説明

有機系の廃棄物及び排水の総合処理システム

【課題】事業所から発生する有機系の廃棄物と排水を総合的に処理でき、回収した固形分は有価物として再利用できる総合処理システムの提供を目的とする。
【解決手段】有機系排水を受水し、高含水率固形分を沈殿分離する沈殿分離装置と、沈殿分離した高含水率固形分の移送手段と、移送された高含水率固形分を乾燥減容処理する減容装置とを備え、前記減容装置は撹拌手段と低酸素過熱水蒸気の噴射手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は食品加工工場、スーパー等の事業所から発生する有機系廃棄物と有機系排水を総合的に処理できる処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場や食品を取り扱うスーパー等の事業所からは多量の食品残渣と排水が発生する。
食品残渣はいわゆる生ゴミと称され、含水率が80%以上と非常に高く、焼却処理できない。
また、大量の有機系排水はBOD値が1000mg/l以上に高い場合も多く、排水処理設備が大型になり、そのコスト負担が大変であった。
一般的な従来の排水処理方法では、排水中に含まれている有機物を回収するのに凝固沈殿薬剤を用いる場合が多く、コストアップの原因のみならず環境負荷がさらに大きくなる問題があった。
特許文献1には、過熱蒸気を用いた含水有機汚泥の乾燥装置を開示するが、有機系排水の処理システムに組み込まれたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−214319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は事業所から発生する有機系の廃棄物と排水を総合的に処理でき、回収した固形分は有価物として再利用できる総合処理システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る有機系排水の処理システムは、有機系排水を受水し、高含水率固形分を沈殿分離する沈殿分離装置と、沈殿分離した高含水率固形分の移送手段と、移送された高含水率固形分を乾燥減容処理する減容装置とを備え、前記減容装置は撹拌手段と低酸素過熱水蒸気の噴射手段とを有することを特徴とする。
また、事業所から発生する生ゴミと、前記沈殿分離により得られた高含水率固形分とを合せて減容装置に投入可能である。
さらには、沈殿分離装置にて発生した有機系浮遊物を前記減容装置に移送する移送手段を有することで、浮遊性の有機物も回収処理することができる。
【0006】
ここで高含水率固形分とは、水分率が80%以上のものをいい、特に90%以上、95%以上の水分率のものも処理できる。
また、固形分の乾燥に低酸素過熱蒸気を用いたので乾燥のみならず、炭化処理まで可能である。
低酸素とは250〜500℃の乾燥した過熱蒸気を噴射することで、酸素濃度が約12%以下の還元性雰囲気を作り出すことをいう。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る有機系排水の処理システムにあっては、水分率が非常に高いヘドロ状あるいはシャーベット状の固形分でも乾燥減容できるので、沈殿分離にて薬剤を全く必要としない。
また、沈殿分離した固形分と生ゴミとの混合物であっても乾燥減容処理でき、乾燥した固形分はバイオ燃料、堆肥の原料、さらには炭化状態まで処理することで土壌改良材等、多用途に適したリサイクル資源として活用できる。
本システムを構成する設備はコンパクトであるため、事業所が所有している既設の排水処理設備の中に組み込むこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る処理システムの構成図を示す。
【図2】減容装置の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る処理システムの構成例を図1,2に基づいて以下説明する。
本システムの特徴は、沈殿分離装置10と低酸素過熱蒸気を用いた減容装置20とを組み合せた点にある。
【0010】
図1にて排水のフローを点線で示し、固形分のフローを実線で示した。
食品加工工場やスーパーあるいは畜産事業者等の事業所1から生ゴミと有機系の排出が発生する。
生ゴミには、多くの水分が含まれていてもよい。
生ゴミSは直接、減容装置20に投入される。
有機系の排水は予備的に濾過装置2にポンプアップすることで、大きな固形分Sと濾過装置2を通過した処理水に分離し、固形分Sは減容装置20に投入される。
処理水は沈殿分離装置10にポンプ移送される。
沈殿分離装置10では沈殿固形分Sと浮遊性の有機物Sが発生する。
沈殿分離装置10は排水の処理量やパス時間を考慮して、段階的に処理するのが好ましく、本実施例では向流口15a〜15cを設けた3つの隔壁11a〜11cにて4室の沈殿室12a〜12dを設けた例になっている。
沈殿固形分Sはバキュームポンプ13にて減容装置20に移送され、浮遊性の有機物はエアリフトポンプ14a〜14dにて減容装置20に移送される。
沈殿分離装置10では凝固用の薬剤を用いない。
沈殿分離装置10を通過した処理水は必要に応じて曝気処理装置3を経由して下水等に排水される。
また、事業所の既存の排水処理施設にてさらに処理してもよい。
【0011】
次に、図2に基づいて減容装置20の構造例を示す。
被処理物は投入口22から撹拌槽21に投入される。
撹拌槽21には中空回転羽根からなる撹拌機23と破砕スクリュー24を有する。
撹拌機23はモーター23bにて回転制御され、シャフト23aと羽根との間に空間がある中空回転羽根になっているので生ゴミやヘドロ状の固形分であっても充分に撹拌できる。
また、2軸の中空回転羽根の間にモーター24bで回転する破砕スクリュー24を設けた3軸構造なので、ゆっくり回転しながら破砕と混合を行う。
撹拌槽21の周囲は保温材7にて断熱保温され、所定の温度を保つための加温ヒーター28を有する。
撹拌槽21には被処理物を撹拌しながら、低酸素水蒸気が噴射されるようになっている。
低酸素水蒸気発生装置30は給水された水をヒーター31aで加熱し、水蒸気を発生させる蒸気発生室31と、ここで発生した水蒸気を250〜500℃に過熱する過熱ヒーター32aを有する加熱室32とを有する。
蒸気発生室31には水位計33、水量計34を介してバルブ35による給水制御がされている。
過熱水蒸気は250〜500℃の高温の乾燥した水蒸気であり、水分率が90%以上の生ゴミであっても乾燥させることができ、活性水蒸気となっているので異臭成分を分解する作用も有する。
撹拌槽21で発生したガスは排気ファン25により排出されるが、冷却装置26を経由し水蒸気は冷却され、水として排水され、ガス成分は必要に応じて活性炭や熱分解セラミックス等を用いてクリーンガス化して排気される。
過熱水蒸気の噴射により撹拌槽21は低酸素の還元雰囲気になっているので、水分率5〜20%の固形分に乾燥することもさらに炭化物に処理することもできる。
乾燥減容処理が完了すると、排出口24aからリサイクル資源が外部に搬出される。
【0012】
このような処理システムを用いて排水処理の試験を実施した。
BOD値約1000mg/lの排水を4室の沈殿分離装置に50トン/日,送水したところ、BOD値が50%以上低下し、ヘドロ状の沈殿物が約25kg/日,回収できた。
この沈殿物を減容装置に投入し乾燥させたところ、水分率約10%の乾燥製品が得られた。
【符号の説明】
【0013】
1 事業所
2 濾過装置
3 曝気処理装置
10 沈殿分離装置
13 バキュームポンプ
14a エアーリフトポンプ
20 減容装置
21 撹拌槽
22 投入口
23 撹拌機
24 破砕スクリュー
25 排気ファン
26 冷却装置
27 保温材
28 加温ヒーター
30 低酸素水蒸気発生装置
31 蒸気発生室
31a ヒーター
32 過熱室
32a 過熱ヒーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系排水を受水し、高含水率固形分を沈殿分離する沈殿分離装置と、
沈殿分離した高含水率固形分の移送手段と、
移送された高含水率固形分を乾燥減容処理する減容装置とを備え、
前記減容装置は撹拌手段と低酸素過熱水蒸気の噴射手段とを有することを特徴とする有機系排水の処理システム。
【請求項2】
事業所から発生する生ゴミと、前記沈殿分離により得られた高含水率固形分とを合せて減容装置に投入可能であることを特徴とする請求項1記載の有機系排水の処理システム。
【請求項3】
前記沈殿分離装置にて発生した有機系浮遊物を前記減容装置に移送する移送手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の有機系排水の処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−103201(P2013−103201A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250251(P2011−250251)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(511278372)ERSサプライ株式会社 (1)
【出願人】(507152202)
【Fターム(参考)】