説明

有機物含有水の処理方法及び処理装置

【課題】有機物含有水の生物処理汚泥を分離膜で固液分離し、透過水をRO膜分離処理する有機物含有水の処理において、通常の固液分離処理を停止した状態で、膜の透過水側から濃縮水側へ洗浄液を通液して膜洗浄を行った際に、汚泥から溶出するTOC成分によるRO膜のフラックス低下を防止して、RO膜の薬品洗浄頻度を低減すると共に水回収率を高め、安定かつ効率的な処理を行う。
【解決手段】膜洗浄後の固液分離の再開時において、得られる膜透過水をpH9.5以上に調整すると共にスケール防止剤を添加してRO膜分離処理する。RO給水のpHを9.5以上の高アルカリ性に調整すると共にスケール防止剤を添加することにより、汚泥から溶出したTOC成分のRO膜への吸着を防止すると共に、スライムの発生を抑制することができ、RO膜フラックスの低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物含有水の処理方法及び処理装置に係り、特に、半導体やシリコンウエハなどの電子産業用部品の製造プロセスにおいて使用される超純水の使用済み排水を生物処理し、更に逆浸透(RO)膜分離処理により水回収して超純水の原水として再利用するシステムに好適に適用される有機物含有水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体やシリコンウエハなどの電子産業用部品の製造プロセスにおいて使用される超純水の使用済み排水を回収して超純水の原水として再利用するシステムにおいては、使用済み排水を生物処理して含有される有機物を分解除去し、更に逆浸透(RO)膜分離処理により残留有機物を除去すると共に脱塩処理し、RO膜透過水を超純水の原水とすることが行われている。
【0003】
このRO膜分離処理に先立つ生物処理には、被処理水を生物処理して分離膜で固液分離するメンブレンバイオリアクター(MBR)が利用される場合がある。
【0004】
MBRには、生物処理槽内に浸漬した分離膜で固液分離を行う浸漬型MBR(例えば、特許文献1,非特許文献1)と、生物処理槽とは別の膜分離装置へ汚泥を送給して固液分離し、膜濃縮水を生物処理槽へ戻す槽外型MBR(例えば、特許文献2)があり、いずれも系内に高濃度で汚泥を保持することにより効率的に生物処理を行えるが、処理を継続することにより、分離膜が目詰まりするため、定期的に又は必要に応じて分離膜を薬品洗浄する必要がある。
【0005】
従来、浸漬型MBRの膜洗浄方法としては、特許文献1の従来技術として記載されるように、浸漬された膜を別の洗浄用容器に移して洗浄したり、膜浸漬槽内の汚泥を洗浄液に取り替えて洗浄する方法が採用されてきた。これは、汚泥に洗浄液を長時間注入すると微生物が死滅する虞があるなど、生物処理に支障があると考えられたために採用されていた方法であるが、作業に手間と時間がかかるばかりでなく、洗浄液を大量に使用するとコストが増大し、また洗浄廃液が大量に発生するという問題があった。
【0006】
一方、槽外型MBRの膜洗浄方法としては、分離膜と生物処理槽との循環ラインとは別に膜洗浄用の循環ラインを設けて生物処理槽に洗浄液が混入しないようにして洗浄を行っていた。この方法は、浸漬型MBRにおける前述の洗浄方法のような、分離膜の移設や汚泥の入れ替えといった煩雑な作業は必要としないものの、別途、洗浄用の循環ラインを設けるため洗浄タンクやポンプ、送水配管といった余分な設備が必要となり、コスト高となっていた。また、循環洗浄するためにはある程度の洗浄液量が必要であり、使用後の洗浄廃液の処理にコストがかかるという問題もあった。
【0007】
このようなことから、最近では、特許文献1や非特許文献1に記載されるように、浸漬膜型のMBRにおいて、浸漬膜を洗浄用容器へ移設したり、汚泥を取り替えたりせず、通常の固液分離処理を停止した状態において、生物処理槽内に浸漬された分離膜の透過水側から濃縮水側へ、いわゆる逆洗方向に洗浄液を通液して洗浄液を汚泥に混入させるような洗浄方法が採用されるようになってきた。これは、酸化性洗浄液や酸性の洗浄液が生物処理水に大量に混入すると微生物が死滅するが、生物処理槽で消費される程度の量であれば微生物の生育に問題となるような影響を与えることなく、この洗浄方法を採用することができるという知見に基くものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−500392号公報
【特許文献2】特開2009−148714号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「環境技術Vol.28 No.8 p.552〜555 (1999)」“膜分離装置の薬液洗浄に伴う汚泥の減量に関する研究”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、浸漬型MBRにおいて、上述のような洗浄方法を採用した場合、洗浄液の影響によって汚泥からTOC成分が溶出することは避けられず、後段にRO膜分離装置を設置して水回収を行う場合には、膜洗浄後に通常の処理を再開した際に、洗浄中に汚泥から溶出して膜透過水側に混入したTOC成分がRO膜に吸着したり、TOC成分の存在でRO膜分離装置内でスライムが発生するなどしてRO膜の透過流速(フラックス)が低下し、RO膜の洗浄を頻繁に行わなければならなかった。
【0011】
このため、従来においては、膜洗浄後は、汚泥から溶出したTOC成分が膜透過水に混入しなくなるまで、膜洗浄後の運転再開時において、膜透過水をRO膜分離装置に通水せずに系外へ排出するか原水タンクに返送することが行われていたが、この場合には処理効率も水回収率も大幅に低下する。
【0012】
本発明は上記従来の問題を解決するものであって、MBRの膜透過水(以下「MBR処理水」と称す場合がある。)をRO膜分離処理する有機物含有水の処理において、通常の固液分離処理を停止した状態で膜の透過水側から濃縮水側へ洗浄液を通液して膜洗浄を行った際に、汚泥から溶出するTOC成分によるRO膜のフラックスの低下を防止して、RO膜の薬品洗浄頻度を低減すると共に水回収率を高め、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行う有機物含有水の処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、RO膜分離装置に供給されるMBR処理水(以下、RO膜分離装置に供給されるMBR処理水を「RO給水」と称す場合がある。)のpHを9.5以上の高アルカリ性に調整すると共にスケール防止剤を添加することにより、汚泥から溶出したTOC成分のRO膜への吸着を防止すると共に、スライムの発生を抑制することができ、この結果、RO膜フラックスの低下を防止することができることを見出した。
【0014】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0015】
本発明(請求項1)の有機物含有水の処理方法は、有機物含有水を生物処理し、生物処理汚泥を分離膜を用いて固液分離し、膜透過水を逆浸透膜分離処理する有機物含有水の処理方法において、生物処理汚泥を分離膜で固液分離する固液分離工程と、該分離膜への生物処理汚泥の通水を停止して該分離膜の透過水側から濃縮水側へ膜洗浄液を通水して該分離膜を洗浄する洗浄工程とを有し、洗浄工程後の固液分離工程の再開時において、得られる膜透過水をpH9.5以上に調整すると共にスケール防止剤を添加して逆浸透膜分離処理することを特徴とするものである。
【0016】
請求項2の有機物含有水の処理方法は、請求項1に記載の有機物含有水の処理方法において、前記膜洗浄液が酸化性の洗浄剤及び/又は酸性の洗浄剤を含むことを特徴とするものである。
【0017】
請求項3の有機物含有水の処理方法は、請求項1又は2に記載の有機物含有水の処理方法において、前記分離膜が生物処理槽内に浸漬された浸漬膜であることを特徴とするものである。
【0018】
本発明(請求項4)の有機物含有水の処理装置は、有機物含有水の生物処理手段と、生物処理手段の生物処理汚泥を分離膜で固液分離する膜分離手段と、膜分離手段の膜透過水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離手段とを備える有機物含有水の処理装置において、該膜分離手段の分離膜の透過水側から濃縮水側へ膜洗浄液を通水して該分離膜を洗浄する洗浄手段と、該逆浸透膜分離手段に導入される該膜分離手段の膜透過水をpH9.5以上に調整するpH調整手段と、該膜透過水にスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段とを有することを特徴とするものである。
【0019】
請求項5の有機物含有水の処理装置は、請求項4に記載の有機物含有水の処理装置において、前記膜洗浄液が酸化性の洗浄剤及び/又は酸性の洗浄剤を含むことを特徴とするものである。
【0020】
請求項6の有機物含有水の処理装置は、請求項4又は5に記載の有機物含有水の処理装置において、前記分離膜が生物処理槽内に浸漬された浸漬膜であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、有機物含有水のMBR処理水をRO膜分離処理する有機物含有水の処理において、通常の固液分離処理を停止した状態で膜の透過水側から濃縮水側へ洗浄液を通水して膜洗浄を行った後の固液分離処理の再開時において、膜洗浄中に汚泥から溶出するTOC成分によるRO膜フラックスの低下を防止して、RO膜の薬品洗浄頻度を低減すると共に水回収率を高め、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行うことができる。
【0022】
本発明において、RO給水であるMBR処理水をpH9.5以上に調整することにより、次のような効果が得られる。
RO膜フラックスを低下させる原因である汚泥から溶出したTOC成分は、アルカリ性領域では膜面に吸着し難く、RO給水となるMBR処理水のpHを9.5以上にすることによりRO膜面へのこれらの成分の付着を抑制することが可能となる。
また、微生物はアルカリ性域では生息することができない。そのため、MBR処理水のpHを9.5以上に調整することにより、RO膜分離装置内において、栄養源はあるが微生物が生息できない環境を作り出すことが可能となり、RO膜分離装置でのスライムの生成を抑制することができる。
【0023】
また、RO給水であるMBR処理水にスケール防止剤を添加する理由は次の通りである。
本発明で処理対象とする有機物含有水、例えば、電子産業用部品の製造工場等から排出される有機物含有水中には稀にスケールの元となるカルシウムイオンなどが混入する場合がある。RO給水のpHを9.5以上とする高pHのRO運転条件では、極微量のカルシウムイオンの混入でも炭酸カルシウムなどのスケールが生成し、RO膜が直ちに閉塞してしまう。そこで、本発明では、このようなスケールによる膜面閉塞を抑制する目的から、RO給水となるMBR処理水に、スケール防止剤を添加してスケールの生成を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の有機物含有水の処理方法及び処理装置の実施の形態を示す系統図である。
【図2】実施例1及び比較例1の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に図面を参照して本発明の有機物含有水の処理方法及び処理装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0026】
図1は本発明の有機物含有水の処理方法及び処理装置の実施の形態を示す系統図である。図中、1は原水タンク、2は生物処理槽、3はこの生物処理槽2内に浸漬された分離膜モジュール、4はRO膜分離装置である。
【0027】
原水は、配管11より、原水タンク1、配管12を経て生物処理槽2に導入され、槽内で生物処理され、生物処理汚泥は、分離膜モジュール3で固液分離され、膜透過水が配管13よりRO膜分離装置4に導入されてRO膜分離処理され、RO膜透過水が配管14より処理水として系外へ排出される。
【0028】
分離膜モジュール3の洗浄を行う際には、生物処理槽1への原水の導入、分離膜モジュール3の膜透過水の取り出しを停止すると共に、配管13へ配管15より膜洗浄液を注入して膜洗浄液を分離膜モジュール3の膜透過水から濃縮水側へ逆洗方向へ押し出す。所定量の膜洗浄液を注入した後は、生物処理槽2への原水の導入と分離膜モジュール3での固液分離を再開するが、この膜洗浄後の通水再開初期のMBR処理水(膜モジュール3の膜透過水)には、膜洗浄液中の酸化剤や酸成分が含まれており、これをRO膜分離装置4で処理すると、RO膜の負荷となると共に、RO膜を破損するため、MBR処理水に膜洗浄液の酸化剤や酸性成分が検出されなくなるまで、或いは十分に低減されるまで、例えば、残留塩素が0mg/LとなるまでMBR処理水を配管16より原水タンク1に返送する。
【0029】
このように、固液分離の再開初期のMBR処理水を原水タンク1に返送する運転を行うか、重亜硫酸ソーダで酸化力をなくした後、MBR処理水をRO膜分離装置4に再び通水する際には、RO給水配管13に配管17よりスケール防止剤を添加すると共に配管18よりアルカリを添加して、RO給水としてRO膜分離装置4に導入されるMBR処理水のpHが9.5以上となるように調整してRO膜分離装置4に通水する。なお、MBR処理水へのアルカリとスケール防止剤の添加は、どちらを先に行ってもよく、同時に添加してもよい。
【0030】
このMBR処理水にスケール防止剤を添加すると共にアルカリを添加してpH9.5以上に調整する期間は、分離膜モジュール3の膜洗浄後、MBR処理水中にTOC成分が多く(例えばTOC5mg/L以上)検出される期間のみであってもよく、全期間を通してスケール防止剤の添加とアルカリ添加によるpH調整を行ってもよい。
【0031】
このように、膜洗浄後のRO膜分離処理再開時の少なくともMBR処理水のTOC成分濃度の高い期間に、RO給水であるMBR処理水にスケール防止剤を添加すると共にアルカリの添加でpH9.5以上に調整することにより、RO膜フラックスの低下を防止して、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行える。
【0032】
本発明において、処理する有機物含有水としては、電子産業用部品製造分野、半導体製造分野、その他の各種産業分野で排出される高濃度ないし低濃度有機物含有水が挙げられ、本発明はこのような有機物含有水の放流、又は回収・再利用のための水処理に有効に適用することができるが、本発明は、特に、半導体やシリコンウエハなどの電子産業用部品の製造プロセスにおいて使用される超純水の使用済み排水を回収して超純水の原水として再利用するシステムに好適である。
【0033】
また、MBRの生物処理は、好気性生物処理であっても嫌気性生物処理であってもよい。従来の浸漬型MBR装置の膜洗浄方法においては、前述の如く、分離膜を生物処理槽(膜分離槽)から取り出して別の洗浄用容器に移設する必要があったため、嫌気性生物処理には適さなかった。しかし、本発明において分離膜を生物処理槽から取り出す必要がなく、生物処理槽の密閉状態をある程度保ち、嫌気性雰囲気下で行うことができるため、嫌気性生物処理であっても問題なく適用することができる。
【0034】
生物処理の負荷としては特に制限はないが、好気性生物処理の場合のBOD負荷は、0.5〜5.0kg−BOD/m/day、望ましくは0.5〜2.0kg−BOD/m/dayとし、嫌気性生物処理の場合のBOD負荷は、1.0〜10.0kg−BOD/m/day、望ましくは2.0〜6.0kg−BOD/m/dayとすることが好ましい。
【0035】
MBRの分離膜としては、精密濾過(MF)膜、限外濾過(UF)膜、ナノ濾過(NF)膜などを用いることができる。
膜形状としては、平膜、管状膜、中空糸膜等各種のものを用いることができる。また、膜材質は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等各種のものを用いることでできる。
【0036】
膜洗浄液は、酸化性の洗浄剤及び/又は酸性の洗浄剤を含むものを好適に使用することができる。酸化性の洗浄剤は有機性の汚れの洗浄に効果的であり、酸性の洗浄剤はカルシウム系や鉄系などの無機系の汚れの洗浄に効果的である。酸化性の洗浄剤としては次亜塩素酸ナトリウムや過酸化水素などが使用可能であり、酸性の洗浄剤としてはシュウ酸やクエン酸、塩酸、硫酸などが使用可能である。ただし、カルシウム系の汚れの場合は硫酸を用いるとカルシウムスケールが生じやすくなるため、好ましくない。カルシウム成分は超純水の使用済排水にはほとんど含まれない場合もあるが、製造プロセスによっては含まれる場合もあり、生物処理における栄養剤の添加などに由来して含まれる。
上記の酸化剤の洗浄剤、酸性の洗浄剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これら洗浄剤成分は、通常、シュウ酸やクエン酸であれば1〜5wt%程度の水溶液、また、次亜塩素酸ナトリウムであれば塩素換算濃度として500〜5000mg−Cl/L程度の水溶液として膜洗浄に用いられる。
【0037】
膜洗浄時の膜洗浄液の注入量、注入時間には特に制限はなく、用いる洗浄剤、膜汚染の程度等に応じて適宜決定される。
【0038】
本発明において、膜洗浄後のMBR処理水に添加するスケール防止剤としては、アルカリ領域で解離して金属イオンと錯体を形成し易いエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やニトリロ三酢酸(NTA)などキレート系スケール防止剤が好適に用いられるが、その他、(メタ)アクリル酸重合体及びその塩、マレイン酸重合体及びその塩などの低分子量ポリマー、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸及びその塩、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸及びその塩、ニトリロトリメチレンホスホン酸及びその塩、ホスホノブタントリカルボン酸及びその塩などのホスホン酸及びホスホン酸塩、ヘキサメタリン酸及びその塩、トリポリリン酸及びその塩などの無機重合リン酸及び無機重合リン酸塩などを使用することができる。これらのスケール防止剤は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0039】
スケール防止剤の添加量は、少な過ぎるとRO膜におけるスケール成分を十分に防止することができないが、多過ぎると薬剤コストの面で好ましくないため、RO給水となるMBR処理水中のスケール成分濃度にもよるが、通常1〜500mg/L程度、MBR処理水中のカルシウムイオン濃度の5〜50重量倍程度添加することが好ましい。
【0040】
また、本発明においては、RO給水となるMBR処理水にアルカリを添加してpHを9.5以上、好ましくは10以上、より好ましくは10.5〜12、例えば10.5〜11に調整してRO膜分離装置4に導入する。ここで使用するアルカリ剤としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど、RO給水のpHを9.5以上に調整できる無機物系アルカリ剤であれば良く、特に限定されない。
【0041】
RO膜分離装置4のRO膜としては耐アルカリ性を有するもの、例えば、ポリエーテルアミド複合膜、ポリビニルアルコール複合膜、芳香族ポリアミド膜などが挙げられる。このRO膜は、スパイラル型、中空糸型、管状型等、いかなる型式のものであっても良い。
【0042】
なお、図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明はその要旨を超えない限り何ら図示のものに限定されるものではない。
【0043】
例えば、図1には浸漬型MBRが示されているが、本発明は、浸漬型MBRに限らず、槽外型MBRであっても、その膜洗浄後の処理再開時におけるRO膜フラックスの低下防止に有効である。また、浸漬型MBRの混合、浸漬膜は、生物処理槽に直接浸漬したものの他、別途膜浸漬槽を設け、生物処理槽からの生物処理汚泥を膜浸漬槽に導入して固液分離し、膜濃縮水を生物処理槽に循環させるようにしてもよい。
【0044】
本発明により得られる処理水(RO膜透過水)は、通常、酸を添加してpH4〜8に調整し、必要に応じて更に活性炭処理等を施した後、再利用又は放流される。ここで使用する酸としては、特に制限はなく、塩酸、硫酸などの鉱酸が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0046】
[実施例1]
図1の有機物含有水の処理装置を用い、電子産業排水(TOC:80〜100mg/L)を原水として、負荷0.5〜1.0kg−BOD/m/dで好気性MBR(汚泥濃度:4,000〜8,000mg/L)処理を行った。MBR生物処理槽2の分離膜、RO膜分離装置4のRO膜としては以下のものを用いた。通常運転時のMBR処理水(膜透過水)のTOCは3〜5mg/Lであった。
分離膜:PVDF製浸漬型中空糸UF膜(三菱レイヨン株式会社製,膜面積12m
RO膜:芳香族ポリアミド製スパイラル型RO膜(日東電工株式会社製)
【0047】
この処理装置において、一週間に一回の頻度で、分離膜モジュール3を生物処理槽2の汚泥中に浸漬させた状態で、膜洗浄液として700mg−Cl/Lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液26Lを、膜透過水側から濃縮水側へ30分かけて注入することにより膜洗浄を行った。
膜洗浄液注入直後のMBR処理水(膜透過水)は、残留塩素が検出されるため、膜洗浄後1時間はRO膜分離装置4に送給せずに原水タンク1に返送した。
その後、MBR処理水(膜透過水:TOC5〜10mg/L,pH5.5)に水酸化ナトリウムを添加してpH10.5に調整すると共に、キレート系スケール防止剤(栗田工業株式会社製「ウェルクリンA801」)を30ppm添加した後RO膜分離装置4に通水した(水回収率85%)。
このときのRO膜分離装置4のRO膜フラックスと水回収率の経時変化を調べ、結果を図2に示した。
【0048】
[比較例1]
実施例1においてMBR処理水(pH5.5)に水酸化ナトリウムとスケール防止剤を添加せず、イソチアゾリン系スライムコントロール剤(栗田工業株式会社製「クリバータ EC503」)を3ppm添加してRO膜分離装置に通水したこと以外は同様に処理を行い、RO膜分離装置のRO膜フラックスと水回収率の経時変化を調べ、結果を図2に示した。
【0049】
図2より明らかなように、比較例1では、RO膜フラックスが経時的に低下して0.5m/dを下回ったが、RO給水をpHアルカリ性に調整すると共にスケール防止剤を添加した実施例1では、RO膜フラックスを0.8m/m/d程度に安定に維持することができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、電子産業用部品製造分野、半導体製造分野、その他の各種産業分野で排出される高濃度ないし低濃度有機物含有水の放流、又は回収・再利用のための水処理に有効に適用される。
【符号の説明】
【0051】
1 原水タンク
2 生物処理槽
3 分離膜モジュール
4 RO膜分離装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物含有水を生物処理し、生物処理汚泥を分離膜を用いて固液分離し、膜透過水を逆浸透膜分離処理する有機物含有水の処理方法において、
生物処理汚泥を分離膜で固液分離する固液分離工程と、
該分離膜への生物処理汚泥の通水を停止して該分離膜の透過水側から濃縮水側へ膜洗浄液を通水して該分離膜を洗浄する洗浄工程とを有し、
洗浄工程後の固液分離工程の再開時において、得られる膜透過水をpH9.5以上に調整すると共にスケール防止剤を添加して逆浸透膜分離処理することを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の有機物含有水の処理方法において、前記膜洗浄液が酸化性の洗浄剤及び/又は酸性の洗浄剤を含むことを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機物含有水の処理方法において、前記分離膜が生物処理槽内に浸漬された浸漬膜であることを特徴とする有機物含有水の処理方法。
【請求項4】
有機物含有水の生物処理手段と、生物処理手段の生物処理汚泥を分離膜で固液分離する膜分離手段と、膜分離手段の膜透過水を逆浸透膜分離処理する逆浸透膜分離手段とを備える有機物含有水の処理装置において、
該膜分離手段の分離膜の透過水側から濃縮水側へ膜洗浄液を通水して該分離膜を洗浄する洗浄手段と、
該逆浸透膜分離手段に導入される該膜分離手段の膜透過水をpH9.5以上に調整するpH調整手段と、該膜透過水にスケール防止剤を添加するスケール防止剤添加手段とを有することを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の有機物含有水の処理装置において、前記膜洗浄液が酸化性の洗浄剤及び/又は酸性の洗浄剤を含むことを特徴とする有機物含有水の処理装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の有機物含有水の処理装置において、前記分離膜が生物処理槽内に浸漬された浸漬膜であることを特徴とする有機物含有水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−139659(P2012−139659A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−600(P2011−600)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】