説明

有機EL発光装置

【課題】純度の高い光を出射することができ、再現性に優れた高品位な画像を得ることが可能なプリントヘッドや画像表示装置などを構成するのに好適な有機EL発光装置を提供する。
【解決手段】複数の有機EL発光部11として、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ個々に発する赤色発光部11R、緑色発光部11G、および青色発光部11Bを有している、有機EL発光装置A1であって、複数の有機EL発光部11において発生された光から、赤色光および緑色光の中間波長域の光と、緑色光および青色光の中間波長域の光との少なくとも一方を吸収する光吸収手段を備えている。この光吸収手段は、たとえば基板10に光吸収剤を分散混入させることにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光方式のプリントヘッドや画像表示装置などとして構成される有機EL発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感光方式のプリントヘッドや画像表示装置の発光手段として、有機ELを利用したものが普及しつつある。有機ELは、有機蛍光体を含む発光層が陰極および陽極間に挟まれた基本構造を有しており、陰極および陽極を利用して与えられる電場によって発光層(有機蛍光体)が発光する(たとえば特許文献1〜3を参照)。このため、有機ELは、低電圧駆動が可能であり、また応答性に優れる利点がある。
【0003】
このような有機ELを利用して、感光方式のカラープリントヘッドを構成する場合、赤色、緑色、および青色の3原色の光をそれぞれ出射可能な複数の有機EL発光部を設けることとなる。この場合において、カラープリント画像の画質を高めるには、各有機EL発光部から半値幅の小さい高純度の3原色の光を出射させる必要がある。
【0004】
しかしながら、有機ELは、既述したとおり、有機蛍光体を発光させるために、その出射光の純度は有機蛍光体の性質に依存しており、たとえばLEDと比較すると、出射光の半値幅は大きく、色純度が低いものとなる特有の問題点があった。具体的には、たとえば図2(a)に示すように、有機ELから発せられる赤色光SR、緑色光SG、および青色光SBのそれぞれは、それらのピーク波長に対して短波長側よりも長波長側の方が発光強度が高くなる傾向にあり、半値幅が大きいものとなっていた。このため、同図(b)に示すように、赤色光SR、緑色光SG、および青色光SBを合成した場合には、赤と緑との中間波長域、および緑と青との中間波長域の発光強度が比較的高くなる。したがって、従来の有機ELを利用したプリントヘッドや画像表示装置においては、プリント画像あるいは表示画像の再現性がやや劣るものとなっており、高品位な画像を得る上で、未だ改善の余地があった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−94729号公報
【特許文献2】特開平11−95723号公報
【特許文献3】特開平9−212128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであって、純度の高い光を出射することができ、再現性に優れた高品位な画像を得ることが可能なプリントヘッドや画像表示装置などを構成するのに好適な有機EL発光装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面により提供される有機EL発光装置は、複数の有機EL発光部として、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ個々に発する赤色発光部、緑色発光部、および青色発光部を有している、有機EL発光装置であって、上記複数の有機EL発光部において発生された光から、上記赤色光および上記緑色光の中間波長域の光と、上記緑色光および上記青色光の中間波長域の光との少なくとも一方を吸収する光吸収手段を備えていることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、赤色光および緑色光の中間波長域の光と、緑色光および青色光の中間波長域の光との少なくとも一方の強度が低くなり、赤色光、緑色光、および青色光の全て、あるいはそれらのうちの2つの色彩光の半値幅が小さくなり、光の純度が高められる。その結果、たとえばプリントヘッドあるいは画像表示装置として構成した場合には、プリント画像あるいは表示画像の色の再現性を優れたものとし、高品位の画像を得ることができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光吸収手段は、550〜600nmの波長範囲に吸収波長のピークがある第1の光吸収帯域と、490〜515nmの波長範囲に吸収波長のピークがある第2の光吸収帯域とを有している。
【0010】
このような構成によれば、ピーク波長が620nm程度の赤色光、530nm程度の緑色光、および470nm程度の青色光のそれぞれの半値幅を小さくし、それら3色の光の純度を高めるのにより好適となる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の有機EL発光部は、基板上に形成されているとともに、上記複数の有機EL発光部から発せられた光はこの基板を透過するように構成されており、上記基板中には、光吸収剤が分散されていることにより、上記基板が上記光吸収手段として構成されている。
【0012】
このような構成によれば、有機EL発光部のベース部材としての役割を果たす基板が光吸収手段とされているために、その構成は合理的であり、部品点数の増加や全体の大型化を招かないようにすることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の有機EL発光部は、基板上に形成されているとともに、上記複数の有機EL発光部から発せられた光はこの基板を透過するように構成されており、上記基板の光出射面には、上記光吸収手段が積層して設けられている。この場合、上記光吸収手段は、光吸収剤のコーティング層、あるいはシート状もしくはフィルム状の光吸収フィルタとして構成することができる。
【0014】
このような構成によれば、基板に光吸収手段を積層させるだけの簡易な構成により、本発明の意図する作用が得られることとなり、その製造は容易である。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、感光記録媒体に光を照射して画像を形成するための有機ELプリントヘッドとして構成され、または画像を表示するための有機EL表示装置として構成されている。ただし、本発明に係る有機EL発光装置は、上記以外の装置または機器類として構成することができることは言うまでもない。
【0016】
本発明の第2の側面により提供される有機EL発光装置は、赤色光、緑色光、または青色光を発する有機EL発光部を備えている、有機EL発光装置であって、上記有機EL発光部において発生された光から、この光のピーク波長域とは相違する裾領域の波長域の光を吸収する光吸収手段を備えている。
【0017】
このような構成によれば、有機EL発光部から発せられる赤色光、緑色光、または青色光の純度を高めることが可能となり、やはりこの有機EL発光装置を用いてプリントヘッドや画像表示装置を構成した場合には、記録画像または表示画像の品位を高めることができる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る有機EL発光装置の要部の一例を示している。本実施形態の有機EL発光装置A1は、基板10、および複数の有機EL発光部11を備えている。
【0021】
複数の有機EL発光部11としては、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ個々に自発光可能な赤色発光部11R、緑色発光部11G、および青色発光部11Bがある。これらの有機EL発光部11は、基板10の片面上に、透明な陽極12、複数の有機層13、および複数の陰極14を積層することにより形成される。複数の有機層13どうし、および複数の陰極14どうしの間には、絶縁層(図示略)が適宜形成されている。
【0022】
陽極12は、陰極14とともに有機層13の目的部分に電場を与えるためのものであり、たとえばITOにより形成されている。有機層13は、陽極12および陰極14により電場が与えられた部分が、エレクトロルミネッセントにより自発光するものであり、この有機層13としては、赤色有機層13R、緑色有機層13G、および青色有機層13Bがある。これらの有機層13R,13G,13Bは、有機蛍光体を含んだ発光層(図示略)を有しており、この発光層に含ませる有機蛍光体の種類の選択することにより、それぞれが赤色光、緑色光、および青色光を発するようになっている。陰極14は、たとえばアルミニウムなどにより形成されており、有機層13において発生した光を基板10側に反射させるようになっている。有機EL発光部11において発生した光は、基板10を透過してこの基板10の片面の光出射面10aから外部に出射する。
【0023】
基板10は、複数の有機EL発光部11を形成するためのベース部材の役割を果たすものである。ただし、本実施形態においては、この基板10が、本発明の光吸収手段の一例に相当している。この基板10は、たとえば透明な樹脂板あるいはガラス板を用いて構成されており、その内部には、後述する波長範囲の光を吸収する第1および第2の光吸収剤が分散して混入されている。
【0024】
第1の光吸収剤は、赤色発光部11Rから発せられる赤色光のピーク波長(たとえば620nm)と、緑色発光部11Gから発せられる緑色光のピーク波長(たとえば530nm)とのそれぞれのピーク波長の中間波長域(図3の符号S1で示す波長域)の光を吸収するものであり、550〜600nmの波長範囲に吸収波長のピークを有している。第2の光吸収剤は、前述した緑色光のピーク波長と、青色発光部11Bから発せられる青色光のピーク波長(たとえば470nm)とのそれぞれのピーク波長の中間波長域(図3の符号S2で示す波長域)の光を吸収するものであり、490〜515nmの波長範囲に吸収波長のピークを有している。これら第1および第2の光吸収剤としては、たとえば有機色素化合物が用いられている。有機色素化合物としては、可視光線中の特定波長域の光のみを吸収する特性をもつものがあり、本実施形態では、このような特性をもつ2種類の有機色素化合物が利用されている。なお、これら第1および第2の光吸収剤は、基板10の成形用の原材料に予め混入させておき、この原材料を板状に成形して基板10を作製する手法により、その内部に分散混入されている。
【0025】
次に、上記した有機EL発光装置A1の作用について説明する。
【0026】
まず、各有機EL発光部11に電場を付与すると、赤色光、緑色光、および青色光がそれぞれ発せられ、基板10に入射することとなる。ここで、この基板10に入射する光は、従来技術において説明した場合と同様に、たとえば図2(a)に示したような発光スペクトルとなる。赤色発光部11R,緑色発光部11G、および青色発光部11Bを同時に駆動させた際の発光スペクトルは、同図(b)に示したようなものとなる。同図から理解されるように、赤色光SR、緑色光SG、および青色光SBは、それらの裾領域が一部重なり合い、かつこの重なり合った部分の光の強度は比較的高く、3原色の光の純度が低いものとなっている。
【0027】
これに対し、基板10には、既述したように、第1および第2の光吸収剤が分散混入されており、所定の波長範囲の光が吸収される。より具体的には、図3に示すように、赤色発光部11Rから出射した光については、そのピーク波長(620nm)よりも短波長側の裾範囲の光が吸収される。緑色発光部11Gから出射された光については、そのピーク波長(530nm)よりも短波長側および長波長側の双方の裾範囲の光が吸収され、青色発光部11Rから出射された光については、ピーク波長(470nm)よりも長波長側の裾範囲の光が吸収される。このようなことから、この有機EL発光装置A1においては、基板10の光出射面10aから半値幅の小さい赤色、緑色、および青色の純度の高い光が出射することとなる。
【0028】
なお、本発明においては、基板に分散混入させる光吸収剤の種類は、有機EL発光装置から出射される光の特性(たとえば有機蛍光体の種類)に応じて適宜選択すればよい。また、第1および第2の光吸収剤の一方を省略することも可能である。第1および第2の吸収剤に加えて、赤色光のピーク波長(620nm)よりも長波長側の裾範囲の光(たとえば640nm以上)を吸収し、あるいは青色光のピーク波長(470nm)よりも短波長側の裾範囲の光(たとえば450nm以下)を吸収する光吸収剤をさらに追加して用いてもよい。
【0029】
図4は、本発明の他の実施形態を示している。図4以降の図においては、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0030】
図4に示す有機EL発光装置A2は、基板10Aの光出射面10aに、光吸収手段としての第1および第2の光吸収層21,22が積層して設けられた構成を有している。基板10Aは、たとえば透明な樹脂板やガラス板を用いて形成されており、光吸収剤は混入されていない。第1の光吸収層21は、赤色光と緑色光とのそれぞれのピーク波長どうしの中間波長域の光を吸収するものであり、第2の光吸収層22は、緑色光と青色光とのそれぞれのピーク波長どうしの中間波長域の光を吸収するものである。これら第1および第2光吸収層21,22は、透明母材中に、先に説明した実施形態と同様な第1および第2の光吸収剤を分散混入させたフィルム状またはシート状のものである。
【0031】
本実施形態の有機EL発光装置A2においては、複数の有機EL発光部11から発せられた光が、第1および第2の光吸収層21,22を通過する際に、それらの光のうち、図3に示した中間波長域S1,S2の光が順次吸収される。その結果、最終的に得られる光は、図1に示した先の実施形態の場合と同様に、赤色、緑色、および青色の純度が高い光となる。
【0032】
なお、第1および第2の光吸収層21,22は、基板10Aに対して図4に示す積層順序とは逆の順序で積層されていてもよい。また、第1および第2の光吸収層21,22のいずれか一方を省略することも可能である。さらに、光吸収層は、第1および第2の光吸収剤の双方を同一層に混在させた単一層として形成することもできる。第1および第2の光吸収層21,22に加えて、赤色光のピーク波長(620nm)よりも長波長側の裾範囲の光(たとえば640nm以上)を吸収する第3の光吸収層、および青色光のピーク波長(470nm)よりも短波長側の裾範囲の光(たとえば450nm以下)を吸収する第4の光吸収層の双方または一方をさらに追加形成してもよい。光吸収層については、フィルム状またはシート状に形成する手段に代えて、光吸収剤が混入されたペーストを基板10Aに直接塗布して硬化させることにより、膜状に構成してもよい。
【0033】
図5〜図8は、本発明に係る有機EL発光装置が有機ELプリントヘッドとして構成された場合の一例を示している。本実施形態の有機ELプリントヘッドA3は、感光紙Kなどの感光性記録媒体にカラープリントを行なうためのものであり、有機ELプリントヘッド基板31と、レンズアレイ32とを備えている。
【0034】
有機ELプリントヘッド基板31は、レンズアレイ32に向けてライン状の光を出射するためのものである。図7および図8に示すように、この有機ELプリントヘッド基板31は、基板10Bと、複数の有機EL発光部11とを有しており、これらの基本的な構成は、図1に示した基板10および複数の有機EL発光部11と同様である。したがって、基板10Bには、既述した第1および第2の光吸収材が分散混入されている。基板10B上には、複数の有機EL発光部11を覆い、これを保護するための封止ケース38が設けられている。
【0035】
基板10Bは、長矩形の平板状であり、この基板10B上には、3列の陰極14と有機層13とがこの基板10Bの長手方向に延びて形成されている。これに対し、複数の陽極12は、基板10Bの短手方向に延びている。有機層13のうち、複数の陽極12と3列の陰極14とが交差してこれらの間に挟まれた複数の部分が発光可能な領域であり、この部分が有機EL発光部11である。複数ずつの赤色発光部11R、緑色発光部11G、および青色発光部11Bのそれぞれは、基板10Bの長手方向に一定間隔で列状に並んでいる。3列の陰極14の長手方向端部には、端子用の配線部14aが連設されている。これに対し、複数の陽極12の長手方向一端は、基板10B上に搭載されている複数の駆動IC34に向けて延びており、これら複数の駆動IC34に導通接続されている。これら複数の駆動IC34のスイッチング動作により、通電のオン・オフがなされ、複数の有機EL発光部11の発光駆動が制御される。
【0036】
図6および図7に示すように、レンズアレイ32は、各有機EL発光部11から出射してくる光を感光紙K(図5参照)上に集束させるためのものであり、レンズホルダ32aに複数のロッドレンズ32bが列状に配列されて保持された構成を有している。各レンズアレイ32は、たとえば正立等倍像を結像可能なものである。レンズアレイ32は、各ロッドレンズ32bのレンズ面が基板10Bを挟んで複数の有機EL発光部11に対向するように、有機ELプリントヘッド基板31に組み付けられている。
【0037】
この有機ELプリントヘッドA3においては、有機ELプリントヘッド基板31から赤色光、緑色光、および青色光のそれぞれがライン状に出射され、それらのライン状の光がレンズアレイ32により集束されて感光紙Kに照射される。一方、有機ELプリントヘッド基板31は、複数の有機EL発光部11および基板10Bが、図1に示した有機EL発光装置A1と同様な構成とされている。このため、有機ELプリントヘッド基板31、ひいては有機ELプリントヘッドA3から出射されるライン状の赤色光、緑色光、および青色光のそれぞれは、発光スペクトルにおいて半値幅の小さいものとなる(図3参照)。その結果、感光紙K上には、色彩の再現性が良好な高品質なカラー画像を形成することが可能となる。
【0038】
図9は、本発明に係る有機EL表示装置を有機EL画像表示装置として構成した場合の一例を示している。本実施形態の有機EL表示装置A4は、カラー画像を表示可能なものであり、有機EL発光パネル40を備えている。
【0039】
有機EL発光パネル40は、基板10C上に複数の有機EL発光部11がマトリクス状に配置されたものである。これら基板10Cおよび複数の有機EL発光部11の基本的な構成は、図1に示したものと同様である。したがって、やはり基板10Cは、光吸収剤が分散混入されており、所定の周波数域の光を吸収可能となっている。この基板10C上には、複数の有機EL発光部11を覆ってこれらを保護する封止ケース43が設けられている。この有機EL発光パネル40では、互いに隣接する赤色発光部11R、緑色発光部11G、および青色発光部11Bの計3つの発光部により1画像が構成されており、目的とする発光部を選択的に発光させ、またそれらの発光部の発光強度を選択することにより、所望の画像を表示することが可能となっている。基板10C上には、複数の陰極14に導通接続された駆動IC34Aが搭載されており、この駆動IC34Aが上記したような複数の有機EL発光部11を選択的に駆動させる役割を果たす。
【0040】
この有機EL表示装置A4においては、有機EL発光パネル40から赤色、緑色、および青色の光が面状に発せられ、この点が先に述べた有機ELプリントヘッドA3とは相違する。ただし、やはりそれらの光が基板10Cを透過する際には、赤色光と緑色光との中間波長域S1、および緑色光と青色光との中間波長域S2の光が吸収される。この作用により、基板10Cを透過する光は、半値幅が小さく、赤色、緑色、および青色の純度が高いものとなるため、画質の優れたカラー画像表示が可能となる。
【0041】
なお、図5〜図8に示した有機ELプリントヘッドA3、および図9に示した有機EL表示装置A4については、図1に示した実施形態の有機EL発光装置A1について述べたのと同様な設計変更が可能である。また、基板10B,10Cに光吸収剤を分散混入させる手段に代えて、図4に示した有機EL発光装置A2において用いられているのと同様な光吸収手段を用いることも可能である。
【0042】
本発明は、赤色、緑色、および青色の3色の光を出射する有機EL発光装置に限らず、それらのうちの2色の光、あるいは1色のみの光を出射する有機EL発光装置にも適用することが可能である。たとえば、モノクロ用のプリントヘッド、あるいはモノクロの画像表示装置を構成する場合においても、画像形成に用いられる光の純度を高くすれば、やはりプリント画像または表示画像の質を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る有機EL発光装置の基本構造の一例を示す要部断面図である。
【図2】(a)は、有機EL発光部において発生する光の発光スペクトルの一例を示すグラフであり、(b)は、(a)に示した発光スペクトルを合成した状態を示すグラフである。
【図3】図1に示す有機EL発光装置によって最終的に得られる光の発光スペクトルの一例を示すグラフである。
【図4】本発明に係る有機EL発光装置の基本構造の他の例を示す要部断面図である。
【図5】本発明を有機ELプリントヘッドに適用した場合の一例を示す全体斜視図である。
【図6】図5に示す有機ELプリントヘッドの分解斜視図である。
【図7】図5のVII−VII断面図である。
【図8】図5に示す有機ELプリントヘッドにおける有機ELプリントヘッド基板の要部を示す斜視図である。
【図9】本発明を有機EL表示装置に適用した場合の一例を示す一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0044】
A1,A2 有機EL発光装置
A3 有機ELプリントヘッド(有機EL発光装置)
A4 有機EL表示装置(有機EL発光装置)
10,10A 基板(光吸収手段)
11 有機EL発光部
11R 赤色発光部
11G 緑色発光部
11B 青色発光部
21 第1の光吸収層(光吸収手段)
22 第2の光吸収層(光吸収手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機EL発光部として、赤色光、緑色光、および青色光をそれぞれ個々に発する赤色発光部、緑色発光部、および青色発光部を有している、有機EL発光装置であって、
上記複数の有機EL発光部において発生された光から、上記赤色光および上記緑色光の中間波長域の光と、上記緑色光および上記青色光の中間波長域の光との少なくとも一方を吸収する光吸収手段を備えていることを特徴とする、有機EL発光装置。
【請求項2】
上記光吸収手段は、550〜600nmの波長範囲に吸収波長のピークがある第1の光吸収帯域と、490〜515nmの波長範囲に吸収波長のピークがある第2の光吸収帯域とを有している、請求項1に記載の有機EL発光装置。
【請求項3】
上記複数の有機EL発光部は、基板上に形成されているとともに、上記複数の有機EL発光部から発せられた光はこの基板を透過するように構成されており、
上記基板中には、光吸収剤が分散されていることにより、上記基板が上記光吸収手段として構成されている、請求項1または2に記載の有機EL発光装置。
【請求項4】
上記複数の有機EL発光部は、基板上に形成されているとともに、上記複数の有機EL発光部から発せられた光はこの基板を透過するように構成されており、
上記基板の光出射面には、上記光吸収手段が積層して設けられている、請求項1または2に記載の有機EL発光装置。
【請求項5】
感光性記録媒体に光を照射して画像を形成するための有機ELプリントヘッドとして構成され、または画像を表示するための有機EL表示装置として構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の有機EL発光装置。
【請求項6】
赤色光、緑色光、または青色光を発する有機EL発光部を備えている、有機EL発光装置であって、
上記有機EL発光部において発生された光から、この光のピーク波長域とは相違する裾領域の波長域の光を吸収する光吸収手段を備えていることを特徴とする、有機EL発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−310075(P2006−310075A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−130950(P2005−130950)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】