説明

有機発光装置

【課題】 小型化および高性能化を実現することが可能な有機発光装置を提供する。
【解決手段】 有機層163から発生した白色光を下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間において共振させたのちにその上部電極層164を通じてそれぞれ赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBとして放出する赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bを備える場合に、緑色有機EL素子16Gのうちの下部電極層161Gの反射率S1Gが赤色有機EL素子16Rのうちの下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなっている(S1G<S1R)。光学的距離LGのばらつきに起因して緑色光HGの色度がばらつきにくくなるため、緑色光HGの色度が安定化する。しかも、カラーフィルタを使用しなくても緑色光HGの色度が安定化するため、そのカラーフィルタを搭載する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネセンス(EL;Electro Luminescence)現象を利用した有機発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイの1つとして、有機EL現象を利用して画像を表示するディスプレイ(いわゆる有機ELディスプレイ)が注目されている。この有機ELディスプレイは、有機EL素子の発光現象を利用して画像を表示する自発光型のディスプレイであるため、視野角が広く、かつ消費電力が小さい点において優れている。
【0003】
有機ELディスプレイは、主に、駆動パネルおよび封止パネルが互いに対向配置され、それらの駆動パネルおよび封止パネルが接着層を介して互いに貼り合わされた構造を有している。駆動パネルは、基板の一面に、駆動用の複数の薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)や画像表示用の複数の有機EL素子などが設けられたものである。この有機EL素子は、下部電極層と上部電極層との間に発光層を含む層が設けられた構造を有しており、その発光層を含む層は、光の発生源としての発光層と共に正孔輸送層や電子輸送層などを含んでいる。
【0004】
この有機ELディスプレイに関しては、表示性能を向上させることを目的として、既にいくつかの態様が提案されている。
【0005】
具体的には、例えば、光反射性の下部電極層および光半透過性の上部電極層を含むように有機EL素子が構成されており、発光層から発生した光を下部電極層と上部電極層との間において反射させることにより共振させたのちに放出する(いわゆる光共振機能を有する)有機ELディスプレイが知られている(例えば、特許文献1参照。)。この光共振機能を担う有機EL素子の素子構造は、一般に「共振器構造」と呼ばれており、一種の狭帯域フィルタとして機能するものである。この共振器構造を有する有機EL素子を備えた有機ELディスプレイでは、例えば、互いに異なる色(例えば赤色、緑色および青色)の光を放出する複数の有機EL素子の間において、下部電極層と上部電極層との間の距離(いわゆる光学的距離)が互いに異なっており、具体的には各有機EL素子の光学的距離が各色の波長に応じて設定されている。この種の有機ELディスプレイでは、共振器構造の光共振作用に基づいて各色ごとに光の放出効率が向上するため、その各色ごとに色純度が向上する。
【特許文献1】特開2003−142277号公報
【0006】
また、例えば、上記した共振器構造を有する有機EL素子を備えた有機ELディスプレイとしては、互いに異なる色(例えば赤色、緑色および青色)の光を放出する複数の有機EL素子に対応して配置され、その光の各色に対応した色(例えば赤色、緑色および青色)のフィルタ領域を有するカラーフィルタを備えた有機ELディスプレイが知られている(例えば、特許文献2参照。)。この種の有機ELディスプレイでは、各有機EL素子から放出された光がカラーフィルタを経由して放出されるため、各色の色純度が向上すると共に、有機ELディスプレイの内部において発生した反射光がカラーフィルタに吸収されるため、コントラストが確保される。
【特許文献2】国際公開第WO01/39554号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最近では、有機ELディスプレイの実用性が広く認知されたことに伴い、モニタなどの大型ディスプレイに限らず、ビューファインダなどに代表される小型ディスプレイ、より具体的には数μmの画素ピッチが要求される小型ディスプレイにまで有機ELディスプレイを適用する試みが検討されている。この場合には、有機ELディスプレイを小型ディスプレイに適用する上で、例えば、外形サイズや表示性能の観点において現行の液晶ディスプレイと差別化するために、ディスプレイサイズを可能な限り小型化しつつ、表示性能を可能な限り高性能化する必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の有機ELディスプレイでは、市場の要求に応じた小型化および高性能化を実現する観点において未だ十分とは言えないため、多分に改善の余地がある。したがって、有機ELディスプレイの有用性を証明することにより市場普及を図るために、有機ELディスプレイの小型化および高性能化を実現することが可能な技術の確立が望まれている。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化および高性能化を実現することが可能な有機発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る有機発光装置は、第1の電極層と第2の電極層との間に発光層を含む層が設けられた構造を有し、発光層から発生した光を第1の電極層と第2の電極層との間において共振させたのちにその第2の電極層を通じてそれぞれ赤色の光、緑色の光および青色の光として放出する赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子を備え、発光層を含む層が、その発光層から赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子の間において共通の色の光を発生させると共にそれらの赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子により共有されており、第1の電極層と第2の電極層との間の距離が、赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子からそれぞれ放出される光の色に応じてそれらの赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子の間において互いに異なっており、緑色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率が、赤色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率よりも小さくなっているものである。
【0011】
本発明に係る有機発光装置では、発光層から発生した共通の光を第1の電極層と第2の電極層との間において共振させたのちにその第2の電極層を通じてそれぞれ赤色の光、緑色の光および青色の光として放出する赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子を備える場合に、緑色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率が赤色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率よりも小さくなっているため、緑色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率が赤色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率以上である場合と比較して、第1の電極層と第2の電極層との間の距離(いわゆる光学的距離)のばらつきに起因して緑色の光の色度がばらつきにくくなり、すなわち緑色の光の色度が安定化する。この場合には、例えば、共振条件として(2L)/λ+Φ/(2π)=mの関係式(「L」は第1の電極層と第2の電極層との間の距離(光学的距離)、「λ」は赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子から放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は発光層から発生した光が第1の電極層および第2の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「m」は0または整数をそれぞれ表している。)が成立している場合に、赤色有機発光素子において上記した関係式中のmの値がm=0の条件を満たしていれば、そのmの値を最小に設定した場合においても赤色有機発光素子において十分な共振作用が得られるため、その赤色有機発光素子から放出される赤色の光の色度が向上する。しかも、この場合には、カラーフィルタを使用しなくても緑色の光の色度が安定化すると共に赤色の光の色純度が向上するため、そのカラーフィルタを搭載する必要がない。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る有機発光装置によれば、発光層から発生した共通の色の光を第1の電極層と第2の電極層との間において共振させたのちにその第2の電極層を通じてそれぞれ赤色の光、緑色の光および青色の光として放出する赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子を備える場合に、緑色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率が赤色有機発光素子のうちの第1の電極層の反射率よりも小さくなっている構造的特徴に基づき、緑色の光の色度が安定化する。この場合には、例えば、赤色有機発光素子の共振条件(mの値)を適正化することにより(m=0)、赤色の光の色純度が向上する。しかも、この場合には、カラーフィルタを使用しなくても緑色の光の色度が安定化すると共に赤色の光の色純度が向上するため、そのカラーフィルタを搭載しない分だけサイズが小さくなる。したがって、外形サイズを小さくした場合においても画像の表示性能が確保されるため、小型化および高性能化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
まず、図1〜図3を参照して、本発明の一実施の形態に係る有機発光装置としての有機ELディスプレイの構成について説明する。図1は、有機ELディスプレイの断面構成を表している。また、図2および図3は、図1に示した有機ELディスプレイのうちの主要部の断面構成を拡大して模式的に表しており、図2は赤色有機EL素子16R,緑色有機EL素子16G,青色有機EL素子16Bを示し、図3は有機層163を示している。
【0015】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイは、有機EL現象を利用して画像を表示するものであり、例えば、図1に示したように、画像表示用の光Hとして互いに異なる3色の光、すなわち赤色(R;Red )の光(赤色光)HR、緑色(G;Green )の光(緑色光)HGおよび青色(B;Blue)の光(青色光)HBをそれぞれ放出する3つの有機EL素子16(赤色有機EL素子16R,緑色有機EL素子16G,青色有機EL素子16B)を備えている。より具体的には、有機ELディスプレイは、駆動パネル10および封止パネル20が互いに対向配置され、それらの駆動パネル10および封止パネル20が接着層30を介して互いに貼り合わされた構造を有している。この有機ディスプレイは、例えば、画像表示用の光Hを上方、すなわち封止パネル20を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有している。
【0016】
駆動パネル10は、例えば、駆動用基板11の一面に、薄膜トランジスタ(TFT)12と、層間絶縁層13と、駆動配線14と、平坦化絶縁層15と、上記した有機EL素子16(赤色有機EL素子16R,緑色有機EL素子16G,青色有機EL素子16B)、補助配線17および層内絶縁層18と、保護層19とがこの順(駆動用基板11に近い側から順)に積層された積層構造を有している。
【0017】
駆動用基板11は、TFT12や有機EL素子16などの一連の構成部品を支持するものであり、例えば、シリコン(Si)やプラスチックなどの非光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0018】
TFT12は、有機EL素子16を駆動させることにより発光させるものであり、例えば、駆動用基板11の一面に複数個に渡ってマトリクス状に配列されている。このTFT12は、層間絶縁層13に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて駆動配線14と電気的に接続されている。なお、TFT12の構造は、特に限定されず、例えば、ボトムゲート型構造であってもよいし、あるいはトップゲート型構造であってもよい。
【0019】
層間絶縁層13は、TFT12を周囲から電気的に分離するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )やPSG(phospho-silicate glass)などの絶縁性材料により構成されている。この層間絶縁層13は、例えば、TFT12およびその周辺の駆動用基板11を覆うように配設されている。
【0020】
駆動配線14は、信号線として機能することにより有機EL素子16を駆動させるものであり、例えば、アルミニウム(Al)やアルミニウム銅合金(AlCu)などの導電性材料により構成されている。この駆動配線14は、平坦化絶縁層15に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機EL素子16と電気的に接続されている。なお、駆動配線14は、例えば、各TFT12ごとに2つずつ(ゲート信号線,ドレイン信号線)設けられており、上記したように、TFT12と電気的に接続されている。
【0021】
平坦化絶縁層15は、TFT12および駆動配線14と有機EL素子16との間を電気的に分離すると共に、その有機EL素子16が配置される下地を平坦化するものであり、例えば、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成されている。なお、図1には図示していなが、平坦化絶縁層15中には、例えば、TFT12を駆動させるためのキャパシタや、駆動配線14と有機EL素子16との間を電気的に接続させるための多階層の配線などが埋設されている。
【0022】
有機EL素子16は、有機EL現象を利用して画像表示用の光Hを放出する有機発光素子であり、例えば、上記したように、赤色光HR(例えば、波長=約630nm)を放出する赤色有機EL素子16Rと、緑色光HG(例えば、波長=530nm)を放出する緑色有機EL素子16Gと、青色光HB(例えば、波長=460nm)を放出する青色有機EL素子16Bとを含んでいる。なお、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bは、それらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bを1組として、TFT12の配列パターンに対応して複数組に渡ってマトリクス状に配列されている。
【0023】
この有機EL素子16(赤色有機EL素子16R,緑色有機EL素子16G,青色有機EL素子16B)は、例えば、図1に示したように、下部電極層161R,161G,161Bおよび上部電極層164の間に有機層163が設けられた構造を有しており、より具体的には、下部電極層161R,161G,161Bと、透明導電層162R,162G,162Bと、有機層163と、上部電極層164とがこの順(平坦化絶縁層15に近い側から順)に積層された積層構造を有している。特に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bは、有機層163から発生した光を下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間において反射させることにより共振させる共振器構造を有しており、いずれも一種の狭帯域フィルタとして機能するものである。下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間の距離(光学的距離)は、上記した共振器構造の共振特性に寄与する因子であり、例えば、下記の関係式(1)の関係を満たしている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m・・・(1)
(ただし、「L」は下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間の光学的距離、「λ」は赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bから放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は有機層163から発生した光が下部電極層161R,161G,161Bおよび上部電極層164において反射する際に生じる位相シフト、「m」は0または整数をそれぞれ表している。)
【0024】
より詳細には、便宜上、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの積層構造を互いに分離すると、それらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの積層構造は、図2に示したように示される。
【0025】
すなわち、赤色有機EL素子16Rは、下部電極層161R(厚さKR)と、透明導電層162R(厚さDR)と、有機層163(厚さYR)と、上部電極層164(厚さJR)とがこの順に積層された積層構造を有している。この赤色有機EL素子16Rは、例えば、赤色光HRを放出するための共振器構造を有しており、より具外的には、有機層163から発生した光を下部電極層161Rと上部電極層164との間において共振させたのちに上部電極層164を通じて赤色光HRとして放出するものである。この下部電極層161Rと上部電極層164との間の距離(光学的距離)は、下記の関係式(2)の関係を満たしている。ここでは、例えば、関係式(2)においてmR=0であり、すなわち関係式(2)が下記の関係式(3)の関係を満たしている。
(2LR)/λR+Φ/(2π)=mR・・・(2)
(2LR)/λR+Φ/(2π)=0・・・(3)
(ただし、「LR」は下部電極層161R(下部電極層161Rのうちの透明導電層162Rに隣接する端面PR1)と上部電極層164(上部電極層164のうちの有機層163に隣接する端面PR2)との間の光学的距離、「λR」は赤色有機EL素子16Rから放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は有機層163から発生した光が下部電極層161R(端面PR1)および上部電極層164(端面PR2)において反射する際に生じる位相シフト、「mR」は0または整数をそれぞれ表している。)
【0026】
緑色有機EL素子16Gは、下部電極層161G(厚さKG)と、透明導電層162G(厚さDG)と、有機層163(厚さYG)と、上部電極層164(厚さJG)とがこの順に積層された積層構造を有している。この緑色有機EL素子16Gは、例えば、緑色光HGを放出するための共振器構造を有しており、より具外的には、有機層163から発生した光を下部電極層161Gと上部電極層164との間において共振させたのちに上部電極層164を通じて緑色光HGとして放出するものである。この下部電極層161Gと上部電極層164との間の距離(光学的距離)は、下記の関係式(4)の関係を満たしている。ここでは、例えば、関係式(4)においてmG=0であり、すなわち関係式(4)が下記の関係式(5)の関係を満たしている。なお、関係式(4)では、例えば、上記したようにmG=0に限らず、mG=1であってもよい。
(2LG)/λG+Φ/(2π)=mG・・・(4)
(2LG)/λG+Φ/(2π)=0・・・(5)
(ただし、「LG」は下部電極層161G(下部電極層161Gのうちの透明導電層162Gに隣接する端面PG1)と上部電極層164(上部電極層164のうちの有機層163に隣接する端面PG2)との間の光学的距離、「λG」は緑色有機EL素子16Gから放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は有機層163から発生した光が下部電極層161G(端面PG1)および上部電極層164(端面PG2)において反射する際に生じる位相シフト、「mG」は0または整数をそれぞれ表している。)
【0027】
青色有機EL素子16Bは、下部電極層161B(厚さKB)と、透明導電層162B(厚さDB)と、有機層163(厚さYB)と、上部電極層164(厚さJB)とがこの順に積層された積層構造を有している。この青色有機EL素子16Bは、例えば、青色光HBを放出するための共振器構造を有しており、より具外的には、有機層163から発生した光を下部電極層161Bと上部電極層164との間において共振させたのちに上部電極層164を通じて青色光HBとして放出するものである。この下部電極層161Bと上部電極層164との間の距離(光学的距離)は、下記の関係式(6)の関係を満たしている。ここでは、例えば、関係式(6)においてmB=1であり、すなわち関係式(6)が下記の関係式(7)の関係を満たしている。なお、関係式(6)では、例えば、上記したようにmB=1に限らず、mB=0であってもよい。
(2LB)/λB+Φ/(2π)=mB・・・(6)
(2LB)/λB+Φ/(2π)=1・・・(7)
(ただし、「LB」は下部電極層161B(下部電極層161Bのうちの透明導電層162Bに隣接する端面PB1)と上部電極層164(上部電極層164のうちの有機層163に隣接する端面PB2)との間の光学的距離、「λB」は青色有機EL素子16Bから放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は有機層163から発生した光が下部電極層161B(端面PB1)および上部電極層164(端面PB2)において反射する際に生じる位相シフト、「mB」は0または整数をそれぞれ表している。)
【0028】
光学的距離LR,LG,LBは、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ放出される光の色(赤色光HRの赤色,緑色光HGの緑色,青色光HBの青色)に応じて、それらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間において互いに異なっている。具体的には、光学的距離LR,LG,LBは、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bが有機層163から発生した光をそれぞれ赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBとして放出可能となるように設定されており、例えば、上記した関係式(3),(5),(7)に示したように、mR=0,mG=0,mB=1の場合には、青色光HB,赤色光HR,緑色光HGに対応して順に小さくなっている(LB>LR>LG)。上記した「有機層163から発生した光を赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBとして放出する」とは、図2に示したように、有機層163中の任意の発光点NR,NG,NBにおいて発生した光が下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間において共振されたのちに上部電極層164を通じて放出される過程において、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間における共振長(光学的距離LR,LG,LB)の差異に基づく光の多重干渉現象を利用して、発光点NR,NG,NBにおいて発生した際に互いに同一の色(波長)を有していた光の波長を放出時に赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間において互いに異ならせ、すなわち赤色有機EL素子16Rにおいて赤色に対応する波長、緑色有機EL素子16Gにおいて緑色に対応する波長、ならびに青色有機EL素子16Bにおいて青色に対応する波長をそれぞれ選択的に増強させることにより、最終的に赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBを生成するという意味である。
【0029】
下部電極層161R,161G,161Bは、有機層163に電圧を印加するための電極として機能すると共に、その有機層163から発生した光を共振させるために反射させるミラー(全反射ミラー)として機能する第1の電極層であり、図1に示したように、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域ごとに互いに分離して配置されている。ここでは、例えば、下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに同一の材料により構成されていると共に、それらの下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに異なる厚さKR,KGを有している(KR≠KG)。これらの下部電極層161R,161Gは、光反射性を有する電極材料により構成されており、例えば、いずれもアルミニウム(Al)、アルミニウムを含む合金、銀(Ag)または銀を含む合金により構成されている。この「アルミニウムを含む合金」とは、いわゆるアルミニウムを主成分とする合金であり、例えば、アルミニウムネオジム合金(AlNd;例えばAl:Nd=90重量%:10重量%)などが挙げられる。また、「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を主成分とする合金であり、例えば、銀パラジウム銅合金(AgPdCu;例えばAg:Pd:Cu=99重量:0.75重量%:0.25重量%)などが挙げられる。
【0030】
具体的には、下部電極層161Gの厚さKGは下部電極層161Rの厚さKRよりも小さくなっており(KG<KR)、この厚さKR,KGの間の差異に伴い、下部電極層161Gの反射率S1Gは下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなっている(S1G<S1R)。特に、下部電極層161Rの反射率S1Rおよび下部電極層161Gの反射率S1Gは、いずれも約60%以上(S1R,S1G≧60%)、より具体的には約60%以上100%以下の範囲内(60%≦S1R,S1G≦100%)である。また、下部電極層161Rの反射率S1Rに対する下部電極層161Gの反射率S1Gの差異は、約10%以上である。この「反射率S1Rに対する反射率S1Gの差異が約10%以上である」とは、反射率S1Rの値を基準とした場合に、その反射率S1Rの値よりも反射率S1Gの値が約10%以上小さいことを意味しており、言い替えれば反射率S1Gの値が反射率S1Rの値の約90%以下であること(SG≦SR×0.9)を意味している。
【0031】
なお、下部電極層161Bの厚さKB、材質および反射率S1Bは、下部電極層161R,161Gの厚さKR,KB、材質および反射率S1R,S1Gに応じて自由に設定可能である。ただし、下部電極層161Bの反射率S1Bは、例えば、下部電極層161Rの反射率S1Rおよび下部電極層161Gの反射率S1Gと同様に、約60%以上(S1B≧60%)、より具体的には約60%以上100%以下の範囲内(60%≦S1B≦100%)である。図2では、例えば、下部電極層161Bが下部電極層161R,161Gの構成材料と同一の材料により構成されていると共に、その下部電極層161Bの厚さKBが下部電極層161Gの厚さKGに一致していることに伴い(K1B=K1G)、下部電極層161Bの反射率S1Bが下部電極層161Gの反射率S1Gに一致していると共に(S1B=S1G)、下部電極層161Rの反射率S1Rに対する下部電極層161Bの反射率S1Bの差異が、下部電極層161Rの反射率S1Rに対する下部電極層161Gの反射率S1Gの差異と同様に約10%以上である場合を示している。
【0032】
透明導電層162R,162G,162Bは、それぞれ下部電極層161R,161G,161Bに隣接することにより実質的に電極として機能すると共に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機E素子16Bの間において光学的距離LR,LG,LBに差異を生じさせる機能を果たすものであり、例えば、図1に示したように、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域ごとに互いに分離して配置されている。これらの透明導電層162R,162G,162Bは、例えば、いずれも酸化インジウム錫(ITO;indium tin oxide)などの透明導電性材料により構成されている。特に、透明導電層162R,162G,162Bの厚さDR,DG,DBは、例えば、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ放出される赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBに対応して異なっており、具体的には青色光HB、赤色光HRおよび緑色光HGの順に小さくなっている(DB>DR>DG)。なお、透明導電層162R,162G,162Bは、例えば、必ずしも互いに同一の透明導電性材料により構成されていなければならないわけなく、互いに異なる透明導電性材料により構成されていてもよい。
【0033】
有機層163は、有機EL現象を利用して発光するものである。この有機層163は、特定の色(波長域)の光、すなわち赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間において共通の色(互いに等しい色)の光を発生させるものであり、例えば、白色光を発生させるものである。特に、有機層163は、図1に示したように、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域ごとに互いに分離して配置されている下部電極層161R,161G,161Bおよび透明導電層162R,162G,162Bとは異なり、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域を連続的に経由しながら延在するように配置されている。すなわち、有機層163は、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにより共有されており、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれにおける有機層163の厚さYR,YG,YBは、互いに等しくなっている(YR=YG=YB)。
【0034】
この有機層163は、例えば、図2および図3に示したように、実質的に有機EL現象を利用して発光することにより特定の色の光を発生させる発光層1633を含む層でおり、より具体的には、ホール注入層1631と、ホール輸送層1632と、発光層1633と、電子輸送層1634とがこの順(下部電極層161R,161G,161Bに近い側から順)に積層された積層構造を有している。この発光層1633は、上記したように白色光を発生させるために、例えば、赤色発光層1633Rと、緑色発光層1633Gと、青色発光層1633Bとがこの順(ホール輸送層1632に近い側から順)に積層された積層構造を有している。
【0035】
ホール注入層1631は、ホール輸送層1632にホール(正孔)を注入するものであり、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)により構成されている。
【0036】
ホール輸送層1632は、ホール注入層1631から注入されたホールを発光層1633へ輸送するものであり、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。
【0037】
発光層1633のうちの赤色発光層1633Rは、有機EL現象を利用して赤色の光を発生させるものであり、例えば、4−ジシアノメチレン−6−(P−ジメチルアミノシチル)−2−メチル−4H−ピラン(DCM)が約2体積%混合された8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。緑色発光層1633Gは、有機EL現象を利用して緑色の光を発生させるものであり、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。青色発光層1633Bは、有機EL現象を利用して青色の光を発生させるものであり、例えば、バソクプロイン(BCP)により構成されている。
【0038】
電子輸送層1634は、発光層1633へ電子を輸送するものであり、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq)により構成されている。
【0039】
上部電極層164は、有機層163に電圧を印加するための電極として機能すると共に、その有機層163から発生した光を共振させるために反射させたのちに外部へ導くハーフミラーとして機能する第2の電極層であり、図1に示したように、有機層163と同様に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域を連続的に経由しながら延在するように配置されている。すなわち、上部電極層164は、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにより共有されており、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれにおける上部電極層164の厚さJR,JG,JBは、互いに等しくなっている(JR=JG=JB)。この上部電極層164は、光半透過性を有する導電性材料により構成されており、例えば、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された単層構造を有している。この「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を含有する合金であり、例えば、銀マグネシウム合金(AgMg;例えばAg:Mg=10重量%:90重量%)などが挙げられる。特に、上部電極層164の反射率S2は、例えば、約50%以上(S2≧50%)、より具体的には約50%以上95%以下の範囲内(50%≦S2≦95%)である。この場合において、反射率S2は、例えば、約60%以上であるのが好ましく、さらに約70%以上あるいは約80%以上であるのが好ましい。反射率S2が約50%よりも小さくなると、上部電極層164において十分な反射特性が得られず、一方、反射率S2が約95%よりも大きくなると、上部電極層164において十分な透過特性が得られないからである。なお、上部電極層164は、必ずしも単層構造を有していなければならないわけではなく、互いに異なる材料により構成された積層構造を有していてもよい。より具体的には、上部電極層164は、例えば、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)を含む合金により構成された層(下層)と、銀または銀を含む合金により構成された層(上層)とがこの順に積層された2層構造を有していてもよい。この「マグネシウムおよび銀を含む合金」としては、いわゆるマグネシウムおよび銀を含有する合金であり、例えば、マグネシウム銀合金(MgAg;Mg:Ag=例えば5重量%:1重量%〜20重量%:1重量%)などが挙げられる。また、「銀を含む合金」とは、いわゆる銀を含有する合金であり、例えば、銀マグネシウム合金(AgMg;例えばAg:Mg=10重量%:90重量%)などが挙げられる。
【0040】
補助配線17は、図示しない電源と上部電極層164との間の抵抗の差異を緩和させることにより、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間の抵抗差を低減させるものであり、その上部電極層164と電気的に接続されている。この補助配線17は、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bと同一階層に配設されており、例えば、有機層163および上部電極層164を含まないことを除き、それらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bとほぼ同様の積層構造(下部電極層/透明導電層)を有している。
【0041】
層内絶縁層18は、有機EL素子16および補助配線17の間を電気的に分離すると共に、特に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bから放出される赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの放出範囲を絞り込むためのバンクである。この層内絶縁層18は、例えば、ポリイミドまたはポリベンゾオキサゾールなどの有機絶縁性材料や、酸化シリコン(SiO2 )などの無機絶縁性材料により構成されており、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16G、青色有機EL素子16Bおよび補助配線17の周囲に、それらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16G、青色有機EL素子16Bおよび補助配線17の間を分離するように設けられている。
【0042】
保護層19は、主に有機EL素子16を保護するものであり、例えば、窒化ケイ素(SiN)などの光透過性誘電性材料により構成されたパッシベーション膜である。
【0043】
一方、封止パネル20は、例えば、封止用基板21を含んで構成されている。この封止用基板21は、有機EL素子16(赤色有機EL素子16R,緑色有機EL素子16G,青色有機EL素子16B)から放出された画像表示用の光H(赤色光HR,緑色光HG,青色光HB)を透過させることにより有機ELディスプレイの外部へ放出させるものであり、例えば、ガラスなどの光透過性絶縁性材料により構成されている。
【0044】
なお、接着層30は、駆動パネル10と封止パネル20とを互いに貼り合わせるためのものであり、例えば、熱硬化型樹脂などの接着材料により構成されている。
【0045】
次に、図1〜図3を参照して、有機ELディスプレイの動作について説明する。
【0046】
この有機ELディスプレイでは、図1〜図3に示したように、駆動パネル10のうちのTFT12を利用して赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bが駆動され、すなわち下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間に電圧が印加されると、有機層163のうちの発光層1633において、ホール注入層1631からホール輸送層1632を経由して供給された正孔と電子輸送層1634から供給された電子とが再結合することにより、白色光が発生する。この白色光は、赤色発光層1633Rにおいて発生した赤色の光と、緑色発光層1633Gにおいて発生した緑色の光と、青色発光層1633Bにおいて発生した青色の光とが合成された合成光(重畳光)である。
【0047】
この白色光は、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bから画像表示用の光Hとして有機ELディスプレイの外部へ放出される過程において、共振器構造を有する赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間における共振長(光学的距離L(LR,LG,LB))の差異に基づく光の多重干渉現象を利用して選択的に増強され、すなわち赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBとして放出される。これにより、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ放出された赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの合成光(画像表示用の光H)が有機ELディスプレイの外部へ放出されることにより画像として視認されるため、その画像表示用の光Hに基づいてフルカラーの画像が表示される。
【0048】
特に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBが放出される際には、図2に示したように、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにおいて、有機層163のうちの発光層1633から発生した光が全反射ミラーとして機能する下部電極層161R,161G,161Bとハーフミラーとして機能する上部電極層164との間において反射されることにより共振される。これにより、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bからそれぞれ放出される赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの半値幅が減少するため、それらの赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの色純度が向上する。
【0049】
本実施の形態に係る有機ELディスプレイでは、有機層163から白色光が発生する場合に、光学的距離LR,LG,LBの差異に基づく光の多重干渉現象を利用して白色光を選択的に増強することにより赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBとして放出すると共に、下部電極層161R,161G,161Bと上部電極層164との間において光を反射させることにより共振させる共振器構造を有する赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bを備え、特に、緑色有機EL素子16Gのうちの下部電極層161Gの反射率S1Gが赤色有機EL素子16Rのうちの下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなるようにしたので(S1G<S1R)、以下の理由により、小型化および高性能化を実現することができる。
【0050】
すなわち、緑色有機EL素子16Gのうちの下部電極層161Gの反射率S1Gが赤色有機EL素子16Rのうちの下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さい場合(S1G<S1R)には、その反射率S1Gが反射率S1R以上である場合(S1G≧S1R)と比較して、光学的距離LGのばらつき、具体的には光学的距離LGを決定する透明導電層162Gおよび有機層163のそれぞれの膜厚のばらつきに起因して緑色光HGの色度がばらつきにくくなるため、その緑色光HGの色度が安定化する。この緑色光HGでは、他の赤色光HRや青色光HBと比較して、光学的距離のばらつきに起因して色度がばらつきやすい傾向にあり、すなわち緑色光HGの色度は、赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの合成光である画像表示用の光Hの色度に影響を及ぼしやすい因子であることを考慮すれば、上記したように緑色光HGの色度が安定化することにより、画像表示用の光Hの色度も同様に安定化する。
【0051】
この場合には、さらに、例えば、上記した赤色有機EL素子16Rの共振条件を決定する関係式(2),(3)に示したように、mRの値を0に設定すれば(mR=0)、そのmRの値を最小に設定した場合においても、共振器構造を有する赤色有機EL素子16Rにおいて十分な共振作用が得られるため、その赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度が向上する。具体的には、mRの値をmR=0に設定した場合には、そのmRの値をmR=0以外に設定した場合(例えば、mR=1に設定した場合)とは異なり、赤色光HRのスペクトル中に赤色の色度に悪影響を及ぼす不要なスペクトルピーク(例えば、青色の色度に対応する高次成分)が発生しなくなるため、その赤色光HRの色純度が向上する。
【0052】
これにより、緑色光HGの色度が安定化すると共に、赤色光HRの色純度が向上する結果、画像表示用の光Hの色度が向上するため、画像の表示性能が確保される。
【0053】
しかも、この場合には、上記した色度の向上原理に基づいて、カラーフィルタを使用しなくても緑色光HGの色度が安定化すると共に赤色光HRの色純度が向上し、すなわちカラーフィルタを使用せずに画像の表示性能が確保されるため、その画像の表示性能を確保するためにカラーフィルタを搭載する必要がない。
【0054】
これにより、画像の表示性能を確保するためにカラーフィルタを搭載する必要がある場合と比較して、そのカラーフィルタを搭載しない分だけディスプレイサイズが小さくなるため、小型化が実現される。
【0055】
したがって、本実施の形態では、ディスプレイサイズを小さくした場合においても画像の表示性能が確保されるため、小型化および高性能化を実現することができるのである。
【0056】
また、本実施の形態では、下部電極層161R,161G,161Bの反射率S1R,S1G,S1Bが約60%以上であると共に(S1R,S1G,S1B≧約60%)、上部電極層164の反射率S2が約50%以上であるようにしたので(S2≧約50%)、下部電極層161R,161G,161Bおよび上部電極層164の双方において光反射性が十分に大きくなる。この場合には、有機層163から発生した光が下部電極層161R,161G,161Bおよび上部電極層164の双方において反射しやすくなるため、その光が共振されやすくなる。したがって、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにおいて十分な共振作用が得られるため、画像表示用の光H(赤色光HR,緑色光HG,青色光HB)の色純度を著しく向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、下部電極層161Rの反射率S1Rに対する下部電極層161Gの反射率S1Gの差異が約10%以上であり、すなわち反射率S1Gが反射率S1Rに対して約10%以上小さくなるようにしたので、反射率S1Gと反射率S1Rとの間に十分な差異が確保される。この場合には、反射率S1Rに対する反射率S1Gの差異が約10%未満である場合と比較して、光学的距離LGのばらつきに起因して緑色光HGの色度がよりばらつきにくくなるため、その緑色光HGの色度がより安定化しやすくなる。したがって、緑色光HGの色度を著しく安定化させることができる。
【0058】
ここで、本発明の有機ELディスプレイに関する技術的意義について説明しておく。すなわち、本発明の有機ELディスプレイは、主に、ビューファインダなどに代表される小型ディスプレイに適用されるものであり、その小型ディスプレイに適用されることにより顕著な技術的意義を発揮するものである。この種の小型ディスプレイに適用される用途では、ディスプレイサイズが小さいにもかかわらずに表示画像を十分に視認可能としなければならないため、モニタに代表される大型ディスプレイに適用される用途と比較して、有機ELディスプレイに関して要求される表示性能は必然的に高くなり、すなわち大型ディスプレイに適用される用途よりも高い色度特性が要求される。しかも、小型ディスプレイに適用される用途では、昨今において多様な電気機器について小型化が要求されている技術的背景を反映して、有機ELディスプレイに関して要求されるディスプレイサイズが必然的に小さくなり、すなわちディスプレイサイズのサイズダウンが益々要求されている。これらのことから、本発明の有機ELディスプレイに関する技術的意義は、ビューファインダなどに代表される小型ディスプレイに有機ELディスプレイを適用する場合において、ディスプレイの小型化および表示性能の高性能化を両立し、すなわちディスプレイを小型化しつつ表示性能を確保する点にある。
【0059】
なお、本実施の形態では、図2に示したように、下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに同一の材料により構成されていると共に、それらの下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに異なる厚さKR,KGを有しており(KR≠KG,具体的にはKG<KR)、その厚さKR,KGの間の差異に伴って下部電極層161Gの反射率S1Gが下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなるようにしたが(S1G<S1R)、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、図2に対応する図4に示したように、下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに異なる材料(互いに反射率が異なる材料)により構成されており、その材料(反射率)の差異に伴って下部電極層161Gの反射率S1Gが下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなるようにしてもよい(S1G<S1R)。下部電極層161Gは、相対的に低い反射率を有する導電性材料により構成されており、例えば、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)またはニッケル(Ni)により構成されている。また、下部電極層161Rは、相対的に高い反射率を有する導電性材料により構成されており、例えば、アルミニウム(Al)、アルミニウムを含む合金、銀(Ag)または銀を含む合金により構成されている。図4では、例えば、下部電極層161Rおよび下部電極層161Gが互いに等しい厚さKR,KGを有している場合(KR=KG)を示している。なお、下部電極層161Bの厚さKB、材質および反射率S1Bは、自由に設定可能である。図4では、例えば、下部電極層161Bが下部電極層161Gの構成材料と同一の材料により構成されていると共に、その下部電極層161Bの厚さKBが下部電極層161Gの厚さKGに一致していることに伴い(KB=KG)、下部電極層161Bの反射率S1Bが下部電極層161Gの反射率S1Gに一致している場合(S1B=S1G)を示している。この場合においても、下部電極層161Gの反射率S1Gが下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくなることに基づき、上記実施の形態において説明した作用と同様の作用が得られるため、有機ELディスプレイの小型化および高性能化を実現することができる。なお、図4に示した有機ELディスプレイに関する上記以外の構成は、図2に示した場合と同様である。
【0060】
また、本実施の形態では、図1および図2に示したように、画像表示用の光Hを上方、具体的には封止パネル20を経由して外部へ放出することにより画像を表示するトップエミッション型構造を有するように有機ELディスプレイを構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図1および図2にそれぞれ対応する図5および図6に示したように、画像表示用の光Hを下方、具体的には駆動パネル10を経由して外部へ放出することにより画像を表示するボトムエミッション型構造を有するように有機ELディスプレイを構成してもよい。
【0061】
このボトムエミッション型構造を有する有機ELディスプレイでは、(1)下部電極層161R,161G,161Bがミラーとして機能する第1の電極層であり、上部電極層164がハーフミラーとして機能する第2の電極層であった上記実施の形態(図1および図2参照)とは異なり、下部電極層161R,161G,161Bがハーフミラーとして機能する第2の電極層であり、上部電極層164がミラーとして機能する第1の電極層であり、(2)駆動用基板11が非光透過性絶縁性材料により構成され、封止用基板21が光透過性絶縁性材料により構成されていた上記実施の形態とは異なり、駆動用基板11が光透過性絶縁性材料により構成され、封止用基板21が非光透過性絶縁性材料により構成されており、(3)上部電極層164が赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域を連続的に経由しながら延在しており、すなわち上部電極層164が赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにより共有されていた上記実施の形態とは異なり、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bのそれぞれの配置領域ごとに上部電極層164R,164G,164Bが分離して配置されている。なお、ハーフミラーとして機能する下部電極層161R,161G,161Bの構成材料は、例えば、上記実施の形態において説明した上部電極層164の構成材料と同様であり、ミラーとして機能する上部電極層164R,164G,164Bの構成材料は、例えば、上記実施の形態において説明した下部電極層161R,161G,161Bの構成材料と同様である。また、駆動用基板11の構成材料(光透過性絶縁性材料)は、例えば、上記実施の形態において説明した封止用基板21の構成材料と同様であり、封止用基板21の構成材料(非光透過性絶縁性材料)は、例えば、上記実施の形態において説明した駆動用基板11の構成材料と同様である。
【0062】
図6では、例えば、上部電極層164Rおよび上部電極層164Gが互いに同一の材料により構成されていると共に、それらの上部電極層164Rおよび上部電極層164Gが互いに異なる厚さJR,JGを有しており(JR≠JG,具体的にはJG<JR)、その厚さJR,JGの間の差異に伴って上部電極層164Gの反射率S2Gが上部電極層164Rの反射率S2Rよりも小さくなっている場合(S2G<S2R)を示している。なお、上部電極層164Bの厚さJB、材質および反射率S2Bは、自由に設定可能である。図6では、例えば、上部電極層164Bが上部電極層164R,164Gの構成材料と同一の材料により構成されていると共に、その上部電極層164Bの厚さJBが上部電極層164Gの厚さJGに一致していることに伴い(JB=JG)、上部電極層164Bの反射率S2Bが上部電極層164Gの反射率S2Gに一致している場合(S2B=S2G)を示している。
【0063】
この場合においても、上部電極層164Gの反射率S2Gが上部電極層164Rの反射率S2Rよりも小さくなることにより、上記実施の形態において説明した作用と同様の作用が得られるため、有機ELディスプレイの小型化および高性能化を実現することができる。なお、図5および図6に示した有機ELディスプレイに関する上記以外の構成は、図1および図2に示した場合と同様である。すなわち、トップエミッション型構造を有する有機ELディスプレイに関して上記した(1)〜(7)の関係式は、ボトムエミッション型構造を有する有機ELディスプレイに関しても同様に適用される。
【0064】
なお、図6に示したボトムエミッション型構造を有する有機ELディスプレイでは、例えば、図4に対応する図7に示したように、上部電極層164Rおよび上部電極層164Gが互いに異なる材料(互いに反射率が異なる材料)により構成されており、その材料(反射率)の差異に伴って上部電極層164Gの反射率S2Gが上部電極層164Rの反射率S2Rよりも小さくなるようにしてもよい(S2G<S2R)。上部電極層164Rの構成材料は、上記にて図4を参照して説明した下部電極層161Rの構成材料と同様であり、上部電極層164Gの構成材料は、同じく図4を参照して説明した下部電極層161Gの構成材料と同様である。図7では、例えば、上部電極層164Rおよび上部電極層164Gが互いに等しい厚さJR,JGを有している場合(JR=JG)を示している。なお、上部電極層164Bの厚さJB、材質および反射率S2Bは、自由に設定可能である。図7では、例えば、上部電極層164Bが上部電極層164Gの構成材料と同一の材料により構成されていると共に、その上部電極層164Bの厚さJBが上部電極層164Gの厚さJGに一致していることに伴い(JB=JG)、上部電極層164Bの反射率S2Bが上部電極層164Gの反射率S2Gに一致している場合(S2B=S2G)を示している。この場合においても、上部電極層164Gの反射率S2Gが上部電極層164Rの反射率S2Rよりも小さくなることにより、図4を参照して説明した作用と同様の作用が得られるため、有機ELディスプレイの小型化および高性能化を実現することができる。なお、図7に示した有機ELディスプレイに関する上記以外の構成は、図6に示した場合と同様である。
【実施例】
【0065】
次に、本発明に関する実施例について説明する。
【0066】
以下の手順を経ることにより、上記実施の形態において図1〜図3を参照して説明したトップエミッション型の有機ELディスプレイ(以下、単に「本発明の有機ELディスプレイ」という。)を製造した。
【0067】
すなわち、まず、ガラス製の駆動用基板11上に、TFT12から平坦化絶縁層15に至る一連の構成要素(TFT12,層間絶縁層13,駆動配線14,平坦化絶縁層15)を順次形成して積層させたのち、その平坦化絶縁層15のうち、後工程において赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bがそれぞれ形成される領域上にアルミニウム(Al)をパターン成膜することにより、ミラーとして機能する下部電極層161R,161G,161Bをそれぞれ形成した。この場合には、下部電極層161Rの厚さを50nmに設定し、下部電極層161G,161Bの厚さを13nmに設定することにより、下部電極層161Rの反射率S1Rを92%(反射率S1Rの特定波長=550nm)とし、下部電極層161G,161Bの反射率S1G,S1Bを70%(反射率S1G,S1Bの特定波長=550nm)とした。
【0068】
続いて、下部電極層161R,161G,161B上にそれぞれITOをパターン成膜することにより、透明導電層162R,162G,162Bをそれぞれ形成した。
【0069】
続いて、透明導電層162R,162G,162Bの表面をそれぞれ部分的に覆うと共に、各透明導電層162R,162G,162Bの間の空間を埋め込むようにポリイミドをパターン成膜することにより、層内絶縁層18を形成した。この場合には、各透明導電層162R,162G,162Bの表面のうち、2mm×2mm角の中央領域(発光用領域)を露出させることにより、発光用のセルを構成した。
【0070】
続いて、各透明導電層162R,162G,162Bおよび層内絶縁層18上に、10-4Pa以下の真空雰囲気中において真空蒸着法を使用して成膜処理を順次施すことにより、各透明導電層162R,162G,162B上を連続的に経由しながら延在するように有機層163を形成した。この有機層163を形成する際には、ホール注入層1631(MTDATA,10nm厚)、ホール輸送層1632(α−NPD,10nm厚)、発光層1633および電子輸送層1634(Alq,15nm厚)をこの順に積層させるようにし、特に、赤色発光層1633R(DCMが2体積%混合されたAlq,15nm厚)、緑色発光層1633G(Alq,15nm厚)および青色発光層1633B(BCP,15nm厚)をこの順に形成して積層させることにより発光層1633を形成した。
【0071】
続いて、有機層163上に、マグネシウム銀合金(MgAg,共蒸着比(Mg:Ag)=10:1)を成膜して下層を形成したのち、その下層上に銀(Ag)を成膜して上層を形成することにより、ハーフミラーとして機能する上部電極層164を形成した。この場合には、下層の厚さを5nmに設定し、上層の厚さを30nmに設定することにより、上部電極層164の反射率S2を70%(反射率S2の特定波長=550nm)とした。
【0072】
これにより、平坦化絶縁層15上に、赤色有機EL素子16R(下部電極層161R/透明導電層162R/有機層163/上部電極層164)、緑色有機EL素子16G(下部電極層161G/透明導電層162G/有機層163/上部電極層164)および青色有機EL素子16B(下部電極層161B/透明導電層162B/有機層163/上部電極層164)が形成された。これらの赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bを形成する際には、特に、赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bにおいて、有機層163から発生した光(白色光)がそれぞれ赤色光HR,緑色光HG,青色光HBとして放出され、すなわち波長がそれぞれ630nm,530nm,460nmにおいて極大となるように共振条件を設定した。より具体的には、上記した関係式(2)〜(7)に示したように、赤色有機EL素子16RにおいてmR=0,緑色有機EL素子16GにおいてmG=0,青色有機EL素子16BにおいてmB=1とするために、透明導電層162R,162G,162Bの厚さDR,DG,DBをそれぞれ56nm,28nm,118nmに設定すると共に、有機層163の厚さYR,YG,YBを80nmに設定した。
【0073】
最後に、上部電極層164上に保護層19を形成することにより駆動パネル10を形成したのち、接着層30を使用して駆動パネル10に封止パネル20(封止用基板21)を貼り合わせることにより、本発明の有機ELディスプレイが完成した。
【0074】
この本発明の有機ELディスプレイの諸性能を調べたところ、以下の一連の結果が得られた。なお、本発明の有機ELディスプレイの諸性能を調べる際には、その性能を比較評価するために、下部電極層161Gの反射率S1Gを下部電極層161Rの反射率S1R(S1R=92%)と同等とした点(S1G=92%)を除き、本発明の有機ELディスプレイの製造手順と同様の手順を経ることにより、他の有機ELディスプレイ(以下、単に「比較例の有機ELディスプレイ」という。)を製造した。
【0075】
まず、本発明の有機ELディスプレイの色再現性を調べたところ、図8に示した結果が得られた。図8は本発明の有機ELディスプレイの色度特性(いわゆる色度図)を表しており、「横軸」は色度xを示し、「縦軸」は色度yを示している。図8中に示した「8A(実線)」は本発明の有機ELディスプレイの色度特性を示し、「8B(一点鎖線)」は参考までに現行のビューファインダ用途の液晶ディスプレイ(LCD;liquid crystal display)の色度特性を示し、「8C(二点鎖線)」は参考までに基準(単色スペクトル光)の色度特性を示している。
【0076】
図8に示した結果から判るように、本発明の有機ELディスプレイ(8A)では、カラーフィルタを備えていないにもかかわらず、現行のLCD(8B)とほぼ同等の色度特性が得られた。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、下部電極層161Gの反射率S1Gを下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくすることにより、現行のビューファインダ用途のLCDに匹敵する色再現性が得られることが確認された。
【0077】
続いて、本発明の有機ELディスプレイの色度特性に関する共振条件の影響を調べたところ、図9に示した結果が得られた。図9は赤色光スペクトルの共振条件依存性を表しており、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」はスペクトルの強度S(a.u.)を示している。図9中の「9A(実線)」および「9B(一点鎖線)」は上記した関係式(2)中のmRの値の差異を表しており、「9A」はmR=0の場合を示し、「9B」はmR=1の場合を示している。
【0078】
図9に示した結果から判るように、mR=1とした場合(9B)には、赤色光に対応する波長λ=約630nm近傍においてスペクトルの強度Sが最大となり、すなわちスペクトルがピークを示しているが、この場合には、赤色光に対応する波長λ=約630nm近傍の他、青色光、すなわち上記した関係式(6)中のmBの値をmB=2とした場合の青色光に対応する波長λ=約460nm近傍においてもスペクトルがピークを示している。このことは、mR=1とすると、赤色光に対応するスペクトルピークだけでなく青色光に対応する不要なスペクトルピーク(高次成分)も併せて発生するため、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性が上記した不要なスペクトルピークの存在に起因して劣化し、すなわち赤色光HRの色度特性が所望の色度特性から外れてしまうことを表している。この不要なスペクトルピーク(高次成分)を取り除くために、例えば、カラーフィルタの光吸収現象を利用すると、mR=1とした場合には、赤色光HRの色度特性を制御する上でカラーフィルタが必要不可欠となる。これに対して、mR=0とした場合(9A)には、mR=1とした場合とは異なり、赤色光に対応する波長λ=約630nm近傍のみにおいてスペクトルがピークを示しており、青色光に対応する波長λ=約460nm近傍においてスペクトルがピークを示していない。このことは、mR=0とすると、赤色光に対応するスペクトルピークのみが発生し、青色光に対応する不要なスペクトルピークが発生しないため、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性が上記した不要なスペクトルピークの存在に起因して劣化せず、すなわち赤色光HRの色度特性が所望の色度特性に合致することを表している。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、上記した関係式(2)中のmRの値をmR=0とすることにより、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性を所望の色度特性となるように制御可能であることが確認された。
【0079】
続いて、本発明の有機ELディスプレイの色度特性に関する反射率の影響を調べたところ、図10および図11に示した結果が得られた。図10および図11は赤色光スペクトルの反射率依存性を表しており、図10はハーフミラーとして機能する上部電極層164の反射率S2に基づく依存性を表し、図11はミラーとして機能する下部電極層161Rの反射率S1Rに基づく依存性を表している。これらの図10および図11のうち、「横軸」は波長λ(nm)を示し、「縦軸」はスペクトルの強度S(a.u.)を示している。図10中の「10A(実線)」および「10B(一点鎖線)」は反射率S2の差異を表しており、「10A」は反射率S2=90%の場合を示し、「10B」は反射率S2=60%の場合を示している。また、図11中の「11A(実線)」および「11B(一点鎖線)」は反射率S1Rの差異を表しており、「11A」は反射率S1R=90%の場合を示し、「11B」は反射率S1R=60%の場合を示している。
【0080】
図10に示した結果から判るように、上部電極層164の反射率S2をS2=90%とした場合(10A)とS2=60%とした場合(10B)との間において、スペクトルの半値幅と共に、緑色に対応する波長域(波長λ=500nm〜550nm)におけるスペクトルの強度Sを比較すると、反射率S2を相対的に大きくした場合(S2=90%)には、スペクトルの半値幅が約50nmと小さくなると共に、緑色波長域におけるスペクトルの強度Sが約4%(0.04a.u.)と小さくなったのに対して、反射率S2を相対的に小さくした場合(S2=60%)には、スペクトルの半値幅が約80nmと大きくなると共に、緑色波長域におけるスペクトルの強度Sが約10%(0.1a.u.)と大きくなった。このことは、反射率S2が小さすぎると、スペクトル半値幅が大きくなり、しかも緑色波長域におけるスペクトル強度も大きくなるため、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性が劣化し、すなわち赤色光HRの色度特性が所望の色度特性から外れてしまうことを表している。これに対して、反射率S2が十分に大きいと、スペクトル半値幅が小さくなり、しかも緑色波長域におけるスペクトル強度も小さくなるため、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性が劣化せず、すなわち赤色光HRの色度特性が所望の色度特性に合致することを表している。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、上部電極層164の反射率S2を十分に大きくすることにより、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性を所望の色度特性となるように制御可能であることが確認された。この場合には、特に、赤色光HRの色度特性を良好に制御する上で、図10に示したスペクトル半値幅および緑色波長域におけるスペクトル強度、すなわち上部電極層164の反射率S2を60%とした場合(S2=60%)のスペクトル半値幅および緑色波長域におけるスペクトル強度が許容範囲であるとすると、その上部電極層164の反射率S2を60%以上とすることにより(S2≧60%)、赤色光HRの色度特性を良好に制御可能であることが確認された。
【0081】
また、図11に示した結果から判るように、下部電極層161Rの反射率S1RをS1R=90%とした場合(11A)とS1R=60%とした場合(11B)との間において、スペクトルの半値幅および緑色に対応する波長域(波長λ=500nm〜550nm)におけるスペクトルの強度Sを比較すると、図10を参照して上部電極層164の反射率S2に関して説明した場合と同様に、反射率S1Rを相対的に大きくした場合(S1R=90%)には、スペクトルの半値幅が約50nmと小さくなると共に、緑色波長域におけるスペクトルの強度Sが約4%(0.04a.u.)と小さくなったのに対して、反射率S1Rを相対的に小さくした場合(S1R=60%)には、スペクトルの半値幅が約70nmと大きくなると共に、緑色波長域におけるスペクトルの強度Sが約8%(0.08a.u.)と大きくなった。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、下部電極層161Rの反射率S1Rを十分に大きくすることにより、赤色有機EL素子16Rから放出される赤色光HRの色度特性を所望の色度特性となるように制御可能であることが確認された。この場合には、特に、赤色光HRの色度特性を良好に制御する上で、図11に示したスペクトル半値幅および緑色波長域におけるスペクトル強度、すなわち下部電極層161Rの反射率S1Rを60%とした場合(S1R=60%)のスペクトル半値幅および緑色波長域におけるスペクトル強度が許容範囲であるとすると、その下部電極層161Rの反射率S1Rを60%以上とすることにより(S1R≧60%)、赤色光HRの色度特性を良好に制御可能であることが確認された。この赤色光HRに関する許容範囲と色度特性との間の関係は、緑色光HGおよび青色光HBに関しても同様に得られるため、下部電極層161Gの反射率S1Gおよび下部電極層161Bの反射率S1Bを60%以上とすることにより(S1G,S1B≧60%)、やはり緑色光HGおよび青色光HBの色度特性を良好に制御可能である。
【0082】
続いて、本発明の有機ELディスプレイの色度特性と比較例の有機ELディスプレイの色度特性とを再現性の観点において比較したところ、表1に示した結果が得られた。表1は、本発明の有機ELディスプレイおよび比較例の有機ELディスプレイの色度ばらつきを表している。表1では、本発明の有機ELディスプレイ(本発明)のうちの緑色有機EL素子16G(反射率S1G(%)=70%)から放出される緑色光HG(Green)の色度ばらつき(色度ばらつきΔxy)を示していると共に、比較例の有機ELディスプレイ(比較例)のうちの緑色有機EL素子16G(反射率S1G(%)=92%)から放出される緑色光HG(Green)の色度ばらつき(色度ばらつきΔxy)を示している。なお、表1では、参考までに、本発明の有機ELディスプレイ(本発明)のうちの赤色有機EL素子16R(反射率S1R(%)=92%)から放出される赤色光HR(Red)の色度ばらつき(色度ばらつきΔxy)も併せて示している。上記した「緑色光HGの色度ばらつき」とは、緑色有機EL素子16Gの光学的距離LGを変動させるために有機層163の厚さYGを±5%変動させた場合に、その緑色有機EL素子16Bから放出される緑色光HGの色度が変動する範囲である。また、「赤色光HRの色度ばらつき」は、上記した「緑色光HGの色度ばらつき」に対応する赤色光HRの色度の変動範囲である。
【0083】
【表1】

【0084】
表1に示した結果から判るように、本発明の有機ELディスプレイと比較例の有機ELディスプレイとの間において緑色光HGの色度ばらつきΔxyとを比較すると、その緑色光HGの色度ばらつきΔxyは、下部電極層161Gの反射率S1Gが下部電極層161Rの反射率S1Rと同等である比較例の場合(S1G=S1R,Δxy=±0.108)よりも、下部電極層161Gの反射率S1Gが下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さい本発明の場合(S1G<S1R,Δxy=±0.086)において小さくなった。このことは、緑色有機EL素子16Gのうちの下部電極層161Gの反射率S1Gに関して、その反射率S1Gが十分に小さくなると、緑色光HGの色度がばらつきにくくなることを表している。なお、参考までに説明しておくと、本発明の有機ELディスプレイに関する赤色光HRの色度ばらつきΔxy(Δxy=±0.016)は、緑色光HGの色度ばらつきΔxy(Δxy=±0.086)よりも著しく小さくなった。すなわち、緑色光HGの色度ばらつきΔxyが赤色光HRの色度ばらつきΔxyよりも著しく大きくなる傾向があることから明らかなように、赤色光HR、緑色光HGおよび青色光HBの合成光である画像表示用の光Hの色度には、赤色光HRの色度ばらつきΔxyよりも緑色光HGの色度ばらつきΔxyが大きく影響を及ぼす傾向にあるため、その画像表示用の光Hの色度を良好に制御するためには、主に、緑色光HGの色度ばらつきΔxyを可能な限り低減させることが重要であることが導き出される。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、下部電極層161Gの反射率S1Gを下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくすることにより、緑色光HGの色度をばらつきにくくし得ることが確認された。
【0085】
続いて、本発明の有機ELディスプレイの色度特性に関する反射率の詳細な影響を調べたところ、表2に示した結果が得られた。表2は、赤色光HRの色度の反射率依存性を表しており、上部電極層164の「反射率S2」を63%,80%,88%,90%の4段階に渡って変化させた場合における「色度x」および「色度y」を示している。
【0086】
【表2】

【0087】
表2に示した結果から判るように、赤色有機EL素子16Rのうちの上部電極層164の反射率S2を63%から90%まで変化させたところ、色度xおよび色度yはいずれも反射率S2が大きくなるにしたがって連続的に変化し、より具体的には色度xが次第に大きくなると共に、色度yが次第に小さくなった。このことは、反射率S2が変化すると、赤色光HRの色度(色度xおよび色度y)が変化し得ることを表している。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、赤色有機EL素子16Rのうちの上部電極層164の反射率S2を変化させることにより、赤色光HRの色度を制御し得ることが確認された。
【0088】
最後に、表2に示した結果に基づいて、ハーフミラーとして機能する上部電極層164の反射率S2の最適範囲を調べたところ、図12に示した結果が得られた。図12は赤色光HRの色度の反射率依存性を表しており、「横軸」は反射率S2(%)を示し、「縦軸」は赤色光HRの色度yを示している。すなわち、図12に示したグラフは、表2に示した反射率S2および色度yをプロットしたものである。
【0089】
図12に示した結果から判るように、赤色光HRの色度yは、反射率S2が大きくなるにしたがって次第に小さくなり、特に、反射率S2=約88%近傍において偏極点(下降傾きが大きく変化する点)を有するように曲線を描いた。この場合には、赤色光HRの色度特性を確保する上で、色度yの許容範囲が0.36以下であり、さらに色度yの適正範囲が0.35以下であるとすると、反射率S2が約70%以上の範囲(S2≧約70%)において色度yの許容範囲を満たし、さらに反射率S2が約80%以上の範囲(S2≧約80%)において色度yの適正範囲を満たした。このことから、本発明の有機ELディスプレイでは、さらに、上部電極層164の反射率S2を約70%以上(S2≧70%)、好ましくは約80%以上(S2≧80%)とすることにより、赤色光HRの色度特性を確保し得ることが確認された。
【0090】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明の有機発光装置を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、上記したように、緑色有機EL素子16Gのうちの下部電極層161Gの反射率S1Gを赤色有機EL素子16Rのうちの下部電極層161Rの反射率S1Rよりも小さくすることにより、有機発光装置の小型化および高性能化を実現することが可能な限りにおいて、その有機発光装置の構造は自由に変更可能である。
【0091】
具体的には、例えば、上記実施の形態および実施例では、共振特性に寄与する光学的距離LR,LG,LBを赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間において互いに異ならせるために、下部電極層161R,162G,161Bと有機層163との間に、ITOなどの透明導電性材料により構成された透明導電層162R,162G,162Bを設けるようにしたが、必ずしもこれに限られるものではない。具体的には、例えば、透明導電層162R,162G,162Bに代えて、酸化ケイ素(SiO2 )などの絶縁性材料により構成された絶縁層を設けるようにしてもよい。この絶縁層を設けた場合においても、光学的距離LR,LG,LBを赤色有機EL素子16R、緑色有機EL素子16Gおよび青色有機EL素子16Bの間において互いに異ならせるために、厚さDR,DG,DBを互いに異ならせなければならないことは、言うまでもない。この場合においても、上記実施の形態および実施例と同様の効果を得ることができる。
【0092】
また、例えば、上記実施の形態および変形例では、図3に示したように、ホール注入層1631、ホール輸送層1632、発光層1633および電子輸送層1634がこの順に積層された4層構造を有するように有機層163を構成すると共に、赤色発光層1633R、緑色発光層1633Gおよび青色発光層1633Bがこの順に積層された3層構造を有するように発光層1633を構成したが、必ずしもこれに限られるものではなく、それらの有機層163および発光層1633の積層構造(積層数や各層の材料(機能)など)は自由に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る有機発光装置は、例えばビューファインダなどの小型の有機ELディスプレイに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の一実施の形態に係る有機ELディスプレイの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図3】図1に示した有機ELディスプレイのうちの他の主要部(有機層)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図4】図2に示した有機ELディスプレイ(有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る有機ELディスプレイの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図6】図5に示した有機ELディスプレイのうちの主要部(有機EL素子)の断面構成を拡大して模式的に表す断面図である。
【図7】図6に示した有機ELディスプレイ(有機EL素子)の構成に関する変形例を表す断面図である。
【図8】本発明の有機ELディスプレイの色度特性を表す図である。
【図9】本発明の有機ELディスプレイに関する赤色光スペクトルの共振条件依存性を表す図である。
【図10】本発明の有機ELディスプレイに関する赤色光スペクトルの反射率(上部電極層の反射率)依存性を表す図である。
【図11】本発明の有機ELディスプレイに関する赤色光スペクトルの反射率(下部電極層の反射率)依存性を表す図である。
【図12】本発明の有機ELディスプレイに関する赤色光の色度の反射率依存性を表す図である。
【符号の説明】
【0095】
10…駆動パネル、11…駆動用基板、12…TFT、13…層間絶縁層、14…駆動配線、15…平坦化絶縁層、16…有機EL素子、16B…青色有機EL素子、16G…緑色有機EL素子、16R…赤色有機EL素子、17…補助配線、18…層内絶縁層、19…保護層、20…封止パネル、21…封止用基板、30…接着層、161B,161G,161R…下部電極層、162B,162G,162R…透明導電層、163…有機層、164,164B,164G,164R…上部電極層、1631…ホール注入層、1632…ホール輸送層、1633…発光層、1633B…青色発光層、1633G…緑色発光層、1633R…赤色発光層、1634…電子輸送層、DB,JB,KB,YB,DG,JG,KG,YG,DR,JR,KR,YR…厚さ、H…画像表示用の光、HB…青色光、HG…緑色光、HR…赤色光、LB,LG,LR…光学的距離、NB,NG,NR…発光点、PB1,PB2,PG1,PG2,PR1,PR2…端面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と第2の電極層との間に発光層を含む層が設けられた構造を有し、前記発光層から発生した光を前記第1の電極層と前記第2の電極層との間において共振させたのちにその第2の電極層を通じてそれぞれ赤色の光、緑色の光および青色の光として放出する赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子を備え、
前記発光層を含む層が、その発光層から前記赤色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記青色有機発光素子の間において共通の色の光を発生させると共に、それらの赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子により共有されており、
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間の距離が、前記赤色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記青色有機発光素子からそれぞれ放出される光の色に応じて、それらの赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子の間において互いに異なっており、
前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層の反射率が、前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層の反射率よりも小さくなっている
ことを特徴とする有機発光装置。
【請求項2】
前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層および前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層が、互いに同一の材料により構成されていると共に、互いに異なる厚さを有している
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項3】
前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層および前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層が、アルミニウム(Al)、アルミニウムを含む合金、銀(Ag)または銀を含む合金により構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の有機発光装置。
【請求項4】
前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層および前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層が、互いに異なる材料により構成されている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項5】
前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層が、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)またはニッケル(Ni)により構成されており、
前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層が、アルミニウム(Al)、アルミニウムを含む合金、銀(Ag)または銀を含む合金により構成されている
ことを特徴とする請求項4記載の有機発光装置。
【請求項6】
前記第2の電極層が、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された単層構造を有している
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項7】
前記第2の電極層が、互いに異なる材料により構成された積層構造を有している
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項8】
前記第2の電極層が、前記第1の電極層に近い側から順に、マグネシウム(Mg)および銀(Ag)を含む合金により構成された層と、銀または銀を含む合金により構成された層とが積層された2層構造を有している
ことを特徴とする請求項7記載の有機発光装置。
【請求項9】
前記第1の電極層の反射率が、60%以上である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項10】
前記赤色有機発光素子のうちの前記第1の電極層の反射率に対する前記緑色有機発光素子のうちの前記第1の電極層の反射率の差異が、10%以上である
ことを特徴とする請求項9記載の有機発光装置。
【請求項11】
前記第2の電極層の反射率が、50%以上である
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項12】
前記第1の電極層と前記第2の電極層との間の距離が、前記赤色有機発光素子よりも前記緑色有機発光素子において小さくなっている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
【請求項13】
前記赤色有機発光素子、前記緑色有機発光素子および前記青色有機発光素子において、前記第1の電極層と前記第2の電極層との間の距離が下記に示した関係式を満たしている
ことを特徴とする請求項1記載の有機発光装置。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(ただし、「L」は第1の電極層と第2の電極層との間の距離(光学的距離)、「λ」は赤色有機発光素子、緑色有機発光素子および青色有機発光素子からそれぞれ放出される光のスペクトルのピーク波長、「Φ」は発光層から発生した光が第1の電極層および第2の電極層において反射する際に生じる位相シフト、「m」は0または整数をそれぞれ表している。)
【請求項14】
前記赤色有機発光素子において、前記関係式中のmがm=0の条件を満たしている
ことを特徴とする請求項13記載の有機発光装置。
























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−278258(P2006−278258A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99169(P2005−99169)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】