説明

有機質改質装置

【課題】難分解性の有機質材料を効果的に改質し、迅速かつ高効率にコンポスト化が可能なコンポスト材料とすることができる有機質改質装置を提供することにある。
【解決手段】
投入口12からケーシング11内に投入された被処理物を、2軸駆動の一対の第1螺旋体21で排出口側に送り、一対の第2螺旋体22で逆流防止しながら圧縮した後、一対のドラム23の外周面と第2内壁の内側面16との間に導いて加圧粉砕する。ドラム23を収容する粉砕室から端面室に被処理物を導く際、粉砕圧力を急激に解除することにより、被処理物を膨軟化して繊維束を分離する。膨軟化した被処理物を回転刃で切断して排出する。被処理物が木質材料であっても、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンで形成された強固な構造を効果的に分解できるので、従来よりも短時間で効率良くコンポスト化を行うことができるコンポスト材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機質材料を改質するための有機質改質装置に関し、特に、木質材料のセルロース及びリグニンの分解促進を行うのに好適な有機質改質装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンポストを製造するための有機質材料として、木質材料を用いることが検討されている。木質材料は高いC/N値(炭素/窒素の値)を有することから有効な炭素源としての利用が期待されるが、木質材料を構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニン等の高分子成分は分解が困難であり、コンポスト化に時間と手間がかかるという問題がある。詳しくは、木質材料はセルロースとヘミセルロースで繊維が形成され、この繊維間の隙間がリグニンで埋められて強固な構造に構成されており、これらの成分のうち、セルロースとリグニンが特に分解が困難な安定した物質である。しかも、リグニンは微生物の繁殖抑制作用を有することから、木質材料を自然環境に放置して腐朽によってコンポスト化する場合、数年の期間を要してしまう。
【0003】
そこで、従来、木質材料の迅速なコンポスト化を行うため、木質材料をチップ化して高さ数メートルの畝状に野積みし、発熱や発酵を促進する薬剤を添加して、木質材料を60℃程度の温度に上昇させて分解を行うコンポスト化方法が提案されている(例えば、特開平10−67589号公報参照)。
【0004】
しかしながら、上記従来の木質材料のコンポスト化方法は、木質材料が十分に分解してコンポストが得られるまでに数ヶ月の期間が必要であり、なお時間がかかるという問題がある。また、木質材料のチップを野積みするための広大な敷地が必要であり、しかも、広大な敷地に高さ数メートルのチップの畝を形成する必要があって多大な手間がかかるという問題がある。更に、木質材料の分解促進に薬剤を添加するので、薬剤の飛散や漏出によって周辺環境に影響を与える虞がある。
【特許文献1】特開平10−67589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、木質材料のような難分解性の有機質材料を効果的に改質し、迅速かつ高効率にコンポスト化が可能なコンポスト材料とすることができる有機質改質装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の有機質改質装置は、被処理物の投入口を有すると共に、処理後の被処理物を排出する排出口が設けられた端面板を端面に有するケーシングと、
上記ケーシング内に互いに平行に配置され、互いに逆回りに回転駆動される一対の回転軸と、
上記一対の回転軸の投入口側に連結され、上記ケーシングの投入口から投入された被処理物を排出口側に送る一対の第1螺旋体と、
上記第1螺旋体の排出口側に隣接して一対の回転軸に連結され、圧縮室を形成する第1内壁に少なくとも一部が取り囲まれて、上記第1螺旋体からの被処理物を逆流防止しながら圧縮して排出口側に送る一対の第2螺旋体と、
上記第2螺旋体の排出口側に隣接して一対の回転軸に連結され、粉砕室を形成する第2内壁に取り囲まれて、上記第2螺旋体からの被処理物を外周面と上記第2内壁の内側面との間で加圧粉砕して排出口側に送る一対のドラムと、
上記ドラムの排出口側かつ上記端面板よりもケーシングの内側に形成され、上記ドラムで粉砕された被処理物が導かれる端面室と、
上記ドラムの端部に連結されていると共に、上記端面室内に上記端面板の内側面に近接して配置され、回転駆動されるに伴って被処理物を切断して端面板の排出口から押し出す回転刃と
を備えることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、投入口からケーシング内に投入された被処理物は、第1螺旋体によって排出口側に送られ、第2螺旋体によって逆流防止されながら圧縮された後、ドラムの外周面と第2内壁の内側面との間に導かれる。第2螺旋体で圧縮された後にドラム側に導かれた被処理物は、圧縮熱と摩擦熱によって温度上昇した状態で粉砕される。したがって、被処理物が木質材料である場合、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンで形成された強固な構造が効果的に分解される。ドラムで粉砕された被処理物は端面室に送られ、回転刃によって切断されて排出口から排出される。被処理物が木質材料である場合、セルロース及びヘミセルロースで形成された繊維が回転刃によって効果的に所定長さに切断されて排出される。このように、被処理物を、第1及び第2螺旋体によって効果的に圧縮し、圧縮熱及び摩擦熱を生成させつつドラムで加圧粉砕を行うので、被処理物の強固な構造を効果的に分解して改質を行うことができる。
【0008】
本発明の有機質改質装置は、第1螺旋体、第2螺旋体及びドラムを一対の回転軸で駆動する2軸駆動型であるので、被処理物が強固な構造を有する難分解性の木質材料であっても、被処理物を第1螺旋体によって確実に第2螺旋体に送ることができ、第2螺旋体により高圧圧縮してドラムに送ることができ、ドラムによって高圧粉砕を行うことができる。その結果、被処理物が木質材料であっても、効果的に改質することができるのである。
【0009】
本発明の有機質改質装置で改質された木質材料は、微生物によって従来よりも短時間で分解可能であるので、コンポスト化を行う際に、従来のように広大な敷地に畝状に野積みして薬液を添加し、長期に亘って発熱発酵を行う必要が無い。したがって、この有機質改質装置でコンポスト材料の前処理を行うことにより、従来よりも少ない敷地により、短時間で効率良く、しかも、薬液により周辺環境に影響を与えることなく、コンポスト化を行うことができる。
【0010】
一実施形態の有機質改質装置は、上記端面室に導かれた被処理物は、上記ドラムによる粉砕圧力が解除されるに伴って膨軟化する。
【0011】
上記実施形態によれば、粉砕室でドラムによって粉砕圧力が与えられた被処理物は、端面室に導かれて粉砕圧力が解除されるに伴い、被処理物が含有する水分が急激に膨張して膨軟化する。被処理物が木質材料である場合、膨軟化により、セルロース及びヘミセルロースで形成されてリグニンで固定された繊維の束を効果的に分離できるので、木質材料の強固な構造を効果的に分解することができる。
【0012】
一実施形態の有機質改質装置は、上記第1螺旋体及び第2螺旋体は、上記回転軸に外嵌するボス部と、このボス部の外周面に形成された螺旋羽根部とを夫々有し、上記第1螺旋体のボス部の径よりも、上記第2螺旋体のボス部の径が大きく形成されている。
【0013】
上記実施形態によれば、被処理物が第1螺旋体によって第2螺旋体側に送られたとき、ボス部の回りに形成される被処理物の通路が狭まるので、被処理物を効果的に圧縮することができる。
【0014】
一実施形態の有機質改質装置は、上記第1螺旋体及び第2螺旋体は、上記回転軸に外嵌するボス部と、このボス部の外周面に形成された螺旋羽根部とを夫々有し、上記第1螺旋体の螺旋羽根部のピッチよりも、上記第2螺旋体の螺旋羽根部のピッチが小さく形成されている。
【0015】
上記実施形態によれば、被処理物が第1螺旋体によって第2螺旋体側に送られたとき、螺旋羽根の1ターンあたりの被処理物の収容体積が減少するので、被処理物を効果的に圧縮することができる。
【0016】
一実施形態の有機質改質装置は、上記第1内壁の内径よりも、上記第2内壁の内径が小さく形成されている。
【0017】
上記実施形態によれば、第1内壁の内径よりも第2内壁の内径が小さいので、軸方向視において、第1内壁で取り囲まれた第2螺旋体の端部の軌跡よりも内側に、第2内壁とドラムとの隙間が配置する。したがって、被処理物を第2螺旋体によって第2内壁とドラムとの間に効果的に押し込むことができる。したがって、ドラムによる被処理物の粉砕圧力を効果的に増大できる。
【0018】
一実施形態の有機質改質装置は、上記第2内壁の第1内壁に隣接する部分が、投入口側から排出口側に向うにつれて内径が減少する逆テーパ状に形成されている。
【0019】
上記実施形態によれば、第2内壁の逆テーパ状の部分において、被処理物の通路が排出口側に向うにつれて徐々に狭まるので、第1内壁内で圧縮された被処理物を滞りなく第2内壁とドラムとの間に導くことができる。これにより、ドラムの入り口の近傍で被処理物の滞留が生じたり、被処理物の詰まりが生じたりする不都合を防止できる。
【0020】
一実施形態の有機質改質装置は、上記ドラムの第2螺旋体に隣接する部分が、投入口側から排出口側に向うにつれて外径が増大するテーパ状に形成されている。
【0021】
上記実施形態によれば、ドラムのテーパ状の部分において、被処理物の通路が排出口側に向うにつれて徐々に狭まるので、第1内壁内で圧縮された被処理物を滞りなく第2内壁とドラムとの間に導くことができる。これにより、ドラムの入り口の近傍で被処理物の滞留が生じたり、被処理物の詰まりが生じたりする不都合を防止できる。
【0022】
一実施形態の有機質改質装置は、上記ドラムの外周面と第2内壁の内側面に、複数の溝が夫々形成されている。
【0023】
上記実施形態によれば、ドラムと第2内壁との間に導かれる被処理物に対して、効果的に圧縮力とせん断力を与えることができる。特に、ドラムの外周面と第2内壁の内側面との間を、極めて小さいクリアランスに形成することができ、その結果、被処理物を効果的に擂り潰して粉砕することができる。
【0024】
一実施形態の有機質改質装置は、上記ドラムの外周面に形成された溝は螺旋溝である。
【0025】
上記実施形態によれば、ドラムと第2内壁との間の被処理物を、効率良く排出口側に送ることができる。
【0026】
一実施形態の有機質改質装置は、上記第2内壁の内側面に形成された溝は軸方向の直線溝である。
【0027】
上記実施形態によれば、ドラム側の螺旋溝との相互作用により、ドラムと第2内壁との間の被処理物を効果的に擂り潰すことができる。
【0028】
一実施形態の有機質改質装置は、上記端面室内を加熱するヒータを備える。
【0029】
上記実施形態によれば、第2螺旋体やドラムの動作によって圧縮熱や摩擦熱で高温となった被処理物を、端面室において更に加熱することにより、効果的に分解できる。特に、被処理物が木質材料である場合、効果的に膨軟化を行うことができ、高分子成分のセルロース、ヘミセルロース及びリグニンを効果的に分解することができる。ここで、本発明において、高分子成分の分解とは、高分子鎖の一部を切断する概念をも含む。
【0030】
一実施形態の有機質改質装置は、上記ドラムの粉砕動作と、上記端面室における膨軟化と、上記回転刃の切断動作により、上記被処理物に含まれるセルロース及びリグニンを分解する。
【0031】
上記実施形態によれば、被処理物をドラムによって粉砕し、このドラムによる粉砕圧力を端面室で急激に解放して膨軟化し、さらに、回転刃によって切断することにより、木質材料を構成するセルロース、ヘミセルロース及びリグニンのうち、特に分解が困難であるセルロースとリグニンを分解することができる。
【0032】
一実施形態の有機質改質装置は、上記被処理物は、木材、籾殻、稲藁、剪定材、林地残材、材木余材、芝生、枯れ草、落ち葉、割り箸、流木、伐根、新聞紙、未完熟コンポスト、農業廃棄物、野菜屑、生ゴミ及び食品廃材からなる群から選ばれた1つを含む。
【0033】
上記実施形態によれば、木材、籾殻、稲藁、剪定材、林地残材、材木余材、芝生、枯れ草、落ち葉、割り箸、流木、伐根、新聞紙、未完熟コンポスト、農業廃棄物、野菜屑、生ゴミ及び食品廃材のいずれも、上記有機質改質装置で処理を行うことにより、迅速かつ高効率にコンポスト化が可能なコンポスト材料とすることができる。このように、木質に限られず、未完熟状態のコンポストや他の有機物を広く処理することにより、広い敷地を用いることなく、しかも、短時間にコンポスト化を行うことができるコンポスト材料が得られる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の有機質改質装置によれば、投入口からケーシング内に投入された被処理物を、2軸駆動される一対の第1螺旋体によって排出口側に送り、一対の第2螺旋体によって逆流防止しながら圧縮した後、一対のドラムによって加圧粉砕し、この加圧粉砕した被処理物を端面室に導いて回転刃で切断して排出口から排出するので、被処理物が有機質材料としての木質材料である場合、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンで形成された強固な構造を効果的に分解できる。したがって、従来よりも短時間で効率良くコンポスト化を行うことができるコンポスト材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の有機質改質装置を図示の実施形態により詳細に説明する。図1は、本実施形態の有機質改質装置を示す平面図であり、図2は、有機質改質装置の処理部内を示す断面図である。
【0036】
この有機質改質装置は、被処理物として、有機質材料である木質材料を処理してコンポスト材料を製造するものである。この有機質改質装置1は、被処理物の圧縮及び膨軟処理を行う処理部10と、この処理部10に駆動力を発生して伝達するモータM、伝動装置T、減速機V及びギヤボックスGとで大略構成されている。
【0037】
上記処理部10はケーシング11を備え、このケーシング11は、被処理物の投入口12が上部に形成されていると共に、処理後の被処理物を排出する排出口13aが設けられた端面板13が端面に固定されている。このケーシング11内には、互いに逆周りに回転駆動される一対の回転軸51,51が、ケーシング11の投入口12側から排出口13a側に向って延在するように配置されている。この回転軸51は軸直角方向において六角形断面を有し、この回転軸51に、投入口12側から排出口13a側に向って順に、第1螺旋体21と第2螺旋体22とドラム23が外嵌している。ドラム23の先端には、ドラム23と共に回転する回転刃24が連結されていて、この回転刃24の端面が端面板13の内側面に近接して対向している。
【0038】
ケーシング11内には、投入口12と連なると共に第1螺旋体21の全部と第2螺旋体21の一部を収容する投入室が形成されている。この投入室の排出口13a側に、第2螺旋体22の他の部分を収容する圧縮室と、ドラム23を収容する粉砕室と、回転刃24を収容する端面室とが順次連なっている。圧縮室と粉砕室と端面室は、内径は互いに異なるが、いずれもシリンダ状に形成されている。端面室は、端面板13の内側面に臨んで形成されている。
【0039】
上記一対の回転軸51,51は、ギヤボックスGに収容された一対の駆動軸50,50の先端に連結されている。これら一対の駆動軸50,50の先端部分は、ギヤボックスGの前面とケーシング11の背面とに形成された軸貫通孔を夫々挿通している。このギヤボックスGの前面とケーシング11の背面との間には所定の離隔が設けられており、ケーシング11内の被処理物がギヤボックスG内に侵入する不都合を防止するようにしている。
【0040】
ギヤボックスG内には、上記一対の駆動軸50,50と、この一対の駆動軸50,50に各々外嵌されて互いに噛み合う平歯車52が収容されている。ギヤボックスG内において、一対の駆動軸50の平歯車52よりも前側がラジアルベアリングで支持されていると共に、平歯車52よりも後ろ側がラジアルスラストベアリングで支持されている。一対の駆動軸50,50のうちの一方の後端部分が、ギヤボックスGの背面から外側に突出し、ギヤボックスGと減速機Vとの間に配置されたカップリング53に接続されている。モータMで発生された回転力が伝動機Tで伝達され、減速機Vで減速されて、カップリング53を介して一方の回転軸50に入力される。この一方の回転軸50から平歯車52を介して他方の回転軸50に回転力が伝達されて、一対の回転軸50,50が矢印R1,R2で示すように互いに逆向きに等速回転するようになっている。
【0041】
図2に示すように、ケーシング11内の第1螺旋体21と第2螺旋体22は、回転軸51に外嵌するボス部211,221と、このボス部211,221の外周面に固定された螺旋羽根部212,222を有する。各螺旋体21,22は、一対の螺旋羽根部212,222が互いに逆回りに形成されていて、この一対の螺旋羽根部212,222の回転軸51,51の間に位置する部分が重なり合うように配置されている。各螺旋体21,22のボス部211,221には、回転軸50と嵌合する六角形断面の貫通孔が中心軸に沿って形成されている。この第1螺旋体21の全部と第2螺旋体22の一部が投入室内に収容されており、この投入室の底面14は、第1螺旋体21の螺旋羽根212の外縁と、第2螺旋体22の螺旋羽根222の外縁とに近接する半円筒形状に形成されている。第2螺旋体22の排出口側の部分は圧縮室に収容されており、この圧縮室を画定する第1内壁の内側面15が、第2螺旋体22の螺旋羽根部222の外縁を取り囲んでいる。この第1内壁は、螺旋羽根部222が近接して駆動されることから内側面15に磨耗が生じやすいため、ケーシング11と別体に形成して交換可能にするのが好ましい。
【0042】
上記第2螺旋体22のボス部221の径は、第1螺旋体21のボス部211の径よりも大きく形成されている。これと共に、上記第2螺旋体22の螺旋羽根部222のピッチは、第1螺旋体21の螺旋羽根部212のピッチよりも小さく形成されている。更に、上記第2螺旋体22の螺旋羽根部222の厚みは、第1螺旋体21の螺旋羽根部212の厚みよりも大きく形成されている。これにより、第2螺旋体22のボス部221の周りに形成される被処理物の通路が、第1螺旋体21側よりも狭まるようにしている。更に、第2螺旋体22の周りを圧縮室の内側面15で取り囲むことにより、第1螺旋体21から第2螺旋体22に導かれた被処理物を逆流防止しつつ効果的に圧縮するようにしている。第2螺旋体22のボス部221は、第1螺旋体21に隣接する部分に、第1螺旋体21側からドラム23側に向うにつれて径が拡大するテーパ面221aが形成されている。これにより、被処理物が滞留や詰まりを生じることなく第1螺旋体21側から第2螺旋体22側に移動するようにしている。
【0043】
図3は、上記ドラム23及び回転刃24を取り出して端面側から観察した様子を示す斜視図である。
【0044】
上記ドラム23は概ね円筒形状を有し、第2螺旋体22に隣接する部分に、第2螺旋体22側から端面板13側に向うにつれて径が拡大するテーパ面23aが形成されている。ドラム23の外周面には、不等辺のV字形状断面を有する複数の螺旋溝23b,23b,・・・が形成されている。このドラム23は、ケーシング11内の粉砕室を確定する第2内壁に取り囲まれており、この第2内壁の内側面16には、軸方向に延びる複数の直線溝が形成されている。この第2内壁の内側面16とドラム23の外周面との間隔は、被処理物を粉砕可能な距離に設定されている。上記第2内壁の内側面16の投入口側には、ドラム23のテーパ面23aに対向する位置に、排出口側に向うにつれて内径が縮小する逆テーパ面16aが設けられている。この内側面16のテーパ面16aと、ドラム23のテーパ面23aとによって、第2螺旋体22からの被処理物を滞留することなく内側面16とドラム23の間に押し込むようにしている。第2内壁は、ドラム23が近接して駆動されることから内側面16に磨耗が生じやすいため、ケーシング11と別体に形成して交換可能にするのが好ましい。
【0045】
このドラム23は、螺旋溝23bの不等辺V字形状の長辺側(すなわち、螺旋溝23bの側面のうち、外周面に対して傾斜角度が緩やかな面)が先行するように、矢印R3で示す方向に回転駆動される。これにより、ドラム23の外周面の螺旋溝23bの直角断面を成す縁部と、第2内壁の内側面16の直線溝の縁部とが傾斜状態で順次接離して、この第2内壁の内側面16とドラム23の外周面との間に導かれる被処理物に、擂り潰し作用と切断作用を奏するようになっている。ドラム23内には、断面六角形の有底孔が中心軸に沿って形成されており、この有底孔を回転軸50の先端部分に外嵌して回転軸50に取り付けられている。
【0046】
上記回転刃24は、プレート状のボス部25と、このボス部25の側面から径方向外側に延びる3つの刃26,26,26を有する。この刃26は、端面視において互いに等角度位置に形成されており、径方向の先端がドラム23の外周よりも外側に突出している。また、この刃26は、径方向視において傾斜した断面を有するように形成されており、矢印R3で示す方向に回転したとき、鋭角断面の縁部26aが先行するようになっている。これにより、回転刃24が端面板13に近接した状態で回転駆動されて、端面板13の排出口13aから被処理物を押し出すと共に、この排出口13aの縁部と刃26の縁部26aとで被処理物を効果的に切断するようになっている。刃26の端面は、近接して駆動されることから磨耗しやすく、また、被処理物に混入した金属片等で欠けを生じやすい。そこで、刃26の端面に、耐磨耗材料による肉盛溶接が施されている。この耐磨耗材料としては、タングステンカーバイド系材料を用いることができる。
【0047】
この回転刃24のボス部25の背面には六角形の凸部が設けられており、この凸部をドラム23の端面に形成された凹部に嵌合して回転刃24をドラム23に取り付けるようになっている。回転刃24をドラム23に取り付け、回転刃24のボス部25の表面側からボルトを挿通してドラム23内の回転軸51に螺着することにより、回転刃24をドラム23に固定すると共にドラム23を回転軸51に固定するようになっている。
【0048】
この回転刃24を収容する端面室は円筒形状を有し、回転刃24を取り囲んで曲面を成す内側面17の径が、ドラム23を収容する粉砕室の径よりも大きく形成されている。これにより、粉砕室内でドラム23と内側面16の間で高い粉砕圧力を受けた被処理物が、端面室に導かれるに伴って粉砕圧力を解放して膨張する膨軟化を可能にしている。
【0049】
図4は、ケーシング11の端面に固定される端面板13を示す正面図であり、ケーシング11内に臨む側の面を示している。この端面板13は、内側面が回転刃24の端面に近接した状態でケーシング11に固定されて、端面室の端面側壁を構成する。端面板13には、回転刃24が回転駆動されるときに刃26が描く軌跡領域に亘って、複数の排出口13a,13a,・・・が設けられている。端面板13の縁部には、この端面板13をケーシング11に固定するためのボルト用の貫通孔13b,13b,・・・が設けられている。この端面板13は、表裏両面をケーシング11の内側に臨んで固定可能になっており、回転刃24が近接して回転駆動されることにより一方の面の磨耗が進行しても、表裏を交換することにより、端面板13を長期に亘って使用可能にしている。
【0050】
端面板13には、上下方向に伸びる線形のヒータ61が内蔵されている。このヒータ61は、電気抵抗により発熱を行う抵抗加熱式のヒータであり、幅方向に複数列配置されており、この端面板13の内側面が臨む端面室内を加熱するようにしている。本実施形態では、ヒータ61を端面板13の厚み方向に1列配置しているが、厚み方向に2列配置して、ケーシング11への取り付け面を表裏両面の間で交換した場合においても端面室に対する加熱特性が殆ど変わらないようにできる。また、厚み方向の一方の列のヒータ61が故障しても、他方列のヒータ61によって被処理物を加熱することができるので、加熱機能の信頼性を向上できる。
【0051】
端面板13には、排出口13aを通過する被処理物の温度を測定する温度センサ62が設けられている。この温度センサ62は、信号配線が端面板13の上端面から引き出され、端子63を介して図示しない制御部に接続されている。この制御部は、温度センサ62で測定した被処理物の温度に基づいて、ヒータ61の発熱量及び/又はモータMの回転数を制御して、端面室の温度が100〜180℃の温度範囲となるようにしている。ここで、端面室の温度は、木質材料を効果的に膨軟化するため、概ね180℃に設定するのが好ましい。
【0052】
なお、本実施形態ではヒータ61を端面板13に内蔵したが、ケーシング11の端面室を取り囲む壁内にヒータを内蔵してもよく、要は、端面室を100〜180℃の温度範囲の温度に加熱できれば、ヒータの配置場所は限定されない。
【0053】
上記構成の有機質改質装置1は、以下のようにして、有機質材料としての木質材料を改質する。
【0054】
まず、端面板13のヒータ61に電力を供給して、端面室の予備加熱を行う。これにより、運転の初期においても被処理物を有効に膨軟化することができる。
【0055】
続いて、モータMを起動し、モータMの回転力を伝動機T、減速機V及びカップリング53を介して駆動軸50に伝達する。これにより、ギヤボックスG内の一対の駆動軸50が互いに逆向きに駆動され、駆動軸50に連なる回転軸51に取り付けられた第1及び第2螺旋体21,22及びドラム23と、このドラム23の端面に固定された回転刃24が、ケーシング11内で互いに逆向きに回転する。一対の各螺旋体21,22は、平面視において幅方向の内側に向かうと共に、正面視において上から下に向かう方向に回転する。
【0056】
こうして処理部10の動作を開始した後、ケーシング11の投入口12への被処理物の投入を開始する。本実施形態の被処理物としての木質材料は、粒径が30〜50mmの木材チップである。
【0057】
ケーシング11内において、一対の第1螺旋体21が互いのボス部211の表面で木材チップを挟み込み、螺旋羽根212の送り動作によって第2螺旋体22側に移送する。第2螺旋体22は、第1螺旋体21のボス部211よりも径が大きいボス部221と、第1螺旋体21の螺旋羽根部212よりもピッチが小さく、かつ、厚みが大きい螺旋羽根部222を有し、更に、圧縮室内で回転することにより、木材チップを逆流防止しつつ効果的に圧縮する。第2螺旋体22で圧縮された木材チップは、螺旋羽根部212の端部から押し込み力を受け、第2内壁の内側面16の逆テーパ面16aと、ドラム23のテーパ面23aとの間を通って、第2内壁の内側面16とドラム23の外側面との間に導かれる。このドラム23の外周面と第2内壁の内側面16とで木質材料を挟む際の圧縮力と、ドラム23の螺旋溝23bの縁部と内側面16の直線溝の縁部とが木質材料を挟んで接離する際のせん断力により、木質チップを粉砕し、更に、木質材料の主成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンで構成された強固な構造を分解する。このとき、木質材料は、圧縮熱と摩擦熱により200〜250℃に温度上昇しているので、分解が困難な高分子成分であるセルロース及びリグニンが効果的に分解される。ここにおいて、高分子成分の分解とは、高分子鎖の一部を切断する概念をも含む。
【0058】
ドラム23と第2内壁の内側面16との間で粉砕された木質材料は、粉砕室から端面室に導かれ、これに伴って高圧の粉砕圧力が急激に解除される。その結果、木質材料中の水分が急激に膨張して膨軟化が生じて繊維束が分離される。繊維束が分離された木質材料は、強固な構造が破壊されて綿状となり、回転刃の刃26によって所定長さに切断され、排出口13aからケーシング11の外部に排出される。
【0059】
このようにして改質された木質材料は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンで形成された強固な構造が分解されて綿状となっているので高い吸水性を有し、また、微生物によって従来よりも短時間で分解可能である。したがって、コンポスト化を行う際に、従来のように広大な敷地に畝状に野積みして薬液を添加し、長期に亘って発熱発酵を行う必要が無い。すなわち、本実施形態の有機質改質装置によって改質した木質材料を用いることにより、従来よりも短時間で効率良く、また、少ない敷地面積により、しかも、薬液等により環境へ影響を与えることなく、コンポスト化を行って木質由来の堆肥を得ることができるのである。
【0060】
このように、本実施形態の有機質改質装置は、分解され難いセルロース及びリグニンを含む有機質材料を短時間で改質することができるので、従来、大量生産のコンポストに殆ど利用されていなかった籾殻、稲藁、剪定材、林地残材、材木余材、芝生、枯れ草、落ち葉、割り箸、流木、伐根及び新聞紙等を、コンポスト材料として利用することができる。これらの有機質材料は、C/N値が高くて有効な炭素源であることから、例えば生ゴミや家畜し尿等の窒素源と組み合わせて微生物分解処理を行うことにより、良質の堆肥を高効率に製造することができる。上記籾殻や稲藁等の有機質材料を被処理物とする場合、事前にハンマー式やナイフ式の破砕機等によって30〜50mmの粒径にしておくのが好ましい。また、本実施形態の有機質改質装置により、未完熟コンポスト、農業廃棄物、野菜屑、生ゴミ及び食品廃材等の有機物を改質してもよい。

【0061】
本実施形態において、被処理物として木質チップを用いたが、例えば建築廃材のような水分量が比較的少ない木質材料を用いる場合、投入口12に被処理物を投入する際に給水を行うのが好ましい。投入口12から投入室内に供給された水は、第1螺旋体21によって被処理物と共に第2螺旋体22に送られて、この第2螺旋体22によって圧縮室内から逆流することなく効果的に被処理物と混練される。したがって、水分の分離や逆流等の不都合を生じることなく、適切に被処理物の水分量を調節することができる。その結果、粉砕室から端面室に導かれた被処理物を効果的に膨軟化することができて、被処理物の改質を行うことができる。ここで、粉砕室から端面室に導かれた被処理物を有効に膨軟化するために、有機質材料の含水率が30〜50重量%となるように給水量を調整するのが好ましい。
【0062】
また、上記実施形態において、端面室内を加熱するヒータを設けたが、ドラム23を収容する粉砕室の周りにヒータを配置し、圧縮熱及び摩擦熱で温度上昇した被処理物を更に加熱して、被処理物の分解を促進してもよい。この粉砕室の周りにヒータを配置する場合、ケーシング11の粉砕室に対応する部分の外側を帯状のヒータで取り囲み、この帯状のヒータの回りを断熱材で取り囲んで、粉砕室内の被処理物を加熱することができる。
【0063】
また、本実施形態の有機質改質装置は、コンポスト材料の前処理のために利用する以外に、例えば家畜用の敷き藁材や飼料等の製造に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態の有機質改質装置を示す平面図である。
【図2】有機質改質装置の処理部内を示す断面図である。
【図3】ドラム及び回転刃を示す斜視図である。
【図4】端面板を示す正面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 有機質改質装置
10 処理部
11 ケーシング
12 投入口
13 端面板
13a 排出口
14 投入室の底面
15 圧縮室の内側面
16 粉砕室の内側面
17 端面室の内側面
21 第1螺旋体
22 第2螺旋体
23 ドラム
24 回転刃
26 刃
51 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物の投入口を有すると共に、処理後の被処理物を排出する排出口が設けられた端面板を端面に有するケーシングと、
上記ケーシング内に互いに平行に配置され、互いに逆回りに回転駆動される一対の回転軸と、
上記一対の回転軸の投入口側に連結され、上記ケーシングの投入口から投入された被処理物を排出口側に送る一対の第1螺旋体と、
上記第1螺旋体の排出口側に隣接して一対の回転軸に連結され、圧縮室を形成する第1内壁に少なくとも一部が取り囲まれて、上記第1螺旋体からの被処理物を逆流防止しながら圧縮して排出口側に送る一対の第2螺旋体と、
上記第2螺旋体の排出口側に隣接して一対の回転軸に連結され、粉砕室を形成する第2内壁に取り囲まれて、上記第2螺旋体からの被処理物を外周面と上記第2内壁の内側面との間で加圧粉砕して排出口側に送る一対のドラムと、
上記ドラムの排出口側かつ上記端面板よりもケーシングの内側に形成され、上記ドラムで粉砕された被処理物が導かれる端面室と、
上記ドラムの端部に連結されていると共に、上記端面室内に上記端面板の内側面に近接して配置され、回転駆動されるに伴って被処理物を切断して端面板の排出口から押し出す回転刃と
を備えることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記端面室に導かれた被処理物は、上記ドラムによる粉砕圧力が解除されるに伴って膨軟化することを特徴とする有機質改質装置。
【請求項3】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記第1螺旋体及び第2螺旋体は、上記回転軸に外嵌するボス部と、このボス部の外周面に形成された螺旋羽根部とを夫々有し、上記第1螺旋体のボス部の径よりも、上記第2螺旋体のボス部の径が大きく形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項4】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記第1螺旋体及び第2螺旋体は、上記回転軸に外嵌するボス部と、このボス部の外周面に形成された螺旋羽根部とを夫々有し、上記第1螺旋体の螺旋羽根部のピッチよりも、上記第2螺旋体の螺旋羽根部のピッチが小さく形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項5】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記第1内壁の内径よりも、上記第2内壁の内径が小さく形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項6】
請求項5に記載の有機質改質装置において、上記第2内壁の第1内壁に隣接する部分が、投入口側から排出口側に向うにつれて内径が減少する逆テーパ状に形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項7】
請求項6に記載の有機質改質装置において、上記ドラムの第2螺旋体に隣接する部分が、投入口側から排出口側に向うにつれて外径が増大するテーパ状に形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項8】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記ドラムの外周面と第2内壁の内側面に、複数の溝が夫々形成されていることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項9】
請求項8に記載の有機質改質装置において、上記ドラムの外周面に形成された溝は螺旋溝であることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項10】
請求項8に記載の有機質改質装置において、上記第2内壁の内側面に形成された溝は軸方向の直線溝であることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項11】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記端面室を加熱するヒータを備えることを特徴とする有機質改質装置。
【請求項12】
請求項2に記載の有機質改質装置において、上記ドラムの粉砕動作と、上記端面室における膨軟化と、上記回転刃の切断動作により、上記被処理物に含まれるセルロース及びリグニンを分解することを特徴とする有機質改質装置。
【請求項13】
請求項1に記載の有機質改質装置において、上記被処理物は、木材、籾殻、稲藁、剪定材、林地残材、材木余材、芝生、枯れ草、落ち葉、割り箸、流木、伐根、新聞紙、未完熟コンポスト、農業廃棄物、野菜屑、生ゴミ及び食品廃材からなる群から選ばれた1つを含むことを特徴とする有機質改質装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−173605(P2008−173605A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11363(P2007−11363)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(591119624)株式会社御池鐵工所 (86)
【出願人】(504148631)ハリマ産業エコテック株式会社 (1)
【Fターム(参考)】