説明

有機性廃棄物の処理方法及び装置

【課題】 メタン発酵を伴う有機性廃棄物の窒素除去処理にて、高い窒素除去率を維持しつつ外部添加する有機炭素源量を低減できる有機性廃棄物の処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】 有機性廃棄物20をメタン発酵するメタン発酵槽12と、メタン発酵液21から窒素除去する窒素除去設備とを備え、該窒素除去設備が、少なくとも第1脱窒槽13と硝化槽14とが順に直列接続され、該硝化槽14からの硝化液22の少なくとも一部を第1脱窒槽13に循環させる第1硝化液循環ライン23を備えた有機性廃棄物の処理装置において、前記硝化槽14からの硝化液の他の一部をメタン発酵槽12より上流側に循環させる第2硝化液循環ライン24を備えるとともに、前記第1脱窒槽からの脱窒液若しくは前記硝化槽からの硝化液中の酸化態窒素濃度を検出する手段32、33と、検出した酸化態窒素濃度に基づき第1脱窒槽13への循環硝化液量とメタン発酵槽12への循環硝化液量を夫々独立制御する制御手段34とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵処理を伴う有機性廃棄物の生物学的窒素除去処理に関し、特に、有機性廃棄物をメタン発酵して得られたメタン発酵液に含有される窒素を、硝化液循環法を用いた生物学的硝化脱窒素処理により除去する有機性廃棄物の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機性廃棄物の処理方法として、環境負荷が小さく且つ比較的低コストで処理を行うことができることから生物処理が広く用いられている。生物処理は、微生物の分解作用により有機性廃棄物中の汚濁物質を分解、除去する方法であり、例えば、メタン発酵法、生物学的脱窒素法等が挙げられる。
生物処理を用いた従来の一般的な有機性廃棄物の処理プロセスを図7に示す(特許文献1等参照)。この処理プロセスでは、前処理装置40にて前処理を施した有機性廃棄物を混合槽41に投入して水量調整や濃度調整、各種有機性廃棄物の混合、或いは酸発酵等を行った後に、該廃棄物をメタン発酵槽42にてメタン発酵菌の作用によりメタン発酵し、メタンガスとメタン発酵液を得る。メタン発酵槽42では廃棄物中に含まれるタンパク質等の窒素源がアンモニア態窒素に転換されるため、メタン発酵槽42の後段にはこの窒素を除去する窒素除去設備が設けられる。
【0003】
生物学的窒素除去設備としては、第1脱窒槽43と、硝化槽44と、第2脱窒槽45と、再曝気槽46と、固液分離装置47が直列的に順次配設された構成を有し、前記硝化槽44からの硝化液の少なくとも一部を分岐させ、これを硝化液循環ライン48を介して第1脱窒槽43に循環させる硝化液循環型の装置がある。メタン発酵液中のアンモニア態窒素は、第1脱窒槽43では除去されないまま硝化槽44に流入し、ここで硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等の酸化態窒素に変化する。この酸化態窒素を含む硝化液の一部を第1脱窒槽43へ循環させると、硝化液中の酸化態窒素がメタン発酵液中の有機物を有機炭素源として利用して分解し、窒素ガスとなる。ここで分解されずに残留したアンモニア態窒素は、後段の第2脱窒槽45にてメタノール等の有機炭素源を外部添加され、窒素ガスまで分解する。
しかし、メタン発酵原料である有機性廃棄物の性状変動によって発酵液中の残留有機物濃度が低下した場合や、生ごみなどの窒素濃度の高い有機性廃棄物が処理対象である場合などには系内の有機炭素源が大幅に不足し、外部より添加する有機炭素源量を増加せざるを得ず、結果として処理装置のランニングコストが嵩むことが問題となっていた。
【0004】
また、特許文献2(特開2003−94021号公報)には、有機性廃棄物を調整槽、可溶化槽、酸発酵槽にて順次処理した後、処理液をメタン発酵槽にてメタン発酵し、メタン発酵液を固液分離した分離液を水処理系列に流入させてアンモニア態窒素を酸化態窒素まで分解し、該酸化態窒素を含む処理液を前記調整槽、可溶化槽、酸発酵槽の少なくとも一つに循環させ、酸発酵槽或いはメタン発酵槽にて、廃棄物中の有機物を有機炭素源として用い前記酸化態窒素を窒素ガスに変換する処理装置が開示されている。ここで前記水処理系列としては、例えば硝化槽と、脱窒素槽と、硝化槽と、固液分離装置とを直列配置した構成、或いは間欠曝気方式の硝化脱窒素槽と、硝化槽と、固液分離装置とを直列配置した構成等が提案されている。
【0005】
上記したように、メタン発酵槽では発酵中にアンモニア態窒素が生成されるが、このアンモニア態窒素は一定濃度を超えるとメタン発酵を阻害することが知られている。そこで、特許文献2に記載の方法のように、水処理後のアンモニア態窒素を殆ど含まない処理液を酸発酵槽より上流側に循環させることによって、槽内の発酵液が希釈されるとともに、処理液中に含まれる酸化態窒素が酸発酵槽若しくはメタン発酵槽中の有機物によって還元され窒素ガスとなるため、ここで発酵と同時に脱窒反応も行うことができ、後段の水処理系列における第1脱窒槽を省くことが可能となり、装置の小型化が図れる。
【0006】
【特許文献1】特開平6−178995号公報
【特許文献2】特開2003−94021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2に記載される方法では、窒素除去率を高く維持することは困難であり、また高除去率を達成しようとすると外部添加する有機炭素源の使用量が増加する惧れがある。これは硝化液の循環液量の不具合に起因するもので、以下の理由による。
一般的な硝化液循環法を用いた処理装置において、硝化液の循環液量は、脱窒槽、硝化槽における窒素除去率と、脱窒槽におけるBOD除去率とを支配するので目的に応じた循環液量を設定する必要がある。
まず、硝化液の循環液量の基本原理につき説明すると、図6(a)に示すように、流量Qの原水は第1脱窒槽に流入した後、硝化槽に流入し、硝化液の少なくとも一部が分岐されて循環液量nQとして前記第1脱窒槽に循環される。このとき、nは循環比である。硝化槽より排出される液流量はQ(1+n)となる。
原水中のアンモニア態窒素は、第1脱窒槽では除去されずに硝化槽にて酸化態窒素に酸化される。このとき、アンモニア態窒素の全部が酸化態窒素に変換されるものとする。
この酸化態窒素は、循環によって第1脱窒槽に持ち込まれ、第1脱窒槽で原水中の有機物(BOD)を有機炭素源として窒素ガス(N)に還元される。
【0008】
硝化槽にて生成した酸化態窒素の何%が第1脱窒槽に循環されるかは流量比で決まるため、この装置では[nQ/Q(1+Q)]となる。従って、原水中のBODを有機炭素源とした窒素除去率ηは、[η=n(1+n)]で決まり、図6(b)のグラフで表される。原水中のBODで90%の窒素除去率を得るには、η=0.9とするとn=9となり、硝化液を9Qだけ循環させる必要がある。さらに残留する10%の窒素を除去するためのメタノールの添加量が必要となる。
ここで、特許文献2に記載したように、酸発酵槽を介してメタン発酵槽へ循環させる場合、メタン発酵槽では廃棄物中の有機性炭素濃度が高いため、窒素除去率を良好に保つためには硝化液の循環液量を多くしなければならない。しかし、メタン発酵槽に大量の循環硝化液を流入すると、酸化態窒素がメタン発酵菌の阻害となるという問題があり、またメタン発酵槽では十分な滞留時間を確保する必要があるため、その循環液量に上限があり、これらを考慮した循環液量の上限は2Q程度で、90%の窒素除去率を得るための9Qの循環液量を確保することは不可能である。すると、この装置による窒素除去率ηは、n=2のときη=(2/1+2)=0.67となり、廃棄物中のBODを利用した窒素除去率は67%で、残り33%の窒素を除去するために外部より有機炭素源を添加しなければならない。これは、上記した一般的な硝化液循環法を用いた装置で必要とされる量に比べて、約3倍の量となる。
【0009】
このように、特許文献2に記載される方法では、窒素除去率を高く維持しようとすると大量の循環液量を確保せねばならなかったが、メタン発酵効率を維持する観点からこれは不可能であり、従って有機炭素源の外部添加量が増大してしまい、ランニングコストが増加するという問題を回避できない。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、メタン発酵を伴う有機性廃棄物の窒素除去処理にて、高い窒素除去率を維持しつつ外部より添加する有機炭素源量を低減できる有機性廃棄物の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、
有機性廃棄物をメタン発酵してメタンガスとメタン発酵液を得るメタン発酵工程と、該メタン発酵液から窒素除去する窒素除去工程と、を備え、該窒素除去工程にて、少なくとも脱窒工程と硝化工程を順に行い、該硝化工程にて得られた硝化液の少なくとも一部を前記脱窒工程に循環させるようにした有機性廃棄物の処理方法において、
前記硝化工程からの硝化液の他の一部を分岐させ、該分岐した硝化液を前記メタン発酵工程より上流側に返送して循環させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、メタン発酵工程より上流側に循環させる循環硝化液中の酸化態窒素がメタン発酵工程にて窒素ガスまで還元されるため、後段の窒素除去設備に流入する窒素負荷が軽減し、脱窒反応用に外部から添加する有機炭素源量を低減でき、運転経費の削減が可能となる。またメタン発酵液中の有機物濃度が低下しても有機炭素源の量的増加を防止できる。さらに本発明では、メタン発酵工程の後に脱窒工程を行う構成としたため、窒素除去率を高く維持することが可能である。
従来の窒素除去設備では、脱窒工程を省略して循環硝化液を全量メタン発酵工程に循環する方法があるが、この方法ではメタン発酵工程に脱窒機能を完全に負わせることになり、絶対嫌気性状態を維持すべきメタン発酵工程でこの両方の機能を高い効率で安定維持することは極めて困難であり、本発明の方法が最も合理的である。
尚、循環硝化液の返送位置はメタン発酵工程より上流側であれば何れでもよく、メタン発酵工程より前段に廃棄物の酸発酵、調整、混合工程等を行う他の工程があればここに戻しても良いが、特にメタン発酵工程に循環硝化液が直接流入する位置に戻すことが好ましい。これは、メタン発酵工程が最も嫌気度が高いため、脱窒反応が効率良く行われるためである。
【0012】
また、前記脱窒工程にて得られた脱窒液、若しくは前記硝化工程にて得られた硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出し、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液量を制御することを特徴とする。
また、前記脱窒工程にて得られた脱窒液、若しくは前記硝化工程にて得られた硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出し、前記脱窒工程へ返送する循環硝化液量及び前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液量を夫々独立制御するようにしても良い。
これらの発明によれば、原料である有機性廃棄物の何らかの性状変動によってメタン発酵液の有機性廃棄物濃度が低下した場合でも好適に適用できる。
即ち、メタン発酵液の有機物濃度が低下すると、脱窒工程における反応効率が低下し、脱窒液中に酸化態窒素が残留してしまうため、脱窒液或いは硝化液の酸化態窒素濃度の上昇として現れる。そこで、検出された酸化態窒素濃度に基づきメタン発酵への循環実施の可否、或いは循環液量の制御を行うことにより、効率の良い脱窒を行うことができ、有機炭素源の外部添加量の増加を防ぐことができる。尚、本発明において、前記した2系統の制御機構を連動させ、硝化液循環量の配分制御を行うようにしても良い。
【0013】
さらに、前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液を固液分離する固液分離工程を設け、該固液分離した分離液のみを前記メタン発酵工程より上流側へ返送することを特徴とする。
前記硝化液中には、硝化工程から流出した硝化菌等の微生物が含まれるため、この微生物が硝化液とともにメタン発酵工程に流入すると、メタン発酵菌の活性阻害の要因となる。従って、本発明のように循環硝化液を固液分離し、微生物を含む固形物と、酸化態窒素を含む分離液とに分離し、該分離液のみをメタン発酵工程に循環させることにより、メタン発酵効率の低下を防止することができる。
さらにまた、前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液を可溶化処理する可溶化工程を設け、可溶化処理液を前記メタン発酵工程より上流側へ返送することを特徴とする。
このように、循環硝化液を可溶化した後にメタン発酵工程より上流側に循環させることによって、メタン発酵効率が良好となりメタンガスの回収率が向上し、また窒素除去工程における有機炭素源の外部添加量を低減することが可能となる。
【0014】
また、装置の発明として、有機性廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、該メタン発酵槽より流出するメタン発酵液から窒素除去する窒素除去設備と、を備え、該窒素除去設備が、少なくとも脱窒槽と硝化槽とが順に直列接続され、該硝化槽からの硝化液の少なくとも一部を前記脱窒槽に循環させる第1硝化液循環ラインを備えた有機性廃棄物の処理装置において、
前記硝化槽からの硝化液の他の一部を前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる第2硝化液循環ラインを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記脱窒槽から流出する脱窒液、若しくは前記硝化槽から流出する硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出する酸化態窒素濃度検出手段と、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる循環硝化液量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
また、前記脱窒槽から流出する脱窒液、若しくは前記硝化槽から流出する硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出する酸化態窒素濃度検出手段と、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記脱窒槽へ循環させる循環硝化液量及び前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる循環硝化液量を夫々独立制御することを特徴とする。
さらに、前記第2硝化液循環ライン上に、循環硝化液を固液分離する固液分離装置を設け、該固液分離した分離液のみを前記メタン発酵槽より上流側へ循環させることを特徴とする。
さらにまた、前記第2硝化液循環ライン上に、循環硝化液を可溶化処理する可溶化装置を設け、該可溶化装置からの可溶化処理液を前記メタン発酵槽より上流側へ循環させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、脱窒槽におけるメタノールなどの有機炭素源量が低減され、また安定した水質の処理水を少ない運転経費で維持可能となる。
また、脱窒工程より後流側にて検出した酸化態窒素濃度に基づき、循環硝化液量を制御することにより、原料である有機性廃棄物の何らかの性状変動によってメタン発酵液の有機性廃棄物濃度が低下した場合でも安定した窒素除去効率を維持することができ、また有機炭素源の外部添加量の増加を防ぐことができる。
さらに、循環硝化液を固液分離し、分離液のみをメタン発酵より上流側へ循環させることにより、メタン発酵効率の低下を防止することができる。
さらにまた、循環硝化液を可溶化処理し、可溶化処理液をメタン発酵より上流側へ循環させることにより、メタン発酵効率が良好となりメタンガスの回収率が向上し、また窒素除去における有機炭素源の外部添加量を低減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本実施例の処理対象は、例えば、生ごみ、食品加工残渣、畜産廃棄物などのように、窒素を含有する有機性廃棄物である。
図1は本発明の実施例1に係る処理装置の概略を示す全体構成図、図2は本発明の実施例2に係る処理装置の概略を示す全体構成図、図3は図2に示した処理装置の別の態様を示す全体構成図、図4は本発明の実施例3に係る処理装置の概略を示す全体構成図、図5は本発明の実施例4に係る処理装置の概略を示す全体構成図である。
【実施例1】
【0018】
図1に示されるように、本実施例1に係る有機性廃棄物の処理装置は、ライン上流から下流に向かって順に、有機性廃棄物20が流入する前処理装置10と、前処理後の廃棄物が流入する混合槽11と、該混合槽11からの廃棄物が流入し、該廃棄物のメタン発酵を行うメタン発酵槽12と、メタン発酵液21に含有される窒素を除去する窒素除去設備と、を備える。この窒素除去設備は、第1脱窒槽13、硝化槽14、第2脱窒槽15、再曝気槽16、固液分離装置17が直列的に順次接続された構成となっており、前記硝化槽14から流出する硝化液22の少なくとも一部を前記第1脱窒槽13に循環させる第1硝化液循環ライン23と、該硝化液22の他の一部を前記メタン発酵槽12より上流側に循環させる第2硝化液循環ライン24と、を備えている。
【0019】
前記前処理設備10は、大径の有機性廃棄物を破砕する破砕装置、及び夾雑物等を除去するスクリーン、沈殿槽等の装置からなる。
前記混合槽11は、廃棄物の水量調整や濃度調整、各種有機性廃棄物の混合、或いはメタン発酵プロセスのうち加水分解反応、酸発酵反応等を行う装置であり、これは前記メタン発酵槽12と統合させてこれを設けない構成とすることもできる。また、前記混合槽11では、有機性廃棄物20をメタン発酵に適した性状とするために可溶化処理を行うようにしても良い。
前記メタン発酵槽12は、槽内にメタン発酵菌等の嫌気性微生物が繁殖しており、嫌気性微生物が卓越して繁殖できる環境に温度、pH等の条件が維持されており、槽内で有機性廃棄物20中の有機物を主にガス化反応によって分解処理することによりメタンガスを生成させるようになっている。
【0020】
前記第1脱窒槽13は、槽内が嫌気性状態に維持され、有機炭素源の存在下にて主として脱窒菌の作用により硝酸性窒素、亜硝酸性窒素等の酸化態窒素を窒素ガスまで還元する装置である。必要に応じて有機炭素源を外部添加する場合もある。
前記硝化槽14は、槽内の処理液中に空気30を曝気し、好気性条件下にて主に硝酸菌の作用により処理液中のアンモニア態窒素を酸化態窒素まで酸化する装置である。
前記第2脱窒槽15は、槽内が嫌気性状態に維持され、メタノール等の有機炭素源31の添加により、処理液中に残存する酸化態窒素を窒素ガスまで還元する装置である。
前記再曝気槽16は、空気32の曝気により好気性条件に保たれ、主に処理液中に残留するアンモニア態窒素を酸化態窒素に酸化する装置であり、これは適宜必要に応じて設置する。
前記固液分離装置17は、生物学的脱窒素処理後の処理液を余剰汚泥26と処理水25とに分離する装置であり、例えば、重力沈降方式、遠心分離方式、、膜分離方式、凝集分離方式、浮上分離方式等が用いられる。ここで分離された余剰汚泥26の一部を分岐し、返送汚泥27として前記第1脱窒槽13に循環させても良い。
【0021】
本実施例では、前記硝化槽14から流出する硝化液22の少なくとも一部を分岐させ、これを循環硝化液として前記第1脱窒槽13に循環させる第1硝化液循環ライン23を設けている。これは、従来の硝化液循環型脱窒装置の構成と同様である。
さらに本実施例の特徴的な構成として、前記硝化液22の他の一部を分岐させ、前記メタン発酵槽12より上流側に循環させる第2硝化液循環ライン24を設けている。循環硝化液は前記メタン発酵槽12に直接導入することが好ましく、さらに前記混合槽11にもその一部を導入するようにしても良い。
【0022】
以上の構成を有する有機性廃棄物の処理装置について、その作用を処理方法とともに説明する。
まず、前処理装置10にて前処理を行なった有機性廃棄物20を前記混合槽11に流入させ、該混合槽11にて廃棄物のpH、温度、水量、濃度等をメタン発酵に適した条件に調整し、主として廃棄物中の有機物が加水分解及び酸発酵される酸生成段階を行なう。調整後の有機性廃棄物20はメタン発酵槽12に導入し、該メタン発酵槽12にて嫌気性微生物によりメタン発酵する。
メタン発酵に伴って発生するアンモニア態窒素を含むメタン発酵液21は、後段の第1脱窒槽13ではアンモニア態窒素は除去されずにそのまま通過し、さらに後段の硝化槽14に流入し、該硝化槽14にて硝化反応により前記アンモニア態窒素が硝酸性窒素、亜硝酸性窒素からなる酸化態窒素まで酸化される。
前記硝化槽14から流出する硝化液22は酸化態窒素を含み、該硝化液22は少なくともその一部が分岐されて前記第1硝化液循環ライン23を介して前記第1脱窒槽13に返送される。該第1脱窒槽13にて、循環硝化液中に含有される酸化態窒素はメタン発酵液中に含有される有機物を炭素源として利用し、窒素ガスまで還元される。
【0023】
一方、前記硝化槽14から流出する硝化液22の他の一部は、前記第2硝化液循環ライン24を介してメタン発酵槽12より上流側に返送され、循環硝化液中に含有される酸化態窒素は、メタン発酵槽12内の有機物を利用して脱窒反応により窒素ガスまで還元される。
また、循環されずに前記硝化槽14から第2脱窒槽15に流入した硝化液22は、外部よりメタノール等の有機炭素源31を添加され、脱窒反応により硝化液22に残留する酸化態窒素が窒素ガスまで分解された後、さらに再曝気槽16に送給され、ここで残留するアンモニア態窒素を除去された後に固液分離装置17に導入される。該固液分離装置17では、処理液は窒素分を殆ど含まない処理水25と、余剰汚泥26とに分離され、該余剰汚泥26の一部は返送汚泥27として前記第1脱窒槽13に返送される。
【0024】
本実施例によれば、メタン発酵槽12より上流側に返送した循環硝化液中の酸化態窒素がメタン発酵槽で分解されるため、後段の窒素除去設備に流入する窒素負荷が軽減し、第2脱窒槽15において脱窒反応用に外部から添加する有機炭素源量を低減でき、運転経費を削減することが可能となる。また、メタン発酵液中の有機物濃度が低下しても有機炭素源の量的増加を防止できる。
【実施例2】
【0025】
図2に本実施例2に係る有機性廃棄物の処理装置を示す。以下、本実施例2及び実施例4において、前記実施例1と略同様の構成についてはその詳細な説明を省略する。
本実施例2に係る処理装置は、前記実施例1の構成に加えて、前記第2硝化液循環ライン24の循環硝化液量を制御する装置を備えた構成となっている。該処理装置は、前記第1脱窒槽13から流出する脱窒液の酸化態窒素濃度を検出するNO−N検出端32、若しくは前記硝化槽14から流出する硝化液の酸化態窒素濃度を検出するNO−N検出端33の少なくとも何れか一方を備えるとともに、前記第1硝化液循環ライン24上に設けた流量調整弁35を備え、前記NO−N検出端32、33により検出された酸化態窒素濃度に基づき、制御装置34により前記流量調整弁35を開閉制御し、循環硝化液量を調整する構成としている。
尚、前記流量調整弁35は、ポンプなどのように循環硝化液量を制御する手段であれば何れでも代替可能である。
【0026】
本実施例の好適な制御方法としては、通常運転時には前記流量調整弁35を閉としてメタン発酵槽12には循環硝化液22を返送せず、前記NO−N検出端32、33により検出された酸化態窒素濃度が予め設定されたレベルに達したら、前記流量調整弁35を開として循環硝化液を前記メタン発酵槽12に流入させるように前記制御装置34にて制御する。
メタン発酵液21の有機物濃度が低下すると、第1脱窒槽13にて脱窒反応効率が低下し、脱窒液中に酸化態窒素が残留してしまうため、前記NO−N検出端32、33により酸化態窒素濃度の上昇として現れる。そこで、検出された酸化態窒素濃度に基づき循環硝化液量の流量制御(流量0を含む)を行うことにより、効率の良い脱窒を行うことができ、有機炭素源の外部添加量の増加を防ぐことができ、ランニングコストの増大を防止できる。
尚、本実施例において、酸化態窒素濃度の検出はセンサのような方法でもよいし、試料を採取して手分析してもよい。また、酸化態窒素濃度がどのレベルに達したら行うかは原料によって異なるため、適宜設定すると良い。
【0027】
また、図2の別の態様として、図3に示されるように、前記第1硝化液循環ライン23と前記第2硝化液循環ライン24を循環させる循環硝化液量を夫々独立して制御する構成としても良い。これは、前記第1硝化液循環ライン23にポンプ36を設けるとともに、前記第2硝化液循環ライン24にポンプ37を設け、前記NO−N検出端32、33により検出された酸化態窒素濃度に基づき前記制御装置34により夫々の硝化液循環量を独立制御するようにしている。
図3に示した処理装置の応用として、前記した2系統の制御機構を連動させ、硝化液循環量の配分制御を行うようにしても良い。
本実施例によれば、原料である有機性廃棄物の何らかの性状変動によってメタン発酵液の有機性廃棄物濃度が低下した場合でも好適に適用できる。
【実施例3】
【0028】
図4に本実施例3に係る有機性廃棄物の処理装置を示す。本実施例3に係る処理装置は、前記実施例1の構成に加えて、循環硝化液をメタン発酵槽12に返送する前記第2硝化液循環ライン24上に固液分離装置18を設け、分離した固形物28はメタン発酵槽12の後流側に戻し、分離液29のみを前記メタン発酵槽12より上流側に返送する構成としている。
前記固液分離装置18には、硝化槽14から流出する硝化液22を一部分岐させた循環硝化液が導入され、該固液分離装置18にて硝化液を固形物28と分離液29とに固液分離する。固液分離装置としては、例えば、重力沈降方式、遠心分離方式、、膜分離方式、凝集分離方式、浮上分離方式等が用いられる。
前記循環硝化液中には硝化槽14から流出した硝化菌等の微生物が含まれるため、この微生物が硝化液とともにメタン発酵槽12に流入するとメタン発酵菌の活性阻害となるが、本実施例のように前記固液分離装置18にて微生物を含む固形物28と、酸化態窒素を含む分離液29とに分離し、該分離液のみをメタン発酵槽12に循環させることにより、メタン発酵効率の低下を防止することができる。
【実施例4】
【0029】
図5に本実施例4に係る有機性廃棄物の処理装置を示す。本実施例4に係る処理装置は、前記実施例1の構成に加えて、循環硝化液をメタン発酵槽12に返送する前記第2硝化液循環ライン24上に可溶化装置19を設け、該硝化液を可溶化した後に前記メタン発酵槽12に循環させる構成としている。
前記可溶化設備13は、物理化学的可溶化、生物学的可溶化、機械的可溶化等の何れの方法でも良く、例えばオゾン酸化手段、超音波手段、水熱を含む加熱手段、溶菌酵素供給手段、キャビテーション発生手段、酸化剤添加手段、電気分解手段、アルカリ剤添加手段、機械的せん断・摩擦手段等が挙げられ、これらの少なくとも1若しくは2以上を組み合わた手段を有する。好適には前記可溶化装置19はオゾン酸化手段を有する。
【0030】
前記可溶化手段のうち、前記オゾン酸化手段は、オゾン発生器等により発生させたオゾンと硝化液とを気液接触させ、オゾンの強力な酸化力により可溶化する。また、前記超音波手段は、超音波発生器を設けて硝化液中に超音波を発生させ、超音波振動により微生物の細胞壁を破砕して可溶化する。前記加熱手段は、硝化液中の有機物に熱を与えることによって水熱反応により余剰汚泥の低分子化を図るものである。前記溶菌酵素供給手段は、強力な溶菌活性を有する細菌によって微生物の細胞壁を分解することにより可溶化を行なう。前記キャビテーション発生手段は、硝化液中に微細な気泡を発生させる手段であり、例えば、加圧後圧力開放することによりキャビテーションを発生させるものが挙げられる。
【0031】
前記酸化剤添加手段は、公知の過酸化水素、過酸化カルシウム、過硫酸アンモニウム等の酸化剤が使用されるが、コストや副生物等の点からみて過酸化水素が最も好ましく、該酸化剤の添加により有機物を酸化分解し、可溶化を行なう。前記電気分解手段は、処理槽内に浸漬した電極間に電流を流すことにより微生物を死滅させるとともに細胞壁や細胞膜の一部を破壊し、可溶化を行なう。前記アルカリ剤添加手段は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化ナトリウム等の周知のアルカリ剤を用いることができる。前記機械的せん断・摩擦手段は、例えば、ビーズミル、ディスクミル等の機器を用いることができ、硝化液にせん断力・摩擦力を与えて機械的に破砕し低分子化するものである。
本実施例によれば、可溶化により硝化液22がメタン発酵に適した性状となるため、メタン発酵効率が良好となり、メタンガスの回収率が向上し、さらに有機炭素源の外部添加量を低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の処理装置では、メタン発酵を伴う生物学的窒素除去処理において窒素除去率を高く維持しつつ、メタノール等の有機炭素源の外部添加量を低減でき、ランニングコストの低減が図れるため、大量の有機性廃棄物を処理する場合や高濃度の窒素を含有する有機性廃棄物を処理する場合にも好適に適用でき、例えば、有機物下水道処理、し尿処理、浄化槽汚泥処理、畜産排水処理、水産加工排水処理、洗浄排水処理、工場排水処理等の処理において有効に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1に係る処理装置の概略を示す全体構成図である。
【図2】本発明の実施例2に係る処理装置の概略を示す全体構成図である。
【図3】図2に示した処理装置の別の態様を示す全体構成図である。
【図4】本発明の実施例3に係る処理装置の概略を示す全体構成図である。
【図5】本発明の実施例4に係る処理装置の概略を示す全体構成図である。
【図6】硝化液の循環液量について説明する図であり、(a)は装置の基本構成を示す図で、(b)は循環液量と窒素除去率の関係を示すグラフである。
【図7】従来の処理装置を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0034】
10 前処理装置
11 混合槽
12 メタン発酵槽
13 第1脱窒槽
14 硝化槽
15 第2脱窒槽
16 再曝気槽
18 固液分離装置
19 可溶化装置
20 有機性廃棄物
22 硝化液
23 循環硝化液
23 第1硝化液循環ライン
24 第2硝化液循環ライン
28 固形物
29 分離液
32、33 NO−N検出端
34 循環液量制御装置
35 流量調整手段
36、37 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物をメタン発酵してメタンガスとメタン発酵液を得るメタン発酵工程と、該メタン発酵液から窒素除去する窒素除去工程と、を備え、該窒素除去工程にて、少なくとも脱窒工程と硝化工程を順に行い、該硝化工程にて得られた硝化液の少なくとも一部を前記脱窒工程に循環させるようにした有機性廃棄物の処理方法において、
前記硝化工程からの硝化液の他の一部を分岐させ、該分岐した硝化液を前記メタン発酵工程より上流側に返送して循環させることを特徴とする有機性廃棄物の処理方法。
【請求項2】
前記脱窒工程にて得られた脱窒液、若しくは前記硝化工程にて得られた硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出し、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液量を制御することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項3】
前記脱窒工程にて得られた脱窒液、若しくは前記硝化工程にて得られた硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出し、前記脱窒工程へ返送する循環硝化液量及び前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液量を夫々独立制御することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項4】
前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液を固液分離する固液分離工程を設け、該固液分離した分離液のみを前記メタン発酵工程より上流側へ返送することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項5】
前記メタン発酵工程より上流側へ返送する循環硝化液を可溶化処理する可溶化工程を設け、可溶化処理液を前記メタン発酵工程より上流側へ返送することを特徴とする請求項1記載の有機性廃棄物の処理方法。
【請求項6】
有機性廃棄物をメタン発酵するメタン発酵槽と、該メタン発酵槽より流出するメタン発酵液から窒素除去する窒素除去設備と、を備え、該窒素除去設備が、少なくとも脱窒槽と硝化槽とが順に直列接続され、該硝化槽からの硝化液の少なくとも一部を前記脱窒槽に循環させる第1硝化液循環ラインを備えた有機性廃棄物の処理装置において、
前記硝化槽からの硝化液の他の一部を前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる第2硝化液循環ラインを備えたことを特徴とする有機性廃棄物の処理装置。
【請求項7】
前記脱窒槽から流出する脱窒液、若しくは前記硝化槽から流出する硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出する酸化態窒素濃度検出手段と、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる循環硝化液量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項8】
前記脱窒槽から流出する脱窒液、若しくは前記硝化槽から流出する硝化液中に含有される酸化態窒素濃度を検出する酸化態窒素濃度検出手段と、該検出した酸化態窒素濃度に基づき、前記脱窒槽へ循環させる循環硝化液量及び前記メタン発酵槽より上流側へ循環させる循環硝化液量を夫々独立制御することを特徴とする請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項9】
前記第2硝化液循環ライン上に、循環硝化液を固液分離する固液分離装置を設け、該固液分離した分離液のみを前記メタン発酵槽より上流側へ循環させることを特徴とする請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。
【請求項10】
前記第2硝化液循環ライン上に、循環硝化液を可溶化処理する可溶化装置を設け、該可溶化装置からの可溶化処理液を前記メタン発酵槽より上流側へ循環させることを特徴とする請求項6記載の有機性廃棄物の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−297205(P2006−297205A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119085(P2005−119085)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】