説明

木質化粧板

【課題】 木質化粧板において、その表面化粧溝の色調が均一で色ムラがなく外観に優れ、溝底や溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として用いた場合の足裏歩行感が良好で、床材以外に用いた場合においても、仕上がり品質に優れ、しかも作業性に優れた木質化粧板を安価に提供することを課題とする。
【解決手段】 木質基材に木質化粧単板が貼着された木質化粧板本体の表面に、木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板において、前記木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質化粧板に関するものであって、特に表面に化粧溝を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
表面に化粧溝を有する従来の木質化粧板にあっては、図6に示すように、従来の木質化粧板11は、木質基材12の表面に木質化粧単板13が貼着され、その表面に溝加工用のグルーバーやルーター等を用いて、切削加工によって切削溝が施され、化粧溝16が設けられ、木質化粧板本体15が作製される。最後に前記木質化粧板本体15に仕上げ塗装が施され、表面塗装膜14が設けられる。このようにして木質化粧板11が作製されている。
【0003】
前記化粧溝16は、該化粧溝16と直交する方向の断面において、溝形状は種々あり、例えば、図6で例示する断面視略V字型溝の他、断面視略U字型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の溝形状がある。しかし、いずれの形状の化粧溝16であっても、その溝底は木質基材12にまで達しており、切削加工等によって溝加工を行った後、前記表面化粧溝16の溝底に着色工程、塗装工程等を施して仕上げられたものが一般的である。この場合、木質化粧板11表面の木質化粧単板13及び表面塗装膜14は、前記化粧溝16の部分で分断されており、溝底部は木質基材12が露出している。
【0004】
従来、木質化粧板11において、表面化粧溝16の断面形状としては、該化粧溝16と直交する方向の断面において、前記種々の溝形状の中でも断面視V字型又はU字型のものが最も一般的なものとして溝付け加工が行われてきた。また、従来からある木質化粧板として、立体感の豊かな柔らか味のある木質化粧板で、表面化粧溝の上端縁角部に角張った部分がなく歩行感が良好で、しかも、化粧単板の基材の導管孔が原因で生じる溝部分における着色ムラのないデザイン性の良好な建築用化粧板の記載がある。(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−172904号公報(第2−4頁、第1−4図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面化粧溝の溝底が基材にまで達する従来型の化粧溝においては、溝底に下地となる基材が露出し、表面の木質化粧単板と木質基材とで木質材料自体の色調が異なり外観上違和感が生じることが多々あった。また、前記違和感を解消するために、木質化粧板の木質化粧単板表面及び化粧溝内部に着色塗装や上塗り塗装等を施した場合においても、前記木質材料自体の色調差が原因の違和感の解消は困難で、施される塗料の色調によっては、かえって、前記違和感が強調される結果となり逆効果となることもあり、それを解消することは至難の業であり外観上の大きな問題点であった。
【0007】
また、溝底が木質基材に達するので、木質基材の欠点、例えば、虫穴、腐れ、ササクレ、毛羽立ち、バリ等が発生し、仕上がりを低下させ、着色塗装しても均一に仕上がらず、品質上の問題点があった。
【0008】
また、前記木質化粧板が床材として用いられた時、溝の上端縁角部に木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等が生じて、歩行時に靴下を破損したり、足裏歩行感が悪くなったりし、床材歩行時の、さまざまな問題点があった。床材以外の化粧板として用いられた場合においても、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等は品質上の大きな問題点となっていた。
【0009】
また、上記特開平11−172904号公報に記載されている建築用化粧板の表面化粧溝においては、基材として合板と中比重繊維板を積層接着して構成された複合基材を用いるので、コスト的に不利なものとなっていた。
【0010】
また、上記特開平11−172904号公報に記載の表面化粧溝においては、表面化粧溝を加工する際、基材表面に化粧単板を貼着し、テノーナー、ギャグソー、カッターなどを用いて溝加工した後、化粧板表面の全面及び表面化粧溝の内部を、素地研磨し、続いてロールコーター、リバースコーター等を用いて着色、下塗り、中塗りを行い、フローコーターで上塗りを行う工程が採用されているが、それらの工程が複雑で、作業性に劣り、コスト的にも高価につくといった問題点があった。
【0011】
また、化粧単板が溝の箇所で分断されており、下地の中比重繊維板が露出するといった問題点もあった。
【0012】
さらに、溝底になる中比重繊維板と木質化粧単板とは材質が異なるので、着色剤や塗料等で溝内部を着色する際、着色剤や塗料が、溝内部の表面へ吸い込む時の吸い込み程度が異なり、そのことが原因で、溝内部に着色ムラが生じ易いという問題点もあった。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その解決しようとする課題、すなわち本発明の目的とするところは、木質化粧板において、その表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく外観に優れ、溝底や溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として用いた場合の足裏歩行感が良好で、床材以外に用いた場合においても、仕上がり品質に優れ、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、木質基材に木質化粧単板が貼着され、表面に塗装膜が設けられた木質化粧板本体の表面に、該木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板であって、前記塗装膜が施された木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴としている。
【0015】
このような請求項1に記載の木質化粧板では、前記塗装膜が施された木質化粧単板が、前記化粧溝部分において、分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、化粧溝部分で下地基材の露出がなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として使用した場合の足裏歩行感、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の木質化粧板において、前記化粧溝は、溝底部に溝内壁が溝外方へ膨出する向きの曲面を有し、溝上端縁角部に溝内方へ膨出する向きの曲面部からなる面取部を有し、溝方向と直行する方向の断面において、溝内壁が略U字型形状を有していることを特徴としている。
【0017】
このような請求項2に記載の木質化粧板では、前記化粧溝は、溝底部に溝内壁が溝外方へ膨出する向きの曲面を有し、溝上端縁角部に溝内方へ膨出する向きの曲面部からなる面取部を有し、溝方向と直行する方向の断面において、溝内壁が略U字型形状を有しているので、溝内部及び溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質にとって、よりいっそう好適である。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の木質化粧板において、前記化粧溝は、溝上端縁角部に平板部からなる面取部を有し、木質化粧板の表面と前記面取部がなす角度が、木質化粧板の表面と溝内壁とがなす角度よりも小さく、溝方向と直交する方向の断面において、溝内壁が略V字型形状を有していることを特徴としている。
【0019】
このような請求項3に記載の木質化粧板では、前記化粧溝は、溝上端縁角部に平板部からなる面取部を有し、木質化粧板の表面と前記面取部がなす角度が、木質化粧板の表面と溝内壁とがなす角度よりも小さく、溝方向と直交する方向の断面において、溝内壁が略V字型形状を有しているので、溝内部及び溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質にとって、よりいっそう好適である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の発明によれば、前記塗装膜が施された木質化粧単板が、前記化粧溝部分において、分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されているので、化粧溝部分で下地基材の露出がなく、表面化粧溝の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れ、溝内部、溝底部、溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ぜず、床材として使用した場合の足裏歩行感、また、床材以外の化粧板として使用した場合の仕上がり品質が良好で、しかも作製する際の作業性に優れた木質化粧板を安価に提供できる。
【0021】
請求項2に記載の発明によれば、前記化粧溝は、溝底部に溝内壁が溝外方へ膨出する向きの曲面を有し、溝上端縁角部に溝内方へ膨出する向きの曲面部からなる面取部を有し、溝方向と直行する方向の断面において、溝内壁が略U字型形状を有しているので、溝内部及び溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質にとって、よりいっそう好適である。
【0022】
請求項3に記載の発明によれば、前記化粧溝は、溝上端縁角部に平板部からなる面取部を有し、木質化粧板の表面と前記面取部がなす角度が、木質化粧板の表面と溝内壁とがなす角度よりも小さく、溝方向と直交する方向の断面において、溝内壁が略V字型形状を有しているので、溝内部及び溝上端縁角部の木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点防止と、特に床材として用いた場合の足裏歩行感の向上、さらに床材以外の化粧板として用いた場合の仕上がり品質にとって、よりいっそう好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施形態の一例を図面に従って詳細に説明する。図1は本発明の木質化粧板の第一実施形態を示す斜視図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1の要部拡大断面図、
図4は本発明の木質化粧板の溝付け加工前の木質化粧板本体を示す断面図、図5は本発明の木質化粧板の他の実施形態を示す要部拡大断面図である。
【0024】
図1〜図4において本発明の木質化粧板1の第一実施形態の詳細を示す。図4に示すように、木質基材2の表面に木質化粧単板3が貼着され、表面に塗装膜4が設けられ、木質化粧板本体5が構成されている。該木質化粧板本体5の表面に木質化粧単板3の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝6が設けられ、本例に示す第一実施形態における木質化粧板1が構成されている。該化粧溝6は、木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観を考慮して決められるもので、化粧溝6の長手方向と直交する断面における溝形状、溝の幅寸法、溝の深さ寸法、及び溝の本数等は、木質化粧板1の仕上がりデザイン、外観を考慮して決定される。化粧溝6の本数は、1本の場合もあり、2本以上の複数の場合もある。
【0025】
また、化粧溝6の長手方向は、本発明では、表面に貼着されている木質化粧単板3の木質繊維方向と略平行方向に設けられている。木質化粧板1の長手方向と木質化粧単板3の木質繊維方向を略平行して方向を略揃えて貼着されている場合は、溝方向は縦溝となる。逆に、木質化粧板1の短手方向と木質化粧単板3の木質繊維方向を略平行して方向を略揃えて貼着されている場合は、溝方向は横溝となる。
【0026】
本発明の木質化粧板1では、その表面に貼着されている前記木質化粧単板3は、前記化粧溝6の部分で分断されることなく、化粧溝6を形成する基材内壁面Wに沿って且つ木質化粧単板3と基材内壁面Wとが密接し、しかも滑らかな連続体として形成されている。図1〜4に示す本発明の第一実施形態では、溝方向と直交する方向の断面において、断面視略U字型の溝形状の場合を示す。図5においては、本発明の他の実施形態として、溝方向と直交する方向の断面において、断面視略V字型の溝形状の場合を示す。
【0027】
本発明の木質化粧板1に用いられる木質基材2として、合板、中比重繊維板、集成材、木削片板、または、これらの複合材料等が好適なものとして例示できる。これらに限定されるものではない。また、溝形状としては、溝長手方向と直交する方向における断面視形状で、図1〜3に示す略U字型溝、図5に示す略V字型溝の他に、略半円形型溝、略角型溝、略台形型溝、その他の形状の溝が例示でき、木質化粧板1の使用目的及びそのデザインや外観等を考慮して決められる。溝形状もこれらに限定されるものではない。
【0028】
また、本発明の木質化粧板1の表面には、表面塗装膜4が施されている。これに用いる塗料としては、木質化粧単板3の銘木木目の外観意匠性を際だたせるために、無色透明又は着色透明の合成樹脂塗料が好適に用いられる。塗料成分は、木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等が、溝形成工程における生産ライン適性や製造効率、形成される溝の品質安定性等の観点から、好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0029】
また、木質化粧板1の表面を無塗装で仕上げる場合、木質用ワックス等で仕上げる場合もある。いずれにしても、本発明の木質化粧板1は、木質化粧単板3の表面に塗装膜4を形成した後に溝付け加工が行われ、従って溝形成時点で既に、溝部分は塗装膜4で仕上げされていることが望ましい。また、本発明の木質化粧板1は、木質基材2表面に貼着された木質化粧単板3が化粧溝6の箇所において分断されていない。木質化粧単板3は、化粧溝6の箇所の凹部Uの基材内壁面Wに沿って且つ該基材内壁面Wと密接して滑らかな連続体として設けられている。
【0030】
本発明の木質化粧板1は、溝付け加工後必要に応じて表面仕上げ塗装が施される。この場合の塗料も木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等を好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0031】
図3に本発明の木質化粧板1の第一実施形態における要部拡大断面図を示す。第一実施形態における木質化粧板1においては、溝方向と直交する方向の断面で見て略U字型形状の溝の例を示す。本例で示す略U字型溝の場合、化粧溝6の溝底部において、溝内壁6aが溝の外方へ膨出する向きの曲面が形成されており、しかも化粧溝6の上端縁角部Dにおいて、溝の内方へ膨出する向きの曲面部Kが形成されており、該曲面部Kによって、化粧溝6の上端縁角部Dに面取部Mが形成されている。この場合の面取部Mの形状は、いわゆるアール面となる。このように構成された化粧溝6は、溝方向と直交する方向の断面で見て略U字型形状の溝となる。
【0032】
本発明の木質化粧板1において、木質基材2に化粧溝6を形成する凹部Uが設けられている。木質化粧単板3は、その表面に塗装膜4が施され、前記凹部Uを形成する基材内壁面Wに沿って、且つ、前記基材内壁面Wと密接するようにして、切れ目なく滑らかな連続体として設けられている。このように、木質化粧単板3が、滑らかな連続体として設けられているので、化粧溝6の内部、底部、溝上端縁角部Dにおいて、木質基材2が露出しないので、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずる恐れがない。
【0033】
また、木質化粧単板3は、その表面に塗装膜4が施されており、その後、溝形成されており、溝形成時点で、既に、溝部分及び溝以外の部分も塗装膜4で仕上げされている。従って、必要に応じて行われる仕上げ塗装の際、化粧溝6及び溝以外の部分に、油性又は水性の着色ステイン等を用いて下地着色を施し、さらに無色透明、又は、着色透明の下地塗装、仕上げ塗装等を行っても、前記木繊維の毛羽立ち、ササクレ、バリ等が原因の着色ムラが発生することがなく、表面化粧溝及び溝以外の部分も、色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れたものとなる。従って、表面着色工程、仕上げ塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化でき、場合によっては省略も可能で、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0034】
また、特に、溝上端縁角部Dにおいて、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずることがないので、本発明の木質化粧板1を床材として用いた場合、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が原因で生じる、靴下やストッキングの破損が防止でき、また、歩行時に足裏に木繊維のササクレ等が刺さる恐れもなく、足裏歩行感に優れたものとなる。また、床材以外の化粧板として用いられた時においても、仕上がりの品質の良好なものとなる。
【0035】
図5において、本発明の木質化粧板の他の実施形態の例を示す。本例において、溝長手方向と直交する方向の断面で見て略V字型形状の溝の例を詳述する。本例で示す略V字型溝の場合、化粧溝6の上端縁角部Dに平板部Hが形成されており、該平板部Hによって面取部Mが形成されている。本例における面取部Mの形状は、平坦面からなる、いわゆる、C面となる。本例に示す化粧溝6は溝長手方向と直交する方向の断面で見て、略V字型形状の溝であり、溝内壁6aは曲面ではなく平坦面で構成されている。さらに、前記木質化粧板本体5の表面と前記面取部Mの表面とが作る角度αが、前記木質化粧板本体5の表面と略V字型溝を形成する前記溝内壁6aの表面とが作る角度βよりも小さな角度(α<β)である。
【0036】
そして、前記面取部Mの表面と溝内壁6aの表面との接点において、溝内方に向かって凸となる向きに屈曲点Pが形成されている。このように、前記屈曲点Pが形成されているので、化粧溝6を外観上シャープなV字型溝に形成するため、化粧溝6の溝幅をあえて小さくしても、前記屈曲点Pの働きで、木質化粧板本体5の表面と前記面取部Mの表面とが作る角度(α)を小さくすることが可能となり、そうすることで、溝上端縁角部Dの傾斜面がゆるやかになり、床材として使用された際、足裏に接触する時の感触がやさしくなり足裏歩行感にとって良好となる。
【0037】
上記のような構成を有する断面視略V字型形状を有する本発明の木質化粧板1においても、その表面に木質化粧単板3が貼着され、該木質化粧単板3は、表面に塗装膜4が設けられ、木質基材2の凹部Uを形成する基材内壁面Wに沿って且つ前記基材内壁面Wと密接するようにして、切れ目なく滑らかな連続体として設けられている。このように、木質化粧単板3が、滑らかな連続体として設けられているので、化粧溝6の内部、溝上端縁角部Dにおいて、さらに溝以外の部分においても、木質基材2が露出せず、しかも、木質化粧単板3で化粧され、その表面に塗装膜4が設けられているので、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずる恐れがない。
【0038】
また、化粧溝6及び溝以外の部分においても、溝形成後必要に応じて行われる仕上げ塗装工程において、油性又は水性の着色ステイン等を用いて下地着色を施し、さらに無色透明、着色透明の下地塗装、仕上げ塗装を行った際、前記木繊維の毛羽立ち、ササクレ、バリ等が原因の着色ムラが発生することがなく、木質化粧板1及び表面化粧溝6の色調が均一で色調ムラがなく、外観に優れたものとなる。従って、表面着色工程、仕上げ塗装工程が複雑な塗装工程を必要とせず簡略化でき、場合によっては省略も可能で、製造時の品質も安定することにより、製造時の作業性に優れ、コスト的にも安価なものとなる。
【0039】
また、特に、溝上端縁角部Dにおいて、木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が生ずることがないので、本発明の木質化粧板1を床材として用いた場合、前記木繊維のササクレ、毛羽立ち、バリ等の欠点が原因で生じる、靴下やストッキングの破損が防止でき、また、歩行時に足裏に木繊維のササクレ等が刺さる恐れもなく、足裏歩行感に優れたものとなる。また、床材以外の化粧板として用いられた時においても、仕上がり品質の優れたものとなる。
【0040】
本発明の木質化粧板1を作製するに際し、化粧溝6の溝付け方法は、木質基材2の表面に木質化粧単板3を貼着し、表面塗装後に型押しする方法、型押しと同時に塗装膜4を設ける方法、木質化粧単板3にあらかじめ、前工程で表面塗装膜4を設けておいて、さらに、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し凹部Uを形成しておいて、塗装膜付きの木質化粧単板を前記凹部Uの基材内壁面Wに密接するように張り付ける方法、木質基材2にあらかじめ溝加工を施し凹部Uを形成しておいて、木質化粧単板3を凹部Uの基材内壁面Wに密接するように張り付けておいて、その上から塗装膜4を施す方法等が好適な方法として例示できる。これらの製造方法の中で、木質基材2の表面に木質化粧単板3を貼着し、表面塗装後に型押しする方法が製造効率品質の安定性コスト等の面から好適である。
【0041】
いずれにしても、本発明の木質化粧板1は、木質基材2に木質化粧単板3を貼着し、表面に塗装膜4を設け、溝付け加工し、溝付け加工後必要に応じて表面仕上げ塗装が施される。この場合の塗料も木質材料用の塗料として、ウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、アミノアルキッド樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料等を例示できる。これらの中で、紫外線硬化型のウレタン樹脂塗料、アクリル樹脂塗料等を好適なものとして例示できる。しかし、これらに限定されるものではない。
【0042】
また、本発明の木質化粧板1に用いる木質化粧単板3は例えば銘木からなるスライス突板や、木質単板、ロータリーレースによって製造される単板、ハーフロータリーレースにより製造される単板等が好適なものとして例示できる。
【0043】
このほかに、銘木単板の裏面に和紙、薄葉紙、クラフト紙等の紙材料又は紙と樹脂シートとを積層した複合シートをラミネートした複合材料等も好適なものとして利用できる。また、木質単板と紙の複合材料以外に、木質単板の裏面又は表面の少なくともいずれか片方又は両面に透明で軟質の塩ビ樹脂、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂シートをラミネートした複合材料であってもよい。
【0044】
特に、木質単板の表面に樹脂シートをラミネートした複合材料の場合は、表面塗装仕上げが必要でない場合があり、塗装工程省略によって大きくコストダウンできる可能性がある。しかも、これらの紙や樹脂シートによってラミネートされた木質単板は製造時のハンドリング等によって割れる恐れが極めて低くなるので、製造工程にとって極めて安定したものとなり、コスト的にも有利なものとなる。さらに、溝付け加工時において、割れにくいので、極めてシャープで且つ深さの深い溝付けが可能となり、外観意匠性にとって優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の木質化粧板の第一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1の要部拡大断面図。
【図4】本発明の木質化粧板の溝付け加工前の木質化粧板本体を示す断面図。
【図5】本発明の木質化粧板の他の実施形態を示す要部拡大断面図。
【図6】従来の木質化粧板の断面図。
【符号の説明】
【0046】
1 木質化粧板
2 木質基材
3 木質化粧単板
4 表面塗装膜
5 木質化粧板本体
6 化粧溝
6a 溝内壁
M 面取部
K 曲面部
W 基材内壁面
U 凹部
H 平板部
P 屈曲点
α 化粧板本体表面と平板部H表面とが作る角度
β 化粧板本体表面とV字型溝内壁表面とが作る角度
D 溝上端縁角部
11 従来の木質化粧板
12 木質基材
13 木質化粧単板
14 表面塗装膜
15 木質化粧板本体
16 化粧溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材に木質化粧単板が貼着され、表面に塗装膜が設けられた木質化粧板本体の表面に、該木質化粧単板の木質繊維方向と略平行方向に化粧溝が設けられた木質化粧板であって、前記塗装膜が施された木質化粧単板が前記化粧溝部分で分断されることなく、化粧溝を形成する基材内壁面に沿うように密接し、滑らかな連続体として形成されていることを特徴とする木質化粧板。
【請求項2】
前記化粧溝は、溝底部に溝内壁が溝外方へ膨出する向きの曲面を有し、溝上端縁角部に溝内方へ膨出する向きの曲面部からなる面取部を有し、溝方向と直行する方向の断面において、溝内壁が略U字型形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。
【請求項3】
前記化粧溝は、溝上端縁角部に平板部からなる面取部を有し、木質化粧板の表面と前記面取部がなす角度が、木質化粧板の表面と溝内壁とがなす角度よりも小さく、溝方向と直交する方向の断面において、溝内壁が略V字型形状を有していることを特徴とする請求項1に記載の木質化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−190891(P2007−190891A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13768(P2006−13768)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(398051497)株式会社パル (65)
【Fターム(参考)】