有限直線運動機構用軸受構造
【課題】相対滑り摺動部位の転がり軸受化を、コンパクトに実現した有限直線運動機構用軸受構造を提供する。
【解決手段】相対直線運動部材4,5の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、ニードルローラ保持部材と、ニードルローラ保持部材の両端部に配置され、ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材4,5の対向部と係合し、相対直線運動部材4,5間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバー26とを備え、ニードルローラ保持部材が、ニードルローラが設けられている領域のニードルローラ保持部材の幅が端部ニードルローラの長さと等しい寸法とされ、ニードルローラ保持部材の両端部における幅が、保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法にされている。
【解決手段】相対直線運動部材4,5の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、ニードルローラ保持部材と、ニードルローラ保持部材の両端部に配置され、ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材4,5の対向部と係合し、相対直線運動部材4,5間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバー26とを備え、ニードルローラ保持部材が、ニードルローラが設けられている領域のニードルローラ保持部材の幅が端部ニードルローラの長さと等しい寸法とされ、ニードルローラ保持部材の両端部における幅が、保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法にされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限直線運動機構用軸受構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力回転トルクを油圧に変換する油圧ポンプ等では、軸の回転運動を油圧プランジャの直線往復運動に変換する機構が不可欠であるが、その具体的手段としては、回転軸に対する油圧プランジャの配置構造によって異なり、多様な形態がある。その多様な形態を分類すれば、油圧プランジャの推力を回転軸と平行方向に作用させるアキシャル型と、回転軸と直角方向に作用させるラジアル型とがあり、アキシャル型は更に斜板型と車軸型に分類される。
【0003】
これらの各ポンプ機構形態での直線運動変換機構の原理は、アキシャル型の場合、例えば図12に示すように回転運動部材である回転軸50の軸心からオフセットした複数の軸線上に油圧シリンダ穴51を設けておき、それらの油圧シリンダ穴51の各々に直線摺動自在にプランジャ部材52を挿入し、そのプランジャ部材52に生じる油圧推力を受け止める部材として、それらのプランジヤ群の回転軸50に対して適度な角度で傾斜させた斜面53を形成しておき、その斜面53で各プランジャ部材52の油圧推力を受け止めて、その直線運動のストローク量を決める原理である。
【0004】
ラジアル型は、回転運動部材に偏芯部を形成し、その偏芯中心の回転に伴う円移動軌跡の直交座標系一方向変位成分のみを抽出することで、回転運動を往復直線運動に変換する機構を用い、その往復直線運動部材に油圧プランジャを設置するものである。このラジアル型の原理機構の中で、偏芯軸の回転運動を往復直線運動に変換する機構の機能は、偏芯中心の回転に伴う円移動軌跡から、往復直線運動方向と直角方向の変位成分を自由に逃がす伝達機構によって達成されるものであり、これに対応する最もシンプルな機構要素としては、クランクスライダ機構が挙げられる。これは、偏芯軸に回転自在に支持した部材と、往復直線運動部材とを、その往復直線運動方向と直角方向の相対変位のみを自由に許容するようにスライダ構造で連結するものである。
【0005】
しかし、このようなクランクスライダ機構を往復直線運動変換機構としてラジアル型の油圧ポンプを構成した場合、その相対スライド部に、強大な油圧プランジャ推力が作用しながら摺動運動をすることになり、機械効率や磨耗耐久性の問題を生じ易い。そのため、この往復直線運動変換機構としてクランクスライダ機構ではなく、偏芯軸と往復直線運動部材とを連接棒によって連結する、レシプロエンジンと同様の機構形態が用いられるのが一般的である。この連接棒型で構成した一般的なラジアル型ポンプ機構は、図13に示すように回転運動部材を回転偏芯軸60とし、その回転偏芯軸周りに放射状の連接棒部材61を介して放射状にプランジャ62を設けると共に各プランジャ62が直線摺動可能な油圧シリンダ穴63を設け、その油圧推力を回転偏芯軸60に作用させる構造であり、その回転偏芯軸60の偏芯量でストローク量を決める原理になっている。この構造の場合、油圧プランジャ推力を偏芯軸に伝達する連接棒の両端の連接部における部材の相対運動は、揺動回転運動と回転運動であるため、ここにニードルベアリング等の転がり軸受け要素を適用することで、機械効率や磨耗耐久性を大きく改善することができる。
【0006】
このような各種機構形態の構造原理的特徴として、ラジアル型は、その偏芯軸部の偏芯量諸元によってプランジャストロークが決まるから、これを可変容量化するには、回転運動するその偏芯軸部の偏芯量諸元を外部操作によって変化させなければならず、そのための複雑な機構を要するのに対し、アキシャル型の場合、油圧プランジヤ当接面の傾斜角によってストローク量が決まるので、その当接面の傾斜角を変化させる簡便な機構で可変容量化できることから、可変容量型のニーズにはこのアキシャル型が専ら用いられている。
【0007】
しかし、このアキシャル型の機構は、可変容量型か否かに拘らず、機構原理的に強大な油圧推力が作用するプランジャ当接面での滑り摺動運動部の摺動運動軌跡が球面滑りや楕円軌跡になるために、その摺動部位へラジアル型のように転がり軸受け構造を適用することが困難であり、機械効率や摩耗耐久性の面で問題を生じ易い。このため、アキシャル型では、そのプランジャ当接面に、プランジャ推力を発生させている圧力油を導き、それによって生成される高圧油膜で当接面を浮かせる方法で機械効率や磨耗耐久性の問題を緩和させる手法が一般的に用いられているのであるが、この手法の原理上、エネルギー密度の高い高圧油の流出に依存するため、エネルギーの浪費が避けられない。
【0008】
一方、ラジアル型は、その機構的特性から主に固定容量型に用いられているが、転がり軸受けの適用が可能な連接棒型の構造では、その連接棒の存在によって装置の外形サイズがアキシャル型よりかなり大型化してしまう難点がある。これに対し、連接棒を用いないクランクスライダ機構でラジアル型を構成すれば、装置の外形サイズを大幅にコンパクト化できる可能性があるが、その場合、クランクスライダ機構の相対スライド部に強大な油圧プランジャ推力が作用しながら摺動運動するから、この部位への機械効率及び磨耗耐久性の向上対策が求められる。 このクランクスライダ機構を用いるラジアル型での摺動運動の問題部位は、アキシャル型と違い、純粋な往復直線運動であるので、直線運動型の転がり軸受け構造の適用が可能であり、アキシャル型のような高圧油の流出によるエネルギー浪費を伴う潤滑構造に依存せずに機械効率や磨耗耐久性を向上できる可能性がある。つまり、その往復直線運動部位にボールや円筒状ローラ等の転動部材を介在させれば直線運動型の転がり軸受け構造にできるのであるが、そこに介在させる転動部材は、純粋な転がり運動だけでなく、伝達推力の変動や振動外乱等による僅かな滑り移動も生じることが避けられないため、その僅かな滑り移動の累積によってその設置位置がずれていき、その機能を果たすべき摺動運動部位から離脱してしまい、機能を維持できなくなるという問題が生じる。そして、このような問題を解決する直線運動型の転がり軸受け装置として、図14に示すようにガイド70と摺動部材71との間に転動部材となるローラやボール72を循環させる構造として、その設置位置の移動による機能不全を防ぐリニアガイドと呼ばれる直線運動部位用の転がり軸受装置が実用化されている。なお、摩擦を低減するその他の技術としては、例えば特許文献1(直動案内および送りねじ摩擦低減方法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−256954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した転動部材循環構造型のリニアガイドは、その原理上、転動部材を循環させる構造であり、その循環構造の制約上、転動部材はボール又は、極短い円筒コロに限られるので、長いニードルローラを転動部材とする転がり軸受構造に対して、荷重負荷容量が大幅に劣る上に、その転動部材の循環構造も必要なことから、必要な荷重負荷容量を賄う軸受装置としてのサイズは極めて大きなものになってしまう。従って、アキシャル型に対して摺動部の転がり軸受け構造化が可能で、効率ポテンシャルで優位性のあるラジアル型として、その難点である連接棒による装置外形サイズの大型化問題の軽減のために、連接棒を用いないクランクスライダ機構を適用して装置のコンパクト化を図ろうとしても、その摺動部に適用する転がり軸受装置として、従来のリニアガイドのような直線運動部位用の転がり軸受装置を用いると、それ自体が極めて大きいために、連接棒型以上に装置外形サイズが大型化してしまい、コンパクト化を実現することができない。
【0011】
本発明の目的は、このような課題を解決し、従来型の相対直線滑り摺動部位用の転がり軸受装置に対して圧倒的にコンパクトで荷重負荷容量の大きな転がり軸受機能を発揮することができる有限直線運動機構用軸受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、これらニードルローラを所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材と、該ニードルローラ保持部材の両端部に配置され前記ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、該端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材の対向部と係合し、相対直線運動部材間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバーとを備え、前記ニードルローラ保持部材が、板材に前記ニードルローラを回転自在に支持する複数の支持穴を設けてなり、該支持穴が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材の幅が前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材の両端部における幅が前記保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に複数のニードルローラを互いに隣接して転動可能に配列してなるニードルローラ群と、該ニードルローラ群の配列方向両端部に配置された端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持され、その両端部が前記相対直線運動部材の対向部にそれぞれ係合することで端部ニードルローラの位置を前記相対直線運動部材の相対変位の中間位相に保持する保持レバーとを備え、前記保持レバーとの干渉を回避するためにその干渉領域に配列された前記ニードルローラの軸方向の長さを他のニードルローラ群の軸方向の長さよりも短い寸法に設定したことを特徴とする。
【0014】
第1の発明又は第2の発明の有限直線運動機構用軸受構造においては、前記相対直線運動部材の一方の部材の端面部に設けられ、その内部に位置するニードルローラ群及び保持レバーを外部に離脱しないように保持するための保持板を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、相対滑り摺動部位の転がり軸受化をコンパクトに実現でき、油圧ポンプ機構等の機械効率及び耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明をクランクスライダ機構用軸受構造に適用した実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】第1スライダブロックを示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図5】第2スライダブロックを示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図6】ニードルローラ保持部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図7】保持レバーを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】保持板を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】(a)は図1の状態から偏芯軸を90°進角させた時の図で、(b)は更に180°進角させた時の図である。
【図10】本発明をクランクスライダ機構用軸受構造に適用した実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図11】ニードルローラの他の配置例を示す図である。
【図12】アキシャル型の機構概念図である。
【図13】ラジアル型の機構概念図である。
【図14】ボール循環型のリニアガイドの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0018】
図1において、1は有限直線運動機構の一例として示した油圧ポンプ機構2用のクランクスライダ機構であり、このクランクスライダ機構1は、図示しないモータにより回転駆動される偏芯軸3の回転運動を直線運動に変換するための互いに直交する方向に直線運動が可能な一組の相対直線運動部材である第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5と、第1スライダブロック4を図1の左右方向に摺動可能に支持する上下一対の直線運動ガイド面6とを備えている。前記油圧ポンプ機構2は、前記第1スライダブロック4の一端に突設されたプランジャ部7と、このプランジャ部7を摺動可能に収容するシリンダ穴8とを備えている。
【0019】
前記第1スライダブロック4は、図1又は図4に示すように中央部に第2スライダブロック5を上下方向に摺動可能に収容可能な略方形の開口部9を有する四角枠状に形成され、その一端部に前記プランジャ部7が突設されている。また、第1スライダブロック4の厚さ方向の両側面部には、前記開口部9内に第2スライダブロック5を保持すると共に後述の保持レバー26及び端部ニードルローラ25を脱落しないように押えておくための保持板11を上下方向にスライド可能に係合する保持板係合溝12が設けられている。前記保持板11には前記偏芯軸3を挿通するための長穴13が設けられている(図8参照)。第1スライダブロック4の開口部9の左右両内側面がニードル転動面(摺動対向面)14になっている。
【0020】
前記第2スライダブロック5は、図5に示すように中央部に偏芯軸用ベアリング15を挿入するための挿入穴16を有していると共に左右両外側部にニードル転動面17を有している。第2スライダブロック5は、図9に示すように第1スライダブロックの開口部内に第1スライダブロック4の移動方向(図9の左右方向)と直交する方向(図9の上下方向)に移動自在に支持されている。
【0021】
前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5のニードル転動面14,17間には複数のニードルローラ18が転動可能に配置され、これらニードルローラ18はニードルローラ保持部材(ニードル保持器ともいう)19により所定の間隔で保持されている。このニードルローラ保持部材19は、図6に示すように薄い板材(金属板)を剛性を有するように中央に凸部20を且つ両側に立ち上がった縁部21を有するようにプレス加工されていると共に、前記ニードルローラ18を所定の間隔で回転自在に支持する長方形状の複数の支持穴22が打ち抜き加工により設けられている。前記支持穴22の長手方向中央部の両縁にはニードルローラ18の脱落を防止するための突状部23が設けられ、組み付け性の向上が図られている。また、前記ニードルローラ保持部材19の長手方向両端部における幅は後述の保持レバー26と干渉しないように長手方向中央部の幅よりも狭く形成されている。前記支持穴22が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材19の幅waが前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材19のニードルローラ配列方向両端部における幅wbが前記保持レバー26との干渉を回避するために両保持レバー26,26間の寸法よりも狭い寸法に設定されている。前記ニードルローラ保持部材19にニードルローラ18を組み込んだものをニードルローラセット24ともいう。
【0022】
前記ニードルローラ保持部材19の両端部には、図3に示すように前記ニードルローラ18よりも長さの長い端部ニードルローラ25が配置され、各端部ニードルローラ25の軸方向両端部は、各々図7に示すように長手方向両端部に円形状突部28が形成された保持レバー26の中央部のニードル保持穴27によって回動自在に支持されている。そして、端部ニードルローラ25及び前記ニードルローラ18は、共に前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5のニードル転動面14,17間に配置されている。前記保持レバー26は、図7に示すように板材(金属板)からなっており、その長手方向両端部に円形状突部28が形成されている。
【0023】
また、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の厚み方向の両端面には、各々ニードル転動面14,17と直角方向の平行溝部29が形成してあり、端部ニードルローラ25を支持している保持レバー26の両端部の円形状突部28が各々これら平行溝部29と係合するように組付けられている。その結果、保持レバー26の中央部のニードル保持穴27の位置は、常時、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5間の相対変位の中間位相で規定されることになるので、そこに支持された端部ニードルローラ25の位置が決まり、これによって更に端部ニードルローラ25の内側に配置されたニードルローラ保持部材19及びそれに保持されたニードルローラ18の位置が決まる関係になる。このような相対位置拘束機能関係により、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の相対変位に伴うニードルローラ18群及び端部ニードルローラ25の転動移動量が両スライダブロック4,5の相対変位の中間位相からずれることがなくなり、各ニードルローラの適正な位置での安定した転がり挙動の維持が保証される。
【0024】
前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5を相対移動可能に連結する保持レバー26の長手方向中間部に端部ニードルローラ25が支持されているため、端部ニードルローラ25の移動量は前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の相対変位量の1/2となり、この移動量の2本の端部ニードルローラ25間に挟まれているニードル保持部材19によりニードルローラ18群の転動移動量が前記相対変位量の1/2からずれることが防止され、滑り摺動挙動から転がり挙動への安定した変換機能の維持を保証することができるようになっている。
【0025】
以上の構成からなるクランクスライダ機構用軸受構造によれば、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材である第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5を有するクランクスライダ機構用軸受構造において、前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラ18と、これらニードルローラ18を所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材19と、該ニードルローラ保持部材19の両端部に配置され前記ニードルローラ18よりも長さの長い端部ニードルローラ25と、該端部ニードルローラ25の軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向部と係合し、第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラ25の位置を保持する保持レバー26とを備えているため、相対滑り摺動部位の転がり軸受化をコンパクトに実現でき、油圧ポンプ機構2等の機械効率及び耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0026】
また、前記ニードルローラ保持部材19が、板材に前記ニードルローラ18を回転自在に支持する複数の支持穴22を設けてなるため、前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向面間にニードルローラ18群を容易に組付けることができ、組立性の向上が図れる。
【0027】
また、これにより転がり軸受構造で機械効率の高いクランクスライダ機構1がコンパクトに実現できるので、エネルギー密度の高い高圧油の流出に依存せずに円滑な動作を保証できる高効率のラジアル型油圧ポンプ機構等を構成できる。
【0028】
本実施形態の前記クランクスライグ機構1は、相対直線運動部材である第1及び第2スライダブロック4,5に加え、これら第1及び第2スライダブロック4,5間に挿入されるニードルローラセット24と、このニードルローラセット24の両端部に配置される端部ニードルローラ25を保持する保持レバー26及びこれら全体を軸方向に保持する保持板11とから構成されている。前記第1スライダブロック4の外縁付近には、保持板11の端部を係合保持する保持板係合溝12を形成しておき、第1スライダブロック4の開口部9に第2スライダブロック5及びニードルローラセット24を組み付けた後、これらの組み付け状態が第1スライダブロック4の軸方向の移動によって分離しないように、前記保持板係合溝12が第1スライダブロック4の移動方向と直交する方向に設けられているので、前記組み付け状態を保持でき、またこのようなクランクスライダ機構が構成要素である機械装置への組付け作業を容易化することができる。
【0029】
前記保持レバー26によるニードルローラ18群の中間位置保持規制機能により、通常のニードルローラ転動においては、その転動移動量と保持レバー26による規制位置とは矛盾無く一致するので、保持レバー26はほとんど無負荷の揺動運動を行うだけの部材であるが、ニードルローラ18への押圧負荷が無くなる推力変動や振動外乱等によって、ニードルローラ18群が想定外の滑り移動をしようとする際には、それを適正位置に維持すべく拘束することができるので、推力変動や振動外乱等に拘わらず、良好な転がり軸受機能を安定して保証することができる。
【0030】
前記実施形態では、直線運動する第1スライダブロック4の直線運動方向の端部にプランジャ部7を形成し、そのプランジャ部7が嵌合するシリンダ穴8にも、プランジャ部7の運動を前記直線運動方向に拘束するガイド面機能を担わせているので、プランジャポンプ機構として極めてコンパクトなレイアウトにすることができる。
【0031】
なお、本発明は、有限量の直線摺動運動機構部に対してその摺動部の転がり軸受化をコンパクトに実現する構造の発明であり、図1のような油圧ポンプ機構への適用に限定されるものではなく、例えばビルの免振装置等、様々な有限量の直線摺動運動機構部に対して適用可能である。その一例として、回転運動をサイクリックな揺動運動に変換する機構に適用した実施例を図10に示した。本実施例では、第1偏芯軸30の回転運動を第1のクランクスライダ機構31によって直線往復運動に一旦変換し、その直線往復運動をより大きな偏芯半径を有する第2偏芯軸32を持つ第2のクランクスライダ機構33に与えることで、その第2偏芯軸32の揺動運動に変換するようにしてもよい。第1及び第2のクランクスライダ機構31,33の直線往復運動は一体的なものであって、その直線往復運動自体は運動変換の中継挙動に過ぎないので、二つのクランクスライダ機構の直線運動部材を一体的な枠状部材である第1スライダブロック34とし、この第1スライダブロック34の中に、第1偏芯軸30で駆動される第2フライダブロック35と、第2偏芯軸32で駆動される第3スライダブロック36を組み込み、第1スライダブロック34と第2スライダブロック35の間、第2スライダブロック35と第3スライダブロック36との間、第3スライダブロック36と第1スライダブロック34との間にそれぞれニードルローラセット24を設ければよい。
【0032】
相対直線運動部材間に作用する押圧負荷が極めて大きく、その負荷容量を高めたい場合には、保持レバー26で保持される左右の端部ニードルローラ間の内側領域にニードルローラ18群をニードルローラ保持部材19によって保持するのではなく、図11に示すようにニードルローラ保持部材を無くし、内側領域全域に互いに隣接するようにニードルローラ18群を埋めるように配置する、いわゆる総コロ型にしてもよい。保持レバー26で保持される端部ニードルローラ25の内側直近領域で、保持レバー26との干渉が生じる領域に配置されるニードル18aのみ、保持レバー26との干渉を避けるように軸方向の長さを短く形成し、その更に内側の領域に配置されるニードルローラ18群は、端部ニードルローラ25と同じ長さに設定すればよい。
【符号の説明】
【0033】
4 第1スライダブロック(相対直線運動部材)
5 第2スライダブロック(相対直線運動部材)
11 保持板
18 ニードルローラ
19 ニードルローラ保持部材
22 支持穴
25 端部ニードルローラ
26 保持レバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、有限直線運動機構用軸受構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動力回転トルクを油圧に変換する油圧ポンプ等では、軸の回転運動を油圧プランジャの直線往復運動に変換する機構が不可欠であるが、その具体的手段としては、回転軸に対する油圧プランジャの配置構造によって異なり、多様な形態がある。その多様な形態を分類すれば、油圧プランジャの推力を回転軸と平行方向に作用させるアキシャル型と、回転軸と直角方向に作用させるラジアル型とがあり、アキシャル型は更に斜板型と車軸型に分類される。
【0003】
これらの各ポンプ機構形態での直線運動変換機構の原理は、アキシャル型の場合、例えば図12に示すように回転運動部材である回転軸50の軸心からオフセットした複数の軸線上に油圧シリンダ穴51を設けておき、それらの油圧シリンダ穴51の各々に直線摺動自在にプランジャ部材52を挿入し、そのプランジャ部材52に生じる油圧推力を受け止める部材として、それらのプランジヤ群の回転軸50に対して適度な角度で傾斜させた斜面53を形成しておき、その斜面53で各プランジャ部材52の油圧推力を受け止めて、その直線運動のストローク量を決める原理である。
【0004】
ラジアル型は、回転運動部材に偏芯部を形成し、その偏芯中心の回転に伴う円移動軌跡の直交座標系一方向変位成分のみを抽出することで、回転運動を往復直線運動に変換する機構を用い、その往復直線運動部材に油圧プランジャを設置するものである。このラジアル型の原理機構の中で、偏芯軸の回転運動を往復直線運動に変換する機構の機能は、偏芯中心の回転に伴う円移動軌跡から、往復直線運動方向と直角方向の変位成分を自由に逃がす伝達機構によって達成されるものであり、これに対応する最もシンプルな機構要素としては、クランクスライダ機構が挙げられる。これは、偏芯軸に回転自在に支持した部材と、往復直線運動部材とを、その往復直線運動方向と直角方向の相対変位のみを自由に許容するようにスライダ構造で連結するものである。
【0005】
しかし、このようなクランクスライダ機構を往復直線運動変換機構としてラジアル型の油圧ポンプを構成した場合、その相対スライド部に、強大な油圧プランジャ推力が作用しながら摺動運動をすることになり、機械効率や磨耗耐久性の問題を生じ易い。そのため、この往復直線運動変換機構としてクランクスライダ機構ではなく、偏芯軸と往復直線運動部材とを連接棒によって連結する、レシプロエンジンと同様の機構形態が用いられるのが一般的である。この連接棒型で構成した一般的なラジアル型ポンプ機構は、図13に示すように回転運動部材を回転偏芯軸60とし、その回転偏芯軸周りに放射状の連接棒部材61を介して放射状にプランジャ62を設けると共に各プランジャ62が直線摺動可能な油圧シリンダ穴63を設け、その油圧推力を回転偏芯軸60に作用させる構造であり、その回転偏芯軸60の偏芯量でストローク量を決める原理になっている。この構造の場合、油圧プランジャ推力を偏芯軸に伝達する連接棒の両端の連接部における部材の相対運動は、揺動回転運動と回転運動であるため、ここにニードルベアリング等の転がり軸受け要素を適用することで、機械効率や磨耗耐久性を大きく改善することができる。
【0006】
このような各種機構形態の構造原理的特徴として、ラジアル型は、その偏芯軸部の偏芯量諸元によってプランジャストロークが決まるから、これを可変容量化するには、回転運動するその偏芯軸部の偏芯量諸元を外部操作によって変化させなければならず、そのための複雑な機構を要するのに対し、アキシャル型の場合、油圧プランジヤ当接面の傾斜角によってストローク量が決まるので、その当接面の傾斜角を変化させる簡便な機構で可変容量化できることから、可変容量型のニーズにはこのアキシャル型が専ら用いられている。
【0007】
しかし、このアキシャル型の機構は、可変容量型か否かに拘らず、機構原理的に強大な油圧推力が作用するプランジャ当接面での滑り摺動運動部の摺動運動軌跡が球面滑りや楕円軌跡になるために、その摺動部位へラジアル型のように転がり軸受け構造を適用することが困難であり、機械効率や摩耗耐久性の面で問題を生じ易い。このため、アキシャル型では、そのプランジャ当接面に、プランジャ推力を発生させている圧力油を導き、それによって生成される高圧油膜で当接面を浮かせる方法で機械効率や磨耗耐久性の問題を緩和させる手法が一般的に用いられているのであるが、この手法の原理上、エネルギー密度の高い高圧油の流出に依存するため、エネルギーの浪費が避けられない。
【0008】
一方、ラジアル型は、その機構的特性から主に固定容量型に用いられているが、転がり軸受けの適用が可能な連接棒型の構造では、その連接棒の存在によって装置の外形サイズがアキシャル型よりかなり大型化してしまう難点がある。これに対し、連接棒を用いないクランクスライダ機構でラジアル型を構成すれば、装置の外形サイズを大幅にコンパクト化できる可能性があるが、その場合、クランクスライダ機構の相対スライド部に強大な油圧プランジャ推力が作用しながら摺動運動するから、この部位への機械効率及び磨耗耐久性の向上対策が求められる。 このクランクスライダ機構を用いるラジアル型での摺動運動の問題部位は、アキシャル型と違い、純粋な往復直線運動であるので、直線運動型の転がり軸受け構造の適用が可能であり、アキシャル型のような高圧油の流出によるエネルギー浪費を伴う潤滑構造に依存せずに機械効率や磨耗耐久性を向上できる可能性がある。つまり、その往復直線運動部位にボールや円筒状ローラ等の転動部材を介在させれば直線運動型の転がり軸受け構造にできるのであるが、そこに介在させる転動部材は、純粋な転がり運動だけでなく、伝達推力の変動や振動外乱等による僅かな滑り移動も生じることが避けられないため、その僅かな滑り移動の累積によってその設置位置がずれていき、その機能を果たすべき摺動運動部位から離脱してしまい、機能を維持できなくなるという問題が生じる。そして、このような問題を解決する直線運動型の転がり軸受け装置として、図14に示すようにガイド70と摺動部材71との間に転動部材となるローラやボール72を循環させる構造として、その設置位置の移動による機能不全を防ぐリニアガイドと呼ばれる直線運動部位用の転がり軸受装置が実用化されている。なお、摩擦を低減するその他の技術としては、例えば特許文献1(直動案内および送りねじ摩擦低減方法)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−256954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述した転動部材循環構造型のリニアガイドは、その原理上、転動部材を循環させる構造であり、その循環構造の制約上、転動部材はボール又は、極短い円筒コロに限られるので、長いニードルローラを転動部材とする転がり軸受構造に対して、荷重負荷容量が大幅に劣る上に、その転動部材の循環構造も必要なことから、必要な荷重負荷容量を賄う軸受装置としてのサイズは極めて大きなものになってしまう。従って、アキシャル型に対して摺動部の転がり軸受け構造化が可能で、効率ポテンシャルで優位性のあるラジアル型として、その難点である連接棒による装置外形サイズの大型化問題の軽減のために、連接棒を用いないクランクスライダ機構を適用して装置のコンパクト化を図ろうとしても、その摺動部に適用する転がり軸受装置として、従来のリニアガイドのような直線運動部位用の転がり軸受装置を用いると、それ自体が極めて大きいために、連接棒型以上に装置外形サイズが大型化してしまい、コンパクト化を実現することができない。
【0011】
本発明の目的は、このような課題を解決し、従来型の相対直線滑り摺動部位用の転がり軸受装置に対して圧倒的にコンパクトで荷重負荷容量の大きな転がり軸受機能を発揮することができる有限直線運動機構用軸受構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明のうち、第1の発明は、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、これらニードルローラを所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材と、該ニードルローラ保持部材の両端部に配置され前記ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、該端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材の対向部と係合し、相対直線運動部材間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバーとを備え、前記ニードルローラ保持部材が、板材に前記ニードルローラを回転自在に支持する複数の支持穴を設けてなり、該支持穴が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材の幅が前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材の両端部における幅が前記保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
第2の発明は、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に複数のニードルローラを互いに隣接して転動可能に配列してなるニードルローラ群と、該ニードルローラ群の配列方向両端部に配置された端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持され、その両端部が前記相対直線運動部材の対向部にそれぞれ係合することで端部ニードルローラの位置を前記相対直線運動部材の相対変位の中間位相に保持する保持レバーとを備え、前記保持レバーとの干渉を回避するためにその干渉領域に配列された前記ニードルローラの軸方向の長さを他のニードルローラ群の軸方向の長さよりも短い寸法に設定したことを特徴とする。
【0014】
第1の発明又は第2の発明の有限直線運動機構用軸受構造においては、前記相対直線運動部材の一方の部材の端面部に設けられ、その内部に位置するニードルローラ群及び保持レバーを外部に離脱しないように保持するための保持板を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、相対滑り摺動部位の転がり軸受化をコンパクトに実現でき、油圧ポンプ機構等の機械効率及び耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明をクランクスライダ機構用軸受構造に適用した実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】第1スライダブロックを示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図5】第2スライダブロックを示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は正面図である。
【図6】ニードルローラ保持部材を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図7】保持レバーを示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図8】保持板を示す図で、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図9】(a)は図1の状態から偏芯軸を90°進角させた時の図で、(b)は更に180°進角させた時の図である。
【図10】本発明をクランクスライダ機構用軸受構造に適用した実施の形態の他の例を示す断面図である。
【図11】ニードルローラの他の配置例を示す図である。
【図12】アキシャル型の機構概念図である。
【図13】ラジアル型の機構概念図である。
【図14】ボール循環型のリニアガイドの断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態を添付図面に基いて詳述する。
【0018】
図1において、1は有限直線運動機構の一例として示した油圧ポンプ機構2用のクランクスライダ機構であり、このクランクスライダ機構1は、図示しないモータにより回転駆動される偏芯軸3の回転運動を直線運動に変換するための互いに直交する方向に直線運動が可能な一組の相対直線運動部材である第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5と、第1スライダブロック4を図1の左右方向に摺動可能に支持する上下一対の直線運動ガイド面6とを備えている。前記油圧ポンプ機構2は、前記第1スライダブロック4の一端に突設されたプランジャ部7と、このプランジャ部7を摺動可能に収容するシリンダ穴8とを備えている。
【0019】
前記第1スライダブロック4は、図1又は図4に示すように中央部に第2スライダブロック5を上下方向に摺動可能に収容可能な略方形の開口部9を有する四角枠状に形成され、その一端部に前記プランジャ部7が突設されている。また、第1スライダブロック4の厚さ方向の両側面部には、前記開口部9内に第2スライダブロック5を保持すると共に後述の保持レバー26及び端部ニードルローラ25を脱落しないように押えておくための保持板11を上下方向にスライド可能に係合する保持板係合溝12が設けられている。前記保持板11には前記偏芯軸3を挿通するための長穴13が設けられている(図8参照)。第1スライダブロック4の開口部9の左右両内側面がニードル転動面(摺動対向面)14になっている。
【0020】
前記第2スライダブロック5は、図5に示すように中央部に偏芯軸用ベアリング15を挿入するための挿入穴16を有していると共に左右両外側部にニードル転動面17を有している。第2スライダブロック5は、図9に示すように第1スライダブロックの開口部内に第1スライダブロック4の移動方向(図9の左右方向)と直交する方向(図9の上下方向)に移動自在に支持されている。
【0021】
前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5のニードル転動面14,17間には複数のニードルローラ18が転動可能に配置され、これらニードルローラ18はニードルローラ保持部材(ニードル保持器ともいう)19により所定の間隔で保持されている。このニードルローラ保持部材19は、図6に示すように薄い板材(金属板)を剛性を有するように中央に凸部20を且つ両側に立ち上がった縁部21を有するようにプレス加工されていると共に、前記ニードルローラ18を所定の間隔で回転自在に支持する長方形状の複数の支持穴22が打ち抜き加工により設けられている。前記支持穴22の長手方向中央部の両縁にはニードルローラ18の脱落を防止するための突状部23が設けられ、組み付け性の向上が図られている。また、前記ニードルローラ保持部材19の長手方向両端部における幅は後述の保持レバー26と干渉しないように長手方向中央部の幅よりも狭く形成されている。前記支持穴22が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材19の幅waが前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材19のニードルローラ配列方向両端部における幅wbが前記保持レバー26との干渉を回避するために両保持レバー26,26間の寸法よりも狭い寸法に設定されている。前記ニードルローラ保持部材19にニードルローラ18を組み込んだものをニードルローラセット24ともいう。
【0022】
前記ニードルローラ保持部材19の両端部には、図3に示すように前記ニードルローラ18よりも長さの長い端部ニードルローラ25が配置され、各端部ニードルローラ25の軸方向両端部は、各々図7に示すように長手方向両端部に円形状突部28が形成された保持レバー26の中央部のニードル保持穴27によって回動自在に支持されている。そして、端部ニードルローラ25及び前記ニードルローラ18は、共に前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5のニードル転動面14,17間に配置されている。前記保持レバー26は、図7に示すように板材(金属板)からなっており、その長手方向両端部に円形状突部28が形成されている。
【0023】
また、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の厚み方向の両端面には、各々ニードル転動面14,17と直角方向の平行溝部29が形成してあり、端部ニードルローラ25を支持している保持レバー26の両端部の円形状突部28が各々これら平行溝部29と係合するように組付けられている。その結果、保持レバー26の中央部のニードル保持穴27の位置は、常時、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5間の相対変位の中間位相で規定されることになるので、そこに支持された端部ニードルローラ25の位置が決まり、これによって更に端部ニードルローラ25の内側に配置されたニードルローラ保持部材19及びそれに保持されたニードルローラ18の位置が決まる関係になる。このような相対位置拘束機能関係により、第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の相対変位に伴うニードルローラ18群及び端部ニードルローラ25の転動移動量が両スライダブロック4,5の相対変位の中間位相からずれることがなくなり、各ニードルローラの適正な位置での安定した転がり挙動の維持が保証される。
【0024】
前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5を相対移動可能に連結する保持レバー26の長手方向中間部に端部ニードルローラ25が支持されているため、端部ニードルローラ25の移動量は前記第1スライダブロック4と第2スライダブロック5の相対変位量の1/2となり、この移動量の2本の端部ニードルローラ25間に挟まれているニードル保持部材19によりニードルローラ18群の転動移動量が前記相対変位量の1/2からずれることが防止され、滑り摺動挙動から転がり挙動への安定した変換機能の維持を保証することができるようになっている。
【0025】
以上の構成からなるクランクスライダ機構用軸受構造によれば、互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材である第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5を有するクランクスライダ機構用軸受構造において、前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラ18と、これらニードルローラ18を所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材19と、該ニードルローラ保持部材19の両端部に配置され前記ニードルローラ18よりも長さの長い端部ニードルローラ25と、該端部ニードルローラ25の軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向部と係合し、第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラ25の位置を保持する保持レバー26とを備えているため、相対滑り摺動部位の転がり軸受化をコンパクトに実現でき、油圧ポンプ機構2等の機械効率及び耐久性を飛躍的に向上させることができる。
【0026】
また、前記ニードルローラ保持部材19が、板材に前記ニードルローラ18を回転自在に支持する複数の支持穴22を設けてなるため、前記第1スライダブロック4及び第2スライダブロック5の対向面間にニードルローラ18群を容易に組付けることができ、組立性の向上が図れる。
【0027】
また、これにより転がり軸受構造で機械効率の高いクランクスライダ機構1がコンパクトに実現できるので、エネルギー密度の高い高圧油の流出に依存せずに円滑な動作を保証できる高効率のラジアル型油圧ポンプ機構等を構成できる。
【0028】
本実施形態の前記クランクスライグ機構1は、相対直線運動部材である第1及び第2スライダブロック4,5に加え、これら第1及び第2スライダブロック4,5間に挿入されるニードルローラセット24と、このニードルローラセット24の両端部に配置される端部ニードルローラ25を保持する保持レバー26及びこれら全体を軸方向に保持する保持板11とから構成されている。前記第1スライダブロック4の外縁付近には、保持板11の端部を係合保持する保持板係合溝12を形成しておき、第1スライダブロック4の開口部9に第2スライダブロック5及びニードルローラセット24を組み付けた後、これらの組み付け状態が第1スライダブロック4の軸方向の移動によって分離しないように、前記保持板係合溝12が第1スライダブロック4の移動方向と直交する方向に設けられているので、前記組み付け状態を保持でき、またこのようなクランクスライダ機構が構成要素である機械装置への組付け作業を容易化することができる。
【0029】
前記保持レバー26によるニードルローラ18群の中間位置保持規制機能により、通常のニードルローラ転動においては、その転動移動量と保持レバー26による規制位置とは矛盾無く一致するので、保持レバー26はほとんど無負荷の揺動運動を行うだけの部材であるが、ニードルローラ18への押圧負荷が無くなる推力変動や振動外乱等によって、ニードルローラ18群が想定外の滑り移動をしようとする際には、それを適正位置に維持すべく拘束することができるので、推力変動や振動外乱等に拘わらず、良好な転がり軸受機能を安定して保証することができる。
【0030】
前記実施形態では、直線運動する第1スライダブロック4の直線運動方向の端部にプランジャ部7を形成し、そのプランジャ部7が嵌合するシリンダ穴8にも、プランジャ部7の運動を前記直線運動方向に拘束するガイド面機能を担わせているので、プランジャポンプ機構として極めてコンパクトなレイアウトにすることができる。
【0031】
なお、本発明は、有限量の直線摺動運動機構部に対してその摺動部の転がり軸受化をコンパクトに実現する構造の発明であり、図1のような油圧ポンプ機構への適用に限定されるものではなく、例えばビルの免振装置等、様々な有限量の直線摺動運動機構部に対して適用可能である。その一例として、回転運動をサイクリックな揺動運動に変換する機構に適用した実施例を図10に示した。本実施例では、第1偏芯軸30の回転運動を第1のクランクスライダ機構31によって直線往復運動に一旦変換し、その直線往復運動をより大きな偏芯半径を有する第2偏芯軸32を持つ第2のクランクスライダ機構33に与えることで、その第2偏芯軸32の揺動運動に変換するようにしてもよい。第1及び第2のクランクスライダ機構31,33の直線往復運動は一体的なものであって、その直線往復運動自体は運動変換の中継挙動に過ぎないので、二つのクランクスライダ機構の直線運動部材を一体的な枠状部材である第1スライダブロック34とし、この第1スライダブロック34の中に、第1偏芯軸30で駆動される第2フライダブロック35と、第2偏芯軸32で駆動される第3スライダブロック36を組み込み、第1スライダブロック34と第2スライダブロック35の間、第2スライダブロック35と第3スライダブロック36との間、第3スライダブロック36と第1スライダブロック34との間にそれぞれニードルローラセット24を設ければよい。
【0032】
相対直線運動部材間に作用する押圧負荷が極めて大きく、その負荷容量を高めたい場合には、保持レバー26で保持される左右の端部ニードルローラ間の内側領域にニードルローラ18群をニードルローラ保持部材19によって保持するのではなく、図11に示すようにニードルローラ保持部材を無くし、内側領域全域に互いに隣接するようにニードルローラ18群を埋めるように配置する、いわゆる総コロ型にしてもよい。保持レバー26で保持される端部ニードルローラ25の内側直近領域で、保持レバー26との干渉が生じる領域に配置されるニードル18aのみ、保持レバー26との干渉を避けるように軸方向の長さを短く形成し、その更に内側の領域に配置されるニードルローラ18群は、端部ニードルローラ25と同じ長さに設定すればよい。
【符号の説明】
【0033】
4 第1スライダブロック(相対直線運動部材)
5 第2スライダブロック(相対直線運動部材)
11 保持板
18 ニードルローラ
19 ニードルローラ保持部材
22 支持穴
25 端部ニードルローラ
26 保持レバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、これらニードルローラを所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材と、該ニードルローラ保持部材の両端部に配置され前記ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、該端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材の対向部と係合し、相対直線運動部材間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバーとを備え、前記ニードルローラ保持部材が、板材に前記ニードルローラを回転自在に支持する複数の支持穴を設けてなり、該支持穴が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材の幅が前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材の両端部における幅が前記保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法に設定されていることを特徴とする有限直線運動機構用軸受構造。
【請求項2】
互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に複数のニードルローラを互いに隣接して転動可能に配列してなるニードルローラ群と、該ニードルローラ群の配列方向両端部に配置された端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持され、その両端部が前記相対直線運動部材の対向部にそれぞれ係合することで端部ニードルローラの位置を前記相対直線運動部材の相対変位の中間位相に保持する保持レバーとを備え、前記保持レバーとの干渉を回避するためにその干渉領域に配列された前記ニードルローラの軸方向の長さを他のニードルローラ群の軸方向の長さよりも短い寸法に設定したことを特徴とする有限直線運動機構用軸受構造。
【請求項3】
前記相対直線運動部材の一方の部材の端面部に設けられ、その内部に位置するニードルローラ群及び保持レバーを外部に離脱しないように保持するための保持板を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の有限直線運動機構用軸受構造。
【請求項1】
互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に転動可能に配置される複数のニードルローラと、これらニードルローラを所定の間隔で保持するニードルローラ保持部材と、該ニードルローラ保持部材の両端部に配置され前記ニードルローラよりも長さの長い端部ニードルローラと、該端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持されると共に両端部が前記相対直線運動部材の対向部と係合し、相対直線運動部材間の相対変位の中間位相で端部ニードルローラの位置を保持する保持レバーとを備え、前記ニードルローラ保持部材が、板材に前記ニードルローラを回転自在に支持する複数の支持穴を設けてなり、該支持穴が設けられている領域の前記ニードルローラ保持部材の幅が前記端部ニードルローラの長さと等しい寸法に設定され、前記領域以外の前記ニードルローラ保持部材の両端部における幅が前記保持レバーとの干渉を回避するために両保持レバー間の寸法よりも狭い寸法に設定されていることを特徴とする有限直線運動機構用軸受構造。
【請求項2】
互いに押圧負荷を受けつつ所定の相対直線運動を行う相対直線運動部材を有する有限直線運動機構用軸受構造において、前記相対直線運動部材の対向面間に複数のニードルローラを互いに隣接して転動可能に配列してなるニードルローラ群と、該ニードルローラ群の配列方向両端部に配置された端部ニードルローラの軸方向両端部に中央部が回動自在に支持され、その両端部が前記相対直線運動部材の対向部にそれぞれ係合することで端部ニードルローラの位置を前記相対直線運動部材の相対変位の中間位相に保持する保持レバーとを備え、前記保持レバーとの干渉を回避するためにその干渉領域に配列された前記ニードルローラの軸方向の長さを他のニードルローラ群の軸方向の長さよりも短い寸法に設定したことを特徴とする有限直線運動機構用軸受構造。
【請求項3】
前記相対直線運動部材の一方の部材の端面部に設けられ、その内部に位置するニードルローラ群及び保持レバーを外部に離脱しないように保持するための保持板を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の有限直線運動機構用軸受構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−127426(P2012−127426A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279558(P2010−279558)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]