説明

木造軸組構造

【課題】伝統的な軸組構造にみられる知恵を生かしつつ、木材資源や技術を取り巻く現在の情況を考慮して、耐震性、施工性、経済性等の様々なメリットを同時に得られる新規な木造軸組構造を得ること。
【解決手段】柱材41と、該柱材41に接合されて架設される横架材51とを有する木造軸組構造11において、柱材41として、上下階を貫通するように取付けられる通し柱42と、側面に横架材51が接合され頭部が露出する露頭柱41aを備え、横架材51として、各階軒高の上端部位置に架設される主横架材52,53と、該主横架材52,53との間で隙間を隔てて平行に架設される従横架材54,55とを備える。柱材41、主横架材52,53および従横架材54,55の間には嵌め込みパネル61が固定され、各柱材41と横架材51は構造用金物で接合される。力を分散させる接合部が増えるとともに、構造的バランスがよくなり、仕口等の加工は容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば耐震性、施工性、経済性等の数々のメリットを有するまったく新しい木造軸組構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組構造は、柱材などの垂直材と土台や梁などの水平材を主たる構造材として構成されている。すなわち、垂直材や水平材で建物を支える構造である。軸組構法は、枠組壁工法に比較して設計の自由度が高く、また増改築がし易いので、長期間にわたって住むのに良い家を作ることができる利点があり、また古来受け継がれてきた伝統技術という面もあって、高い需要がある。
【0003】
この軸組構法について伝統的な軸組に照らして考察してみると、構造材の接合部を増やして、できる限り力を分散させることが、強度の高い軸組を得るために有効であることがわかる。なお、接合部を増やすといっても、柱材に通し貫を固定すると、過度の荷重がかかったときに、復元不可能なめり込みが生じてしまうことがあるうえに、柱材の太さを通し貫よりも太くしなければならない。
【0004】
また、外力を平均して分散させ、特定箇所に荷重が集中しないように構造的なバランスをとることも重要であることがわかる。
【0005】
しかし、強度を高めるべく接合部を増やすことと、外力を平均して分散すべく耐力壁を偏在させないようにすることを究極まで突き詰めれば、木造軸組構造が、開口部のない単なる箱になってしまう。これでは住宅として機能を果たさないので、開口部を形成するための横架材を架設することになるが、開口部の強度が他の部分のそれよりも低くなる。
【0006】
強度の低下を抑えるためには、横架材に大断面のもの、高さ寸法の大きいものを使用しなければならない。
【0007】
ところが、このように横架材自体の強度を高めて軸組の強度を得ようとすると、横架材が重くなって横架材を支える部分とのバランスが悪くなり、却って強度が低下してしまう。また、横架材自体が重い上に、荷重を支えなければならないので、広い開口部は得られない。
【0008】
下記特許文献1には、開口部周辺の構造を水平耐力に優れたものとする技術が提案されている。これは、横架材の下方における柱材間にまぐさを固着して、まぐさの下方を開口部とするとともに、まぐさの延長線上における柱材間に、水平補強材を固定し、これら横架材とまぐさと水平補強材の表面に壁材を固定した構成である。この構成によれば、まぐさに作用する水平力を柱材と水平補強材を介して壁材に分散、吸収させることができるとされている。
【0009】
しかし、このような構成では、横架材、まぐさおよび水平補強材と壁材の接合部分に大きな負荷がかかってしまう。つまり、横架材にかかった外力は、まぐさや水平補強材の接合部分に分散されるが、壁材はそれらの接合部分の表面に貼り付けられているので、分散された荷重を確実に支持し、力を分散、吸収することは困難である。
【0010】
また、横架材等の各構造材の寸法はそれぞれ異なるので、必要な構造材の種類が多くなって、加工や施工が簡単に行えず、コストもかかるという問題点が生じる。現在の社会では熟練工が少ないので、複雑な仕口加工や建て方が敬遠されている。また、大断面の木材を調達することも容易ではない。
【0011】
この点、たとえば下記特許文献2のように、通し柱と横架材の接合に工夫を行うとともに使用する通し柱と横架材の寸法を統一しようとする提案もなされているが、縦に並べた横架材の周囲を複数本の通し柱で囲い込む構造であるので、横架材の幅寸法に対してその何倍もの太さの通し柱ができることになり、また横架材を同一高さにおいて交差させて架設することができず、本来の軸組のように自由な設計が行えないという難点がある。
【0012】
【特許文献1】特開2000−144903号公報
【特許文献2】特開平11−100899号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、この発明は、伝統的な軸組構造にみられる知恵を生かしつつ、現在の情況を考慮して、耐震性、施工性、経済性等の様々なメリットを同時に得られる木造軸組構造の提供を主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、垂直方向に延びる柱材と、該柱材に接合されて架設される横架材とを有する木造軸組構造であって、上記柱材として、上下階を貫通するように取付けられる通し柱と、側面に横架材が接合され頭部が露出する露頭柱とを有し、上記横架材として、各階軒高の上端部位置に架設される主横架材と、該主横架材との間で隙間を隔てて平行に架設される従横架材とを有するとともに、これら主横架材と従横架材の両端が、上記柱材の側面に接合され、上記柱材、主横架材および従横架材の間には、これらの幅方向の中間部に形成された溝部に全周縁が嵌め込まれる構造用パネルからなる嵌め込みパネルが固定され、各柱材と横架材が、構造用金物の固定によって接合された木造軸組構造である。
【0015】
この木造軸組構造では、通し柱同士、露頭柱同士または通し柱と露頭柱の間に、主横架材と従横架材がその両端を柱材の側面に接合した状態で架設されるとともに、柱材と横架材で囲まれる部分には、かかる力を負担する構造用パネルかなる嵌め込みパネルが、その全周縁を溝部に食い込ませた状態で嵌め込まれている。また、柱材と横架材は、かかる力を負担する構造用金物で固定されている。
【0016】
このように横架材は柱材の側面に固定されるので、横架材に長尺の材木を使用しなくともよい。このため、横架材から継手をなくすことができる。
【0017】
また、横架材は柱材の側面に固定されるので、外力を受けた時に柱材が軸方向に圧縮される力が作用することを抑制できる。このため、柱材の強度を確保し、座屈の発生を防止できる。
【0018】
しかも、上述のように横架材に継手は不要であるので、横架材自体の強度も確保できる。
【0019】
そして、この横架材は主横架材と従横架材で構成し、これらがそれぞれ柱材の側面に固定されるとともに、嵌め込みパネルが幅方向の中間部に食い込んだ状態で嵌め込まれて一体化しているので、柱材と横架材との接合部で力が分散されるとともに、これらと一体になった嵌め込みパネルにおいても力が分散される。このため、主横架材と従横架材に大断面の材木を使用しなくとも高い強度を得られる。つまり、主横架材と従横架材には、大断面や高さの高い材木を使用しなくともよく、主横架材と従横架材に同一大の材木を使用することによって、構造材の統一化に資する。
【0020】
このように大断面の材木を用いずとも横架材部分の強度を得ることができ、しかも、柱材として露頭柱を使用することで柱材部分の強度も確保できる。このため、従来は不可能であった広い開口部を得ることも可能になる。
【0021】
そして、柱材と横架材は、構造用金物で接合されるので、複雑な仕口加工は必要でない。この点から、柱材と、平行に並ぶ2本の横架材との固定部分の強度を確保できるとともに、加工自体が容易であって、接合作業も簡単である。通し貫を使用したときのような復元不可能なめり込みが発生することも防止できる。
【0022】
また、柱材と横架材の断面を同一大のものとすることもできる。このため、構造材の統一化を図ることが可能である。
【0023】
さらに、使用する柱材と横架材に大断面の材木を使用しなくてすむので、材木の使用m3数を低減することもできる。
【0024】
構造用金物による接合は、剛結合であるもピン結合であるもいずれでもよいが、いずれにしても施工は、通し柱や必要な露頭柱を建て込んでから、従横架材の固定と嵌め込みパネルの固定と、主横架材の固定とを順に行えばよく、単純工でも行える簡単な作業である。柱材と横架材の固定に平行して嵌め込みパネルの固定も行うので、軸組の完成と同時に下地も完成し、簡易迅速な施工が実現でき、工期の短縮化を図ることができる。また、床パネルや天井パネル、壁下地材等の固定も平行して行えば、さらなる迅速な施工が期待できる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、この発明によれば、主横架材と従横架材を柱材の側面に固定する構造を採用したので、接合部を増やすことでき、力の分散が行える。また、主横架材と従横架材との間には嵌め込みパネルが一体化されているので、嵌め込みパネルにおいても力の分散が行える。しかも、主横架材は、各階軒高の上端部位置に架設されるので、軸組内にバランスよく配設され得る。このため、構造的に良好なバランスを得て、特定部分に集中して荷重がかかることを防止できる。
【0026】
この結果、金物の使用等による付加価値を付けたような小手先だけの強度向上ではなく、軸組自体の構成によって強度を向上することができ、良好な耐震性を得ることができる。また、柱材や横架材は構造用金物で接合されるので、複雑な仕口や通し貫が不要であって、加工や施工が容易であるとともに、柱材や横架材として用いる材木の断面寸法を統一化することもできる。このため、施工性や経済性の点でも有利な木造軸組み構造となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、木造軸組構造の一例を示す斜視図であり、この図に示すように軸組11は、基礎21の上に配設される土台31と、柱材41と、柱材41に接合される横架材51と、土台31、柱材41および横架材51間に一体に嵌め込まれる構造用パネルからなる嵌め込みパネル61と、土台31と柱材41と横架材51等を接合する構造用金物(図示せず)とを有する。
【0028】
図1の軸組は、図2、図3に示したような外観の3階建て住宅のものであり、図2、図4に示したように、1階には一台の車両がゆったりと入る大開口の車庫を有し、2階には、台所と大面積のリビングを有する。
【0029】
図5は図4のA−A部分、図6は図4のB−B部分、図7は図4のC−C部部の構造を示す軸組図である。また、図7中、71は窓枠である。
【0030】
図8は、図1に示した軸組11から嵌め込みパネル61を取り除いて土台31と柱材41と横架材51の接合状態を分かりやすくした斜視図であり、以下、この図8も参照しながら軸組11の構造を説明する。
【0031】
まず、柱材41について説明する。
柱材41としては、上下階を貫通するように取付けられる上記通し柱42と、各階だけに入っている上記管柱43とを有し、これらには同一大・同一形状の断面を有する材木が使用される。これらの柱材41は、土台31とともに基礎21の上に固定されるが、通し柱42や管柱43のように引抜力のかかる柱材41は、基礎21に埋め込まれたアンカーボルト(図示せず)に直結される。
【0032】
そして、これら通し柱42と管柱43のうち、必要なものについては、側面に横架材51が接合され頭部が露出する露頭柱41aに設定される。
【0033】
露頭柱41aについて図9の模式図を参照して説明すると、図9にあらわされた柱材のうち、露頭柱41aは、斜線を施した通し柱101と管柱102,103である。すなわち、立設された通し柱101と管柱102,103との間に、横架材104,105が、その両端を通し柱101や管柱102,103に対して左右方向から接合して固定されている。また、通し柱101や管柱102間に横架された横架材104や露頭柱41aの上には、別の管柱103が立設され、この管柱103に対して、別の横架材105が、その両端を左右方向から接合して固定される。このように、土台106と通し柱101と管柱102,103と横架材104,105、また通し柱101と管柱102,103と横架材104,105で囲まれた方形状の空間が複数形成されている。そして、上記横架材104,105は、一本もので形成され、継手は設けられていない。
【0034】
このような露頭柱41aと継手のない横架材104,105を有すると、軸組に係る荷重は、露頭柱41aとしての通し柱101および管柱102,103と横架材104,105との多数の接合部に分散され、分散された荷重は、通し柱101や管柱102,103でしっかりと支持されて、上記空間は堅固なものとなり、強度の高い軸組を得ることができる。
【0035】
前記露頭柱41aとしての通し柱42や管柱43、その他の必要な通し柱42や管柱43は、所望の間取りに基づいて適宜配設されるようにすベく、所定の長さに形成され、横架材51を接合する部位やその他の部位には、他の部材との接合に必要な所定の加工がなされる。
【0036】
つぎに、横架材51について説明する。
上記横架材51としては、各階軒高の上端位置、すなわち一般に胴差しや梁などを架設する位置に架設される主横架材52,53と、この主横架材52,53との間に隙間を隔てて平行に架設される従横架材54,55とを有する。
【0037】
主横架材52,53と従横架材54,55は、柱材41と同一大・同一形状の断面を有する材木を使用するとよいが、主横架材52,53のうち、軸組11の外周部に配設される主横架材52と土台31には、たとえば柱材が105角
や120角である場合に、それよりも大きい105×120、120×135というように、断面のたてよこa,bのうちの一方が同一寸法であって他方がそれよりも大きい寸法となる材木を使用する(図10,18参照)。
【0038】
すなわち、図10(a)に示したように、長方形断面の主横架材52や土台31を横長にして用い、一方の側面を柱材41の側面に面一になるように接合する。これは、床パネルを固定する際の便宜のためのである。
【0039】
軸組11の内部に配設される主横架材53は、柱材41と同一大・同一形状の断面を有する材木が使用されるが、たとえば高さの高いものを使用することもできる。
【0040】
一方、軸組11の外周部のものでも、従横架材54については柱材41と同一大・同一形状の断面を有する材木を用いる。このため、図10(b)に示したように従横架材54の両側面は、柱材41の側面と面一になる。
【0041】
従横架材54,55は、軸組11の外周部であるか、内部であるかによって、架設高さが異なるので、分けて説明する。
【0042】
まず、軸組11の外周部の従横架材54について説明すると、開口、すなわち窓枠71を設けない部分では、各階軒高を3等分するような適宜の高さに架設位置が設定される。すなわち、図8に示したように、土台31の上方と、1階軒高の上端部位置の下方と、1階軒高の上端位置の上方と、2階軒高の上端部位置の下方と、2階軒高の上端位置の上方と、3階軒高の上端部位置の下方とに、主横架材52から所定高さの隙間を隔てた位置に架設される。
【0043】
一方、窓枠71を嵌める部分では、従横架材54は、窓枠71の上端または下端を受ける位置に架設される(図7参照)。
【0044】
つぎに内部の従横架材55について説明すると、内部の従横架材55は、その下端に天井パネルを固定したときに天井ができるような高さに架設される。
【0045】
また、軸組11の内部の主横架材53と従横架材55は、可能な限り露頭柱41aに接合される。
【0046】
このような主横架材52,53と従横架材54,55は、所望の間取りに基づいて適宜配設されるようにすベく、所定の長さに形成され、柱材41と接合する部位その他の部位には、他の部材との接合に必要な所定の加工がなされる。
【0047】
つぎに嵌め込みパネル61について説明する。
嵌め込みパネル61は、柱材41や横架材51に対して食い込んだ状態で一体的に接合される。すなわち、上述の他の部材との接合に必要な加工の一つとして、柱材41と横架材51には、嵌め込みパネル61を接合するための溝部44,56が形成される。溝部44,56は、図10にも示したように、柱材41と横架材51の幅方向の中間部に、嵌め込みパネル61の周縁が嵌合対応する幅で適宜の深さに設定されている。
【0048】
図11は、図1におけるイ部分を示す正面図である。すなわち、軸組11の外周部の柱材41と主横架材52と従横架材54に囲まれた部分を示す正面図であり、この図にみられるように嵌め込みパネル61の全周縁が、柱材41と横架材51に食い込んだ状態で嵌め込まれる。
【0049】
嵌め込みパネル61には、かかる荷重を負担し得る必要な強度を有する所定厚のものが使用され、両面には間柱62が予め固定されている。間柱62は、主横架材52と従横架材54の間に嵌まり込む長さで、柱材41よりも小断面のものが使用され、図12に示したように、所望の間取りに基づいて、両面大壁、大壁および真壁、両面真壁となるように、嵌め込みパネル61の面からの高さが適宜設定される。
【0050】
また、柱材41間の距離が長くなる部位では、図13に示したように、主横架材52と従横架材54を両者間の隙間を隔てて連結する連結柱57が、柱材41間の距離に応じて1本または複数本離間固定される。この連結柱57は、柱材と同一大・同一形状の断面を有する材木で形成される。また、両側面に嵌め込みパネル61の周縁に食い込まれる溝部57aを有するとともに、両端部には、図示しないが構造用金物を固定するための必要な加工が施されている。
【0051】
なお、図11、図12、図13中、仮想線であらわされた75は、壁下地材である。
【0052】
図14は、図1におけるロ部分の分解斜視図である。すなわち、軸組11の内部の主横架材53と従横架材55と嵌め込みパネル61を示す分解斜視図であり、この図に示すように嵌め込みパネル61の両面には、主横架材53と従横架材55の間に嵌まり込む長さの間柱62が予め固定されるとともに、主横架材53と従横架材55の長さ方向の中間部には、柱材41と同一大・同一形状の断面を有する材木からなる連結柱57が必要に応じて固定されている。この連結柱57にも、嵌め込みパネル61の周縁を食い込ませる溝部57aと、構造用金物を固定するための必要な加工が施される。
【0053】
図15が軸組11の内部の梁部分、すなわち主横架材53と従横架材55と嵌め込みパネル61を有する部分の正面図で、図16がその横断面図である。必要があれば、上記図11、図12に示したように、表面に適宜のパネルを固定して、補強や防音や断熱などの所望の作用効果を得られるようにすることもできる。
【0054】
また、上記のようにして固定される主横架材53と従横架材55には、床パネル81や天井パネル82が固定される。すなわち、図17に示したように、主横架材52,53の上面には床パネル81が直接固定され、従横架材55の下面には天井パネル82が直接固定されている。図17は1階部分または2階部分の主横架材と従横架材部分を示すが、この図に示したように軸組11の外周部の主横架材52は横長にして固定されているので、柱材41よりも内側に突出する部分が得られる。このため、床パネル81が強固に固定でき、同時に火打ちを省略できる。土台に対しては図5、図6に示したように、床パネル82が固定され、3階軒高の上端部位置に架設される主横架材52には、図5、図6、図7に示したように、床パネル82と同等の構造用パネルからなる結合パネル83が固定され、火打ちが省略される。なお、図中、75は壁下地材である。
【0055】
つぎに構造用金物について説明する。
構造用金物には、周知のさまざまな接合金物が使用される。図示はしないが、構造用金物には、鋼板等の金属製のもの以外にも、鋳鉄製、樹脂製のものなどもある。剛結合するもののほか、復元力を有してピン結合するものであるもよい。また、必要に応じて補強用の金物も付加的に使用できる。
【0056】
以上のような構造材からなる軸組11は、図18から図21に示したように、柱材41と、横架材51と、連結柱57と、嵌め込みパネル61と、壁下地材75と、床パネル81と、天井パネル82と、結合パネル83と、構造用金物を、下の方から順に接合すれば完成する。
【0057】
すなわち、まず、図18に示したように、基礎21の上に土台31と通し柱42を固定する。通し柱42は基礎21のアンカーボルトに対して構造用接合金物としての柱脚金物で直接固定される。なお、土台31は横長になるように寝かせて固定する。図中一点鎖線が通し柱42の建て込み位置であり、二点鎖線が軸組11の外周部における主横架材52を固定する位置である。
土台31と通し柱42を固定すると図19に示したようになる。
【0058】
つづいて、図20に示したように、管柱43と主横架材52,53と従横架材54,55と嵌め込みパネル61と床パネル81と天井パネル82と結合パネル83を下に位置するものから順に、構造用金物と相互の嵌め込みにより固定する。
【0059】
具体的には、土台31の上に管柱43を構造用金物によって固定するとともに、通し柱42と管柱43と土台31に形成された溝部56に、嵌め込みパネル61の周縁を嵌め込む。次に、土台31の上方に架設される従横架材54,55を通し柱42と管柱43の間に構造用金物を用いて固定し、同時にその従横架材54,55に形成された溝部56を嵌め込みパネル61の上端側の周縁に嵌合する。
【0060】
開口部以外の部分では、土台31の上方に架設された従横架材54の上にも嵌め込みパネル61を同様にして固定する。
【0061】
次に、1階軒高の上端部位置の下方に、従横架材54を構造用金物により固定する。開口部以外の部分では、嵌め込みパネル61の上端に嵌合して固定する。
【0062】
つづいて、その従横架材54の上に、嵌め込みパネル61を上記の場合と同様にして固定する。
【0063】
このとき、連結柱57を必要とする部分には、図21に示したように、従横架材54の上に連結柱57を接合用金物で垂直に固定する。この連結柱には溝部57aが形成されているので、この溝部57aにも嵌まるように嵌め込みパネル61を固定する。そして、1階軒高の上端部位置に、主横架材52を構造用金物によって固定する(図20参照)。このとき、軸組11の外周部の主横架材52は、図17に示したように横長になるように寝かして固定する。そして、軸組11の内部の従横架材55と嵌め込みパネル61と主横架材53を固定したのち、従横架材55の下面に天井パネル82を固定するとともに、主横架材52,53の上面には床パネル81を固定する。天井パネル82や床パネルの固定は、電気等の必要な設備の施工時に行うこともできる。
【0064】
このようにして全ての構造材を接合し、固定する作業を繰り返すことによって、軸組11は完成する。そして、開口部以外の部分には嵌め込みパネル61が固定されているので、下地も同時に完成することになる。
【0065】
このようにして構成された軸組11では、柱材41と横架材51の接合部が、各階軒高の上端部に1本の横架材を架設した場合に比して、図22の模式図に示した如く、接合箇所が著しく増加し、また、柱材41間に架設された主横架材52,53と従横架材54,55の間に一体的に嵌め込まれた嵌め込みパネル61の存在によって、力を良好に分散させることができる。
【0066】
しかも、主横架材52,53を架設する箇所は、各階軒高の上端部であるので、主横架材52,53と縦横架材54,55と嵌め込みパネル61からなる高強度の構成は、均等に配設できる。このため、特定箇所に過度の荷重がかからないようすることが可能である。嵌め込みパネル61も同様に、バランスよく均等に配設され、耐力壁としての機能を果たす。いわば、箱の集合体のような構造とすることができる。
【0067】
また、柱材41と横架材51と連結柱57の接合には、構造用金物を使用し、通し貫のような構法を用いないので、めり込みの発生を抑えることができる。
【0068】
これらの結果、前述のように広いリビングや車庫を有する軸組11であっても、強度の向上を図り、耐震性を高めることができる。
【0069】
強度向上の効果は、通し柱42や管柱43を露頭柱41aとして、多数の接合部に力を分散させ、分散させた荷重を、通し柱42や管柱43の露頭柱41aでしっかりと支持するようにしたことによって助長される。
【0070】
しかも、そのような露頭柱41aに対して、軸組11の内部に架設される主横架材53と従横架材55を接合するので、更に強度を高めることができる。
【0071】
また、柱材41等の接合に構造用金物を用いて通し貫の構法を使用しないことと、主横架材52,53と従横架材54,55と嵌め込みパネル61によって高強度の開口部を得られる。このため、土台31と柱材41と横架材51の断面寸法の画一化、あるいは上述のように断面のたてよこのうちいずれか一方の寸法を同一とすることによってこれまで不可能であった2種類までに低減することができる。しかも、使用する柱材41と横架材51などに大断面の材木を使用しなくてすむので、材木の使用m3数を低減することもできる。
【0072】
さらに、横架材51に継手が不要であるとともに、仕口加工も不要となって、加工の負担を軽減できる上に、プレカット加工が安価に行える。
【0073】
この結果、材料調達が容易になるとともに、加工も容易になる。そのうえ、個々の柱材や横架材の重量も低くなって、運搬や施工が簡単になる。このため、工期の短縮化を図ることもできる。
【0074】
以上のように、耐震性はもちろんのこと、施工性が良好で経済性にも優れる軸組11が得られる。
【0075】
また、軸組11の外周部における従横架材54の高さが窓枠の上端や下端を受ける位置に設定されているので、窓枠下地材を別途に設ける必要もなく、施工性、経済性の点で有利になる。
【0076】
また、天井空間は、主横架材53と従横架材55と嵌め込みパネル61、それに床パネル81と天井パネル82または結合パネル83とで形成され、火打ち梁や根太等を必要とすることもないので、比較的広い天井空間を得ることができる。このため、換気や空調、電気等の設備が高い自由とで施工でき、作業自体の容易である。そのうえ、天井空間は、主横架材53と従横架材55と連結柱57と嵌め込みパネル61によって仕切られ細分化されるので、その仕切りによって音の伝播を抑制できる。この結果、部屋間の防音性を高め、快適な生活空間を得ることができる。
【0077】
さらに、軸組11では、軸組11の内部に可動式の間仕切りパネルを使用することによって、間取りの変更に容易に対応できる。つまり、枠組壁工法にはない、設計の自由度の高さや増改築の容易性といった利点を有する。
【0078】
この発明の構成と、上記一形態の構成との対応において、
この発明の柱材は、上記一形態における通し柱42と管柱43に対応し、
床パネルは、床パネル81と結合パネル83に対応するも、
この発明は上述の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】軸組の斜視図。
【図2】図1の軸組を有する住宅の正面図。
【図3】図1の軸組を有する住宅の側面図。
【図4】図1の軸組を有する住宅の各階の平面図。
【図5】図4のA−A部分の軸組図。
【図6】図4のB−B部分の軸組図。
【図7】図4のC−C部分の軸組図。
【図8】嵌め込みパネルを省略した軸組の斜視図。
【図9】露頭柱を説明する模式図。
【図10】柱材と横架材の接合部分の斜視図。
【図11】図1のイ部分の拡大図。
【図12】嵌め込みパネルの横断面図。
【図13】図1のロ部分の分解斜視図。
【図14】軸組の内部における梁部分の正面図。
【図15】軸組の内部における梁部分の横断面図。
【図16】柱材と横架材の接合部分の断面図。
【図17】柱材と横架材の接合部分の断面図。
【図18】施工手順を示す説明図。
【図19】施工手順を示す説明図。
【図20】施工手順を示す説明図。
【図21】施工手順を示す説明図。
【図22】作用状態を説明する模式図。
【符号の説明】
【0080】
11…軸組
41…柱材
41a…露頭柱
42…通し柱
43…管柱
44…溝部
51…横架材
52,53…主横架材
54,55…従横架材
56…溝部
57…連結柱
57a…溝部
61…嵌め込みパネル
71…窓枠
81…床パネル
82…天井パネル
83…結合パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直方向に延びる柱材と、該柱材に接合されて架設される横架材とを有する木造軸組構造であって、
上記柱材として、上下階を貫通するように取付けられる通し柱と、側面に横架材が接合され頭部が露出する露頭柱とを有し、
上記横架材として、各階軒高の上端部位置に架設される主横架材と、該主横架材との間で隙間を隔てて平行に架設される従横架材とを有するとともに、
これら主横架材と従横架材の両端が、上記柱材の側面に接合され、
上記柱材、主横架材および従横架材の間には、全周縁がこれらの幅方向の中間部に形成された溝部に嵌め込まれる構造用パネルからなる嵌め込みパネルが固定され、
各柱材と横架材が、構造用金物の固定によって接合された
木造軸組構造。
【請求項2】
前記主横架材の上面に、構造用パネルからなる床パネルが固定されるとともに、前記従横架材のうち、軸組の内部に位置する従横架材の下面に、構造用パネルからなる天井パネルが固定された
請求項1に記載の木造軸組構造。
【請求項3】
前記従横架材のうち、軸組の外周部に位置する従横架材が、取付ける窓枠の上端または下端を受ける位置に設けられた
請求項1または請求項2に記載の木造軸組構造。
【請求項4】
前記主横架材と従横架材との間に、両者間の隙間を保って連結する連結柱が固定され、
前記構造用パネルの周縁が連結柱の側面における幅方向の中間部に形成された溝部に嵌め込まれた
請求項1から請求項3のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項5】
前記主横架材および従横架材が、露頭柱に接合された
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項6】
前記各柱材および横架材の断面における少なくとも縦または横の寸法が同一である
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項7】
前記各柱材および横架材の断面が同一寸法である
請求項1から請求項5のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。
【請求項8】
前記主横架材のうち、軸組の外周部に位置する主横架材が、その断面形状を横長にするように取付けられ、上面に構造用パネルからなる床パネルが直張りされた
請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の木造軸組構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−63809(P2008−63809A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242364(P2006−242364)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(591000757)株式会社アクト (20)
【Fターム(参考)】