説明

有機EL表示装置

【課題】透明基板内部で全反射を繰り返して伝播する光を光発電素子により効率良く電気に変換することができる有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置10は、有機EL素子用基板21と、有機EL素子用基板21の一側の面21aに設けられた有機EL層22とを有する有機EL素子20と、有機EL素子20の有機EL層22側に設けられ、観察側に位置するカラーフィルタ用基板31とを備えている。また、カラーフィルタ用基板31の非表示領域33には、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播する光を集光する集光部34と、集光部34からの光によって発電する光発電素子35とが設けられている。さらに非表示領域33のうち集光部34および光発電素子35が設けられている領域以外の領域には、光を反射して集光部34に導く反射材36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察側に位置する透明基板を備えた有機EL表示装置に係り、とりわけ、透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とを設けたことを特徴とする有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発光素子から放射される光を表示光として利用する表示装置が開発されており、このような表示装置に使用される発光素子として有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子が知られている。有機EL素子は一般に、有機EL素子用基板と、当該有機EL素子用基板の一側の面に設けられた有機EL層とを有しており、この場合、表示装置(有機EL表示装置)は、当該有機EL素子と、当該有機EL素子の有機EL層側に設けられ、観察側に位置する透明基板とを組み合わせることにより形成される。
【0003】
ところで上述した有機EL表示装置においては、一般に、有機EL層の有機発光層から放射される光のうち、20%程度のみが透明基板から観察側に取り出され、残り80%程度が有機EL表示装置内部で全反射を繰り返して伝播し、そして伝播中に減衰して消滅することが知られている。このため有機EL表示装置は、光の取り出し効率が低く、従って消費電力が大きいという課題を有している。
【0004】
このような課題を解決するため、例えば特許文献1において、透明基板の側面に光発電素子を設けることにより、透明基板内部を伝播してきた光を電気に変換することができる有機EL表示装置が提案されている。この場合、光発電素子において生成された電気を、有機発光層を駆動する電力として利用することができ、これによって有機EL表示装置の消費電力を低減することができる。また特許文献2においては、有機EL層と有機EL素子用基板の間に光発電素子を設けた有機EL表示装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−44732号公報
【特許文献2】特開2009−76393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の有機EL表示装置においては、透明基板内部を伝播する光を光発電素子に導くための工夫が何らなされておらず、このため特許文献1においては、光発電素子において電気を効率よく生成することができないと考えられる。また特許文献2に記載の有機EL表示装置においては、光発電素子が有機EL層と有機EL素子用基板の間に設けられており、このため、有機EL層から観察側に向けて放射された光であって、透明基板内部を伝播する光を電気に変換することができない。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、透明基板内部を伝播する光を光発電素子により効率良く電気に変換することができる有機EL表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による第1の有機EL表示装置は、有機EL素子用基板と、当該有機EL素子用基板の一側の面に設けられた有機EL層とを有する有機EL素子と、有機EL素子の有機EL層側に設けられ、観察側に位置する透明基板と、を備え、有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有し、透明基板は、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射される表示領域と、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域と、に区画され、透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とを設け、透明基板の非表示領域のうち集光部および光発電素子が設けられている領域以外の領域に、有機発光層からの光を反射して集光部に導く反射材を設けたことを特徴とする有機EL表示装置である。
【0009】
本発明による第1の有機EL表示装置において、前記透明基板がカラーフィルタ用基板からなり、カラーフィルタ用基板の表示領域に、カラーフィルタ層が設けられていてもよい。
【0010】
本発明による第1の有機EL表示装置において、前記有機EL素子用基板と前記透明基板との間に封止材が設けられ、この封止材によって有機EL素子用基板と透明基板との間に前記有機EL層を収納する収納空間が形成されていてもよい。
【0011】
本発明による第1の有機EL表示装置において、前記集光部は、透明基板の表面に形成されたスクラッチ部またはレンズ部からなっていてもよい。
【0012】
本発明による第2の有機EL表示装置は、観察側に位置する一側の面と、他側の面とを有する透明基板と、透明基板の他側の面に設けられた有機EL素子と、を備え、有機EL素子は、有機EL素子用基板と、当該有機EL素子用基板と前記透明基板との間に設けられた有機EL層とを有し、有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有し、透明基板は、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射される表示領域と、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域と、に区画され、透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とを設け、透明基板の非表示領域のうち集光部および光発電素子が設けられている領域以外の領域に、有機発光層からの光を反射して集光部に導く反射材を設けたことを特徴とする有機EL表示装置である。
【0013】
本発明による第2の有機EL表示装置において、前記透明基板がカラーフィルタ用基板からなり、カラーフィルタ用基板の表示領域に、カラーフィルタ層が設けられていてもよい。
【0014】
本発明による第2の有機EL表示装置において、前記集光部は、透明基板の表面に形成されたスクラッチ部またはレンズ部からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透明基板は、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射される表示領域と、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域と、に区画され、透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とが設けられている。このため、有機EL層から観察側に向けて放射された光であって、透明基板内部を伝播する光を、集光部を介して光発電素子により電気に変換することができ、この電気を有機EL層に利用することにより、有機EL表示装置の消費電力を低減することができる。また、透明基板の非表示領域のうち集光部および光発電素子が設けられている領域以外の領域に、有機発光層からの光を反射して集光部に導く反射材が設けられている。このため、透明基板内部を伝播する光をより多く集光部に導くことができ、このことにより、有機EL表示装置の消費電力をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図、図1(b)は、図1(a)に示す有機EL表示装置のカラーフィルタ用基板を矢印Aから見た図、図1(c)は、図1(a)に示す有機EL表示装置のカラーフィルタ用基板を矢印Bから見た図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態において、集光部および光発電素子が設けられたカラーフィルタ用基板を拡大して示す図。
【図3】図3(a)(b)は、本発明の第1の実施の形態において、有機発光層からの光が光発電素子に入射する様子を示す図。
【図4】図4(a)(b)(c)(d)は、本発明の第1の実施の形態において、集光部がスクラッチ部からなる例を示す図。
【図5】図5(a)(b)(c)(d)は、本発明の第1の実施の形態において、集光部がレンズ部からなる例を示す図。
【図6】図6(a)は、本発明の第1の実施の形態において、カラーフィルタ用基板の他側の非表示領域に反射材が設けられている例を示す図、図6(b)は、本発明の第1の実施の形態において、カラーフィルタ用基板の側面に集光部および光発電素子が設けられている例を示す図、図6(c)は、本発明の第1の実施の形態において、有機EL素子用基板の非表示領域に反射材が設けられている例を示す図。
【図7】図7は、本発明の第2の実施の形態における有機EL表示装置を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。まず図1(a)(b)(c)により、本実施の形態における有機EL表示装置10全体について説明する。
【0018】
有機EL表示装置
図1に示すように、有機EL表示装置10は、有機EL素子用基板21と、有機EL素子用基板21の一側の面21aに設けられた有機EL層22とを有する有機EL素子20と、有機EL素子20の有機EL層22側に設けられ、観察側(図1において有機EL表示装置10の上方の側)に位置するカラーフィルタ用基板(透明基板)31とを備えている。このうち有機EL層22は、図1に示すように、有機EL素子用基板21側に位置する陽極23と、カラーフィルタ用基板31側(観察側)に位置する陰極25と、陽極23と陰極25の間に設けられ、白色発光層を含む有機発光層24とを有している。
本実施の形態における有機EL表示装置10はいわゆるトップエミッション型であり、有機EL層22の有機発光層24からの発光が、カラーフィルタ用基板31を透過して観察側へ放射される。
【0019】
有機EL素子用基板
有機EL素子用基板21は、有機EL層22を支持するとともに、外気を遮断することができるものであれば特に限定されるものではないが、安定性、耐久性等が良好なことから、ガラスや透明ポリマーであることが好ましい。なお、本発明においては、上記カラーフィルタ用基板31側から光が取り出されるものであるため、有機EL素子用基板21としては、透明であっても、不透明であっても良い。
【0020】
陽極
陽極23は、有機EL素子用基板21と有機発光層24との間に配置されたものである。陽極23は、上記白色発光層を発光させるための電極をなすものであり、陰極25と反対の電荷をもつ電極である。
【0021】
本発明に用いられる陽極23の形成材料としては、例えば仕事関数が4eV以下程度と小さい金属、合金、およびそれらの混合物等が挙げられる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、および希土類金属等を例示することができる。より好ましくは、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、およびリチウム/アルミニウム混合物を挙げることができる。なお陽極23の形成材料として、透明性および導電性を有する金属酸化物等が用いられてもよい。
【0022】
陽極23は、シート抵抗が数Ω/cm以下であることが好ましい。また、陽極23の膜厚は、通常10nm〜1μm程度である。
【0023】
陽極23の形成方法としては、例えば蒸着法もしくはスパッタリング法等によって薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が好ましく用いられる。
【0024】
陰極
陰極25は、陽極23との間に挟まれた有機発光層24に電圧をかけ、有機発光層24の白色発光層で発光を起こさせるために設けられるものである。また、当該白色発光層で発生した光を、カラーフィルタ用基板31側に透過させるものである。したがって、有機発光層24と、カラーフィルタ用基板31との間に配置されるものである。
【0025】
本発明に用いられる陰極25の形成材料としては、例えば透明性および導電性を有する金属酸化物等が挙げられる。このような金属酸化物としては、例えば酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、酸化亜鉛、および酸化第二錫等が挙げられる。
【0026】
また、陰極25は、通常100nm〜300nm程度である。
【0027】
陰極25の形成方法としては、例えば蒸着法もしくはスパッタリング法等によって薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が好ましく用いられる。
【0028】
なお上述のように、陽極23が有機EL素子用基板21側に位置し、陰極25が観察側に位置する例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、陽極23を観察側に配置し、陰極25を有機EL素子用基板21側に配置してもよい。なお、陽極23および陰極25のうち少なくとも観察側に位置する電極は、透明性および導電性を有する材料から構成される。
【0029】
有機発光層
本発明に用いられる有機発光層24は、少なくとも発光層を有するものであるが、通常、複数層の有機層から構成されるものであり、正孔注入層(図示せず)や電子注入層(図示せず)といった電荷注入層や、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層(図示せず)、発光層に電子を輸送する電子輸送層(図示せず)といった電荷輸送層を有するものとすることができる。発光層としては、各発光層が青色光(430nm〜470nm)、緑色光(470nm〜600nm)、および赤色光(600nm〜700nm)の波長域の発光スペクトルを有する3色塗り分けタイプ、白色発光層を有するタイプなどが挙げられる。
【0030】
a)白色発光層
本発明に用いられる白色発光層は、白色光を発光することができるものであれば良い。このような白色発光層としては、具体的には、有機発光層24に電圧が加えられた際に、少なくとも青色光(430nm〜470nm)、緑色光(470nm〜600nm)、および赤色光(600nm〜700nm)の波長域の発光スペクトルを有するものであれば良いが、発光スペクトルにおいて緑色光(470nm〜600nm)ピークの最大発光強度と青色光(430nm〜470nm)ピークの最大発光強度の比(緑色光ピークの最大発光強度/青色光ピークの最大発光強度)が、0.3〜0.8の範囲内であることが好ましく、0.3〜0.7の範囲内であることがより好ましく、特に0.3〜0.5の範囲内であることが好ましい。上記緑色光ピークの最大発光強度と青色光ピークの最大発光強度の比が上記範囲内であることにより、上記青色パターンの透過率が大きいことによる消費電力低減効果を、より効果的に発揮することができるからである。また、赤色光(600nm〜700nm)については、赤色光ピークの最大発光強度と青色光ピークの最大発光強度の比が所定の範囲内にあれば良く、強度の比が0.3〜1.0であることが好ましい。
【0031】
このような白色発光層を構成する材料としては、蛍光または燐光を発するものであれば特に限定されるものではない。また、白色発光層は、正孔輸送性や電子輸送性を有していていもよい。白色発光層を構成する材料としては、色素系材料、金属錯体系材料、および高分子系材料を挙げることができる。
【0032】
上記色素系材料としては、シクロペンダミン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、およびピラゾリンダイマー等を挙げることができる。
【0033】
上記金属錯体系材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、およびユーロピウム錯体、あるいは、中心金属に、Al、Zn、Be等またはTb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子に、オキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、およびキノリン構造等を有する金属錯体などを挙げることができる。
【0034】
上記高分子系の材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体等、ポリフルオレン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ならびに上記の色素系材料および金属錯体系材料を高分子化したもの等を挙げることができる。
【0035】
上記白色発光層の形成方法としては、例えば蒸着法、印刷法、インクジェット法、またはスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、および自己組織化法(交互吸着法、自己組織化単分子膜法)等を挙げることができる。特に、蒸着法、スピンコート法、およびインクジェット法を用いることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる白色発光層の膜厚は、通常5nm〜5μm程度である。
【0037】
b)正孔注入層
本発明においては、白色発光層と陽極23との間に正孔注入層が形成されていても良い。正孔注入層を設けることにより、白色発光層への正孔の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。
【0038】
本発明に用いられる正孔注入層の形成材料としては、一般的に有機EL層22の正孔注入層に使用されている材料を用いることができる。また、正孔注入層の形成材料は、正孔の注入性もしくは電子の障壁性のいずれかを有するものであれば良い。
【0039】
具体的に、正孔注入層の形成材料としては、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、およびチオフェンオリゴマー等の導電性高分子オリゴマー等を例示することができる。さらに、正孔注入層の形成材料としては、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物、およびスチリルアミン化合物等を例示することができる。
【0040】
また、正孔注入層の膜厚は、通常5nm〜1μm程度である。
【0041】
c)電子注入層
本発明においては、白色発光層と陰極25との間に電子注入層が形成されていても良い。電子注入層を設けることにより、白色発光層への電子の注入が安定化し、発光効率を高めることができるからである。
【0042】
本発明に用いられる電子注入層の形成材料としては、例えばニトロ置換フルオレン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体のオキサジアゾール環の酸素原子をイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有したキノキサリン誘導体、トリス(8−キノリノール)アルミニウム等の8−キノリノール誘導体の金属錯体、フタロシアニン、金属フタロシアニン、ならびにジスチリルピラジン誘導体等を例示することができる。
【0043】
上記電子注入層の膜厚は、通常5nm〜1μm程度である。
【0044】
また図1(a)に示すように、有機EL素子用基板21上に設けられた有機EL層22を、水分を遮蔽するバリア膜26により覆ってもよい。このバリア膜26は、複数、例えば20の層を積層して形成されており、バリア膜26の各層の材料としては、珪素、アルミニウム、亜鉛またはスズの酸化物または酸窒化物等が挙げられる。また、有機EL素子用基板21とカラーフィルタ用基板31との間に、有機EL表示装置10内の水蒸気を吸着する乾燥剤(図示せず)を、有機EL層22からの発光を妨害しないよう配置してもよい。乾燥剤の材料としては、バリウムまたはカルシウムの酸化物等が挙げられる。
【0045】
また、陽極23と陰極25とが直接接触することを防ぐために絶縁層(図示せず)を設けてもよい。
【0046】
本発明に用いられる絶縁層の形成材料としては、例えば感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、および熱硬化型樹脂、ならびに無機材料などを用いることができる。
【0047】
絶縁層のパターンは、通常、線状であり、例えばマトリクス状またはストライプ状等の開口部を有するパターンが例示される。
【0048】
また、絶縁層の形成方法としては、上記の絶縁層の形成材料を塗布して、フォトリソグラフィー法によりパターニングする方法が挙げられる。また、印刷法等を用いることもできる。
【0049】
図1(a)に示すように、有機EL素子用基板21とカラーフィルタ用基板31との間には封止材40が設けられており、これによって、有機EL素子用基板21とカラーフィルタ用基板31との間に、前述の有機EL層22および後述するカラーフィルタ層37を収納する収納空間41が形成されている。封止材40としては、有機EL素子用基板21とカラーフィルタ用基板31との間の距離を一定に保つとともに、有機EL層22が大気中の水分等と接触することを抑制することができるものであれば特に限定されないが、例えば、接着剤、低融点ガラスなどを用いることができる。接着剤としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等の一種単独または二種以上の組合せからなる接着機能を有する樹脂等を使用することが好ましい。
【0050】
カラーフィルタ用基板
次に、カラーフィルタ用基板31について詳述する。カラーフィルタ用基板31の材料は、有機EL層22からの発光を観察側に取り出すことができ、かつ水分および酸素を効率的に遮断することができる限り特に限定されるものではない。ただし、封止材40との密着性、および光透過性、安定性や耐久性等を考慮すると、ガラスやポリマー等を使用することが好ましい。
【0051】
図1(b)は、図1(a)に示すカラーフィルタ用基板31のうち観察側(一側)の面31aを矢印Aから見た図であり、図1(c)は、図1(a)に示すカラーフィルタ用基板31のうち有機EL素子20側(他側)の面31bを矢印Bから見た図である。図1(a)に示すように、カラーフィルタ用基板31は、有機EL層22の有機発光層24からの光が観察側へ向けて放射される表示領域32と、有機EL層22の有機発光層24からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域33とに区画されている。なお後述するように、カラーフィルタ用基板31の表示領域32は、カラーフィルタ用基板31の他側の面31b上に設けられたブラックマトリクス層38により囲われている領域(開口部)となっている。またカラーフィルタ用基板31の非表示領域33は、ブラックマトリクス層38が設けられている領域、またはブラックマトリクス層38により囲われていない領域となっている。
【0052】
カラーフィルタ用基板31の表示領域32は、カラーフィルタ用基板31の一側の面31aの開口部である一側の表示領域32aと(図1(b)参照)、カラーフィルタ用基板31の他側の面31bの開口部である他側の表示領域32bと(図1(c)参照)を含んでいる。
またカラーフィルタ用基板31の非表示領域33は、カラーフィルタ用基板31の一側の面31aにおける一側の非表示領域33aと(図1(b)参照)、カラーフィルタ用基板31の他側の面31bにおいて図1(c)に示す点線領域の外側にある他側の非表示領域33bと、カラーフィルタ用基板31の側面31cと(図1(a)参照)を含んでいる。図1(b)および図1(c)に示すように、一側の非表示領域33aおよび他側の非表示領域33bは、カラーフィルタ用基板31の周縁に位置する領域と、表示領域32a,32b間に位置する領域とからなる。
【0053】
図1(a)(b)に示すように、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域には、有機発光層24からの光であって、後述するようにカラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播する光を集光する集光部34と、集光部34からの光によって発電する光発電素子35とが設けられている。また図1(a)に示すように、光発電素子35と有機EL層22の駆動回路(図示せず)とは一対の導電体39を介して接続されており、これによって、光発電素子35により生成された電気を有機EL層22に供給することができる。
【0054】
また図1(a)(b)に示すように、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域および側面31cであって、集光部34および光発電素子35が設けられていない領域には、有機発光層24からの光であって、カラーフィルタ用基板31内部を伝播する光を反射して集光部34に導く反射材36が設けられている。
【0055】
次に、集光部34、光発電素子35および反射材36について各々詳述する。はじめに集光部34について詳述する。
【0056】
集光部
図2は、図1(a)の集光部34を拡大して示す図である。図2に示すように、集光部34は、カラーフィルタ用基板31の一側の面31aの一部を切り欠くことにより形成された三角形状スクラッチ部34aからなる。このように一側の面31aの一部を切り欠くことにより、後述するように、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播する光を三角形状スクラッチ部34aから取り出すことができる。三角形状スクラッチ部34aを形成するための切欠方法としては種々の加工方法を用いることができ、例えば、機械切削、サンドブラストおよびエッチングなどを用いることができる。
【0057】
光発電素子
また図2に示すように、光発電素子35は、三角形状スクラッチ部34aを覆うよう設けられた太陽電池35aを有している。このように、三角形状スクラッチ部34aを覆うよう太陽電池35aを設けることにより、三角形状スクラッチ部34aに集光された光を太陽電池35aに入射させることができる。太陽電池35aに光が入射すると、太陽電池35aにより光が電気に変換される。このようにして生成された電気は、前述のとおり、一対の導電体39を介して有機EL層22の駆動回路に供給される。
【0058】
太陽電池35aとしては、pn接合型太陽電池、色素増感型太陽電池、有機薄膜型太陽電池など様々なタイプの太陽電池を用いることができる。
このうちpn接合型太陽電池としては、シリコン系(単結晶、多結晶、アモルファス、薄膜など)、化合物系(GaAs系、カルコパイライト系など)など様々なタイプを挙げることができ、例えば、登録実用新案第2023397号公報または登録実用新案第2511509号公報に記載の太陽電池を挙げることができる。
また色素増感型太陽電池としては、2枚の透明電極間に色素を吸着させた二酸化チタン層と電解溶液とを挟み込んだ構造を有するグレッツエル型を挙げることができる。この場合、色素としてはルテニウム錯体などを用いることができ、電解溶液としてはヨウ素を溶かした電解溶液を用いることができる。このような色素増感型太陽電池として、例えば、特許第4278615号明細書または特許第3683899号明細書に記載の色素増感型太陽電池を挙げることができる。
【0059】
三角形状スクラッチ部34aを覆うよう太陽電池35aを形成する方法として、例えば、三角形状スクラッチ部34aの表面に太陽電池35aの材料を蒸着させる方法を挙げることができる。また、薄膜のシリコン系pn接合型太陽電池、色素増感型太陽電池などの柔軟性を有する太陽電池を用いる場合、市販の太陽電池を三角形状スクラッチ部34aの表面に貼付などにより設けてもよい。
【0060】
反射材
反射材36の材料は、光を反射できるものであれば特に限定されないが、例えば各種金属材料、特にアルミニウム、ニッケル、クロムなどを挙げることができる。反射材36の厚さは、十分な反射強度を得ることができるとともに、カラーフィルタ用基板31の表面から剥離しない程度の厚さであれば特に限定されない。反射材36の形成方法も特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、無電界めっき溶液法、電界めっき溶液法、コーティング法、イオンプレーティング法などを用いることにより、カラーフィルタ用基板31の表面に緻密に反射材36を形成してもよく、若しくは、金属薄膜などからなる反射材36を貼付などによりカラーフィルタ用基板31の表面に設けてもよい。このようにして形成された反射材36において、好ましくは、波長550nmの光に対する反射率が70%以上となっている。
【0061】
カラーフィルタ層
次にカラーフィルタ層37について説明する。図1(a)(c)に示すように、カラーフィルタ用基板31の他側の面31bには、有機EL層22からの光を補正し、または色純度を高めるための複数のカラーフィルタ層37が設けられており、また各カラーフィルタ層37の間にはブラックマトリクス層38が設けられている。これらカラーフィルタ用基板31と複数のカラーフィルタ層37とブラックマトリクス層38とにより、カラーフィルタ30が構成されている。なお図1(c)に示すように、ブラックマトリクス層38により囲われている領域が、カラーフィルタ用基板31の他側の表示領域32bとなっている。
【0062】
カラーフィルタ層37は、有機EL表示装置10の単位画素に対応して設けられた赤色着色層、青色着色層および緑色着色層のいずれかからなる。赤色着色層、青色着色層および緑色着色層は、各色の顔料や染料等の着色剤を感光性樹脂中に分散または溶解させて形成された層である。
このうち赤色着色層に用いられる着色剤としては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
青色着色層に用いられる着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、インダンスレン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等が挙げられる。これらの顔料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
緑色着色層に用いられる着色剤としては、例えば、ハロゲン多置換フタロシアニン系顔料もしくはハロゲン多置換銅フタロシアニン系顔料等のフタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。これらの顔料もしくは染料は単独で用いてもよく2種以上を混合して用いてもよい。
【0063】
ブラックマトリクス層38の材料としては、例えば、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色着色剤を含有する樹脂組成物等が挙げられる。この樹脂組成物に用いられる樹脂としては、例えば、アクリレート系、メタクリレート系、ポリ桂皮酸ビニル系、もしくは環化ゴム系等の反応性ビニル基を有する感光性樹脂を使用することができる。
【0064】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。ここでは、有機EL表示装置10内における有機発光層24からの光の経路について説明するとともに、有機発光層24からの光を光発電素子35により電気に変換する作用について説明する。
【0065】
図3(a)(b)において、矢印(1)〜(4)は、有機EL表示装置10内における有機発光層24からの光の経路を示している。
【0066】
図3(a)において、矢印(1)は、有機発光層24から放射され、カラーフィルタ層37およびカラーフィルタ用基板31を透過して観察側へ放射される光の経路を示している。矢印(1)により示される経路を通る光は、有機EL表示装置10から観察側に取り出される光であり、表示光として利用される。
【0067】
図3(a)において、矢印(2)は、有機発光層24から放射された後、カラーフィルタ用基板31から観察側へ放射されることなく、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播する光の経路を示している。また図3(a)に示すように、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域には、前述のように、一側の面31aの一部を切り欠くことにより形成される三角形状スクラッチ部34aが設けられている。この場合、一側の面31aのうち三角形状スクラッチ部34aが設けられている場所における全反射の臨界角は、三角形状スクラッチ部34aが設けられている場所における全反射の臨界角と異なっており、このため、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して三角形状スクラッチ部34aに到達した光を、三角形状スクラッチ部34aから外方へ出射させることができる。三角形状スクラッチ部34aから外方へ出射した光は、図3(a)に示すように光発電素子35の太陽電池35aに入射し、この光は太陽電池35aにより電気に変換される。生成された電気は、前述のとおり、一対の導電体39を介して有機EL層22の駆動回路に供給される。
【0068】
図3(a)において、矢印(3)は、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播した後、カラーフィルタ用基板31の側面31cに設けられた反射材36により反射され、その後三角形状スクラッチ部34aに到達する光の経路を示している。矢印(3)に示す光は、矢印(2)に示す光の場合と同様に、三角形状スクラッチ部34aに到達した後、三角形状スクラッチ部34aから外方へ出射する。その後、図3(a)に示すように光発電素子35の太陽電池35aに入射し、この光は太陽電池35aにより電気に変換される。生成された電気は、矢印(2)に示す光の場合と同様に、一対の導電体39を介して有機EL層22の駆動回路に供給される。
【0069】
図3(b)において、矢印(4)は、有機発光層24から放射された後、カラーフィルタ用基板31から観察側へ放射されることなく、カラーフィルタ用基板31の一側の面31aで全反射して有機EL層22に戻ってきた光の経路を示している。この場合、有機EL層22に戻ってきた光は、金属からなる陽極23により反射されて再びカラーフィルタ用基板31へ向かい、その後、三角形状スクラッチ部34aに到達する。三角形状スクラッチ部34aに到達した光は、前述の場合と同様に太陽電池35aにより電気に変換される。
【0070】
このように本実施の形態によれば、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域に、三角形状スクラッチ部34aからなる集光部34と、集光部34からの光を電気に変換する太陽電池35aを有する光発電素子35とが設けられている。このため、有機EL層22から観察側に向けて放射された光であって、カラーフィルタ用基板31から観察側へ放射されることなくカラーフィルタ用基板31内部を伝播する光を、集光部34を介して光発電素子35により電気に変換することができる。そして、生成された電気を一対の導電体39を介して有機EL層22の駆動回路に供給することにより、有機EL表示装置10の消費電力を低減することができる。
【0071】
また本実施の形態によれば、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域および側面31cのうち、集光部34および光発電素子35が設けられていない領域に、有機発光層24からの光を反射して集光部34に導く反射材36が設けられている。このため、カラーフィルタ用基板31内部を伝播する光をより多く集光部34に導くことができ、このことにより、有機EL表示装置10の消費電力をより低減することができる。
【0072】
なお本実施の形態において、図2および図4(a)に示すように、集光部34が三角形状スクラッチ部34aからなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図4(b)(c)(d)にそれぞれ示すように、集光部34を、半楕円形状スクラッチ部34b、半円形状スクラッチ部34cまたは四角形状スクラッチ部34dにより形成してもよい。若しくは、図5(a)(b)(c)(d)にそれぞれ示すように、集光部34を、三角形状レンズ部34e、半楕円形状レンズ部34f、半円形状レンズ部34gまたは四角形状レンズ部34hにより形成してもよい。このようなスクラッチ部34a、34b、34c、34dまたはレンズ部34e、34f、34g、34hからなる集光部34をカラーフィルタ用基板31の非表示領域33に設けることにより、カラーフィルタ用基板31の表面のうち集光部34における全反射の臨界角を、カラーフィルタ用基板31の他の場所における全反射の臨界角と異ならせることができ、これによって、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播される光を集光部34において外方に出射させることができる。なおこの場合、太陽電池35aは、前述の場合と同様に、スクラッチ部34a、34b、34c、34dまたはレンズ部34e、34f、34g、34hを覆うよう蒸着などにより形成される。
【0073】
また本実施の形態において、反射材36が、カラーフィルタ用基板31の非表示領域33のうち一側の非表示領域33aの周縁領域および側面31cに設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図6(a)に示すように、反射材36をカラーフィルタ用基板31の非表示領域33のうち他側の非表示領域33bの周縁領域に設けてもよい。このことにより、カラーフィルタ用基板31から観察側へ放射されることなくカラーフィルタ用基板31内部を伝播する光を、カラーフィルタ用基板31の表面においてより確実に全反射させることができ、これによって、より多くの光を集光部34に導くことができる。
また、図6(b)に示すように、反射材36を、有機EL素子用基板21の非表示領域にさらに設けてもよい。これによって、さらに多くの光を集光部34に導くことができる。
さらに、図示はしないが、反射材36を、カラーフィルタ用基板31の非表示領域33a,33bのうち、表示領域32a,32b間に位置する領域に設けてもよい。これによって、さらに多くの光を集光部34に導くことができる。
【0074】
また本実施の形態において、集光部34と光発電素子35とが、カラーフィルタ用基板31の非表示領域33のうち一側の非表示領域33aの周縁領域に設けられている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図6(c)に示すように、集光部34と光発電素子35とを、カラーフィルタ用基板31の側面31cに設けてもよい。
【0075】
第2の実施の形態
次に図7を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。ここで図7は、本発明の第2の実施の形態における有機EL素子を示す縦断面図である。
【0076】
図7に示す第2の実施の形態は、有機EL素子がいわゆるボトムエミッション型である点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。図7に示す第2の実施の形態において、図1乃至図6に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
有機EL表示装置
図7に示すように、有機EL表示装置10は、観察側に位置する一側の面31aと、他側の面31bとを有するカラーフィルタ用基板(透明基板)31と、カラーフィルタ用基板31の他側の面31bに設けられた有機EL素子20と、を備えている。このうち有機EL素子20は、有機EL素子用基板21と、有機EL素子用基板21とカラーフィルタ用基板31との間に設けられた有機EL層22とを有している。この有機EL層22は、有機EL素子用基板21側に位置する陽極23と、カラーフィルタ用基板31側(観察側)に位置する陰極25と、陽極23と陰極25の間に設けられた有機発光層24とを有している。また図7に示すように、カラーフィルタ用基板31と有機EL素子20との間には、有機EL素子20の有機EL層22からの光を補正し、または色純度を高めるための複数のカラーフィルタ層37が設けられており、また各カラーフィルタ層37の間にはブラックマトリクス層38が設けられている。図1乃至図6に示す第1の実施の形態の場合と同様に、これらカラーフィルタ用基板31、カラーフィルタ層37およびブラックマトリクス層38によりカラーフィルタ30が構成されている。
本実施の形態における有機EL表示装置10はいわゆるボトムエミッション型であり、カラーフィルタ用基板31の他側の面31bに設けられた有機EL素子20の有機発光層24からの発光が、カラーフィルタ30を透過して観察側(図7において有機EL表示装置10の下方の側)へ放射される。
【0078】
本実施の形態における有機EL層22の陽極23、有機発光層24および陰極25は、図1乃至図6に示す第1の実施の形態の場合と略同一であるため、詳細な説明は省略する。なお図1乃至図6に示す第1の実施の形態の場合と同様に、陽極23が観察側に配置され、陰極25が有機EL素子用基板21側に配置されていてもよい。ここで、陽極23および陰極25のうち少なくとも観察側に位置する電極は、透明性および導電性を有する材料から構成される。
【0079】
図7に示すように、カラーフィルタ30のカラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域には、カラーフィルタ用基板31内部で全反射を繰り返して伝播する光を集光する集光部34と、集光部34からの光によって発電する光発電素子35とが設けられている。また図7に示すように、光発電素子35と有機EL層22の駆動回路(図示せず)とは一対の導電体39を介して接続されており、これによって、光発電素子35により生成された電気を有機EL層22に供給することができる。このことにより、有機EL表示装置10の消費電力を低減することができる。
【0080】
また図7に示すように、カラーフィルタ用基板31の一側の非表示領域33aの周縁領域および側面31cであって、集光部34および光発電素子35が設けられていない領域には、有機発光層24からの光であってカラーフィルタ用基板31内部を伝播する光を反射して集光部34に導く反射材36が設けられている。このため、より多くの光を集光部34に導くことができ、このことにより、有機EL表示装置10の消費電力をより低減することができる。
【実施例】
【0081】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0082】
(実施例1)
3色塗り分けタイプの有機EL層22が設けられた有機EL素子用基板21と、カラーフィルタ用基板31とを封止材40により張り合わせ、トップエミッション構造の有機EL表示装置10を作製した。カラーフィルタ用基板31の側面31cに、Alからなる反射材36を蒸着後、光発電素子35を、カラーフィルタ用基板31の観察側の面31aにおける非表示領域33aに設置した。また、光発電素子35と有機EL表示装置10の有機EL層22の電極とをCu配線でつなぎ、光発電素子35により生成された電力を有機EL層22の電極に供給する回路を作製した。なお本実施例1においては、カラーフィルタ用基板31にカラーフィルタ層37を設けなかった。
【0083】
有機EL表示装置10の観察側において測定した輝度が400cd/mとなるように有機EL層22の駆動電力を調整した状態で、有機EL表示装置10を1時間点灯させた。そのときの消費電力量を測定した結果、消費電力量は100(任意単位)であった。
【0084】
(実施例2)
反射材36をカラーフィルタ用基板31の非表示領域33全域にわたって設けたこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は90であった。
【0085】
(実施例3)
カラーフィルタ用基板31にカラーフィルタ層37を設けたこと以外は、実施例2と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は102であった。
【0086】
(実施例4)
有機EL表示装置10をボトムエミッション構造としたこと以外は、実施例3と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は107であった。
【0087】
(比較例1)
光発電素子35を設置しなかったこと、および、カラーフィルタ用基板31の側面31cに反射材36を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は110であった。
【0088】
(比較例2)
カラーフィルタ用基板31の非表示領域33に反射材36を設けなかったこと以外は、実施例2と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は108であった。
【0089】
(比較例3)
カラーフィルタ用基板31の非表示領域33に反射材36を設けなかったこと以外は、実施例3と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は117であった。
【0090】
(比較例4)
カラーフィルタ用基板31の非表示領域33に反射材36を設けなかったこと以外は、実施例4と同様にして、有機EL表示装置10の消費電力量を測定した。測定された消費電力量は119であった。
【0091】
表1は、実施例1〜4および比較例1〜4における有機EL表示装置10の消費電力量をまとめて示す表である。
【表1】

【0092】
実施例1〜4と比較例1〜4との比較から分かるように、カラーフィルタ用基板31の非表示領域33に光発電素子35および反射材36を設けることにより、有機EL表示装置10の消費電力量を低減させることができた。
【0093】
実施例1と実施例2との比較から分かるように、反射材36をカラーフィルタ用基板31の非表示領域33全域にわたって設けることにより、有機EL表示装置10の消費電力量がさらに低減されるといえる。
【符号の説明】
【0094】
10 有機EL表示装置
20 有機EL素子
21 有機EL素子用基板
21a 有機EL素子用基板の一側の面
22 有機EL層
23 陽極
24 有機発光層
25 陰極
26 バリア膜
30 カラーフィルタ
31 カラーフィルタ用基板
31a カラーフィルタ用基板の一側の面
31b カラーフィルタ用基板の他側の面
31c カラーフィルタ用基板の側面
32 カラーフィルタ用基板の表示領域
32a 一側の面の表示領域
32b 他側の面の表示領域
33 カラーフィルタ用基板の非表示領域
33a 一側の面の非表示領域
33b 他側の面の非表示領域
34 集光部
34a 三角形状スクラッチ部
34b 半楕円形状スクラッチ部
34c 半円形状スクラッチ部
34d 四角形状スクラッチ部
34e 三角形状レンズ部
34f 半楕円形状レンズ部
34g 半円形状レンズ部
34h 四角形状レンズ部
35 光発電素子
35a 太陽電池
36 反射材
37 カラーフィルタ層
38 ブラックマトリクス層
39 導電体
40 封止材
41 収納空間
42 オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子用基板と、当該有機EL素子用基板の一側の面に設けられた有機EL層とを有する有機EL素子と、
有機EL素子の有機EL層側に設けられ、観察側に位置する透明基板と、を備え、
有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有し、
透明基板は、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射される表示領域と、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域と、に区画され、
透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とを設け、
透明基板の非表示領域のうち集光部および光発電素子が設けられている領域以外の領域に、有機発光層からの光を反射して集光部に導く反射材を設けたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項2】
前記透明基板はカラーフィルタ用基板からなり、
カラーフィルタ用基板の表示領域に、カラーフィルタ層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項3】
前記有機EL素子用基板と前記透明基板との間に封止材が設けられ、この封止材によって有機EL素子用基板と透明基板との間に前記有機EL層を収納する収納空間が形成されることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項4】
前記集光部は、透明基板の表面に形成されたスクラッチ部またはレンズ部からなることを特徴とする請求項1に記載の有機EL表示装置。
【請求項5】
観察側に位置する一側の面と、他側の面とを有する透明基板と、
透明基板の他側の面に設けられた有機EL素子と、を備え、
有機EL素子は、有機EL素子用基板と、当該有機EL素子用基板と前記透明基板との間に設けられた有機EL層とを有し、
有機EL層は、陽極と、陰極と、陽極と陰極の間に設けられた有機発光層とを有し、
透明基板は、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射される表示領域と、有機EL層の有機発光層からの光が観察側へ向けて放射されない非表示領域と、に区画され、
透明基板の非表示領域に、光を集光する集光部と、集光部からの光によって発電する光発電素子とを設け、
透明基板の非表示領域のうち集光部および光発電素子が設けられている領域以外の領域に、有機発光層からの光を反射して集光部に導く反射材を設けたことを特徴とする有機EL表示装置。
【請求項6】
前記透明基板はカラーフィルタ用基板からなり、
カラーフィルタ用基板の表示領域に、カラーフィルタ層を設けたことを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。
【請求項7】
前記集光部は、透明基板の表面に形成されたスクラッチ部またはレンズ部からなることを特徴とする請求項5に記載の有機EL表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−108821(P2011−108821A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261908(P2009−261908)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】