説明

有機EL表示装置およびその製造方法

【課題】平坦化膜に形成されたコンタクトホールによる窪みの影響を解消することにより、良好な発光層が形成された有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】駆動素子を含むTFT基板10と、TFT基板10の上に形成された平坦化膜11と、平坦化膜11の上方ならびに平坦化膜11に設けられたコンタクトホール23の底部及び側壁に形成され、コンタクトホール23を介して上記駆動素子と電気的に接続された反射陽極12と、反射陽極12の上に形成された有機発光層16と、有機発光層16の上に形成された透明陰極18と、反射陽極12と有機発光層16との間に設けられることにより、発光電流が流れない非発光領域を形成する画素規制層14とを備え、画素規制層14はコンタクトホール23の上部に充填され、画素規制層14の表面は平坦化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:以下ELと記す)表示装置およびその製造方法に関し、特に、アクティブマトリクス型の有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置は、有機化合物の電界発光現象を利用した発光表示装置であり、画素ごとに独立に発光制御可能な有機EL素子を基板上に配置して構成される。典型的な有機EL装置は、基板上に、駆動回路、陽極、有機機能層、陰極を積層することで作製される。有機機能層には、有機化合物からなる有機発光層とともに、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層などの複数の機能層のうちの1つ以上が積層される。
【0003】
このような構成において、陽極および陰極から正孔注入層などを介して発光層へ電荷が注入され、注入された電荷が発光層内で再結合することによって、発光が生じる。有機発光層は、均一な膜厚で形成されることが重要である。なぜなら、発光層の厚さが不均一であると、発光面内での電流分布が不均一となって輝度ムラが生じ、また、薄い部分への電流集中による素子寿命の低下の原因となるからである。
【0004】
発光層は、例えば、有機発光層となるべき有機化合物を含む機能液を基板に塗布し、乾燥させることで形成される。機能液の貯留および乾燥によって形成される機能膜は、有機EL素子の有機発光層に限らず、各種の装置に利用されており、厚さの均一性に優れた機能膜を形成するための種々の技術が検討されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、基板上に隔壁を形成し、隔壁で画素ごとに区切られた空間(液体受容部と呼ばれる)に機能膜となるべき機能液を貯留、乾燥させて機能膜を形成する構成および製造方法が開示されている。機能液は、例えばインクジェット法により、液体受容部に配置される。
【0006】
また、駆動回路は、有機EL素子を個別に駆動する薄膜トランジスタ(TFT)などで構成されている。これにより、有機EL表示装置は、上記駆動回路により有機EL素子に所望の電圧を印加し電流を流すことにより所望の画像を表示させる。
【0007】
アクティブマトリクス方式の有機EL表示装置として、例えば、陰極側から発光を取り出す上面発光方式では、駆動回路のTFTを基板と有機EL素子との間に形成することにより、十分な開口率を確保している。
【0008】
特許文献2では、下層であるTFTを有する駆動部と上層である液晶を有する発光部との間に無機絶縁膜が形成され、当該無機絶縁膜に設けられたコンタクトホールを介して、駆動部のTFTと発光部の画素電極とが電気的に接続されている。
【0009】
また、特許文献3では、有機半導体を発光素子としたアクティブマトリクス型表示装置の構成が開示されている。下層であるTFTのソースドレイン領域の一方には、第1の層間絶縁膜のコンタクトホールを介して、データ線と同時形成された中継電極が電気的に接続され、この中継電極には第2の層間絶縁膜のコンタクトホールを介して薄膜発光素子のITO膜からなる透明な画素電極が電気的に接続されている。
【0010】
特許文献2及び特許文献3では、基板上に、TFT、平坦化膜、画素電極を順に形成し、平坦化膜にコンタクトホールを形成することで、TFTと画素電極とを電気的に接続し、上面発光方式の表示装置を構成していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−103349号公報
【特許文献2】特開2003−302917号公報
【特許文献3】特開2004−177972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、下層である駆動回路と上層である有機EL素子の画素電極とをコンタクトホールで電気的に接続するという構造の場合、以下のような課題を有する。
【0013】
図6(a)は、従来の有機EL表示装置の平面構成図であり、図6(b)は、従来の有機EL表示装置のZ−Z’における断面構成図である。図6(a)に記載された有機EL表示装置は、発光領域、非発光領域及び隔壁層122を有する。単位画素である発光領域は2次元状に配置され、隣接する発光領域は、非発光領域または隔壁層122で分離されている。隔壁層122は、ライン状のバンクを形成している。よって隔壁層122は、1行または1列に並ぶ複数の発光領域を挟んでいる。この場合、コンタクトホールを隔壁層122の下に設けず、例えば、同じ隔壁層122で挟まれた領域のうち、発光領域が存在しない非発光領域にコンタクトホール123が設けられている。
【0014】
図6(b)に記載された断面図のように、有機EL表示装置は、TFT基板110の上に平坦化膜111が形成されている。平坦化膜111には、上層の有機発光素子の反射陽極112とTFT基板110とを電気的に接続するためのコンタクトホール123が設けられている。このとき、平坦化膜111の膜厚に比べて、反射陽極112の膜厚が小さいため、反射陽極112は平坦化膜111の表面、コンタクトホール123の底部及び側壁に形成されている。また、反射陽極112の上に、透明金属膜113、画素規制層114、正孔注入層115及び隔壁層122が、この順で積層されている。以降、有機発光層116、電子輸送層117、透明陰極118、封止層119、樹脂層120及びCF基板121がこの順で積層されている。
【0015】
ここで、コンタクトホール123において、正孔注入層115の上部には窪みが発生しているため、例えば、湿式製膜法により有機発光層を形成する場合には、当該窪みに有機発光層材料が流れ込むことにより、発光層の材料が余分に必要になるとともに発光層の膜厚の制御が困難になるという課題がある。また、コンタクトホール123への有機発光層材料の流れ込みにより、コンタクトホール123の近傍では有機発光層116の平坦性が確保されない。そのため、例えば、発光領域と非発光領域との境界部において有機発光層116の膜厚が小さくなり、発光領域内で発光輝度のムラが発生するという課題がある。
【0016】
また、図6に記載された構成ではなく、コンタクトホールを隔壁層の下に形成する構成が考えられるが、当該コンタクトホールによる窪みを隔壁層で覆うと、隔壁層上部に窪みが発生する。この場合、インクジェット方式等を用いて有機発光層のもとになる材料を上方から滴下すると、一部の滴下材料が隔壁層上部の窪みに溜まってしまい、発光領域に流れ込まない状態になることがわかった。これでは発光材料が余分に必要になり、また滴下量を精度良く制御できないため、発光層等の膜厚の精度が低下することにもなる。
【0017】
これらの課題を解決するため、本発明は、有機EL表示装置において、平坦化膜に形成されたコンタクトホールによる窪みの影響を解消することにより、良好な発光層を形成することを目的とする。さらに、上記コンタクトホールによる窪みの影響を解消するためのより簡易な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、基板と、前記基板の上方に形成された、駆動素子を含む駆動回路層と、前記駆動回路層の上方に形成された平坦化膜と、前記平坦化膜の上方、ならびに、当該平坦化膜に設けられたコンタクトホールの底部及び側壁に形成され、前記コンタクトホールを介して前記駆動素子と電気的に接続された画素電極と、前記画素電極の上方に形成された有機発光層と、前記有機発光層の上方に形成された対向電極と、前記画素電極と前記有機発光層との間に設けられることにより、発光電流が流れない非発光領域を形成する画素規制層とを備え、前記画素規制層は前記コンタクトホールの上部に充填され、前記画素規制層の上部表面は当該画素規制層の形成領域にわたり、平坦化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有機EL表示装置およびその製造方法によれば、駆動回路層と画素電極との間に形成された平坦化膜に設けられたコンタクトホールの窪みを、画素規制層で平坦化することにより、当該窪みに有機発光層材料が流れ込むことを防止できる。よって、有機発光層の膜厚を高精度に制御でき、有機発光層の膜厚が均一化され、発光輝度のムラを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の平面構成図である。(b)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置のX−X’における断面構成図である。(c)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置のY−Y’における断面構成図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【図5】本発明の有機EL表示装置及びその製造方法が用いられるTVの外観図である。
【図6】(a)は、従来の有機EL表示装置の平面構成図である。(b)は、従来の有機EL表示装置のZ−Z’における断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一態様に係る有機EL表示装置は、基板と、前記基板の上方に形成された、駆動素子を含む駆動回路層と、前記駆動回路層の上方に形成された平坦化膜と、前記平坦化膜の上方、ならびに、当該平坦化膜に設けられたコンタクトホールの底部及び側壁に形成され、前記コンタクトホールを介して前記駆動素子と電気的に接続された画素電極と、前記画素電極の上方に形成された有機発光層と、前記有機発光層の上方に形成された対向電極と、前記画素電極と前記有機発光層との間に設けられることにより、発光電流が流れない非発光領域を形成する画素規制層とを備え、前記画素規制層は前記コンタクトホールの上部に充填され、前記画素規制層の上部表面は当該画素規制層の形成領域にわたり、平坦化されている。
【0022】
本態様によれば、非発光領域に設けられ、駆動素子と画素電極とを電気的に接続するためのコンタクトホールの上部に発生した窪みを、画素規制層にて平坦化している。つまり、有機発光層が形成される前段階で当該有機発光層の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、コンタクトホールへの有機発光層材料の流れ込みがないことにより、コンタクトホールの近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0023】
さらに、本発明の一態様は、前記画素規制層の下層であって当該画素規制層と接する層の発光領域における表面高さと、前記画素規制層の表面高さとの差は、500nm以内である。
【0024】
本態様によれば、発光領域と非発光領域との境界部において、平坦化された画素規制層の膜厚分だけ段差が発生するが、当該段差高さが500nm以内であることにより、有機発光層の膜厚制御の精度が低下することがない。また、上記段差の近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0025】
さらに、本発明の一態様によれば、前記画素電極は、発光画素ごとに分離形成されており、前記画素規制層は、隣接する前記画素電極の間の領域に充填されていてもよい。
【0026】
上面発光方式の有機EL表示装置では、有機発光層の下側に形成された反射陽極は発光画素ごとに分離形成されている。この反射陽極である画素電極の間には、段差を有する領域が発生し、当該領域の上部にも窪みが発生する。
【0027】
本態様によれば、画素電極の間の領域に発生した窪みは、画素規制層により充填され平坦化される。よって、上記コンタクトホール上の画素規制層の平坦化の効果と同様、有機発光層が形成される前段階で当該有機発光層の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、画素電極の間の領域への有機発光層材料の流れ込みがないことにより、当該領域の近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0028】
また、本発明の一態様によれば、さらに、前記画素規制層の一部の上方に形成され、前記有機発光層の形成領域を分離する隔壁層を備え、前記コンタクトホールは、前記隔壁層の形成されていない前記非発光領域に形成されていてもよい。
【0029】
本態様によれば、コンタクトホールは、隔壁層の下でなく、発光領域を分離する非発光領域に形成されている。
【0030】
さらに、本発明の一態様によれば、前記隔壁層は、前記画素規制層で区画された複数の発光領域を挟むように配置されたライン状の隔壁層であってもよい。
【0031】
本態様によれば、隔壁層が一列または一行の発光画素を挟み込むようなライン上のバンク構造であり、当該隔壁層で挟まれた領域に、同色の有機発光層材料を流し込む場合が該当する。この場合には、上記コンタクトホールの上部にも有機発光層が形成される。よって、有機発光層の下地である画素規制層が平坦化されていることにより、隔壁層で挟まれた複数の発光画素の有する有機発光層の膜厚を均一に制御できる。
【0032】
また、本発明の一態様によれば、前記画素規制層及び前記隔壁層で区画された複数の発光領域が2次元状に配置され、前記ライン状の隔壁層は、前記複数の発光領域のうち1次元状に配置された複数の発光領域を挟むように配置されていてもよい。
【0033】
本態様によれば、有機ELディスプレイなどに用いられる発光パネルに代表される、発光画素が2次元状に配置された場合、2次元状に配置された全発光画素にわたり、有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、全発光画素において、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0034】
また、本発明の一態様によれば、前記ライン状の隔壁層で挟まれた領域に配置された複数の発光領域は、同じ色であってもよい。
【0035】
本態様によれば、ライン状の隔壁層で挟まれた領域に配置された複数の発光領域は、同じ色である。よって、当該領域には、有機発光層材料を一度に流し込むことが可能となる。この場合、画素規制層が平坦化されていることにより、当該有機発光層材料の偏在がなく、また不要部への流れ込みも発生しないので、上記領域において有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、上記領域において、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0036】
また、本発明の一態様に係る有機EL表示装置の製造方法は、基板上に形成された駆動回路層の上方に、当該駆動回路層の有する駆動素子と上層とを電気的に接続するためのコンタクトホールが設けられた平坦化膜を形成する第1工程と、前記平坦化膜の上方ならびに前記コンタクトホールの底部及び側壁に画素電極を形成する第2工程と、前記画素電極の上方であって、前記コンタクトホールが形成された領域を含む非発光領域に、前記コンタクトホールの窪みの深さ以上の膜厚を有する絶縁体層を形成する第3工程と、前記絶縁体層の表面の凸部をエッチバックすることにより、前記絶縁体層の表面全体が平坦化された、発光電流が流れない画素規制層を形成する第4工程と、前記画素規制層の上方に、有機機能層を形成する第5工程と、前記有機機能層の上方に、対向電極を形成する第6工程とを含む。
【0037】
本態様によれば、非発光領域に設けられ、駆動素子と画素電極とを電気的に接続するためのコンタクトホールの上部に発生した窪みを、画素規制層にて平坦化している。つまり、有機発光層が形成される前段階で当該有機発光層の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、コンタクトホールへの有機発光層材料の流れ込みがないことにより、コンタクトホールの近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0038】
また、加熱などのプロセス要因によりダメージを受けやすい有機発光層を形成する前段階で、かつ、簡易的なプロセスにて画素規制層の平坦化プロセスを実施できる。
【0039】
また、本発明の一態様によれば、前記有機機能層は、有機発光層を含み、さらに、前記画素規制層の一部の上方に、前記有機発光層の形成領域を分離するための複数の隔壁層を所定の面間隔で形成し、前記複数の隔壁層の形成後に、当該複数の隔壁層で挟まれた領域に前記有機発光層を形成してもよい。
【0040】
本態様によれば、画素規制層の平坦化により有機発光層を形成する領域の平坦性が向上するだけでなく、隔壁層上部の形状も平坦化させることが可能となる。これにより、インクジェット方式等を用いて有機発光層のもとになる材料を上方から滴下する場合、一部の滴下材料が隔壁層上部の窪みに溜まってしまい、発光領域に流れ込まないという状態を回避できる。よって、発光材料を余分に必要とせず、滴下量を精度良く制御でき、有機発光層の膜厚を高精度に制御することが可能となる。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0042】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の平面構成図である。また、図1(b)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置のX−X’における断面構成図である。また、図1(c)は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置のY−Y’における断面構成図である。
【0043】
図1(a)に記載された有機EL表示装置1は、単位画素が2次元状に配置されており、発光領域、非発光領域、隔壁層22およびコンタクトホール23を有する。一単位画素は、非発光領域及び隔壁層22に囲まれた一発光領域を有する。隔壁層22は、ライン状のバンクを形成している。よって隔壁層22は、1行または1列に並ぶ複数の発光領域を挟んでいる。図1(a)では、コンタクトホールを隔壁層22の下に設けず、例えば、同じ隔壁層22で挟まれた領域のうち、発光領域が存在しない非発光領域にコンタクトホール23が設けられている。なお、コンタクトホール23は、隔壁層22の下に設けられていてもよい。
【0044】
図1(b)は、非発光領域及び隔壁層が形成された領域の断面図であり、図1(c)は、発光領域及び非発光領域の断面図である。図1(b)及び図1(c)に記載されたように、有機EL表示装置1は、TFT基板10と、平坦化膜11と、反射陽極12と、透明金属膜13と、画素規制層14と、正孔注入層15と、有機発光層16と、電子輸送層17と、透明陰極18と、封止層19と、樹脂層20と、CF基板21と、隔壁層22と、コンタクトホール23とを備える。
【0045】
TFT基板10は、例えば、ガラス基板の上に形成されており、有機EL素子を駆動する薄膜トランジスタ(TFT)を含む。
【0046】
平坦化膜11は、TFT基板10の表面の凹凸を平坦化することにより、上層に形成される有機EL素子の膜厚の均一性を確保する。平坦化膜11は、無機物または有機物からなる絶縁膜であり、例えば、SiNX、SiOX、アクリル、ポリイミド及びゾルゲルなどが挙げられ、膜厚は3.5μmである。
【0047】
コンタクトホール23は、平坦化膜11が形成された領域であって平坦化膜11を貫通するように設けられている。
【0048】
反射陽極12は、平坦化膜11の上面に、コンタクトホール23の底部及び側壁を覆うように形成されている。これにより、反射陽極12は、コンタクトホール23を介してTFT基板10の有する駆動TFTと電気的に接続される。反射陽極12は、有機EL素子の陽極としての機能を有し、また、有機発光層16から下部の反射陽極12の方向へ出射した光を上部の透明陰極18の方向へ反射する機能を有する。よって、反射陽極12は、反射率及び導電率の高い金属膜であることが好ましく、例えば、APC(Ag、Pd、Cu合金)であり、膜厚は150nmである。
【0049】
透明金属膜13は、反射陽極12の上面に形成されている。透明金属膜13は、反射陽極12の酸化を防止し、また、膜厚を最適化することにより、有機発光層と反射陽極表面との間の光学的距離を調整する機能を有する。よって、透明金属膜13は、透過率及び導電率の高い膜であることが好ましく、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)であり、膜厚は50nmである。
【0050】
上述した平坦化膜11、反射陽極12及び透明金属膜13の膜厚の関係より、コンタクトホール23の上部には、透明金属膜13の形成後、窪みが発生している。
【0051】
また、反射陽極12及び透明金属膜13は、単位画素ごとに分離されている。
【0052】
画素規制層14は、反射陽極12と有機発光層16との間であって、絶縁体からなることにより、反射陽極12と透明陰極18との間の発光電流が抑制された非発光領域を一部形成する。画素規制層14は、例えば、SiNX、SiOX、アクリル、ポリイミド及びゾルゲルなどが挙げられる。
【0053】
ここで、画素規制層14は、コンタクトホール23の上部に充填され、画素規制層14の表面は平坦化されている。
【0054】
これにより、有機発光層16が形成される前段階で有機発光層16の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層16の膜厚を高精度に制御できる。また、コンタクトホール23への有機発光層材料の流れ込みがないことにより、コンタクトホール23の近傍でも有機発光層16の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層16の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0055】
また、発光領域と非発光領域との境界部において、平坦化された画素規制層14の膜厚分だけ段差が発生するが、当該段差高さが500nm以内であることが好ましい。これにより、有機発光層16の膜厚制御の精度が低下することがない。また、上記段差の近傍でも有機発光層16の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層16の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0056】
また、画素規制層14は、隣接する反射陽極12の間の領域に充填されていることが好ましい。
【0057】
本実施の形態のようなトップエミッション型の有機EL表示装置1では、有機発光層16の下側に形成された反射陽極12は発光画素ごとに分離形成されている。この反射陽極12の間には、段差を有する領域が発生し、当該領域の上部にも窪みが発生する。
【0058】
本実施の形態によれば、反射陽極12の間の領域に発生した窪みは、画素規制層14により充填され平坦化される。よって、上記コンタクトホール23上の画素規制層14の平坦化の効果と同様、有機発光層16が形成される前段階で有機発光層16の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層16の膜厚を高精度に制御できる。また、反射陽極12の間の領域への有機発光層材料の流れ込みがないことにより、当該領域の近傍でも有機発光層16の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層16の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0059】
なお、画素規制層14の平坦化プロセスについては、後述する有機EL表示装置1の製造方法にて説明する。
【0060】
正孔注入層15は、発光領域においては透明金属膜13の上面に、また、非発光領域においては画素規制層14の上面に形成される。正孔注入層15は、正孔注入性の材料を主成分とする層である。正孔注入性の材料とは、反射陽極12側から注入された正孔を安定的に、又は正孔の生成を補助して有機発光層16へ注入する機能を有する材料である。正孔注入層15は、例えば、酸化モリブデンと酸化タングステンとの混合膜であり、膜厚は50nmである。
【0061】
ここで、正孔注入層15は、非発光領域において、平坦化された画素規制層14の上面に形成されているので、正孔注入層15の上面もまた平坦性が確保されている。
【0062】
隔壁層22は、正孔注入層15の上に形成され、有機発光層16の形成領域を規制し発光領域を発光画素ごと、または、一列の発光画素群ごとに分離する機能を有し、ポリイミド樹脂などの樹脂材料が用いられる。
【0063】
本実施の形態では、隔壁層22は、画素規制層14で区画された複数の発光領域を挟むように配置されたライン状の隔壁層である。
【0064】
なお、本実施の形態では、図1(c)に示されたように、隔壁層22の下に形成された、隣接する反射陽極12の間の領域には、正孔注入層15及び隔壁層22が充填されているが、隔壁層22の代わりに画素規制層14が充填され平坦化されていてもよい。
【0065】
これにより、隔壁層22の上部の形状も平坦化させることが可能となる。よって、インクジェット方式等を用いて有機発光層16のもとになる材料を上方から滴下する場合、一部の滴下材料が隔壁層22の上部の窪みに溜まってしまい、発光領域に流れ込まないという状態を回避できる。よって、発光材料を余分に必要とせず、滴下量を精度良く制御でき、有機発光層16の膜厚を高精度に制御することが可能となる。
【0066】
有機発光層16は、赤色発光する層、緑色発光する層または青色発光する層であり、正孔注入層15、電子輸送層17及び隔壁層22に囲まれ、有機発光層16に注入された電子と正孔の再結合により発生する光を透明陰極18面側から放出する。有機発光層16は、低分子系または高分子系の有機発光材料を用いることができる。高分子系の発光材料としては、例えばポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレンなどのポリマー発光材料などを用いることができる。また、低分子系の発光材料としては、Alq3やBe−ベンゾキノリノール(BeBq2)の他に、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チアジアゾール、4,4’−ビス(5,7−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4’−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕スチルベン、2,5−ビス(5,7−ジ−t−ベンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフィン、2,5−ビス(〔5−α,α−ジメチルベンジル〕−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、2,5−ビス〔5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベンゾオキサゾリル〕−3,4−ジフェニルチオフェン、2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフェン、4,4’−ビス(2−ベンゾオキサイゾリル)ビフェニル、5−メチル−2−〔2−〔4−(5−メチル−2−ベンゾオキサイゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾオキサイゾリル、2−〔2−(4−クロロフェニル)ビニル〕ナフト〔1,2−d〕オキサゾールなどのベンゾオキサゾール系、2,2’−(p−フェニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾールなどのベンゾチアゾール系、2−〔2−〔4−(2−ベンゾイミダゾリル)フェニル〕ビニル〕ベンゾイミダゾール、2−〔2−(4−カルボキシフェニル)ビニル〕ベンゾイミダゾールなどのベンゾイミダゾール系などの蛍光増白剤や、トリス(8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)マグネシウム、ビス(ベンゾ〔f〕−8−キノリノール)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウムオキシド、トリス(8−キノリノール)インジウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、8−キノリノールリチウム、トリス(5−クロロ−8−キノリノール)ガリウム、ビス(5−クロロ−8−キノリノール)カルシウム、ポリ〔亜鉛−ビス(8−ヒドロキシ−5−キノリノニル)メタン〕などの8−ヒドロキシキノリン系金属錯体やジリチウムエピンドリジオンなどの金属キレート化オキシノイド化合物や、1,4−ビス(2−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−(3−メチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジスチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)2−メチルベンゼンなどのスチリルベンゼン系化合物や、2,5−ビス(4−メチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス(4−エチルスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ナフチル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス(4−メトキシスチリル)ピラジン、2,5−ビス〔2−(4−ビフェニル)ビニル〕ピラジン、2,5−ビス〔2−(1−ピレニル)ビニル〕ピラジンなどのジスチルピラジン誘導体や、ナフタルイミド誘導体や、ペリレン誘導体や、オキサジアゾール誘導体や、アルダジン誘導体や、シクロペンタジエン誘導体や、スチリルアミン誘導体や、クマリン系誘導体や、芳香族ジメチリディン誘導体などが用いられる。さらに、アントラセン、サリチル酸塩、ピレン、コロネンなども用いられる。あるいは、ファク−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウムなどの燐光発光材料を用いることもできる。
【0067】
前述したように、有機発光層16が形成される前段階で有機発光層16の下地層が平坦化されているので、コンタクトホール23などの窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層16の膜厚を高精度に制御できる。
【0068】
電子輸送層17は、有機発光層16の上面に形成される。電子輸送層17は、電子輸送性の材料を主成分とする層である。電子輸送性の材料とは、電子アクセプター性を有し陰イオンになりやすい性質と、発生した電子を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持ち、透明陰極18から有機発光層16までの電荷輸送に対して適正を有する材料のことである。電子輸送層17としては、例えば、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)などのオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、シロール誘導体からなるポリマー材料など、あるいは、ビス(2−メチル−8−キノリノレート)−(パラ−フェニルフェノレート)アルミニウム(BAlq)、バソフプロイン(BCP)などが用いられる。このとき、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のうち少なくとも一方を主成分とする金属の層を積層した後で電子輸送層17を構成してもよい。また、金属の層として、アルカリ金属およびアルカリ土類金属を2種類以上含有していてもよい。
【0069】
透明陰極18は、電子輸送層17の上面に形成されている。透明陰極18は、例えば、下層としてバリウムが10nm、上層としてITOが100nm積層された構造となっている。
【0070】
なお、正孔注入層15及び電子輸送層17の材料は本発明では限定されるものではなく、周知の有機材料または無機材料が用いられる。
【0071】
また、有機EL表示装置1の構成として、正孔注入層15と有機発光層16との間に、正孔輸送層があってもよいし、電子輸送層17と透明陰極18との間に、電子注入層があってもよい。正孔輸送層とは、正孔輸送性の材料を主成分とする層である。正孔輸送性の材料とは、電子ドナー性を持ち陽イオン(正孔)になりやすい性質と、生じた正孔を分子間の電荷移動反応により伝達する性質を併せ持ち、反射陽極12から有機発光層16までの電荷輸送に対して適正を有する材料のことである。また、電子注入層とは、電子注入性の材料を主成分とする層である。電子注入性の材料とは、透明陰極18から注入された電子を安定的に、又は電子の生成を補助して有機発光層16へ注入する機能を有する材料である。
【0072】
封止層19は、透明陰極18の上面に形成されており、下層である有機発光層16や透明陰極18を水蒸気や酸素から遮断する機能を有する。有機発光層16そのものや透明陰極18が、水蒸気や酸素にさらされることにより劣化(酸化)してしまうことを防止するためである。
【0073】
樹脂層20は、アクリルまたはエポキシ系の樹脂であり、上述したTFT基板10から封止層19までの一体形成された層と、後述するCF基板21とを接合する機能を有する。
【0074】
CF基板21は、発光パネルの発光表面を保護する基板であり、例えば、厚みが0.5mmである透明の無アルカリガラスである。
【0075】
従来では、有機発光層は、コンタクトホールの窪みに有機発光材料が流れ込むため、コンタクトホール近傍において膜厚が小さくなる。そのため、特に、発光領域と非発光領域との境界部では、発光領域の中央部よりも有機発光層の膜厚が小さくなり、画素内での輝度ムラが発生する。
【0076】
これに対し、本実施の形態に係る有機EL表示装置1では、有機発光層の下地である画素規制層により、コンタクトホールの上部は平坦化されているので、画素内での有機発光層の膜厚が均一化され、輝度ムラは発生しない。
【0077】
なお、正孔注入層15及び電子輸送層17は、反射陽極12、有機発光層16及び透明陰極18の材料の組み合わせにより、省略することも可能である。
【0078】
また、正孔注入層15と有機発光層16との間に、正孔輸送層があってもよいし、電子輸送層17と透明陰極18との間に、電子注入層があってもよい。また、透明金属膜13は、なくてもよい。
【0079】
次に、本発明の有機EL表示装置の製造方法について、詳細に説明する。
【0080】
図2〜図4は、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置の製造方法を説明する工程断面図である。
【0081】
まず、図2(a)に示すように、TFT基板10の上に、平坦化膜11を、例えば、3.5μm積層する。平坦化膜11の材料は、無機物または有機物からなる絶縁膜であり、例えば、SiNX、SiOX、アクリル、ポリイミド及びゾルゲルなどが挙げられる。このうち、SiNX及びSiOXからなる絶縁膜については、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成される。次に、TFT基板10内の駆動TFTと上層の反射陽極12とを電気的に接続するため、平坦化膜11内において、上下を貫通するコンタクトホール23を形成する。コンタクトホール23は、フォトリソグラフィーにより平坦化膜上にレジストパターンを形成した後、ウエットエッチングまたはドライエッチングにより形成される。
【0082】
次に、図2(b)に示すように、平坦化膜11の上面に、及び、コンタクトホール23の底部及び側壁を覆うように反射陽極12を積層する。ここで、反射陽極12は、例えば、まずスパッタリング法により、銀合金APCを150nm製膜し、その後、フォトリソグラフィーとウエットエッチングによるパターニング工程を経ることにより形成される。これにより、反射陽極12は、コンタクトホール23を介してTFT基板10の有する駆動TFTと電気的に接続され、単位画素ごとに分離形成される。
【0083】
次に、図2(c)に示すように、反射陽極12の上面に、透明金属膜13を積層する。ここで、透明金属膜13は、例えば、スパッタリング法により、ITOを50nm製膜することにより形成される。
【0084】
上述した平坦化膜11、反射陽極12及び透明金属膜13の膜厚の関係より、コンタクトホール23の上部には、透明金属膜13の形成後、窪みが発生している。
【0085】
次に、図2(d)に示すように、透明金属膜13の上面であって、コンタクトホール23が形成された領域を含む非発光領域に、コンタクトホール23の上部に発生した窪みの深さ以上の膜厚を有する絶縁体層14Aを形成する。絶縁体層14Aの材料は、無機物または有機物からなる絶縁膜であり、例えば、SiNX、SiOX、アクリル、ポリイミド及びゾルゲルなどが挙げられる。このうち、SiNX及びSiOXからなる絶縁膜については、例えば、CVDにより形成される。
【0086】
次に、図2(e)に示すように、絶縁体層14Aの上面に、レジスト24Aを形成する。レジスト24Aは、例えば、有機材料からなるレジストを、スピンコート法を用いて絶縁体層14Aの上面に塗布した後、加熱または光照射により硬化させる。このような形成法により、レジスト24Aの表面は平坦化されている。また、この後のエッチバック工程で使用されるエッチング法におけるレジスト24Aのエッチングレートは、絶縁体層14Aのエッチングレートと等しいことが好ましい。
【0087】
次に、図3(a)に示すように、レジスト24Aの上面から、ドライエッチング法により、レジスト24A及び絶縁体層14Aをエッチバックする。このとき、レジスト24Aのエッチングレートと絶縁体層14Aのエッチングレートとが等しいほど、絶縁体層14Aの表面の平坦化度は向上する。絶縁体層14Aの所定領域における膜厚が所定値(例えば、500nm)以下となったとき、エッチングを終了させる。このとき、平坦化された絶縁体層14Bが形成される。
【0088】
なお、図2(d)において絶縁体層14Aが積層された後、図2(e)及び図3(a)に記載された平坦化プロセスの代わりに、CMP(Chemical Mechanical Planarization)法による平坦化プロセスを用いてもよい。
【0089】
次に、図3(b)及び図3(c)に示すように、パターニングされたレジスト24Bを形成しエッチングすることにより、隔壁層22が形成される領域の絶縁体層14Bを除去する。このとき、透明金属膜13の上面には、画素規制層14が形成される。
【0090】
次に、図3(d)に示すように、レジスト24Bの上面及び隔壁層22が形成される領域に、正孔注入層15を積層する。正孔注入層15は、例えば、酸化モリブデンと酸化タングステンとの混合膜を、例えば、スパッタリング法により50nm製膜することにより形成される。ここで、正孔注入層15は、非発光領域において、平坦化された画素規制層14の上面に形成されているので、正孔注入層15の上面もまた平坦性が確保されている。
【0091】
次に、図4(a)に示すように、正孔注入層15の上面に、隔壁層22を形成する。ここで、隔壁層22は、例えば、ポリイミド樹脂などの樹脂材料が用いられる。また、隔壁層22は、画素規制層14で区画された複数の発光領域を挟むように配置されたライン状の隔壁層を形成している。
【0092】
なお、図3(b)及び図3(c)に記載された工程を省略してもよい。図4(a)では、隔壁層22の下に形成された、隣接する反射陽極12の間の領域には、正孔注入層15及び隔壁層22が充填されているが、この場合には、隔壁層22の代わりに画素規制層14が充填され平坦化されていてもよい。これにより、隔壁層22の上部の形状も平坦化させることが可能となる。よって、インクジェット方式等を用いて有機発光層16のもとになる材料を上方から滴下する場合、一部の滴下材料が隔壁層22の上部の窪みに溜まってしまい、発光領域に流れ込まないという状態を回避できる。よって、発光材料を余分に必要とせず、滴下量を精度良く制御でき、有機発光層16の膜厚を高精度に制御することが可能となる。
【0093】
次に、図4(b)に示すように、隔壁層22で挟まれた領域内に、例えば、インクジェット法などを用いて、有機発光層16となるペースト材料を塗布する。このとき、有機発光層16となるペースト材料は、隔壁層22で挟まれた領域から表面張力により盛り上がった状態で塗布される。その後、上記ペースト材料を、例えば、80℃30分程度乾燥させて、ペースト材料の溶剤成分を揮発させて有機発光層16を形成する。なお、このとき、発光部が少なくとも3つのRGBなどの異なるサブ画素から構成される場合、サブ画素ごとに、上述したペースト材料塗布工程及び乾燥工程を繰り返すことにより、サブ画素に異なる有機発光層16が形成される。このとき、例えば、隔壁層22で挟まれた領域に配置された複数の発光領域は、ラインごとに同じ色で発光する。
【0094】
ここで、有機発光層16が形成される前段階で有機発光層16の下地層が平坦化されているので、上記ペースト材料塗布工程において、コンタクトホール上部の窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層16の膜厚を高精度に制御できる。また、コンタクトホールへの有機発光層材料の流れ込みがないことにより、コンタクトホールの近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層16の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0095】
次に、発光領域、非発光領域及び隔壁層22を被覆するように、例えば、真空蒸着法を用いて、電子輸送層17を全面に形成する。続いて、電子輸送層17の上に、例えば、ITOを、スパッタリング法を用いて製膜し、透明陰極18を全面に形成する。
【0096】
図2(b)〜図4(b)に記載された形成工程により、発光素子としての機能をもつ有機EL素子が形成される。
【0097】
次に、図4(c)に示すように、透明陰極18の上に、例えば、プラズマCVD法により窒化珪素を500nm堆積し、封止層19を形成する。その後、封止層19の表面に、樹脂層20となる封止用樹脂を塗布する。そして、カラーフィルタを含むCF基板21を、塗布された上記封止用樹脂上に配置する。最後に、CF基板21の上面側から下方に加圧し、熱またはエネルギー線を付加して、CF基板21と封止層19とを接着する樹脂層20を形成する。
【0098】
以上のように、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置及びその製造方法によれば、非発光領域に設けられ、駆動素子と画素電極とを電気的に接続するためのコンタクトホールの上部に発生した窪みを、画素規制層にて平坦化している。つまり、有機発光層が形成される前段階で当該有機発光層の下地層が平坦化されているので、上記窪みに有機発光層材料が流れ込むこともなく、滴下インク量の増加を抑制し有機発光層の膜厚を高精度に制御できる。また、コンタクトホールへの有機発光層材料の流れ込みがないことにより、コンタクトホールの近傍でも有機発光層の平坦性が確保される。そのため、発光領域全域にわたり、有機発光層の膜厚が均一化され、発光領域内で発光輝度のムラが発生しない。
【0099】
なお、本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、上記実施の形態に限定されるものではない。上述した実施の形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る表示装置及び表示評価装置を内蔵した各種機器も本発明に含まれる。
【0100】
また、例えば、本発明に係る有機EL表示装置及びその製造方法は、図5に記載されたような薄型フラットTVに内蔵される。本発明に係る有機EL表示装置及びその簡略化された製造方法により、有機発光層の膜厚が均一化され、発光輝度のムラが抑制された有機ELディスプレイを備えた薄型フラットTVが実現される。
【0101】
なお、本発明の実施の形態に係る有機EL表示装置1において、TFT基板10、平坦化膜11、反射陽極12、透明金属膜13、正孔注入層15、有機発光層16、電子輸送層17、透明陰極18、封止層19、樹脂層20及びCF基板21の材料は本発明では限定されるものではなく、周知の有機材料または無機材料が用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、特に有機EL表示装置を内蔵する有機ELフラットパネルディスプレイに有用であり、高品質な表示性能が要求される有機EL表示装置及びその製造方法として用いるのに最適である。
【符号の説明】
【0103】
1、100 有機EL表示装置
10、110 TFT基板
11、111 平坦化膜
12、112 反射陽極
13、113 透明金属膜
14、114 画素規制層
14A、14B 絶縁体層
15、115 正孔注入層
16、116 有機発光層
17、117 電子輸送層
18、118 透明陰極
19、119 封止層
20、120 樹脂層
21、121 CF基板
22、122 隔壁層
23、123 コンタクトホール
24A、24B レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の上方に形成された、駆動素子を含む駆動回路層と、
前記駆動回路層の上方に形成された平坦化膜と、
前記平坦化膜の上方、ならびに、当該平坦化膜に設けられたコンタクトホールの底部及び側壁に形成され、前記コンタクトホールを介して前記駆動素子と電気的に接続された画素電極と、
前記画素電極の上方に形成された有機発光層と、
前記有機発光層の上方に形成された対向電極と、
前記画素電極と前記有機発光層との間に設けられることにより、発光電流が流れない非発光領域を形成する画素規制層とを備え、
前記画素規制層は前記コンタクトホールの上部に充填され、前記画素規制層の上部表面は当該画素規制層の形成領域にわたり、平坦化されている
有機EL表示装置。
【請求項2】
前記画素規制層の下層であって当該画素規制層と接する層の発光領域における表面高さと、前記画素規制層の表面高さとの差は、500nm以内である
請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記画素電極は、発光画素ごとに分離形成されており、
前記画素規制層は、隣接する前記画素電極の間の領域に充填されている
請求項1または2に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
さらに、
前記画素規制層の一部の上方に形成され、前記有機発光層の形成領域を分離する隔壁層を備え、
前記コンタクトホールは、前記隔壁層の形成されていない前記非発光領域に形成されている
請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
前記隔壁層は、前記画素規制層で区画された複数の発光領域を挟むように配置されたライン状の隔壁層である
請求項4に記載の有機EL表示装置。
【請求項6】
前記画素規制層及び前記隔壁層で区画された複数の発光領域が2次元状に配置され、
前記ライン状の隔壁層は、前記複数の発光領域のうち1次元状に配置された複数の発光領域を挟むように配置されている
請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記ライン状の隔壁層で挟まれた領域に配置された複数の発光領域は、同じ色である
請求項6に記載の有機EL表示装置。
【請求項8】
基板上に形成された駆動回路層の上方に、当該駆動回路層の有する駆動素子と上層とを電気的に接続するためのコンタクトホールが設けられた平坦化膜を形成する第1工程と、
前記平坦化膜の上方ならびに前記コンタクトホールの底部及び側壁に画素電極を形成する第2工程と、
前記画素電極の上方であって、前記コンタクトホールが形成された領域を含む非発光領域に、前記コンタクトホールの窪みの深さ以上の膜厚を有する絶縁体層を形成する第3工程と、
前記絶縁体層の表面の凸部をエッチバックすることにより、前記絶縁体層の表面全体が平坦化された、発光電流が流れない画素規制層を形成する第4工程と、
前記画素規制層の上方に、有機機能層を形成する第5工程と、
前記有機機能層の上方に、対向電極を形成する第6工程とを含む
有機EL表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記有機機能層は、有機発光層を含み、
さらに、前記画素規制層の一部の上方に、前記有機発光層の形成領域を分離するための複数の隔壁層を所定の面間隔で形成し、前記複数の隔壁層の形成後に、当該複数の隔壁層で挟まれた領域に前記有機発光層を形成する
請求項8に記載の有機EL表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−76804(P2011−76804A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225650(P2009−225650)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】