとが含まれる。すなわち、組成物はソース電極とドレイン電極両方に隣接して(例えばその上に、又は接触して)堆積される。別の方法としては、この方法は上記の任意の組成物を提供することと、次にその組成物を絶縁層に隣接して(例えばその上に、又は接触して)堆積させることとが含まれる。この組成物を堆積させた後、溶媒混合物の少なくとも80重量パーセントが除去され、半導体層の形成が結果として得られる。
【0080】
堆積した層を形成するため、任意の好適な方法を使用することができる。幾つかの実施形態では、この堆積層はインクジェット印刷を用いて形成される(すなわち、インクジェット印刷ヘッドを用いて、導電性材料又は絶縁材料上に組成物が堆積される)。インクジェット印刷方法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0146426号(Nelson,et al.)に詳しく記述されている。別の実施形態では、この堆積層はナイフコーティング又はスピンコーティングを用いて形成される(すなわち、組成物が導電性材料又は絶縁材料上に適用され、次にナイフコーティングブレードを用いて、又は構造をスピンさせることによってこれを広げ、組成物が全体に分配される)。ナイフコーティング又はスピンコーティングについては、例えば米国特許出願公開第2007/0158643号(Vogel,et al.)に詳しく記述されている。更に別の実施形態では、堆積層はディップコーティングを用いて形成される(すなわち、構造を組成物の中に浸す)。堆積層を形成する他の好適な方法には、フレキソ印刷、グラビア印刷、及びマイクロピペッティングが挙げられるがこれらに限定されない。堆積層が形成される表面は、ロールから供給することができる(すなわち、組成物は可撓性基材の表面上に堆積させるか、又は、可撓性基材上に堆積された1層以上の他の層の表面上に堆積させることができる)。
【0081】
堆積層中の溶媒混合物が除去されて、半導体層が形成される。任意の好適な方法を使用して、堆積層中の溶媒混合物を除去する(すなわち乾燥させる)ことができる。多くの実施形態では、この溶媒混合物は蒸発によって除去される。この溶媒混合物に含まれるさまざまな溶媒(例えば式(I)の芳香族化合物及びアルカン)が、同じ速度又は異なる速度で蒸発し得る。幾つかの実施例では、式(I)の芳香族化合物が、アルカンよりも速い速度で蒸発し得る。しかしながら別の実施例では、アルカンが、式(I)の芳香族化合物よりも速い速度で蒸発する。溶媒混合物の少なくとも80パーセントが除去されて、半導体層を形成する。例えば、溶媒の85重量パーセント以上、90重量パーセント以上、92重量パーセント以上、95重量パーセント以上、97重量パーセント以上、98重量パーセント以上、99重量パーセント以上、又は99.5重量パーセント以上が除去される。
【0082】
溶媒混合物はしばしば、任意の好適な温度で蒸発させることができる。幾つかの方法では、溶媒混合物は室温で(すなわち、堆積工程が実施される部屋又は設備の温度で)蒸発する。別の方法では、溶媒混合物は室温より高い温度で蒸発する。例えば、構造を支える圧盤を、室温より高い温度に加熱することができる。溶媒は、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、又は80℃以上の温度で蒸発し得る。溶媒は、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、又は50℃以下の温度で蒸発し得る。更に他の方法では、溶媒混合物の一部又は多くは室温で蒸発させることができ、残りの溶媒は室温より高い温度で蒸発させることができる。溶媒混合物が室温より高い温度で蒸発する実施形態では、この蒸発は不活性雰囲気(例えば窒素雰囲気)中で実施することができる。
【0083】
別の方法としては、溶媒混合物は、例えば真空を利用することにより、減圧(すなわち、大気圧より低い圧力)を適用することによって除去できる。溶媒は、溶媒混合物が蒸発する際に使用するため記述されているような任意の好適な温度で除去することができる。
【0084】
堆積層から溶媒混合物を除去する速度は、結果として得られる半導体層に影響し得る。例えば、除去プロセスが速すぎると、結晶化中に半導体分子の詰まり方の不良が起こりやすくなる。この詰まり方の不良は、半導体層の電気特性に有害となり得る。
【0085】
組成物は、何百マイクロメートル規模の小さく分離した領域に半導体層を形成するために、又は、大きな面積に広がる半導体層を形成するために、有利なように使用することができる。有機溶媒を含む組成物から半導体層を堆積させるのは、複雑な物理学的プロセスである。組成物と、その組成物を堆積させる表面の、数多くの特性が、形成される半導体層の性能特性に影響を与え得る。これには、組成物の表面張力、組成物と堆積表面との間の界面張力、溶媒混合物の蒸発速度、溶媒蒸発の際に、堆積組成物と表面との間の接触ラインにピン又は後退部分を生じる傾向、組成物の粘度、溶媒混合物に対する有機半導体の溶解度、溶媒混合物中のさまざまな溶媒が蒸発する際の、溶媒混合物に対する有機半導体の過飽和の度合、並びに、形成される有機半導体の晶癖が挙げられる。溶媒混合物中の個々の溶媒の絶対的表面張力及び蒸発速度の両方とも、及びこれらの互いの関係が、半導体層に影響を及ぼし得る。加えて、溶媒混合物が除去されるときの堆積層中のこれら特性の変化も、形成される半導体層の性能特性に影響を与え得る。
【0086】
理論に束縛されるものではないが、溶媒混合物にアルカンを加えることは、基材上の組成物の接触角を下げる傾向があり、組成物と基材との間の接触ラインのピン固定を低減するのに役立ち得る。アルカンは典型的に、式(I)の芳香族化合物よりも低い表面張力を有する。アルカン類はしばしば、20℃において、28ダイン/cm未満、26ダイン/cm未満、25ダイン/cm未満、又は24ダイン/cm未満の表面張力を有する。接触ライン上又はその近くで有機半導体の核生成が起こった後、そのより低い接触角と、おそらくは低減されたピン固定が、溶媒が蒸発する際に、基材の面から離れるのではなく、基材に沿って、又は基材の平面上で、有機半導体が結晶化し成長するのに役立ち得る。例えば、薄膜トランジスタの製造においてゲート絶縁体上にこの組成物を堆積させる場合など、基材に隣接する有機半導体の電荷輸送が半導体デバイスの性能に必須である場合、このことは特に重要である。
【0087】
より具体的には、小型化(例えば1mm以下の規模)が望ましい場合、式(I)の芳香族化合物はしばしば、低蒸気圧(例えば20℃で10mmHg未満、5mmHg未満、又は2mmHg未満)を有するよう選択される。しかしながら、組成物に含まれる唯一の溶媒が式(I)の芳香族化合物である場合は、結果として得られる半導体層は不均一になる傾向がある。核生成が堆積層の周囲部分で起こりやすく、半導体結晶がしばしばこの周囲部分で優先的に形成される。加えて、式(I)の芳香族化合物が比較的高い表面張力(例えば20℃で30ダイン/cm超、32ダイン/cm超、又は34ダイン/cm超)を有する場合は、半導体材料の結晶成長は、多くの基材上で、面から離れる傾向がある。式(I)の芳香族化合物を、9〜16個の炭素原子又は10〜12個の炭素原子を有するアルカンと混合すると、堆積層全体にわたって結晶生成が生じ、基材表面に沿って成長する傾向がある。これらのアルカン類はしばしば、20℃において、28ダイン/cm未満、26ダイン/cm未満、25ダイン/cm未満、又は24ダイン/cm未満の表面張力を有する。
【0088】
加えて、小型化が望ましい場合、溶媒混合物中に含まれるアルカンはしばしば、式(I)の芳香族化合物の沸点よりも5℃〜35℃高い沸点を有するよう選択される。この選択により、溶媒が除去される際に組成物中の最適な再循環流(すなわちマランゴニ対流)を生じさせることができ、最適な電気的性能を備えた半導体層の形成をもたらし得る。溶媒混合物中のアルカンの最適量により、組成物と基材との間の接触ラインに当初短時間のピン固定が可能になり得る。この間に、半導体材料の核生成が起こる。溶媒混合物を更に除去すると、接触ラインはしばしば内側に後退し、半導体結晶が核生成部位から内側に成長する。この成長パターンにより、かなり均一な半導体層がもたらされる傾向がある。
【0089】
幾つかの方法では、この組成物は、最小側方直径が約2ミリメートル以下の堆積を形成する、インクジェット印刷技法又はその他の技法を使用して堆積される。インクジェット印刷技法を使用する堆積に特に好適な幾つかの代表的な組成物には、1〜12重量パーセントのデカンと88〜99重量パーセントのアニソール、1〜10重量パーセントのデカンと90〜99重量パーセントのアニソール、又は6〜12重量パーセントのデカンと88〜94重量パーセントのアニソールを含む溶媒混合物が挙げられる。インクジェット印刷技法を使用する堆積に特に好適な他の代表的な組成物には、1〜12重量パーセントのドデカンと88〜99重量パーセントの3,5−ジメチルアニソール、1〜10重量パーセントのドデカンと90〜99重量パーセントの3,5−ジメチルアニソール、3〜10重量パーセントのドデカンと90〜97重量パーセントの3,5−ジメチルアニソール、又は3〜6重量パーセントのドデカンと94〜97重量パーセントの3,5−ジメチルアニソールを含む溶媒混合物が挙げられる。インクジェット印刷技法を使用する堆積に特に好適な更に他の代表的な組成物には、1〜12重量パーセントのウンデカンと88〜99重量パーセントのn−ブチルベンゼン、1〜10重量パーセントのウンデカンと90〜99重量パーセントのn−ブチルベンゼン、3〜10重量パーセントのウンデカンと90〜97重量パーセントのn−ブチルベンゼン、又は4〜8重量パーセントのウンデカンと92〜96重量パーセントのn−ブチルベンゼンが挙げられる。
【0090】
他の方法では、この組成物は、最小側方直径が約2ミリメートルを超える堆積を形成する、ディップコーティング又はその他の技法などの技法を使用して堆積される。ディップコーティング技法を使用する堆積に特に好適な幾つかの代表的な組成物には、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物1〜12重量パーセントとn−ブチルベンゼン88〜99重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物1〜10重量パーセントとn−ブチルベンゼン90〜99重量パーセント、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜10重量パーセントとn−ブチルベンゼン90〜96重量パーセント、又は、デカン、ウンデカン、ドデカン、若しくはそれらの混合物4〜8重量パーセントとn−ブチルベンゼン92〜96重量パーセントが含まれる。その他の代表的な組成物には、1〜12重量パーセントのデカンと88〜99重量パーセントのアニソール、3〜12重量パーセントのデカンと88〜97重量パーセントのアニソール、1〜10重量パーセントのデカンと90〜99重量パーセントのアニソール、3〜10重量パーセントのデカンと90〜97重量パーセントのアニソール、又は6〜10重量パーセントのデカンと90〜94重量パーセントのアニソールを含む溶媒混合物が挙げられる。
【0091】
堆積層を形成するため組成物を堆積させ、その堆積層から溶媒混合物を除去して半導体層を形成するのに、比較的低温を使用することから、さまざまな種類の基材、導電性材料、及び絶縁材料の使用が可能になる。すなわち、これら他の層のいずれも、典型的に熱に敏感だと見なされる材料で形成することができる。例えば、基材又は他の層のいずれも、可撓性のポリマー材料であり得る。
【0092】
任意の好ましいアーキテクチャ(例えば、半導体層、接触(ソース及びドレイン電極)、及びゲート電極などの位置に関して)を有するトランジスタが作製され得る。幾つかの実施形態ではトランジスタにはボトムゲート、ボトムコンタクトアーキテクチャが挙げられる。
【0093】
結果として得られるトランジスタの特性、例えば飽和電界効果移動度(μ)は、組成物を変えることによって変わり得る。飽和電界効果移動度は、ドレイン・ソース間電流(IDS)を、ゲート・ソース間電圧バイアス(VGS)の関数として、+10V〜−40Vの範囲で、ドレイン・ソース間電圧バイアス(VDS)を−40Vの一定にして測定することにより決定できる。飽和電界効果移動度(μ)は、次の式を用い、IDSの平方根をVGSに対してプロットした傾きから計算することができる。
【0094】
DS=μWC(VGS−V÷2L
式中、実施例に記述されているように、Cはゲート絶縁体の固有キャパシタンス、Wはチャネル幅、Lはチャネル長さ、及びVはしきい電圧である。チャネル幅W及びチャネル長さLの単位はしばしば同じ(例えばマイクロメートル)である。
【0095】
電界効果移動度(μ)は1×10−5cm/V−s以上、5×10−5cm/V−s以上、1×10−4cm/V−s以上、5×10−4cm/V−s以上、1×10−3cm/V−s以上、5×10−3cm/V−s以上、1×10−2cm/V−s以上、5×10−2cm/V−s以上、1×10−1cm/V−s以上、又は5×10−1cm/V−sであり得る。幾つかの実施形態では、結果として得られたトランジスタの電界効果移動度(μ)が、異なる溶媒又は異なる溶媒混合物を有する組成物から半導体層を形成することによって作製された他のトランジスタ装置よりも高い電界効果移動度を有する。本明細書で記述された組成物から形成され結果として得られた半導体層はしばしば、これまで既知の組成物に比べ、電界効果移動度の改善という点でいっそう好ましい。
【実施例】
【0096】
別途注記のない限り、すべての試薬及び溶媒は、Sigma Aldrich Co.(ミズーリ州セントルイス)から得られたか、又は得ることができる。
別途注記のない限り、組成物の構成成分のパーセンテージは重量パーセントである。
【0097】
用語「DMA」は、3,5−ジメチルアニソールを指す。
用語「nbb]はn−ブチルベンゼンを指す。
用語「PS」は、数平均分子量112,000グラム/モル、多分散指数1.05を有する、アタクチックポリ(スチレン)を指す。このポリ(スチレン)はPolymer Source,Inc.(カナダ・ケベック州ドーヴァル)から入手された。
【0098】
用語「PS2」は、50,000の数平均分子量、多分散指数1.06を有する、第二のポリ(スチレン)を指す。このポリ(スチレン)はAlfa Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)から入手された。
【0099】
用語「TIPS」は、6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを指し、主に米国特許第6,690,029号(Anthony et al.)の記述に従い調製される。
【0100】
用語「A−DIPS」は、6,13−ビス(アリルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを指す。この化合物は下記に従って調製された。
【0101】
用語「IP−DIPS」は、6,13−ビス(ジイソプロピル−2−プロペニルシリルエチニル)ペンタセンを指す。この化合物は下記に従って調製された。
【0102】
用語「C−DIPS」は、6,13−ビス(シクロプロピルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを指す。この化合物は下記に従って調製された。
【0103】
用語「B−DIPSは、6,13−ビス(2−ブト−1−エニルジイソプロピルシリルエチニル)ペンタセンを指す。この化合物は下記に従って調製された。
【0104】
用語「THF」はテトラヒドロフランを指す。
用語「MeOH」はメタノールを指す。
用語「DCM」はジクロロメタンを指す。
【0105】
用語「重合可能なZrOAc」は、重合可能な組成物及び溶媒中に分散している、表面改変されたジルコニアナノ粒子を含む組成物を指す。重合可能なZrOAc組成物の調製は、下記に記述されている。
【0106】
用語「硬化したZrOAc」は、重合可能なZrOAc組成物の乾燥及び重合化(すなわち硬化)の結果得られた組成物を指す。
用語「CE」は、比較実施例を指す。
【0107】
重合可能なZrOAc組成物の調製
ジルコニアナノ粒子は、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)の記述に従って、熱水技法を用いて調製された。より具体的には、ジルコニウム塩を含有する第一の供給原料は、最初の熱水処理を施し、ジルコニウム含有中間体及び副生成物を生成した。第二の供給原料は、第一の熱水処理中に生成された酸性の副生成物の少なくとも一部を除去することによって調製された。第二の供給原料に、その後、第二の熱水処理を施し、ジルコニアナノ粒子を含有するジルコニアゾルを形成した。ナノ粒子の寸法は、透過型電子顕微鏡によって測定された。このナノ粒子は、約1.8〜11.2ナノメートル(nm)の大きさの範囲であり、平均粒径が4.7nm、標準偏差は1.3nmであった。ナノ粒子の縦横比は約1〜3.4の範囲であった。
【0108】
ジルコニアゾルのジルコニアナノ粒子は、次に3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシランで表面改変された。これは、米国特許第7,264,872号(Walker,Jr.ら)の実施例2に記述されているものに類似のプロセスで、ただしシランを1種類だけ使用して、処理された。このシラン(3−(メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン)は、GE−Silicones(コネチカット州ウィルトン)から商標名SILQUEST A−174で市販されている。このプロセスにより、表面改変されたジルコニアナノ粒子分散液が得られた。
【0109】
表面改変されたジルコニアナノ粒子分散液を、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomer Co.Inc.(ペンシルバニア州エクストン)から商標名SR−368で市販)及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Ciba(ニューヨーク州タリータウン)から商標名IRGACURE 184で市販されている光開始剤)、及び溶媒3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキサン−1−オン(Alpha Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)からイソホロンの名で販売)と合わせた。合わせた材料を、磁気攪拌によって混合した。この混合物を、浴温65℃及び真空(800Pa(6mmHg))を使用して、回転蒸発にかけ、水、メチルエチルケトン、及び1−メトキシプロパン−2−オールの選択的除去を確実に実施した。結果として得られた混合物は、約8.5重量パーセントのトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(SR−368)、40.0重量パーセントの表面改変されたジルコニアナノ粒子、1.5重量パーセントの1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure 184)、及び50.0重量パーセントの3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オンを含んでいた。結果として得られた混合物は、50重量パーセントの固形物と、40重量パーセントの表面改変されたジルコニアナノ粒子を含んでいた。混合物を室温まで冷却し、次いできれいな茶色ガラス瓶に、1.0マイクロメートルのフィルタを通して濾過した。
【0110】
A−DIPSの調製
ジクロロジイソプロピルシラン(4.00グラム、21.6mmol)及び無水THF(20mL)を、攪拌棒を備えた乾燥した250mL丸底フラスコに加えた。このフラスコには乾燥した凝縮器が備えられていた。アリルマグネシウムブロミド(22.0mL、22.0mmol、THF中1.0M)を、凝縮器からフラスコに入れ、第一混合物を形成した。第一混合物を63℃に12時間加熱し、次に室温まで冷ました。
【0111】
トリメチルシリルアセチレン(2.36グラム、24.0mmol)及び無水THF(12mL)を、攪拌棒を備えた別の乾燥した100mL丸底フラスコに加えた。この100mLフラスコの反応混合物を0℃に冷却してから、n−ブチルリチウム(9.2mL、23mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下で加えた。次にこれを90分間攪拌して、第二の混合物を生成した。
【0112】
反応混合物の入った250mLフラスコを次に0℃まで冷却し、第二の混合物をシリンジから滴下で加えた。合わせた混合物を一晩攪拌した。この合わせた混合物を次に100mL飽和NHCl溶液に注ぎ、ヘキサンとジエチルエーテル1:1の混合液(100mL)で洗った。この有機層を分離し、水層をもう一度50mLのヘキサンとジエチルエーテル1:1の混合液で抽出した(100mL)。この有機層を合わせ、水(50mL)及び食塩水(25mL)で洗い、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させ、濾過し、回転蒸発で濃縮した。
【0113】
生成物をTHF(50mL)中に入れた。KCO3の飽和メタノール溶液(100mL)を加えてから2時間攪拌した。水(50mL)及びヘキサン(100mL)を加え、この有機層を分離した。水層をもう一度抽出し(20mLヘキサン)、この有機層を合わせた。合わせた有機層を水(20mL)で洗い、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させた。この生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン及びDCMが5:1)で精製し、1.7グラムの無色の油を得た(9.4mmol、収率44パーセント)。生成物の分析により、次のデータを得た。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=5.87(m,1H)、4.94(m,2H)、2.39(s,1H)、1.70(dt,J=1.4Hz,8Hz,2H)、1.08(s,14H)。これはアリルイソプロピルシリルアセチレンの組成と一貫している。
【0114】
上記のアリルジイソプロピルシリルアセチレン(1.62グラム、9.36mmol)及び無水THF(20mL)を、攪拌棒を備えた乾燥した100mL丸底フラスコに加え、0℃に冷却した。n−ブチルリチウム(3.1mL、7.8mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下で加え、この溶液を1時間以上放置して温めた。次に、6,13−ペンタセンキノン(1.22グラム、3.89mmol)を加え、この混合物を48時間攪拌した。0.5mLの飽和NHCl溶液を加えてこの反応を止め、次にMeOH(60mL)で希釈して、反応混合物を生成した。
【0115】
大きな三角フラスコで、MeOH(600mL)、SnCl・2H2O(2.60グラム、11.5mmol)、及び25%HCl(2.5mL)を攪拌しながら合わせ、0℃に冷却して第二の溶液を生成した。反応混合物を、この第二の溶液に静かな流れで加え、追加のMeOHですすいだ。追加の25%HCl(3mL)を加え、この混合物を20分間攪拌した。この混合物を冷蔵庫内に1時間置き、次に濾過して、1.3グラムの青緑色の固形物を得た。結果として得られた固形物をごく少量のDCM(約5mL)に溶かし、ヘキサン(200mL)で希釈して、厚いシリカプラグ上ですすいだ。プラグをヘキサンで洗い流すことにより、過剰なアセチレンを除去した。ヘキサン及びDCMの5:1混合液を使用して、この生成物を溶離した。溶媒を除去して、青い固形物0.5グラムを得た。この固形物を熱いアセトンに溶解させ、熱いうちに濾過して緑色の不純物を除去し、一晩結晶化させた。アセトンからの第二の結晶化により、青い針状物0.38グラムを得た(0.62mmol、収率16パーセント)。青い針状生成物の分析により、次のデータを得た。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=9.3(s,4H)、8.0(dd,J=3.4Hz,4H)、7.4(dd,J=3.4Hz,4H)、6.38(m,2H)、5.1(m,4H)、2.0(m,4H)、1.3〜1.4(m,28H)。
【0116】
IP−DIPSの調製
2−ブロモプロペン(4.32グラム、38.6mmol)及び無水THF(20mL)を、攪拌棒を備えた乾燥250mL丸底フラスコに合わせて入れ、−78℃に冷却した。n−ブチルリチウム(14.8mL、37mmol、ヘキサン中2.5M)のアリコートを滴下で加えた。攪拌を継続し、温度を10分間保ち、次にジクロロジイソプロピルシラン(6.85グラム、37.0mmol)を滴下で加えた。混合物を放置して温め、48時間攪拌して、第一混合物を生成した。
【0117】
別の攪拌棒を備えた乾燥した100mL丸底フラスコに、トリメチルシリルアセチレン(3.93グラム、40.0mmol)及び無水THF(10mL)を合わせて入れ、0℃に冷却した。n−ブチルリチウム(14.8mL、37mmol、ヘキサン中2.5M)のアリコートを滴下で加え、攪拌を2時間続けて、第二混合物を生成した。
【0118】
第一反応混合物を0℃に冷却した。第二混合物を、シリンジによって第一混合物に加え、攪拌を12時間続けた。反応フラスコの中身を飽和NHCl溶液(100mL)に注ぎ、次にヘキサン及びジエチルエーテルの1:1混合液(100mL)を加えた。この有機層を分離し、水層をもう一度ヘキサンとジエチルエーテルの1:1混合液(20mL)で抽出した。この有機層を合わせ、水(20mL)及び食塩水(20mL)で洗い、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させ、濾過し、回転蒸発で濃縮した。この反応混合物をTHF(50mL)に溶かし、KCOの飽和MeOH溶液を加えた。攪拌を2時間継続した。水(100mL)及びヘキサン(100mL)を加えた。有機層を分離し、水(20mL)で洗い、硫酸マグネシウムを入れて乾燥させ、濾過し、回転蒸発で濃縮して、無色の油4.6グラムを得た(26mmol、収率70パーセント)。生成物の分析により、次のデータを得た。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=5.76(m,1H)、5.51(m,1H)、2.42(s,1H)、1.88(s,3H)、1.05(m,14H)。これはイソプロペニルジイソプロピルシリルアセチレンの組成と一貫している。
【0119】
上記のイソプロペニルジイソプロピルシリルアセチレン(3.00グラム、16.7mmol)及び無水THF(16mL)を、攪拌棒を備えた乾燥100mL丸底フラスコに合わせて入れた。フラスコを0℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(5.6mL、14mmol、ヘキサン中2.5M)を滴下で加えた。攪拌を2時間継続した。6,13−ペンタセンキノン(1.4グラム、4.6mmol)を加え、この混合物を48時間攪拌した。0.5mLの飽和NHCl溶液を加えてこの反応を止め、次にMeOH(50mL)で希釈して、第一反応混合物を生成した。
【0120】
大きな三角フラスコで、SnCl・2HO(5.8グラム、25mmol)をMeOH(800mL)に溶かし、25%HCl(5mL)を加えて、第二混合物を生成した。この第二混合物を0℃に冷却した後、第一反応混合物を静かな流れで加え、20分間攪拌した。結果として得られた混合物を冷蔵庫に1時間入れてから、濾過し、青緑色の固形物を得た。この青緑色の固形物をごく少量のDCM(約5mL)に溶かし、ヘキサン(200mL)で希釈して、厚いシリカプラグ上ですすいだ。ヘキサンを使って過剰なアセチレンを洗い流し、この生成物をヘキサンとDCMの5:1混合液を使用して溶離した。溶媒を除去し、青い固形物1.35グラムを得た。アセトン(約400mL)からの再結晶により、青い針状物1.1グラムを得た(1.74mmol、収率38パーセント)。青い針状生成物の分析により、次のデータを得た。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=9.3(s,4H)、8.0(dd,J=3.2Hz,4H)、7.4(dd,J=3.2Hz,4H)、5.9(bm,2H)、5.8(bm,2H)、2.1(s,6H)、1.3〜1.4(m,28H)、及びマススペクトル(70eV,EI)m/z 634(100%、M+)。
【0121】
C−DIPSの調製
この材料は、A−DIPSの調製において上に記載したアリルジイソプロピルシリルアセチレンの調製に使用したものと類似の方法を用いて、ただしアリルマグネシウムブロミドの代わりにシクロプロピルマグネシウムブロミドを用いることによって、合成された。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=2.3(s,1H)、1.1(br−m,14H)、0.61(m,2H)、0.45(m,2H)、−0.44(m,1H)。
【0122】
A−DIPSの調製と同様に、ただしアリルジイソプロピルシリルアセチレンの代わりにシクロプロピルジイソプロピルシリルアセチレンを用いることによって、調製を継続した。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=9.2(s,4H)、8.0(dd,J=3.2,5.6Hz,4H)、7.4(dd,J=3.2,5.6Hz,4H)、1.4(br−m,28H)、0.85(m,8H)、−0.21(m,2H)。
【0123】
B−DIPSの調製
この化合物は、IP−DIPSの調製において上に記載したイソプロペニルジイソプロピルシリルアセチレンの調製に使用したものと類似の方法を用いて、ただし2−リチオ−プロペン(テトラヒドロフラン中、−78℃で、2−ブロモプロペンをn−BuLiで処理することによりその場で生成)の代わりに、2−リチオ−1−ブテン(テトラヒドロフラン中、−78℃で、2−ブロモ−1−ブテンをn−BuLiで処理することによりその場で生成)を用いることによって、合成された。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=5.76(q,J=1.2Hz,1H)、5.55(quint,J=1.2Hz,1H)、2.41(s,1H)、1.06(br.s,14H)、2.19(q,t,J=9.5,1.2Hz,2H)、1.10(t,J=9Hz,3H)。
【0124】
IP−DIPSの調製と同様に、ただしイソプロペニルジイソプロピルシリルアセチレンの代わりに、(1−メチレンプロピル)ジイソプロピルシリルアセチレンを用いることによって、調製を継続した。H−NMR(200MHz、CDCl)δ=9.33(s,4H),7.98(dd,J=3.4,6.6Hz,4H)、7.41(dd,J=3.4,6.6Hz,4H)、5.9(q,J=1Hz,2H)、5.83(quint,J=1Hz,2H)、2.19(q,t,J=8,1.1Hz,4H)、1.39(br.s,28H)、1.24(t,J=8Hz,6H)。
【0125】
溶媒及び有機半導体の組成物の調製−組成物調製方法I
ある量の有機半導体と、ある所望量のポリスチレンを、ガラス製バイアル中に秤量し、重さを測定した追加の溶媒を加えて、複数の溶媒を含む組成物の構成及び望ましい溶媒重量比での、望ましい濃度の有機半導体及び所望によるポリスチレンの組成物を調製した。バイアルにキャップをし、アルミホイルで覆って化合物を光から遮断した。このバイアルを、IKA LABORTECHNIK HS501振盪器(IKA Werke GmbH & Co.KG(ドイツ・スタウフェン))に入れ、最低12時間振盪した。
【0126】
溶媒及び有機半導体の組成物の調製−組成物調製方法II
ある量の有機半導体と、ある所望量のポリスチレンを、磁気攪拌棒を入れたガラス製バイアル中に秤量し、重さを測定した追加の溶媒を加えて、複数の溶媒を含む組成物の構成及び望ましい溶媒重量比での、望ましい濃度の有機半導体及び所望によるポリスチレンの組成物を調製した。このバイアルにキャップをし、攪拌プレート上に置いて、内容物を攪拌した。バイアルは金属缶で覆い、組成物を光から遮断した。この内容物を最低12時間攪拌した。
【0127】
層状トランジスタ構造の作製
別途注記のない限り、ボトムゲート、ボトムコンタクトアーキテクチャを有するトランジスタが作製された。このようなアーキテクチャは例えば、米国特許出願公開第2007/0158643号(Vogelら)に記述されている。各トランジスタは、8つの基材のうち1つを用いて作製された。ソース及びドレイン電極は矩形であり、互いに平行で、チャネル長さによって分離された。トランジスタは、別途注記のない限り、100マイクロメートルのチャネル長さLを有していた。
【0128】
基材Aは、約50ミリメートル×約50ミリメートル×0.7ミリメートルの寸法のガラスであり、片面に厚さ約200nmのスパッタリングされたアルミニウム層を有する。アルミニウムの上表面は望ましい厚さのアルミナ(Al)に陽極酸化され、典型的には約100nm(75V)であった。乾燥かつ硬化したZrOAcの層(厚さ約300ナノメートル〜約400ナノメートル)が陽極酸化表面上に形成された。乾燥かつ硬化したZrOAcの層は、スピンコーティング(加速度415回転/分(RPM)、最終速度は2000RPMで30秒間)によって、ZrOAc重合可能組成物で陽極酸化アルミナ表面をコーティングし、100℃のホットプレート上で10分間加熱し、窒素雰囲気中で15分間紫外線(すなわち254nm殺菌ランプ)に曝し、更に100℃のホットプレート上で10分間加熱することによって、生成された。金のソース電極及び金のドレイン電極は、乾燥かつ硬化したZrOAcの層上に蒸着された(厚さ約2000オングストローム)。これら電極のパターニングは、シャドーマスクを使用して実施された。
【0129】
基材Bは、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)から入手された、熱酸化物を備えたn型シリコンウエハであった(シリコン<100>ウエハ、高度にドーピングされたn+(砒素)、固有抵抗0.005ohm−cm未満、厚さ1000オングストロームの熱酸化物(SiO)がフロント面に供給され、100オングストロームの窒化チタンと5000オングストロームのアルミニウムが裏面にコーティングされている)。ウエハは酸素プラズマを用いてクリーニングされた。金のソース電極及び金のドレイン電極は酸化物層上に厚さ約2000オングストロームに蒸着された。パターニングはシャドーマスクを使用して実施された。基材Bは、使用の直前に酸素プラズマを使用してクリーニングされた。
【0130】
基材Cは、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)から入手された、熱酸化物を備えたn型シリコンウエハであった(シリコン<100>ウエハ、高度にドーピングされたn+(砒素)、固有抵抗0.005ohm−cm未満、厚さ1000オングストロームの熱酸化物(SiO)がフロント面に供給され、100オングストロームの窒化チタンと5000オングストロームのアルミニウムが裏面にコーティングされている)。ウエハは酸素プラズマを用いてクリーニングされた。金のソース電極及び金のドレイン電極は酸化物層上に蒸着された。パターニングはシャドーマスクを使用して実施された。基材は酸素プラズマを使用してクリーニングされ、次に10ミリモルのペンタフルオロチオフェノール(Alfa Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)から入手)のトルエン溶液に1分間浸した。この基材をトルエンに入れてすすぎ、表面温度が約110℃のホットプレート上で約6分間乾燥させた。この基材を約25分間冷まし、次に1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを表面に適用し、約2分間置いてから、4000RPMで約2分間スピンコーターを使用した。この基材を一晩ウエハキャリアに保管してから、使用した。
【0131】
基材Dは、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)から入手された、熱酸化物を備えたn型シリコンウエハであった(シリコン<100>ウエハ、高度にドーピングされたn+(砒素)、固有抵抗0.005ohm−cm未満、厚さ1000オングストロームの熱酸化物(SiO)がフロント面に供給され、100オングストロームの窒化チタンと5000オングストロームのアルミニウムが裏面にコーティングされている)。ウエハは酸素プラズマを用いてクリーニングされた。金のソース電極及び金のドレイン電極は酸化物層上に蒸着された。パターニングはシャドーマスクを使用して実施された。基材は酸素プラズマを使用してクリーニングされ、次に10ミリモルのペンタフルオロチオフェノール(Alfa Aesar(マサチューセッツ州ウォードヒル)から入手)のトルエン溶液に1分間浸した。この基材をトルエンに入れてすすぎ、表面温度が約110℃のホットプレート上で約6分間乾燥させた。この基材を約40分間冷ましてから使用した。
【0132】
基材Eは、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)から入手された、熱酸化物を備えたn型シリコンウエハであった(シリコン<100>ウエハ、高度にドーピングされたn+(砒素)、固有抵抗0.005ohm−cm未満、1000オングストロームの熱酸化物(SiO)がフロント面に供給され、100オングストロームの窒化チタンと5000オングストロームのアルミニウムが裏面にコーティングされている)。ウエハは酸素プラズマを用いてクリーニングされた。薄層のチタンと、厚さ約2000オングストロームの金の層を、熱酸化物上に蒸着し、ソース及びドレイン電極を形成した。パターニングは従来のフォトリソグラフィのリフトオフ手法を使用して実施された。基材は酸素プラズマを使用してクリーニングされ、次に10ミリモルのペンタフルオロチオフェノールのトルエン溶液に1分間浸した。この基材をトルエンに入れてすすぎ、表面温度が約110℃のホットプレート上で約6分間乾燥させた。この基材を約25分間冷まし、次に1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザンを表面に適用し、約2分間置いてから、4000RPMで約2分間スピンコーターを使用した。次にウエハを最低8時間ウエハキャリア内に立てておいてから使用した。
【0133】
基材Fは、約50ミリメートル×約50ミリメートル×約0.7ミリメートルの寸法を有するガラスであり、片面に約200nmのスパッタリングされたアルミニウム層を有する。アルミニウムの上面を陽極酸化して所望の厚さのAlとし(典型的には約100nm(75V))、その陽極酸化表面上に乾燥かつ硬化したZrOAc(厚さ約300nm〜400nm)の層を有していた。硬化したZrOAcの層は、スピンコーティング(加速度415RPM/s、最終速度は2000RPMで30秒間)によって、ZrOAc重合可能組成物で陽極酸化アルミニウムをコーティングし、100℃のホットプレート上で10分間加熱し、窒素雰囲気中で15分間紫外線(すなわち254nm殺菌ランプ)に曝し、更に100℃のホットプレート上で10分間加熱することによって、生成された。銀のソース電極及び銀のドレイン電極は、乾燥かつ硬化したZrOAcの層上に蒸着された(厚さ約2000オングストローム)。パターニングは従来のフォトリソグラフィのリフトオフ手法を使用して実施された。
【0134】
基材Gは、Noel Technologies,Inc.(カリフォルニア州キャンベル)から入手された、熱酸化物を備えたn型シリコンウエハであった(シリコン<100>ウエハ、高度にドーピングされたn+(砒素)、固有抵抗0.005ohm−cm未満、1000オングストロームの熱酸化物(SiO)がフロント面に供給され、100オングストロームのTiNと5000オングストロームのアルミニウムが裏面にコーティングされている)。このウエハは、使用の直前に酸素プラズマを使用してクリーニングされた。
【0135】
基材Hは、約50ミリメートル×約50ミリメートル×約0.7ミリメートルの寸法を有するガラスであり、片面に乾燥かつ硬化したZrOAcの薄層(厚さ約300nm〜約400nm)を有する。このガラスは、スピンコーティング(加速度415RPM/s、最終速度は2000RPMで30秒間)によって、ZrOAc重合可能組成物でコーティングされ、100℃のホットプレート上で10分間加熱され、窒素雰囲気中で15分間紫外線(すなわち254nm殺菌ランプ)に曝され、更に100℃のホットプレート上で10分間加熱された。
【0136】
基材Iは、可撓性のポリ(エチレンナフタレート)又はPETフィルム(DuPont(デラウェア州ウィルミントン)から商標名TEONEX Q65FAとして市販)であり、このフィルム上に、ゲート電極層、ゲート絶縁層、並びにソース及びドレイン電極層のインクジェット印刷によって作製された層状のトランジスタ構造アレイが含まれる。このアレイは、8行×15列のトランジスタ構造(合計120個のトランジスタ構造)を含み、このトランジスタ構造は3.0mmピッチである。印刷される層の画像(ゲート電極、ゲート絶縁体、ソース及びドレイン層)はすべて、Adobe Photoshopで作成された。全インクジェット印刷の層状トランジスタ構造は、下に詳述するプロセスによって作製された。
【0137】
20.3cm×29.2cm(8”×11.5”)、厚さ203.2マイクロメートル(8ミル)のPENフィルム片を、二部分から成るステンレススチールの間に固定した。この二部分から成るステンレススチールをPENフィルムの外辺部でクランプ止めし、これによりステンレススチールがフレームに入ったPENフィルムをクランプ止めするようにした。このステンレススチールフレームは、プロセス中にPENフィルムが縮むのを最小限に抑えるのに役立つ。粒子の汚染を減らし、より一貫した表面エネルギーを備えた清浄な表面を提供するために、フレームに入ったPENフィルムの両側を、純粋エタノールで何度もクリーニングした。クリーニング後、クランプ止めされたフィルムをホットプレートの上に置き、フレームをインクジェット堆積システムのアルミニウム真空テーブル上に置いた。ホットプレートをアルミニウム真空テーブルに取り付け、フレーム内に嵌めた。フレームを、4本のねじでアルミニウム真空テーブルに固定した。クランプ止めされたフィルムがシステム内に配置されたら、上面をもう一度エタノールでクリーニングした。
【0138】
Fujifilm Dimatix,Inc.(カリフォルニア州サンタクララ)から商標名SX3−128として市販されているプリントヘッドを、システムに挿入した。堆積システムは、インクジェットプリントヘッドのx−y軸方向の精密位置コントロールを有していた。このプリントヘッドは液滴体積10pLのジェット128個を有していた。プリントヘッドに約20.0mLのインクジェット使用可能な銀導電性インク(Cabot Corporation(ニューメキシコ州アルバカーキ)から商標名CABOT AG−IJ−G−100−S1として市販)を充填した。この材料は、バックプレーンのゲート層となった。プリントヘッドをシステム内に装着した後、その高さ及びサーベル角度を調節した。プリントヘッド高さはPENフィルム表面の上、約1.0mmの位置に調節した。サーベル角度は、望ましい解像度である276滴/cm(702滴/インチ(dpi))となるように調節した。上記を完了した後、基材の位置を固定した。ステンレススチールフレームの角を、開始点又は原点として使用した。原点から負のx及びy方向に、2.54cm(1.0インチ)のオフセットを設定した。これは、プリントヘッドが導電性インク又はゲート層のパターンの印刷を開始する位置であった。位置固定は、DVT Machine Vision(Legend 530)CCDカメラで達成された。
【0139】
導電性インクの適用の前に、基材を予備収縮させた。各層の熱硬化間のフィルム収縮は、それに続く層の位置固定に影響を与える。この予備収縮プロセスには、フィルムを基材の下側と上側から加熱することが含まれる。下からの加熱は、オンラインのホットプレートでなされた。ホットプレートは125℃に設定された。基材の上からの加熱は、500ワット/インチの赤外線(IR)ランプで行われた。ホットプレートが125℃に達したら、毎秒5.1cm(毎秒2インチ)の速度、出力レベル100パーセントで、IRランプを基材の上で5回走査した。このプロセスには25秒間かかり、基材の最高温度は140℃に達し、これは赤外線パイロメーターによって記録された。
【0140】
予備収縮プロセスの完了後、基材/圧盤を温度45℃まで冷まし、銀の導電性インクをPENフィルム上にインクジェット印刷した。パターニングされた銀の導電性インクが基材上に堆積されたら、45℃に5.0分間維持し、次にオンラインホットプレート及び赤外線ランプで焼結した。ホットプレートは125℃に設定され、IRランプを毎秒5.1cm(毎秒2.0インチ)の速度、出力レベル100パーセントで、IRランプをパターニング画像の上で5回走査した。銀をIRランプで焼結するには、約25秒を要した。銀が焼結された後、ホットプレートの温度を150℃に設定した。基材をこの温度に10分間保った。
【0141】
全インクジェット印刷の層状トランジスタ構造の製造において、次の層はゲート絶縁層であった。ゲート層を熱硬化させた後、SX3−128プリントヘッドを取り出し、Fujifilm Dimatix,Inc.(カリフォルニア州サンタクララ)から商標名SE−128として市販されているプリントヘッドに交換した。このプリントヘッドは絶縁材料組成物(重合可能なZrOAc組成物)の印刷のために使用された。SE−128プリントヘッドは、128個のジェットと、液滴体積30ピコリットル(pL)を有していた。高さを基材から約1.0mmの位置に設定し、解像度276滴/cm(702dpi)が得られるようにサーベル角度を設定した。圧盤温度を26℃に下げた。絶縁層を印刷する前に、パターニングされたゲート層に対する絶縁層の位置固定のため、テスト印刷を実施した。テスト印刷を、ゲート層を印刷した他のテスト印刷と比較した。2つのテスト印刷の測定した差により、絶縁層の印刷がどこから始まるかが判定された。CCDカメラを利用して、この層の位置固定が実施された。
【0142】
位置固定が完了したら、絶縁材料のブランケットコーティングをこのゲート層の上に印刷した。印刷が完了したら、印刷された材料をすぐに乾燥させ、硬化させ、また乾燥させた。第一の乾燥プロセス又は予備焼結は、オンラインホットプレート及びIRランプで行われた。ホットプレートが温度75℃に達したら、印刷された画像の上に、速度2.0インチ/秒及び出力40パーセントで、IRランプを走査した。このプロセスのIR工程は低温であった。この工程の強度を高めると、絶縁層がかぶってしまい、溶媒のトラップを起こす可能性がある。よって、乾燥のほとんどは、基材下からの熱により行われた。赤外線ランプで試料上を走査した後、圧盤温度を更に10分間75℃に維持した。このプロセスの工程を利用して、残存し得る溶媒を除去した。溶媒を除去した後、圧盤温度45℃で、乾燥した材料を硬化又は架橋させた。これは窒素パージと共に250nm波長のUV殺菌ランプを使用することによって達成された。このプロセスの完了には401秒間かかった。最終の乾燥工程又は焼結後は、上述の焼結的同じプロセス工程を使用したが、ただし、IRランプは画像上を2.0インチ/秒の速度、出力100パーセントで5回走査した。
【0143】
絶縁層の完了後、SE−128プリントヘッドをシステムから取り外し、ソース及びドレイン層の堆積のために、SX3−128プリントヘッドに交換した。ソース及びドレイン層は、インクジェット使用可能な銀導電性インク(Cabot Corporation(ニューメキシコ州アルバカーキ)から商標名CABOT AG−IJ−G−100−S1として市販)で2回印刷した。プリントヘッドの高さは基材から約1.0mmの高さに調節され、サーベル角度は解像度が276滴/cm(702dpi)となるように設定された。
【0144】
第一のソース及びドレイン層の印刷のために、圧盤を45℃に冷まし、絶縁層について上述したのと同様の方法で位置固定を行った。印刷が完了したら、圧盤温度を60℃に上げて30秒間加熱した。これによって、より高い温度で材料が完全に焼結される前に、エッジに沿って銀が焼結された。30秒後、圧盤温度を150℃に上げて10分間加熱した。
【0145】
第二のソース及びドレイン層の印刷のためには、全部の画像又は機能が2回印刷されるわけではない。ドレインラインは1回だけ印刷されたが、ソースパッドは2回印刷された。ソースパッドは、第一層の焼結後の不均一性のため、2回印刷された。圧盤を150℃に10分間設定し、銀を焼結した。チャネル長さ(ソースパッドとドレインラインとの間の距離)は150μmであった。
【0146】
半導体の印刷プロセスを開始する前に、圧盤を30℃まで冷まし、絶縁材料及びソース/ドレインコンタクトに表面処理を適用した。高純度のトルエンを、ピペットを使って、試料全体の表面上に堆積させ、この試料を1.0分間置いた。1.0分間後、エアスプレー缶(Uline、S−6771)を用いてトルエンを吹き飛ばして除去した。次に、高純度トルエン中の1.0mmolペルフルオロチオフェノール溶液を、試料全体の表面に堆積させ、1.0分間置いた。溶液を、エアスプレー缶を用いて吹き飛ばして除去した。この表面を再び、ペルフルオロチオフェノール溶液で1.0分間処理した。溶液を、エアスプレー缶を用いて吹き飛ばして除去した。最後の段階で、高純度のトルエンを基材の表面全体に堆積させ、20秒間置いた。20秒後、エアスプレー缶を用いてトルエンを吹き飛ばして除去した。
【0147】
インクジェット印刷によるトランジスタの作製−半導体堆積方法I
組成物は、インクジェットプリンタ(Fujifilm Dimatix,Inc.(カリフォルニア州サンタクララ)から商標名DIMATIX 2800シリーズとして市販)を使用して、3つの印刷パターンのうち1つで層状トランジスタ構造に堆積され、このそれぞれが個々の液滴体積10ピコリットルであった。組成物は、インクジェットカートリッジ(Fujifilm Dimatix,Inc.(カリフォルニア州サンタクララ)から販売されているモデルNo.DMCLCP−11610)に搭載される際に、0.2マイクロメートルのフィルタを通過した。このインクジェットヘッドと、層状トランジスタ構造が置かれる圧盤は、約30℃の温度に維持された。インクジェットヘッドから基材までの距離は約1ミリメートルであった。プリントパターン1について、組成物52滴が、各トランジスタの13×4滴マトリックス内(液滴の中心間間隔は40マイクロメートル)に堆積された。プリントパターン2について、組成物99滴が、各トランジスタの11×9滴マトリックス内(液滴の中心間間隔は40マイクロメートル)に堆積された。プリントパターン3について、組成物121滴が、各トランジスタの11×11滴マトリックス内(液滴の中心間間隔は30マイクロメートル)に堆積された。X滴がチャネル幅と同じ意味(例えば方向)になり、Y滴がチャネル長さと同じ意味になるように、これらのさまざまなX×Y液滴マトリックスが堆積された。各組成物は、基材の印刷中に圧盤上で30℃で乾燥され、次に印刷が完了した後、室温で乾燥された。移動度は、組成物が堆積されてから約1〜24時間後に測定された。
【0148】
インクジェット印刷によるトランジスタの作製−半導体堆積方法II
全インクジェットプロセスによって形成された層状トランジスタ構造を含むPENフィルムである基材I上に、下記の方法によって組成物を堆積した。
【0149】
「層状トランジスタ構造の作製」に記述の通り、基材Iの表面処理を完了後、SX3−128プリントヘッドををシステムから取り出し、SE−128プリントヘッドに交換した。このプリントヘッドを、半導体層を形成するための半導体組成物で充填した。SE−128プリントヘッドは128個のジェットと、個々の液滴体積30ピコリットル(pL)を有していた。高さを基材から約1.0mmの位置に設定し、解像度276滴/cm(702dpi)が得られるようにサーベル角度を設定した。基材Iの他の層で前に述べたようにして、半導体層の位置固定を完了した。
【0150】
半導体組成物の堆積の前に、表面処理後に基材上に残っている可能性がある溶媒(トルエン)を除去するため、予熱工程を実施した。この予熱工程は、オンライン赤外線ランプを2.0in/secの速度、出力80パーセントで6回通過させることによって完了した。完了後、圧盤を30℃まで冷ました。
【0151】
Adobe Photoshopで作成した図1に示すビットマップ画像によって画定されたプリントパターンで、半導体組成物を基材I上に堆積させた。ビットマップ画像の各ビット又はピクセルは、解像度276液滴/cm(702dpi)によって、約36マイクロメートル×36マイクロメートルの領域を示す。図1の暗色ビットは、半導体組成物1滴(30pL)の堆積を示す。明色ビットは、その位置で半導体堆積が起こらないことを示す。合計44滴の半導体組成物が、各トランジスタ構造に堆積された。ビットマップに画定されているパターンの長手方向長さに走っているプリントパターンの中心線を、チャネル幅の同じ方向に走っている中心線で、薄膜トランジスタの中心線上に合わせた。すなわち、プリントパターンの中心線は、ソース電極とドレイン電極の中央に配置された。
【0152】
ディップコーティングによるトランジスタの作製−半導体堆積方法III
全ディップコーティングは基材Gを使用した。これを、プラズマクリーニングシステム(Yield Engineering Systems,Inc.(カリフォルニア州リバモア)から販売されているモデルYES−G1000)で、出力設定500ワット、酸素圧約26.7Pa(200mTorr)を用いて、3分間処理した。各半導体溶液を、孔径0.2マイクロメートル、直径25mmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタ(Pall Life Sciences(ニューヨーク州イーストヒルズ)からACRODISC CRの商標名で市販)で濾過し、次にディップコーティングタンク(およそ幅50mm、深さ5mm、高さ30mm)に入れた。各基材試料を、ディップコーティング装置(Nima Technology Ltd.(英国・コベントリー)から商標名NIMA D1Lとして市販)を使用して、毎分3ミリメートルの引き上げ速度で浸した。各溶液を約5mL使用した。各試料を室温で乾燥した。コーティング後、基材のSiO表面上に長い結晶が現れ、これは典型的に、ディップ軸に対して平行の向きであった。すなわち、結晶の長手方向が、ディップ方向と同じ方向に向いていた。金のソース電極及びドレイン電極(厚さ約800〜1000オングストローム)を、加熱蒸発器を用いて、シャドーマスクを通して蒸着させ、これによりボトムゲート、トップコンタクト構造のトランジスタを形成した。ソース及びドレイン電極は、電極の長手方向(チャネル幅)がディップ軸方向に直角になるように向けられた。ソース及びドレインコンタクトは、トランジスタ幅が約1000マイクロメートル、チャネル長さが約100マイクロメートルになるような大きさにされた。
【0153】
移動度試験方法I
2台のソースメジャーユニット(モデル2400、Keithley Instruments,Inc.(オハイオ州クリーブランド))を用いて空気中で飽和電界効果移動度(μ)が測定された。この装置はS−1160シリーズプローブステーション上に置かれ、S−725−PRMマニピュレーター(両方ともSignatone Corp.(カリフォルニア州ギルロイ)を使用してプローブが接続された。ドレイン・ソース間バイアス電圧(VDS)を−40Vに維持し、ゲート・ソース間バイアス(VGS)を+10V〜−40Vの範囲で1V刻みで増加させた。ドレイン・ソース間電圧バイアス(VDS)を一定の−40Vに維持し、ゲート・ソース間電圧バイアス(VGS)の+10V〜−40Vの範囲での関数として、ドレイン・ソース間電流(IDS)が測定された。飽和電界効果移動度(μ)は、次の式を使用し、IDSの平方根をVGSに対してプロットし、直線部分の傾きから算出された。
【0154】
DS=μWC(VGS−V÷2L
式中、Cはゲート絶縁体の固有キャパシタンス、Wはチャネル幅、及びLはチャネル長さである。基材Eを使用して作製された一部のトランジスタ試料については、ゲート・ソース間バイアス(VGS)を、+20V〜−40Vの範囲で1.2V刻みで変えた。
【0155】
DSの平方根対VGSの曲線プロットを用い、直線適合のX軸補外を、閾値電圧(V)とした。更に、IDS(対数スケールを用いる)をVGSの関数としてプロットして曲線を得て、Vを含む曲線部分に沿って直線の適合線を引いたこの線の傾きの逆数は、閾値下の傾き(S)であった。オン/オフ比を、IDS−VGS曲線のドレイン電流(IDS)の最小値と最大値との差とした。
【0156】
移動度試験方法II
各試料の平均移動度が、2台のソースメジャーユニット(モデル2400、Keithley Instruments,Inc.(オハイオ州クリーブランド))を用いて、空気中、周辺光のもとで測定された。この装置はS−1160シリーズプローブステーション上に置かれ、S−725−PRMマニピュレーター(両方ともSignatone Corp.(カリフォルニア州ギルロイ)を使用してプローブが接続された。ドレイン・ソース間バイアス電圧(VDS)を−40Vに維持し、ゲート・ソース間バイアス(VGS)を+10V〜−40Vの範囲で1V刻みで増加させた。平均移動度は、各基材について10個のトランジスタの測定値から計算される。
【0157】
ディップコーティングは必ずしも基材を完全に覆わないため、デバイスの「有効チャネル幅」が測定された。乾燥した半導体組成物で覆われた基材表面の割合が次の手順で測定された。(i)高倍率(100X)で基材のデジタル写真を3枚撮影し、(ii)写真編集ソフトウェア(Adobe Systems Inc.(カリフォルニア州サンホゼ)から商標名PHOTOSHOP CS3として市販)を使用して、L,a,b色座標で均一黒色(0,0,0)である曝露基材の領域を識別及びレンダリングし、(iii)写真編集ソフトウェアのヒストグラム機能を使用して、明度(L)<15のパーセンテージを識別し、(iv)3枚の写真の結果を平均して、基材の表面カバレージについての値を得た。表面カバレージの値を使用して、TFTの有効チャネル幅を計算し、この有効チャネル幅を使用して、電荷キャリア移動度を計算した。有効チャネル幅を計算するには、次の式を使用した。
【0158】
【数1】

【0159】
式中、Weffは有効チャネル幅、Wdepはソース及びドレインコンタクトの長さ(堆積したもの)、及びCovは表面カバレージ(パーセント単位)である。例えば、ソース及びドレイン電極が長さ1000マイクロメートル、表面カバレージが80パーセントの場合、有効チャネル幅は800マイクロメートルとなる。
【0160】
次の式を用いて、ドレイン電流の平方根をVGSに対してプロットし、その傾き(m)から飽和電界効果移動度(μ)が計算された。
【0161】
【数2】

【0162】
式中、Cはゲート絶縁体の固有キャパシタンス、Wは有効チャネル幅、及びLはチャネル長さである。各資料の移動度は、測定範囲にわたって観察された最高の移動度であった。
【0163】
移動度試験方法III
移動度試験方法IIと同じ方法で、ただしゲート・ソース間(VGS)バイアスを、+5V〜−40Vの範囲で、51段階の等しい刻み段階で変えた。
【0164】
表1〜5及び7〜11で、1つの表に記載された組成物はすべて、全く同じ基材試料上にインクジェット印刷された。すなわち、その表のある組成物が1つの基材試料上にインクジェット印刷されていなければ、その表の他の組成物は、同じタイプ及び表面処理の別の基材試料上にインクジェット印刷された。表6には、4つの基材タイプが記載されている。同じタイプの基材を記載した実施例については、組成物は全く同じ基材試料上にインクジェット印刷された。
【0165】
実施例1及び比較例1
実施例1及び比較例1については、91/9のアニソール/デカン中、1.8重量パーセントのTIPS、及びアニソール中2.0重量パーセントのTIPSがそれぞれ、組成物調製方法Iによって調製された。各組成物を、基材Hの硬化したZrOAc絶縁層上に堆積させた。これは、典型的な実験用使い捨てガラスピペットで、該当の組成物の少量をとり、バルブを押してピペットから事実上すべての組成物を押し出してその組成物を保持するバイアルに戻し、次に繰り返しバルブを押して、ピペットの壁に残る少量の組成物を追い出し、硬化したZrOAc絶縁層上に載せた。組成物と基材は両方とも室温であった。このプロセスで、絶縁体上に堆積した組成物の小さな液滴又は「ミスト」が生じた。この組成物を20分以上乾燥させ、このスライドをOlympus MX50光学顕微鏡の微分干渉コントラスト(DIC)モードで観察した。アニソール中2.0重量パーセントのTIPS、及び91/9のアニソール/デカン中1.8重量パーセントのTIPSから形成された半導体堆積の光学顕微鏡写真をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0166】
アニソールから堆積したTIPSは、絶縁体を均一に覆わなかった。比較的大きな結晶が、組成物で元々覆われていた領域の小さな部分だけを覆って形成された。組成物は、基材上でピン固定が生じたと見られる。すなわち、組成物と基材との間の接触ラインの位置が、アニソールが蒸発しても同じ位置に維持された。アニソールは比較的ゆっくりと蒸発し、液滴の外周部は同じ位置でピン固定されたため、比較的大きな結晶が形成された。すべての結晶が、絶縁層に対して平らになっているわけではなかった。むしろ、多くの結晶は絶縁層の面から離れて成長した。乾燥プロセスのある時点で、組成物は外周部の少なくとも一部に沿ってピン固定から開放され、接触ラインが内側に移動し、組成物と基材との間の界面張力によって定まる新しい平衡位置が画定された。この組成物が再び、新しい位置でピン固定され、結晶が更に成長した。よって、結晶は液滴の最初の外周に沿い、及び、接触ラインがピン固定された位置を表わす線に沿って、堆積された。また、結晶の線の一部は、ピン固定された接触ラインの位置を表わしていない可能性もある。しかしながらむしろ、ピン固定された接触ラインが不安定になって内側に後退し始め、このピン固定された線に沿って成長した結晶の一部が離脱して、後退する溶液によって運ばれ、基材上に再堆積したときに、これらが形成された。アニソール中TIPS溶液は、基材上でピン固定されると見られ、これによりTIPS結晶による基材のカバレージが不十分となる。
【0167】
組成物にデカンを加えて91/9のアニソール/デカン溶媒混合物を提供すると、絶縁層上のTIPS堆積のモルホロジーが劇的に変化した。TIPSは、液滴で覆われたほぼ全表面を覆う、良好に画定された結晶として堆積した。デカンの追加により、組成物が基材上にピン固定される傾向が低下し、また基材に対する組成物の接触角も低減したと見られる。結晶は、基材から離れずに、基材に沿って成長する傾向にあった。デカンの追加により、溶媒が蒸発する際に組成物内に再循環流(すなわちマランゴニ対流)も生じた可能性がある。この再循環流も、モルホロジー改善に寄与した可能性がある。
【0168】
実施例2〜4及び比較例2〜3
実施例2〜4及び比較例2〜3については、組成物調製方法Iによって組成物が調製された。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン2で基材E上にTIPS組成物を堆積させることによって作製された。TIPSの濃度、PSの濃度、溶媒、及び溶媒の相対量は、表1に示されている。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表1に示されている。
【0169】
【表1】

【0170】
実施例5〜8及び比較例4
実施例5〜8及び比較例4については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。組成物中に含まれた溶媒又は溶媒混合物を、表2に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン2で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表2に示されている。
【0171】
【表2】

【0172】
実施例9
実施例9では、91重量パーセントのアニソールと9重量パーセントのデカンの重さを量った混合物を、組成物調製方法Iによる十分量のTIPS及び十分量のPS2と合わせて、1.8重量パーセントのTIPS及び1.8重量パーセントのPS2を含む組成物を供給した。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。チャネル長さは30マイクロメートルであった。平均移動度は、移動度試験方法Iによって、4.67×10−2cm/V−sと測定された。
【0173】
実施例10〜13
実施例10〜13については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。組成物中に使用した溶媒混合物を、表3に示す。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表3に示されている。
【0174】
【表3】

【0175】
実施例14〜16
実施例14〜16については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。組成物中に含まれた溶媒混合物を、表4に示す。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表4に示されている。
【0176】
【表4】

【0177】
実施例17〜18及び比較例5〜8
実施例17〜18については、組成物は組成物調製方法Iによって調製された。比較例5〜8については、1体積のドデカンと3体積のクロロベンゼンをバイアルに加え、内容物を攪拌して、75体積パーセントのクロロベンゼン及び25体積パーセントのドデカンからなる溶媒混合物が調製された。この溶媒混合物を、組成物調製方法Iによる組成物調製に使用した。この使用した溶媒混合物は、表5に示されている。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。実施例17及び比較例5〜6については、トランジスタチャネル長さは100マイクロメートルであった。実施例18及び比較例7〜8については、トランジスタチャネル長さは30マイクロメートルであった。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表5に示されている。
【0178】
【表5】

【0179】
実施例19〜22及び比較例9〜10
実施例19〜22及び比較例9〜10については、組成物調製方法Iによって組成物が調製された。実施例19〜22に使用された組成物は、91/9のアニソール/デカン中、1.8重量パーセントのTIPS及び0.9重量パーセントのPSを含んでいた。比較例9及び比較例10に使用された組成物は、アニソール中、2.0重量パーセントのTIPS及び1.0重量パーセントのPSを含んでいた。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン1で基材上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表6に示されている。
【0180】
【表6】

【0181】
実施例23〜27及び比較例11
実施例23〜27及び比較例11については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。組成物中に含まれた溶媒又は溶媒混合物を、表7に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表7に示されている。
【0182】
【表7】

【0183】
実施例28〜33
実施例28〜33については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。組成物中に含まれた溶媒混合物を、表8に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表8に示されている。
【0184】
【表8】

【0185】
実施例34〜37及び比較例12
実施例34〜37及び比較例12については、組成物調製方法Iによって組成物が調製された。組成物に含まれたTIPSの量、PSの量、及び溶媒又は溶媒混合物を、表9に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン2で基材F上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表9に示されている。
【0186】
【表9】

【0187】
実施例38〜39及び比較例13〜14
実施例38〜39及び比較例13〜14については、組成物調製方法Iによって組成物が調製された。組成物に含まれたTIPSの量、PSの量、及び溶媒又は溶媒混合物を、表10に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン2で基材F上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表10に示されている。
【0188】
【表10】

【0189】
実施例40及び比較例15
実施例40及び比較例15については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法IIに従って調製した。組成物中に含まれた溶媒又は溶媒混合物を、表11に示す。トランジスタは、半導体堆積方法IIを用い、基材I(PENフィルム上に全インクジェット印刷された層状トランジスタ構造)上に組成物を堆積させて作製された。チャネル長さは150マイクロメートルであった。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表11に示されている。
【0190】
【表11】

【0191】
実施例41〜45及び比較例16〜18
実施例41〜45及び比較例16〜18それぞれについては、1.8〜2.0重量パーセントの半導体の組成物が、組成物調製方法IIによって調製された。組成物中に含まれた溶媒又は溶媒混合物を、表12に示す。トランジスタは、半導体堆積方法IIIに記述されたディップコーティングを使用して、基材G上に半導体組成物を堆積させることによって作製された。各試料の平均移動度は、移動度試験方法IIによって測定され、そのデータを表12に示す。
【0192】
【表12】

【0193】
実施例46〜50及び比較例19
実施例46〜50及び比較例19については、1.8重量パーセントのTIPSと0.9重量パーセントのPSを、組成物調製方法Iに従って調製した。組成物中に含まれた溶媒又は溶媒混合物を、表13に示す。トランジスタは、半導体堆積方法Iを用いてプリントパターン3で基材E上に組成物を堆積させることによって作製された。移動度試験方法Iによって平均移動度が測定され、そのデータが表13に示されている。
【0194】
【表13】

【0195】
実施例51〜53及び比較例20
実施例51〜53及び比較例20については、半導体堆積方法IIIに従い、ディップコーティングによって試料が作製された。各実施例及び比較例の半導体溶液は、表14に示す溶媒系中、1.8〜2.0重量パーセントのTIPS溶液であった。これらの溶液は、組成物調製方法IIによって調製された。移動度は移動度試験方法IIIに従って計算された。
【0196】
【表14】

【0197】
実施例54〜56及び比較例21
実施例54〜56及び比較例21については、半導体堆積方法IIIに従い、ディップコーティングによって試料が作製された。各実施例及び比較例の半導体溶液は、表15に示す溶媒系中、1.8〜2.0重量パーセントのTIPS溶液であった。これらの溶液は、組成物調製方法IIによって調製された。移動度は移動度試験方法IIIに従って計算された。
【0198】
【表15】

【0199】
実施例57〜59及び比較例22
実施例57〜59及び比較例22については、半導体堆積方法IIIに従い、ディップコーティングによって試料が作製された。各実施例及び比較例の半導体溶液は、表16に示す溶媒混合物中、1.8〜2.0重量パーセントのA−DIPS溶液であった。これらの溶液は、組成物調製方法IIによって調製された。各実施例及び比較例で使用されたアルカンは、デカンであった。移動度は移動度試験方法IIIに従って計算された。
【0200】
【表16】

【0201】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変は、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる例示的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
a)溶媒混合物であって、
i)前記溶媒混合物の重量に対して、1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカンと、
ii)式(I)
【化1】

で表わされ、式中、
はアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環であり、
各Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択され、
nは0〜5の範囲の整数であり、該溶媒混合物の重量に対して、80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する芳香族化合物を含む、溶媒混合物、及び、
b)前記組成物の合計重量に対して、0.1重量パーセント以上の量で前記溶媒混合物に溶解している有機半導体材料と、
を含む、組成物。
【請求項2】
が1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
式(I)の前記芳香族化合物が、アニソール、2−メチルアニソール、3−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、2,5−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール、3,5−ジメチルアニソール、2−クロロアニソール、3−クロロアニソール、4−クロロアニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、又はこれらの混合物を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
式(I)の前記芳香族化合物が、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、又はこれらの混合物を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
が1〜10個の炭素原子を有するアルキルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
式(I)の前記芳香族化合物が、n−ブチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、イソプロピルトルエン、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)、メシチレン、テトラヒドロナフタレン、又はこれらの混合物を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)の前記芳香族化合物が、n−ブチルベンゼン、アニソール、3,5−ジメチルアニソール、又はこれらの混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記アルカンが9〜13個の炭素原子を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルカンがデカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記溶媒混合物が、式(I)の芳香族化合物を88〜99重量パーセント、及びアルカンを1〜12重量パーセント含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物であって、
a)溶媒混合物であって
i)前記溶媒混合物の重量に対して、1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカンと、
ii)式(I)
【化2】

で表わされ、式中、
はアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環であり、
各Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択され、
nは0〜5の範囲の整数であり、前記溶媒混合物の重量に対して、80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する芳香族化合物、を含む溶媒混合物、及び、
b)前記組成物の合計重量に対して、0.1重量パーセント以上の量で、前記溶媒混合物に溶解している式(II)の有機半導体材料であって、
【化3】

式中、
各Rは独立に、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、フェロセニル、又は式−Si(Rのシリル基から選択され、
各Rは独立に、水素、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アルキニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、又はアセチルから選択され、
各Xは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、シアノ、又はヘテロアリールから選択され、
置換アルキル又は置換ヘテロアルキルは、少なくとも1つのアリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され、
置換アルケニル又は置換アルキニルは、少なくとも1つのアルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され、かつ、
置換アリール又は置換ヘテロアリールは、少なくとも1つのアルキル基、アルコキシ基、ヘテロアルキル基、アルコキシ基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基で置換されている、有機半導体材料と、
を含む、組成物。
【請求項12】
が式−Si(Rのシリル基である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記有機半導体が、式(IV)〜(X)の化合物
【化4】

【化5】

から選択される、請求項11又は12に記載の組成物。
【請求項14】
式(I)の前記芳香族化合物がアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物を含み、前記アルカンがデカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物を含む、請求項11〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記溶媒混合物が、式(I)の芳香族化合物を88〜99重量パーセント、及びアルカンを1〜12重量パーセント含む、請求項11〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
半導体デバイスの製造方法であって、
組成物を提供する工程であって、
a)溶媒混合物であって、
i)前記溶媒混合物の重量に対して、1〜20重量パーセントの範囲の量で存在する、6〜16個の炭素原子を有するアルカンと、
ii)式(I)
【化6】

で表わされ、式中、
はアルキル、ヘテロアルキル、アルコキシ、ヘテロアルコキシ、又は5〜6員の縮合環であり、
各Rは独立に、アルキル、アルコキシ、又はハロから選択され、
nは0〜5の範囲の整数であり、前記溶媒混合物の重量に対して、80〜99重量パーセントの範囲の量で存在する芳香族化合物と、を含む、溶媒混合物と、
b)前記組成物の合計重量に対し、0.1重量パーセント以上の量で前記溶媒混合物に溶解している、有機半導体材料と、を含む、組成物を提供する工程と、
導電性材料に隣接して、又は誘電性材料に隣接して、前記組成物を堆積させて、堆積層を形成する工程と、
前記溶媒混合物の少なくとも80重量パーセントを前記堆積層から除去して半導体層を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項17】
前記有機半導体が式(II)
【化7】

のものであり、式中、
各Rは独立に、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、フェロセニル、又は式−Si(Rのシリル基から選択され、
各Rは独立に、水素、未置換若しくは置換アルキル、未置換若しくは置換ヘテロアルキル、未置換若しくは置換アルケニル、未置換若しくは置換アルキニル、未置換若しくは置換アリール、未置換若しくは置換ヘテロアリール、又はアセチルから選択され、
各Xは独立に、水素、ハロ、アルキル、アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、アルケニル、シアノ、又はヘテロアルキルから選択され、
置換アルキル又は置換ヘテロアルキルは、少なくとも1つのアリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され、
置換アルケニル又は置換アルキニルは、少なくとも1つのアルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基で置換され、かつ、
置換アリール又は置換ヘテロアリールは、少なくとも1つのアルキル基、ヘテロアルキル基、アルコキシ基、ハロ基、シアノ基、ヒドロキシル基、−SeH、又はカルボキシル基で置換されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
が式−Si(Rのシリル基である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(I)の前記芳香族化合物がアニソール、3,5−ジメチルアニソール、n−ブチルベンゼン、又はこれらの混合物を含み、前記アルカンがデカン、ウンデカン、ドデカン、又はこれらの混合物を含む、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記溶媒混合物が、式(I)の芳香族化合物を88〜99重量パーセント、及びアルカンを1〜12重量パーセント含む、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記溶媒混合物が、アニソールとデカン、3,5−ジメチルアニソールとドデカン、又はn−ブチルベンゼンとウンデカンを含む、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−525044(P2011−525044A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513554(P2011−513554)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/045571
【国際公開番号】WO2009/151978
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】