説明

有機EL装置、有機EL装置の製造方法、及び電子機器

【課題】容易に且つ低コストで、発光ムラの少ない光共振構造を有する有機EL装置、有機EL装置の製造方法、及び電子機器を提供する。
【解決手段】有機EL装置2は、第1画素12Rの絶縁層68には、第1有機EL素子6Rの第1電極34が形成されていない領域の少なくとも一部に第1凹部70Rが形成されており、第2画素12Gの絶縁層68には、第2有機EL素子6Gの第1電極34が形成されていない領域の少なくとも一部に、第1凹部70Rとは異なる容量を有する第2凹部70Gが形成されており、第1機能層54Rは、第1凹部70R及び第1有機EL素子6Rの第1電極34上に形成されており、第2機能層54Gは、第2凹部70G及び第2有機EL素子6Gの第1電極34上に形成されており、第1機能層54Rと第2機能層54Gとは、同一材料で略同一体積を有し、且つそれぞれの有機EL素子における第1電極34上において、異なる膜厚を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL装置、有機EL装置の製造方法、及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、パーソナルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistants)等の電子機器に使用される表示装置や、デジタル複写機やプリンタ等の画像形成装置における露光用ヘッドとして、有機エレクトロルミネッセンス(EL/Electroluminescence)装置等の発光装置が注目されている。この種の発光装置をカラー用に構成するにあたっては、従来、発光層を構成する材料を画素毎に変えることにより、各画素から各色の光が射出されるように構成されている。
【0003】
その一方で、発光層の下層側に形成された下層側反射層と発光層の上層側に形成された上層側反射層との間に光共振器を形成すると共に、液滴吐出法等の塗布法で正孔注入層の膜厚を変えることにより光共振器の光学長を画素毎に変えて、発光素子の射出光から各色の光を取り出す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−269327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、正孔注入層の膜厚を画素毎に変えることにより、各画素から各色の光が射出されるように構成した場合には、画素に打ち込む正孔注入層を構成する材料の液状物の量の変更だけでは対応が出来ず、その膜厚に応じたそれぞれの液状物を用意する必要がある。この場合、液滴吐出装置を複数用意するか、若しくは1つの装置で複数の液状物を制御することとなり、コスト的に問題がある。又、液状物が変わることから、乾燥挙動が変わり、同時乾燥し、全インクから平坦な膜を得ることが困難となる。液状物毎にそれぞれ乾燥した場合、その分乾燥装置の数を増やすこととなり、この点からもコスト的に問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]第1画素と、前記第1画素とは異なる色を発光する第2画素と、が配置された基板と、前記基板上に形成された絶縁層と、前記第1画素において前記絶縁層上に形成された第1有機EL素子と、前記第2画素において前記絶縁層上に形成された第2有機EL素子と、を有し、前記第1、第2有機EL素子は、それぞれ、光反射層と、第1電極と、少なくとも発光層を含む有機機能層と、第2電極と、をこの順に前記絶縁層上に有しており、前記第1、第2有機EL素子は、前記第2電極と前記光反射層との間で光共振器が構成されており、前記第1画素の形成領域に位置する前記絶縁層には、前記第1有機EL素子の前記第1電極が形成されていない領域の少なくとも一部に第1凹部が形成されており、前記第2画素の形成領域に位置する前記絶縁層には、前記第2有機EL素子の前記第1電極が形成されていない領域の少なくとも一部に、前記第1凹部とは異なる容量を有する第2凹部が形成されており、前記第1有機EL素子の前記有機機能層のうちの一層である第1機能層は、前記第1凹部及び前記第1有機EL素子の前記第1電極上に形成されており、前記第2有機EL素子の前記有機機能層のうちの一層である第2機能層は、前記第2凹部及び第2有機EL素子の前記第1電極上に形成されており、前記第1機能層と前記第2機能層とは、同一材料で略同一体積を有し、且つそれぞれの有機EL素子における前記第1電極上において、異なる膜厚を有することを特徴とする有機EL装置。
【0008】
これによれば、凹部により有機機能層に含まれる層の厚みを調整するので、有機機能層に含まれる層の材料の量を画素間で同一にすることができる。それ故、従来のITOからなる陽極の厚さを変える場合と比較して、有機機能層の膜厚を画素毎に容易に変えることができ、生産性を向上することができる。従って、低コストで且つ容易に、発光ムラの少ない光共振構造を有する有機EL装置を実現できる。
又、複数の画素は各々、赤色、緑色、及び青色に対応しているが、発光素子を構成する有機機能層の材質は、対応する色に係らず、共通であり、いずれの色に対応するかは、有機機能層に含まれる層の厚さによって決定されている。即ち、各画素に光共振器を構成し、有機機能層に含まれる層の厚さによって、光共振器の光学長を赤色光、緑色光、青色光のいずれかに対応する長さに設定する。従って、画素がいずれの色に対応するかに係らず、各発光素子の寿命は略等しいので、有機EL装置全体の寿命を延ばすことができる。又、有機EL装置を製造する際、画素間で同一の材料を用いるので、生産性を向上することができる。更に、膜厚を調整する層が有機機能層であれば、液滴吐出法等で形成できるので、画素に吐出する液滴の量や数を任意、且つ、容易に変えることができる。
【0009】
[適用例2]上記有機EL装置であって、前記第1凹部と前記第2凹部との容量は、凹部の平面積及び/又は深さが異なることによって異なっていることを特徴とする有機EL装置。
【0010】
これによれば、第1凹部と第2凹部との容量を調整することが容易になる。
【0011】
[適用例3]上記有機EL装置であって、前記第1凹部は、一つ以上の溝及び/又は穴によって構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【0012】
これによれば、有機機能層に含まれる層の膜厚を厚くする場合には、この溝及び穴等の容量を小さく、一方、有機機能層に含まれる層の膜厚を薄くする場合は、この溝及び穴等の容量を大きくすることで、容易に膜厚調整ができる。
【0013】
[適用例4]上記有機EL装置であって、前記第1凹部の容量と前記第2凹部の容量との差によって、第1有機EL素子の前記第1電極上における前記第1機能層の膜厚と第2有機EL素子の前記第1電極上における前記第2機能層の膜厚とは異なっていることを特徴とする有機EL装置。
【0014】
これによれば、第1機能層と第2機能層との膜厚を調整することが容易になる。
【0015】
[適用例5]上記有機EL装置であって、前記有機機能層は正孔注入層を含み、前記第1機能層及び前記第2機能層は前記正孔注入層であることを特徴とする有機EL装置。
【0016】
これによれば、正孔注入層の膜厚を調整することが容易になる。
【0017】
[適用例6]上記有機EL装置であって、前記絶縁層は平坦化処理された平坦化層であることを特徴とする有機EL装置。
【0018】
これによれば、凹部が形成される領域は平坦化処理され、第1凹部と第2凹部との容量を調整することが更に容易になる。
【0019】
[適用例7]第1画素と、前記第1画素とは異なる色を発光する第2画素とを有する有機EL装置の製造方法であって、基板上に絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の前記第1画素の形成領域に対応する位置に第1凹部を形成すると共に、前記絶縁層の前記第2画素の形成領域に対応する位置に第2凹部を形成する工程と、前記絶縁層上の、前記第1凹部及び前記第2凹部と平面視において重ならない領域の少なくとも一部に、前記第1画素形成領域に対応する位置及び前記第2画素形成領域に対応する位置にそれぞれ光反射膜を形成する工程と、前記第1画素形成領域に対応する位置及び前記第2画素形成領域に対応する位置における前記光反射膜上にそれぞれ第1電極を形成する工程と、前記絶縁層上に、前記第1画素形成領域と前記第2画素形成領域とを互いに区画する隔壁を形成する工程と、及び、前記隔壁によって区画された前記第1画素形成領域及び前記第2画素形成領域のそれぞれに、同一材料で略同一体積の機能液を液滴吐出法を用いて吐出し、該機能液を乾燥させて有機機能層を形成する工程と、を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【0020】
これによれば、凹部により有機機能層に含まれる層の厚みを調整するので、有機機能層に含まれる層の材料の量を画素間で同一にすることができる。それ故、従来のITOからなる陽極の厚さを変える場合と比較して、有機機能層の膜厚を画素毎に容易に変えることができ、生産性を向上することができる。従って、低コストで且つ容易に、発光ムラの少ない光共振構造を有する有機EL装置の製造方法を実現できる。
又、複数の画素は各々、赤色、緑色、及び青色に対応しているが、発光素子を構成する有機機能層の材質は、対応する色に係らず、共通であり、いずれの色に対応するかは、有機機能層に含まれる層の厚さによって決定されている。即ち、各画素に光共振器を構成し、有機機能層に含まれる層の厚さによって、光共振器の光学長を赤色光、緑色光、青色光のいずれかに対応する長さに設定する。従って、画素がいずれの色に対応するかに係らず、各発光素子の寿命は略等しいので、有機EL装置全体の寿命を延ばすことができる。又、有機EL装置を製造する際、画素間で同一の材料を用いるので、生産性を向上することができる。更に、膜厚を調整する層が有機機能層であれば、液滴吐出法等で形成できるので、画素に吐出する液滴の量や数を任意、且つ、容易に変えることができる。
【0021】
[適用例8]上記のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。
【0022】
これによれば、上記有機EL装置を表示部に備えることにより、当該表示部において高品位な表示を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照し、有機EL装置の実施形態について説明する。尚、各実施形態で参照する図面においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせて表示している。
【0024】
(第1の実施形態)
(有機EL装置の基本構成)
図1は、本実施形態に係る有機EL装置を示す平面図である。図2は、図1中のII−II’線における断面図である。図3は、本実施形態に係る複数の画素の一部を示す平面図である。図4は、本実施形態に係る有機EL装置の回路構成を示す図である。
本実施形態に係る有機EL装置2は、図1に示すように、表示面10を有している。ここで、有機EL装置2には、複数の画素12が設定されている。複数の画素12は、表示領域14内で、図中のX方向及びY方向に配列しており、X方向を行方向とし、Y方向を列方向とするマトリクスMを構成している。有機EL装置2は、複数の画素12から選択的に表示面10を介して有機EL装置2の外に光を射出することで、表示面10に画像を表示することができる。尚、表示領域14とは、画像が表示され得る領域である。図1では、構成をわかりやすく示すため、画素12が誇張され、且つ画素12の個数が減じられている。
【0025】
有機EL装置2は、図1中のII−II’線における断面図である図2に示すように、素子基板16と、封止基板18とを有している。
素子基板16には、表示面10側、即ち封止基板18側に、複数の画素12のそれぞれに対応して、後述する有機EL素子が設けられている。
【0026】
封止基板18は、素子基板16よりも表示面10側で素子基板16に対向した状態で設けられている。素子基板16と封止基板18とは、接着剤20を介して接合されている。有機EL装置2では、有機EL素子は、接着剤20によって表示面10側から覆われている。
又、素子基板16と封止基板18との間は、有機EL装置2の周縁よりも内側で表示領域14を囲むシール材22によって封止されている。つまり、有機EL装置2では、有機EL素子と接着剤20とが、素子基板16及び封止基板18並びにシール材22によって封止されている。
【0027】
ここで、有機EL装置2における複数の画素12は、それぞれ、表示面10から射出する光の色が、図3に示すように、赤系(R)、緑系(G)、及び青系(B)のうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMを構成する複数の画素12は、Rの光を射出する画素12Rと、Gの光を射出する画素12Gと、Bの光を射出する画素12Bとを含んでいる。
尚、以下においては、画素12という表記と、画素12R、12G、12Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0028】
ここで、Rの色は、純粋な赤の色相に限定されず、橙等を含む。Gの色は、純粋な緑の色相に限定されず、青緑や黄緑を含む。Bの色は、純粋な青の色相に限定されず、青紫や青緑等を含む。他の観点から、Rの色を呈する光は、光の波長のピークが、可視光領域で570nm以上の範囲にある光であると定義され得る。又、Gの色を呈する光は、光の波長のピークが500nm〜565nmの範囲にある光であると定義され得る。Bの色を呈する光は、光の波長のピークが415nm〜495nmの範囲にある光であると定義され得る。
【0029】
マトリクスMでは、Y方向に沿って並ぶ複数の画素12が、1つの画素列24を構成している。又、X方向に沿って並ぶ複数の画素12が、1つの画素行26を構成している。1つの画素列24内の各画素12は、光の色がR、G、及びBのうちの1つに設定されている。つまり、マトリクスMは、複数の画素12RがY方向に配列した画素列24Rと、複数の画素12GがY方向に配列した画素列24Gと、複数の画素12BがY方向に配列した画素列24Bとを有している。そして、有機EL装置2では、画素列24R、画素列24G、及び画素列24Bが、この順でX方向に沿って反復して並んでいる。
尚、以下においては、画素列24という表記と、画素列24R、画素列24G、及び画素列24Bという表記とが、適宜、使いわけられる。
【0030】
有機EL装置2は、回路構成を示す図である図4に示すように、画素12毎に、TFT(Thin Film Transistor)素子28と、TFT素子30と、保持容量32と、有機EL素子6とを有している。各有機EL素子6は、画素電極(第1電極)34と、有機機能層36と、共通電極(第2電極)38とを有している。
又、有機EL装置2は、走査線駆動回路40と、データ線駆動回路42と、複数の走査線44と、複数のデータ線46と、複数の電源線48とを有している。
【0031】
複数の走査線44は、それぞれ走査線駆動回路40につながっており、Y方向に互いに間隔をあけた状態でX方向に延びている。
複数のデータ線46は、それぞれデータ線駆動回路42につながっており、X方向に互いに間隔をあけた状態でY方向に延びている。
複数の電源線48は、X方向に互いに間隔をあけた状態で、且つ各電源線48と各データ線46とがX方向に間隔をあけた状態でY方向に延びている。
【0032】
各画素12は、各走査線44と各データ線46との交差に対応して設定されている。各走査線44は、図3に示す各画素行26に対応している。各データ線46及び各電源線48は、それぞれ、図3に示す各画素列24に対応している。
図4に示す各TFT素子28のゲート電極は、対応する各走査線44に電気的につながっている。各TFT素子28のソース電極は、対応する各データ線46に電気的につながっている。TFT素子28のドレイン電極は、TFT素子30のゲート電極及び保持容量32の一方の電極に電気的につながっている。
【0033】
保持容量32の他方の電極と、TFT素子30のソース電極は、それぞれ、対応する各電源線48に電気的につながっている。
各TFT素子30のドレイン電極は、各画素電極34に電気的につながっている。各画素電極34と共通電極38とは、画素電極34を陽極とし、共通電極38を陰極とする一対の電極を構成している。
ここで、共通電極38は、マトリクスMを構成する複数の画素12間にわたって一連した状態で設けられており、複数の画素12間にわたって共通して機能する。
各画素電極34と共通電極38との間に介在する有機機能層36は、有機材料で構成されており、後述する発光層を含んだ構成を有している。
【0034】
TFT素子28は、このTFT素子28につながる走査線44に走査信号が供給されるとON状態となる。このとき、このTFT素子28につながるデータ線46からデータ信号が供給され、TFT素子30がON状態になる。TFT素子30のゲート電位は、データ信号の電位が保持容量32に一定の期間だけ保持されることによって、一定の期間だけ保持される。これにより、TFT素子30のON状態が一定の期間だけ保持される。
【0035】
TFT素子30のON状態が保持されているときに、TFT素子30のゲート電位に応じた電流が、電源線48から画素電極34と有機機能層36を経て共通電極38に流れる。そして、有機機能層36に含まれる発光層が、有機機能層36を流れる電流量に応じた輝度で発光する。有機EL装置2は、有機機能層36に含まれる発光層が発光し、発光層からの光が封止基板18を介して表示面10から射出されるトップエミッション型の有機EL装置である。尚、有機EL装置2では、表示面10側という表現が上側とも表現され、底面50側という表現が下側とも表現される。
【0036】
ここで、素子基板16及び封止基板18のそれぞれの構成について、詳細を説明する。
図5は、図3中のV−V’線における断面図である。図6(A)、(B)は、本実施形態に係る凹部70の一例を示す平面図である。図7(A)、(B)、(C)は、図5に示す有機EL素子6で内部発光した光のスペクトラムを示す説明図、光共振器66によって取り出された光のスペクトラムを示す説明図、及びカラーフィルタ58の透過特性を示す説明図である。尚、図5では、構成をわかりやすく示すため、TFT素子28及び保持容量32並びにデータ線46等の素子が省略されている。
【0037】
本実施形態に係る有機EL装置2は、図5に示すように、基板としての透明基板52側とは反対側に向けて表示光を射出するトップエミッション型の装置であり、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のいずれの画素(第1画素)12R、画素(第2画素)12G、及び画素12Bにも、有機EL素子6が形成されている。有機EL素子6はそれぞれ第1有機EL素子6R、第2有機EL素子6G、及び第3有機EL素子6Bである。有機EL素子6は、透明基板52の上層側に、ITO等からなる透明な画素電極(陽極)34、正孔注入層(有機機能層)54、発光層(有機機能層)56、マグネシウム−銀合金からなる半透過反射型の共通電極(陰極)38がこの順に積層された構成を有する。正孔注入層54はそれぞれ正孔注入層54R,54G,54Bである。又、共通電極38の上層側には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)のカラーフィルタ58R、58G、58Bが形成された透明基板60が、エポキシ系の透明な接着剤20によって接着されている。尚、カラーフィルタ58R、58G、58Bの間には遮光膜62が形成されている。本実施形態ではカラーフィルタを用いているが、カラーフィルタを用いない構成としてもよい。
【0038】
又、透明基板52と画素電極34との間には、銀やアルミニウム等といった光反射層(全反射層)64が形成されており、この光反射層64からなる下層側反射層と、共通電極38からなる上層側反射層との間に光共振器66が構成されている。
又、透明基板52と光反射層64との間には、アクリル樹脂等といった絶縁材料からなる平坦化層(絶縁層)68が形成されており、この平坦化層68には、画素12中の発光しない領域とオーバーラップする領域に凹部(膜厚調整部)70が設けられている。例えば、凹部70は画素電極34のY方向の両端に形成されている。凹部70はそれぞれ第1凹部70R、第2凹部70G、及び第3凹部70Bである。
凹部70は、透明基板52内において、複数の異なる容量(体積)を有している。凹部70は、各画素12から射出される色によって、複数の異なる容量を有している。
凹部70の容量の違いにより、正孔注入層54の膜厚を調整している。正孔注入層54は、凹部70により、画素12毎に光共振器66の光学長を各色光のいずれかに対応する長さとする膜厚に調整されている。具体的には、画素電極34及び平坦化層68の上層に形成される正孔注入層54の膜厚を厚くする場合には、この凹部70の容量を小さく、一方、正孔注入層54の膜厚を薄くする場合は、この凹部70の容量を大きくすることで調整できる。ここで凹部の容量は、凹部の深さ、平面積(凹部を平面視したときの面積)等を変えることにより、調整可能である。
凹部70は、画素電極34上の正孔注入層54の膜厚が調整できるように、画素電極34上以外の正孔注入層54の部分を形成できる容量を備えているのであれば、その形状は問わない。例えば凹部70は、図6(A)に示すような溝70A、又は、図6(B)に示すような穴70Cのうち少なくとも一方を含んでいる。溝70A又は穴70Cは、複数の穴又は溝から形成されていてもよい。溝70Aは、一続きの溝に形成されていてもよい。
【0039】
ここで、有機EL素子6に用いた正孔注入層54や発光層56は、いずれの画素12R、12G、12Bにおいても同一の材料から構成されており、有機EL素子6は、図7(A)に実線L1で示すようなスペクトラムをもった光を射出する。本実施形態では、画素12R,12G,12Bにおける発光層56を同一の材料を用いて形成しているが、それぞれ異なる材料を用いて形成してもよい。即ち、画素12Rには赤色の光を射出可能な赤色発光材料、画素12Gには緑色の光を射出可能な緑色発光材料、画素12Bには青色の光を射出可能な青色発光材料、をそれぞれ用いて形成するようにしてもよい。
【0040】
但し、本実施形態では、各画素12R、12G、12Bにおける各層の厚さ(単位はnm)は、表1に示すように、共通電極38、発光層56、画素電極34、及び光反射層64は各画素間で同一の厚さであるが、画素電極34上における正孔注入層54の厚さは、それぞれ異なっている。本実施形態においては、画素12R>画素12G>画素12Bである。
【0041】
【表1】

従って、各画素12R、12G、12Bにおける光共振器66の光学長は、各画素12R、12G、12Bで相違している。言い換えれば、正孔注入層54の厚さは、光共振器66の光学長が、各画素12R、12G、12Bから所定の色光が射出されるように調整されている。このとき、平坦化層68の凹部70の容量は、画素12R<画素12G<画素12Bである。
【0042】
本実施形態においては各画素12R,12G,12Bのそれぞれに凹部70を形成する構成としたが、画素電極上における正孔注入層54の膜厚が、画素12R,12G,12Bのうち一番厚い画素については、凹部70を形成しない構成としてもよい。即ち、当該画素において、凹部70を形成しない構成で正孔注入層を形成した際に、正孔注入層の膜厚が所望の膜厚となるように、正孔注入層形成材料の量及び他の色の画素の凹部70の容量を調整することにより、当該画素においては凹部70を形成しなくて済む。
【0043】
(製造方法)
続いて、図8、図9、及び図10を参照しながら、上述の液滴吐出装置を用いた有機EL素子6の製造方法について説明する。
図8は、本実施形態に係る有機EL装置2の製造方法を示す工程図であり、図9及び図10は、本実施形態に係る有機EL装置2の製造工程における有機EL素子6の断面図である。以下本実施形態では、図面上側を「上」と呼称する。有機EL装置2を製造するにあたって、本実施形態では、共通電極38、画素電極34、及び光反射層64等は、スパッタ法や真空蒸着法等といった成膜工程やフォトリソグラフィ技術を利用したパターニング工程等といった半導体プロセスで形成されるが、正孔注入層54及び発光層56は、インクジェット法等と称せられる液滴吐出法で形成する。
【0044】
先ず、ステップS100として、TFT素子等が形成された透明基板52上に層間絶縁層72を形成する。層間絶縁層72の形成は、窒化珪素、酸化珪素、或いは窒化酸化珪素を、CVD法(化学気相堆積法)等を用いて200nm程度堆積する手法を用いることが好適である。
【0045】
続いて、層間絶縁層72上に凹部70を有するアクリル樹脂等からなる平坦化層68を形成する(図9(A))。より詳しくは、先ず層間絶縁層72上に、スピンコート法等によって透明樹脂層を形成する。
【0046】
続いて、レジスト塗布工程、露光工程、エッチング工程、及びレジスト剥離工程等を含む公知のフォトリソグラフィ法によって透明樹脂層をエッチングし、画素12に対応する領域に平坦化層68を形成する。このとき、平坦化層68の外縁部については、オーバーエッチ、アンダーエッチ、或いは多階調マスク等の技術を用いて傾斜面を形成する。こうして、画素12中の発光しない領域とオーバーラップする領域に凹部70を有する平坦化層68が形成される。ここでは、画素12毎に、以降作成する画素電極34のX方向の両端に(図6参照)、凹部70が配置されるように形成する。例えば透明樹脂層用の露光マスクの開口パターンを変え、凹部70の間隔を変化させる。又、ハーフトーン露光(多諧調マスク)により、凹部70の角度や間隔を変化させる。
【0047】
次に、ステップS110として、平坦化層68上に光反射層64を形成する(図9(B))。より詳しくは、蒸着マスクを用いたイオンプレーティング法を用いてアルミニウムを積層し、膜厚200nm程度の、光透過性を有する光反射層64を形成する。
【0048】
次に、ステップS120として、光反射層64上に画素電極34を形成する(図9(B))。より詳しくは、蒸着マスクを用いたイオンプレーティング法を用いてITOを積層し、膜厚150nm程度の、光透過性を有する画素電極34を形成する。
【0049】
次に、ステップS130では、平坦化層68上に樹脂有機薄膜を塗付し、これをフォトリソグラフィ法によってパターニングすることによって、隔壁74を形成する(図9(B))。より詳しくは、酸化珪素層を200nm程度層形成し、発光層56に電流を供給するための領域をエッチング除去することで隔壁74を形成する。このステップS130を経ることにより、透明基板52上に、隔壁74、画素電極34、及び平坦化層68によって形作られる凹部が形成される。
【0050】
続いて、酸素プラズマ処理、四弗化炭素ガスでのプラズマ処理等を行い、隔壁74、画素電極34、及び平坦化層68に親液性を与える。ここまでの工程を終えた状態を図9(B)に示す。
【0051】
次に、液滴吐出法により、正孔注入層54(ステップS140)を形成し(図9(C)及び図10(A))、続いて、発光層56(ステップS150)を形成する(図10(A)及び図10(B))。具体的には、液滴吐出ヘッド76から、正孔注入層54や発光層56を構成する材料の液状物Mを液滴M0として吐出した後、乾燥させて、正孔注入層54や発光層56として定着させる方法である。その際、各画素12R、12G、12Bの周りにバンクと称する隔壁74を形成しておき、吐出した液滴M0や液状物M、が周囲にはみ出さないようにしている。
【0052】
このような方法を採用するにあたって、正孔注入層54は、例えば、PEDOT/PSS用インク(PEDOT:PSS重量比=1:50、固形分濃度0.5%、溶媒:ジエチレングリコール50%、残量は純水)を所定領域に吐出した後、真空乾燥及び熱処理(200℃、10分間)させることにより形成できる。正孔注入層54の画素電極34上の膜厚は、各画素12の凹部70の容量の違いにより、画素12Rで100nm程度、画素12Gで50nm程度、画素12Bで10nm程度の厚みを有している。
又、正孔注入層54を形成するための材料としては、前記のものに限定されることなく、ポリマー前駆体がポリテトラヒドロチオフェニルフェニレンであるポリフェニレンビニレン、1,1−ビス−(4−N、N−ジトリルアミノフェニル)シクロヘキサン等を用いることもできる。
【0053】
又、発光層56は、例えば、溶質にRGB色を示すポリオレフィン系ポリマー蛍光材料、溶媒組成にシクロヘキセルベンゼンを100%用いて、各バンク開口のインク吐出重量は共通となるように所定領域に吐出した後、真空乾燥及びN2雰囲気中熱処理(130℃、1時間)させることにより形成できる。発光層56の膜厚は、50nm程度の厚みを有している。
又、発光層56を形成するための材料としては、前記のものに限定されることなく、平坦化層68及び画素電極34の上層側に形成した際、発光層56に膜厚変化を付与するという観点からすれば、高分子材料、例えば分子量が1000以上の高分子材料を用いることが好ましい。具体的には、ポリフルオレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリビニルカルバゾール、ポリチオフェン誘導体、又はこれらの高分子材料に、ペリレン系色素、クマリン系色素、ローダミン系色素、例えばルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、キナクリドン等をドープしたものが用いられる。尚、このような高分子材料としては、二重結合のπ電子がポリマー鎖上で非極在化しているπ共役系高分子材料が、導電性高分子でもあることから発光性能に優れるため、好適に用いられる。特に、その分子内にフルオレン骨格を有する化合物、即ちポリフルオレン系化合物がより好適に用いられる。又、このような材料以外にも、例えば特開平11−40358号公報に示される有機EL素子用組成物、即ち共役系高分子有機化合物の前駆体と、発光特性を変化させるための少なくとも1種の蛍光色素とを含んでなる有機EL素子用組成物も、発光層形成材料として使用可能である。
【0054】
続いて、蒸着マスクを用いてカルシウムを全面に蒸着することで、電子注入層78を形成する(図10(B))。電子注入層78の膜厚は、5nm程度の厚さを有している。ここで、蒸着マスクの寸法は、隔壁74側の径に合わせた寸法のマスクを用いている。
【0055】
続いて、アルミニウムを全面に蒸着することで、共通電極38を形成する(図10(B))。共通電極38の膜厚は、10nm程度の厚みを有している。ここまでの工程を実行することで、図10(B)に示す有機EL素子6を形成することができる。
【0056】
最後に、有機EL素子6が形成された透明基板52と、別途用意した封止基板とを封止樹脂を介して封止する。例えば、熱硬化樹脂又は紫外線硬化樹脂からなる封止樹脂を透明基板52の周縁部に塗布し、封止樹脂上に封止基板を配置する。封止工程は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。大気中で行うと、共通電極38にピンホール等の欠陥が生じていた場合にこの欠陥部分から水や酸素等が共通電極38に侵入して共通電極38が酸化されるおそれがあるので好ましくない。
【0057】
この後、透明基板52の配線に共通電極38を接続すると共に、透明基板52上或いは外部に設けられる駆動IC(駆動回路)に回路素子部(図示せず)の配線を接続することにより、本実施形態の有機EL装置2が完成する。
【0058】
(発光動作)
このように構成した有機EL素子6では、画素電極34から正孔注入層54及び発光層56を通じて共通電極38に電流が流れると、そのときの電流量に応じて発光層56が発光する。そして、発光層56から射出された光は共通電極38を透過して、観測者側に射出される一方、発光層56から透明基板52に向けて射出された光は、画素電極34の下層に形成された光反射層64によって反射され、共通電極38を透過して観測者側に射出される。その際、発光層56から射出された光では、光共振器66の下層側反射層(光反射層64)と上層側反射層(共通電極38)の間で多重反射され、光共振器66の光学長の1/4波長の整数倍に相当する光の色度を向上させることができる。
【0059】
従って、有機EL素子6は、図7(A)に実線L1で示すようなスペクトラムをもった白色光を内部で発生させるが、赤色(R)に対応する画素12Rからは、図7(B)に実線LR1で示すスペクトラムをもった赤色光が射出され、緑色(G)に対応する画素12Gからは、図7(B)に点線LG1で示すスペクトラムをもった緑色光が射出され、青色(B)に対応する画素12Bからは、図7(B)に一点鎖線LB1で示すスペクトラムをもった青色光が射出される。
【0060】
更に、本実施形態では、赤色(R)の画素12Rの光射出側には、図7(C)に実線LR2で示す透過特性の赤色のカラーフィルタ58Rが配置され、緑色(G)の画素12Gの光射出側には、図7(C)に一点鎖線LG2で示す透過特性の緑色のカラーフィルタ58(G)が配置され、青色(B)の画素12(B)の光射出側には、図7(C)に二点鎖線LB2で示す透過特性の青色のカラーフィルタ58Bが配置されているので、各画素12R、12G、12Bからは、色純度の高い光が射出されることになる。
【0061】
本実施形態によれば、凹部70により正孔注入層54の膜厚を調整するので、正孔注入層54の材料の量を画素12間で同一にすることができる。それ故、従来のITOからなる陽極の膜厚を変える場合と比較して、有機機能層36の膜厚を画素12毎に容易に変えることができ、生産性を向上することができる。従って、低コストで且つ容易に、発光ムラの少ない光共振構造を有する有機EL装置2を実現できる。
又、複数の画素12は各々、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)に対応しているが、有機EL素子6を構成する正孔注入層54や発光層56等の有機機能層の材質は、対応する色にかかわらず、共通であり、いずれの色に対応するかは、有機機能層に含まれる層の厚さによって決定されている。即ち、本実施形態では、各画素12に光共振器66を構成し、有機機能層に含まれる発光層56の厚さによって、光共振器66の光学長を赤色光、緑色光、及び青色光のいずれかに対応する長さに設定する。従って、画素12がいずれの色に対応するかに係らず、有機EL素子6の寿命は略等しいので、有機EL装置2全体の寿命を延ばすことができる。
【0062】
又、有機EL装置2を製造する際、画素12間で同一の材料を用いるので、生産性を向上することができる。
【0063】
更に、有機機能層からなる発光層56であれば、インクジェット法(液滴吐出法)で形成できるので、画素12に吐出する液滴M0の量や数を任意、且つ、容易に変えることができる。それ故、ITOからなる陽極の厚さを変える場合と比較して、生産性が高い。
【0064】
(第2の実施形態)
図11は、本実施形態に係る有機EL装置4に用いた有機EL素子8の構成を模式的に示す断面図である。図12は、光共振器80によって取り出された光のスペクトラムを示す説明図である。尚、本実施形態の基本的な構成は、第1の実施形態と同様であるため、共通する機能を有する部分には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0065】
図11において、本実施形態に係る有機EL装置4は、赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)のいずれの画素12R、12G、12Bにも、有機EL素子8が形成されている。有機EL素子8はそれぞれ第1有機EL素子8R、第2有機EL素子8G、及び第3有機EL素子8Bである。本実施形態の有機EL素子8は、正孔注入層に代えて正孔輸送層(有機機能層)82が形成されている。即ち、有機EL素子8は、透明基板52の上層側に、ITO等からなる透明な画素電極(陽極)34、正孔輸送層82、発光層(有機機能層)56、マグネシウム−銀合金からなる半透過反射型の共通電極(陰極)38がこの順に積層された構成を有する。正孔輸送層82はそれぞれ正孔輸送層82R,82G,82Bである。
【0066】
又、透明基板52と画素電極34の間には、銀やアルミニウム等といった光反射層(全反射層)64が形成されており、この光反射層64からなる下層側反射層と、共通電極38からなる上層側反射層との間に光共振器80が構成されている。
又、透明基板52と光反射層64との間には、アクリル樹脂等といった平坦化層68が形成されており、この平坦化層68には、画素12中の発光しない領域とオーバーラップする領域に凹部70が設けられている。例えば、凹部70は画素電極34のY方向の両端に形成されている。正孔輸送層82は、凹部70により、画素12毎に光共振器80の光学長を各色光のいずれかに対応する長さとする膜厚に調整されている。
【0067】
ここで、有機EL素子8に用いた正孔輸送層82や発光層56は、いずれの画素12R、12G、12Bにおいても同一の材料から構成されており、有機EL素子8は、白色光を射出する。
【0068】
但し、本実施形態では、各画素12R、12G、12Bにおける各層の厚さ(単位はnm)は、表2に示すように、共通電極38、発光層56、画素電極34、及び光反射層64は各画素間で同一の厚さであるが、正孔輸送層82の画素電極34上の厚さは、画素12R>画素12G>画素12Bである。
【0069】
【表2】

従って、各画素12R、12G、12Bにおける光共振器80の光学長は、各画素12R、12G、12Bで相違している。言い換えれば、正孔輸送層82の厚さは、光共振器80の光学長が、各画素12R、12G、12Bから所定の色光が射出されるように調整されている。このとき、平坦化層68の凹部70の容量は、画素12R<画素12G<画素12Bである。
【0070】
従って、本実施形態では、有機EL素子8は、白色光を内部で発生させるが、赤色(R)に対応する画素12Rからは、図12に実線LR1で示すスペクトラムをもった赤色光が射出され、緑色(G)に対応する画素12Gからは、図12に点線LG1で示すスペクトラムをもった緑色光が射出され、青色(B)に対応する画素12Bからは、図12に一点鎖線LB1で示すスペクトラムをもった青色光が射出される。
【0071】
更に、本実施形態では、第1の実施形態と同様、赤色(R)の画素12Rの光射出側には、図7(C)に実線LR2で示す透過特性の赤色のカラーフィルタ58Rが配置され、緑色(G)の画素12Gの光射出側には、図7(C)に一点鎖線LG2で示す透過特性の緑色のカラーフィルタ58Gが配置され、青色(B)の画素12Bの光射出側には、図7(C)に二点鎖線LB2で示す透過特性の青色のカラーフィルタ58Bが配置されているので、各画素12R、12G、12Bからは、色純度の高い光が射出されることになる。
【0072】
このように本実施形態では、凹部70により正孔輸送層82の膜厚を調整するので、正孔輸送層82の材料の量を画素12間で同一にすることができる。それ故、従来のITOからなる陽極の膜厚を変える場合と比較して、有機機能層36の膜厚を画素12毎に容易に変えることができ、生産性を向上することができる。従って、低コストで且つ容易に、発光ムラの少ない光共振構造を有する有機EL装置4を実現できる。
又、各画素12に光共振器80を構成し、有機機能層に含まれる正孔輸送層82の厚さによって、光共振器80の光学長を赤色光、緑色光、青色光のいずれかに対応する長さに設定する。従って、画素12がいずれの色に対応するかにかかわらず、有機EL素子8の寿命は略等しいので、有機EL装置4全体の寿命を延ばすことができる。又、有機EL装置4を製造する際、画素12間で同一の材料を用いるので、生産性を向上することができる。更に、有機機能層からなる正孔輸送層82であれば、インクジェット法(液滴吐出法)で形成できるので、画素12に吐出する液滴M0の量や数を任意、且つ、容易に変えることができる。それ故、ITOからなる陽極の厚さを変える場合と比較して、生産性が高い等、第1の実施形態と同様な効果を奏する。
【0073】
(電子機器)
次に、上記した有機EL素子6(8)を含む有機EL装置2(4)を備える電子機器について説明する。
図13(A)〜(C)は、本実施形態に係る有機EL素子6(8)を含む有機EL装置2(4)を備える電子機器の斜視図である。図13(A)に、有機EL装置2(4)を備えたモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す。パーソナルコンピュータ100は、有機EL装置2(4)と本体部102を備える。本体部102には、電源スイッチ104及びキーボード106が設けられている。
【0074】
図13(B)には、有機EL装置2(4)を備えた携帯電話機の構成を示す。携帯電話機110は、複数の操作ボタン112及びスクロールボタン114、並びに表示ユニットとしての有機EL装置2(4)を備える。スクロールボタン114を操作することによって、有機EL装置2(4)に表示される画面がスクロールされる。
【0075】
図13(C)に、有機EL装置2(4)を適用した情報携帯端末PDA(Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末120は、複数の操作ボタン122及び電源スイッチ124、並びに表示ユニットとしての有機EL装置2(4)を備える。電源スイッチ124を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が有機EL装置2(4)に表示される。
【0076】
尚、有機EL装置2(4)が搭載される電子機器としては、図13(A)〜(C)に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器の表示部として、前述した有機EL装置2(4)が適用可能である。
本実施形態によれば、有機EL装置2(4)を表示部に備えることにより、当該表示部において高品位な表示を行うことができる。
【0077】
以上、実施形態について説明したが、変形例としては、例えば以下のようなものが考えられる。
【0078】
(変形例1)
上記実施形態の有機EL素子6(8)は、赤、緑、青の3色の発光層56及び画素12を有するが、これに代えて、4色以上の発光層及び画素を有する構成であってもよい。例えば、赤、緑、青、シアンの4色による構成とすることができる。
【0079】
(変形例2)
上記実施形態では、透明基板52側とは反対側に向けて表示光を射出するトップエミッション型を例に説明したが、基板側に向けて表示光を射出するボトムエミッション型に適用してもよい。
【0080】
(変形例3)
上記実施形態では、画素12に機能液を充填させる方法として液滴吐出法に限定されず、例えば、ディスペンサ塗布法を用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1の実施形態に係る有機EL装置を示す平面図。
【図2】図1中のII−II’線における断面図。
【図3】第1の実施形態に係る複数の画素の一部を示す平面図。
【図4】第1の施形態に係る表示装置の回路構成を示す図。
【図5】図3中のV−V’線における断面図。
【図6】第1の実施形態に係る凹部の一例を示す平面図。
【図7】図5に示す有機EL素子で内部発光した光のスペクトラムを示す説明図、光共振器によって取り出された光のスペクトラムを示す説明図、及びカラーフィルタの透過特性を示す説明図。
【図8】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造方法を示す工程図。
【図9】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程における有機EL素子の断面図。
【図10】第1の実施形態に係る有機EL装置の製造工程における有機EL素子の断面図。
【図11】第2の実施形態に係る有機EL装置に用いた有機EL素子の構成を模式的に示す断面図。
【図12】光共振器によって取り出された光のスペクトラムを示す説明図。
【図13】本実施形態に係る有機EL素子を含む有機EL装置を備える電子機器の斜視図。
【符号の説明】
【0082】
2,4…有機EL装置 6,8…有機EL素子 10…表示面 12…画素 14…表示領域 16…素子基板 18…封止基板 20…接着剤 22…シール材 24…画素列 26…画素行 28,30…TFT素子 32…保持容量 34…画素電極(第1電極) 36…有機機能層 38…共通電極(上層側反射層)(第2電極) 40…走査線駆動回路 42…データ線駆動回路 44…走査線 46…データ線 48…電源線 50…底面 52…透明基板(基板) 54…正孔注入層(有機機能層) 56…発光層(有機機能層) 58…カラーフィルタ 60…透明基板 62…遮光膜 64…光反射層(下層側反射層) 66…光共振器 68…平坦化層(絶縁層) 70…凹部 72…層間絶縁層 74…隔壁 76…液滴吐出ヘッド 78…電子注入層 80…光共振器 82…正孔輸送層 100…パーソナルコンピュータ 102…本体 104…電源スイッチ 106…キーボード 110…携帯電話機 112…操作ボタン 114…スクロールボタン 120…情報携帯端末PDA 122…操作ボタン 124…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1画素と、前記第1画素とは異なる色を発光する第2画素と、が配置された基板と、
前記基板上に形成された絶縁層と、
前記第1画素において前記絶縁層上に形成された第1有機EL素子と、
前記第2画素において前記絶縁層上に形成された第2有機EL素子と、
を有し、
前記第1、第2有機EL素子は、それぞれ、
光反射層と、
第1電極と、
少なくとも発光層を含む有機機能層と、
第2電極と、
をこの順に前記絶縁層上に有しており、
前記第1、第2有機EL素子は、前記第2電極と前記光反射層との間で光共振器が構成されており、
前記第1画素の形成領域に位置する前記絶縁層には、前記第1有機EL素子の前記第1電極が形成されていない領域の少なくとも一部に第1凹部が形成されており、
前記第2画素の形成領域に位置する前記絶縁層には、前記第2有機EL素子の前記第1電極が形成されていない領域の少なくとも一部に、前記第1凹部とは異なる容量を有する第2凹部が形成されており、
前記第1有機EL素子の前記有機機能層のうちの一層である第1機能層は、前記第1凹部及び前記第1有機EL素子の前記第1電極上に形成されており、
前記第2有機EL素子の前記有機機能層のうちの一層である第2機能層は、前記第2凹部及び第2有機EL素子の前記第1電極上に形成されており、
前記第1機能層と前記第2機能層とは、同一材料で略同一体積を有し、且つそれぞれの有機EL素子における前記第1電極上において、異なる膜厚を有することを特徴とする有機EL装置。
【請求項2】
請求項1に記載の有機EL装置において、
前記第1凹部と前記第2凹部との容量は、凹部の平面積及び/又は深さが異なることによって異なっていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の有機EL装置において、
前記第1凹部は、一つ以上の溝及び/又は穴によって構成されていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL装置において、
前記第1凹部の容量と前記第2凹部の容量との差によって、第1有機EL素子の前記第1電極上における前記第1機能層の膜厚と第2有機EL素子の前記第1電極上における前記第2機能層の膜厚とは異なっていることを特徴とする有機EL装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか一項に記載の有機EL装置において、
前記有機機能層は正孔注入層を含み、前記第1機能層及び前記第2機能層は前記正孔注入層であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか一項に記載の有機EL装置において、
前記絶縁層は平坦化処理された平坦化層であることを特徴とする有機EL装置。
【請求項7】
第1画素と、前記第1画素とは異なる色を発光する第2画素とを有する有機EL装置の製造方法であって、
基板上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の前記第1画素の形成領域に対応する位置に第1凹部を形成すると共に、前記絶縁層の前記第2画素の形成領域に対応する位置に第2凹部を形成する工程と、
前記絶縁層上の、前記第1凹部及び前記第2凹部と平面視において重ならない領域の少なくとも一部に、前記第1画素形成領域に対応する位置及び前記第2画素形成領域に対応する位置にそれぞれ光反射膜を形成する工程と、
前記第1画素形成領域に対応する位置及び前記第2画素形成領域に対応する位置における前記光反射膜上にそれぞれ第1電極を形成する工程と、
前記絶縁層上に、前記第1画素形成領域と前記第2画素形成領域とを互いに区画する隔壁を形成する工程と、及び、
前記隔壁によって区画された前記第1画素形成領域及び前記第2画素形成領域のそれぞれに、同一材料で略同一体積の機能液を液滴吐出法を用いて吐出し、該機能液を乾燥させて有機機能層を形成する工程と、
を有することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機EL装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−97697(P2010−97697A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264868(P2008−264868)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】