説明

有機物質を消化するためのメンブレンバイオリアクタおよび処理槽を含む濾過装置

【課題】消化された汚泥の廃棄に必要なコストおよび資源を低減することによって、汚泥消化に著しい利点をもたらす廃水処理プロセスに関わる濾過装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの膜モジュールと液体への空気注入装置とを具備し、前記膜モジュールは、複数の多孔性膜を有し、活性汚泥を含む基質を前記膜の外表面と接触させて処理し、処理水を前記膜の管腔から除去するようにしてなるメンブレンバイオリアクタと、嫌気性環境下で働くようにしてなる生物学的汚泥処理槽であって、プロセス液が消化され、また消化されたプロセス液の少なくとも一部が前記メンブレンバイオリアクタに返送され、さらに前記メンブレンバイオリアクタ内の前記基質の少なくとも一部が送られるようにしてなる生物学的汚泥処理槽とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化された汚泥の廃棄に必要なコストおよび資源を低減することによって、汚泥消化を大幅に改良する、先進的生物学的汚泥消化プロセスと組み合わせた、メンブレンバイオリアクタ(膜分離活性汚泥法)のプロセスに関するものである。オフライン処理槽における消化を利用して、極めて低酸素の環境で処理することによって、有機物質が可溶化される。消化されたプロセス液は、メンブレンバイオリアクタに送り返される。このプロセスおよび装置によって、廃棄汚泥の産出が大幅に減少する。
【背景技術】
【0002】
汚染水処理の生物学的プロセスは、多様な形態をとる。一般に、これらには、汚染物質を安定化または消化する1つ以上の形態の微生物に廃水の流れを曝すことが含まれる。いかなる種の微生物も、特定の環境を好み、変化への許容差に制限があるため、微生物は、汚水含有物と化学環境の両方に関して、廃水の流れを補完するように選択される。例えば、活性汚泥プロセスでは、廃水から生物化学的酸素要求量(BOD)を除去する好気性細菌が利用される。これには、一般に、消化微生物の懸濁液を含む曝気槽に廃水を導入することによって、バイオマスの呼吸用に酸素を供給するため曝気される、「混合液」を形成することを含み、バイオマスは、廃水のBODの酸素を吸収し、同化し、代謝する。適切な曝気期間の後、混合液をバイオマスが澄む浄化器に導入し、処理済みの廃水があふれ出して、排出口の廃出液に流れ込むようにすることが可能である。
【0003】
従来の廃水処理の態様は、廃水内に懸濁または溶解している可能性のある、消化微生物と廃棄物との接触を促進するため、混合液を十分に撹拌することである。最適な乱流量は、一般に、プロセス要件よりも経済的側面によって決まり、高撹拌速度が、理論的には最も望ましいが、実現するコストも高くつく。
この方法の例外として、微生物が、懸濁液中に分散しているのではなく、固定支持体において維持される固定培養基の利用がある。この場合、生物学的付着増殖を排除する可能性のある剥離作用を阻止するため、混合が回避される。固定培養システムの適用は、通常、可溶非粒子状汚染物質に限定され、さらに、これらのプロセスでは、生物支持体の表面積および廃液流の拡散特性によって負荷容量が制限される。
【0004】
流動床システムは、懸濁プロセスと固定培養プロセスの組み合わせを表すが、表面積を増すための追加培地、培地およびその付着生体培養の均一性を維持するのに十分な混合、および、再生のための培地の周期的または連続的な除去を必要とする。
【0005】
増殖速度、最適条件、および、望ましい投入量および廃棄物に応じて、生物学的プロセスが大きく異なるので、これらのシステムの全てが、通常、一つのカテゴリの微生物に制限される。最も一般的には、廃水処理のための微生物としては、好気性、嫌気性、および、無酸素性の種が含まれており、その全てが、大きく異なる(互いに一致しない)環境によって維持されている。プロセス条件によって、ある特定の生物学的アプローチの適用性が制限される可能性もある。例えば、ある特定の廃水組成にとって最適な生物学的プロセスが、経済的に実現可能な完全混合プロセスによって得られるよりも長い固形物保持時間を必要とし、また、固定メンブレンおよび流動床メンブレン型リアクタによってかなえることができるより多い処理量を必要とする可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5192456号明細書
【特許文献2】米国特許第5248424号明細書
【特許文献3】米国特許第5639373号明細書
【特許文献4】米国特許第5783083号明細書
【特許文献5】米国特許第6555005号明細書
【特許文献6】米国特許第6614868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、消化された汚泥の廃棄に必要なコストおよび資源を低減することによって、汚泥消化に著しい利点をもたらす廃水処理プロセスに関わる濾過装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生物学的汚泥・オフライン処理槽と組み合わせられたメンブレンバイオリアクタを含む、こうした利点をもたらす濾過システムが提供される。オフライン処理槽では、極めて低酸素の環境で操作することによって、有機物質が可溶化され、次に、処理済み液がメンブレンバイオリアクタ(MBR)に送り返される。
【0009】
第1の態様では、固形物を含む液体の濾過装置が提供されるが、この装置は、少なくとも1つの膜モジュールを具備し、前記膜モジュールは、複数の多孔性膜を有し、活性汚泥を含む基質を前記膜の外表面と接触させて処理し、処理水を前記膜の管腔から除去するようにしてなるメンブレンバイオリアクタと、
嫌気性環境下で働くようにしてなる生物学的汚泥処理槽であって、プロセス液が消化され、また消化されたプロセス液の少なくとも一部が前記メンブレンバイオリアクタに返送され、さらに前記メンブレンバイオリアクタ内の前記基質の少なくとも一部が送られるようにしてなる生物学的汚泥処理槽とを備えている。
【0010】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、この装置には、さらに、スクリーンが含まれており、スクリーンは、メンブレンバイオリアクタと生物学的汚泥処理槽との間に配置され、メンブレンバイオリアクタからの溢流中の不活性物質を除去するように構成されている。
【0011】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、スクリーンは、最長寸法の平均サイズが約200μm〜約300μmの開口を有している。
【0012】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、装置には、さらに、液体サイクロンが含まれており、液体サイクロンは、メンブレンバイオリアクタと生物学的汚泥処理槽との間に配設され、メンブレンバイオリアクタからの溢流中の不活性物質を除去するように構成されている。
【0013】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、装置には、さらに、液体サイクロンが含まれており、液体サイクロンは、スクリーンと生物学的汚泥処理槽との間に配設され、メンブレンバイオリアクタからの溢流中の不活性物質を除去するように構成されている。
【0014】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、装置には、さらに、サージタンクが含まれており、サージタンクは、メンブレンバイオリアクタからの溢流を受けるように構成されている。
【0015】
第1の態様の実施形態の1つにおいて、装置には、さらに、補助スクリーンが含まれており、補助スクリーンは、最長寸法の平均サイズが約6mm〜約25mmの開口を有している。
【0016】
第2の態様では、可消化廃棄物を含む流入液流の処理方法が提供されるが、この方法は、混合液と複数の多孔性中空糸膜の外表面とを接触させ、前記膜の管腔から透過液を除去するメンブレンバイオリアクタにおいて、前記混合液を濾過するステップと、再循環ループを介して生体固形物を含む基質をオフライン処理槽に再循環させることによって、前記メンブレンバイオリアクタから生体固形物を除去し、前記メンブレンバイオリアクタ内において、あらかじめ選択された生体固形物濃度が維持されるようにするステップと、前記オフライン処理槽内において、生体固形物を消化するステップと、前記混合液の少なくとも一部を含んでいる、前記オフライン処理槽からの廃出液流を、前記メンブレンバイオリアクタに導くステップとが含まれている。
【0017】
第2の態様の実施形態の1つにおいて、生体固形物を除去するステップには、さらに、再循環ループの一部である液体サイクロンに生体固形物を含む基質を通し、それによって、不活性固形物が除去されるようにするステップが含まれる。
【0018】
第2の態様の実施形態の1つにおいて、生体固形物を除去するステップには、さらに、再循環ループの一部であるスクリーンに生体固形物を含む基質を通し、それによって、不活性固形物が除去されるようにするステップが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】メンブレンバイオリアクタ、スクリーン、サージタンク、液体サイクロン、および、オフライン処理槽を用いた、望ましい実施形態の濾過装置構成の概略図である。
【図2】メンブレンバイオリアクタ、2つのスクリーン、液体サイクロン、および、オフライン処理槽を用いた、望ましい実施形態の濾過装置構成の図である。
【図3】望ましい実施形態で用いられる消化タンクの概略図である。
【図4】膜モジュールの1つの実施形態の概略側面図を示し、望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタにおける洗浄方法を例示した図である。
【図5】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの混入気泡の形成に用いられるジェット・タイプ構成の形態の1つに関する拡大概略側面図である。
【図6A】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの仕切られた膜モジュールの概略側面図である。
【図6B】図6Aの膜束の断面図である。
【図7A】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの仕切られた膜モジュールの概略側面図である。
【図7B】図7Aの膜束の断面図である。
【図8A】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの仕切られた膜モジュールの概略側面図である。
【図8B】図8Aの膜束の断面図である。
【図9A】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの仕切られた膜モジュールの概略側面図である。
【図9B】図9Aの膜束の断面図である。
【図10】膜モジュールの図9と同様の図である。
【図11】膜モジュールの図9と同様の図である。
【図12】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタの膜モジュールのもう1つの望ましい実施形態の下方端に関する斜視断面図である。
【図13】図12の膜モジュールの上方端の斜視断面図である。
【図14】望ましい実施形態の濾過装置に用いられるメンブレンバイオリアクタにおいて用いられる中空糸膜モジュールを示す図である。
【図15】望ましい実施形態の硝化/脱窒メンブレンバイオリアクタに関する一般的なレイアウトを示す図である。
【図16】図15のメンブレンバイオリアクタの動作段階を示す図である。
【図17】図15のメンブレンバイオリアクタの排出段階を示す図である。
【図18】図15のメンブレンバイオリアクタの浸漬段階を示す図である。
【図19】図15のメンブレンバイオリアクタのさらなる詳細を示す図である。
【図20】膜モジュールの付近で混合液流のベクトルを調整する能力を備えた、膜モジュールの動作を示す図である。
【図21】従来のメンブレンバイオリアクタ構成を示す図である。
【図22】US Filter MemJet製品の典型的なフローシートである。
【図23】従来の異なる代替メンブレンバイオリアクタ構成を示す図である。
【図24】リスクリーナを用いたMemJet製品のシステムを示す図である。
【図25A】単一リスクリーンを用いたメンブレンバイオリアクタを示す図である。
【図25B】並列スクリーニング構成によるメンブレンバイオリアクタを示す図である。図25Aに示すシステムのように、流入液と共に、混合液をリスクリーンに再循環させるのではなく、曝気槽と膜タンクの間に並列スクリーンが配置される。混合液が、第2のスクリーンを透過して、膜タンクに流入する。
【図26】メンブレンバイオリアクタに用いられるバイパス無酸素性リアクタのプロセス流れ図である。
【図27】固形物減量プロセス/メンブレンバイオリアクタ構成のプロセス流れ図である。
【図28】プリスクリーンを組み込んだメンブレンバイオリアクタ構成のプロセス流れ図である。
【図29A】ジェット・システムを用いたメンブレンバイオリアクタにおける混合液の均一な流れの概略を示す図である。
【図29B】ジェット・システムを用いないメンブレンバイオリアクタにおける混合液の不均一な流れの概略を示す図である。
【図30】固形物減量プロセス装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
下記の説明および例は、本発明の望ましい実施形態を詳細に示すものである。当該技術者には明らかなように、その範囲に包含される本発明の変形および修正が数多く存在する。従って、望ましい実施形態の説明は、本発明の範囲を制限するものとみなすべきではない。
【0021】
メンブレンバイオリアクタプロセスは、高い混合液浮遊物質(MLSS)濃度で機能し、有機物質の分解および消化を実現する高速プロセスである。メンブレンバイオリアクタプロセスと先進的生物学的汚泥消化プロセスを組み合わせると、消化した汚泥の廃棄に必要なコストおよび資源が低減するので、汚泥消化を大幅に改良することが可能になる。望ましい実施形態の装置によれば、廃棄汚泥の産出において約80%以上もの劇的な減少を生じることになる。望ましい実施形態の1つでは、汚泥は、250μmスクリーンを介して、メンブレンバイオリアクタの好気性タンクからポンプで送り出される。スクリーニングされた固形物が除去され、スクリーニングされたプロセス液が貯蔵タンクに流入するが、この場合、プロセス液の一部は液体サイクロンの分離器まで流れ、不活性物質が除去されることになる。不活性物質が除去されて、プロセス液はサージタンクに戻される。サージタンクから、プロセス液は、メンブレンバイオリアクタの好気性タンクに戻されるか、あるいは、オフライン処理槽に送られる。オフライン処理槽は、一般に、液体保持時間(HRT)が約1日以下から約1月以上であり、約10日の液体保持時間(HRT)が望ましい。オフライン処理槽を利用し、極めて低酸素の環境で操作することによって、有機物が可溶化される。消化されたプロセス液は、メンブレンバイオリアクタに送り返される。
このプロセスによって、多くの利点が得られる。例えば、廃水または生物汚泥は、複数の生物学的プロセスを同時に利用し、単一容器内で環境要件の一致しない複数の生物学的プロセスの共存を可能にする、生物学的に最適なやり方で処理することが可能である。単一容器内において混合せずに、制御された複数の生物学的環境を生成し、条件の非擾乱調整によって、各個別生物学的環境の相対比率を制御し、維持することが可能である。廃棄物を、好気性、無酸素性、および、嫌気性微生物の同時利用によって単一容器内で処理することが可能である。栄養分の供給および/または生物学的副産物の除去のため、単一容器の複数プロセス環境に静止状態でガスを送り込むことが可能である。1つ又は複数の排出点において、目標酸化還元電位に合わせて、その相対比が制御される複数の生物学的環境を備えた単一容器内において、廃棄物を処理することが可能である。内部で再循環される廃液流から不活性物質を除去し、処理槽に送ることが可能である。廃棄物消化微生物流を枯渇させることなく、再循環廃液流からこうした微生物と同様のサイズの不活性物質を除去することが可能である。
【0022】
メンブレンバイオリアクタ
望ましい実施形態の水処理システムのコンポーネントの1つが、メンブレンバイオリアクタである。メンブレンバイオリアクタシステムは、バクテリアを必要とする生物学的処理と膜分離を併用して、廃水の処理を行う。処理された水は、膜濾過プロセスによって、活性汚泥と呼ばれる浄化バクテリアから分離される。メンブレンバイオリアクタでは、一般に、分散型流通リアクタに組み込まれた水中中空糸膜モジュールが用いられる(以下において、糸を繊維ともいう。)。
【0023】
汚水の有効な三次処理として膜プロセスを用いて、廃水の質を良くすることが可能である。膜モジュールが大型供給タンクに浸けられ、膜の濾過側に加えられる吸引力によって濾液が集められる、または、メンブレンバイオリアクタによって生物学的および物理的プロセスが1つのステージで併用される水中膜プロセスは、簡潔で、効率が良く、経済的で、用途が広い。
【0024】
望ましい実施形態の水処理システムに用いることが可能なメンブレンバイオリアクタには、USFilter Memcor Research Pty.Ltd.およびZenon Environmental,Inc.から入手可能な市販のものが含まれる。とりわけ望ましいシステムには、USFilterのMEMCOR(登録商標) MBRメンブレンバイオリアクタシステム、およびZeeWeed(登録商標) 500およびZeeWeed(登録商標) 1000システムを利用したZenonのZeeWeed(登録商標) MBRメンブレンバイオリアクタプロセスが含まれる。
【0025】
ZeeWeed(登録商標) 500システムに用いられている膜モジュールは、2つのヘッダ間において垂直配向が施された数百の膜繊維(糸)から構成されている。膜は、公称孔径が0.04μmの強化繊維である。この中空糸は、上部ヘッダと下部ヘッダとの間の距離よりわずかに長く、このため、曝気されると、動くことが可能になる。繊維を洗浄し、膜表面から固形物を絶えず除去するのは、繊維間で泡立つ空気である。カセット内に、1〜36の膜モジュールが配置されている。ZeeWeed(登録商標) 500システムは、一般に、2つ以上の平行列から構成されている。各列は、プロセスポンプ、自動弁、および、計測器から構成されている。下記のコンポーネントは、一般に、あるシステムに必要とされ、特定列専用とすることもできるし、あるいは、列間で共用することも可能である。即ち、タンク(カセットが浸けられる)、定量ポンプ(化学薬品添加用)、膜ブロワ(空気を送って、膜を洗浄するための)、廃棄物または汚泥ポンプ、真空ポンプ(混入空気排除用)、現場洗浄ポンプ、バックパルスまたは洗浄タンク、および、制御システムである。また、設計または用途に応じて、濾過器(給水の事前スクリーニング用)、プロセスブロワ(生物学的処理システムのみ)、給水ポンプ、ミキサ、汚泥再循環ポンプ、および、カセット除去ホイストまたは他の機構といった、他のコンポーネントを用いることも可能である。
【0026】
ZeeWeed(登録商標) 1000限外濾過膜は、公称孔径が0.02μmであり、給水から浮遊物質、原虫、バクテリア、および、ウィルスを除去するように設計されている。ZeeWeed(登録商標) 1000システムは、直接(全量)濾過に定期的な空気および水による逆洗が後続する、従来の培地フィルタと同様のモードで機能する。ZeeWeed(登録商標) 1000カセットは、垂直および水平の両方向にブロックをなすように構成要素をスタックすることによって構成されている。サイズ範囲が構成要素3〜96個分にわたる、さまざまなカセット構造が得られる。ZeeWeed(登録商標) 1000システムは、一連の平行列から構成されている。各列は、ZeeWeed(登録商標) カセット、プロセスポンプ、配管、計測器、および、制御装置から構成されている。バックパルスポンプ、ブロワ、および、現場洗浄装置は、列間で共用することが可能である。給水は、タンクの底部において列の長い側に沿って延びる吸込み水路から各列に流入する。廃棄物は、カセット間のトラフに集められ、タンクの全長にわたって延びる溢流水路に放出される。
【0027】
好適な実施形態に用いられる好適なメンブレンバイオリアクタシステムでは、有効で効率の良い膜洗浄法が利用される。一般に用いられる物理的洗浄法には、透過液またはガスを利用した逆洗(バックパルス、バックフラッシュ)、膜表面洗浄、および、液中における気泡の形態をなすガスを利用した洗浄が含まれる。第2のタイプの方法例については、Ishida他による米国特許第5,192,456号明細書、Cote他による米国特許第5,248424号明細書、Henshaw他による米国特許第5,639,373号明細書、Henshaw他による米国特許第5,783,083号明細書、および、Zha他による米国特許第6,555,005号明細書に記載がある。
【0028】
上記引用例では、通常、加圧ブロワによって、膜モジュールが浸けられる液体システムにガスを注入して、気泡が形成される。こうして生じた気泡は、次に、上昇して、膜表面を洗浄し、膜表面に形成された汚損物質を除去する。発生する剥離力は、主として、初期気泡速度、気泡サイズ、および、気泡に加えられる合力に依存する。このアプローチにおける液体輸送は、ガス上昇メカニズムの有効性に制限される。洗浄効果を向上させるには、より多くのガスを供給しなければならない。しかし、この方法には、いくつかの欠点がある。すなわち、この方法では、多量のエネルギを消費するので、ミストまたは気泡流を生じて、有効膜濾過面積を縮小する可能性があり、膜にとって有害になる可能性がある。さらに、固形物濃度が高い環境では、ガス供給システムが、脱水固形物によって徐々に詰まるようになるか、または、ガス流が偶発的に停止すると、簡単に詰まる可能性がある。
【0029】
大部分の管状膜モジュールについては、膜は、モジュールの中央(縦方向)がたわみ性を有するが、両方の注封ヘッドに向かって堅くなり、たわみ性が低下する傾向がある。こうしたモジュールを高濃度の浮遊物質を含む環境で利用すると、浮遊物質は、とりわけ、2つの注封ヘッドの近くで、簡単に膜束内に捕捉される。ガス洗浄を利用して、膜を洗浄する場合、浮遊物質の堆積を減少させる方法には、モジュール構成および流量分布の改良が含まれる。
【0030】
膜モジュールを設計する場合、膜モジュールにおける管状膜の充填密度は、検討要素の1つである。本明細書で利用される膜モジュールにおける繊維膜の充填密度は、繊維膜が占める注封断面積を全注封面積で割った値と定義され、通常、百分率で表わされる。経済的観点から、膜モジュールの製造コストを抑えるには、できるだけ高い充填密度が望ましい。実際のところ、充填密度の低い膜モジュールでは、固形物の充填が減少する。しかし、充填密度が低すぎると、膜間における摩擦効果も低下し、結果として、膜表面の洗浄/洗い落とし効率が低下する可能性がある。従って、堆積する固形物の除去を支援し、同時に、膜の充填密度を最大にする膜構造を提供するのが望ましい。膜は、互いに接触させることもできるし(例えば、高充填密度で)、あるいは、間隔を密にして、または、離して配置することも可能であり(例えば、低充填密度で)、例えば、約0.1mm以下〜約10mm以上の繊維壁間隔が一般に用いられる。
【0031】
メンブレンバイオリアクタには、培養液を流して、ガス供給源を通過させることによって、培養液に気泡を混入させるステップと、膜表面に沿って気泡および培養液を流して、そこから汚損物質を除去するステップを含む、気泡の混入した培養液を利用する膜表面の洗浄方法を用いることが可能である。
【0032】
気泡は、ベンチュリ装置または他のタイプの接合部によって液体流に混入される。さらに望ましいのは、液体流にガスを強制的に混合して、液体と気泡の混合物を生じさせる装置によって、液体流に気泡を混入または注入することであり、こうした装置には、ジェット、ノズル、エジェクタ、エダクタ、インジェクタ等が含まれる。オプションにより、ブロワまたは同様の装置によって、培養液中に追加気泡源を設けることも可能である。用いられるガスには、空気、酸素、ガス状塩素、または、オゾンを含むことが可能である。洗浄および/または曝気のためには、空気が最も経済的である。ガス状塩素は、膜表面における化学反応による洗浄、消毒、洗浄効率の向上のために利用することが可能である。オゾンの利用には、ガス状塩素に関する上述の効果以外に、DBP前駆物質の酸化、および、非生分解性NOMの生分解性溶解有機炭素への変換といった、追加特徴がある。
【0033】
メンブレンバイオリアクタに用いられる膜モジュールは、オプションにより、その間における過剰な動きを阻止するように取り付けられる、互いに近接して配置された複数の多孔性膜を具備し、モジュール内から、液体流に混入される気泡を供給して、使用時、液体およびそれに混入される気泡が、膜表面を通過して、そこから汚損物質を除去するようにする気泡源を含むのが望ましいが、これらの気泡は、液体を流して、ガス源を通過させ、ガスを液流に吸い込ませることによって液体に混入される。液体および気泡は、混合されて、その後、膜を通過するように流され、汚損物質を除去するのが望ましい。
【0034】
メンブレンバイオリアクタの繊維は、繊維配列内から、膜の孔を通過するガス以外の手段によって、液体流に混入された均一な分布の気泡を生じさせることにより、洗浄することが可能であるが、これらの気泡は、液体を流して、ガス源を通過させ、液体中へのガスの吸込みおよび/または混合を生じさせることによって、液体に混入されるようになっており、その分布によって、気泡が、配列内の各膜間をほぼ均一に通過し、液体流との併用によって、膜表面を洗浄して、膜モジュール内から堆積固形物を除去するようになっている。気泡は、液体流に注入されて、混合されるのが望ましい。
【0035】
メンブレンバイオリアクタの膜には、多孔性中空糸が含まれていて、中空糸の各端部がヘッダに固定され、下部ヘッダには、ガス液体流を導入する1つ以上の孔が形成されているのが望ましい。孔は、円形、楕円形、または、スロット形状とすることが可能である。中空糸は、通常、下方端が密封され、濾液の除去を可能にするため、上方端が開放されているが、構成によっては、中空糸の両端を開放して、一方の端部または両端部から濾液を除去できるようにすることも可能である。中空糸は、円筒状配列または束をなすように配置するのが望ましいが、例えば、正方形、六角形、三角形、不規則形状等といった、他の構造を用いることも可能である。上述の洗浄プロセスは、メンブレンバイオリアクタに用いることも可能な、平坦な膜または板状の膜といった、他の形態の膜にも同様に適用可能であることは明らかである。
【0036】
メンブレンバイオリアクタに用いられる膜モジュールには、互いに近接して配置されて、それらの間の過剰な動きを阻止するように取り付けられ、各端部がヘッダに固定されていて、ヘッダの1つには、ガス/液体を導入する1つ以上の孔が形成されている、複数の多孔性中空糸膜と、ヘッダ間に少なくとも部分的に延びて、膜中空糸をグループをなすように仕切る仕切り手段が含まれているのが望ましい。望ましくは、それぞれの中空糸グループ間の間隔によって、1つまたは複数の仕切りが形成されるが、多孔性(例えば、スクリーン、クリップ、または、リング)仕切りまたは中実仕切りを用いることも可能である。仕切りは、互いに平行にすることもできるし、あるいは、円筒状配列の中空糸膜の場合には、配列の中心から半径方向に延びることも、または、円筒状配列内に同心配置することも可能である。代替形態の場合、中空糸束に、ヘッダ間における中空糸束の全長にわたって延びる中央縦方向通路を設けることも可能である。
【0037】
メンブレンバイオリアクタに用いられる膜モジュールには、それぞれの注封ヘッド間に縦方向に延び、各端部がそれぞれの注封ヘッドに取り付けられた、複数の多孔性中空膜糸が含まれており、膜中空糸が互いに近接して配置されて、その間の過剰な動きを阻止するように取り付けられ、膜中空糸が、少なくとも、それぞれの注封ヘッドにおいて、または、それに隣接して、いくつかの束をなすように仕切られて、その間にスペースを形成し、注封ヘッドの1つに、モジュール内に気泡を生じさせて、使用時に気泡が膜中空糸表面を通過して、そこから汚損物質を除去するようにさせるための一連の曝気開口部が形成されているのが望ましい。
【0038】
中空糸を通じての制限されない液体およびガス流を得るため、また、中空糸の移動振幅を制限して、中空糸の注封端におけるエネルギ集中を軽減するため、垂直構成要素と水平構成要素の両方が適切な間隔をあけて配置されている、モジュール支持スクリーンによって、中空糸束を保護し、中空糸の移動を制限することが可能である。あるいはまた、クリップまたはリングを用いて、中空糸束(繊維束)を縛ることも可能である。
【0039】
望ましくは、曝気開口部は、仕切られた繊維束間に形成されたスペースと一致するように配置される。開口部には、例えば、一列に並んだ孔といった、さまざまな構成をなすように配置することが可能な、1つ以上の孔またはスロットを含むのが望ましい。繊維束は、スロットまたは孔列間において、注封ヘッドに配置するのが望ましい。実施形態によっては、繊維束内に孔またはスロットを配置するか、または、繊維束内に、繊維束に隣接して両方を配置するのが望ましい場合もあり得る。
【0040】
望ましくは、気泡は、孔またはスロットに通される前に、液体流に混入または混合されるが、構成によっては、ガスだけしか利用できない場合もあるのは明らかである。利用される液体は、膜モジュールに供給することが可能である。繊維および/または繊維束は、注封ヘッド間において互いに交差する可能性があるが、交差しないのが望ましい。
【0041】
一般に、モジュール内の繊維は、充填密度(上記で規定の)が約5%以下〜約75%以上であり、約6、7、8、9、または、10%〜約60、65、または、70%が望ましく、約11、12、13、14、15、16、17、18、19、または、20%〜約21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、または、55%であればより望ましい。
【0042】
孔の直径は、望ましくは約0.5mm以下〜約50mm以上であるが、約0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、または、1.5mm〜約25、30、35、40、または、45mmがより望ましく、約1.75、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または、5mm〜約6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または、24mmが最も望ましい。あるスロットまたは孔列の場合、孔面積は、上記孔と同等になるように選択される。
【0043】
一般に、繊維内側は、約0.05mm以下〜約10mm以上であり、約0.10、0.15、または、0.20mm〜約3、4、5、6、7、8、または9mmが望ましく、さらに、約0.25、0.50、0.75、または、1.0mm〜約1.25、1.50、1.75、2.00、または、2.50mmが望ましい。繊維壁厚は、用いられる材料、および、濾過効率と対比した必要強度によって決まる可能性がある。一般に、壁厚は、約0.01mm以下〜約3mm以上であり、約0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、または、0.09mm〜約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8または、2.9mmが望ましく、約0.1、0.2、0.3、0.4、または、0.5mm〜約0.6、0.7、0.8、0.9、または、1.0mmであれば最も望ましい。
【0044】
メンブレンバイオリアクタには、管路、パイプ、ポンプ、および/または、給水を導入するための他の装置を備えたタンク、タンク内の活性汚泥、タンク内に配置されて、汚泥内に浸けられるようになっている膜モジュール、および、繊維膜の少なくとも一方の端部から濾液を除去するための装置を含むことが可能である。
【0045】
メンブレンバイオリアクタは、タンクに給水を導き、繊維を真空状態にして、そこから濾液を除去し、同時に、曝気開口部を介して、間欠的、周期的、または、連続的に、モジュール内に気泡を供給し、使用時、気泡が膜繊維の表面を通過して、そこから汚損物質が除去されるようにすることで、機能させるのが望ましい。気泡は、孔またはスロットを介した給水時に、液体流に混入されるか、または、液体流と混合されるのが望ましい。
【0046】
所望の場合、微生物の活動を助けるため、タンク内にもう1つの曝気源を設けることが可能である。膜モジュールをタンク内で垂直方向に吊るし、吊るされたモジュールの下に、もう1つの曝気源を設けることが望ましい。代替案として、モジュールは、水平に吊るすこともできるし、あるいは、任意の他の所望位置につけることも可能である。もう1つの曝気源には、1群の通気性管または他のこうした曝気源を含むのが望ましい。膜モジュールは、繊維束に応じて、逆洗を伴って、または、伴わずに、機能させることが可能である。バイオリアクタ内の浮遊物質の高混合液(約5,000ppm以下〜約20,000ppm以上)によって、滞留時間が大幅に短縮され、濾液の質が大幅に改善されることが分っている。有機物の分解と膜洗浄の両方に曝気を併用すると、膜貫通圧をあまり増大させずに一定の濾液流量が可能になり、同時に、MLSSの濃度が高くなることが分っている。仕切られた繊維束を用いると、ガス洗浄プロセスをあまり損なうことなく、高充填密度を実現することが可能になる。これによって、より高い濾過効率を得ることが可能になる。
【0047】
特に望ましい実施形態の1つでは、メンブレンバイオリアクタに米国特許第6,555,005号明細書に記載のモジュールが用いられる。図4を参照すると、膜モジュール5には、一般に、両端7および8が注封され、オプションにより、この場合、スクリーン9である支持構造に入れられた、繊維による管形状または平板形状の膜6が含まれている。膜の一方または両方の端部を用いて、透過水を集めることが可能である。膜モジュールの底部は、供給ガスおよび液体の混合物を配給して、膜表面を通過させるため、ポット11にいくつかの通し孔10を備えている。モジュールのベースには、ベンチュリ装置12等が接続されている。ベンチュリ装置12は、吸気口13を介してガスを吸い込み、ガスを吸水口14を介して流入する液体と混合するか、または、液体に混入させて、気泡を生じさせ、液体/ガス混合物をモジュール通し孔10に拡散させる。配給通し孔10の通過後、混入気泡は、膜表面を洗浄し、同時に、液体流と共に上昇する。供給液またはガスは、システム要件に応じて、連続注入または間欠的注入が可能である。ベンチュリ装置を用いると、ブロワなしで、気泡を生じさせ、システムを曝気させることが可能になる。ベンチュリ装置12は、ベンチュリ管、ジェット、ノズル、エジェクタ、エダクタ、インジェクタ等とすることが可能である。
【0048】
図5を参照すると、ジェットまたはノズルタイプ装置15の拡大図が示されている。この実施形態の場合、周囲空気通路17を備えたジェット16に液体を送り込んで、ガスの混入した液体流18を生じさせる。こうした装置では、それぞれの供給弁を調整することによって、気体および液体媒体の個別制御が可能になる。
【0049】
ガスの混入に一般に利用される液体は、濾過されるべき給水、廃水、または、混合液である。ベンチュリ等を介してこうした使用液をポンプで注入すると、ガスが液体に吸い込まれる真空状態が生じるか、または、ブロワ使用時に、ガス吐き出し圧が低下することになる。液体流にガスを供給することによって、配給通し孔10が詰まる可能性が大幅に低下する。
【0050】
ベンチュリ装置等を利用すると、ブロワのような加圧ガス供給源を必要とすることなく、気泡を発生して、膜表面を洗浄することが可能になる。原動力となる液体が、ベンチュリを通過すると、真空が生じて、ガスが液体流に吸い込まれ、気泡が発生する。それでもなおブロワが必要であったとしても、上記プロセスを利用すると、ブロワの吐き出し圧が低下し、従って、運転コストが低下する。ベンチュリにおいて、液相および気相の充分な混合も行われ、膜モジュール内に拡散されて、膜が洗浄される。ジェットタイプの装置を利用して、ガスを液体媒体に強制的に混合する場合、より高速の気泡流が生じるので、さらなる利点が得られる。廃水処理において、利用されるガスが空気または酸素の場合、こうした十分な混合によって、優れた酸素移動容量が得られる。液体が充填されたパイプにガスを直接注入すると、ガスによって、パイプ壁面に停滞ガス層を形成するのが不可能になり、従って、ガスおよび液体がバイパスして、モジュールの異なる部分に流入し、洗浄効率が不十分になる。気泡流は、膜に沿った液体流によって促進され、大きい洗浄剥離力が発生することになる。このガス/液体配給方法によって、確実な液体輸送および曝気が施され、ガスおよび液体の流量を個別に調整することが可能になる。2相流体(ガス/液体)混合物を空気分配装置の孔に注入すると、脱水固形物の形成が排除され、従って、こうした脱水固形物によって孔が徐々に詰まるのが防止される。この注入方式によって、さらに、モジュールの深部に洗浄化学物質を有効に送り込み、同時に、洗浄エネルギを与えて、化学洗浄を促進するための効率の良い洗浄メカニズムが得られる。この方式と上述のモジュール構成で得られる高充填密度とが相俟って、最少量の化学物質で繊維を有効に洗浄することが可能になる。上述のモジュール構成によれば、固形物の充填を大幅に増加させることなく、モジュール内における繊維充填密度を高めることが可能になる。これによって、さらなる融通性が付加され、膜モジュールを好気性ベイスンに組み込むこともできるし、あるいは、独立したタンク内に配置することもできるようになる。後者の構成の場合、その利点は、タンク内に保持する化学物質が少ないので、化学物質の使用量が大幅に節約され、化学洗浄プロセスを自動化することができるので、労働コストが大幅に節約されるということである。バイオプロセスに戻すことが可能な化学物質は、やはり、アグレッシブな酸化剤であり、従って、バイオプロセスに悪影響を及ぼす可能性があるので、使用する化学物質の減少も重要である。従って、バイオプロセスに生じる化学物質の負荷の減少は、かなりの利点をもたらすことになる。
【0051】
供給ガスおよび液体の混合物を各膜モジュールに積極的に注入することによって、プロセス液が膜のまわりに均一に配給され、濾過中の供給物濃度分極が最小限に抑えられる。濃度分極は、大規模システム、および、大量の浮遊物質を含むプロセス供給物の場合、より大きくなる。先行技術によるシステムは、プロセス液がタンクの一方の端部に流入し、モジュールを横切る際に濃縮されることが多いので、均一性が不十分である。その結果、モジュールによっては、他よりはるかに高い濃度に対処しなければならなくなり、処理効率が悪くなる。濾過効率は、濾過抵抗の低下によって改善される。供給側の抵抗は、膜表面への横断流の通過減少、および、気泡および2相流によって発生する乱流のために低下する。こうした洗浄法は、膜による飲料水、廃水の処理、および、関連プロセスに利用することが可能である。濾過プロセスは、吸込みまたは加圧によって促進することが可能である。
【0052】
図6A〜7Bを参照すると、さまざまな仕切り構成の実施形態が示されている。やはり、これらの実施形態は、円筒管状または繊維状膜束20に関して例示されているが、明らかに、他の構造を用いることも可能である。図6Aおよび図6Bには、いくつかの平行な仕切りスペース22によっていくつかの薄いスライス21をなすように垂直方向に仕切られた管状膜の束20が示されている。この膜束の仕切りによって、充填密度をあまり低下させずに、堆積した固形物を簡単に除去することが可能になる。こうした仕切りは、完全な仕切りまたは部分仕切りを形成するため、注封プロセス中に実現することが可能である。仕切りモジュールを形成するもう1つの方法は、図7Aおよび図7Bに示すように、いくつかの小さい管状膜束23を各モジュールに注封することである。
【0053】
図8Aおよび8Bには、膜モジュールのもう1つの構成が例示されている。膜のない中央ゾーンが、より多くの空気および液体の注入を可能にする通路24を形成している。気泡および液体は、従って、管状膜20に沿って進み、上部の注封ヘッド8の繊維配列を通って流出し、膜壁面を洗浄して、そこから固形物を除去する。モジュールには、単一ガスまたはガス/液体混合物を注入することが可能である。
【0054】
図9Aおよび9Bには、図5と同様であるが、洗浄液/ガス混合物を繊維膜20に入れるための単一中央孔30が下部ポット7に設けられた、さらにもう1つの実施形態が例示されている。この実施形態の場合、繊維は、孔30に隣接して広がり、上部ポット8に向かって個別束23をなすように収束する。大きい中央孔30は、繊維まわりの液体流量を増し、従って、洗浄効率を高めることが分っている。
【0055】
図10および11には、図9Aおよび9Bと同様の膜構成、および、図5の実施形態と同様のジェット混合システムを備えた、本発明のさらなる実施形態が示されている。単一中央孔30を利用すると、図11に示すように、繊維20の両端から濾液を除去することが可能になる。
【0056】
図12および図13を参照すると、モジュール45には、上部注封ヘッド47と下部注封ヘッド48に取り付けられて、その間に延びる複数の中空繊維膜束46が含まれている。注封ヘッド47および48は、適合するマニホルド(図示せず)を取り付けるためのそれぞれの注封スリーブ49および50に装着されている。繊維束46は、繊維間における過剰な動きを阻止するため、スクリーン51によって包囲されている。
【0057】
図12に示すように、下部注封ヘッド48には、いくつかの平行に配列されたスロットタイプの曝気孔52が設けられている。繊維膜53が束46内に注封されて、繊維束を横切って延びるスペース54を備えた仕切り配列を形成している。曝気孔52は、仕切りスペースとほぼ一致するように配置されるが、一般には、各スペースに関連したいくつかの曝気孔が存在する。
【0058】
下部注封スリーブ50によって、下部ポット48の下に空洞55が形成されている。ガスまたは液体とガスの混合物が、孔52を通って膜配列に流入する前に、ジェット・アセンブリ57(前述の)によって空洞55に注入される。
【0059】
使用中、仕切りを利用すると、とりわけ、繊維束のポット端部近くで、洗浄ガスおよび液体混合物の高エネルギの流れを生じさせることが可能になり、膜繊維まわりにたまった固形物の堆積を除去するのに役立つ。
【0060】
モジュールに絶え間なく空気を導入して、微生物が活動するための酸素を供給し、常に膜を洗浄するのが望ましい。あるいはまた、実施形態によっては、空気の代わりに、純酸素または他の混合ガスを用いることが可能な場合もある。上部ポットを通る膜管腔に取り付けられた吸引ポンプによって、膜から清浄な濾液を吸い出すか、あるいは、重力または吸引ポンプによって、下部ポットから膜内からの濾液を吸い出すことが可能である。
【0061】
膜モジュールは、リアクタ内に存在する高濃度の混合液浮遊物質(MLSS)のため、低膜貫通圧(TMP)条件下で動作させられる。浮遊物質の濃度が低い場合には、より高い膜貫通圧を用いるのが有効である可能性がある。
【0062】
メンブレンバイオリアクタは、供給汚水からの栄養分のさらなる除去に役立つ、嫌気性プロセスと組み合わせるのが望ましい。望ましい実施形態のモジュール・システムは、多くの他のシステムよりも高濃度のMLSSに対する許容度が高く、効率の良い空気洗浄および逆洗(利用される場合)が、バイオリアクタモジュールの効率の良い動作および性能に役立つことが分っている。
【0063】
望ましい実施形態の水処理システムには、任意の適合するメンブレンバイオリアクタを用いることが可能である。特に望ましいメンブレンバイオリアクタシステムは、図14に例示のように、基質内に浸けられた垂直配向の微孔性中空糸を利用して、液体基質のリザーバから濾液を吸い出すように設計されている。図14には、4つのサブモジュールを含む、いわゆる「クローバの葉」型濾過装置の側面図が描かれている。直線状「ラック」内の複数のこうした濾過装置が、基質リザーバに浸けられている。
【0064】
望ましい実施形態の方法および装置を利用して、任意の適合する基質を濾過することが可能である。適合する基質には、地下水、川の水、飲用水、汚水のような有機物を含む基質、農業排水、工業プロセス水等が含まれるが、これらに制限されない。水を含む基質は、本明細書に記載の方法および装置に特になじみやすいが、他の液体を含む基質を濾過することも可能である(例えば、エタノール、または、他の化学製品)。
【0065】
例示のメンブレンバイオリアクタ濾過装置には、それぞれ、4つのサブモジュールの上部端および下部端を受ける、濾液サブマニホルド(図示しない)および空気/液体基質サブマニホルドが含まれている。各サブマニホルドには、それぞれ、サブモジュールの端部を受ける、4つの円形筒継手または受け領域が含まれている。各サブモジュールは、構造的に、上部円筒形ポット(図示しない)、底部円筒形ポット、および、それらの間に接続されて、繊維を固定するケージ(図示しない)によって形成されている。ポットは、中空糸の端部を固定し、樹脂または高分子材料から形成されている。ケージの両端は、ポットの外表面に固定されている。ポットおよびケージの関連端部は、各サブマニホルドの4つの円形管継手の1つに一緒に収容されている。サブマニホルドおよびサブモジュールのポットは、円形クリップおよびOリングシールを用いて互いに液密に結合されている。ケージによって、各サブモジュールのポット間が構造的に接続されている。
【0066】
各サブモジュールには、その上部ポットと底部ポットの間に垂直に配置された繊維が含まれている。繊維の長さは、繊維が側方に移動できるように、ポット間の距離よりやや長い。ケージによって、サブモジュールの繊維が厳重に包囲されているので、動作中、外側繊維がケージに接触し、繊維の側方移動がケージによって制限されることになる。繊維の下部端の管腔は、底部ポット内に密封されるが、繊維の上部端は密封されない。換言すると、繊維の管腔は、上部ポットの上面の上方において、濾液サブマニホルドの内側に対して開いている。底部ポットには、その下面からその上面まで延びる複数のスロットが含まれているので、空気/液体基質サブマニホルド内の気泡および液体基質混合物を底部ポットを通って上昇させ、繊維の下部端間から排出することが可能である。
【0067】
濾液サブマニホルドは、垂直配向の濾液抜取管に接続されており、濾液抜取管は、さらに、ラックの濾過装置(例示のクローバの葉型装置のような)の全てから濾液を受け入れる濾液マニホルド(図示しない)に接続している。濾液抜取管は、サブモジュールの上部ポットの上面と流体で通じているので、抜取管によって濾液を除去することが可能である。さらに、システムには、図14に描かれているように、空気/液体基質サブモジュールスカートに空気を供給する送気管が含まれている。
【0068】
作業中、サブモジュールのケージによって、上部ポットと底部ポットの間の、中空繊維の領域に液体基質が入れられる。ポンプ(図示しない)を利用して、濾液マニホルド、従って、濾液抜取管およびサブモジュールの繊維管腔に吸引力が加えられる。この結果、繊維壁間に差圧が生じて、濾液が基質から繊維の管腔に流入する。濾液は、繊維管腔内を上昇して、濾液サブマニホルドに流入し、濾液抜取管を通って、上昇して、濾液マニホルドに流入し、リザーバの外部で集められる。
【0069】
濾過中、粒状物質が繊維の外表面に堆積する。繊維に固着する粒状物質の量が増すにつれて、十分な濾液流を発生するために、繊維壁間の差圧を増す必要がある。繊維の外表面の清浄度を維持するために、空気/液体基質サブモジュールのスカートにおいて、空気および液体基質を混合し、次に、底部ポットのスロットを介して、繊維束に混合物を配給し、底部ポットの上面から気泡を含む混合物として排出することになる。連続的、間欠的、または、周期的曝気を実施することが可能である。空気オン時間および空気オフ時間の長さが等しい、周期的曝気の実施がとりわけ望ましく、総サイクル時間(1空気オン期間と1空気オフ期間からなる時間)は、約1秒以下〜約15分以上であり、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または、14秒〜約6、7、8、9、10、11、12、13、または、14分が望ましく、約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100,105、110、115、または、120秒〜約130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、または、300秒であればより望ましい。上昇気泡によって、繊維表面が洗浄される(すなわち、繊維表面から粒子状物質が取り除かれる)。空気が均一な気泡サイズで供給される曝気を施すこともできるし、あるいは、例えば、粗大気泡または微小気泡といった異なる気泡サイズの組合せを、同時にまたは交互に用いることも可能である。正弦、三角、または、他のタイプのサイクルといった、規則的または不規則サイクル(空気オン時間および空気オフ時間が変動する)を用いることも可能であり、この場合、空気率は、非連続的に変化するのではなく、望ましい率または可変率で、徐々に変化する。適宜、さまざまなサイクルパラメータを組み合わせることが可能である。
【0070】
とりわけ望ましい実施形態の場合、曝気のために、メンブレンバイオリアクタに微小気泡が連続供給され、同時に、洗浄のため、粗大気泡が周期的に供給される。気泡の直径は、一般に、約0.1mm以下〜約50mm以上である。バイオリアクタへの酸素供給には、直径が約0.1〜約3.0mmの気泡、できれば、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または、1.0mm〜約1.25、1.50、1.75、2.00、2.25、2.50、または、2.75mmの気泡がとりわけ有効である。膜の洗浄には、直径が約20〜約50mmの気泡、できれば、約25、30、または、35mm〜約40または45mmの気泡がとりわけ有効である。許容できる酸素供給および洗浄の両方を実施するには、直径が約3〜約20mmの気泡、できれば、約4、5、6、7、8、9、または10mm〜約11、12、13、14、15、16、17、18、または、19mmの気泡が、一般には望ましい。
【0071】
オフライン処理槽
望ましい水処理システムのコンポーネントのもう1つは、オフライン処理槽である。望ましい実施形態の場合、水処理システムには、内部再循環構成をなすようにメンブレンバイオリアクタと併用されるオフライン処理槽が含まれており、メンブレンバイオリアクタの上部からの透過水は、処理済み廃水として送り出され、一方、メンブレンバイオリアクタの底部に沈降するバイオマス(汚泥)の一部が、オフライン処理槽に戻されて、その結果、消化プロセスの効率が大幅に向上する。オプションにより、メンブレンバイオリアクタからの汚泥を1つ以上のスクリーンおよび/または1つ以上の液体サイクロンに通して、オフライン処理槽に戻る前に、不活性含有物が除去される。
【0072】
オフライン処理槽には、微小気泡を導入して、個別的層状領域において3つもの異なる生物学的環境を生成する単一処理槽が含まれている。望ましい実施形態の場合、容器の底部から気泡を導入して、この近くに好気性ゾーンが生成される。好気性ゾーンに常在する微生物による酸素の消耗によって、上方にドリフトして、好気層の上方に築かれる無酸素性領域が生成される。2つの層は、上方に位置する無酸素性環境に対する好気性微生物の不耐性のため、分離したままであり、界面の鮮鋭度は、不耐性度によって決まる。無酸素性ゾーンは、こうしたゾーンに理想的に適している脱窒微生物が生息する場合、それらによる窒素ガスまたは溶存窒素の生成によって、酸素、硝酸、および、亜硝酸がほぼまたは完全に消耗された上方に位置する嫌気性ゾーンが形成され、さらに、静止(すなわち、制限された混合)条件下において、溶存窒素ガスが、嫌気性ゾーンと無酸素性ゾーンの間に絶縁層を形成することによって、これらのゾーンの分離に役立つ。ゾーン間における分子拡散は、全てのゾーンへの栄養分の供給を保つのに十分であり、機械的混合がないにもかかわらず、溶存副産物の堆積を阻止する。
【0073】
オフライン処理槽に関連して用いるのに適した気泡の発生装置については、その開示全体が参考までに本明細書において援用されている、米国特許第5,316,682号明細書に記載がある。こうした装置によって、望ましくない乱流状態が回避される。静止条件は、生体固形物の有益な被覆層の形成を促進することが可能である。互いに拮抗的環境を必要とする微生物の組み合わせを含む廃液に適切な気泡を制御下で導入すると、それらの同時調節が可能になるが、これらの廃棄物消化微生物には、好気性、無酸素性、および、嫌気性変種を含むのが理想的である。(本明細書で用いられる限りにおいて、「廃棄物消化微生物」という用語は、バクテリアまたは原虫のような、有機廃棄成分を消化して、鉱質生成物またはガス状生成物にすることが可能な任意の自立的微小生体を現している。)
【0074】
従って、オフライン処理槽では、環境的に不適合な廃棄物消化微生物の複数個別ゾーンが単一容器内において用いられる。少なくとも1つの生物指標の目標レベルを維持するため、オフライン処理槽内における所定の臨界パラメータを自動的に制御するための装置(例えば、コンピュータまたは回路)が設けられている。この指標は、処理される廃棄物のタイプに従って選択される。一般に、この指標は、アンモニアレベル、可溶性硝酸レベル、可溶性亜硝酸レベル、および、酸化還元電位(ORP)のうちの少なくとも1つである。後者(ORP)の指標では、任意の基準で、バルク廃液の電位が測定される。重要な制御パラメータには、バルク液のガス(一般には空気)含有量、および、乱流度が含まれる。
【0075】
オフライン処理槽は、内部再循環構成をなすように、メンブレンバイオリアクタと共に用いるのが望ましい。実施形態のいくつかでは、再循環構成において、制限するわけではないが、清浄器、曝気槽、スクリーンおよび分離器、化学処理装置等を含む追加処理装置を用いることが可能である。
【0076】
オフライン処理槽は、内部再循環構成をなすように、液体サイクロンを含む除去サブシステムと併用するのが望ましい。メンブレンバイオリアクタの上部からの透過水は、処理済み廃水として送り出されて、可溶性鉱質残留物を運び、一方、メンブレンバイオリアクタの底部に沈降するバイオマス(汚泥)の大部分または全てが、液体サイクロンおよびスクリーン装置を介して、オフライン処理槽に戻され、不活性含有物が除去される。スクリーン/サイクロンの組合せを利用して不活性含有物を除去すると、生物学的廃棄物消化プロセス(本発明の複数ゾーンシステムを利用したものを含むがこれに限定されない)の効率が大幅に向上する。
【0077】
望ましい実施形態のシステムを例示した図2を参照すると、流入廃棄物は、まず、開口サイズが約6mm以下〜約25mm以上のオプションスクリーン12に遭遇し、スクリーン12の受液面に堆積する粗大ゴミは、矢印14で示されるように、定期的に除去される。スクリーニングされた液体は、導管16に沿ってオフライン処理槽18に導かれ、廃棄物消化微生物によるその生分解性成分の消化が可能になる。廃液には、それぞれ、生存または少なくとも最適性能のために異なる化学環境を必要とする、少なくとも2つの異なる形態の廃棄物消化微生物を含んでいるのが望ましい。異なる形態の微生物は、それぞれ、異なるタイプの廃棄物を分解するという意味において、相補性とすることが可能である。廃液に望ましい形態の消化微生物が欠乏している場合には、オフライン処理装置18に、これを直接導入することが可能である。
【0078】
流入液流内の可消化廃棄物の濃度によって決まる始動時間が経過すると、混合液が、導管20を介して、オフライン処理槽18からメンブレンバイオリアクタ22に連続して導かれ、新しい流入液が導管16を介してオフライン処理槽18に達すると、濾過が行われる。生体固形物(いわゆる、「活性汚泥」)が、メンブレンバイオリアクタ22の底部に近い排出点から連続して抜き取られ、内部再循環ループ30を介して、オフライン処理槽18に再循環され、同時に、透過水は、連続してまたは定期的に抜き取られ、混合液は、定期的に抜き取られるか、または、メンブレンバイオリアクタ22の上部に近い排出点から溢流させられて、その結果、システム内における生体固形物の適切な濃度が維持されることになる。
【0079】
再循環ループ30には、活性汚泥を除去サブシステム34まで輸送する、メンブレンバイオリアクタ22からポンプ33に至る第1の導管32と、オフライン処理槽18のヘッドまで戻る第2の導管36が含まれている。スクリーン、オプションのサージタンク(図示しない)、および、液体サイクロンを含む除去サブシステム34は、生体固形物戻り流から不活性の非分解性物質を除去することによって、廃棄物処理の効率を高めるように設計されている。
【0080】
一般的なシステム構成は、すぐ後に解説するように、マルチゾーン廃棄物処理のために構成されたオフライン処理槽18に用いるのに適しているが、除去サブシステム34は広く役に立つため、完全に従来式の(すなわち、単一ゾーンの)処理プロセスにも用いることが可能である。同様に、マルチゾーン処理の効用は、それに応じて除去システムを含む再循環構成に制限されるものではない。
【0081】
いくつかの実施形態では、オフライン処理槽は、バイパスリアクタタンクとすることが可能である。こうした実施形態の場合、主廃水流は、バイパスリアクタタンクに送られない。代わりに、主廃水流は、スクリーニング、グリット除去等のような、任意のヘッドワーク前処理の後、メンブレンバイオリアクタの活性汚泥タンクに流れる。
【0082】
図3を参照すると、オフライン処理槽18に3つまでのゾーンを生成して、維持を容易にする装置が描かれている。一般に、この装置には、ガスの気泡微細化ループと、その動作を管理するフィードバック制御システムが含まれている。
【0083】
全体が参照番号50で表示された気泡微細化ループは、微小気泡を発生して、過剰な乱流を生じないようなやり方で、オフライン処理槽18に導入する。気泡微細化ループ50には、それを通って流れる液体流に微小気泡を導入する気泡微細化素子52が含まれている。素子52には、各端部がテーパ状導管に結合された円筒状多孔性膜を含むのが望ましい。膜を取り巻くのは、膜に対して密封され、高圧下でガスを含むことが可能な同心ハウジングである。ガスは、密封された一方向吸気口を介して、素子52のハウジングに供給される。従って、いずれかのテーパ状導管に導入される液体は、素子52の内腔を軸方向に通過し、円筒状膜の孔を半径方向に透過する気泡を捕捉する。
【0084】
廃液は、モータ駆動ポンプ56によって、弁32を介して、オフライン処理槽18から連続して抜き取られ、気泡微細化器52の吸入口に送られる。ガス(空気が望ましい)源58は、弁60を介して気泡微細化器52に給気し、それを通る液体中に気泡を生じさせる。気泡微細化器52から排出されると、曝気液は、オフライン処理槽18の底部に再導入される。サブミクロンの気泡を含み、オフライン処理槽18の底部領域全体に気泡を行き渡らせる曝気液の導入は、ほとんど乱流を生じることなく行われる。これは、平均直径が1ミクロン未満か、蓄積位置エネルギが少なくとも10(lbm/ft2−秒2)(ここで、lbmはポンド質量である)か、または、ワーク/エリア・ファクタが少なくとも0.5lbf/ft(ここで、lbfはポンド力である)の気泡を用いることによって確実なものになる。蓄積位置エネルギは、100lbm/ft2−秒2を超え、ワーク/エリア・ファクタは、3lbf/ftを超えるのが望ましい。
【0085】
混合液に好気性および非好気性(すなわち、無酸素性および/または嫌気性)微生物が存在する限りにおいて、2つ以上の明確な層別化された化学環境がオフライン処理槽18内に生じることになる。多種多様な汚泥成分に存在する代表的な好気性属には、アシネトバクター、シュードモナス、細菌集団、アクロモバクター、フラボバクテリウム、ノカルジア、ブデロビブリオ、ミコバクテリウム、ミズワタ菌、ベギアトア、チオスリックス、レシコスリックス、および、ゲオトリクムといったバクテリア、ニトロソモナスおよびニトロバクターといった硝化細菌、および、繊毛、ツリガネ虫、および、オペルクラリア、および、エピスタイリスといった原虫が含まれており、やはり、一般に存在する無酸素性属には、アクモバクター、アエロバクター、アルカリゲネス、バシラス、ブレビバクテリウム、フラボバクテリウム、乳酸菌、ミクロコッカス、プロテウス、シュードモナス、および、スピリルムといった脱窒細菌が含まれており、一般に存在する嫌気性微生物には、亜クロストリジウム、嫌気性ペプトコッカス、亜ビフィドバクテリウム、亜デサルフォビブリオ、亜コリネバクテリウム、乳酸菌、アクチノミセス、ブドウ球菌、および、大腸菌が含まれている。
【0086】
好気性硝化細菌によって、アンモニアまたはアミン化合物(アミノ酸のような)が酸化されて、亜硝酸になり、最終的には、硝酸になるが、一方では、無酸素性脱窒細菌によって、硝酸が還元されて、硝酸になり、最終的には、窒素ガスになる。硝化細菌と脱窒細菌が同時に存在すると、大量の可溶性炭質BOD、並びに、窒素を含む有機物をガス状生成物に還元するのに極めて役立つことが分っている。大量の可溶性亜硝酸が、硝化細菌による硝酸への変換前に、好気性ゾーンと無酸素性ゾーンとの界面を横断し、無酸素性ゾーンにおいて、脱窒細菌によって、亜硝酸が窒素ガスに変換され、結果として、化学結合窒素から窒素ガスへの全体としての最終的な変換が生じることになる(これが、静止環境における無酸素ゾーンと嫌気性ゾーンの分離を維持するのに役立つ)。
【0087】
全部で3タイプの微生物が存在するものと仮定すると、図3にゾーンI、II、および、IIIとして示された3つの環境が、十分な静止条件下で生じることになる。前述のように、所望の場合、1つ以上の微生物種の欠乏は、オフライン処理槽18にそれらを直接導入することによって調整可能である。数ガロンの活性汚泥を容器に注入することによって、通常、適切な増殖期間後に、ゾーンを形成するのに十分な全部で3クラスの微生物量が供給されることになる。
【0088】
望ましい実施形態のオフライン処理槽は、一般に、マルチゾーン廃棄物処理を実行するのに十分であるが、特定の廃棄物成分の処理に重要な指標の目標レベルを達成すべくある程度の制御を加えるのが望ましい場合もある。前述の望ましい指標には、アンモニア・レベル、可溶性硝酸レベル、可溶性亜硝酸レベル、および、ORPが含まれる。これらの指標は、一般に、バルク液の空気含有量およびそれに付与される乱流度といったプロセス・パラメータの調整によって、特定タイプの廃棄物成分に適した限界値内に収めることが可能である。供給される空気によってオフライン処理槽18の内容物に付与される乱流は、100秒-1の平均速度勾配を超えないのが望ましく、40秒-1が望ましいが、10秒-1が最も望ましい。しかし、このレベル未満になると、混合エネルギの変化を利用して、プロセス条件を制御することが可能である。
【0089】
望ましい実施形態の場合、平均速度勾配Gは、下記によって示される。 G=(P/μV)1/2ここで、Pはft−lb/秒で表わされる曝気のパワー要件または混合馬力であり、μはlb−秒/ft2で表わされる動粘性率であり、Vはft3で現れるタンク容積である。Pは下記によって示される。 P=paaln(pc/pa)ここで、paはlb/ft2で表わされる大気圧であり、Vaは、ft3/秒で表わされる大気圧で導入される空気の容積であり、Pcは、液体内への空気放出点における、lb/ft2で表わされる圧力である。あるいはまた、Pは下記によって示される。 P=35.28Qaln((h+33.9)/33/9)ここで、Qaは、ft3/分で表わされる大気圧で液体に流入する空気の流量であり、hはフィートで表わされる水の排出点における気圧である。
【0090】
例えば、排出される廃水内に存在する場合、生態学的に有害になる過剰な遊離アンモニアは、硝酸がなければ、不十分な曝気を反映している。逆に、重金属を可溶化することによって、地下水汚染をもたらす可能性のある過剰な遊離硝酸は、アンモニアがなければ、過剰な曝気を反映している。過剰なアンモニアおよび硝酸は、廃棄物の不完全な鉱化を示しており、廃水サイトにおける望ましくない生化学的活動を促進する。これらは、不十分な脱窒細菌数または過剰変動を示唆している(後者の状態は、それ自体、過剰変動を示唆する、幅の狭いORPによって確認される)。ORPは、さまざまな微生物の繁殖に影響を与えるので、常に許容範囲内に収められる。これは、全ゾーンにわたる容器内酸素含有量総平均値の制御によって実現可能である。
【0091】
上記悪条件のどれかが存在すれば、適切な化学物質および/または電解質検知装置と、適合するパラメータを調整するために行われる手動ステップを利用して、手動で検出することが可能である。すなわち、気泡のサイズは、ガス源58から気泡微細化器52に導入される空気量、および/または、ポンプで気泡微細化器52に通される液体の速度によって、適度に制御することが可能である。気泡の平均直径を小さくすると、気泡がより大量に生じ、曝気度が増すことになる。平均直径を大きくすると、曝気度が低下するが、気泡が大きくなるので、撹拌が強くなる。大部分のプロセスでは、気泡サイズの制御によって、オペレータは、曝気と撹拌の両方のパラメータに対して十分な個別制御を施すことが可能になる。もちろん、機械的手段によってさらに撹拌を施すことも可能である。
【0092】
プロセス条件の制御は、図3に例示のように、自動化手段によって実施することも可能である。コントローラ62は、上述の指標の少なくとも1つの大きさを表わす出力信号を発生する、少なくとも1つのセンサ64からの入力データを受信する。出力信号は、コントローラ62の特性に応じて、ディジタルまたはアナログとすることが可能である。適合するセンサは、当該技術においてはっきりと特性が明らかにされており、例えば、ORPおよびアンモニアを測定するための電極構成は、硝酸のインライン測定装置のように、広く利用可能である。センサ64のさまざまな構成および組み合わせが可能であり、例えば、オフライン処理槽18は、全ての関連指標を検知可能な一群のセンサ、または、個別ゾーンに対応する可能性の高い領域に垂直方向に間隔をあけて配置された複数センサ群を装備することが可能である。
【0093】
コントローラ62は、センサ64からの信号を解釈し、それに基づいて、弁54および60(この実施形態では、電子的に操作可能な)、および、ポンプ56の速度を制御する。さらに、付与される乱流に対するより強力な制御を促進するため、例示の実施形態には、その動作もコントローラ62によって制御される、櫂型撹拌アセンブリ66が含まれているが、撹拌機66が通常不要であることは明らかである。
【0094】
コントローラ62は、アナログ(例えば、電圧制御式)装置とすることが可能であるが、分析および制御機能を実施するのに適したソフトウェアがプログラムされた、ディジタルコンピュータが望ましい。この実施形態の場合、センサ64からの信号は、アナログ・ディジタル変換器によってディジタル形式に変換され、一方、コントローラ62によって発生するディジタル制御信号は、ディジタル・アナログ変換器によって、段階的または連続的に選択可能な程度に、弁54および60の開閉を制御することが可能な信号に変換される。上述の分析および制御機能を実施するのに必要なプログラミングは、十分に、当該技術者の範囲内であり、過度の実験をしなくても容易に遂行することが可能である。
【0095】
スクリーン
オフライン処理槽に導入する前に、メンブレンバイオリアクタからの汚泥から不活性固形物質を除去すると、廃棄物消化の効率が大幅に向上することが分っている。いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、効率の向上は、生物濃縮効果(不活性固形物を除去すると、微生物レベルのより高い汚泥が再導入されるので)と、生物毒性の低減(例えば、これに応じて、重金属が除去されやすくなる)の両方に起因する。不活性固形物の除去は、再循環バイパスを用いるほとんどいかなる生物学的プロセスにおいても有効であり、本発明のこの態様は、従って、多種多様な廃棄物処理用途(例えば、個別にまたは連続して用いられる従来の単一ゾーンタンク、あるいは、上述のマルチゾーン構成)において有用である。
【0096】
典型的な廃水には、さまざまな固形物が存在する。小さい(直径が約1〜約250μm)有機物質には、廃棄処理にとって重要な廃棄物消化微生物が含まれている。より大きい(>250μm)有機物質は、一般に、さまざまな形態のゴミを表わしている。小さい無機粒子および大きい無機粒子には、砂のような不活性物質が含まれる。固形物のこれらのカテゴリのうち、図2および3に描かれた、オフライン処理槽18への導入が望ましいのは、小さい有機物質だけである。
【0097】
メンブレンバイオリアクタ好気性タンクからのプロセス汚泥は、スクリーンを透過して流れ、固形物が除去される。固形物には、毛、ゴミ、および、繊維状物質が含まれる可能性がある。望ましい実施形態において、メンブレンバイオリアクタからのプロセス汚泥を含む混合液の一部は、スクリーンを通って、バイパスに流入する。スクリーンを通る混合液の流量は、処理システムの平均設計流量以下であることが望ましい。スクリーニングされた物質は、そのまま処理または廃棄することが可能である。スクリーンの開口は、サイズが、約0.10mm以下〜約1.5mm以上であり、約0.15または0.20mm〜約0.30、0.35、0.40、0.45、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、または、1.4mmが望ましく、例えば、回転ドラム・スクリーンによって得られるような、約0.25mm(250μm)が最も望ましい。
【0098】
とりわけ望ましいスクリーンは、ドイツのHuber Technology of BerchingからROTAMAT(登録商標) 膜スクリーンRoMemとして市販されている。このスクリーンは、繊維状物質および毛の除去に適しており、メンブレンバイオリアクタと併用すると、動作安定性が増し、その結果、河川および海の吐き口においてCOD/BODが大幅に減少する。ROTAMAT(登録商標) スクリーンには、液流が内側から外側に透過する、正方形のメッシュで覆われたスクリーン・バスケットが用いられている。残留固形物が、上方領域におけるバスケットの回転中に洗い落とされ、トラフに洗い流され、スクリュー・コンベヤによって水路領域から除去され、スクリーニング済み物質が、同時に、密閉ユニット内で脱水され、排出される。脱窒のための有機炭素の回収は、一体化スクリーニング済み物質洗浄システムにおいてスクリーニング済み物質を洗浄することによって可能になる。ROTAMAT(登録商標) スクリーンは、中空糸膜モジュールシステムに用いられる場合には、0.75mmのメッシュを用いるのが望ましく、平板モジュールシステムが用いられる場合には、1mmのメッシュを用いるのが望ましい。
【0099】
システムの動作効率を良くするには、廃水処理システムにおけるメンブレンフィルタに堆積する固形物を最小限に抑えるのが望ましい。固形物は、膜繊維束に堆積する可能性があり、除去が困難で、膜に損傷を及ぼす可能性がある。メンブレンバイオリアクタにおける固形物の堆積を減少させるための従来のプロセスには、原水が廃水処理システムに流入する前に、メンブレンバイオリアクタへの水流に施すスクリーニングを含むことが可能である。もう1つのアプローチでは、生汚水とメンブレンバイオリアクタからの再循環汚泥から構成される水流が、廃水処理システムに流入する前に、その水流にスクリーニングが施される。しかし、原水のスクリーニングには、一般に、スクリーニングシステムの平均設計流量の3倍以上の可能性のある、ピーク条件下の原水に対応するように、スクリーニングシステムを設計することが必要になる。これには、スクリーンがピーク流量に対応するのに十分な大きさであることが必要とされる。さらに、こうしたシステムは、それぞれ、設計スクリーン容量の100%の、デューティスクリーンおよびスタンバイスクリーンを備えるように設計することが可能である。廃水処理システムに流入する前に、原水にスクリーニングを施すことによって生じるスクリーニング済み物質は、未消化有機物質が高レベルになる可能性があり、そのため、スクリーニング済み物質からの未消化有機物質を廃水処理システムに戻すのに、特殊な装置が必要になる。さらに、廃水処理システムに流入する前に、生下水にスクリーニングを施しても、毛、ゴミ、または、例えば、再ロープ状化または再球状化繊維状物質のような、システム自体内に形成される可能性のある繊維状物質は除去されない。廃水処理システムのメンブレンフィルタに流入する前に、汚泥流全体にスクリーニングを施すと、やはり、高流量(一般に、システムの平均設計流量の4倍以上)に対応することになり、やはり、大型のデューティスクリーンと全容量のスタンバイスクリーンの利用が必要になる。従って、望ましい実施形態の濾過システムとこうしたスクリーニングシステムを併用することが望ましい可能性があり、一般には、メンブレンバイオリアクタの好気性タンクからのプロセス汚泥を250μmスクリーンに通して、固形物が除去され、スクリーニング済みプロセス液がサージタンクに流入する、後述のようなスクリーニングシステムを用いるのがより望ましい。
【0100】
望ましい実施形態の廃水処理システムでは、一般に、上述のメンブレンバイオリアクタにおけるように、中空糸膜フィルタとバイオリアクタを併用して、フィルタから処理排水を生じ、フィルタによって除去されるか、または、別様にバイオリアクタに残存した物質から廃棄汚泥を生じる。バイオリアクタは、廃水処理システムにおいてフィルタの上流に配置することもできるし、あるいは、フィルタをバイオリアクタまたはバイオリアクタの一部内に設けることも可能である。後者の例の場合、フィルタの膜は、メンブレンバイオリアクタのような、バイオリアクタ内に直接浸けられる。メンブレンバイオリアクタは、オフライン処理槽と再循環ループをなすように用いるのが望ましい。
【0101】
スクリーニングされる混合液は、メンブレンバイオリアクタシステム内の再循環混合液流から取り除くことが可能である。一般に、再循環混合液は、メンブレンバイオリアクタシステムのヘッドまで再循環し、スクリーンに通される混合液を再循環混合液流から取り除くことが可能である。スクリーニングされる混合液は、メンブレンバイオリアクタシステムの他のさまざまな場所から取り除くことが可能である。スクリーニング済み混合液は、サージタンクまで流れ、スクリーニング済み物質を処理または廃棄することが可能になる。
【0102】
スクリーンの開口は、一般に、約1.0mm以下であり、0.95、0.9、0.85、または、0.8mm以下が望ましく、0.75、0.7、0.65、0.6、または、0.55mm以下であればより望ましいが、最も望ましいのは0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、または、0.05mm以下である。本発明に用いるのに適したスクリーンの1つには、例えば、回転ドラム・スクリーンがある。このスクリーンを用いると、スクリーニングと汚泥濃厚化の両方を施すことが可能になる。
【0103】
図1には、メンブレンバイオリアクタがスクリーンの上流に配置される、望ましいスクリーン構成が描かれている。メンブレンバイオリアクタには、1つ以上の嫌気性ゾーン、1つ以上の無酸素性ゾーン、および、1つ以上の好気性ゾーンが、制限のない、単独またはさまざまな組合せで含まれている。処理される流入水が、メンブレンバイオリアクタに流入する。オプションとして流入水が、メンブレンバイオリアクタに流入する前に、スクリーニングされ、浄化され、消化され、あるいは他のプロセスを経ることもできる。処理済み廃水流は、所望の後続使用のため、メンブレンバイオリアクタのフィルタの透過側から流出する。フィルタによって除去されるか、または、メンブレンバイオリアクタ内に別に生じる材料からなる廃棄汚泥流も、フィルタから流出する。
【0104】
廃棄汚泥を含む混合液流の一部または全てが、スクリーンを通過する。このスクリーンは、制限するわけではないが、毛、ゴミ、または、例えば、再ロープ状化または再球状化繊維状物質のような、バイオリアクタ自体内に形成される可能性のある繊維状物質を含む、それを通過する混合液内の毛、ゴミ、または、繊維状物質を除去する。こうした再ロープ状化または再球状化繊維状物質は、それら自体、一般的なスクリーン除去するのに十分なほど大きくはないかもしれないが、混合液内で凝集して、より大きい物質になる可能性のある、繊維状物質から作られている。スクリーニング済み混合液流は、スクリーンから流出して、サージタンクに流入する。
【0105】
スクリーン開口は、一般に、約0.25mm以下〜約1.0mm以上である。スクリーニング済み物質がオフライン処理槽に送られることになる場合、0.5mmのスクリーン開口を利用することができるのが望ましい。混合液をスクリーニングする際、スクリーンは、一般に、部分的に目詰まりし、そのため、スクリーンによって除去された、スクリーニング済み物質の量を増大させる有効スクリーンサイズが小さくなる。スクリーンは、金網メッシュまたはパンチ孔スクリーニング媒体を備えた、内部供給回転ドラムスクリーンとすることが可能である。このスクリーンは、スクリーン媒体を清浄に保つ外部のアウト・サイドインスプレーバー、および、固形物をスクリーンの排出端まで連続して移動させるダイバータフライトを装備することも可能である。スクリーン開口サイズが、一般に、約0.1mm以下〜約1.5mm以上のファインスクリーンのような、例えば、約0.25mm〜約1.0mmのウェッジワイヤスクリーンが望ましい、任意の適合するスクリーンを用いることが可能である。
【0106】
スクリーニング済み物質流は、スクリーンから流出する。スクリーン済み流は、生分解を受けているので、「安定化」している。スクリーンが、回転ドラムスクリーンの場合、ドラム速度の調整によって、廃棄汚泥流と混合して、単一汚泥流を生じさせるのに適した、生分解固形物を持つ液体スクリーニング済み物質流を生成することが可能である。スクリーニング済み物質流は、さらに処理することもできるし、あるいは、廃棄汚泥流に戻さずに、そのまま廃棄することも可能である。例えば、スクリーニング済み物質流は、圧縮し、脱水して、それ以上の処理を加えずに、例えば、埋め土に廃棄することが可能である。スクリーニング済み物質流が、それ以上の処理を加えずに廃棄される場合、スクリーンをデュアルスプレーシステムに取り付けて、スクリーニング済み物質を洗浄し、スクリーンからスクリーニング済み物質が排出される前に、スクリーニング済み物質に捕捉または別様に捕集される可能性のあるバイオマスの量を減少させることが可能である。スクリーニング済み物質に排出されるバイオマスの量は、一般に、スクリーニング済み物質の乾燥重量の約15%未満であり、全廃棄活性汚泥の約2%未満である。しかし、いくつかの実施形態では、さらに多くの量になる可能性がある。スクリーニング済み物質がそのまま廃棄される場合、スクリーニング済み物質流には、スクリュー圧縮機のような、圧縮および脱水装置を配備し、乾燥固形物が40%を超えるスクリーニング済み物質(例えば、「ペイントフィルタテスト」に合格するスクリーニング済み物質)を生じさせることが可能である。バギングシステムを利用して、人間の接触および臭気を低減または排除することが可能である。
【0107】
このプロセスには、処理される水をメンブレンバイオリアクタシステムに流すステップが含まれる。処理される水には、オフライン処理槽からの廃水を含むことが可能である。メンブレンバイオリアクタシステムからの混合液の一部は、除去されて、スクリーンに通され、毛、ゴミ、または、繊維状物質のような固形物が混合液から取り除かれる。次に、スクリーニング済み混合液は、サージタンクまで流される。混合液は、廃水処理システムのピーク流量状態中、ほとんど増加することなく、ほぼ一定の流量で、スクリーンを透過させることが可能である。スクリーンを通る混合液の流量は、廃水処理システムの平均設計流量を超えるのが望ましい。すなわち、スクリーンを通る混合液の流量は、廃水処理システムの平均設計流量より、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、または、200%以上多いのが望ましい。スクリーンを通る混合液の流量は、できれば、廃水処理システムの平均設計流量の約110〜約150%であるのが最も望ましい。さらに、混合液は、ほぼ一定流量でスクリーンを透過することが可能であり、かつ、ほぼ連続してスクリーンを透過することが可能である。
【0108】
スクリーンを通る流量は、スクリーンによって、混合液中の毛、ゴミ、または、繊維状物質が、バイオリアクタ全体の固形物保持時間にわたるこれらの物質の平均捕捉性に基づいて除去されるので、ほぼ連続的であり得るが、流れの中断は、性能に大きく影響しなければ、容認することが可能である。例えば、スクリーンの交換または修理、あるいは、システムの他の構成要素の検査および保守を行えるように、流れを中断することが可能である。いくつかの実施形態では、スタンバイスクリーンを用いずに、全流量処理能力で動作する1つのデューティスクリーン、または、それぞれ、全流量処理能力の50%に合わせて設計された2つのデューティスクリーンを利用することが可能である。一般に、1つまたは2つのデューティスクリーンが望ましいが、任意の適合する数のスクリーンを利用することが可能である。
【0109】
メンブレンバイオリアクタのための濃縮再循環流は、一般に、流入水流量(Q)の約4〜約5倍である。流入水流量Qは、廃水処理システムの平均設計流量にほぼ等しい。スクリーンを利用しなければ、メンブレンバイオリアクタにおける毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度(Xb)は、流入水の毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度(Xf)と、液体保持時間(HRT)に対する固形物保持時間(SRT)の比率との積に等しいレベルまで増大することになる。定常状態において、流入水における毛、ゴミ、または、繊維状物質の質量(Q×Xf)は、廃棄汚泥流における毛、ゴミ、または、繊維状物質の質量(Qw×Xb)に等しく、従って、次のようになる。
Q×Xf=Qw×Xb (1)
Qは、メンブレンバイオリアクタ全体の容積(V)をバイオリアクタ全体のHRTで割った値に等しい。Qwは、メンブレンバイオリアクタ全体の容積(V)をバイオリアクタ全体のSRTで割った値に等しい。従って、
(V/HRT)×Xf=(V/SRT)×Xb (2)
バイオリアクタ内における毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度(Xb)は、
b=(SRT/HRT)×Xf (3)
【0110】
HRTが6時間で、SRTが15日間の典型的なプロセスの場合、バイオリアクタ内における毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度(Xb)は、流入水における毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度(Xf)の60倍である。yQの流量で動作するスクリーンの場合、全ての毛、ゴミ、または、繊維状物質が、液流から除去されるものと仮定すると、スクリーンの開口サイズが極めて小さい(例えば、約0.5mm〜約1.0mm)ので、給水とバイオリアクタの毛、ゴミ、または、繊維状物質濃度との定常関係は、
Q×Xf=Qw×Xb+yQ×Xb (4)
従って、
b=(SRT/(ySRT+HRT))×Xf (5)
【0111】
同じプロセス条件(HRTが6時間で、SRTが15日間)の場合、スクリーンが0.25Q(y=0.25)の流量で動作すると、メンブレンバイオリアクタ内における毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度は、流入水における毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度の3.75倍になる。これらの条件下でスクリーンを用いると、混合液内における毛、ゴミ、または、繊維状物質の含有量を、スクリーンを用いない場合に比べて、約94%減少させることが可能になる。
【0112】
スクリーンを利用することによって、かなりの量の毛、ゴミ、または、繊維状物質が混合液から除去されるので、プラントに流入する全再循環汚泥流または全ピーク流にスクリーニングを施す必要がない。HRTが6時間で動作し、0.25Qの流量でスクリーンを動作させる典型的なプラントは、1日に1回、全汚泥容積に相当する量のプロセスを行う。典型的なプラントの場合、全汚泥容積に、一般的な固形物保持時間の約10〜約20倍のスクリーニングが施され、このため、スクリーンが混合液中の再ロープ状化または再球状化物質を捕捉する多くの機会が与えられる。
【0113】
上述のように、繊維状物質の大部分は、極めて緩慢に消化されるか、または、全く消化されないので、混合液のごくわずかな部分だけしかリアクタから放出されなければ、時間が経つにつれて、比較的高い濃度になるまで堆積することになりがちである。さらに、全供給流にスクリーニングを施すのは、大流量およびそれに対応する大スクリーン面積が必要になるので、望ましくない可能性がある。従って、望ましい実施形態の場合、混合液は、例えば、約12時間以下毎〜約60時間以上の、できれば、約18、24、または、30時間〜約36、42、48、または、54時間の時間期間の間に、リアクタ容積に等しい容積のスクリーニングに十分な流量で、500μmスクリーンによるスクリーニングを施すためにリアクタより放出される。こうした操作によって、生分解性固形物を過剰に除去することなく、リアクタ内の繊維濃度が許容レベルに維持される。典型的なリアクタ滞留時間が約3時間と仮定すると、スクリーンに必要とされるのは、対応する供給流スクリーンの、約5%以下〜約15%以上、できれば、6、7、8、9、または、10%〜約11、12、13、または、14%で、再循環流スクリーン未満の大きさだけである。実施形態によっては、スクリーニングのために、混合液を連続して放出するのが望ましい場合もあるし、実施形態によっては、混合液を間欠的にしか放出しないのが望ましい場合もある。間欠的動作が望ましい場合、スクリーンは、流量の増大に対処するサイズにすることが可能である。例えば、混合液が、時間期間の50%だけしか放出されない場合、流量が2倍になることによって、連続放出の場合と同じ時間期間において、リアクタ容積に等しい容積の濾過が達成される。スクリーンは、流量の増大に対処するため、2倍の面積に拡大することが可能である。他の実施形態では、複数混合液流にスクリーニングを施すため、複数スクリーンを用いるのが望ましい場合もある。同様に、混合液流は、時間期間の50%にわたって第1のスクリーンを透過することが可能であり、次に、時間期間の残りの50%にわたって、第2のスクリーンによって分流することが可能である。このようにスクリーン間で交番することによって、オフラインスクリーンは、混合液の連続放出を維持しながら、保守または洗浄に利用される。
【0114】
液体サイクロン
濾過済み混合液は、サージタンクに貯蔵され、貯蔵されたプロセス液の一部は、液体サイクロンに送られて、不活性物質が除去される。いくつかの実施形態では、最初に、サージタンクに貯蔵せずに、濾過済み混合液を液体サイクロンに直接送るのが望ましい場合もあるが、一般には、1つ以上のサージタンクを用いるのが望ましい。タンクは、当該技術者には明らかなように、任意の適合する構造とし、任意の適合する材料から製造することが可能である。
【0115】
特に実施形態の場合、液体サイクロンによる第1段で、生体固形物(廃棄物消化微生物を含む)と同様のサイズであるが、比重の異なる物質を除去し、補助スクリーニングによる第2段で、サイズが大きい物体(従来のスクリーンによって除去されるような)から約250〜約350μm程度のはるかに小さい粒子に及ぶ固形物を除去する、2段アセンブリが用いられる。しかし、いくつかの実施形態では、第2段の補助スクリーニング装置を省くのが望ましい場合もある。再循環ループの性質が連続的であるため、排出される汚泥が液体サイクロンおよび/またはスクリーンのどれかに遭遇する順序は、重要ではなく、これらの構成要素または他の構成要素は、例えば、下記のように、任意の適切な順序に配置することが可能である。
MBR→スクリーン→オフライン処理槽、
MBR→液体サイクロン→オフライン処理槽、
MBR→スクリーン→液体サイクロン→オフライン処理槽、
MBR→液体サイクロン→スクリーン→オフライン処理槽、
MBR→スクリーン→液体サイクロン→補助スクリーン→オフライン処理槽、
MBR→スクリーン→補助スクリーン→液体サイクロン→オフライン処理槽、
MBR→液体サイクロン→スクリーン→補助スクリーン→オフライン処理槽、または、
MBR→液体サイクロン→補助スクリーン→スクリーン→オフライン処理槽。
【0116】
当該技術者には明らかなように、他の構成を用いることも可能である。所望の場合には、再循環ループの任意の適合する1つまたは複数のポイントにおいて、一般に、廃水処理施設で用いられる、サージタンク、ポンプ、化学処理ユニット、および、他の装置を用いることが可能である。
【0117】
第1段には、図2に描かれているように、まとめて参照番号80で表示された、並列に接続された1つ以上の液体サイクロンユニット(表現の便宜上、単数形で表わされる)を含むのが望ましい。液体サイクロン80は、サイズが生体固形物と同様であるが、比重が異なる(通常、はるかに大きい)、小さい無機固形物を除去するように構成されている。すなわち、液体サイクロン80は、主として、比重が一般に1.5を超える、サイズが約1〜約250μmの粒子を除去することが可能である。
【0118】
液体サイクロンは、一般に、粒子サイズ/比重の組み合わせのある範囲にわたって効果的に作用するが、ユニットのサイズおよび構成によって決まるピーク効率を示す。望ましい実施形態の場合、最大効率は、約50〜約60μmの粒子サイズ、および、約2.6の比重で生じるのが理想的である。こうして、装置は、少なくともいくつかの極めて高密度の粒子を捕捉するが、一般に、比重が約1.02〜1.05の、微生物処理可能な生体固形物の取り込みは回避する。液体サイクロン80によって集められる粒子は、排出管路82によって、廃棄のために運ばれる。第2段には、静的スクリーンが含まれている。望ましい実施形態の場合、スクリーンの開口サイズは、1mm以下であり、約25μm〜約600、650、700、750、800、850、900、または、950μmが望ましく、約50、100、150、または、200μm〜約300、350、400、450、または、500μmであればより望ましく、約250μmが最も望ましい。ほぼ全ての廃棄物消化生体物質が、通常、200μmしかないので、これらは、スクリーン86を透過し、オフライン処理槽18に再導入される。スクリーニング済み物質は、廃棄のため排出経路88に沿って輸送される。こうした小さい開口サイズのスクリーンの目詰まりは、一般には、観察されない。汚泥によって運ばれた固形物の大部分は、スクリーン・メッシュよりはるかに大きく、孔を塞がないで、スクリーンに押し付けられているだけである可能性が高く、さらに、大きい粒子の堆積は、さもなければ目詰まりを生じさせるかもしれない、小さい粒子を抑止する働きをする可能性もある。
【0119】
図2に描かれたスクリーン/液体サイクロンによる除去装置34は、別様であれば、厄介な不活性固形物を除去するだけではなく、不活性含有物と生体含有物との比率の個別制御を容易にもする。この比率に影響を及ぼす能力(スクリーン86の開口サイズ、および、液体サイクロン80の保持特性を変えることによって)によって、混合液の沈殿特性がより広範囲に制御される。
【0120】
メンブレンバイオリアクタおよびオフライン処理槽を用いる水処理施設
望ましい実施形態において、上述のシステムは、流入水の処理量が指定され、5日間の生物学的酸素要求量が指定され、総混濁固体量(TSS)が指定された、活性汚泥処理および好気性消化を利用する、廃水処理プラントに設置される。内部再循環ループに沿った戻り活性汚泥(RAS)流は、ガロン/分(gpm)で表わされる流入水流量に対する指定の比率に保たれる。
【0121】
図2に描かれた望ましい実施形態の場合、15psigの圧力降下で並列に動作する2つの直径6インチの10°サイクロンと、サイクロンの溢流が導かれる開口サイズが254μmの静的スクリーンとから構成される除去サブシステム34が用いられる。スクリーン溢流は、導管36を介してオフライン処理槽18のヘッドに戻され、経路88に堆積したスクリーニング済み物質は、水平に対し上方に5°傾斜したスクリューコンベヤに落下させられる。スクリューコンベヤには、約0.5gpmの再循環プラント廃液が吹き付けられて、排出中、廃棄のため大型ゴミ収容器まで搬送される残留生体固形物およびその含有物が除去される。サイクロンの底流は、導管82を介して、濃縮および同じ大型ゴミ容器への排出のため、二次サイクロン洗浄器に放出される。二次サイクロン洗浄器は、圧力降下が20psigで、流量が25〜30gpmの、直径2インチの10°サイクロンを介して再循環する、10ガロンのリザーバから構成される。過剰な液体は、導管36によってオフライン処理槽18のヘッドに戻され、60〜80%乾燥固形物の濃縮固形物流が、廃棄のため放出される。
【0122】
過剰生体固形物が、指定された日割量で、スクリーンの吐き口から通常プロセス流外に移される。図2に示すように、指定濃度の液流が、ガロンで表わされる指定の最低運転容積を備えたオフライン処理槽に送られる。オフライン処理槽18への全流量は、運転中、それが液体収容可能量に保たれるように選択される。
【0123】
このシステムを導入すると、従来の処理に比べ、BOD5、TSS、および、混合液浮遊物質の大幅な減少、混合および曝気のための粗大気泡ブロワのパワーの減少、必要曝気量の減少、不活性物質の滞留時間の短縮、生体固形物残留量の増大、同様の平均細胞滞留時間、不活性物質残留量の減少、メンブレンバイオリアクタの処理量の減少、定常状態を維持するためシステムから除去される固形物の減少、および、MGD当りパワーの低下を含む、かなりのプロセス利点が得られる。このシステムでは、固形物を60%以上まで濃縮することが可能であり、その結果、従来のシステムに比べて、正味の輸送負担が大幅に減少するが、一般には、約1〜2%の固形物濃度が観測される。
【0124】
メンブレンバイオリアクタの働き
望ましい実施形態の装置および方法は、メンブレンバイオリアクタ、とりわけ、硝化/脱窒メンブレンバイオリアクタと併用するのが望ましい。図15には、50,000gpdシステムのためのこの特定のリアクタ構成が示されている。この構成によれば、プロセスから洗浄機構を分離し、膜処理を排除し、必要なポンプ数を減少させ、完全自動化することが可能な、迅速な保守洗浄方法が可能になる。リアクタには、透過水ポンプおよび混合液ポンプを含む精密濾過セクションが含まれている。リアクタには、さらに、粉砕移送ポンプを備えた均等化ゾーン、ブロワを備えた好気性ゾーン、および、2〜3mm回転スクリーンを備えた無酸素ゾーンが含まれている。好気性ゾーンでは、アンモニアが、硝化と呼ばれる2段反応によって硝酸に変換される。無酸素または嫌気性(低または無酸素)ゾーンでは、脱窒と呼ばれるプロセスである、硝酸から窒素ガスへの変換が生じる。
【0125】
図16には、膜システムが並列動作する、通常動作モードのための配管が示されている。図17には、混合液ポンプを用いて、膜ベイスンから混合液が排出される、排出段階が描かれている。吸込み管が、自動弁を用いて切り替えられる。吸引によって、膜モジュールにおける混合液流を逆にすることもできるし、あるいは、吸引下で開く、ジェットヘッダに配置された逆止め弁を用いて、膜における逆流を阻止することも可能である。図18には、保持ベイスンからの化学処理水が、混合液ポンプを用いて、膜ジェットシステムに注入される、浸漬段階が描かれている。膜は、処理水によって洗浄され、処理され、浸漬される。図19には、膜ベイスンの構成に関するさらなる詳細が示されている。この図に描かれているように、膜モジュールのベースにおいて、好気性リアクタから吸い出された混合液に空気が注入される。膜モジュールおよび混合液からのメンブレンフィルタ水が真空脱気される。濃縮混合液が、ベイスンからあふれ出し、好気性消化室へ戻る。次に、洗浄水が排出されて、保持ベイスンに戻され、他の膜システムに同じ手順が反復される。他の膜システムが洗浄されている間、膜システムの1つが、いつでも使用可能である。
【0126】
図20には、膜モジュールに隣接した領域における液流ベクトルが、モジュールへの空気圧および水圧を調整することによって調整される、膜モジュールが描かれている。作動中、空気と混合液は混合され、モジュールにそのベースから注入される。それらの流量および混合液流量は、個別に調整可能である。繊維が、上部透過水吸引マニホルドに固定され、底部ヘッダ板において注封されて、切り取られている。底部ヘッダには、空気/水配給管に沿って垂直方向に移動する自由がある。底部ヘッダの重量が繊維に張力を加える。この張力によって、膜が動き、より小さい振幅で振動する。従って、膜のエネルギ吸収を減少させることが可能になり、空気洗浄が改善され、膜寿命が長くなる。上部マニホルドは、構造支持のため、垂直空気/水配給管に接続されている。空気および水が、ポンプで配給管に送り込まれると、繊維は、空気/水配給管から外側へ曲がる。空気によって上昇流が生じ、水圧によって、外向き流が生じるが、この流れの方向によって、繊維が張力のかかった状態に保たれることにもなる。繊維は、外側に移動すると、広がって、繊維まわりにおける液体輸送を改善し、捕捉固形物および繊維締め付けを解除することが可能になる。このアプローチでは、繊維弛緩中の空気の噴出または逆流のような潜在的洗浄オプションによって、膜を洗浄し、拡大することが可能になる。
【0127】
地方自治体または民間による廃水濾過に用いるのに適したこうしたシステムは、濾過膜繊維表面積が、10m3以下〜約20m2以上であり、11、12、13、または、14m2〜約15、16、17、18、または、19m2が望ましい。膜モジュールは、一般に、ヘッダに取り付けられて、ヘッダのマニホルドと共に、サブヘッダを形成し、サブヘッダのマニホルドと共に、システムを形成する。アセンブリは、一般に、事前に技術的に検討されたコンクリートベイスン内に収容される。高固体および/または高粘性環境に、10m3未満の、できれば、9、8、7、6、5、m2以下の繊維表面積を含むより充填密度の低いモジュールを用いて、繊維まわりにおける液体輸送が改善される。膜システムは、一般に、主バイオリアクタタンクから分離されている。混合液は、バイオリアクタから、独立したベイスンに納められている膜システムにポンプで送られる。このアプローチには、膜を主バイオリアクタに組み込む設計に比べて明確な利点がある、すなわち、このバイオリアクタベイスン構成が、混合および液体輸送のために最適化されている点、膜が、プロセスから切り離されていて、これにより、洗浄および保守オプションのための接近がしやすくなるという点、現場組み立てではなく、工場作業が利用可能になるという点、小型化されたシステムが、ショップで製造されるので、コストが低下し、品質管理が改善されるという点、必要があれば、均等化に対応するため、独立したバイオリアクタを設計することができるという点、既存のプラントの継続的な性能向上が可能である点、標準設計アプローチを利用することができるので、コストが削減され、設計問題と性能問題が切り離されるという点、ジェット・エアレーションによって、混合液をリアクタに均一に配給することが可能になり、モジュールが、互いに並列動作して、不均一な濃縮、および、潜在的可能性のある重大な汚損条件を回避することが可能になるという点、および、バイオリアクタ内における膜の位置が好都合な状況にある場合、ただ単に底部をベイスンから取り除くだけで、同じ設計を利用することができる点、空気および混合液配給システムによって、既存のプラントの性能向上にとって重要な、バイオリアクタに関連した膜ボックスの位置のフレキシビリティが得られるという点などである。
【0128】
繊維状物質が除去されるようにメンブレンバイオリアクタを運転する方法
望ましい実施形態の場合、メンブレンフィルタを備えた廃水処理システムに処理される水を流すステップと、廃水処理システムにおいて水を処理して、混合液と、メンブレンフィルタによる処理済み廃水を生じさせるステップと、廃水処理システムから混合液の一部を除去して、混合液をスクリーンに通し、混合液から毛、ゴミ、または、繊維状物質を除去して、スクリーンを透過する混合液の平均流量が、廃水処理システムの平均設計流量の約1.0以下になるようにするステップと、スクリーニング済み混合液を廃水処理システムに再循環させるステップが含まれている、廃水処理システムにおける毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度を低下させるプロセスが得られる。
【0129】
メンブレンフィルタを備えた廃水処理システムに処理される水を流すステップと、廃水処理システムにおいて水を処理して、混合液と、メンブレンフィルタによる処理済み廃水を生じさせるステップと、メンブレンフィルタの下流において、廃水処理システムから混合液の一部を除去して、混合液をスクリーンに通し、混合液から毛、ゴミ、または、繊維状物質を除去して、スクリーンを透過する混合液の平均流量が、廃水処理システムの平均設計流量の約1.0を超えるようにするステップと、メンブレンフィルタの上流において、スクリーニング済み混合液を廃水処理システムに再循環させるステップが含まれている、廃水処理システムにおける毛、ゴミ、または、繊維状物質の濃度を低下させるプロセスも得られる。
【0130】
これらのプロセスにおいて、メンブレンフィルタは、中空糸メンブレンフィルタが望ましい。混合液の第2の部分を廃水処理システムの上流部分に再循環することが可能である。スクリーニング済み混合液は、再循環混合液流と混合することが可能である。スクリーンに通される混合液部分は、再循環混合液流から除去することが可能である。廃水処理システムは、廃棄汚泥システムによって膜から除去される廃棄汚泥を産出する可能性がある。混合液にスクリーニングを施すことによって生じるスクリーニング済み物質は、廃棄汚泥流に流すことが可能である。混合液にスクリーニングを施すことによって生じるスクリーニング済み物質は、それ以上生物学的処理を加えずに廃棄することが可能である。混合液をスクリーンに通す前に、混合液に高分子を付加して、濃縮汚泥であるスクリーニング済み物質を産出することが可能である。いくつかの実施形態では、スクリーンを通る混合液の平均流量は、廃水処理システムの平均設計流量の約0.10〜約1.0が許容可能である。しかし、スクリーンを通る混合液の流量は、平均設計流量の約1.0を超えることができるのが望ましく、平均設計流量の1.1、1.2、1.3、1.4、1.5以上が望ましい。スクリーンの開口サイズは、実施形態によっては、約1.0mm以下とすることが可能であり、約0.25mm〜約0.75mmが望ましく、約0.50mm以下が最も望ましい。スクリーンは、回転ドラム・スクリーンとすることが可能である。スクリーンは、デュアル噴霧システムを備えることが可能である。混合液は、ほぼ一定の流量でスクリーンに通すことが可能である。混合液は、ほぼ連続してスクリーンに通すことが可能である。混合液は、ほぼ連続してスクリーンに通すことが可能であり、ほぼ一定の流量でスクリーンに通される。
【0131】
MemJetテクノロジでメンブレンバイオリアクタを運転する方法
メンブレンバイオリアクタ(MBR)は、廃水処理市場でますます普及の度を高めつつある。従来、MBRは、図21に例示のように、生物学的タンクに膜を浸けることによって、単純でコンパクトになるとみなされている。クボタ、三菱レーヨン、および、Zenonのような市場関係者は、その構成をなす製品を市販している。
【0132】
MBRテクノロジの進歩につれて、プラント規模が、ますます大きくなり、単一プロジェクトにより多くの膜が必要とされるようになる。図21のMBR構成に関連した固有の問題のため、US Filterは、他に先駆けて、MBRのための独立膜タンク構成を提案した。図22には、US Filter MemJet製品の典型的なフローシートが示されている。MemJetは、ポンプを利用して、生物学的タンクから膜タンクに混合液を輸送し、膜束内への確実な供給および配給を行う。この設計によって、膜性能が向上し、従来の構成において直面する重大な動作問題が解決される。
【0133】
今日では、独立した膜タンク構成は、市場で受け入れられており、競合他社も、この原理に従って、独立した膜タンクによるMBRプロセスを設計している。図23には、そのプロセスの概略説明図が示されている。図22の構成と図23の構成の重要な相違点は、混合液輸送機構にある。MemJetでは、混合液を膜束に配給することによる、積極的な輸送モードが用いられている。過剰な混合液流は、重力によって生物学的タンクに戻される(図22)。一方、競合他社によって用いられている構成における混合液輸送は、受動プロセスである(図23)。混合液が重力によって膜タンクへ溢流し、受動的濃度拡散プロセスを通じて膜に配給される。膜タンクにおいて、ポンプを利用して、過剰な混合液流が生物学的タンクに送り返される。
【0134】
米国特許第6,614,868号明細書において、Zenonは、混合液流の一部をサイドスクリーナへの再循環管路(図3における点線部分)に吸い込むことによる、サイドスクリーニングプロセスについて説明している。このプロセスは、米国特許第6,614,868号明細書の図1〜3にも例示されている。単一タンクシステムの場合、米国特許第6,614,866号明細書に記載のように、MBRから混合液の一部を吸い込んで、再スクリーニングが施され、その後、再スクリーニング済み混合液が吸入口に送られる(MBRの場合、これが、米国特許第6,614,868号明細書の図4に例示されている)。
【0135】
米国特許第6,614,868号の明細書および図(図1〜4)から明らかなように、当該特許に解説のサイドスクリーニングプロセスによれば、MBRにおけるゴミ含有物の堆積を減少させるが、ゴミとの直接接触から膜を保護することはできない方法が提供される。例えば、人間の毛または木の葉が生物学的タンクに入ると、最初に、膜システムを透過した後で、サイドスクリーンによって保留される可能性が高い。従って、それらは、サイドスクリーンによって捕捉される前に、膜に(膜への配給の阻止といった)有害な影響を及ぼす可能性がある。
【0136】
MBRプロセスにおいてゴミまたは木の葉による妨害から膜を保護するための最良の方法は、それが膜システムに入り込む前に、混合液全体の再スクリーニングを実施することである。しかし、膜システムに流入する混合液流量は、廃水、膜タンクから生物学的タンクへの戻り混合液、および、汚泥廃棄物の流量の和であり、通常、プラントの処理能力の数倍である(より一般的には、廃水流量の4〜5倍)。従って、リスクリーンの能力は、プラント流の処理に実際に必要とされるよりもかなり大きいことが望ましいが、この処理能力の増大は、部分的に、混合液に関するスクリーニング流量が増すことによって相殺される可能性があり(生汚水に比べて、混合液中のオイルおよびグリースのレベルが低いため)、生汚水のスクリーニングには、ファインスクリーンの代わりに、従来の粗いリスクリーンを利用することが可能である。図22の点線によって、MOSタンクへの流入前に、全混合液流が再スクリーニングできるようになる場合の、このオプションが例示されている。
【0137】
リスクリーナへの混合液流量を減少させ、さらに、第1のプレスクリーンを脱出した人間の毛、繊維、および、木の葉による妨害から膜を保護するため、混合液の一部は、MOSタンクへの流入前に、リスクリーンに分流することが可能である。リスクリーンを透過する割合は、通常、全混合液流量の5〜50%である。図22に示すように、リスクリーナは、ポンプの排出口に配置されており、図24に示すように、リスクリーナは、生物学的タンクからの重力送りを利用し、再スクリーニング済み混合液は、ポンプの吸入口へと流れる。上述の混合液の全体的リスクリーンと同等ではないが、MOSタンクより前の混合液の部分的リスクリーンは、膜に対して、米国特許第6,614,868号明細書に解説のプロセスよりも優れた保護を施す。
【0138】
メンブレンバイオリアクタの汚損
バイパス汚泥低減プロセスを組み合わせると、スクリーニングおよびサイクロンの分離によって、生物学的プロセスが促進される。しかし、MBRの膜は、最終的には、膜表面および繊維の孔に不活性物質および有機固形物の形態で固形物が蓄積することによって汚れる。この汚れのより重大な原因の1つが、EPSである(細胞外高分子物質)。これらは、ある系統のバクテリアおよび微生物によって生じ、膜表面を覆って、その透過性を低下させることになる。EPSを減少させる手段の1つは、長い汚泥日齢(SRT)によるものである。汚泥日齢が長くなると、膜の汚損が大幅に軽減され、その結果、保守コストが低下し、膜の寿命を改善することが可能になる。これらのテクノロジを組み合わせる利点は、プロセスにおける微生物のSRTが長くなり、膜の汚損が軽減される結果として、システムの総合性能が向上する。
【0139】
バイパス無酸素性リアクタ
固形物減少プロセス/MBR構成に関するプロセス流れ図を示す流れ系統図が、図26として提示されている。スクリーニング済み物質/サイクロン残留固形物は、この流れ系統図には描かれておらず、主液体流だけが描かれている。バイパスリアクタへの流れは、プラント流れのわずかな部分である。流れは、従来の活性汚泥プロセスからのWASと同様である。この液流は、膜処理システム(MOS)再循環流、または、MOSより前の曝気槽廃液から生じる可能性がある。MOS再循環は、一般に、MOSの脱水効果により、固形物含有量が曝気槽のMLSSよりわずかに高くなるので、望ましい。しかし、場合によっては、「MOSより前の」活性汚泥廃液流は、溶解酸素含有量が少なく、バイパスリアクタにおける所望の無酸素条件により適合する可能性があるので、この廃液を供給するのが望ましい可能性もある。
【0140】
固形物減量システムと統合されたメンブレンバイオリアクタ
望ましい実施形態の場合、メンブレンバイオリアクタは、優れた処理済み水質および80%を超える全固形物分解を含む、さまざまな利点をもたらす先進処理プロセスを提供するため、固形物減量システムと統合される。図27には、こうしたシステムが描かれている。図28に描かれたプロセスによれば、設置面積が極めて小さい高速システムが得られ、汚泥の産出および取扱いが最小限に抑えられる。この統合プロセスによって、保守を減らし、オペレータの安全を促進し、総合性能を最適化するための、メンブレンバイオリアクタの浸漬膜システムにとって可能性のある最良の動作環境が得られる。
【0141】
適正なプリスクリーニングは、ほとんどの浸漬メンブレンバイオリアクタ用途において重要な要素である。このスクリーニングの目的は、膜繊維の完全性を保護するのではなく、繊維束に絡まることによって繊維状物質が生じるのを減少させることにある。膜モジュールに繊維状物質が堆積すると、最終的には、モジュール性能が低下し、洗浄および保守により時間がかかる可能性がある。2mmの孔あきスクリーンが、繊維の除去に極めて有効であり、メンブレンバイオリアクタ・プロセスに入る前に、十分な流入液の前処理が加えられる。スクリーニング済み物質は、ホッパに集められて、除去されるのが望ましい。スクリーンは、2mmの多孔板システムとして設計および構成されるのが望ましい。
【0142】
所望の場合、流入液均等化および無酸素性曝気ベイスンをシステムに取り入れて、12,000mg/l以上もの混合液量を処理することが可能である。
【0143】
メンブレンバイオリアクタシステムの要である、MOSは、1つ以上の統合膜処理タンクとのアセンブリが望ましい。MOSは、好気性プロセスの一体部分であるが、一般には、膜の動作環境を最適化するための独立したベイスンとして設計される。精密濾過膜は、1つ以上の同じプロセス・タンク内に配置するのが望ましい。膜モジュールを低真空にすると、膜を通して水が吸い出され、濾過水がポンプで次のプロセスステップに送られる。混合液は、できれば空気と共に均一に、各膜モジュール繊維束に連続してまたは間欠的に注入される。結果生じる膜繊維を横切るクロスフローによって、膜表面が連続して洗い流され、洗浄される。固形物、有機物、微生物、バクテリア、および、ウィルスは、膜を透過することができず、混合液内に留まり、最終的にはプロセスおよび経時変化によって分解される。
【0144】
膜システムは、現場洗浄(CIP)を実施して、膜の透過性を回復する際、膜ベイスンを洗浄ベイスンとして利用できるように、主プロセスタンクから容易に分離することが可能である。結果として、膜洗浄および保守によって、生物学的性能が損なわれることはない。MOSは、独立した処理システムとなるように設計することが可能であり、これによって、システムの総合性能を最適化するため、膜洗浄が低流量期間中に行われるように自動的にスケジュールすることが可能になる。膜保守洗浄および膜化学洗浄用の処理水を貯蔵するため、独立したタンクを設けることが可能である。
【0145】
生物学的に活性の混合液は、生物学的リアクタからMOSにポンプで送られ、MOS設計の一体化部分として用いられるジェットシステムによって液体/固体分離が実施される。ジェットシステムは、いくつかの機能を備えることが可能である。例えば、モジュールの底部から導入される空気と混合液を組み合わせることによって、混合液が膜表面を横切って上昇する際に、膜に対する洗浄作用を生じさせることが可能になる。膜表面を横切るこの均一な液体流によって、膜モジュール内における浮遊物質の分極または濃縮が阻止される。混合液および空気がモジュールの底部で組み合わせられる場合には、小さい背圧も生じる。これは、膜ベイスン全体に混合液および空気を均一に行き渡らせるのに役立つ。2相システム(空気と混合液)を生成すると、モジュール底部で曝気面が湿潤状態に保たれることによって、モジュール性能が向上し、これらの表面への固形物の脱水が阻止される。これによって、最終的には、全てのモジュール、および、MOSにおけるモジュールアレイ全体にわたって曝気が均一に保たれる。
【0146】
膜洗浄は、各モジュールの底部にエアリフトを生じさせることによって実施される。気泡が上昇する際、膜表面に沿った上方への液体のクロスフローを生じる。エアリフトによって、通常動作中、膜タンクの底部で液体の変位が生じる。ジェットシステムの利点は、MOSの底部で変位した液体が補充され、ダウンフローの液体パターンが最小限に抑えられるという点である。ただ単に、再循環混合液がMOSの上部に流入できるようにするだけのシステムでは、均一な配給および有効な液体クロスフローを実現することはできず、結果として、膜モジュール内に固形物のランダムな分極が生じる。
【0147】
ジェットシステムによれば、タンクの底部から上部に均一に液体がを配給される。図29Aに示すように、全ての膜が、同じ混合液環境にさらされ、性能は一貫している。不均一な環境の場合、図29Bに示すように、膜は濃度勾配の影響を受けて、性能が変化する。これが、通常動作と洗浄効率の両方に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0148】
このシステム設計によれば、現場での膜洗浄が可能になる。膜を処理タンクから取り出して、別個のタンク内に入れて、さらなる浸漬および洗浄を施す必要はない。ジェットシステムおよび細い繊維束を備えたモジュール設計によって、現場での膜システムの洗浄に極めて有効なシステムが得られる。このプロセスは、安全で、オペレータにとって扱いやすく、膜洗浄に必要な時間が大幅に短縮される。従来の洗浄方法では、一般に、独立した浸漬タンクが用いられ、膜ラック毎に、約24時間にわたって浸漬が行われる。対照的に、望ましい実施形態のシステムでは、洗浄薬品を膜束に循環させて、繊維の有機物および無機物による汚れを除去することが可能である。現場洗浄プロセスの場合、自動化プロセスによって、MOS全体における全てのモジュールを4〜6時間以内に洗浄することが可能になる。同時に全ての膜を洗浄するもう1つの利点は、同じ動作圧で同じ膜束を処理することになるという点である。この結果、汚損が均一で予測可能になり、オペレータは、メンブレンバイオリアクタの操作に対してより適切な制御を加えることが可能になる。
【0149】
望ましい実施形態の場合、MOS液位より上の透過水の分離を可能にする、ラック設計が用いられる。分離弁は、個々のラックに対する透過水管路と送気管の両方に設けることが可能である。さらに、長い時間期間にわたって、システムが使用可能な状態のまま、ラック全体を取り除くことができるように、ブランクラックインサートを設けることも可能である。
【0150】
有機物質、バクテリア、および、ウィルスは、膜システムによって除去され、生物学的プロセスにおいて保留される。膜濾過によって、通常、受動的浄化プロセスに関連した、浄化器、堰、汚泥返送、および、保守の必要をなくすことが可能である。しかし、実施形態によっては、一般に、受動浄化プロセスで用いられるコンポーネントをシステムに組み込むのが望ましい場合もある。生物学的システムは、混合液浮遊物のより高いレベルで働かせることも可能である。これによって、汚泥産出が大幅に減少する、低栄養物対微生物比で機能するより効率の良い生物学的プロセスが保証される。
【0151】
浄化器に関連した保守およびプロセス調整の大部分は、膜濾過プロセスで排除されるので、処理プロセスの操作は、容易に自動化され、マイクロプロセッサによる制御が可能になる。固形物減量プロセスでは、メンブレンバイオリアクタ処理プロセスによって生じる汚泥の量を大幅に減少させることが可能である。このシステムを用いる施設は、最大で80%以上までの汚泥量減少を実現し、急激な資本コストおよび運転コスト削減の利点を得ることが可能である。
【0152】
図30には、望ましい固形物減量プロセスが描かれている。このプロセスでは、固形物交換法を用いて、一般には、活性汚泥処理プラントから運搬されるか、または、除去される生物廃棄汚泥が排除される。これは、好気性活性汚泥プロセスと特殊制御バイパスバイオリアクタの間における交換再循環を通じて実施される。交換流量は、特定の用途に固有のさまざまな要素に基づいて選択され、流量を適切に選択すると、システム運用の成功が確実なものになる。交換バイオリアクタにおいて、混合液は、好気性優位の占有率から嫌気性優位の占有率に変換される。交換バイオリアクタでは酸素が制限されるので、好気性バクテリアは、選択的に分解され、同時に、低収率通性バクテリアによって、残存好気性バクテリアおよび副産物を分解することが可能になる。交換再循環を曝気プロセスに戻すと、増殖速度が低い通性バクテリアが、好気性プロセスで分解される。望ましい構成における返送汚泥管路にスクリーンおよびサイクロンを利用することによって、ゴミ、粗粒子、および、不活性物質の堆積を阻止する固形物分離モジュールが構成される。
【0153】
粗粒子および他の不活性物質は、MOSからの返送混合液管路に固形物分離モジュールを用いることによって、プロセスから取り除かれる。このモジュールは、プラントの前進流(Q')の1倍の割合で、バイパスにおける混合液に連続してスクリーニングを施す、0.25mmドラムスクリーンから構成されている。返送混合液流(3Q)の一部は、サージタンクに対するファインスクリーンを介して、このモジュール(1Q)にポンプで送られ、主処理プロセスに戻される。サージタンクは、混合液が連続してポンプで通されて、極めて微小な不活性物質が除去される、バイパスサイクロン分離器を備えている。サージタンクからの液流(Q")の一部は、選択および分解プロセスのため、定期的にバイパスバイオリアクタに分流される。
【0154】
バイオリアクタからの混合液は、一般に、典型的な消化槽で行われているように、プラントから「廃棄」されないのが望ましい。混合液は、再循環により交換タンクから主処理プロセスに戻され、次に、通性バクテリアが、好気性バクテリアに打ち負かされて、その後、好気性処理プロセスおよびバイパスバイオリアクタの交互環境で分解されるのが望ましい。交換タンクにおけるバイパス生物学的プロセスと主処理プロセスとの間において、選択と分解の定常均衡がとれるようになり、その結果、純生体固形物が生じなくなる。
【0155】
時折パージを利用して、固形物分離モジュールで除去されない微粉および不活性物質の堆積を取り除くことが可能である。1年間の時間期間にわたって、生体固形物の50%以下〜100%以上のパージを実施するのが望ましい。この廃棄物の量は、0.05〜0.10lbs.TSS/lbs.BODの生物学的収量と同等である。現在固形物処理システムを運転している既存のプラントの場合、1年間にパージされる望ましい量の固形物は、既存の濃縮または脱水装置を働かせるため、各月毎にインクリメンタルに除去することが可能である。このプロセスを利用する、固形物処理システムのない新しい施設の場合、1年間にパージされる量の固形物は、毎年、1〜2つ以上の期間内に廃棄するのが望ましい。
【0156】
負荷条件に関係なく、システムの最適性能を保つため、制御システムを用いることが可能である。負荷および残留量は変化するので、可能性のある最良の性能を実現するため、タンク内のリアクタ環境を監視するORPおよびpHプローブを用いて、交換バイオリアクタにおける曝気および混合を制御することが可能である。交換率および交換環境の自動モニタおよび制御によって、生体固形物減量に最適な状態を実現することが可能である。
【0157】
望ましい実施形態の廃水処理システムは、汚泥の生成を最小限に抑えて、確実に優れた水質にすることが可能である。ジェット浸漬膜テクノロジと固形物減量プロセスを統合すると、2つのプロセス間に相乗的利点も生じる。固形物減量プロセスの一部である混合液の連続ファイン・スクリーニングによって、浸漬膜システムの最適環境が生じる。ゴミおよび微細不活性物質を除去すると、混合液濾過性が向上し、膜透過性が改善される。この最適動作環境によって、さらに、膜保守が軽減され、全体的なエネルギおよび化学薬品の使用が減少し、膜寿命が長くなる。ジェット浸漬膜テクノロジと固形物減量プロセスを併用する、本明細書に解説の典型的なシステムによれば、下記の利点の1つ以上を実現することが可能になる、すなわち、質の高い廃液、BOD<5mg/l、TSS<5mgl/l、濁度<0.2NTU、少ない固形物生成量、固形物生成の80%減少、精密濾過によって微生物にもたらされる物理的バリヤ、12,000mg/lで連続運転可能な高速で頑強な生物学的プロセスの提供、極めて小さいプラント全体の土地占有面積、曝気容積の減少、浄化器の不要化、既存の二次処理プロセスから先進の生物学的栄養分除去(BNR)プロセスおよびより高い(例えば、2Q以上)プロセス流れへのグレードアップ能力、著しい脱窒による厳格な全窒素制限の実現、汚泥濃縮および脱水機器、貯蔵タンクおよび汚水槽、好気性および嫌気性消化槽、および、高分子供給機器に関連したあらゆるコストの排除による40%までの資本コスト削減、汚泥保持、消化、または、脱水のための電力要求の排除または抑制による、および、汚泥運搬および廃棄コストの削減(粗粒ゴミおよび不活性物質だけが除去される)による操業コストの削減、および、感受性硝化菌の維持によって得られる安定した硝化性能(寒い気候であっても)の1つ以上を実現することが可能になる。
【0158】
本明細書において引用したすべての参照文献は、そっくりそのまま本明細書において援用されており、従って、本明細書の一部をなしている。参考までに援用されている刊行物および特許または特許出願が、本明細書に含まれる開示と食い違う範囲について、本明細書は、こうした矛盾する事柄に取って代わる、および/または、優先するように意図されている。
【0159】
本明細書において用いられる用語「含む」は、「包含する」、「具備する」、または、「を特徴とする」と同義語であり、包括的または制限のないものであり、追加の、列挙されなかった要素または方法ステップを排除するものではない。
【0160】
明細書および請求の範囲で用いられる成分、反応条件等の量を表わす全ての数字は、「約」という用語によって、全ての事例において加減されているものと理解すべきである。従って、別の指示がない限り、明細書および付属の請求の範囲に記載の数値パラメータは、本発明によって得ようとする所望の特性によって変動する可能性のある、近似値である。少なくとも、請求の範囲に対する同等物の原則の適用を制限しようとするのではなく、各数値パラメータは、有効桁数および通常の丸めアプローチを考慮して解釈すべきである。
【0161】
上記説明には、本発明のいくつかの方法および材料が開示されている。本発明には、方法および材料の修正、並びに、製造方法および設備の変更を受け入れる余地がある。本開示または本明細書に開示の本発明の方法を検討することによって、当該技術者にはこうした修正が明らかになるであろう。従って、本発明は、本明細書に開示の特定の実施形態に制限されることを意図したものではなく、付属の請求の範囲に具体的に表現された本発明の真の範囲および精神に含まれる全ての修正および変更を対象とすることを意図したものである。
【符号の説明】
【0162】
5 膜モジュール
6 膜
7 下部ポット
8 上部ポット
9 スクリーン
11 ポット
12 ベンチュリ装置
13 吸気口
14 給水口
15 ノズルタイプ装置
16 ジェット
17 周囲空気通路
18 オフライン処理装置
22 メンブレンバイオリアクタ
24 通路
30 内部再循環ループ
32 第1の導管
33 ポンプ
34 除去サブシステム
36 第2の導管
46 繊維束
47 上部注封ヘッド
48 下部注封ヘッド
49 注封スリーブ
50 注封スリーブ,気泡微細化ループ
51 スクリーン
52 曝気孔、気泡微細化器
53 繊維膜
54 弁
56 モータ駆動ポンプ
58 ガス源
60 弁
62 コントローラ
64 センサ
80 液体サイクロンユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含む液体の濾過装置であって、
少なくとも1つの膜モジュールと液体への空気注入装置とを具備し、前記膜モジュールは、複数の多孔性膜を有し、活性汚泥を含む基質を前記膜の外表面と接触させて処理し、処理水を前記膜の管腔から除去するようにしてなるメンブレンバイオリアクタと、
嫌気性環境下で働くようにしてなる生物学的汚泥処理槽であって、プロセス液が消化され、また消化されたプロセス液の少なくとも一部が前記メンブレンバイオリアクタに返送され、さらに前記メンブレンバイオリアクタ内の前記基質の少なくとも一部が送られるようにしてなる生物学的汚泥処理槽と、
を備えることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記生物学的汚泥処理槽が単一槽内に複数の個別生物学的環境を具備することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記生物学的汚泥処理槽内に前記複数の個別生物学的環境を維持するようにすべく、コントローラを、さらに備えることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
最長寸法の平均サイズが約6mm〜約25mmの開口を具備する補助スクリーンを、さらに備えることを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【公開番号】特開2009−90290(P2009−90290A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19740(P2009−19740)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【分割の表示】特願2007−509482(P2007−509482)の分割
【原出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(506355361)シーメンス ウォーター テクノロジース コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】