有用流体取出制御用可動弁付き容器
液体から粘稠流体に亘る各種流体製品を充填し且つ取り出すための容器。この容器は、流体製品充填用の開口部(4)を有する容器本体(1)を備え、この充填用開口部の口径(d4)は容器本体の内径(d5)よりも小さい。また充填用開口部(4)を閉鎖する蓋(8)も備え、この蓋は中心部に蓋開口部(9)を有し、この蓋開口部には弁部材を有する出口弁(10)が成形部品(11)を介して封止状態に挿入されている。容器の製造、容器に対する流体製品の充填及び閉蓋を極めて容易、迅速且つ安価に行える利点がある。同時に、充填済み流体製品を容易且つ制御下に取り出すことができ、しかも毎回の取り出し操作の後に残った内容物を確実に封止状態で再閉鎖することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品、特に「食品」としての飲料、ソース、調味料をはじめ、液状ワックス、シリコーン、シャンプー或いはシェービングフォーム等の日用又は生活用流体を充填して内容物とし、これを所望時に取り出すための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器は二部品又は三部品構成のエアゾール缶の形態で知られており、缶内に詰められた製品内容物は比較的高い圧力状態にある。これらの容器はドーム状の湾曲蓋を備えており、この蓋には出口弁で開閉される開口部が設けられている。出口弁は、成形部品と金属製ディスク弁体及びシールリングによりカシメ止めで蓋の開口部に固定されているのが一般的である。
【0003】
ところで多くの有用流体製品は、さほど高い圧力をもたせること無く容器内で保存し、また容器内から取り出すことが可能である。これらの流体製品にとっては、通常のエアゾール缶は、製造、材料コスト、そして充填の困難さの観点から過度に複雑な構成で高コストである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、製造と流体製品内容物の充填及び閉蓋が極めて容易に短時間且つ低コストで可能なだけでなく、充填された流体製品内容物を容易且つ制御下に取り出すことができ、しかも毎回の取り出し操作の後に残った流体製品内容物を確実に封止状態で再閉鎖することのできる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載された特徴を備えた容器によって解決される。この容器は、好ましくは請求項2に従って金属シートからの引張成形による飲料缶の形態であり、この場合、容器本体は継目の無い周壁とそれに一体成形された底とを備えており、この容器本体には、飲料缶で一般的なやり方に従って、別個の弁付き蓋を外縁部で折り込み潰し継ぎ目により封止状態で結合固定可能である。
このような容器(容器本体)は、一般的な飲料缶と同様に、極めて容易に短時間且つ低コストで製造することができ、また容器本体が大きな充填用開口部を有するので流体製品内容物の充填も相応して容易且つ迅速に行うことが可能である(缶充填)。
鋼板又はアルミニウム板等の金属シートから製造されるこのような飲料缶の形態の容器は耐圧性であり、食品分野における顧客の要求に最適である。
弁付き蓋は、容器本体への内容物の充填後に一般的なやり方で容器本体の充填用開口部の周縁部に結合することが可能である。このような容器は、製造工程及び充填工程から閉蓋工程に至るまで材料の節約に有効であり、また廉価で取り扱いも容易である。
【0006】
本発明は更に個別組立ユニット部品の形態の弁付き蓋(請求項5及び10)も含み、この弁付き蓋は飲料缶の形態で製造されたもの以外の容器にも使用可能であるが、飲料缶用にも特に適している。この弁付き蓋のほぼ平坦な面板内に設けられた丸い蓋開口部には、ブッシュ又はスリーブ状の成形部品のみを介して出口弁が固定状態及び封止状態に挿入可能である。
【0007】
スリーブ状の成形部品は中空円筒形状であり、その内部に挿入された弁部材は成形部品自体の形状伸縮性によって該成形部品内で相対移動可能とされている(請求項4)。この成形部品(蓋に対する取付部材)と弁部材(成形部品に保持される)とが出口弁を構成する(請求項9)。弁部材は、成形部品が形状伸縮性を有することにより成形部品内で移動可能である(請求項4)。この場合、弁部材は成形部品に対して相対的に(又は蓋のパネル面に対して相対的に)移動可能であるが、例えばローラーベアリングのように単に軸方向スライド又は周方向回転によって相対移動するだけではなく、弁部材が成形部品によって封止状態に保持されたまま、成形部品の弾性変形を伴って相対移動することが可能である。これは成形部品に対する弁部材の相対運動であるが、形状伸縮性をもつ成形部品の弾性変形を伴う相対運動である(請求項10及び11)。弁部材を軸心方向のみに移動させると、成形部品は、対称性の変形、即ち、軸心方向に沿って全周均等な圧縮変形を受けることになる(請求項19)。
【0008】
成形部品の弾性変形は、該成形部品の上部領域、即ち蓋開口部の周縁を囲む環状カラー部よりも上方に位置する部分に生じる(請求項19)。
【0009】
成形部品の形状伸縮性、換言すれば成形部品自体を構成する弾力伸縮性の材料は、この成形部品の様々な部位に異なる作用を生じる。好ましくは、蓋開口部の環状カラー部よりも上方に位置する成形部品の部位ではバネ作用を果たし、蓋開口部の環状カラー部の下方に位置する部位では封止作用(径方向に張り出すリップ状鍔部による)を果たす。
【0010】
このバネ作用は、好ましくは弁部材に対して軸心方向の圧力が作用する場合に利用される(請求項11)。この場合、蓋開口部の周縁を囲む環状カラー部に対する成形部品のリップ状鍔部による保持作用は、成形部品がそれに伝達される軸心方向の圧力に耐えて蓋開口部から離れることがない程度に強固であり、従って、この限りにおいて成形部品は「固定状態及び封止状態」で蓋開口部に結合された状態を維持する。それにもかかわらず、少なくとも環状カラー部よりも上方に位置する成形部品の上部領域は、弁部材の相対移動を可能とするバネ作用を生起させ得るように形状伸縮性である。
【0011】
出口弁を開いたときの流路は有底円筒形の弁部材に設けられた少なくとも一つの径方向貫通口を通して導くことができ、これらの貫通口は弁部材の周長の限定された一部に亘って周壁を貫通して開口し、成形部品に対する弁部材の相対位置に応じて、弁部材の内部を通して前記少なくとも一つの貫通口を経由する少なくとも1つの流路を開くことになる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、このような貫通口は弁部材の一端部近傍、特に弁部材のディスク弁体として機能する下側の鍔部の直ぐ上方位置に設けられている(請求項18)。この場合、この弁部材の下側の鍔部はディスク弁体として機能し、該ディスク弁体が成形部品の対応する封止用リップ状鍔部の開口端面から離座すると出口弁が開かれることになる。
【0013】
成形部品の上部領域が対称性の弾性変形を生じる原因が弁部材の軸心方向への相対運動であるとすると、該上部領域が非対称性の弾性変形を生じるのは、成形部品に対する弁部材の傾動とも言うべき相対的な傾斜運動である。この場合、成形部品の変形は周方向の各位置で不均一となり、傾斜の向きに応じて一方の側に圧縮変形が生じ、他方の側では圧縮変形は生じないが、傾きが変化するだけで弁部材に対する封止状態の密着が失われることはない(請求項19)。
【0014】
これらの二つの形態の相対運動、即ち、軸心方向への相対運動と傾斜運動との中間に、成形部品の内部で弁部材を相対的に回転運動させることも可能であり、この回転運動は、例えば軸心方向への相対運動と同時に作用させることも可能である。弁部材に軸心方向の相対運動を引き起こすための操作として回転運動を利用することもでき、この場合は、成形部品の下部領域の内周面にネジ山を設け、このネジ山に弁部材の外周面に設けたネジ山を螺合させておけばよい。
【0015】
弁部材の傾斜運動を出口弁の開閉に利用する場合、弁部材の周方向に間隔をあけて複数の径方向貫通口を設けることが好ましい(請求項18)。これにより、傾斜運動の方向に応じて、弁部材に周方向で分散配置された複数の貫通口のうちの一つが少なくとも一部で開口し、この開口箇所ではディスク弁体が封止用リップ状鍔部の開口端面(成形部品の最下縁)から離座して出口弁の流路が開かれることになる。
【0016】
成形部品の前記上部領域の内周面には、所要の曲げ位置を定める機能を果たす凹部として周方向に延在する一つ又は複数の条溝を形成しておくことができ、これらの条溝によって該上部領域のバネ機能を支援するようにしてもよい。このように上部領域のバネ機能を調整及び支援する条溝を設けておくことにより、弁部材を介して軸心方向の荷重が成形部品の上端面に印加された場合に中空円筒形状の成形部品の上部領域で確定的な弾性変形が生じ、例えば成形部品の軸心方向に連なる二段の環状突起のような形状のバネ機能部分が形成されることになる(軸心方向圧力の作用時)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の特徴と利点を図示の好適な実施形態と共に詳述すれば以下の通りである。
【0018】
図示の実施形態は一般的な飲料缶の形態の容器である。容器本体1は鋼板又はアルミニウム板を引張成形加工して底2を一体に有する一部品として構成され、その上部の充填用開口部4の近傍部では僅かに内側へ絞られている(ネックを形成している)。充填用開口部口の口径d4は、内部空間5を形成する容器本体1の内径d5よりも多少小さい。
【0019】
概ね平坦な面板3(=パネル)からなる弁付き蓋8はその最外周の折り込み縁8aの直ぐ内側に一般的な環状の衝撃緩衝ビード8bを備えており、飲料缶には一般的なカシメ加工による折り込み潰し継ぎ目6aによって本体1の充填用開口部のフランジ状周縁部6と封止状態及び固定状態に結合されている。図1では、この蓋の折り込み縁と容器本体のフランジ状周縁部とが既に折り込み潰し継ぎ目に加工された状態で示されている。
【0020】
図2から明らかなように、この弁付き蓋8は面板のほぼ中心部に円形の蓋開口部9を有し、この蓋開口部は軸心方向で外向き、即ち、上方へ突出した環状カラー部9aで境界が画定されている。この環状カラー部には、出口弁10を構成する有底円筒形の弁部材12が形状伸縮性の材料からなる中空円筒形状の成形部品11のみによって封止状態及び固定状態に結合されている。この固定結合は、環状カラー部の上下両開口端面を密に挟持する成形部品の弾性変形によってもたらされている。成形部品11と弁部材12とによって出口弁が構成され、この出口弁は弁部材を操作したときに開き、操作力が消失すれば閉じるが、この開閉は(時間的に離れて)何回も可能であり、これは、基本的にはある種の「弁装置」、或いは単なる開閉弁において一般的に果たされている通りである。図2cは出口弁の遮断状態(封止状態で閉)を示している。この状態から出口弁が開かれると、日用又は生活用流体或いは食品としての液体から粘稠流体に亘る有用流体製品の内容物のための流路が通じることになる。この流路は、有底円筒形の弁部材12の内部12iを通して容器内外を連通させる。
【0021】
形状伸縮性材料から成る成形部品11は、環状カラー部9aの上下端縁と固定状態及び封止状態に結合されている。この目的で、中空円筒形状の特にスリーブ形態とされた成形部品11には、環状カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔h9aを開けてそれぞれ径方向外向きに張り出すリップ状鍔部11a及び11bからなる上下の環状保持部が一体成形されている。これら上下のリップ状鍔部からなる環状保持部は、蓋開口部9の開口周縁を確定する環状カラー部9aの上下端縁を封止状態で上下から挟持している。ここで、下側のリップ状鍔部11aは、上側のリップ状鍔部よりも径方向外向きの張り出し寸法が大きい。
【0022】
出口弁10の一部である有底円筒形の弁部材12は、中空円筒形状の成形部品11の内側に遊隙なく挿入配置することができ、該弁部材には軸心方向に間隔をあけてそれぞれ径方向に張り出した上下の鍔部が一体に設けられ、これら上下の鍔部が成形部品の上端面及び下端面に被さることにより弁部材がこれら上下の鍔部で封止状態に挟持されている。尚、図示の例では、下部の鍔部が10a、上部の鍔部が10bで示されている。下部の鍔部は機能的にディスク弁体を構成し、成形部品の下部開口縁(下側のリップ状鍔部11aの下縁)に着座して流路を閉じ、或いはそこから離座して流路を開く働きをする。
【0023】
これらの個々の鍔部の径方向張り出し寸法は、例えば先に成形部品11を蓋開口部9内に装着し、次いで成形部品の内部に弁部材12を装着して出口弁10を組み立てることができるように、或いはこれとは逆の装着順で出口弁を組み立てることができるように、予め互いに整合された寸法に定められている。尚、出口弁10を先に完全に組み立てておき、この組み立てられた状態の成形部品11と弁部材12とを一緒に蓋開口部9内に装着することも可能である。この場合、成形部品11と弁部材12とが両方で出口弁(弁ユニット)10を形成する。
【0024】
このように予め製作されてユニットに組み立てられた弁付き蓋は、容器本体に大きく開口した充填用開口部4から容器内に流体製品を充填した後、容器本体の周縁部6に折り込み潰し継ぎ目6aで固定配置される。
【0025】
このような構成で達成される主な利点は本明細書の冒頭部で既に詳しく述べてあるが、更に明確にしておく必要があるのは、この弁付き蓋は典型的な形態の飲料缶とは異なる形態の二部品構造容器にも利用できることであり、また必要であれば出口弁10を成形部品11により装着する前に中央部の蓋開口部を内容物の充填用開口として利用できることである。
【0026】
但し、図示の実施形態による容器と弁付き蓋の組み合わせが好適であることは述べるまでもない。
【0027】
出口弁10自体も、弁付き蓋のユニット(予め製作されて組み立てられている)を容器本体に装着(例えば「さね矧ぎ」で)した後に最終的な充填用開口(出口弁の特に弁部材内部空間12iを通した流路によるもの)として利用することが可能である。この場合、装着はこのユニットを容器本体の開口周縁に折り込み潰し継ぎ加工で固着することにより行われる。これは、固着縁を例えば二重折り込み形状に成形することにより果たすことができる。このようにして、折り込み潰し継ぎ目6aでさね矧ぎ結合を形成した後、既に弁付き蓋で閉じられた容器内に液体から粘稠流体に亘る各種の流体製品、特に飲料(食品)を充填することが可能である。
【0028】
この容器に対する別の様式の充填も可能であり、その場合、弁付き蓋のユニットを装着する前に予め容器本体内に所要の流体内容物が充填され、その後、弁付き蓋を装着して閉じた容器本体内へ出口弁10を介して更に異種又は同種の流体内容物が補充される。
【0029】
このような充填の変形様式は最初に述べた充填様式に特に関連して述べただけのものであり、それ自体は本発明による容器又は弁付き蓋の構成を限定するものではなく、むしろ利用者側における使用法と適用例の説明に有用なものに過ぎない。
【0030】
図2a及び図2bを参照して、図2cに示すような蓋に組み込まれた状態における出口弁(弁構体)の基本的な作動形態を以下に説明する。尚、この場合の出口弁の動作は図3a〜図3cを参照することによって理解できよう。図3aは、図2cに示す出口弁において弁部材12が流路を開いている状態を示している。この状態では、弁部材12に対して軸心方向下向きの力が作用したことによって流路が開かれており、この場合、弁部材は矢印Sで示した方向で下向きに移動し、それによりディスク弁体を構成する下側の鍔部10aの直上位置で径方向貫通口30が容器本体内に開き、従って弁部材12の内部空間12iを通して容器の閉鎖空間内へ通じる流路が開かれる。このようにして容器(その上端部分のみを図示)の内部から流体内容物を取り出すことができる。弁部材12が軸心方向で下向きに移動する際には、成形部品11の主に上部領域11cが圧縮変形される。図3aでは、金属シート製の蓋面板3に設けられた環状カラー部9aの上方部分(図2bの蓋開口部9の上端縁より上の部分)に、成形部品11の上部領域11cの圧縮変形によって軸心方向に連なる二段の環状突起が形成されている。尚、従来は、このような環状突起は形成されず、図2cにおける上下の鍔部10aと11bとの間で成形部品が純粋に円筒形状であった。
【0031】
このような圧縮変形は、成形部品11の特に上部領域を形状伸縮性の弾性材料で構成することによって果たすことができる。即ち、成形部品は、環状カラー部9aよりも上方の領域では形状伸縮性の材料が圧縮変形されるとバネ機能を持つようになっている。このバネ機能は、出口弁10の開こうとする向きの力に対抗し、この圧が消失すると弁部材12を矢印Sで示した方向で上向きに復帰させ、それにより貫通口30が閉じられるので、流路は再び遮断状態となる。
【0032】
成形部品11の下端部は広く張り出した下側リップ状鍔部11aとなっており、それにより成形部品自体が蓋開口部の下部開口周縁に封止状態で密着されている。この鍔部の下部開口端面11a’は、弁部材12の下側鍔部10aに対面して封止状態に密接する弁座面であり、弁部材12の下側の鍔部10aが着座したときに出口弁の流路が遮断され、また離座したときには該流路が開かれる。
【0033】
図3bは、別の様式で出口弁の開閉が行われる様子を示しており、弁部材を回動操作して開閉する場合の運動成分を渦巻状の矢印Rで示してある。この実施形態では、弁部材12の周壁には下端近傍部に二つの径方向貫通口31及び32が周方向に間隔をあけて設けられており、出口弁としては、これらの貫通口がそれぞれ一つずつの流路の開閉に寄与する。この出口弁の開閉のための回転運動は、付加的に軸心方向の運動成分Sに重畳して与えるようにしてもよく、但しこれは必ずしも必須ではなく、単に許容されているだけである。回転操作は利用者によって行われる。
【0034】
図示しないが、更に別の実施形態では下側のリップ状鍔部11aの上方で且つ蓋開口部の環状カラー部9aの上端面よりの下方の領域内において成形部品11の内周面に短いネジ山が設けられており、このネジ山には弁部材12の外周面に対応して設けられたネジ山が螺合している。これにより、弁部材12を回転操作すると該弁部材がネジ山同士の螺合で強制的に軸心方向へ移動する。この場合にも成形部品の上部領域11cは軸心方向で対称性を有する弾性変形を受けて圧縮される。これを達成するためにも、成形部品11を形状伸縮性の材料で構成することが重要である。
【0035】
図3cは、出口弁を傾斜運動操作で開閉する場合の様子を示している。この場合は、成形部品11には非対称性の変形が生じる。図3cにおいて、成形部品11の左側部分では、図3bに示した場合よりも強度の圧縮変形が生じている。これに対して右側部分では成形部品11の上部領域11cは傾動に追従して径方向内側へ引き込まれているが、これは依然として封止機能を失わない範囲のものである。矢印Tで示す傾斜運動Tの傾斜角により、蓋開口部の環状カラー部9aに対する上側のリップ状鍔部11bの当接が僅かに開放されている。結果として径方向貫通口の少なくとも一部が開かれるが、図示の例では弁部材12の下端部に設けられた四つの貫通口のうち、貫通口33は全体が開かれ、貫通口30(貫通口32と対面する)は部分的に開かれ、貫通口31は開かれていない。
【0036】
開弁時の流路の流体抵抗を低減して機能を改善するため、図2aに示した成形部品11の下部領域における内径を図3aに示すように僅かに拡げておいてもよい。この拡径部よりも上方の部分は封止領域であり、弁部材の外周と密に接している。その上方には、後述するような所要の曲げ位置領域が成形部品11の上部領域11cの上端にまで続いている。
【0037】
このように、図3a及び図3bに示した対称性の圧縮変形や、図3cに示した非対称性の圧縮変形は、結合部或いは補償部とも称すべき成形部品11の形状伸縮性により、成形部品の少なくとも上部領域11cに対して弁部材12が相対的に異なる運動をすることによって生成又は形成されることが明かである。このような成形部品は、閉蓋状態の蓋8及びその面板部に対して弁部材12を相対移動可能に保持する一種の可撓性取付具として機能するものである。
【0038】
成形部品の特に上部領域における形状伸縮性は種々の度合に構成しておくことができ、例えば前述の圧縮変形時の復帰ばね力に関していえば、弁部材12が操作力によって実質的に軸心方向に沿って成形部品内へ押し込まれた後、操作力が消失すれば自動的に再び元の閉鎖位置である安定位置に復帰するように構成することができる。弁部材12の外周面と成形部品11の内周面との摩擦抵抗に関しても、円筒形の封止面であっても僅かな摩擦抵抗が生じるだけとなるように、即ち、圧縮変形された上部領域11cに潜在する復帰バネ力のほうが打ち勝つ程度の僅かな摩擦抵抗しか生じないように、成形部品の形状伸縮性と相対的に適合させることが可能である。
【0039】
成形部品11はスリーブ状成形部品とも言うべきものであり、従って単に「スリーブ」と称することができる。このスリーブは、中空円筒形の弁部材12の形状に対応して、中空円筒形状に成形されている。成形部品11は蓋開口部9の内部に固定状態及び封止状態に嵌挿される。これを「固着」と称するが、これは、このスリーブを蓋開口部で抱持することにより弁部材12に作用する力に耐え得る組み立てを果たすことを意味する。弁部材12はこのスリーブ11に対して相対的に動かされ、特に前述の通り軸心方向の相対移動成分を伴って変位する。このような相対移動は、成形部品11の形状伸縮性、特に対称性の圧縮変形を生じる回転及び非回転の直進運動時には上部領域11cの形状伸縮性を利用して生起され、また図3cに示したような傾斜運動時には更に付加的に下側のリップ状鍔部11aの形状伸縮性も利用して生起される。
【0040】
成形部品11の内部に中空円筒形の弁部材を遊隙なく挿入することにより両者間の封止が果たされている。これら両者間には少なくとも一つの密封線が形成されるが、これは完全な全周筒状の密封ゾーンとなっていることが好ましく、それにより出口弁10が閉鎖位置にあるときに貫通口31,32,33,30の閉鎖と共に充分な封止機能を発揮することができる。
【0041】
有底円筒形の成形部品12は成形部品11の軸心方向両端面に被さる上側鍔部10bと下側鍔部10aとを有しているが、弁部材は成形部品に対して軸心方向に相対移動可能であり、従って当然のことながらこの軸心方向の運動成分の一部は特に上側鍔部から成形部品11に伝達され、その弾性変形を生起する。但し、蓋8の面板3に対しては、成形部品11は環状カラー部9aで保持されている。
【0042】
成形部品の外周面から張り出すこれら上下の鍔部は少なくとも周方向の一部に亘って延在していればよいが、好ましくは両方の鍔部10b、10aを全周に亘って延在させるものとし、この場合、下側の鍔部10aは、容器本体の内部で出口弁10の下端におけるディスク弁体の本来の弁端縁を形成する。
【0043】
環状保持部として成形部品に一体形成されている上下の鍔部11b、11aは成形部品の外周面からリップ状に張り出しており、蓋面板3の環状カラー部9aを上下から挟持して成形部品を蓋開口部9に固定状態及び封止状態に保持する機能を果たしている。特に下側のリップ状鍔部11aは、蓋開口部9の容器内における開口周縁で蓋面板3の内面に密着して全周に亘る封止機能を果たしている。
【0044】
この場合、蓋開口部9は、出口弁の両弁部品、即ち成形部品11及び弁部材12の円筒形状に整合する円形開口であり、好ましくは蓋面板の中心位置に設けられる。
【0045】
図4は、図2cの基本構成の更に詳細な実施形態を示している。図4において組み立てられている各部品は図5a〜図5cに分解して更に詳細に示されており、これらの分解図は概略図2b及び図2aに相当するが、図2bでは全体的に示した蓋開口部9を有する蓋8は、図5aでは部分的に(折り込み縁8aを省略して)示されている。
【0046】
図5cに示す第1の弁部品(A)と、図5bに示す第2の弁部品(B)は、図5aに示すように矢印A、Bの順序で蓋面板の下面側から蓋開口部9内に押し込まれる。これに代えて、両弁部品を先に組み立てて一緒にした弁構体A+B(図2aに示すような)を蓋面板の下面側から蓋開口部9内に押し込んでもよい。第1の弁部品Aは成形部品11であり、その外周面から張り出している上下のリップ状鍔部11bと11aとの間に金属製の蓋の環状カラー部9aがスナップ嵌合する。上側のリップ状鍔部11bの上方には円筒形の上部領域11cが有効な圧縮バネ要素として一体に延在しており、この上部領域の上端面に第2の弁部品である弁部材12の上側鍔部10bが被さっている。
【0047】
第2の弁部品の下側の鍔部10aは有底円筒形の弁部材12の閉鎖底面を形成すると共に径方向外方へ張り出したディスク弁体を構成している。本実施形態において弁部品AとびBは上述のように成形部品11と弁部材12であるが、弁部材12には少なくとも一つの径方向貫通口、好ましくは周方向に離間した三つ又は四つの径方向貫通口30〜33が設けられている。
【0048】
成形部品において圧縮バネ要素として機能する上部領域11cの内周面には、圧縮変形時の曲げ位置を定める機能を果たす凹部として周方向に延在する一つ以上の条溝40が設けられている。この条溝は成形部品11の上部領域11cにおける圧縮変形抵抗を変化させてそのバネ機能を調整及び支援する。この条溝40は図4にも示されており、これによって組立後の弁構体が弁閉鎖位置にある状態で条溝が何処に位置するかは明かである。同様に図2cにも符号40で成形部品11における条溝の位置を示してある。
【0049】
最終的な組み立て状態、即ち、図4に示した弁付き蓋(折り込み縁が省略されている)を実際には存在する折り込み縁で飲料缶の本体開口縁にさね矧ぎ継手で封止状態に装着した状態を図6に示すが、これは、図1と比べて寸法が多少拡大されており、各部の形状及び配置を更に正確に再現して図示したものである。
【0050】
図6において、出口弁で形成される流路は符号Fで示され、この流路は、成形部品11に対して弁部材の貫通口30が閉鎖位置にあるときは閉じられている。流路を閉鎖していた弁部材12が成形部品に対して相対的に押し込まれると、貫通口を通して弁部材12の内部空間12iを経由する流路が通じることになる。このようにして開かれた流路は、容器内部空間5からの流体の取り出しと該内部空間5への流体の充填との双方に利用することができる。
【0051】
容器本体の充填用開口部の周縁部6における折り込み潰し継ぎ目6aによる閉蓋は、容器本体1への内容物の充填の前又後のいずれにおいても可能である。容器本体が既に折り込み潰し継ぎ目6aで閉蓋されて場合は、出口弁を開いた状態にして形成される流路Fを内容物の補充又は混合補充に利用することができる。但し、補充ではない本来の充填は、缶充填、即ち折り込み潰し継ぎ目6aにより弁付き蓋で閉蓋されていない状態の容器本体に対して行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】閉蓋状態の容器の概略縦断面図である。
【図2a】弁付き蓋の一部品である出口弁の概略縦断面図である。
【図2b】弁付き蓋の別の一部品である蓋の概略縦断面図である。
【図2c】二つの部品からなる弁付き蓋の組立後における概略縦断面図である。
【図3a】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す一形態の概略縦断面図である。
【図3b】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す別の一形態の概略縦断面図である。
【図3c】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す更に別の一形態の概略縦断面図である。
【図4】図2cと同様の(但し折り込み縁8aは図示せず)弁付き蓋の縦断面図である。
【図5a】蓋8の要部を示す縦断面図である。
【図5b】出口弁10の一部をなす弁部材の縦断面図である。
【図5c】出口弁10の一部をなす成形部品の縦断面図である。
【図6】出口弁10及びその流路Fと共に閉蓋状態の容器を示す縦断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品、特に「食品」としての飲料、ソース、調味料をはじめ、液状ワックス、シリコーン、シャンプー或いはシェービングフォーム等の日用又は生活用流体を充填して内容物とし、これを所望時に取り出すための容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の容器は二部品又は三部品構成のエアゾール缶の形態で知られており、缶内に詰められた製品内容物は比較的高い圧力状態にある。これらの容器はドーム状の湾曲蓋を備えており、この蓋には出口弁で開閉される開口部が設けられている。出口弁は、成形部品と金属製ディスク弁体及びシールリングによりカシメ止めで蓋の開口部に固定されているのが一般的である。
【0003】
ところで多くの有用流体製品は、さほど高い圧力をもたせること無く容器内で保存し、また容器内から取り出すことが可能である。これらの流体製品にとっては、通常のエアゾール缶は、製造、材料コスト、そして充填の困難さの観点から過度に複雑な構成で高コストである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、製造と流体製品内容物の充填及び閉蓋が極めて容易に短時間且つ低コストで可能なだけでなく、充填された流体製品内容物を容易且つ制御下に取り出すことができ、しかも毎回の取り出し操作の後に残った流体製品内容物を確実に封止状態で再閉鎖することのできる容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明によれば、請求項1に記載された特徴を備えた容器によって解決される。この容器は、好ましくは請求項2に従って金属シートからの引張成形による飲料缶の形態であり、この場合、容器本体は継目の無い周壁とそれに一体成形された底とを備えており、この容器本体には、飲料缶で一般的なやり方に従って、別個の弁付き蓋を外縁部で折り込み潰し継ぎ目により封止状態で結合固定可能である。
このような容器(容器本体)は、一般的な飲料缶と同様に、極めて容易に短時間且つ低コストで製造することができ、また容器本体が大きな充填用開口部を有するので流体製品内容物の充填も相応して容易且つ迅速に行うことが可能である(缶充填)。
鋼板又はアルミニウム板等の金属シートから製造されるこのような飲料缶の形態の容器は耐圧性であり、食品分野における顧客の要求に最適である。
弁付き蓋は、容器本体への内容物の充填後に一般的なやり方で容器本体の充填用開口部の周縁部に結合することが可能である。このような容器は、製造工程及び充填工程から閉蓋工程に至るまで材料の節約に有効であり、また廉価で取り扱いも容易である。
【0006】
本発明は更に個別組立ユニット部品の形態の弁付き蓋(請求項5及び10)も含み、この弁付き蓋は飲料缶の形態で製造されたもの以外の容器にも使用可能であるが、飲料缶用にも特に適している。この弁付き蓋のほぼ平坦な面板内に設けられた丸い蓋開口部には、ブッシュ又はスリーブ状の成形部品のみを介して出口弁が固定状態及び封止状態に挿入可能である。
【0007】
スリーブ状の成形部品は中空円筒形状であり、その内部に挿入された弁部材は成形部品自体の形状伸縮性によって該成形部品内で相対移動可能とされている(請求項4)。この成形部品(蓋に対する取付部材)と弁部材(成形部品に保持される)とが出口弁を構成する(請求項9)。弁部材は、成形部品が形状伸縮性を有することにより成形部品内で移動可能である(請求項4)。この場合、弁部材は成形部品に対して相対的に(又は蓋のパネル面に対して相対的に)移動可能であるが、例えばローラーベアリングのように単に軸方向スライド又は周方向回転によって相対移動するだけではなく、弁部材が成形部品によって封止状態に保持されたまま、成形部品の弾性変形を伴って相対移動することが可能である。これは成形部品に対する弁部材の相対運動であるが、形状伸縮性をもつ成形部品の弾性変形を伴う相対運動である(請求項10及び11)。弁部材を軸心方向のみに移動させると、成形部品は、対称性の変形、即ち、軸心方向に沿って全周均等な圧縮変形を受けることになる(請求項19)。
【0008】
成形部品の弾性変形は、該成形部品の上部領域、即ち蓋開口部の周縁を囲む環状カラー部よりも上方に位置する部分に生じる(請求項19)。
【0009】
成形部品の形状伸縮性、換言すれば成形部品自体を構成する弾力伸縮性の材料は、この成形部品の様々な部位に異なる作用を生じる。好ましくは、蓋開口部の環状カラー部よりも上方に位置する成形部品の部位ではバネ作用を果たし、蓋開口部の環状カラー部の下方に位置する部位では封止作用(径方向に張り出すリップ状鍔部による)を果たす。
【0010】
このバネ作用は、好ましくは弁部材に対して軸心方向の圧力が作用する場合に利用される(請求項11)。この場合、蓋開口部の周縁を囲む環状カラー部に対する成形部品のリップ状鍔部による保持作用は、成形部品がそれに伝達される軸心方向の圧力に耐えて蓋開口部から離れることがない程度に強固であり、従って、この限りにおいて成形部品は「固定状態及び封止状態」で蓋開口部に結合された状態を維持する。それにもかかわらず、少なくとも環状カラー部よりも上方に位置する成形部品の上部領域は、弁部材の相対移動を可能とするバネ作用を生起させ得るように形状伸縮性である。
【0011】
出口弁を開いたときの流路は有底円筒形の弁部材に設けられた少なくとも一つの径方向貫通口を通して導くことができ、これらの貫通口は弁部材の周長の限定された一部に亘って周壁を貫通して開口し、成形部品に対する弁部材の相対位置に応じて、弁部材の内部を通して前記少なくとも一つの貫通口を経由する少なくとも1つの流路を開くことになる。
【0012】
本発明の好適な実施形態によれば、このような貫通口は弁部材の一端部近傍、特に弁部材のディスク弁体として機能する下側の鍔部の直ぐ上方位置に設けられている(請求項18)。この場合、この弁部材の下側の鍔部はディスク弁体として機能し、該ディスク弁体が成形部品の対応する封止用リップ状鍔部の開口端面から離座すると出口弁が開かれることになる。
【0013】
成形部品の上部領域が対称性の弾性変形を生じる原因が弁部材の軸心方向への相対運動であるとすると、該上部領域が非対称性の弾性変形を生じるのは、成形部品に対する弁部材の傾動とも言うべき相対的な傾斜運動である。この場合、成形部品の変形は周方向の各位置で不均一となり、傾斜の向きに応じて一方の側に圧縮変形が生じ、他方の側では圧縮変形は生じないが、傾きが変化するだけで弁部材に対する封止状態の密着が失われることはない(請求項19)。
【0014】
これらの二つの形態の相対運動、即ち、軸心方向への相対運動と傾斜運動との中間に、成形部品の内部で弁部材を相対的に回転運動させることも可能であり、この回転運動は、例えば軸心方向への相対運動と同時に作用させることも可能である。弁部材に軸心方向の相対運動を引き起こすための操作として回転運動を利用することもでき、この場合は、成形部品の下部領域の内周面にネジ山を設け、このネジ山に弁部材の外周面に設けたネジ山を螺合させておけばよい。
【0015】
弁部材の傾斜運動を出口弁の開閉に利用する場合、弁部材の周方向に間隔をあけて複数の径方向貫通口を設けることが好ましい(請求項18)。これにより、傾斜運動の方向に応じて、弁部材に周方向で分散配置された複数の貫通口のうちの一つが少なくとも一部で開口し、この開口箇所ではディスク弁体が封止用リップ状鍔部の開口端面(成形部品の最下縁)から離座して出口弁の流路が開かれることになる。
【0016】
成形部品の前記上部領域の内周面には、所要の曲げ位置を定める機能を果たす凹部として周方向に延在する一つ又は複数の条溝を形成しておくことができ、これらの条溝によって該上部領域のバネ機能を支援するようにしてもよい。このように上部領域のバネ機能を調整及び支援する条溝を設けておくことにより、弁部材を介して軸心方向の荷重が成形部品の上端面に印加された場合に中空円筒形状の成形部品の上部領域で確定的な弾性変形が生じ、例えば成形部品の軸心方向に連なる二段の環状突起のような形状のバネ機能部分が形成されることになる(軸心方向圧力の作用時)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の特徴と利点を図示の好適な実施形態と共に詳述すれば以下の通りである。
【0018】
図示の実施形態は一般的な飲料缶の形態の容器である。容器本体1は鋼板又はアルミニウム板を引張成形加工して底2を一体に有する一部品として構成され、その上部の充填用開口部4の近傍部では僅かに内側へ絞られている(ネックを形成している)。充填用開口部口の口径d4は、内部空間5を形成する容器本体1の内径d5よりも多少小さい。
【0019】
概ね平坦な面板3(=パネル)からなる弁付き蓋8はその最外周の折り込み縁8aの直ぐ内側に一般的な環状の衝撃緩衝ビード8bを備えており、飲料缶には一般的なカシメ加工による折り込み潰し継ぎ目6aによって本体1の充填用開口部のフランジ状周縁部6と封止状態及び固定状態に結合されている。図1では、この蓋の折り込み縁と容器本体のフランジ状周縁部とが既に折り込み潰し継ぎ目に加工された状態で示されている。
【0020】
図2から明らかなように、この弁付き蓋8は面板のほぼ中心部に円形の蓋開口部9を有し、この蓋開口部は軸心方向で外向き、即ち、上方へ突出した環状カラー部9aで境界が画定されている。この環状カラー部には、出口弁10を構成する有底円筒形の弁部材12が形状伸縮性の材料からなる中空円筒形状の成形部品11のみによって封止状態及び固定状態に結合されている。この固定結合は、環状カラー部の上下両開口端面を密に挟持する成形部品の弾性変形によってもたらされている。成形部品11と弁部材12とによって出口弁が構成され、この出口弁は弁部材を操作したときに開き、操作力が消失すれば閉じるが、この開閉は(時間的に離れて)何回も可能であり、これは、基本的にはある種の「弁装置」、或いは単なる開閉弁において一般的に果たされている通りである。図2cは出口弁の遮断状態(封止状態で閉)を示している。この状態から出口弁が開かれると、日用又は生活用流体或いは食品としての液体から粘稠流体に亘る有用流体製品の内容物のための流路が通じることになる。この流路は、有底円筒形の弁部材12の内部12iを通して容器内外を連通させる。
【0021】
形状伸縮性材料から成る成形部品11は、環状カラー部9aの上下端縁と固定状態及び封止状態に結合されている。この目的で、中空円筒形状の特にスリーブ形態とされた成形部品11には、環状カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔h9aを開けてそれぞれ径方向外向きに張り出すリップ状鍔部11a及び11bからなる上下の環状保持部が一体成形されている。これら上下のリップ状鍔部からなる環状保持部は、蓋開口部9の開口周縁を確定する環状カラー部9aの上下端縁を封止状態で上下から挟持している。ここで、下側のリップ状鍔部11aは、上側のリップ状鍔部よりも径方向外向きの張り出し寸法が大きい。
【0022】
出口弁10の一部である有底円筒形の弁部材12は、中空円筒形状の成形部品11の内側に遊隙なく挿入配置することができ、該弁部材には軸心方向に間隔をあけてそれぞれ径方向に張り出した上下の鍔部が一体に設けられ、これら上下の鍔部が成形部品の上端面及び下端面に被さることにより弁部材がこれら上下の鍔部で封止状態に挟持されている。尚、図示の例では、下部の鍔部が10a、上部の鍔部が10bで示されている。下部の鍔部は機能的にディスク弁体を構成し、成形部品の下部開口縁(下側のリップ状鍔部11aの下縁)に着座して流路を閉じ、或いはそこから離座して流路を開く働きをする。
【0023】
これらの個々の鍔部の径方向張り出し寸法は、例えば先に成形部品11を蓋開口部9内に装着し、次いで成形部品の内部に弁部材12を装着して出口弁10を組み立てることができるように、或いはこれとは逆の装着順で出口弁を組み立てることができるように、予め互いに整合された寸法に定められている。尚、出口弁10を先に完全に組み立てておき、この組み立てられた状態の成形部品11と弁部材12とを一緒に蓋開口部9内に装着することも可能である。この場合、成形部品11と弁部材12とが両方で出口弁(弁ユニット)10を形成する。
【0024】
このように予め製作されてユニットに組み立てられた弁付き蓋は、容器本体に大きく開口した充填用開口部4から容器内に流体製品を充填した後、容器本体の周縁部6に折り込み潰し継ぎ目6aで固定配置される。
【0025】
このような構成で達成される主な利点は本明細書の冒頭部で既に詳しく述べてあるが、更に明確にしておく必要があるのは、この弁付き蓋は典型的な形態の飲料缶とは異なる形態の二部品構造容器にも利用できることであり、また必要であれば出口弁10を成形部品11により装着する前に中央部の蓋開口部を内容物の充填用開口として利用できることである。
【0026】
但し、図示の実施形態による容器と弁付き蓋の組み合わせが好適であることは述べるまでもない。
【0027】
出口弁10自体も、弁付き蓋のユニット(予め製作されて組み立てられている)を容器本体に装着(例えば「さね矧ぎ」で)した後に最終的な充填用開口(出口弁の特に弁部材内部空間12iを通した流路によるもの)として利用することが可能である。この場合、装着はこのユニットを容器本体の開口周縁に折り込み潰し継ぎ加工で固着することにより行われる。これは、固着縁を例えば二重折り込み形状に成形することにより果たすことができる。このようにして、折り込み潰し継ぎ目6aでさね矧ぎ結合を形成した後、既に弁付き蓋で閉じられた容器内に液体から粘稠流体に亘る各種の流体製品、特に飲料(食品)を充填することが可能である。
【0028】
この容器に対する別の様式の充填も可能であり、その場合、弁付き蓋のユニットを装着する前に予め容器本体内に所要の流体内容物が充填され、その後、弁付き蓋を装着して閉じた容器本体内へ出口弁10を介して更に異種又は同種の流体内容物が補充される。
【0029】
このような充填の変形様式は最初に述べた充填様式に特に関連して述べただけのものであり、それ自体は本発明による容器又は弁付き蓋の構成を限定するものではなく、むしろ利用者側における使用法と適用例の説明に有用なものに過ぎない。
【0030】
図2a及び図2bを参照して、図2cに示すような蓋に組み込まれた状態における出口弁(弁構体)の基本的な作動形態を以下に説明する。尚、この場合の出口弁の動作は図3a〜図3cを参照することによって理解できよう。図3aは、図2cに示す出口弁において弁部材12が流路を開いている状態を示している。この状態では、弁部材12に対して軸心方向下向きの力が作用したことによって流路が開かれており、この場合、弁部材は矢印Sで示した方向で下向きに移動し、それによりディスク弁体を構成する下側の鍔部10aの直上位置で径方向貫通口30が容器本体内に開き、従って弁部材12の内部空間12iを通して容器の閉鎖空間内へ通じる流路が開かれる。このようにして容器(その上端部分のみを図示)の内部から流体内容物を取り出すことができる。弁部材12が軸心方向で下向きに移動する際には、成形部品11の主に上部領域11cが圧縮変形される。図3aでは、金属シート製の蓋面板3に設けられた環状カラー部9aの上方部分(図2bの蓋開口部9の上端縁より上の部分)に、成形部品11の上部領域11cの圧縮変形によって軸心方向に連なる二段の環状突起が形成されている。尚、従来は、このような環状突起は形成されず、図2cにおける上下の鍔部10aと11bとの間で成形部品が純粋に円筒形状であった。
【0031】
このような圧縮変形は、成形部品11の特に上部領域を形状伸縮性の弾性材料で構成することによって果たすことができる。即ち、成形部品は、環状カラー部9aよりも上方の領域では形状伸縮性の材料が圧縮変形されるとバネ機能を持つようになっている。このバネ機能は、出口弁10の開こうとする向きの力に対抗し、この圧が消失すると弁部材12を矢印Sで示した方向で上向きに復帰させ、それにより貫通口30が閉じられるので、流路は再び遮断状態となる。
【0032】
成形部品11の下端部は広く張り出した下側リップ状鍔部11aとなっており、それにより成形部品自体が蓋開口部の下部開口周縁に封止状態で密着されている。この鍔部の下部開口端面11a’は、弁部材12の下側鍔部10aに対面して封止状態に密接する弁座面であり、弁部材12の下側の鍔部10aが着座したときに出口弁の流路が遮断され、また離座したときには該流路が開かれる。
【0033】
図3bは、別の様式で出口弁の開閉が行われる様子を示しており、弁部材を回動操作して開閉する場合の運動成分を渦巻状の矢印Rで示してある。この実施形態では、弁部材12の周壁には下端近傍部に二つの径方向貫通口31及び32が周方向に間隔をあけて設けられており、出口弁としては、これらの貫通口がそれぞれ一つずつの流路の開閉に寄与する。この出口弁の開閉のための回転運動は、付加的に軸心方向の運動成分Sに重畳して与えるようにしてもよく、但しこれは必ずしも必須ではなく、単に許容されているだけである。回転操作は利用者によって行われる。
【0034】
図示しないが、更に別の実施形態では下側のリップ状鍔部11aの上方で且つ蓋開口部の環状カラー部9aの上端面よりの下方の領域内において成形部品11の内周面に短いネジ山が設けられており、このネジ山には弁部材12の外周面に対応して設けられたネジ山が螺合している。これにより、弁部材12を回転操作すると該弁部材がネジ山同士の螺合で強制的に軸心方向へ移動する。この場合にも成形部品の上部領域11cは軸心方向で対称性を有する弾性変形を受けて圧縮される。これを達成するためにも、成形部品11を形状伸縮性の材料で構成することが重要である。
【0035】
図3cは、出口弁を傾斜運動操作で開閉する場合の様子を示している。この場合は、成形部品11には非対称性の変形が生じる。図3cにおいて、成形部品11の左側部分では、図3bに示した場合よりも強度の圧縮変形が生じている。これに対して右側部分では成形部品11の上部領域11cは傾動に追従して径方向内側へ引き込まれているが、これは依然として封止機能を失わない範囲のものである。矢印Tで示す傾斜運動Tの傾斜角により、蓋開口部の環状カラー部9aに対する上側のリップ状鍔部11bの当接が僅かに開放されている。結果として径方向貫通口の少なくとも一部が開かれるが、図示の例では弁部材12の下端部に設けられた四つの貫通口のうち、貫通口33は全体が開かれ、貫通口30(貫通口32と対面する)は部分的に開かれ、貫通口31は開かれていない。
【0036】
開弁時の流路の流体抵抗を低減して機能を改善するため、図2aに示した成形部品11の下部領域における内径を図3aに示すように僅かに拡げておいてもよい。この拡径部よりも上方の部分は封止領域であり、弁部材の外周と密に接している。その上方には、後述するような所要の曲げ位置領域が成形部品11の上部領域11cの上端にまで続いている。
【0037】
このように、図3a及び図3bに示した対称性の圧縮変形や、図3cに示した非対称性の圧縮変形は、結合部或いは補償部とも称すべき成形部品11の形状伸縮性により、成形部品の少なくとも上部領域11cに対して弁部材12が相対的に異なる運動をすることによって生成又は形成されることが明かである。このような成形部品は、閉蓋状態の蓋8及びその面板部に対して弁部材12を相対移動可能に保持する一種の可撓性取付具として機能するものである。
【0038】
成形部品の特に上部領域における形状伸縮性は種々の度合に構成しておくことができ、例えば前述の圧縮変形時の復帰ばね力に関していえば、弁部材12が操作力によって実質的に軸心方向に沿って成形部品内へ押し込まれた後、操作力が消失すれば自動的に再び元の閉鎖位置である安定位置に復帰するように構成することができる。弁部材12の外周面と成形部品11の内周面との摩擦抵抗に関しても、円筒形の封止面であっても僅かな摩擦抵抗が生じるだけとなるように、即ち、圧縮変形された上部領域11cに潜在する復帰バネ力のほうが打ち勝つ程度の僅かな摩擦抵抗しか生じないように、成形部品の形状伸縮性と相対的に適合させることが可能である。
【0039】
成形部品11はスリーブ状成形部品とも言うべきものであり、従って単に「スリーブ」と称することができる。このスリーブは、中空円筒形の弁部材12の形状に対応して、中空円筒形状に成形されている。成形部品11は蓋開口部9の内部に固定状態及び封止状態に嵌挿される。これを「固着」と称するが、これは、このスリーブを蓋開口部で抱持することにより弁部材12に作用する力に耐え得る組み立てを果たすことを意味する。弁部材12はこのスリーブ11に対して相対的に動かされ、特に前述の通り軸心方向の相対移動成分を伴って変位する。このような相対移動は、成形部品11の形状伸縮性、特に対称性の圧縮変形を生じる回転及び非回転の直進運動時には上部領域11cの形状伸縮性を利用して生起され、また図3cに示したような傾斜運動時には更に付加的に下側のリップ状鍔部11aの形状伸縮性も利用して生起される。
【0040】
成形部品11の内部に中空円筒形の弁部材を遊隙なく挿入することにより両者間の封止が果たされている。これら両者間には少なくとも一つの密封線が形成されるが、これは完全な全周筒状の密封ゾーンとなっていることが好ましく、それにより出口弁10が閉鎖位置にあるときに貫通口31,32,33,30の閉鎖と共に充分な封止機能を発揮することができる。
【0041】
有底円筒形の成形部品12は成形部品11の軸心方向両端面に被さる上側鍔部10bと下側鍔部10aとを有しているが、弁部材は成形部品に対して軸心方向に相対移動可能であり、従って当然のことながらこの軸心方向の運動成分の一部は特に上側鍔部から成形部品11に伝達され、その弾性変形を生起する。但し、蓋8の面板3に対しては、成形部品11は環状カラー部9aで保持されている。
【0042】
成形部品の外周面から張り出すこれら上下の鍔部は少なくとも周方向の一部に亘って延在していればよいが、好ましくは両方の鍔部10b、10aを全周に亘って延在させるものとし、この場合、下側の鍔部10aは、容器本体の内部で出口弁10の下端におけるディスク弁体の本来の弁端縁を形成する。
【0043】
環状保持部として成形部品に一体形成されている上下の鍔部11b、11aは成形部品の外周面からリップ状に張り出しており、蓋面板3の環状カラー部9aを上下から挟持して成形部品を蓋開口部9に固定状態及び封止状態に保持する機能を果たしている。特に下側のリップ状鍔部11aは、蓋開口部9の容器内における開口周縁で蓋面板3の内面に密着して全周に亘る封止機能を果たしている。
【0044】
この場合、蓋開口部9は、出口弁の両弁部品、即ち成形部品11及び弁部材12の円筒形状に整合する円形開口であり、好ましくは蓋面板の中心位置に設けられる。
【0045】
図4は、図2cの基本構成の更に詳細な実施形態を示している。図4において組み立てられている各部品は図5a〜図5cに分解して更に詳細に示されており、これらの分解図は概略図2b及び図2aに相当するが、図2bでは全体的に示した蓋開口部9を有する蓋8は、図5aでは部分的に(折り込み縁8aを省略して)示されている。
【0046】
図5cに示す第1の弁部品(A)と、図5bに示す第2の弁部品(B)は、図5aに示すように矢印A、Bの順序で蓋面板の下面側から蓋開口部9内に押し込まれる。これに代えて、両弁部品を先に組み立てて一緒にした弁構体A+B(図2aに示すような)を蓋面板の下面側から蓋開口部9内に押し込んでもよい。第1の弁部品Aは成形部品11であり、その外周面から張り出している上下のリップ状鍔部11bと11aとの間に金属製の蓋の環状カラー部9aがスナップ嵌合する。上側のリップ状鍔部11bの上方には円筒形の上部領域11cが有効な圧縮バネ要素として一体に延在しており、この上部領域の上端面に第2の弁部品である弁部材12の上側鍔部10bが被さっている。
【0047】
第2の弁部品の下側の鍔部10aは有底円筒形の弁部材12の閉鎖底面を形成すると共に径方向外方へ張り出したディスク弁体を構成している。本実施形態において弁部品AとびBは上述のように成形部品11と弁部材12であるが、弁部材12には少なくとも一つの径方向貫通口、好ましくは周方向に離間した三つ又は四つの径方向貫通口30〜33が設けられている。
【0048】
成形部品において圧縮バネ要素として機能する上部領域11cの内周面には、圧縮変形時の曲げ位置を定める機能を果たす凹部として周方向に延在する一つ以上の条溝40が設けられている。この条溝は成形部品11の上部領域11cにおける圧縮変形抵抗を変化させてそのバネ機能を調整及び支援する。この条溝40は図4にも示されており、これによって組立後の弁構体が弁閉鎖位置にある状態で条溝が何処に位置するかは明かである。同様に図2cにも符号40で成形部品11における条溝の位置を示してある。
【0049】
最終的な組み立て状態、即ち、図4に示した弁付き蓋(折り込み縁が省略されている)を実際には存在する折り込み縁で飲料缶の本体開口縁にさね矧ぎ継手で封止状態に装着した状態を図6に示すが、これは、図1と比べて寸法が多少拡大されており、各部の形状及び配置を更に正確に再現して図示したものである。
【0050】
図6において、出口弁で形成される流路は符号Fで示され、この流路は、成形部品11に対して弁部材の貫通口30が閉鎖位置にあるときは閉じられている。流路を閉鎖していた弁部材12が成形部品に対して相対的に押し込まれると、貫通口を通して弁部材12の内部空間12iを経由する流路が通じることになる。このようにして開かれた流路は、容器内部空間5からの流体の取り出しと該内部空間5への流体の充填との双方に利用することができる。
【0051】
容器本体の充填用開口部の周縁部6における折り込み潰し継ぎ目6aによる閉蓋は、容器本体1への内容物の充填の前又後のいずれにおいても可能である。容器本体が既に折り込み潰し継ぎ目6aで閉蓋されて場合は、出口弁を開いた状態にして形成される流路Fを内容物の補充又は混合補充に利用することができる。但し、補充ではない本来の充填は、缶充填、即ち折り込み潰し継ぎ目6aにより弁付き蓋で閉蓋されていない状態の容器本体に対して行うことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】閉蓋状態の容器の概略縦断面図である。
【図2a】弁付き蓋の一部品である出口弁の概略縦断面図である。
【図2b】弁付き蓋の別の一部品である蓋の概略縦断面図である。
【図2c】二つの部品からなる弁付き蓋の組立後における概略縦断面図である。
【図3a】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す一形態の概略縦断面図である。
【図3b】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す別の一形態の概略縦断面図である。
【図3c】閉蓋状態の容器上部構造における出口弁開口の様子を示す更に別の一形態の概略縦断面図である。
【図4】図2cと同様の(但し折り込み縁8aは図示せず)弁付き蓋の縦断面図である。
【図5a】蓋8の要部を示す縦断面図である。
【図5b】出口弁10の一部をなす弁部材の縦断面図である。
【図5c】出口弁10の一部をなす成形部品の縦断面図である。
【図6】出口弁10及びその流路Fと共に閉蓋状態の容器を示す縦断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物として液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品を充填して所望時に取り出すための容器において、
流体製品の充填用の開口部(4)を有する容器本体(1)を備え、この充填用開口部の口径(d4)が前記本体の内径(d5)よりも小さいこと、及び
前記充填用開口部(4)を閉鎖する蓋(8)が中心部又はその近傍に蓋開口部(9)を有し、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)が該出口弁の一部をなす成形部品(11)のみを介して固定状態及び封止状態に挿入可能であるか又は既に挿入されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
金属シートからの引張成形による飲料缶の形態の容器であって、容器本体(1)が缶の周壁(1a)と該周壁に一体成形された底(2)とを備え、前記蓋の外縁部が折り込み潰し継ぎ目によって前記本体の充填用開口部の周縁部(6)に固定状態及び封止状態に結合可能であるか又は既に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
弁部材(12)と成形部品(11)とからなる出口弁(10)を備えた蓋(8)が予め組み立てられた一つのユニット部品を形成し、該ユニット部品が容器本体の充填用開口部の周縁部(6)に折り込み潰し継ぎ目(6a)で封止状態及び固定状態に結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
成形部品(11)が形状伸縮性の材料で中空円筒形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器と組み合わされて液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品の内容物を所望時に取り出すために容器本体(1)を封止状態に閉鎖するための弁付き蓋であって、蓋のほぼ平坦な面板内に丸い蓋開口部(9)を有し、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)が該出口弁の一部をなすスリーブ状の成形部品(11)のみを介して固定状態及び封止状態に挿入されていることを特徴とする弁付き蓋。
【請求項6】
蓋開口部(9)の開口周縁が軸心方向で外向き、即ち上向きに突出した環状カラー部(9a)で画定され、このカラー部の上部端縁及び下部端縁が、中空円筒形状の成形部品(11)に前記カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔(h9a)を開けてそれぞれ径方向に張り出すリップ状鍔部(11a,11b)として設けられた上下の環状保持部によりそれぞれ封止状態及び固定状態に挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項7】
出口弁(10)の有底円筒形の弁部材(12)が中空円筒形状の成形部品(11)の内部に遊隙なく配置され、該弁部材には軸心方向に間隔をあけてそれぞれ径方向に張り出した上下の鍔部(10a,10b)が設けられ、これら上下の鍔部が前記成形部品の軸心方向の両端面に被さることにより前記弁部材が前記上下の鍔部により封止状態に挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項8】
各鍔部(11a,11b,10a,10b)の少なくとも二つが周方向に連続していることを特徴とする請求項6又は7に記載の弁付き蓋。
【請求項9】
中空円筒形状の成形部品(11)がスリーブの形態で前記蓋に固定状態及び封止状態に装着され、このスリーブの内部に有底円筒形の弁部材(12)が弁体として軸心方向に相対移動可能に挿入されて出口弁(10)を構成していることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項10】
液体から粘稠流体に亘る各種有用流体製品の内容物を所望時に取り出すために容器本体(1)を封止状態及び固定状態に閉鎖する弁付き蓋であって、
該蓋の面内に蓋開口部(9)が設けられ、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)がそのスリーブ状の成形部品(11)のみによって封止状態に挿入されており、この挿入状態で成形部品(11)に対して出口弁の有底円筒形の弁部材(12)を相対的にスライド移動させることにより成形部品(11)の形状伸縮性を利用して出口弁(10;11,12)の開閉を制御可能としたことを特徴とする弁付き蓋。
【請求項11】
蓋開口部(9)が軸心方向で外向きに突出した環状カラー部(9a)で画定され、このカラー部の上部端縁及び下部端縁は、中空円筒形状の成形部品(11)に前記カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔をあけてそれぞれリップ状鍔部として設けられた環状保持部(11a,11b)により、前記弁部材(12)が操作されたときにも、また該弁部材に操作圧力が作用したときにも、それぞれ固定状態及び封止状態を維持するように強固に挟持されていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項12】
出口弁(10)の有底円筒形の弁部材(12)が中空円筒形状の成形部品(11)の内部に遊隙なく配置され、該弁部材には軸心方向の間隔をあけてそれぞれ径方向の張り出した上下の鍔部(10a,10b)が設けられ、これら上下の鍔部が前記成形部品の軸心方向の両端面に被さることにより前記弁部材が前記上下の鍔部により封止状態で挟持されていると共に、この挟持状態から前記弁部材が取り外し不能とされていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項13】
各鍔部(11a,11b,10a,10b)の少なくとも二つが周方向に連続していることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項14】
単一の丸い蓋開口部(9)が蓋の中央に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項15】
成形部品(11)が形状伸縮性の材料からなることを特徴とする請求項10又は5に記載の弁付き蓋。
【請求項16】
成形部品の形状伸縮性がばね機能と封止機能をもたらしていることを特徴とする請求項15に記載の弁付き蓋。
【請求項17】
弁部材(12)の一端部近傍に少なくとも一つの径方向貫通口(30)が設けられていることを特徴とする請求項5〜17のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項18】
弁部材(12)のディスク弁体として機能する下側の鍔部(10a)の近傍に三つ以上の径方向貫通口(31,32,30)が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の弁付き蓋。
【請求項19】
弁部材(12)が、前記成形部品(11)の形状伸縮性により該成形部品の少なくとも上部領域(11c)における対称性の弾性変形で該成形部品に対して相対移動可能であることを特徴とする請求項4〜18のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項20】
前記弁部材(12)が、前記成形部品(11)の形状伸縮性により該成形部品の少なくとも上部領域(11c)における非対称性の弾性変形で該成形部品に対して相対移動可能であることを特徴とする請求項4〜18のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項21】
請求項1に記載の容器に内容物として流体製品を充填するに際し、容器本体(1)への流体製品の充填前及び/又は充填後に該容器本体の充填用開口部をその周縁部(6)で前記蓋により閉鎖することを特徴とする容器内への流体製品の充填方法。
【請求項1】
内容物として液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品を充填して所望時に取り出すための容器において、
流体製品の充填用の開口部(4)を有する容器本体(1)を備え、この充填用開口部の口径(d4)が前記本体の内径(d5)よりも小さいこと、及び
前記充填用開口部(4)を閉鎖する蓋(8)が中心部又はその近傍に蓋開口部(9)を有し、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)が該出口弁の一部をなす成形部品(11)のみを介して固定状態及び封止状態に挿入可能であるか又は既に挿入されていることを特徴とする容器。
【請求項2】
金属シートからの引張成形による飲料缶の形態の容器であって、容器本体(1)が缶の周壁(1a)と該周壁に一体成形された底(2)とを備え、前記蓋の外縁部が折り込み潰し継ぎ目によって前記本体の充填用開口部の周縁部(6)に固定状態及び封止状態に結合可能であるか又は既に結合されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
弁部材(12)と成形部品(11)とからなる出口弁(10)を備えた蓋(8)が予め組み立てられた一つのユニット部品を形成し、該ユニット部品が容器本体の充填用開口部の周縁部(6)に折り込み潰し継ぎ目(6a)で封止状態及び固定状態に結合されることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
成形部品(11)が形状伸縮性の材料で中空円筒形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の容器と組み合わされて液体から粘稠流体に亘る各種の有用流体製品の内容物を所望時に取り出すために容器本体(1)を封止状態に閉鎖するための弁付き蓋であって、蓋のほぼ平坦な面板内に丸い蓋開口部(9)を有し、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)が該出口弁の一部をなすスリーブ状の成形部品(11)のみを介して固定状態及び封止状態に挿入されていることを特徴とする弁付き蓋。
【請求項6】
蓋開口部(9)の開口周縁が軸心方向で外向き、即ち上向きに突出した環状カラー部(9a)で画定され、このカラー部の上部端縁及び下部端縁が、中空円筒形状の成形部品(11)に前記カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔(h9a)を開けてそれぞれ径方向に張り出すリップ状鍔部(11a,11b)として設けられた上下の環状保持部によりそれぞれ封止状態及び固定状態に挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項7】
出口弁(10)の有底円筒形の弁部材(12)が中空円筒形状の成形部品(11)の内部に遊隙なく配置され、該弁部材には軸心方向に間隔をあけてそれぞれ径方向に張り出した上下の鍔部(10a,10b)が設けられ、これら上下の鍔部が前記成形部品の軸心方向の両端面に被さることにより前記弁部材が前記上下の鍔部により封止状態に挟持されていることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項8】
各鍔部(11a,11b,10a,10b)の少なくとも二つが周方向に連続していることを特徴とする請求項6又は7に記載の弁付き蓋。
【請求項9】
中空円筒形状の成形部品(11)がスリーブの形態で前記蓋に固定状態及び封止状態に装着され、このスリーブの内部に有底円筒形の弁部材(12)が弁体として軸心方向に相対移動可能に挿入されて出口弁(10)を構成していることを特徴とする請求項5に記載の弁付き蓋。
【請求項10】
液体から粘稠流体に亘る各種有用流体製品の内容物を所望時に取り出すために容器本体(1)を封止状態及び固定状態に閉鎖する弁付き蓋であって、
該蓋の面内に蓋開口部(9)が設けられ、該蓋開口部には出口弁(10;11,12)がそのスリーブ状の成形部品(11)のみによって封止状態に挿入されており、この挿入状態で成形部品(11)に対して出口弁の有底円筒形の弁部材(12)を相対的にスライド移動させることにより成形部品(11)の形状伸縮性を利用して出口弁(10;11,12)の開閉を制御可能としたことを特徴とする弁付き蓋。
【請求項11】
蓋開口部(9)が軸心方向で外向きに突出した環状カラー部(9a)で画定され、このカラー部の上部端縁及び下部端縁は、中空円筒形状の成形部品(11)に前記カラー部の高さ寸法に対応する軸心方向間隔をあけてそれぞれリップ状鍔部として設けられた環状保持部(11a,11b)により、前記弁部材(12)が操作されたときにも、また該弁部材に操作圧力が作用したときにも、それぞれ固定状態及び封止状態を維持するように強固に挟持されていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項12】
出口弁(10)の有底円筒形の弁部材(12)が中空円筒形状の成形部品(11)の内部に遊隙なく配置され、該弁部材には軸心方向の間隔をあけてそれぞれ径方向の張り出した上下の鍔部(10a,10b)が設けられ、これら上下の鍔部が前記成形部品の軸心方向の両端面に被さることにより前記弁部材が前記上下の鍔部により封止状態で挟持されていると共に、この挟持状態から前記弁部材が取り外し不能とされていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項13】
各鍔部(11a,11b,10a,10b)の少なくとも二つが周方向に連続していることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項14】
単一の丸い蓋開口部(9)が蓋の中央に配置されていることを特徴とする請求項10に記載の弁付き蓋。
【請求項15】
成形部品(11)が形状伸縮性の材料からなることを特徴とする請求項10又は5に記載の弁付き蓋。
【請求項16】
成形部品の形状伸縮性がばね機能と封止機能をもたらしていることを特徴とする請求項15に記載の弁付き蓋。
【請求項17】
弁部材(12)の一端部近傍に少なくとも一つの径方向貫通口(30)が設けられていることを特徴とする請求項5〜17のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項18】
弁部材(12)のディスク弁体として機能する下側の鍔部(10a)の近傍に三つ以上の径方向貫通口(31,32,30)が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の弁付き蓋。
【請求項19】
弁部材(12)が、前記成形部品(11)の形状伸縮性により該成形部品の少なくとも上部領域(11c)における対称性の弾性変形で該成形部品に対して相対移動可能であることを特徴とする請求項4〜18のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項20】
前記弁部材(12)が、前記成形部品(11)の形状伸縮性により該成形部品の少なくとも上部領域(11c)における非対称性の弾性変形で該成形部品に対して相対移動可能であることを特徴とする請求項4〜18のいずれか1項に記載の弁付き蓋。
【請求項21】
請求項1に記載の容器に内容物として流体製品を充填するに際し、容器本体(1)への流体製品の充填前及び/又は充填後に該容器本体の充填用開口部をその周縁部(6)で前記蓋により閉鎖することを特徴とする容器内への流体製品の充填方法。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6】
【公表番号】特表2009−525927(P2009−525927A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553778(P2008−553778)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051277
【国際公開番号】WO2007/090889
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508242942)ボール パッケージング ユーロプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051277
【国際公開番号】WO2007/090889
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(508242942)ボール パッケージング ユーロプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
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