説明

有機電界発光素子用材料およびそれを用いた有機電界発光素子

主鎖に非共役の3価の有機残基を含み、1価の有機残基が二以上の基が共役的に結合された構造を介して当該主鎖に結合されてなるユニット、及びアミノ基を有するユニットを含んでなる共重合体を含有する有機電界発光素子用材料および当該材料を用いた有機電界発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機電界発光素子用材料およびそれを用いた高発光効率の有機電界発光(EL)素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機物質を使用した電界発光素子は、固体発光型の安価な大面積フルカラー表示素子としての用途が有望視され、多くの開発が行われている。一般に有機電界発光素子は、発光層および該層を挟んだ一対の対向電極から構成されている。発光は、両電極間に電界が印加されると、陰極側から電子が注入され、陽極側から正孔が注入され、電子が発光層において正孔と再結合し、エネルギー準位が伝導帯から価電子帯に戻る際にエネルギーを光として放出する現象である。
【0003】
従来の有機電界発光素子は、無機電界発光(EL)素子に比べて駆動電圧が高く、発光輝度や発光効率も低かった。また、特性劣化も著しく実用化には至っていなかった。近年、10V以下の低電圧で発光する高い蛍光量子効率を持った有機化合物を含有した薄膜を積層した有機電界発光素子が報告され、関心を集めている(例えば、下記非特許文献1参照)。この方法は、金属キレート錯体を発光層、アミン系化合物を正孔注入層に使用して、高輝度の緑色発光を得ており、6〜7Vの直流電圧で、輝度は数1000cd/mに達している。しかしながら、有機化合物の蒸着操作を伴う有機電界発光素子作成は、生産性に問題が有り、製造工程の簡略化、大面積化の観点から、塗布方式の素子作成が望ましい。
【0004】
生産性に有利な塗布方式の有機電界発光素子作成で使用される有機電界発光素子の発光材料としては、共役系のポリマー発光材料、例えばポリフェニレンビニレン系ポリマーが知られている(例えば、下記非特許文献2および3参照)。しかし、ポリフェニレンビニレン系ポリマーは、発光部をポリマー主鎖に持つため、発光材料の濃度制御が難しく、色調、発光強度の微妙な制御が難しい等の問題がある。同じく、塗布方式を用いる有機電界発光素子として、色素分散系ポリマーを用いるものがある。この色素分散系ポリマーを用いる素子の代表的なものは、ポリビニルカルバゾール中に、低分子量色素等を分散する素子(例えば、下記特許文献1参照)である。これら色素分散系ポリマーを用いる素子においては、電子輸送性、電子注入性、正孔輸送性、正孔注入性、発光性など種々の機能を有する材料を発光素子に混合して使用できる。
【0005】
ポリビニルカルバゾールは、ガラス転移点が高いため比較的高い耐久性を有するが、駆動電圧が高く、ホール移動度、製膜性も十分ではないため、発光効率が低く、実用上問題がある。このようなポリビニルカルバゾールの問題点を改善するため、様々なカルバゾール誘導体ポリマー、コポリマーが提案されてきた。例えばカルバゾール誘導体とジアミン誘導体の共重合ポリマー(例えば、下記特許文献2および3参照)、カルバゾール誘導体とオキサジアゾール誘導体の共重合ポリマー(例えば、下記特許文献4〜7参照)、その他特殊なカルバゾールユニットを有するポリマー(例えば、下記特許文献8〜10参照)であるが、いずれも発光輝度、発光効率が低く、寿命も短い。
【0006】
【特許文献1】特開平4−212286号公報
【特許文献2】特開2002−124390号公報
【特許文献3】特開2002−37817号公報
【特許文献4】特開平11−60660号公報
【特許文献5】特開平11−307253号公報
【特許文献6】特開2000−159846号公報
【特許文献7】特開2001−126875号公報
【特許文献8】特開2002−105445号公報
【特許文献9】特開2002−363227号公報
【特許文献10】特開2002−302516号公報
【非特許文献1】アプライド フィジクス レターズ(Appl.Phys.Lett.)、51巻、913−915ページ、1987年
【非特許文献2】ポリマー ブレツン(Polymer Bulletin)、38巻、167−176ページ、1997年
【非特許文献3】マクロモレキュールズ(Macromolecules)、32巻、1476−1481ページ、1999年
【0007】
上記ポリビニルカルバゾールあるいはその誘導体ポリマーを用いた色素分散型素子の駆動電圧は、共役系のポリマー発光材料、たとえばポリフェニレンビニレン誘導体を用いた有機電界発光素子にくらべて高い。これは、ポリフェニレンビニレン誘導体のポリマー発光材料に比べて、色素分散型素子に用いられる非共役ポリマー材料のキャリアの移動度が低い為であると考えられる。表示デバイスにおいて小消費電力につながるため、駆動電圧は注目される特性の一つであり、色素分散型素子に用いられる前記ポリビニルカルバゾール、あるいはその誘導体ポリマーを用いた色素分散型素子においても、駆動電圧の低下が要望されている。
【0008】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、その目的は、駆動電圧が低く、発光効率が高い有機電界発光素子およびこの素子において使用される有機電界発光素子用材料を提供することである。
また、本発明の目的は、上記に加え、有機電界発光素子を塗布あるいは印刷により形成する際、製膜性に優れ、また耐久性に優れた被膜を形成することのできる有機電界発光素子用材料、並びに耐久性に優れ、高品質の有機電界発光素子を提供することである。
【0009】
本発明の上記目的は、有機電界発光素子用材料に用いられるポリマーとして、下記一般式[1]で表されるユニットおよびアミノ基を有するユニットを含む共重合体を用いることによって達成された。
すなわち、本発明は、下記1から6に記載の有機電界発光素子用材料および下記7に記載の有機電界発光素子に関する。
【0010】
1.下記一般式[1]で表されるユニットおよびアミノ基を有するユニットを有する共重合体を含んでなることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【0011】
一般式[1]:

【0012】
(式中、Aは、非共役の3価の有機残基を表し、Bは、置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれた二以上の基が共役的に結合されて形成されてなる2価の有機残基を表し、Cは下記一般式[2]で表される一価の有機残基を表す。)
【0013】
一般式[2]:

【0014】
(式中、R〜Rは、結合部位、水素原子もしくは置換基を表し、Xは、直接結合、−O−、−S−、−Se−、−NH−、−NR−(Rはアルキル基またはアリール基を表す。)、−S(=O)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH−を表し、R〜Rは互いに結合してアリール環を形成しても良く、さらにそのアリール環に置換基を有しても良い。)
【0015】
2.上記1記載の有機電界発光素子用材料において、一般式[2]で表される一価の有機残基が、下記一般式[3]で表される一価の有機残基である有機電界発光素子用材料。
【0016】
一般式[3]:

(式中、R11〜R19は、結合部位、水素原子もしくは置換基を表す。)
【0017】
3.上記1または2に記載の有機電界発光素子用材料において、前記共重合体が、さらに下記一般式[7]で表されるユニットを有することを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【0018】
一般式[7]:

【0019】
(式中、Jは非共役の3価の有機残基を表し、Kは、直接結合、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基とからなる群より選ばれてなる2価の有機残基、または、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と置換もしくは未置換のエテニレン基とからなる群より選ばれた二以上の基が結合して形成されてなる2価の有機残基を表す。ただし、置換もしくは未置換のエテニレン基が選ばれる場合は、該エテニレン基は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の間の基とされる。また、R21は、水素原子もしくは置換基を表す。)
【0020】
4.上記1〜3のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、前記共重合体が、さらに、N−ビニルカルバゾールもしくはN−ビニルカルバゾール誘導体に由来するユニット、スチレンあるいはスチレン誘導体に由来するユニット、(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸誘導体に由来するユニット、マレイン酸あるいはマレイン酸誘導体に由来するユニットおよび有機酸ビニルエステルに由来するユニットから選ばれた少なくとも一つのユニットを有することを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【0021】
5.上記1〜4のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、さらに三重項励起子からの発光が可能な発光材料が含まれることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【0022】
6.上記1〜5のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、さらに電子輸送材料が含まれることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【0023】
7.一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機電界発光素子において、前記層の少なくとも一層が、上記1〜6のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【発明の開示】
【発明の効果】
【0024】
一般式[1]のユニットおよびアミノ基を有するユニットからなる共重合体およびこの共重合体に、共重合ユニットとして、さらにN−ビニルカルバゾールあるいその誘導体に由来するユニットを含む共重合体は、発光性、正孔輸送性に優れている。また、前記各共重合体の共重合ユニットとして、一般式[7]のユニットがさらに含まれるものは、発光性、正孔輸送性に加え、電子輸送性にも優れている。さらに、これら共重合体に、共重合ユニットとして、スチレンおよびその誘導体、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、有機酸ビニルエステルなどに由来するユニットを含ませることにより、共重合体の物性の調整が可能となり、例えば、製膜性に優れた、すなわち平滑性に優れた塗膜を容易に形成することができる。また、これら共重合体は、耐熱性、薄膜状態の安定性にも優れている。このため、本発明の共重合体は有機電界発光素子の発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料などとして優れた材料であり、これを単独でまたは他の材料とともに本発明の有機電界発光素子用材料として用いることにより、駆動電圧が低く、発光効率が高い電界発光素子を形成することができる。
【0025】
[発明の実施の形態]
本発明の有機電界発光素子用材料は、上記一般式[1]で表されるユニットおよびアミノ基を有するユニットを有する共重合体を含むことを特徴とし、また本発明の有機電界発光素子は、この共重合体を含む有機電界発光素子用材料を素子の層構成材料として用いることを特徴とするものである。
【0026】
前記共重合体を構成するユニットである一般式[1]において、基Aは、基B、基Cを側鎖に有する、非共役主鎖骨格を形成することのできる任意の3価の有機残基を表す。基Aの非共役主鎖骨格を形成することのできる3価の基としては、例えば次の一般式[8]で表される基が挙げられる。
【0027】
一般式[8]:

【0028】
(式中、R31は水素原子、メチル基または−CNを表し、R32は直接結合、−CH−、−CHO−、−O−、−COO−または−CONH−を表し、nは0又は1を表す。)
【0029】
一般式[8]で示される3価の有機残基の例を下記E−1〜E−12に示すが、これにより基Aが限定されるものではない。
【0030】

【0031】
一般式[1]の基Bは、置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれた二以上の基が共役的に結合されて形成されてなる2価の有機残基を表す。基Bの一部を構成することのできる前記未置換アリーレン基は、好ましくは炭素数6〜60の単環または縮合環のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜40、更に好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基である。具体例としては、フェニレン、ナフタレンジイル、アントラセンジイル、フェナントロリンジイル、ピレンジイル、トリフェニレンジイル、ベンゾフェナントロリンジイル、ペリレンジイル、ペンタフェニレンジイル、ペンタセンジイルなどが挙げられ、置換アリーレン基としては、これらアリーレン基に置換基を有するものが挙げられる。
【0032】
また、前記未置換ヘテロアリーレン基は、好ましくは炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、より好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子の少なくとも一つを含有する炭素数4ないし60の単環または縮合環の芳香族ヘテロ環基であり、更に好ましくは炭素数4ないし30の5員または6員の芳香族ヘテロ環基である。芳香族ヘテロ環基の具体例としてはピロールジイル、フランジイル、チエニレン、ピリジンジイル、ピリダジンジイル、ピリミジンジイル、ピラジンジイル、キノリンジイル、イソキノリンジイル、シンノリンジイル、キナゾリンジイル、キノキサリンジイル、フタラジンジイル、プテリジンジイル、アクリジンジイル、フェナジンジイル、フェナントロリンジイルなどが挙げられ、置換ヘテロアリーレン基としては、これらヘテロアリーレン基に置換基を有するものが挙げられる。
【0033】
前記アリーレン基およびヘテロアリーレン基の置換基としては、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、置換もしくは未置換のアルキル基、置換もしくは未置換のアルコキシ基、置換もしくは未置換のチオアルコキシ基、シアノ基、アミノ基、モノもしくはジ置換アミノ基、水酸基、メルカプト基、置換もしくは未置換のアリールオキシ基、置換もしくは未置換のアリールチオ基、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基が挙げられる。また置換基は、隣接した置換基同士で置換もしくは未置換の環を形成しても良い。このような、隣接した置換基同士で形成される環としては、例えば5ないし7員環の酸素原子、窒素原子、硫黄原子等が含まれてもよい脂肪族、炭素環式芳香族、複素環式芳香族、複素環が挙げられる。これらの環は、任意の位置にさらに置換基を有してもよい。
【0034】
前記置換基のうち、置換もしくは未置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、ステアリル基、トリクロロメチル基、トリフロロメチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、1,3−シクロヘキサジエニル基、2−シクロペンテン−1−イル基、2,4−シクロペンタジエン−1−イリデニル基などが挙げられる。
【0035】
置換もしくは未置換のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基、トリフロロメトキシ基等がある。
【0036】
置換もしくは未置換のチオアルコキシ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基等がある。
【0037】
また、モノまたはジ置換アミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(アセトオキシメチル)アミノ基、ビス(アセトオキシエチル)アミノ基、ビス(アセトオキシプロピル)アミノ基、ビス(アセトオキシブチル)アミノ基、ジベンジルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
置換もしくは未置換のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、p−tert−ブチルフェニキシ基、3−フルオロフェニキシ基等がある。
【0039】
置換もしくは未置換のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、3−フルオロフェニルチオ基等がある。
【0040】
置換もしくは未置換のアリール基を具体的に例示すると、例えば、フェニル基、ビフェニレニル基、トリフェニレニル基、テトラフェニレニル基、3−ニトロフェニル基、4−メチルチオフェニル基、3,5−ジシアノフェニル基、o−,m−およびp−トリル基、キシリル基、o−,m−およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、アントラキノニル基、3−メチルアントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、2−エチル−1−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、6−クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0041】
置換もしくは未置換のヘテロアリール基を具体的に例示すると、例えば、チオニル基、フリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、フタラジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、フルフリル基、イソチアゾリル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、2−メチルピリジル基、3−シアノピリジル基等が挙げられる。
【0042】
アリーレン基およびヘテロアリーレン基の好ましい置換基は、炭素数が1〜20のアルキル基もしくはアルコキシ基、フェニル基、シアノ基などである。
【0043】
基Bは、上記置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれた二以上の基が、直接あるいは例えばエテニレン基などを介して共役的に連結されて形成された2価の有機残基であればいずれのものでもよい。すなわち、本発明の一般式[1]の基Bは、置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基から選ばれた二以上の基が直接結合された2価の基、あるいは前記アリーレン基あるいはヘテロアリーレン基が必要に応じエテニレン基などを介して互いに結合した2価の基である。前記アリーレン基もしくはヘテロアリーレン基が置換基を有する場合、置換基同士が一体となって新たな環を形成することがあってもよい。以下に、置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれた2種以上の基が、直接あるいは必要であればエテニレン基を介して連結されて形成された2価の有機残基の基本骨格のいくつかを例示する。勿論、本発明の基Bは、下記例示のものあるいは下記基本骨格が置換基により置換された基に限定されるものではない。なお、エテニレン基としては、エテニレン基、1−メチルエテニレン基、1−エチルエテニレン基などが挙げられる。
【0044】

【0045】
一般式[1]の基Cは、前記一般式[2]で表される基であり、好ましくは、前記一般式[3]で表される基である。一般式[2]および一般式[3]における、R〜RおよびR11〜R19の置換基としては、前記アリーレン基あるいはヘテロアリーレン基の置換基と同様の基が挙げられる。一般式[2]または一般式[3]で表される好ましい基の具体例を以下に示すが、一般式[2]または一般式[3]で表される基が下記例示のものに限定されるものではない。
【0046】


【0047】
上記式中、R41〜R51は、水素原子または置換基であり、置換基は、R〜RおよびR11〜R19と同様の基を表す。R41〜R51の置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、ジメチルアミノ基などの置換アミノ基、フェニル基などのアリール基が好ましい。
【0048】
一方、本発明の共重合体を構成するアミノ基を有するユニットにおいては、アミノ基は共重合体の主鎖または側鎖に存在する。このアミノ基を有するユニットは、下記一般式[4]で表される構造をユニット内に有するものが好ましい。
【0049】
一般式[4]:

【0050】
(式中、EおよびFは、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基とからなる群より選ばれてなる2価の有機残基、または、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と置換もしくは未置換のエテニレン基とからなる群より選ばれた二以上の基が結合して形成されてなる2価の有機残基を表す。ただし、置換もしくは未置換のエテニレン基が選ばれる場合は、該エテニレン基は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の間の基とされる。)
【0051】
また、より好ましくは下記一般式[5]で表される構造をユニット内に有するものである。
一般式[5]:

【0052】
(式中D、E、Fは、それぞれ独立に、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基とからなる群より選ばれてなる2価の有機残基、または、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と置換もしくは未置換のエテニレン基とからなる群より選ばれた二以上の基が結合して形成されてなる2価の有機残基を表す。ただし、置換もしくは未置換のエテニレン基が選ばれる場合は、該エテニレン基は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の間の基とされる。)
【0053】
アミノ基を有するユニットは、さらに好ましくは下記一般式[6]で表されるユニットである。
一般式[6]:

【0054】
(式中、Dは、上記で定義した基を表し、LおよびMは、置換もしくは未置換のアリール基または置換もしくは未置換のヘテロアリール基からなる群より選ばれてなる1価の有機残基を表し、Gは非共役の3価の有機残基を表す。)
【0055】
上記一般式[6]の基Gとしては、前述の一般式[1]の基Aと同様のものが例示できる。また、一般式[4]〜[6]における基D、E、Fにおける、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基としては、一般式[1]の基Bの置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と同様の基が例示される。また、一般式[6]の基L、Mにおける置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基としては、一般式[1]の基Bの置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基と同様の基が挙げられる。なお、基LおよびMのアリール基もしくはヘテロアリール基の置換基としては、置換もしくは未置換のアリール基、置換もしくは未置換のヘテロアリール基、これらアリールあるいはヘテロアリール置換アルキル基などが選択されても良い。また、一般式[4]〜[6]の基D、E、Fにおけるエテニレン基としては、エテニレン基、1−メチルエテニレン基、1−エチルエテニレン基などが挙げられる。
【0056】
一般式[6]で表されるユニットとしては、以下の表1のH−1からH−12に示すものが好ましいものとして挙げられる。しかし、一般式[6]で表されるユニットが、下記記載のものに限定されるものではない。
【0057】

【0058】
本発明の共重合体においては、一般式[1]で表されるユニットおよびアミノ基を有するユニットは、共重合体を構成するユニットとして必須であり、一般式[1]のユニットと、アミノ基を有するユニットの共重合比は、好ましくは、モル比で0.1:99.9〜99.9:0.1、好ましくは5:95〜95:5である。これらユニットを有する共重合体は、さらに共重合ユニットとして、前記一般式[7]で表されるユニット、N−ビニルカルバゾールあるいはN−ビニルカルバゾール誘導体に由来するユニット、スチレンあるいはスチレン誘導体に由来するユニット、(メタ)アクリル酸あるいはその誘導体に由来するユニット、マレイン酸あるいはその誘導体に由来するユニットおよび/または有機酸ビニルエステルに由来するユニットなどを有していても良い。一般式[7]のユニットの割合は、通常、共重合体中90モル%以下、例えば5〜70モル%程度とされる。また、N−ビニルカルバゾールあるいはN−ビニルカルバゾール誘導体に由来するユニットは、共重合体中、90モル%以下、好ましくは70モル%以下、例えば5〜60モル%程度とされる。さらに、スチレンあるいはスチレン誘導体に由来するユニット、(メタ)アクリル酸あるいはその誘導体に由来するユニット、マレイン酸あるいはその誘導体に由来するユニットおよび有機酸ビニルエステルに由来するユニットの共重合体中での共重合比は、本発明の目的を達成しうる範囲内で適宜の値で良いが、通常、50モル%以下、例えば1〜40モル%程度とされる。
【0059】
N−ビニルカルバゾールあるいはその誘導体に由来するユニットとしては、例えば次の次の一般式[9]で表されるユニットが挙げられる。
一般式[9]:

【0060】
(式中、R60は、1以上の置換基を表し、置換基が複数存在する場合は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換または未置換の、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。)
N−ビニルカルバゾールあるいはその誘導体としては、N−ビニルカルバゾール、N−ビニル−3,6−ジメチルカルバゾール、N−ビニル−3,6−ジエチルカルバゾール、N−ビニル−3,6−ジフェニルカルバゾール、N−ビニル−3−メチルカルバゾール、N−ビニル−3−エチルカルバゾール、N−ビニル−3−フェニルカルバゾールなどが好ましいものとして挙げられる。
【0061】
スチレンあるいはその誘導体に由来するユニットとしては、例えば、次の一般式[10]で表されるユニットが挙げられる。
一般式[10]:

【0062】
(式中、R61は、水素原子またはメチル基を表し、R62は、1以上の置換基を表し、置換基が複数存在する場合は、同一でも異なっていてもよく、置換または未置換の、アルキル基、アルコキシ基またはアリール基を表す。)
スチレンあるいはその誘導体としては、スチレン、α−メチルスチレンおよびスチレンのアルキル置換体、例えばメチル、エチル、n−ブチル、tert−ブチル置換体などが好ましいものとして挙げられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸あるいはその誘導体に由来するユニットとしては、例えば、次の一般式[11]で表されるユニットが挙げられる。
一般式[11]:

【0064】
(式中、R63は、水素原子またはメチル基を表し、R64は、−OR65または−NR6667を表し、R65、R66およびR67は、水素原子、置換または未置換の、アルキル基またはアリール基を表し、R66およびR67は同一でも異なっていてもよい。)
(メタ)アクリル酸あるいはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミドのN−アルキルあるいはアリール置換体あるいはN,N−アルキルあるいはアリール置換体などが好ましいものとして挙げられる。
【0065】
マレイン酸あるいはその誘導体に由来するユニットとしては、例えば、次の一般式[12]で表されるユニットが挙げられる。
一般式[12]:

【0066】
(式中、R68およびR69は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換または未置換の、アルキル基またはアリール基を表す。)
マレイン酸あるいはその誘導体としては、例えば、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸ジメチルエステル、マレイン酸ジエチルエステル、マレイン酸ジフェニルエステルなどが好ましいものとして挙げられる。
【0067】
有機酸ビニルエステルに由来するユニットとしては、例えば、次の一般式[13]で表されるユニットが挙げられる。
一般式[13]:

【0068】
(式中、R70は、置換または未置換の、アルキル基またはアリール基を表す。)
有機酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニルが好ましいものとして挙げられる。
なお、上記一般式[9]〜[12]のR62、R64〜R70の置換または未置換の、アルキル基またはアリール基の置換基としては、一般式[1]の基Bでアリーレン基またはヘテロアリーレン基の置換基として記載された基と同様の基が挙げられる。
【0069】
一般式[7]において、基Jは、基Kおよびオキサゾリル基を側鎖に有する、非共役主鎖骨格を形成することのできる任意の3価の有機残基を表すが、基Jの3価の有機残基の例としては、前記一般式[1]の基A、一般式[6]の基Gと同様な基が挙げられる。また、一般式[1]の基A、一般式[6]の基Gおよび一般式[7]の基Jは、同一でも異なったものであってもよい。一般式[7]の基Kは、直接結合、置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基、または、これらの基およびエテニレン基が組み合わされてなる2価の有機残基を表す。基Kを構成する置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基としては、一般式[1]の基Bの置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と同様なものが挙げられる。さらに、エテニレン基についても、一般式[4]〜[6]で説明したものと同様なものを挙げることができる。また、一般式[7]のR21の置換基としては、一般式[1]の置換もしくは未置換のアリーレン基、置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基の置換基で説明した基と同様の基が挙げられる。
【0070】
本発明の有機電界発光素子用材料において用いられる上記各共重合体は、該当するユニットに相当するモノマーの重合により得られる。共重合体を形成する際の非共役主鎖骨格モノマーの重合様式は、適宜の方法、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合などのビニル重合、縮重合、開環重合、種々の重合反応による共重合体形成を行うことができ、重合方法は特に限定しないが、本発明では特にビニル重合による共重合体形成が好ましい。
【0071】
ビニル重合により、共重合体が通常のラジカル重合法により形成される場合、重合触媒としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジチオカルバメート誘導体などの公知のラジカル重合開始剤が用いられる。さらに、リビングラジカル重合法による場合には、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキサイド(TEMPO)などのN−オキシラジカルと、上記のラジカル重合開始剤とを組み合わせた触媒系によるリビングラジカル重合法、アトムトランスファー重合などによるリビングラジカル重合法を利用することもできる。ラジカル重合触媒の使用割合は、モノマー1モルに対して1〜0.00001モルである。ラジカル重合法における重合溶媒としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、γ−ブチロラクトン、乳酸エチルなどのエステル系溶媒、シクロヘキシルベンゾフェノン、シクロヘキサノン、2−エチルペンタノン、エチルイソアミルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフランなどの環状エーテルやジエチレングリコールジメチルエーテルなどの脂肪族エーテル類などのエーテル系溶媒を用いることができる。反応温度は、例えば0〜200℃であり、反応時間は、例えば0.5〜72時間である。
【0072】
通常のアニオン重合法による場合には、重合触媒として、ナフチルナトリウムなどのアルフィン触媒、メチルリチウム、エチルリチウム、ブチルリチウムなどのアルキルリチウム、フェニルリチウムなどのアリールリチウム、ジエチル亜鉛などのアルキル亜鉛、リチウムアルキルマグネシウム、リチウムアルキルバリウムなどのアート錯体などのアルカリ金属、アルカリ土類金属などの金属による有機金属化合物などが用いられる。また、リビングアニオン重合法による場合には、触媒としてブチルリチウムなどを用いて重合を行えば良い。アニオン重合触媒の使用割合は、通常、モノマー1モルに対して0.1〜0.00001モルである。また重合溶媒としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの炭化水素、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル化合物などを用いることができる。反応温度は、例えば−50〜100℃であり、その反応時間は、例えば5分〜24時間である。
【0073】
通常のカチオン重合法による場合においては、重合触媒としてトリフルオロボレート、四塩化錫などのルイス酸、硫酸、塩酸などの無機酸、カチオン交換樹脂などを用いればよい。また、リビングカチオン重合法による場合には、触媒としてHI、HI−ZnIなどを用いればよい。カチオン重合触媒の使用割合は、モノマー1モルに対して0.01〜0.00001モルである。このようなカチオン重合法において、重合溶媒としては、メチレンクロライド、クロロベンゼンなどに代表されるハロゲン化炭化水素類、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類、アセトニトリル、ニトロベンゼンなどの高極性溶媒などを用いることができる。また、反応温度は、例えば−150〜150℃であり、その反応時間は、例えば0.01〜12時間である。
【0074】
また、一般式[1]の基B、Cからなる一価の有機残基、アミノ基を有するユニットのアミノ基が側鎖にある場合のアミノ基を含む有機残基、一般式[7]の基Kおよびオキサジアゾール基からなる一価の有機残基などは、非共役主鎖骨格モノマーの段階で導入されていなくとも、非共役主鎖骨格が形成されたあと、導入・変性されてもよい。
【0075】
なお、本発明の一般式[1]で表されるユニットとアミノ基を有するユニットとの共重合体は、ランダム、ブロック、またはグラフト共重合体であってもよく、それらの中間的な構造を有する高分子たとえばブロック性をもつランダム共重合体であってもよい。あるいはこれらユニットとともに、共重合ユニットとして共重合体中に導入されても良い、一般式[7]で表されるユニット、N−ビニルカルバゾールあるいその誘導体、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、有機酸ビニルエステルなどに由来するユニットを含む共重合体も、ランダム、ブロック、またはグラフト共重合体であってよく、それらの中間的な構造を有する高分子たとえばブロック性をもつランダム共重合体であってもよい。
【0076】
本発明の有機電界発光素子用材料として用いられる共重合体は、材料の耐熱性、薄膜状態の安定性を考えると、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定法によるポリスチレン換算重量平均分子量で1,000〜1,000,000、特に3,000〜500,000であることが好ましい。しかし、これにより、本発明の有機電界発光素子用材料として用いられる共重合体の重量平均分子量が、前記例示のものに限定されるものではない。
【0077】
共重合体を構成するユニットおよびこれらユニットによる共重合体の構造例を、表1に具体的に示すが、本発明の有機電界発光素子用材料に用いられる共重合体が、以下の具体例により限定されるものではない。表1は、各ユニットモノマーの構造を示すのみで、その重合形態を示したものではない。また、表中の%は、重量%を表す。
【0078】

【0079】

【0080】

【0081】

【0082】
本発明の一般式[1]のユニットおよびアミノ基を有するユニットからなる共重合体は、発光性、正孔輸送性に優れている。またこの共重合体に、さらに共重合ユニットとして、N−ビニルカルバゾールあるいその誘導体、スチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、有機酸ビニルエステルなどに由来するユニットを含む共重合体も同様の特性を有する。したがって、これら共重合体は、有機電界発光素子の正孔輸送性発光材料として有効に使用することができる。勿論有機電界発光素子の正孔輸送材料としても有効に使用することができる。なお、共重合ユニットとして用いられるスチレンおよびその誘導体、アクリル酸およびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、有機酸ビニルエステルなどに由来するユニットは、共重合体の物性の改善、例えば製膜性などを改善するために、さらにN−ビニルカルバゾールあるいその誘導体は、これに加えて、正孔輸送性の調整、向上などをも目的として共重合体中に導入されるものである。また、共重合ユニットとして、一般式[7]のユニットを含む共重合体は、電子輸送性も付与される。したがって、一般式[7]のユニットを含む共重合体は、有機電界発光素子の発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料のいずれとしても使用できる。
【0083】
本発明の共重合体は、単独で有機電界発光素子用材料として使用することができるし、他の有機材料や無機材料と併用して有機電界発光素子用材料として使用することもできる。本発明の共重合体と併用する有機材料は低分子有機材料であっても高分子有機材料であってもよい。また、他の高分子有機材料と積層塗布して使用することも可能である。更には、低分子化合物と混合したり、積層したりして使用することも可能である。この場合、低分子化合物はポリマーバインダーと混合して塗布しても、真空蒸着、スパッタリング等の方法で積層してもよい。
【0084】
以下、本発明の有機電界発光素子用材料およびこれを用いた本発明の有機電界発光素子について具体的に説明するが、これにより本発明の有機電界発光素子用材料および有機電界発光素子が限定されるものではない。
【0085】
有機電界発光素子は、陽極と陰極間に一層もしくは多層の有機薄膜を形成した素子である。一層型の場合、陽極と陰極との間に発光層が設けられる。発光層は、発光材料を含有し、それに加えて陽極から注入した正孔、もしくは陰極から注入した電子を発光材料まで輸送させるために、正孔輸送材料もしくは電子輸送材料を含有しても良い。多層型としては、[陽極/正孔注入帯域/発光層/陰極]、[陽極/発光層/電子注入帯域/陰極]、[陽極/正孔注入帯域/発光層/電子注入帯域/陰極]の多層構成で積層した有機電界発光素子がある。さらには、発光素子の耐圧性、層間の密着性などを改善するため、これら層間に補助的な層を形成することも知られている。本発明の有機電界発光素子は、このような従来知られたいずれの層構成を有するものであってよい。そして、これら各層を有する有機電界発光素子は、通常、次のようにして形成される。すなわち、まず透明基板上に、陽極層が設けられ、この陽極層上に、必要に応じ正孔注入帯域が設けられ、この正孔帯域上には、発光層が設けられる。さらに、この発光層上には、必要に応じ電子注入帯域が設けられ、さらに陰極層が設けられる。そして、陽極層および陰極層は直流電源に接続される。なお、上記例においては、基板上にまず陽極層を形成することから層の形成を行ったが、まず陰極層を基板上に形成するようにしても良い。また、正孔注入帯域、発光層、電子注入帯域は、それぞれ二層以上の層構成により形成されても良い。その際には、正孔注入帯域の場合、電極から正孔を注入する層を正孔注入層、正孔注入層から正孔を受け取り発光層まで正孔を輸送する層を正孔輸送層と呼ぶ。同様に、電子注入帯域の場合、電極から電子を注入する層を電子注入層、電子注入層から電子を受け取り発光層まで電子を輸送する層を電子輸送層と呼ぶ。これらの各層は、材料のエネルギー準位、耐熱性、有機層もしくは金属電極との密着性等の各要因により選択されて使用される。
【0086】
透明基板としては、ガラス基板、透明樹脂基板、石英ガラス基板などを用いることができる。有機電界発光素子の陽極に使用される導電性物質としては、4eVより大きな仕事関数を持つものが好適であり、炭素、アルミニウム、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、タングステン、銀、金、白金、パラジウム等およびそれらの合金、ITO基板、NESA基板において用いられている酸化スズ、酸化インジウム等の酸化金属、さらにはポリチオフェンやポリピロール等の有機導電性樹脂が挙げられる。また、陰極に使用される導電性物質としては、4.0eVより小さな仕事関数を持つものが好適であり、マグネシウム、バリウム、カルシウム、セシウム、アルミニウム、錫、鉛、チタニウム、イットリウム、リチウム、ルテニウム、マンガン等およびそれらの合金が用いられるが、陽極および陰極に使用される導電性物質がこれらに限定されるものではない。陽極および陰極は、必要があれば二層以上の層構成により形成されていても良い。
【0087】
本発明の有機電界発光素子用材料を構成する共重合体は、上記のとおり、発光性、正孔輸送性に優れている。また、一般式[7]のユニットを有する場合、電子輸送性にも優れている。このため、発光材料、正孔輸送材料、電子輸送材料として用いることができ、発光層、正孔注入帯域、電子注入帯域を構成する材料として使用できるが、特に発光層の材料として好ましく使用することができる。
【0088】
本発明の共重合体は、単独で用いられても、同一層中で他の発光材料、正孔もしくは電子輸送性化合物と混合して使用しても差し支えない。このような発光材料としては、一重項励起子から発光するもの、三重項励起子から発光するもの、並びにその両者から発光するものがあり、本発明の有機電界発光素子用材料においてはそれらのいずれの発光材料も使用可能である。本発明の共重合体と共に発光層に使用できる発光材料またはドーパント材料としては、ポリアルキルフルオレン誘導体、およびポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、その他発光性高分子が挙げられる。また、この他に、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、テトラセン、コロネン、クリセン、フルオレセイン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ペリノン、フタロペリノン、ナフタロペリノン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、オキサジアゾール、アルダジン、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、ピラジン、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、イミン、ジフェニルエチレン、ビニルアントラセン、ジアミノカルバゾール、ピラン、チオピラン、ポリメチン、メロシアニン、イミダゾールキレート化オキシノイド化合物、キナクリドン、ルブレンおよび色素レーザー用や増感用の蛍光色素等があるが、発光材料がこれらに限定されるものではない。
【0089】
本発明の共重合体と共に発光層に使用できる発光材料またはドーパント材料としては、特に三重項励起子からの発光が可能な発光材料が好ましい。三重項励起子からの発光が可能な発光材料としては、三重項発光性の金属錯体があり、イリジウム錯体Ir(ppy)(Tris−Ortho−Metalated Complex of Iridium(III)with 2−Phenylpyridine)等が知られている。Ir(ppy)を用いた緑色発光素子は、8%の外部量子収率を達成しており、従来有機電界発光素子の限界といわれていた外部量子収率5%を凌駕した(Applied Physics Letters 75,4(1999))。その他、Ir錯体化合物、金属配位ポリフィリン化合物が本発明の共重合体と共に使用可能であるがこれらに限定されるものではない。
【0090】
発光層には、必要があればさらに正孔輸送材料や電子輸送材料を使用することもできる。有機電界発光素子は、多層構造にすることにより、クエンチングによる輝度や寿命の低下を防ぐことができる。必要があれば、発光材料、ドーパント材料、正孔輸送材料や電子輸送材料を組み合わせて使用することができる。また、ドーパント材料により、発光輝度や発光効率の向上、赤色や青色の発光を得ることもできる。
【0091】
発光層において、本発明の共重合体と共に用いられる、あるいは正孔輸送層を形成する際に用いられる正孔輸送材料は、正孔を輸送する能力を持ち、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成した励起子の電子注入帯域または電子輸送材料への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物であれば何れのものでも良い。具体的には、PEDOT(商品名:バイエル社製 ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェンとポリスチレンスルホン酸との錯体)、フタロシアニン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、イミダゾールチオン、ピラゾリン、ピラゾロン、テトラヒドロイミダゾール、ヒドラゾン、アシルヒドラゾン、ポリアリールアルカン、スチルベン、ブタジエン、ベンジジン型トリフェニルアミン、スチリルアミン型トリフェニルアミン、ジアミン型トリフェニルアミン等と、それらの誘導体、およびポリビニルカルバゾール、ポリシラン、導電性高分子等の高分子材料等が挙げられる。しかし、本発明の有機電界発光素子で用いられる正孔輸送材料が、これらに限定されるものではない。
【0092】
また、発光層において、本発明の共重合体と共に用いられる、あるいは電子輸送層を形成する際に用いられる電子輸送材料は、電子を輸送する能力を持ち、陰極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成した励起子の正孔注入帯域への移動を防止し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物であればいずれのものでも良い。具体的には、例えば、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フレオレニリデンメタン、アントラキノジメタン、アントロン等とそれらの誘導体などが挙げられるが、本発明の有機電界発光素子で用いられる電子輸送材料が、これらに限定されるものではない。また、正孔輸送材料に電子受容物質を、電子輸送材料に電子供与性物質を添加することにより増感させることもできる。
【0093】
本発明の共重合体は、ガラス転移点や融点が高い為、電界発光時における有機層中、有機層間もしくは、有機層と金属電極間で発生するジュール熱に対する耐性(耐熱性)が向上するので、有機電界発光素子材料として使用した場合、高い発光輝度を示し、長時間発光させる際にも有利である。
【0094】
本発明の有機電界発光素子用材料の成膜方法としては、特に限定はなく、例えば粉末状態からの真空蒸着法、溶媒に溶解した後、塗布する方法(例えばインクジェット法、スプレイ法、印刷法、スピンコーテング法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ロールコート法など)などを用いることができる。しかし、素子製造工程の簡略化、加工性、大面積化の観点から、塗布方式が好ましい。塗布方式で製膜する場合に用いる溶媒としては、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルムなどの有機ハロゲン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、またはこれらの混合溶媒であっても良い。高分子の構造、分子量によっても異なるが、通常溶媒の0.01から10重量%、好ましくは0.1から5重量%溶解した溶液を用いて製膜する。なお、正孔注入帯域、発光層、電子注入帯域の各膜厚に特に制限はないが、通常、各々、1〜1000nmの範囲で選択される。
【0095】
本発明の有機電界発光素子用材料を用いた有機電界発光素子は、壁掛けテレビ等のフラットパネルディスプレイや、平面発光体として、複写機やプリンター等の光源、液晶ディスプレイや計器類等の光源、表示板、標識灯等へ応用が考えられ、その工業的価値は非常に大きい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】化合物1の赤外線吸収スペクトル図
【図2】化合物1のH−NMRスペクトル図
【図3】化合物2の赤外線吸収スペクトル図
【図4】化合物2のH−NMRスペクトル図
【図5】化合物3の赤外線吸収スペクトル図
【図6】化合物3のH−NMRスペクトル図
【図7】共重合体P−1の赤外線吸収スペクトル図
【図8】共重合体P−10の赤外線吸収スペクトル図
【図9】化合物5の赤外線吸収スペクトル図
【図10】化合物5のH−NMRスペクトル図
【図11】共重合体P−12の赤外線吸収スペクトル図
【図12】共重合体P−15の赤外線吸収スペクトル図
【図13】化合物7の赤外線吸収スペクトル図
【図14】化合物7のH−NMRスペクトル図
【図15】共重合体P−17の赤外線吸収スペクトル図
【図16】化合物8の赤外線吸収スペクトル図
【図17】化合物8のH−NMRスペクトル図
【図18】共重合体P−20の赤外線吸収スペクトル図
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
以下、本発明の有機電界発光素子用材料およびそれを用いた有機電界発光素子を、製造例、実施例などに基づき具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
なお、以下の製造例、実施例、比較例の説明中、部は重量部、%は重量%を表す。また、以下の製造例においては、赤外線吸収スペクトル(IR)は、パーキンエルマー社製Spectrum One Ver.Aフーリエ変換赤外線分光分析装置を用いて測定した。また、NMRスペクトルは、日本電子社製GSX270 FT−NMR分析装置を用いて測定した。さらに、GPC分析は、東ソー社製GPC−8020(カラム:TSKgel Multipore−Hを用いて測定した。
【0098】
製造例1:共重合体P−1の合成方法
共重合体P−1の合成を、以下の反応経路にしたがって実施した。
【0099】

【0100】
<化合物(1)の合成>
乾燥窒素気流下、p−ブロモヨードベンゼン15.4g(54.4mmol)、カルバゾール10.0g(59.8mmol)、Cu粉末0.3g、KCO7.9g(57.0mmol)と、溶媒として1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(1,3−dimethyl−2−imidazolidinone)を100ml加え、190℃にて18時間撹拌した。反応液を水700mlに注ぎ、析出物をろ過後、70℃で乾燥して、クルード生成物を得た。このクルード生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて単離精製し、化合物(1)を得た。収率55%。
この化合物(1)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。化合物(1)の、赤外線吸収スペクトルを図1に、H−NMRスペクトルを図2に示す。
【0101】
<化合物2の合成>
四つ口フラスコに冷却管をつけ、化合物(1)2.5g(7.8mmol)、4−ビニルフェニルボロニックアシッド1.72g(11.6mmol)に、テトラヒドロフラン(THF)30mlを加えて撹拌した。ここに2M KCOaq 30mlを加えた。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh))200mg(174mol)およびTHF10mlを加え、80℃で24時間還流した。カラムクロマトグラフィーおよびメタノール再沈殿により精製し、化合物(2)を得た。収率は62%であった。
この化合物(2)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。化合物(2)の赤外線吸収スペクトルを図3に、H−NMRスペクトルを図4に示す。
【0102】
<化合物3の合成>
四つ口フラスコに冷却管をつけ、4−ブロモ−N,N−ジトリルアミン6.79g(19.27mmol)、4−ビニルフェニルボロニックアシッド3.0g(20.27mmol)にTHF50mlを加えて撹拌した。ここに2M KCOaq 50mlを加えた。テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)(Pd(PPh))351mg(304μmol)およびTHF10mlを加え、80℃で24時間還流した。カラムクロマトグラフィーおよびメタノール再沈殿により精製し、化合物(3)を得た。収率は65%であった。
この化合物(3)の構造決定は、元素分析、質量分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等により行った。化合物(3)の赤外線吸収スペクトルを図5に、H−NMRスペクトルを図6に示す。
【0103】
<共重合体P−1の合成>
シュレンク型フラスコに化合物(2)および化合物(3)をそれぞれ0.8g、0.2g入れて真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル0.02g、THF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−1(共重合比80:20)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−1の重量平均分子量(Mw)は、50,000であった。共重合体P−1の赤外線吸収スペクトルを、図7に示す。
【0104】
製造例2:共重合体P−10の合成
共重合体P−10の合成を、以下の反応式にしたがって行った。
【0105】

【0106】
シュレンク型フラスコに、化合物(4)、化合物(2)および化合物(3)をそれぞれ0.34g、0.45g、0.1g入れて、真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル(0.02g)、THF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−10(共重合比45:45:10)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−10の重量平均分子量(Mw)は43,000であった。共重合体P−10の赤外線吸収スペクトルを、図8に示す。
【0107】
製造例3:共重合体P−12の合成
共重合体P−12の合成を、以下の反応式にしたがって行った。
【0108】

【0109】
シュレンク型フラスコに、化合物(5)および化合物(3)をそれぞれ0.80g、0.20g入れて、真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル0.02gおよびTHF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−12(共重合比80:20)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−12の重量平均分子量(Mw)は35,000であった。化合物(5)の赤外線吸収スペクトルを図9に、H−NMRスペクトルを図10に、また共重合体P−12の赤外線吸収スペクトルを図11に示す。
【0110】
製造例4:共重合体P−15の合成
共重合体P−15の合成を、以下の反応式にしたがって行った。
【0111】

【0112】
シュレンク型フラスコに、化合物(4)、化合物(6)および化合物(3)をそれぞれ0.45g、0.45g、0.1g入れて、真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル0.02gおよびTHF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−15(共重合比45:45:10)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−15の重量平均分子量(Mw)は83,000であった。共重合体P−15の赤外線吸収スペクトルを、図12に示す。
【0113】
製造例5:共重合体P−17の合成
共重合体P−17の合成を、以下の反応式にしたがって実施した。
【0114】

【0115】
シュレンク型フラスコに化合物(2)、化合物(3)および化合物(7)をそれぞれ0.48g、0.12g、0.40g入れて、真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル0.02gおよびTHF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は90%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−17(共重合比48:12:40)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−17の重量平均分子量(Mw)は123,000であった。化合物(7)の赤外線吸収スペクトルを図13に、H−NMRスペクトルを図14に、また共重合体P−17の赤外線吸収スペクトルを図15に示す。
【0116】
製造例6:共重合体P−20の合成
共重合体P−20の合成を、以下の反応式にしたがって実施した。
【0117】

【0118】
シュレンク型フラスコに化合物(4)、化合物(2)、化合物(3)および化合物(8)をそれぞれ0.27g、0.27g、0.06g、0.4g入れて、真空脱気を数回繰り返した。ここにアゾビスイソブチロニトリル0.02gおよびTHF2.7mlを加え、70℃で9時間撹拌した。反応液は粘度を帯びてきた。メタノール再沈殿により精製を行った。収率は95%であった。
得られた白色粉末の元素分析、赤外線吸収スペクトル、NMRスペクトル等を行った結果、上記構造を有する共重合体P−20(共重合比27:27:6:40)であると判明した。GPC分析の結果、共重合体P−20の重量平均分子量(Mw)は153,000であった。化合物(8)の赤外線吸収スペクトルを図16に、H−NMRスペクトルを図17に、また共重合体P−20の赤外線吸収スペクトルを図18に示す。
【実施例1】
【0119】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例1で得られた共重合体P−1およびIr(ppy)(3%)を1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子1を作製した。
【実施例2】
【0120】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例1で得られた共重合体P−1、Ir(ppy)(3%)および電子輸送材料(下記化合物(9))(35%)を、1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子2を作製した。
【0121】
化合物(9):

【実施例3】
【0122】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例2で得られた共重合体P−10およびIr(ppy)(3%)および電子輸送材料(下記化合物(10))(35%)を、1.0wt%の濃度でトルエンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子3を作製した。
【0123】
化合物(10):

【実施例4】
【0124】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例5で得られた共重合体P−17およびIr(ppy)(3%)を1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子4を作製した。
【実施例5】
【0125】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例3で得られた共重合体P−12およびIr(Me−ppy)(6%)を1.0wt%の濃度でトルエンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCsFを1nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子5を作製した。
【実施例6】
【0126】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例4で得られた共重合体P−15およびIr(t−Bu−ppy)(6%)を1.0wt%の濃度でトルエンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子6を作製した。
【実施例7】
【0127】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、表1記載の共重合体P−18およびIr(ppy)(3%)を1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子7を作製した。
【実施例8】
【0128】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、表1記載の共重合体P−19およびIr(ppy)(3%)を1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により80nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子8を作製した。
【実施例9】
【0129】
洗浄したITO電極付きガラス板上に、PEDOT/PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシ)−2,5−チオフェン/ポリスチレンスルホン酸)をスピンコート法で40nmの膜厚に製膜し、製造例6で得られた共重合体P−20およびIr(ppy)(6%)を1.0wt%の濃度でジクロロエタンに溶解分散させ、スピンコーティング法により70nmの膜厚の発光層を形成した。この塗布基板に真空蒸着法によりCaを20nm、Alを200nmの膜厚で電極を形成させ、有機EL素子9を作製した。
【0130】
比較例1〜4
実施例2の共重合体P−1の代わりに、下記共重合体(11)、または下記単一重合体(12)を発光層に使用したものを、素子10、11(比較例1および2)とした。また、実施例3の共重合体P−10の代わりに、共重合体(11)または単一重合体(12)を発光層に使用したものを、素子12、13(比較例3および4)とした。なお、共重合体(11)および単一重合体(12)については、前記特許文献3を参照されたい。
【0131】
共重合体(11):

【0132】
単一重合体(12):

【0133】
実施例1〜9および比較例1〜4で得られた有機EL素子のEL特性を、表2に示す。なお、輝度および効率は、次の<輝度の測定>および<効率の算出>にしたがって測定、算出された。
【0134】
<輝度の測定>
ミノルタ社製の色彩輝度計(CS−100A)を用いて測定した。
【0135】
<効率の算出>
効率の算出は、アドヴァンテック社製電源(R6243)を用いて、EL素子発光時の電圧、電流値を測定し、公知の下記計算式により求めた。
電流効率(cd/A)=輝度(cd/cm)/電流密度(mA/cm)×10
電力効率(lm/W)=π×輝度(cd/cm)×発光面積(m)/電圧(V)×電流密度(mA/cm)×10
【0136】
【表2】

【0137】
表2の各特性の比較から、本発明の有機電界発光素子用材料を用いた電界発光素子(素子2、素子3)は、従来公知の共重合体(11)あるいは単一重合体(12)を用いた電界発光素子(素子10、素子11、素子12、素子13)に比べ、駆動電圧が低く、また高効率発光であることが分かる。
【0138】
本発明の有機電界発光素子は低駆動電圧化、発光効率、発光輝度の向上を達成するものであり、併せて、上記実施例は本発明で使用される発光材料、発光補助材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、増感剤、樹脂、電極材料等および素子作製方法を限定するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で表されるユニットおよびアミノ基を有するユニットを有する共重合体を含んでなることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
一般式[1]:

(式中、Aは、非共役の3価の有機残基を表し、Bは、置換もしくは未置換のアリーレン基および置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基からなる群より選ばれた二以上の基が共役的に結合されて形成されてなる2価の有機残基を表し、Cは下記一般式[2]で表される一価の有機残基を表す。)
一般式[2]:

(式中、R〜Rは、結合部位、水素原子もしくは置換基を表し、Xは、直接結合、−O−、−S−、−Se−、−NH−、−NR−(Rはアルキル基またはアリール基を表す。)、−S(=O)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−CH−を示し、R〜Rは互いに結合してアリール環を形成しても良く、さらにそのアリール環に置換基を有しても良い。)
【請求項2】
請求の範囲第1項に記載の有機電界発光素子用材料において、一般式[2]で表される一価の有機残基が、下記一般式[3]で表される一価の有機残基である有機電界発光素子用材料。
一般式[3]:

(式中、R11〜R19は、結合部位、水素原子もしくは置換基を表す。)
【請求項3】
請求の範囲第1項または第2項に記載の有機電界発光素子用材料において、前記共重合体が、さらに下記一般式[7]で表されるユニットを有することを特徴とする有機電界発光素子用材料。
一般式[7]:

(式中、Jは非共役の3価の有機残基を表し、Kは、直接結合、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基とからなる群より選ばれてなる2価の有機残基、または、置換もしくは未置換のアリーレン基と置換もしくは未置換のヘテロアリーレン基と置換もしくは未置換のエテニレン基とからなる群より選ばれた二以上の基が結合して形成されてなる2価の有機残基を表す。ただし、置換もしくは未置換のエテニレン基が選ばれる場合は、該エテニレン基は、アリーレン基および/またはヘテロアリーレン基の間の基とされる。また、R21は、水素原子もしくは置換基を表す。)
【請求項4】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、前記共重合体が、さらに、N−ビニルカルバゾールもしくはN−ビニルカルバゾール誘導体に由来するユニット、スチレンあるいはスチレン誘導体に由来するユニット、(メタ)アクリル酸あるいは(メタ)アクリル酸誘導体に由来するユニット、マレイン酸あるいはマレイン酸誘導体に由来するユニットおよび有機酸ビニルエステルに由来するユニットから選ばれた少なくとも一つのユニットを有することを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【請求項5】
請求の範囲第1項〜第4項のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、さらに三重項励起子からの発光が可能な発光材料が含まれることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料において、さらに電子輸送材料が含まれることを特徴とする有機電界発光素子用材料。
【請求項7】
一対の電極間に、発光層または発光層を含む複数層の有機化合物薄膜を形成してなる有機電界発光素子において、前記層の少なくとも一層が、上記請求の範囲第1項〜第6項のいずれかに記載の有機電界発光素子用材料を含むことを特徴とする有機電界発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【国際公開番号】WO2005/022961
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513409(P2005−513409)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010836
【国際出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】