説明

有機酸とのバルネムリンの塩

本発明は、式Iの化合物であるバルネムリンの新規塩形態の製造に関し、この塩形態はその高純度で良好な結晶性、その簡素な技術的有用性および改善された貯蔵安定性に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その高純度で良好な結晶性、その簡便な技術的使用、ならびに純粋な有効成分としてのおよび調合物中での使用の両方での改善された貯蔵安定性について特筆すべき、バルネムリンの新規塩形態の調製に関する。
【背景技術】
【0002】
式Iの化合物であるバルネムリンは、EP0153277により公知であり、製剤製品として、商品名Econor(登録商標)で市販されている。
【0003】
【化2】

【0004】
一般的に知られているように、この化合物は、例えば経口または非経口投与で抗菌特性を有し、従って動物の健康の分野における一連の細菌感染の予防または治療のために用いられている。広範囲の活性のスペクトラムは、例えばストレプトコッカス・アロンソン(Streptococcus aronson)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、マイコプラズマ・アルスリチジス(Mycoplasma arthritidis)、マイコプラズマ・ボビゲニタリウム(Mycoplasma bovigenitalium)、マイコプラズマ・ボビマスチチジス(Mycoplasma bovimastitidis)、マイコプラズマ・ボビリニス(Mycoplasma bovirhinis)、マイコプラズマ(Mycoplasma)種、マイコプラズマ・カニス(Mycoplasma canis)、マイコプラズマ・フェリス(Mycoplasma felis)、マイコプラズマ・ファーメンタンス(Mycoplasma fermentans)、マイコプラズマ・ガリナルム(Mycoplasma gallinarum)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、A.グラヌラルム(granularum)、マイコプラズマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)、マイコプラズマ・ヒオリニス(Mycoplasma hyorhinis)、アクチノバシルス・ライドラウィイ(Actinobacillus laidlawii)、マイコプラズマ・メレアグリジス(Mycoplasma meleagridis)、マイコプラズマ・ニューロリチカム(Mycoplasma neurolyticum)、マイコプラズマ・ニューモニア(Mycoplasma pneumonia)およびマイコプラズマ・ハイオニューモニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)を含む。
【0005】
さらにWO98/01127は、動物が、例えば輸送の目的で混雑した状態に保持されなければならず、したがって大きなストレスに曝される条件下で起こる症候群に対する、これらの化合物の優れた活性を記載している。これらの状態下で決定的な役割を果たす最も常習的な病原体は、マイコプラズマ・ハイオニューモニア(Mycoplasma hyopneumoniae)、ブラキスピラ(Brachyspira)(旧セルプリナ(Serpulina)またはトレポネーマ(Treponema))・ハイオディセンテリア(hyodysenteriae)、ブラキスピラ・ピロシコリ(Brachyspira pilosicoli)、ローソニア・イントラセルラリス(Lawsonia intracellularis)、マイコプラズマ・ガリセプチカム(Mycoplasma gallisepticum)、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)、アクチノバシルス(Actinobacillus)(ヘモフィリス(Haemophilus))・プロイロモニア(pleuromoniae)およびヘモフィリス・パラスイス(Haemophilus parasuis)であり、これらによって気道の疾患および他の感染が、多くの場合に一緒に起こり、複雑な臨床像をもたらす。家畜および愛玩動物の両方、例えば、ウシ、ヒツジおよびブタ、ニワトリ、イヌおよびネコが罹患する。
【0006】
遊離塩基としてのバルネムリンは、保存するには比較的不安定であり、したがってバルネムリン−シクロデキストリン錯体の形態で(EP−0,524,63)もしくは微小球により(WO03/45354)安定化され、またはインサイチュで調製される遊離塩基の形態で(WO01/41758)もしくは主に非晶質塩酸塩の形態で(EP−0,153,277、WO98/01127、WO01/37828)用いられている。これまでに記載された唯一の塩形態は、非晶質塩酸塩であり、これは純粋な物質としておよび製剤製品(Econor(登録商標))中にて貯蔵するのに安定している。しかしこれは、非常に限定された範囲にのみ、下記に示すように、他の物質特に飼料との混合物中においてのみ適用される。
【0007】
とりわけ、欧州特許明細書EP0524632から判るように、本明細書で挙げられるバルネムリンを含むプレウロムチリンの群からの抗生物質は、水溶性塩酸塩の形態であれば極めて簡単に飲料水に加えることができる。しかし対照的に、これらの抗生物質が飼料成分により極めて急速に分解され、したがって不活性になるので、飼料を介した治療の必要な動物にこれらの抗生物質を投与することは困難であることが証明されている。しかしながら、飼料と医薬との混合物を製造するとき、貯蔵中の一定の程度の安定性が得られ得ることが不可欠であり、そうでなければ正確な投与を提供することが不可能である。したがって、ミール飼料およびペレット飼料中のバルネムリンの安定性を改善するための種々の努力が、以前からなされた。
【0008】
ヒトの患者の場合、回復に対する訓練および欲求に依存することができることから、抗生物質は、錠剤、糖衣錠剤、乳剤、注射剤などの極めて多様な適用形態でヒトに投与することができる一方、動物の場合にはかなりの実際的な問題に遭遇する。
【0009】
動物は、医薬製剤を経口摂取しようとする自然な意志を持っているはずである。勿論、個々の動物または少数の動物は、飲み込ませるかまたは注射するかによって抗生物質を強制的に摂取させられ得る。しかしながら、力を用いるこれらの方法は、労働集約的であり、各々個別の場合に獣医が必要であり、したがってコスト高になるので、大型動物の飼育では受け入れられない。したがって、動物の群の管理において、簡単で安全な適用形態を見出さなければならず、特に動物に優しいもの、動物が自発的に摂取するかまたは強制的処置が必要な場合は獣医によりもしくは許されるのであれば動物の飼育業者自身によりもしくは完全に自動的に投与さえできるもの、およびコストを許容できる範囲内に保つものを見つけなければならない。
【0010】
これらの状況を考慮に入れる1つの方法は、乾燥動物飼料、すなわちミール飼料またはペレット飼料に組み込んだ抗生物質の正確に用量を決めた投与である。現在では家畜および生産的家畜類(例えば、ブタ、またウシ、ヒツジおよび家禽)は、しばしば最も現代的で完全に自動化された飼養設備を備えた畜舎で飼育されている。これらの設備では、飼料は、動物の年齢および体重に従って栄養要求量に適合した量でかいば桶に完全に自動的に供給される。
【0011】
このような完全に自動化された施設では、盛んに議論されている飼料ペレットが、用いられている。問題の飼料は、植物および/または動物基準で圧縮され、高密度化されたエネルギー乾燥飼料であり、アミノ酸、ビタミンおよびミネラルなどの添加剤に富んだものであり得る。これらの飼料ペレットは、動物の年齢および体重に合わせた均一の大きさの、まさに人工的で易流動性の、製造方法により円形または長方形の顆粒、球形または棒状でさえある物体であり、これらは家禽類用の数ミリメートルから成獣のブタおよびウシ用の約1センチメートルであってよい。飼料ペレットは、市販の飼料粉砕機を用いて、有機出発物質を粉砕し、成分を望ましい組成に混合し、最後にペレットに圧縮することによって調製され、次に小袋に充填されて、動物飼育業者に供給され、彼らが飼料ペレットを分配装置に投入する。これらのペレットの重要な利点は、これらの簡易な取り扱いであり、これらはその均一性、その流動性およびその貯蔵における安定性の結果である。これらは、全て完全自動化で容易に充填および分配され、コンベアベルトまたは配管を通して輸送され、正確な配分量で各々の動物に投与され得る。また、ペレットは、新鮮な飼料よりも実質的に場所を取らず、動物により自発的に問題なく食べられる。
【0012】
したがって、これらのペレットに、アミノ酸ならびにビタミンおよびミネラルなどの他の重要な物質ばかりでなく、必要であれば抗生物質も、添加することができる。これらは、既に実際に実施されているが、バルネムリンの場合は記述するような特定の困難に遭遇し、これはこの種の物質の特徴であり、下記でより十分に説明する。
【0013】
バルネムリンは、ペレット飼料を製造する場合、特に飼料材料、とりわけ植物または動物由来の成分と接触するときかなり不安定であることが示されてきた。このことは、既に調製段階において実質的な損失につながる。ペレット飼料の調製において、動物または植物由来の乾燥有機出発物質は、粉砕され、添加物、ビタミン、痕跡元素および他の添加剤と密に混合され、すなわち実質的に均質化され、次に場合により約5から10重量%の水で湿らされ、約60から100℃の範囲の高められた温度、約1から100kbarの圧力で、飼料ペレットに圧縮される。この圧縮機中の短時間の局所的温度ピーク、いわゆるフラッシュは、短時間の間200℃までも達する。圧縮機中の塊の保持時間は、一般に約5から180秒であり、とりわけペレットの大きさに依存する。
【0014】
乾燥した非晶質塩酸塩の形態におけるバルネムリンは、これらの温度に、短時間の間それほど分解することなく耐え、室温で数か月間でも有効成分の無視できないほどの損失がなく貯蔵することができる一方、この有効成分は、圧力下、動物または植物飼料成分との密接な接触および突出した高温で比較的急速に分解する。飼料成分との接触は、まさに分解過程を触媒するように思われる。たとえ高圧および高温を伴う段階を技術的に可能な限り短時間に保ち、完成したペレットを圧縮過程の直後即座に室温に冷却するとしても、有効成分、すなわちバルネムリンの四分の一から三分の一はやはり失われる。有効成分の損失は、疑いなく動物への投与量の修正および従って、治療の成功への修正、並びに最終製品のコストにおける著しい上昇につながる。
【0015】
ペレット中の無処置のバルネムリンは、例えば乾燥非晶質塩酸塩よりも貯蔵において著しく不安定であることもまた、示されてきた。有効成分の分解は、室温においてさえも完成したペレット中で続いている。3か月後でさえも、有効成分の含有量は、60%未満に低下する。この相対的不安定性はまた、飼料ペレットの形態における有効成分の正確な投与量が、ペレット製造後約3週間しか予め確保することができないという事実にもつながった。したがって、動物飼育業者は、比較的製造したばかりのペレットしか用いることができなかった。彼らは実用的な長期間保存を求めることができず、抗生物質の保証された含有量を有する新鮮な飼料を入手できるように、4から6週間毎に飼料工場に新たな製品の発注をしなければならなかった。技術的に可能ではあるが、高度な製造工程管理を伴い、このことは、飼料工場がその製造計画に必ずしも適合しない少量の注文を常に製造しなければならないことを意味し、相互汚染を避けるための各バッチの間の大変な洗浄の苦労、および従ってペレットの追加の費用をもたらした。
【0016】
これらの理由により、有効物質の損失を伴わずにペレット製造の間の高温および高圧に耐え、調製されたペレットの形態において長期間の実用的な安定性をも有するように、多大な尽力が、バルネムリンおよび他の代表的な種類のプレウロムチリンを安定化するためになされてきた。
【0017】
これらの不成功な試みは、例えば(1)粒に圧縮することによる有効成分の表面積の低減(多くの異なる大きさの粒が試された)、(2)前記の有効成分の粒を多くの異なる保護層、例えばゼラチンまたは異なる糖およびラッカーで封止すること、(3)有効成分を多孔質材料(例えば、多様なセルロース、デンプン、ケイ酸またはゼオライト)中に、保護層を用いるかまたは用いないで封入すること、または(4)有効成分の大環状塩基性骨格の化学修飾、を含む。いくつかの場合において、化学修飾は、事実、分子それ自体の改善された安定性につながったが、同時に有効性の損失にもつながった。
【0018】
EP0524632において、シクロデキストリンとの錯体を形成することにより、乾燥飼料の貯蔵における安定性を向上させる試みがなされたが、それも部分的には成功的であった。
【0019】
上記のバルネムリンなどのプレウロムチリンを安定化するためのもう1つのより成功的な試みが、WO03/45354に記載されている。この中で、有効成分は、特殊な手順において微小粒に封入され、次にこれらの微小粒は、乾燥動物飼料に添加され、高圧および高温でペレット化飼料に圧縮される。しかし、この手順は、技術的に非常に複雑であり、ペレット化飼料のコストにおける実質的な上昇につながる。
【0020】
他の特許参照文献、例えばWO01/41758は、注射溶液の製造およびそれに関連する技術的な難しさを記載している。注射の場合、皮膚への軽度の刺激から治癒し難い壊死までの範囲の、とりわけ望ましくない副作用が、観察される。これもまた、バルネムリンが今日まで主に経口的に用いられている理由の1つのである。使用者はまた、時折、水溶液は作用の持続性がないと不平を言っている。1つの更なる問題は、遊離形態におけるバルネムリン(いわゆるバルネムリン塩基)もまた極めて不安定であり、従って非晶質塩酸塩として製造され、それ以来細菌性感染を治療するために好ましくはこの形態で用いられた。改善された耐性を有する注射形態が、上記のWO01/41758に記載されている。非晶質バルネムリン塩酸塩を用いる製剤は、極端な例においてそれらが経口的に、特に液体形態で提供される場合、嗜好性の問題につながる。
【0021】
従って、前記のように、簡単であり従って製造するのに安価であり、食料とのその正確な混合性のおかげで効率的および再現可能に計量することができ、乾燥動物飼料の調製および貯蔵の間の望ましい安定性につながるバルネムリンの適用形態に対する大きな必要性が存在することは明白である。
【0022】
いくつかの特許参照文献において、有機酸とのバルネムリンの塩が既に記述されているかまたは具体的に名前が挙げられてさえいる。例えば、EP−0,153,277において、バルネムリンのフマル酸水素塩、フマル酸塩およびナフタレン−1,5−スルホン酸塩が具体的に名前を挙げられている。しかしながら、この参照文献を調べると、それらの調製に関する報告もなければ、いかなる種類の化学的または生物学的データもないので、これらが全くの仮定の物質であることが、明らかである。EP−0,153,277に開示されている唯一の塩は、非晶質塩酸塩である。したがって前記のように、有機酸とのバルネムリンの塩は、特に結晶形のものは新規である。結晶性の塩酸塩さえも、どこにも記載されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明者らは、この度、驚くべきことに、前記の安定性および嗜好性の利点を組み合わせ安価に製造することができる、バルネムリンの有機酸の一定の塩との適用形態を調製することに成功した。その際本発明の観点から有機酸との結晶塩が好ましい。有機酸との結晶塩の安定性は非晶質塩に対して実質的に増大し、更に結晶性塩は、経口投与される場合に動物によってかなり良好に受容されるので本発明の観点から有機酸との結晶塩が好ましい。動物医薬における投与の経口形態の嗜好性は、治療の成功または失敗に対して決定的であり得る。したがって、改善された嗜好性を有する適用形態を提供することも、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、この問題を、バルネムリンを有機酸と反応させて、驚くべきことに高い結晶化および高い貯蔵における安定性を有する酸付加塩を形成することによる最適な方法において解決する。原則的に、全ての生理学的に許容できる有機酸が適している。適した酸の例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸またはマンデル酸などのモノカルボン酸のみならず、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸または酒石酸などのジカルボン酸、さらには、例えばクエン酸などのトリカルボン酸である。一般に、鏡像異性体的に純粋なモノ−およびジカルボン酸が、好ましい。D−酒石酸およびフマル酸が、特に適しており、特にD−酒石酸が適している。
【0025】
本発明に従って製造される酸付加塩の利点は、良好な結晶化においてもあり、これが高純度につながり、および従ってそれから調製される適用形態を用いる際の安全性につながる。
【0026】
有機酸との純粋なバルネムリンの塩を製造するための1つの一般的な方法は、例えば、
a)粗バルネムリン塩酸塩を塩基と反応させて遊離バルネムリン塩基を形成すること、
b)必要であれば、従来の方法により、遊離塩基を有機溶媒で抽出しおよび単離すること、
c)バルネムリン塩基を、有機溶媒中または有機溶媒混合物および場合により水との混合物中にて、有機酸と、場合により高温で、反応させること、および
d)必要であれば種晶を加えた後、必要であれば反応溶液をゆっくりと冷却しながら、バルネムリン酸付加塩を結晶化させること、
からなる。
【0027】
二塩基性または三塩基性の有機酸の場合、等モルまたは等規定量の酸をバルネムリン塩基と反応させることができ、等モル量が好ましい。
【0028】
バルネムリン塩基を放出するための適した塩基は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、水素化物、アミド、アルカノレート、酢酸塩または炭酸塩、アルキルアミン、アルキレンジアミン、場合によりN−アルキル化された、場合により不飽和のシクロアルキルアミン、水酸化アンモニウム、並びに炭素環式アミンである。これらの例としては、水酸化ナトリウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド、ナトリウムメタノレート、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、カリウムtert−ブタノレート、水酸化カリウム、炭酸カリウム、水素化カリウム、水素化カルシウム、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、N−シクロヘキシル−N,N−ジメチル−アミン、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、並びに1,5−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−5−エン(DBU)を挙げることができる。好ましいのは、アルカリ金属水酸化物、特に水酸化ナトリウムである。
【0029】
遊離バルネムリン塩基を抽出するために適した溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエテンまたはテトラクロロエテンなどの芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素類、並びにハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸ブチルなどのエステル類;またはジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどのエーテル類;またはこれらの混合物である。好ましいのは、エーテル類、特にtert−ブチルメチルエーテルである。
【0030】
バルネムリン塩基を有機酸と反応させるために適した溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、石油エーテル、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエテンまたはテトラクロロエテンなどの芳香族、脂肪族および脂環式炭化水素類、並びにハロゲン化炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピルまたは酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはジオキサンなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコールまたはグリセロールなどのアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチル−ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンまたはヘキサメチルリン酸トリアミドなどのアミド類;またはアセトニトリルもしくはプロピオニトリルなどのニトリル類;およびジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、または水を含むおよび含まないこれらの混合物である。
【0031】
好ましいのは、エステル類およびケトン類、並びにこれらの水との混合物、特に、酢酸エチル、アセトンおよび水の混合物である。特に好ましい溶媒混合物は、約70容量%から約90容量%の酢酸エチル、約5容量%から約25容量%のアセトンおよび約0から約5容量%の水からなる溶媒混合物は、特に約75容量%から約80容量%の酢酸エチル、約20容量%から約25容量%のアセトンおよび約1容量%から約2容量%の水からなる混合物である。
【0032】
以下に実施例として、遊離バルネムリンまたはその塩酸塩と有機酸との反応によるバルネムリン酸付加塩の調製方法を記載する。全ての温度は、摂氏で示す。
【0033】
調製例
【実施例1】
【0034】
塩の交換によるバルネムリン−D−酒石酸水素塩の調製
a)バルネムリン塩酸塩30.1gを撹拌しながら水300mlに加え、それを30から35℃に加熱した。その後、tert−ブチルメチルエーテル150mlを加え、pHを10n水酸化ナトリウム溶液約5mlで8から9に調整する。30から35℃で5分間撹拌した後、有機相を分離し、それぞれ水100mlで2回洗浄する。続いて有機溶媒を常圧下で留去する。
【0035】
b)未精製バルネムリンからなる蒸発残渣を、約40℃でエタノール50mlおよびD−酒石酸7.5gの調製溶液に溶解し、混合物をメチルエチルケトン350mlと共に撹拌する。温度が35℃に到達すると同時に、十分に撹拌しながら種晶を加えると、そこで標題化合物がゆっくりと結晶化する。懸濁液を自然冷却しながら更に約8時間撹拌する。続いて生成物を濾過し、メチルエチルケトンで洗浄し、50℃で乾燥する。このようにして標題化合物を、融点130℃を有する白色結晶として得る。
【実施例2】
【0036】
遊離塩基からのバルネムリン−D−酒石酸水素塩の調製
バルネムリン23.5gを65℃で78%の酢酸エチル、20.5%のアセトンおよび1.5%の水からなる混合溶媒240ml中に溶解し、次にD−酒石酸6.9gを加え、混合物を透明な溶液が得られるまで撹拌する。撹拌を継続しながら、種晶25mgを加えるとその約10分後に結晶化が始まる。懸濁液を沸騰温度で更に1時間撹拌し、次に2時間かけて室温に冷却する。沈殿生成物を濾過し、真空下50℃で一晩乾燥する。このようにして標題化合物が、融点172℃を有する白色結晶として得られる。
【実施例3】
【0037】
遊離塩基からのバルネムリンフマル酸水素塩の調製
バルネムリン59.3gを40℃で78%の酢酸エチル、20.5%のアセトンおよび1.5%の水からなる溶媒混合物220mlに溶解し、次にフマル酸12.1gを加え、混合物を、透明な溶液が得られるまで撹拌する。その後、混合物を30℃に冷却し、種晶0.5gを撹拌しながら加える。続いて混合物を30℃で更に3時間撹拌し、次に一晩かけて室温に放冷する。その後、混合物を0℃で更に2時間撹拌する。最後に、冷懸濁液を濾過し、残渣を酢酸エチルで洗浄し、真空下50℃で一晩乾燥する。このようにして標題化合物を、融点132℃を有する白色結晶として得る。
【0038】
安定性試験
動物飼料中のバルネムリン酸付加塩の安定性を試験するために、計算した量の酸付加塩(標的用量100ppmに相当する)を、小麦ベースの動物飼料約4kgに加え、高速実験室用ミキサー中で60秒間混合して、第1プレミックス(PM1)を形成する。次にプレミックスPM1約4kgを水平ミキサーに移し、同じ飼料21kgと更に6分間混合して、更なるプレミックス(PM2)を形成する。プレミックスPM2の約25kgを、垂直ミキサーに移し、更に同じ動物飼料175kgと8分間密に混合し、均質になったときに処理済混合物を得て、これは標的用量100ppmに相当するバルネムリン濃度を含有する。
【0039】
更なる処理の前に、各々100gの試料をその均質性を試験するために、医薬飼料混合物の上部、中央部および下部から取る。また、更なる試料を、安定性試験で用いるために無作為に取る。
【0040】
ここで完成した処理済み医薬飼料は、このままペレット化できる。このことを念頭において、飼料を仕上げ室に搬送し、ペレット化温度を75℃から85℃に調整するためにそれに水3kgおよび飽和蒸気を添加する。次に完成医薬飼料200kgを、飼料粉砕機のペレット化圧縮機に約20分かけて連続的に供給する。その後、ペレットを空気の連続流によりバッチ式で乾燥し、冷却する。
【0041】
ペレット化された医薬飼料の均質性を試験するために、各々約100gの試料を数点、ペレット化工程の開始時、中間時および終了時に取る。また、貯蔵における安定性を試験するために、試料を各バッチから無作為の順番で取る。
【0042】
以下の例では、動物飼料200kgあたりの有効成分の量は、バルネムリン塩酸塩、バルネムリンD−酒石酸水素塩またはバルネムリンフマル酸水素塩の20gであり、これは飼料中のバルネムリン100ppmに相当する。
【0043】
以下の表1では例として、動物飼料のペレット化工程におけるバルネムリンの異なる酸付加塩の安定性を比較する。
【0044】
【表1】

【0045】
これらのデータは、公知の塩酸塩と比較して有機酸とのバルネムリン付加塩の非常に高い安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

のバルネムリンおよび有機酸からなる塩。
【請求項2】
有機酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびトリカルボン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
有機酸が、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マンデル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、リンゴ酸、酒石酸およびクエン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項4】
有機酸が、鏡像異性体的に純粋なモノ−およびジカルボン酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項5】
有機酸が、D−酒石酸およびフマル酸からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項6】
有機酸が、D−酒石酸であることを特徴とする、請求項1に記載の塩。
【請求項7】
塩が、結晶形で存在することを特徴とする、請求項1から6の1項に記載の塩。
【請求項8】
a)粗バルネムリン塩酸塩を塩基と反応させて、遊離バルネムリン塩基を形成すること、
b)必要であれば、従来の方法により、前記遊離塩基を有機溶媒で抽出しおよび単離すること、
c)バルネムリン塩基を、有機溶媒中または有機溶媒混合物および場合により水中にて、有機酸と、場合により高温で、反応させること、および
d)必要であれば種晶を加えた後、必要であれば反応溶液をゆっくりと冷却しながら、バルネムリン酸付加塩を結晶化させること、
を特徴とする、請求項1から7の1項に記載の塩を製造するための方法。
【請求項9】
バルネムリン塩基の抽出が、エーテル中で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
バルネムリン塩基の抽出が、tert−ブチルメチルエーテル中で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
バルネムリン塩基と有機酸との反応が、アルコールおよびケトンの群からの溶媒中で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
溶媒が、エタノールおよびメチルエチルケトンであることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
バルネムリン塩基と有機酸との反応が、エステルの群、並びにケトンおよび水の群からの溶媒中で行われることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
溶媒混合物が、酢酸エチル、アセトンおよび水からなることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
溶媒混合物が、約70容量%から約90容量%の酢酸エチル、約5容量%から約25容量%のアセトンおよび約0から約5容量%の水からなることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
溶媒混合物が、約75容量%から約80容量%の酢酸エチル、約20容量%から約25容量%のアセトンおよび約1から約2容量%の水からなることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
温血動物における細菌感染の治療用の医薬を製造するための、請求項1から6の1項に記載の塩の使用。
【請求項18】
動物飼料用添加剤としての、請求項1から6の1項に記載の塩の使用。
【請求項19】
請求項1から6の1項に記載の少なくとも1つの塩の有効量を含有することを特徴とする、動物飼料ペレット。
【請求項20】
飲料水用添加剤としての、請求項1から6の1項に記載の塩の使用。

【公表番号】特表2008−528530(P2008−528530A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552575(P2007−552575)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000680
【国際公開番号】WO2006/079535
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】