説明

有機粒子とシリカ粒子の凝集体からなる研磨用粒子分散液およびその製造方法

【課題】半導体ウエハ、ガラス製ハードデイスク、アルミナ製ハードデイスクなどを研磨するために用いられる研磨用粒子であって、実用的な研磨速度で使用して、被研磨面でのスクラッチ発生を低減されることができる研磨用粒子。
【解決手段】研磨用粒子が有機系粒子と該有機系粒子と同等以上の大きさの無機粒子との複合粒子(ヘテロ凝集体)を調製し、研磨用粒子とした。この研磨用粒子は、研磨圧が高くなると粒子が変形し、研磨速度を維持して、スクラッチ発生が抑制され、良好な研磨性能を示すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ、ガラス製ハードデイスク、アルミナ製ハードデイスクなどを研磨するために好適な研磨用粒子分散液およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、ガラス製ハードデイスク、アルミナ製ハードデイスクなどを研磨するために用いられる研磨剤として、従来からシリカゾル又はアルミナゾル等の無機系粒子を含む水系分散体が使用されている。しかし、この無機系粒子を含む水系分散体は、凝集塊などの原因により、被研磨面に線状痕(以下、「スクラッチ」ともいう。)が発生することがある。この問題を解決するため、水系分散体に界面活性剤を配合する、フィルタによって粗大粒子を除去する等、各種の方法が提案されている。しかし、これらの方法は研磨剤そのものの改良ではないうえ、研磨速度の低下、金属イオンによる被研磨面の汚損等の問題を生じる場合があった。
【0003】
更に、特許文献1(特開平7−86216号公報)には、無機粒子ではなく、有機高分子化合物等を主成分とする研磨粒子を含む研磨剤により半導体装置の被加工膜を研磨する方法が開示されている。この方法によれば、研磨後、被研磨面に残留する研磨粒子を燃焼させ、除去することができ、残留する粒子による半導体装置等、製品の不良の発生を抑えることができる。しかし、有機高分子化合物からなる粒子は、シリカ、アルミナ等の無機粒子に比べて硬度が低いため、研磨速度を増大させ難いという問題がある。
【0004】
特許文献2(特公平6−40951号公報)には、ゼータ電位が逆符号である粒子を混合することにより複合粒子を製造する方法が開示されている。しかし、この方法では、各粒子は静電的な力のみで付着しているため、複合粒子に大きな剪断応力が加わった場合など、粒子が分離してしまう可能性がある。
【0005】
特許文献3(特開2001−152135号公報)には、重合体粒子の水系分散体Aと無機粒子の水系分散体Bとを、上記重合体粒子のゼータ電位と上記無機粒子のゼータ電位とが同符号となるpH域で混合して、上記重合体粒子及び上記無機粒子を含有する水系分散体Cを調製した後、上記水系分散体CのpHを、上記重合体粒子のゼータ電位と上記無機粒子のゼータ電位とが逆符号となるように変化させ、上記重合体粒子と上記無機粒子とからなる複合粒子を形成することを特徴とする化学機械研磨用水系分散体の製造方法が開示されている。この製造方法で得られる研磨用粒子は、重合体粒子表面に多数の無機粒子が付着し、被覆層が形成されることを目的とするものであり、無機粒子が重合体粒子より大きい場合は、スクラッチが発生しやすくなるなど、好ましくない旨の記載がある。
【0006】
特許文献4(特開平11−114808号公報)には、母粒子の表面に子粒子が担持さ
れた複合研磨材を砥粒として添加しスラリーとして分散させた研磨材を用いることにより、ガラス素材や半導体デバイスなどの研磨に関し、汚染物質を含まず、現行のシリカ研磨材と同等の表面加工状態を維持し、且つシリカ研磨材より、研磨速度を向上させることが出来る旨が記載されている。この研磨材は、有機樹脂からなる母粒子にシリカなどの子粒子が付着してなる構造をとるものである。
【0007】
特許文献5(特開2002−97456号公報)には、母粒子、及びこの母粒子の表面に複数付着固定した子粒子、から成る研磨粒子であって、母粒子として、弾性を有する平均粒径1〜100μmの球状ポリマー粒子が使用され、子粒子として、母粒子の平均粒径の1/500〜1/10の平均粒径の硬質の粒子から選択されるシリカなどが使用される研磨粒子に関する発明が開示されている。この研磨粒子も、特許文献4と同様に有機樹脂からなる母粒子にシリカなどの子粒子が付着してなる構造をとるものである。
【0008】
以上の特許文献にあるような研磨用粒子が提案されてきたものの、更にスクラッチの発生を抑止できる研磨用粒子が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−86216号
【特許文献2】特公平6−40951号
【特許文献3】特開2001−152135号
【特許文献4】特開平11−114808号
【特許文献5】特開2002−97456号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、有機系粒子と、該有機粒子と同等以上の大きさのシリカ粒子からなる凝集体が分散媒に分散してなる研磨用粒子分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願に係る第1の発明は、シリカ粒子と有機系粒子の凝集体からなる平均粒子径(Dm)10〜300nmの研磨用粒子が分散媒に分散してなる研磨用粒子分散液であって、次の条件を満たすことを特徴とするものである。
(1)前記シリカ粒子の平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲
(2)前記有機系粒子の平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲
(3)(Da)/(Db)の値が1.0〜3.0の範囲
【0012】
本出願における第2の発明は、前記研磨用粒子におけるシリカ粒子と有機系粒子の質量比が100:1〜100:50の範囲である前記研磨用粒子分散液である。
【0013】
本出願に係る第3の発明は、前記有機系粒子が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂またはこれらの共重合体から選ばれるものである前記研磨用粒子分散液である。
【0014】
本出願に係る第4の発明は、前記研磨用粒子分散液と、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤からなる群より選ばれる添加剤1種以上、とを含む研磨剤組成物である。
【0015】
本出願に係る第5の発明は、下記(a)のシリカ粒子分散液100質量部(固形分換算)と、下記(b)の有機系粒子分散液1〜50質量部(固形分換算)とを、それぞれのゼータ電位の差が10mV以上になるpH範囲にて混合し、5〜70℃の範囲で保持することにより、ヘテロ凝集させてなる研磨用粒子分散液の製造方法である。
(a)平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲にあり、ゼータ電位(Za)が−20〜−60mVの範囲にあるシリカ粒子が分散媒に分散してなるシリカ粒子分散液(固形分濃度10〜40質量%)
(b)平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲にあり、ゼータ電位(Zb)が−3〜−30mVの範囲にある有機系粒子が分散媒に分散してなる有機系粒子分散液(固形分濃度1〜20質量%)(ただし、(Da)/(Db)=1.0〜3.0の範囲に限る)
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る研磨用粒子分散液においては、研磨用粒子が有機系粒子と該有機系粒子と同等以上の大きさの無機粒子との凝集体(ヘテロ凝集体)のために、研磨圧が高くなると粒子が変形し、研磨速度を維持して、スクラッチ発生が抑制され、良好な研磨性能を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(1)研磨用粒子分散液
本発明に係る研磨用粒子分散液は、有機系粒子と、該有機系粒子と同等以上の大きさのシリカ粒子との凝集体(ヘテロ凝集体)が分散媒に分散してなるものであり、より具体的には、シリカ粒子と有機系粒子の凝集体からなる平均粒子径(Dm)10〜300nmの研磨用粒子が分散媒に分散してなる研磨用粒子分散液であって、次の条件を満たすことを特徴とするものである。
(1)前記シリカ粒子の平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲
(2)前記有機系粒子の平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲
(3)(Da)/(Db)の値が1.0〜3.0の範囲
【0018】
前記研磨用粒子の平均粒子径は、画像解析法により測定された平均粒子径が10〜300nmの範囲であることが望ましい。平均粒子径が10nm未満の場合は、実用的な研磨速度が得られない場合がある。平均粒子径が300nmを超える場合については、本発明に係る製造方法によって調製することが容易ではない場合がある。前記研磨用粒子径の平均粒子径は、好適には50〜290nm、更に好適には70〜260nmの範囲が推奨される。
【0019】
前記シリカ粒子と有機系粒子の大きさの関係については、前記(1)、(2)及び(3)の関係を満たしていることが必要となる。特に有機系粒子はシリカ粒子と同等以上、3倍以内の範囲にあることが望ましい。この範囲にある場合は、前記研磨用粒子が研磨処理時に、研磨布などから受ける荷重により変形するため、被研磨面でのスクラッチ発生を抑止することができる。ただし、(Da)/(Db)の値が3.0を超える場合は、シリカ粒子の割合が過剰となり、本発明の効果が生じ難くなる傾向がある。前記(Da)/(Db)の範囲としては、1.5〜2.5の範囲がより好ましく、さらに1.6〜2.0の範囲がより好ましい。1.0を下回る場合には目的とする研磨性能が得られない。
【0020】
前記シリカ粒子の平均粒子径(Da)の範囲(15〜240nm)と(2)前記有機系粒子の平均粒子径(Db)の範囲(5〜80nm)は、前記(Da)/(Db)の範囲(1.0〜3.0)及び研磨用粒子の平均粒子径範囲(10〜300nm)に見合ために必要とされるものである。シリカ粒子の平均粒子径(Da)が15nm未満の場合は、そのような研磨用粒子を使用した場合、研磨速度が低下する傾向がある。同じく(Da)が240nmを超える場合は、そのような研磨用粒子を使用した場合、被研磨面でのスクラッチ発生が増大する傾向がある。
【0021】
有機系粒子の平均粒子径(Db)が5nm未満の場合、そのような研磨用粒子は、実用的な研磨速度が得にくい傾向がある。同じく(Db)が80nmを超える場合は、ヘテロ凝集が生じ難い場合がある。
【0022】
前記研磨用粒子においては、シリカ粒子と有機系粒子との質量比が100:1〜100:50の範囲にあることが望ましい。後記する本発明に係る研磨用粒子分散液の製造方法においては、原料として使用されるシリカ粒子と有機系粒子は、ゼータ電位の差が10mV以上となるようなpH範囲で混合されるので、投入した全量がヘテロ凝集により凝集体を形成することができる。前記研磨用粒子においては、シリカ粒子100質量部に対する、有機系粒子との質量比が1質量部未満の場合は、凝集体の生成は極めて僅かであり、研磨速度及びスクラッチ発生抑止に関する性能改善は見られない。シリカ粒子100質量部に対する、有機系粒子との質量比が50質量部を超える場合は、シリカに対して、比重の大きい有機系粒子の割合が過剰となり、研磨速度が低下する傾向となる。シリカ粒子と有機系粒子との質量比は、好適には100:15〜100:45の範囲がより好ましく、100:20〜100:40の範囲がさらに好ましい。
本発明に係る研磨用粒子分散液の固形分濃度は、格別に制限されるものではないが、通常は、0.5〜50質量%の範囲が推奨される。研磨処理の効率を重視した場合は、3〜30質量%の範囲が推奨される。
【0023】
シリカ粒子
本発明に使用されるシリカ粒子としては、画像解析法により測定される平均粒子径が15〜240nmの範囲の公知のシリカ粒子を使用することができる。該シリカ粒子は、本発明に係る製造方法においては、シリカ濃度1〜50質量%の範囲のシリカ粒子分散液として使用される。このようなシリカ粒子分散液の調製方法としては、次の(1)〜(4)の製造方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
(1)アルカリ金属珪酸塩、第3級アンモニウム珪酸塩、第4級アンモニウム珪酸塩またはグアニジン珪酸塩から選ばれる水溶性珪酸塩を、脱アルカリすることにより得られる珪酸液をアルカリ存在下で加熱することにより珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法の例としては、珪酸アルカリ水溶液をシリカ濃度3〜10重量%に水で希釈し、次いでH型強酸性陽イオン交換樹脂に接触させて脱アルカリし、必要に応じてOH型強塩基性陰イオン交換樹脂に接触させて脱アニオンし、活性珪酸を調製する。pHが8以上となるようアルカリ物質を加え、50℃以上に加熱することにより平均粒子径60nm以下のシリカゾルを製造する方法を挙げることができる。
【0025】
(2)核粒子分散液に酸性珪酸液を添加することにより、核粒子の粒子成長を行うシリカゾルの製造方法
この製造方法において、核粒子分散液としては、核粒子として機能すれば特に制限はなく従来公知のシリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア、シリカ−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−セリア、シリカ−チタニア等の微粒子の分散液を用いることができる。なかでも、本願出願人による特開平5−132309号公報、特開平7−105522号公報等に開示したシリカゾル、シリカ系複合酸化物ゾルは粒子径分布が均一であり、均一な粒子径分布の研磨用シリカ粒子が得られるので好ましい。
【0026】
核粒子分散液には酸性珪酸液の添加前に珪酸アルカリが加えられていることが好ましい。珪酸アルカリが添加されていると、次に粒子成長用の酸性珪酸液を加える際に、分散媒中に溶解したSiO濃度が予め高くされているので核粒子への珪酸の析出が早く起こり、また分散液のpHを概ね8〜12、好ましくは9.5〜11.5に調整することができる。此処で用いる珪酸アルカリとしては、ケイ酸カリウム(カリ水硝子)等、ケイ酸ナトリウム(ナトリウム水硝子)以外の珪酸アルカリあるいは4級アミンなど有機塩基にシリカを溶解した溶液を用いることが好ましい。また、必要に応じてNaOH以外のアルカリ金属水酸化物、アンモニウム、4級アンモニウムハイドライドを添加することができる。さらにMg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)等のアルカリ金属水酸化物なども好適に用いることができる。
【0027】
予め核粒子が分散していなくても、珪酸アルカリ水溶液に後述する酸性珪酸液を加えていくとシリカ濃度が高くなったところで核粒子が発生するので、このような核粒子分散液も好適に用いることができる。核粒子分散液の濃度は核粒子の大きさによっても異なるが、SiOとして0.005〜20重量%、さらには0.01〜10重量%の範囲にあることが好ましい。
【0028】
核粒子の濃度が0.005重量%未満の場合は、粒子成長を行うために温度を高めた場合核粒子の一部または全部が溶解することがあり、核粒子の全部が溶解すると核粒子分散液を用いる効果が得られず、核粒子の一部が溶解した場合は得られるシリカ粒子の粒子径が不均一になる傾向があり、同様に核粒子分散液を用いる効果が得られないことがある。一方、核粒子の濃度が20重量%を越えると、核粒子当たりの酸性珪酸液の添加割合を低濃度の場合と同一にするには珪酸液の添加速度を速めることになるが、この場合、酸性珪酸液の核粒子表面への析出が追随できず、酸性珪酸液がゲル化することがある。
核粒子の平均粒子径は前記したシリカ粒子が得られれば、特に制限はない。
【0029】
(3)珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加した後、加熱することによりシリカヒドロゲルを解膠する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法は解膠法と呼ばれるもので、通常は、珪酸塩の水溶液を酸で中和して、シリカヒドロゲルを調製し、化学的手段または機械的な手段にて、シリカヒドロゲルをスラリー状ないしは分散溶液にする方法として知られている。
ここで、化学的手段としては、シリカヒドロゲルにアルカリを添加し、所望により加熱する方法が挙げられる。また、機械的手段としては、攪拌器などの装置を使用する方法を挙げることができる。これらの化学的手段と機械的な手段は併用されても差し支えない。
【0030】
具体的には、珪酸塩を酸で中和して得られるシリカヒドロゲルを洗浄して、塩類を除去し、アルカリを添加し、60〜200℃の範囲に加熱することにより、シリカヒドロゲルを解膠して、シリカゾルを調製する。
この製造方法で原料として使用する珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、アンモニウム珪酸塩および有機塩基の珪酸塩から選ばれる1種または2種以上の珪酸塩が好ましい。アルカリ金属珪酸塩としては、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが有機塩基としては、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類を挙げることができ、アンモニウムの珪酸塩または有機塩基の珪酸塩には、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、アミン化合物などを添加したアルカリ性溶液も含まれる。
【0031】
(4)加水分解性基を有する珪素化合物を加水分解して、得られた珪酸を重合する工程を含むシリカゾルの製造方法
この製造方法の例としては、シ−ド粒子が分散された水−有機溶媒系分散液にテトラエトキシシランを添加して該テトラエトキシシランを加水分解し、前記シ−ド粒子上にシリカを付着させて粒子成長を行わせて単分散したシリカ粒子を製造する方法などが知られている。
原料となるシリカ系ゾルの固形分濃度については、10〜50質量%の範囲のものが使用される。
また、シリカ系ゾルについては単分散状態にあるものが、後の工程で粒子径を均一化させる上で好ましい。なお、原料として市販のシリカゾルを適用することも勿論可能である。その場合、市販品はシリカ濃度20〜50%の高濃度のものを使用するのが経済的である。また、使用前に、所望により、イオン交換、濾過、濃度調整などを行っても良い。
【0032】
有機系粒子
本発明に使用される有機系粒子は、画像解析法による平均粒子径が5〜80nmの範囲の有機系樹脂からなる粒子である。有機系樹脂の種類については、格別に制限されるものではないが、通常は、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂またはこれらの共重合体から選ばれるものが好適に使用される。
【0033】
製造方法
本発明に係る研磨用粒子分散液の製造方法は、下記(a)のシリカ粒子分散液100質量部(固形分換算)と、下記(b)の有機系粒子分散液1〜50質量部(固形分換算)とを、それぞれのゼータ電位の差が10mV以上になるpH範囲にて混合し、5〜70℃の範囲で保持することにより、ヘテロ凝集させることを特徴とする。
(a)平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲にあり、ゼータ電位(Za)が−20〜−60mVの範囲にあるシリカ粒子が分散媒に分散してなるシリカ粒子分散液(固形分濃度10〜40質量%)
(b)平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲にあり、ゼータ電位(Zb)が−3〜−30mVの範囲にある有機系粒子が分散媒に分散してなる有機系粒子分散液(固形分濃度1〜20質量%)(ただし、(Da)/(Db)=1.0〜3.0の範囲に限る)
【0034】
具体的には、シリカ濃度1〜50質量%のシリカ粒子分散液を必要に応じてイオン交換水又は純水で希釈し、シリカ濃度を10質量%以下に調整する。また、固形分濃度1〜50質量%の有機系粒子分散液を必要に応じてイオン交換水又は純水で希釈し、シリカ濃度を10質量%以下に調整する。
【0035】
次に希釈したシリカ粒子分散液及び有機系粒子分散液のpHを変えて、それぞれゼータ電位を測定し、同じpH値において、両分散液のゼータ電位の差が10mV以上となるpHを見出す。そして、シリカ粒子分散液及び有機系粒子分散液それぞれのpHをゼータ電位差が10mV以上となるように調整する。pH調整には、酸又は塩基を使用するが、通常、酸性側に調整するため、塩酸を使用することが好ましい。
【0036】
pH調整を行ったシリカ粒子分散液及び有機系粒子分散液を5〜70℃に保持し、両分散液を混合する。混合操作については、急激な混合よりは、徐々に混合することが好ましい。通常は、10分〜60分かけて混合することが望ましい。この操作により、シリカ粒子と有機系粒子のヘテロ凝集が生じ、本発明に係る研磨用粒子分散液が生成する。
なお、シリカ粒子分散液と有機系粒子分散液の配合割合は、本質的に目的とする研磨用粒子分散液中のそれぞれの成分割合に対応するものである。
前記シリカ粒子分散液のゼータ電位範囲については、通常のシリカ粒子分散液のゼータ電位範囲が対応するものといえる。また、前記有機系粒子分散液のゼータ電位範囲についても、通常の有機系粒子分散液のゼータ電位範囲が対応するものといえる。
【0037】
研磨剤組成物
本発明に係る研磨用粒子分散液は、それ自体で研摩剤として使用可能なものであるが、所望により、添加剤として、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤からなる群より選ばれる添加剤1種以上を添加して使用しても構わない。前記研磨用粒子分散液にこれらの成分を添加して得られる混合物を本発明においては、「研磨用組成物」と呼称する。
【0038】
研磨促進剤
本発明に係る研磨剤組成物には、被研磨材の種類によっても異なるが、必要に応じて従来公知の研磨促進剤を使用することができる。この様な例としては、過酸化水素、過酢酸、過酸化尿素などおよびこれらの混合物を挙げることができる。このような過酸化水素等の研磨促進剤を含む研磨剤組成物を用いると、被研磨材が金属の場合には効果的に研磨速度を向上させることができる。
【0039】
研磨促進剤の別の例としては、硫酸、硝酸、リン酸、シュウ酸、フッ酸等の酸、あるいはこれら酸のナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの研磨促進剤を含む研磨用組成物の場合、複合成分からなる被研磨材を研磨する際に、被研磨材の特定の成分についての研磨速度を促進することにより、最終的に平坦な研磨面を得ることができる。
【0040】
本発明に係る研磨剤組成物が研磨促進剤を含有する場合、その含有量としては、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。界面活性剤及び/又は親水性化合物研磨用組成物の分散性や安定性を向上させるためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系の界面活性剤または親水性化合物を添加することができる。
【0041】
界面活性剤と親水性化合物は、いずれも被研磨面への接触角を低下させる作用を有し、均一な研磨を促す作用を有する。界面活性剤及び/又は親水性化合物としては、例えば、以下の群から選ばれるものを使用することができる。
【0042】
陰イオン界面活性剤として、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩が挙げられ、カルボン酸塩として、石鹸、N−アシルアミノ酸塩、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド;スルホン酸塩として、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼン及びアルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩;硫酸エステル塩として、硫酸化油、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテル硫酸塩、アルキルアミド硫酸塩;リン酸エステル塩として、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンアルキルアリルエーテルリン酸塩を挙げることができる。
【0043】
陽イオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩;両性界面活性剤として、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン、レシチン、アルキルアミンオキサイドを挙げることができる。
【0044】
非イオン界面活性剤として、エーテル型、エーテルエステル型、エステル型、含窒素型が挙げられ、エーテル型として、ポリオキシエチレンアルキルおよびアルキルフェニルエーテル、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが挙げられ、エーテルエステル型として、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテル、エステル型として、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ポリグリセリンエステル、ソルビタンエステル、プロピレングリコールエステル、ショ糖エステル、含窒素型として、脂肪酸アルカノ
ールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が例示される。その他に、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0045】
界面活性剤としては陰イオン界面活性剤もしくはノ非イオン系界面活性剤が好ましく、また、塩としては、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が挙げられ、特にアンモニウム塩およびカリウム塩が好ましい。
【0046】
さらに、親水性化合物等としては、グリセリンエステル、ソルビタンエステルおよびアラニンエチルエステル等のエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリエチレングリコール、アルキルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリエチレングリコール、アルケニルポリエチレングリコールアルキルエーテル、アルケニルポリエチレングリコールアルケニルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルキルポリプロピレングリコール、アルキルポリプロピレングリコールアルキルエーテル、アルキルポリプロピレングリコールアルケニルエーテル、アルケニルポリプロピレングリコール等のエーテル;アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、カードラン及びプルラン等の多糖類;グリシンアンモニウム塩及びグリシンナトリウム塩等のアミノ酸塩;ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、ポリリシン、ポリリンゴ酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸アンモニウム塩、ポリメタクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリフマル酸、ポリ(p−スチレンカルボン酸)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、アミノポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アンモニウム塩、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリアミド酸、ポリアミド酸アンモニウム塩、ポリアミド酸ナトリウム塩及びポリグリオキシル酸等のポリカルボン酸及びその塩;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン及びポリアクロレイン等のビニル系ポリマ;メチルタウリン酸アンモニウム塩、メチルタウリン酸ナトリウム塩、硫酸メチルナトリウム塩、硫酸エチルアンモニウム塩、硫酸ブチルアンモニウム塩、ビニルスルホン酸ナトリウム塩、1−アリルスルホン酸ナトリウム塩、2−アリルスルホン酸ナトリウム塩、メトキシメチルスルホン酸ナトリウム塩、エトキシメチルスルホン酸アンモニウム塩、3−エトキシプロピルスルホン酸ナトリウム塩等のスルホン酸及びその塩;プロピオンアミド、アクリルアミド、メチル尿素、ニコチンアミド、コハク酸アミド及びスルファニルアミド等のアミド等を挙げることができる。
【0047】
なお、適用する被研磨基材がガラス基板等である場合は何れの界面活性剤であっても好適に使用できるが、半導体集積回路用シリコン基板などの場合であって、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはハロゲン化物等による汚染の影響を嫌う場合にあっては、酸もしくはそのアンモニウム塩系の界面活性剤を使用することが望ましい。
【0048】
本発明に係る研磨用組成物が界面活性剤及び/又は親水性化合物を含有する場合、その含有量は、総量として、研磨用組成物の1L中、0.001〜10gとすることが好ましく、0.01〜5gとすることがより好ましく0.1〜3gとすることが特に好ましい。
【0049】
界面活性剤及び/又は親水性化合物の含有量は、充分な効果を得る上で、研磨用組成物の1L中、0.001g以上が好ましく、研磨速度低下防止の点から10g以下が好ましい。
界面活性剤または親水性化合物は1種のみでもよいし、2種以上を使用してもよく、異なる種類のものを併用することもできる。
【0050】
複素環化合物
本発明の研磨剤組成物については、被研磨基材に金属が含まれる場合に、金属に不動態層または溶解抑制層を形成させて、被研磨基材の侵食を抑制する目的で、複素環化合物を含有させても構わない。ここで、「複素環化合物」とはヘテロ原子を1個以上含んだ複素環を有する化合物である。ヘテロ原子とは、炭素原子又は水素原子以外の原子を意味する。複素環とはヘテロ原子を少なくとも一つ持つ環状化合物を意味する。ヘテロ原子は複素環の環系の構成部分を形成する原子のみを意味し、環系に対して外部に位置していたり、少なくとも一つの非共役単結合により環系から分離していたり、環系のさらなる置換基の一部分であるような原子は意味しない。ヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。複素環化合物の例として、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾチアゾール、テトラゾールなどを用いることができる。より具体的には、1,2,3,4−テトラゾール、5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール、5−メチル−1,2,3,4−テトラゾール、1,2,3−トリアゾール、4−アミノ−1,2,3−トリアゾール、4,5−ジアミノ−1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾールなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明に係る研磨剤組成物に複素環化合物を配合する場合の含有量については、0.001〜1.0質量%であることが好ましく、0.001〜0.7質量%であることがより好ましく、0.002〜0.4質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
pH調整剤
上記各添加剤の効果を高めるためなどに必要に応じて酸または塩基を添加して研磨用組成物のpHを調節することができる。
【0053】
研磨剤組成物をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものを使用する。望ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが使用される。
【0054】
研磨剤組成物をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが使用される。例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類が使用される。
【0055】
pH緩衝剤
研磨剤組成物のpH値を一定に保持するために、pH緩衝剤を使用しても構わない。pH緩衝剤としては、例えば、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和物などのリン酸塩及びホウ酸塩または有機酸などを使用することができる。
【0056】
溶媒
本発明に係る研磨剤組成物については、必要に応じて溶媒を用いることができる。溶媒としては通常、水を用いるが、必要に応じてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を用いることができ、他にエーテル類、エステル類、ケトン類など水溶性の有機溶媒を用いることができる。また、水と有機溶媒からなる混合溶媒であっても構わない。
【0057】
研磨用粒子の濃度
研磨剤組成物中の研磨用粒子の濃度は2〜50重量%、さらには5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。濃度が2重量%未満の場合は、基材や絶縁膜の種類によっては濃度が低すぎて研磨速度が遅く生産性が問題となることがある。シリカ粒子の濃度が50重量%を越えると研磨材の安定性が不充分となり、研磨速度や研磨効率がさらに向上することもなく、また研磨処理のために分散液を供給する工程で乾燥物が生成して付着することがあり傷(スクラッチ)発生の原因となることがある。
【実施例】
【0058】
本発明の実施例および比較例に適用した測定方法または算定方法を以下に記す。
[1]画像解析による平均粒子径の測定方法
透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、H−800)により、シリカ微粒子分散液、有機系微粒子分散液又は有機無機凝集粒子分散液を倍率25万倍で写真撮影して得られる写真投影図における、任意の50個の粒子について、その最大径を測定し、その平均値を平均粒子径とした。
本明細書においては、シリカ微粒子分散液におけるシリカ微粒子の平均粒子径をDa、有機系微粒子分散液における有機系微粒子の平均粒子径をDb、研磨用粒子分散液における研磨用粒子の平均粒子径をDmとした。
【0059】
[2]ゼーター電位測定
超音波方式ゼータ電位測定装置(MAtec社製、ESA8000)にて測定した。測定条件としては、予め希釈塩酸水溶液でシリカ微粒子分散液、有機系微粒子分散液又は有機無機凝集粒子分散液のpHを5に調整し、各分散液の固形分濃度を5質量%、温度を25℃にして、ゼータ電位を測定した。
【0060】
[3]pH測定
pHの測定については、pH4、7および9の標準液で更正が完了した株式会社堀場製
作所製のpHメータF22のガラス電極を挿入して、室温にて実施した。
【0061】
[4]質量比測定
研磨用粒子におけるシリカ粒子と有機系粒子の質量比は、研磨用粒子分散液(固形分30質量%)100gを用意し、200℃で2時間乾燥させ、測定用試料とした。この測定用試料の質量(a)を秤量した後、電気炉にて600℃で2時間焼成して、有機樹脂成分を除去し、冷却後に残った試料の質量(b)を測定した。(a)/(b)×100の値を算定し、この値を研磨用粒子中のシリカ粒子の割合(質量%)とし、100−[(a)/(b)×100]を研磨用粒子中の有機系粒子の割合(質量%)とした。
【0062】
[5]研磨特性の評価方法
研磨用組成物
各実施例および各比較例で得た有機無機凝集粒子分散液の固形分濃度を12質量%に調整し、10%水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを10に調整し、研磨用組成物とした。
被研磨基板
被研磨基板として、アルミニウムデイスク用基板を使用した。このアルミニウムデイスク用基板は、アルミニウム基板にNi−Pを10μmの厚さに無電解メッキ(Ni88%とP12%の組成の硬質Ni−Pメッキ層)をした基板(95mmΦ/25mmΦ−1.27mmt)である。なお、この基板は一次研磨済みで、表面粗さ(RA)は0.17nmであった。
研磨試験
上記被研磨基板を研磨装置(ナノファクター(株)製:NF300)にセットし、研磨パッド(ロデール社製「アポロン」)を使用し、基板荷重0.05MPA、テーブル回転速度30rpmで研磨用スラリーを20g/分の速度で5分間供給して研磨を行った。
研磨前後の被研磨基材の重量変化を求めて研磨速度〔nm/分〕を計算した。
スクラッチ(線状痕)の測定
スクラッチの発生状況については、アルミニウムディスク用基板を上記と同様に研磨処理した後、超微細欠陥・可視化マクロ装置(VISION PSYTEC社製、製品名:Micro−MAX)を使用し、Zoom15にて全面観察し、65.97cmに相当
する研磨処理された基板表面に存在するスクラッチ(線状痕)の個数を数えて合計した。
【0063】
実施例1
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
三井化学ポリウレタン(株)製のタケラックW−5030(ポリウレタン40%濃度、粒子径:50nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−20mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は250nmであった。以下、表1に各実施例の、及び表2に各比較例の、各数値及び研磨試験結果を示した。
【0064】
実施例2
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は−50mVであった。
ポリウレタン樹脂製粒子分散液(固形分40%濃度、粒子径:30nm)30gとイオン交換水970gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−20mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は250nmであった。
【0065】
実施例3
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン樹脂製粒子分散液(固形分40%質量%、粒子径:25nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−25mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は260nmであった。
【0066】
実施例4
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度30質量%、平均粒子径[画像解析法]10nm、カタロイド[登録商標]Si−30、日揮触媒化成株式会社製)133gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−30mVであった。
アクリル樹脂製粒子分散液(固形分40%濃度、粒子径:10nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−15mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は70nmであった。
【0067】
実施例5
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度40質量%、平均粒子径[画像解析法]30nm、カタロイド[登録商標]Si−50、日揮触媒化成株式会社製)100gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−41mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:30nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−11mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法は120nmであった。
【0068】
比較例1
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:5nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−20mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は65nmであった。比較例1のものは、研磨速度が遅いという難点がある。
【0069】
比較例2
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:250nm)30gとイオン交換水970gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−30mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は280nmであった。比較例2のものを用いた研磨面は線状痕が多く発生する。
【0070】
比較例3
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:50nm)0.01gとイオン交換水999.99gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−30mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は51nmであった。比較例3のものは、研磨速度があまり上がらないうえに線状痕もかなり発生する。
【0071】
比較例4
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:50nm)70gとイオン交換水930gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−30mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は280nmであった。比較例4のものは、研磨速度を上げることができない。
【0072】
比較例5
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:50nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−45mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は50nmであった。比較例5のものは、研磨速度を上げることができない。
【0073】
比較例6
シリカ微粒子分散液(シリカ濃度48質量%、平均粒子径[画像解析法]50nm、カタロイド[登録商標]Si−45P、日揮触媒化成株式会社製)83gとイオン交換水900gを室温で30分間かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、A液を調製した。ゼーター電位は、−50mVであった。
ポリウレタン製樹脂粒子分散液(固形分40質量%、粒子径:50nm)20gとイオン交換水980gを室温で30分かけて混合し、混合液を調製した。この混合液のpHが5.0になるように塩酸(濃度5%)を添加して、B液を調製した。ゼーター電位は、−30mVであった。
上記のA液とB液をそれぞれ加温して温度55℃とし、30分間かけて混合して、有機無機複合粒子分散液を調製した。この有機無機複合粒子分散液は、限外濾過膜にて、400gとなるまで濃縮した。得られた分散液の固形分濃度は12質量%で、平均粒子径[画像解析法]は460nmであった。比較例6では線状痕が多数発生した。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る研磨用粒子分散液または研磨用組成物は、半導体ウエハ、ガラス製ハード
デイスク、アルミナ製ハードデイスクなどの研磨用途に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ粒子と有機系粒子の凝集体からなる平均粒子径(Dm)10〜300nmの研磨用粒子が分散媒に分散してなる研磨用粒子分散液であって、次の(1)〜(3)の条件を満たすことを特徴とする研磨用粒子分散液。
(1)前記シリカ粒子の平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲
(2)前記有機系粒子の平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲
(3)(Da)/(Db)の値が1.0〜3.0の範囲
【請求項2】
前記研磨用粒子におけるシリカ粒子と有機系粒子の質量比が100:1〜100:50の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の研磨用粒子分散液。
【請求項3】
前記有機系粒子が、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂またはこれらの共重合体から選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の研磨用粒子分散液。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3記載の研磨用粒子分散液と、研磨促進剤、界面活性剤、複素環化合物、pH調整剤およびpH緩衝剤からなる群より選ばれる添加剤1種以上、とを含むことを特徴とする研磨剤組成物。
【請求項5】
下記(a)のシリカ粒子分散液100質量部(固形分換算)と、下記(b)の有機系粒子分散液1〜50質量部(固形分換算)とを、それぞれのゼータ電位の差が10mV以上になるpH範囲にて混合し、5〜70℃の範囲で保持することにより、ヘテロ凝集させることを特徴とする研磨用粒子分散液の製造方法。
(a)平均粒子径(Da)が15〜240nmの範囲にあり、ゼータ電位(Za)が−20〜−60mVの範囲にあるシリカ粒子が分散媒に分散してなるシリカ粒子分散液(固形分濃度10〜40質量%)
(b)平均粒子径(Db)が5〜80nmの範囲にあり、ゼータ電位(Zb)が−3〜−30mVの範囲にある有機系粒子が分散媒に分散してなる有機系粒子分散液(固形分濃度1〜20質量%)(ただし、(Da)/(Db)=1.0〜3.0の範囲に限る)

【公開番号】特開2011−136402(P2011−136402A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298601(P2009−298601)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】