説明

材料の特性評価のための装置及び方法

装置および方法は、物体の構成のより良好な判定(測定)を可能にするために物体から放射線相互作用データを得るために表されている。放射線ソースと放射線検出器システムは、透過放射線及び散乱放射線の両方を集めるために利用され、散乱放射線は好ましくは少なくとも片方の前方散乱モードからの放射線を含む。検出器システムは、入射放射線に関し、分光学的に分解可能な情報を検出して集めることができる。各々の強度データセットは、ソースのスペクトル範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって分解され、このデータはそれから、物体の構成のより良好な判定(測定)を可能にするために数値的に処理され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料の特性評価のための装置及び方法に関する。
【0002】
本発明は特に、物体の内部在中物及び/又は構成に関する情報を得るのに望ましい、物体を走査するX線又はガンマ線などの高エネルギー放射線を利用している装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、例えば、液体又は液体サンプルその他を含む多数の構成要素又は材料からなる物体を含んで、例えば、同定(識別)目的、在庫管理目的、変化、特に時間とともに劣化する変化の監視のため、あるいはセキュリティ又は危険物又は禁制品の検出のための状況、例えば制限された領域へ入る又は制限された領域から出るために手荷物をふるい分けるため、物体の内部在中物及び/又は構成についての情報を得るのに望ましいと思われる状況に関して、特に有用である。
【0004】
X線吸収は、三次元空間に各々関連してその内容又は構成要素の何らかの形で表象画像を生成し、相応しい構成の一部の表示を得るための物体のスクリーニングの基準として用いられてきた。より厚い又は高密度の物体は、それこそX線ビームを減衰させることになる。適切な検出器及び適切なソースを用いることにより、物体の吸収又は物体のセットに基づく画像の形でスクリーニング中の品目のX線撮影が生成され得る。
【0005】
物体の材料含有量又は走査されている構成要素について付加的情報を与えるために透過X線からの分光学的情報が使えることはよく知られている。あらゆる材料のX線吸収特性が分光学的に異なり、この影響は特に原子番号に依存することは公知である。これは、X線放射のフル・スペクトルから別々に低エネルギーバンド及び高エネルギーバンドを識別することができるデュアルバンド又はデュアルエネルギー検出器の開発につながった。ごく最近では、より効果的な透過X線に関する分光学的情報を分解することができる検出器の開発は、より広域のバンドにわたって区別し、より多くの複数の画像を生じさせる装置の開発につながった。例えば、米国特許公報第5943388号は、少なくとも3つのエネルギーバンド全域の画像にテルル化カドミウム検出器を使用するシステムを記載しており、少なくとも3つの画像を作り出す。
【0006】
このようなシステムは、特に物体が透過パスに多数の構成要素又は材料を含む単にスペクトル全体の平均強度だけを示している広域のスペクトルのモノクロ画像に示されるのと関連して外部からの情報の整理を援助することができる、分光学的エネルギー分解能を有する透過X線像の提示を可能にする。それらは材料特性情報の派生を可能にするような方法でデータを必ずしも集めない。そうすることは、より効果的に望ましい。
【0007】
この分解能についてさえ、この種の装置は、X線経路において重畳される物体によって、まだ混同され得る。更に、それらは、通常、物体の結晶又は多結晶性質に関する情報を伝えない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
多結晶材料はX線を散乱させ、材料によって吸収されなかったX線の大部分が散乱して、検出器で受け取られなかったため、結果として生じるX線画像はこの種の多結晶材料をほとんど検出することができない。多くの脅威品目は、本来は多結晶であり、特にCP4、RDX、PETN及びその占有製剤などのプラスチック爆薬、薬などは従って、従来のX線システムを用いて検出するのが困難であり、これはセキュリティX線スクリーニングなどに見られるように残念なことである。
【0009】
米国特許公報第5313511号は、デュアルエネルギー検出器、後方散乱ビーム及び前方散乱ビームを使用して検出される透過ビームに対して別々の画像を取り出すシステムを概説する。前方及び後方散乱するビーム画像は、強度情報だけを含んで、より正確な画像化及び材料識別のための透過画像と結合され得ない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る装置は、以下を有して提供される:
放射線源(ソース)と、その間で走査ゾーンを規定し、走査ゾーンにおける物体との相互作用の後で入射放射線に関する情報を使用中に集めるために間隔を置かれ、入射放射線について分光学的に分解可能な情報を検出して収集することができる放射線検出器システムと、を含み;
前記放射線検出器システムは、物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために配置される第1の検出器手段と、物体との散乱する相互作用の後において更なる入射放射線強度データセットを集めるために配置される、少なくとも一つの更なる検出器手段と、
を含み;
そして、装置は、前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解するように構成される第1のデータ処理モジュールと、
前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって更なる強度データセットを分解するように構成される少なくとも一つの更なるデータ処理モジュールと、
を更に含む。
【0011】
本発明によれば、透過データセット及び少なくとも一つの更なる散乱するデータセットは、物体の構成についての情報を決定するためにソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって分光学的に分解されることによって処理される。更なる散乱するデータセットは、特に好ましくは、適切な更なる検出器によって集められる前方散乱強度データのデータセットを含む。前方散乱強度データは、例えばコヒーレントに散乱する強度データ及び/又はインコヒーレントに散乱する強度データである可能性がある。
【0012】
可能な実施態様において、複数の更なるデータセットは、複数のコヒーレントに及び/又はインコヒーレントに前方/及び又は後方散乱するモードを集められ得る。例えば、複数の更なる検出器手段は、物体を伴う複数の異なる散乱する相互作用の後において複数の更なる強度データセット入射放射線を集めるために配置され得、上記に記載されるように、この種の各々の強度データセットが更なるデータ処理モジュールによって処理される。このような場合、複数の更なるデータセットのうちの少なくとも1つは、好ましくは前方散乱する強度データのデータセットである。前方散乱する強度データは、例えば、コヒーレントに散乱する強度データ及び/又はインコヒーレントに散乱する強度データであってよい。
【0013】
検出器システムは、それがソースのスペクトルにわたり入射放射線を複数の別々のエネルギーバンドに同時に区別するのに適しているという意味では入射放射線について分光学的に分解可能な情報を検出して、収集することができる。例えば、検出器システムは、入射放射線の、このような複数のエネルギーバンドへの同時分化が可能なソース・スペクトルの少なくとも一部にわたって分光学的に多様な反応を示す。データ処理モジュールは、結果として得られる強度データセットをこの種のエネルギーがソースのスペクトルにわたって段階区分する少なくとも3つに各々分解するようにシステムのこの特徴を利用するのに適している。
【0014】
本発明に従って、第1の検出器手段は、透過放射線の第1の強度データセットを集めるために配置され、少なくとも一つの更なる検出器手段は、散乱される、好ましくは前方散乱強度データの更なる強度データセットを集めるために配置される。前方散乱強度データは、コヒーレントに散乱する放射線及び/又はインコヒーレントに散乱する放射線から集められ得る。
【0015】
少なくとも3つのエネルギーバンドにわたってスペクトル的に分解されるときでも、これはちょうど単独で吸収(透過)によって提供される情報を使用するに際してそれより関連した情報を獲得する。そのデータを、存在が公知の、また少なくとも3つのエネルギーバンドにわたってスペクトル的に分解される散乱データと結合することによって、詳細な情報は、対象となる材料を識別するために利用できる。散乱データ、透過データの両者は、この点に関してはスペクトル的に重要である。透過データを前方散乱か後方散乱と結合する、又は全3つ(その全ては、スペクトル的に分解される)を結合しさえすることは、具体的な識別により良好な方法論を提供する。
【0016】
複数の散乱するデータセットは、集められ得る。更なる散乱するデータセットは、前方散乱及び/又は後方散乱を含むことができる。いくつかのアプリケーションのため、多数の前方散乱モードを伴う他の透過アプリケーションのために、そして、前方及び後方散乱を伴う一部の透過アプリケーションのために、透過(率)及び単独での単一前方散乱などの単一散乱モードを使用することは、望ましいかもしれない。実施例はこれらの能力を有して以下述べられるが、本発明の一般性はこのことにより制限されない。
【0017】
このように、本発明の好ましい実施例によれば、以下を含んで、物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る装置が提供される:
放射線源(ソース)と、その間で走査ゾーンを規定し、走査ゾーンにおける物体との相互作用の後で入射放射線に関する情報を使用中に集めるために間隔を置かれ、入射放射線について分光学的に分解可能な情報を検出して収集することができる放射線検出器システムと、を含み;
前記放射線検出器システムは、物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために位置される第1の検出器手段と、物体との前方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第2の強度データセットを集めるために位置される第2の検出器手段と、物体との後方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第3の強度データセットを集めるために位置される第3の検出器手段と、
を含み;
そして、前記装置は、前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解するように構成される第1のデータ処理モジュールと;
前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第2の強度データセットを分解するように構成される第2のデータ処理モジュールと;
前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第3の強度データセットを分解するように構成される第3のデータ処理モジュールと、
を更に含む。
【0018】
本発明の装置は有利に、任意の物体を、そして例えば同時に又は密接に、連続的に、透過放射線及び少なくとも一つの散乱検出器位置への散乱放射線の強度データを、このようなデータを複数のエネルギー箱(グループ分け概念箱)に分解するために、生成することができる。入射放射線の吸収及び入射放射線の散乱は、エネルギーで特徴的に変化することができる特有の材料挙動である。
【0019】
本発明が動作の特定の理論によって制限されないにもかかわらず、電離放射線を伴う物質相互作用は、綿密に制御されたシステム配置のための文献上やインターネットで利用できる良好な予測ツールで周知である。10keV〜160keVのエネルギーを有する光子のために主に寄与している物理的な方法は、光電効果、トンプソン(コヒーレントな)散乱及びコンプトン(インコヒーレントな)散乱である。多くの材料にとってコンプトン(インコヒーレントな)散乱は、特に重要な前方散乱モードである。
【0020】
従って、原則として、数値的にエネルギー分解された強度データセット、被検物体又は関連のある構成要素を含む材料の挙動の特性のこのような情報分析から得るどちらもが分析することが可能であることになり、被検物体の構成に関する情報を与える。
【0021】
したがって、より完全な好ましい実施態様において、第1のデータ処理モジュールは、更に、少なくとも一部の分解されたエネルギーバンドにわたってエネルギー分解された第1のデータセットを分析し、そこから被検物体及び/又は被検物体を含む材料の放射線吸収挙動に特有の情報を数値的に導き出す分析モジュールを含むことができる。
同様に、更なるデータ処理モジュールは、少なくとも一部の分解されたエネルギーバンドにわたってエネルギー分解された更なるデータセットを分析して、そこから数値的に被検物体及び/又は被検物体を含む材料の放射線散乱挙動に特有の情報を導き出す分析モジュールを更に含むことができる。
【0022】
透過放射線のための、そして、例えば好ましくは前方散乱放射線を含む散乱放射線の少なくとも一つのモード、例えば望ましいケースでは前方散乱放射線と後方散乱放射線のための強度データセットは、密接に一致して例えば実質的に同一であるそれぞれの複数のエネルギー箱一つ以上に、好ましくは分解される。
【0023】
透過放射線用に強度データセット、そして、散乱放射線用に、例えば望ましいケースでは前方散乱放射線と後方散乱放射線は、材料組成についてより詳細な情報を与えるため、又は、物体の内容又は構成のより詳細な画像を与えるために、結合することができる。情報は、エネルギー箱のあらゆる組合せ全体にデータセットのあらゆる組合せからも、このような方法で結合され得る。データセットが少なくとも一部で範囲が密接に一致して例えば実質的に同一であるエネルギー箱に分解される所で、組合せは特に促進される。このように、分析モジュールは、好ましくは、被検物体及び/又は被検物体を含む材料の放射線散乱挙動に特有のこのような組合せ分析情報から数値的に導き出す一つ以上の分解されたエネルギーバンドにわたって数値的に一緒に複数のエネルギー分解されるデータセットを分析する手段を含む。
【0024】
同様に、装置が複数のエネルギー分解されたデータセットに基づいて画像の生成のために更に修正される場合、これらは少なくとも一部の解決されたエネルギーバンドにわたって結合される複数のエネルギーを分解されたデータセットから強度の表現で作られる組合せ画像を含むことができる。この装置は、好ましくは、複数のエネルギー分解されたデータセットに基づいて画像を生成し、特にこの種の組合せ画像を生成する画像化モジュールを含む。
【0025】
類似によって、本発明が提供する本発明の更なる態様に従って、物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る方法は:
放射線源(ソース)と、その間で走査ゾーンを規定するために間隔を置かれ、前記ソースのスペクトルの少なくとも一部分にわたってスペクトル的に分解可能な入射放射線に関する情報を検出し収集することのできる第1の検出器手段及び少なくとも一つの更なる検出器手段を有する放射線検出器システムとを提供するステップと;
物体を中に配置して、これにより前記走査ゾーンに入れる/通すことに関連して、物体の移動を引き起こすステップと;
物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために第1の検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと;
物体との散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の更なる強度データセットを集めるために少なくとも一つの更なる検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと;
複数の、好ましくは前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解し、好ましくは更に、被検物体の放射線吸収挙動に特有の情報を導き出すために前記分解されたデータを数値的に処理するステップと;
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記更なる強度データセットを分解し、好ましくは更に、被検物体の放射線吸収挙動に特有の情報を導き出すために前記分解されたデータを数値的に処理するステップと、
を含む。
【0026】
望ましくは、複数の更なるデータセットは、例えば、前方散乱及び/又は後方散乱を含む複数の更なる検出器から集められる。いくつかのアプリケーションのため、後方散乱を伴う他の透過アプリケーションのために、そして、前方及び後方散乱を伴う一部の透過アプリケーションのために、透過(率)及び前方散乱を使用することは、望ましいかもしれない。
【0027】
このように、類似によって、また本発明が提供する好ましい実施態様に従って、物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る方法は:
放射線源(ソース)と、その間で走査ゾーンを規定するために間隔を置かれ、前記ソースのスペクトルの少なくとも一部分にわたってスペクトル的に分解可能な入射放射線に関する情報を検出し収集することのできる第1、第2及び第3の検出器手段を有する放射線検出器システムとを提供するステップと;
物体を中に配置して、これにより前記走査ゾーンに入れる/通すことに関連して、物体の移動を引き起こすステップと;
物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために第1の検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと;
物体との前方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第2の強度データセットを集めるために少なくとも1つの第2の検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと;
物体との後方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第3の強度データセットを集めるために少なくとも1つの第3の検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと;
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解し、好ましくは更に、被検物体の放射線吸収挙動に特有の情報を導き出すために前記分解されたデータを数値的に処理するステップと;
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第2の強度データセットを分解し、好ましくは更に、被検物体の放射線散乱挙動に特有の情報を導き出すために前記分解されたデータを数値的に処理するステップと;
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第3の強度データセットを分解し、好ましくは更に、被検物体の放射線散乱挙動に特有の情報を導き出すために前記分解されたデータを数値的に処理するステップと、
を含む。
【0028】
好適な方法機能は、本文献において記載されている好適な装置機能及びその逆の場合も同じく当業者によって推定されるであろう。
【0029】
より正確な材料識別能力を提供する手段として、好ましくは少なくとも一つの前方散乱モード及び例えば複数の前方散乱及び/又は後方散乱モードを含む、吸収及び散乱放射線情報を利用することが本発明の目的である。望ましくは、データは、エネルギー箱の適切な組合せ全体のデータセットの適切な組合せから、結合した形で数値的に処理される。その組合せは、データセットが密接に対応するエネルギー箱に分解される所で、特に促進される。
【0030】
物体は、単に画像化のためのデータを生成するだけよりはむしろ、構成(組成)に特有の情報が数値的に導き出され得る強度データセットを生成することにある。
【0031】
本装置は、このように単純なビーム・ジオメトリだけを必要とし、入射放射線の単純なペンシルビームを生じさせるためにコリメートされるソースにより操作できる。単一で入射X線のコリメートされたペンシルビームからなる単純な装置の使用で、エネルギー選択検出器は、ビームが物体を通過するときに、X線ビームの強度がエネルギーによってどのように変化するかについて見ることが必要なだけとなる。好適なケースにおいて、装置は、放出ペンシルビーム及び方法を作り出すためにソース放射線をコリメートするコリメータは、この種のビームの使用を含む。
【0032】
単一の装置及び/又は前述の方法に従って、そして好ましくは同時にまたは少なくとも密接に連続して、物体を介して直接に透過されるソースからの放射線に対する強度データと、物体によって散乱されるソースからの放射線に対する強度データとの両方を用いて、本発明のユーザが収集することが可能であるという点で、構成に特有の情報の派生が可能にされる。更に、データのこれらのセット各々は、少なくとも3つのエネルギーバンド全域でエネルギー分解されるデータセットに分解される。例えば、より良好な材料特性評価を与えるために、対応するエネルギー箱で組み合わさることによって、分解されたデータセットは、別々に、かつ、結合して、数値的に処理され得る。
【0033】
本発明の装置の第1の検出器手段は、透過放射線を集める。更なる検出器手段は、一つ以上の散乱相互作用から散乱放射線を集める。例えば、第2の検出器手段が前方散乱を検出し、かつ/又は第3の検出器手段が後方散乱を検出する。第2の検出器手段は、前方散乱を検出するため、オブジェクト・ソース線から適度の角度/位置になるように配置される。これは、所与の散乱ジオメトリに対し強度データを集められ得る。これは、第2のデータ処理モジュールによって複数のエネルギーバンド全域で分解される。第3の検出器手段は、後方散乱を検出するため、オブジェクト・ソース線から適度の角度/位置になるように、X線ソースと物体の間で提供される。これは、第3のデータ処理モジュールによって複数のエネルギーバンド全域で分解される。第2、第3のデータ処理モジュールの分解されたエネルギーバンドは、主に第1のデータ処理手段のエネルギーバンドに対応する。
【0034】
前方散乱光子のエネルギーは、Eph=hc/λによって与えられ、ここで、hはプランク定数、cは光速である。本発明に従って、波長及びジオメトリを伴う強度の変化は、透過又は散乱強度データセットのために決定され得る。電離放射線を伴う物質相互作用は周知で、材料組成情報がエネルギー分解されたデータセットから数値的に導き出せることによって、利用できる関係が数値的に確立されている。
【0035】
当然のことながら、第1及び更なる、例えば第1、第2、第3の検出器手段を含む検出器システムについて、以上言及がなされ、これは、本発明に従う装置が透過放射線強度を測定するためのソースと物体に直系(一直線上)の第1位置における検出能力と、散乱強度を測定するためのこの種の直系から外れた少なくとも一つの検出能力、例えば望ましいケースでは少なくとも一つの前方散乱位置、及びより好ましくは少なくとも一つの前方散乱位置及び少なくとも一つの後方散乱位置での散乱強度を測定するためのこの種の直系から外れた二つの更なる検出能力を提供することを意味するにすぎない。
【0036】
特に、物理的に離散的で、構造を切り離すために透過ビーム及び前方散乱を検出するための第1及び第2の検出器手段の必要条件がない。本発明は、また、複合検出器の領域又は部分が直接透過されてオフライン散乱放射線の検出のために両方とも一体的に提供された第1及び第2の検出器手段用の単一の複合検出器システムを例えば含む。この種の検出器は、同時に透過されて前方散乱する情報を集めることができる。同様に、本発明は、適切なラスタ・スキャンによって連続して密接に第1及び第2のデータセットの両方を構成する第1及び第2の検出器手段用の単一の検出器を含むことができる。このような場合においては、装置が、何らかの形で、ソースと物体に直系(一直線上)で透過放射線強度を測定する手段と、この種の直系から外れて(かつ、そこへ測定可能な角度で外れて)前方散乱強度を測定する少なくとも一つの更なる手段と、及び望ましいケースでは、この種の直系から外れて(かつ、そこへ測定可能な角度で外れて)ソースと物体の間で後方散乱強度を測定する少なくとも一つの更なる手段と、を含むことが必要である。後方散乱を検出するためのいかなる第3の検出器手段も、概して物理的に離散的で別々の構造である。
【0037】
同様に、第1の及び更なるデータ処理モジュール、分析モジュールなどは、特に、第1の及び更なるデータ処理モジュールの結合処理を促進する単一の装置に含まれ得る。
【0038】
明らかなように、吸収特性(従って、任意のエネルギーのための透過強度)及び散乱挙動(従って、強度は任意のエネルギー箱のための強度の任意の前方散乱及び後方散乱パターンにおいて第2及び第3のデータセットが集められる)は、下記の例で与えられるような周知の自然法則による異なる材料に対して入射放射線エネルギーに関連した形で変化する。このように上記本発明の装置又は方法は、エネルギー分解されたデータセットを集め、第1の検出器手段を経た透過強度、更なる検出器手段を経た散乱強度、第2の検出器手段を経た少なくとも一つの第2の検出器位置での例えば前方散乱強度、そして、第3の検出器手段を経た少なくとも一つの第3の検出器位置での後方散乱強度、そこから、この種の周知の自然法則に従って、かつ利用によって組成情報を導き出すことは本質的に可能である。
【0039】
データがその後処理される精密な装置の特徴及び/又は方法は、本発明に特に制限しない。この種のエネルギー分解された透過及び散乱を表現するデータは本発明にとって充分であり、例えば、前方散乱及び後方散乱された放射線はこのようにして単一の物体に対して同時かそれとも密接に連続して集められる。適切な数の関係の、そして、適切な数の処理アルゴリズムの実施例は、下記で挙げられるが、その最も広い範囲における本発明を制限しない。
【0040】
本発明による検出器システム及び/又は第1の、そして更なる検出器手段のそれぞれは、多元素系を構成している単一の線形又はエリア検出器又は複数の別個の検出器素子を含む。エリア検出器は、別個の検出器要素の2次元配列及び/又は複合要素上の単独でアドレス可能なピクセルの2次元配列で構成され得る。線形検出器は、別個の検出器要素の線形配列及び/又は線形複合要素上の単独にアドレス可能なピクセル配列を含む。検出器は、上記及びラスタ走査のように固有の空間的分解能のあらゆる組合せにもよって少なくとも強度情報の第1及び第2のデータセットを集めるために空間的に入射放射線を分解することが可能であってもよい。
【0041】
好ましい実施態様において、検出器システムは、第1部分がソースと直系(一直線上)である少なくとも一つの線形検出器(この用語は線形検出器アレーを含む)と、透過情報(及び単独でアドレス可能な第1の検出器手段を構成する)を集めるための被検物体と、前方散乱放射線を集めるためにこの直系に外れた検出器の残りの部分(ゆえに上記規定されたように単独でアドレス可能な第2の検出器手段である)とを含む。検出器の残りの部分は、少なくとも一つ及び好ましくは複数の散乱位置で散乱放射線を集めるので、上記説明したとおり第2の検出器手段である。更に、第3の検出器手段は、後方散乱放射線を集めるために、好ましくはソースと物体との間に設けられるとともに、ソースと物体との間のこのような直系から(測定可能な角度で)外れている。
【0042】
1つの可能な実施態様において、第1及び第2の検出器手段を含む線形検出器は、この種の第2の検出器手段を規定する両方向におけるソースと被検物体に直系の第1位置から、外側へ伸びる。交互配置における線形検出器は、一方方向だけにおけるソースと被検物体に直系の第一位置から、外側へ伸びる。いずれの場合においても、線形検出器の外側へ伸びる部分は、好ましくは、複数の単独でアドレス可能な第2の検出器手段と、例えば複数の離散的な要素又は強度情報が対応する複数の散乱位置のために得られる単独でアドレス可能なエリアを含む。
【0043】
このような検出器の動作を考えると、ソース放射線の好ましい実施態様と連動する、第1及び第2の検出器手段を含み、ペンシルビームを生じさせるためにコリメートされたソースを含み、そこから外側に伸びている前方散乱放射線の円錐を伴い、複数の第2エリアによって様々な散乱位置で単独で検出可能である、検出器の配列の中央第1部分に作用する物体の吸収特性に直接関連して透過強度を生じさせるために、物体に入射する、ソースからの放射線の相互作用が分かる。好適なケースにおいて、更に、ソースの方へ向かう物体から後ろへ外側に伸びている後方散乱放射線は、単一又は複数の第3の検出器エリアによって、様々な散乱ジオメトリで単独で検出可能である。
【0044】
あるいは、透過及び前方散乱ビームの測定のための第1及び第2の検出器手段を含む検出器システムが、透過放射線を検出する中央エリア領域を有する別個の検出器素子又は単独でアドレス可能な検出器部分のエリア配列と、様々な散乱角度で前方散乱放射線を検出する、そこから外側に伸びているエリアを含む場合、同じ結果が実現され得る。
【0045】
放射線源(ソース)は、所望の動作帯域幅の範囲内で広範囲にわたるエネルギーにおける広域のスペクトル放射をもたらすことができる。放射線ソースは、好ましくは、
電離放射線(例えばX線及び/又はガンマ線のような高エネルギー電磁放射線、又は亜原子粒子放射線といった高エネルギー放射線を出すソースを含み、検出システムは、対応して、このスペクトル内の放射線を検出するように対応して適用される。放射線ソースは、例えば、広範囲にわたるX線又はガンマ線エネルギー上の広域スペクトル放射をもたらすことのできるブロードバンドX線又はガンマ線ソースである。
【0046】
ソースは、複数のバンド幅又は単一のエネルギーが識別されることのできる単一の広域スペクトル・ソースであってよい。例えば、ソースは、単一の広域スペクトルX線ソースであってもよい。あるいは、又は加えて、ソースは、狭帯域幅を有するか、又は本発明の方法に従ってエネルギーの一部を対照用に提供するために一つ以上の離散エネルギーで入射放射線を生成して提供され得る。この場合、放射線ソースは、複数のエネルギー/エネルギーバンドにわたる検出器によって分解を可能とするために広げられる必要な全体のスペクトルを提供する異なるエネルギーのソースの組合せからなる複数のソースである。
【0047】
例えば、複数のソースは、例えば60keV以下、例えば10〜50keVで動作する比較的低いエネルギー・スペクトルを有するX線ソース、及び例えば100keVを上回るより高いエネルギーで放射線を発生させる一つ以上の放射性同位体ソースを含む。
【0048】
ソースは、好ましくは本発明の性能のために必要なスペクトル分解能を有効にするために、十分に広域の放射線のスペクトルを発生させることができる。好ましくは、ソースは、20keV〜1MeVの範囲の少なくとも1以上の部分にわたって、そして、より好ましくは、例えば20keV〜160keVの範囲の少なくとも一部及び大部分にわたって放射線を発生させる。例えば、ソースは、所与の範囲の中で少なくとも20keVの少なくとも一つのバンド幅にわたって広がっている放射線を発生させる。例えば、スペクトルは、少なくとも3つの10keVのバンドがその範囲の中で分解され得るようなものである。
【0049】
コリメータは、好ましくは、ソースから放射される適切な幾何学ビームを作り出すために提供される。放射されたビームのジオメトリは、検出器システムで最も有用な幾何学を決定する。最も単純には、特に装置が単に数値的に質量減衰係数の表示を導き出すことのためにスペクトル的に分解された透過データを集めるのに用いている場合、簡単に、事実上、一次元の「ペンシル」ビームが提供され得る。
【0050】
本発明は、走査ゾーンにおける物体の構成に関連し得る有用な情報を収集するために、多重スペクトル分解能の原理を利用する。検出器システムは、透過又は散乱する放射線に関する分光学的情報を生成するように構成される。すなわち、検出器は、少なくとも分光学的情報が検索され得るソースの放射線のスペクトルの本質的部分全体に分光学的で多様な反応を示す。複数のエネルギーバンド上の強度データは、分解される。
【0051】
更に、構成に関する限られた指標となる情報だけを与え得る、物体の複数バンドの多重スペクトル画像を発生させるためにこれを使用するだけでなく、データセットは、単なる多重スペクトル画像によって達成できるよりも、物体の構成の態様のより具体的な特徴であるデータのデータセット結果を定量化される方法で示す、数的な比較結果を得るためのエネルギー分解情報を処理することによって、数値的に分析される。
【0052】
検出器システムは、少なくとも3つ及びより好ましくは、少なくとも5つのエネルギーバンドを分解する程度にまで少なくとも透過放射線に関する分光学的情報を発生させるように構成されている。出力をこのような8又は16のエネルギーバンドに分解することは、都合がよい。
【0053】
少なくとも3つの特定のエネルギーバンド分解される限り、各々のバンド幅は本発明に直接関連せず、全体又は一部のスペクトルを、別々のバンドに分けるあらゆる適切な方法によって有用な結果が得られる。例えば、スペクトル全体又はその本質的部分は、簡単にこの種の複数のバンド幅間で分けられることができ、各々のデータ項目で分けられることができる全バンドにわたる強度、例えば平均強度の代表的指標であると考えられる。あるいは、複数の比較的広域だが、その間で離散的なギャップを伴うバンドは、想定されることができて、同じ基礎に分析されることができる。あるいは、「バンド」は、それらが単一のエネルギーで基本的に強度の評価にほぼ相当する位置くらいまで、狭くてもよい。ここで使用しているように、エネルギー「バンド」での強度の概念は、このような別個の単一エネルギーでの強度の評価のほか、狭帯域又は広帯域幅にわたるエネルギーでの強度の評価も含む。透過放射線用として高帯域が、及び特定の散乱モードを識別するため狭帯域が望ましい。
【0054】
データ処理装置によって分光学的に分解可能な形で放射線を検出することを検出器システムが可能とすることは必要である。望ましくは、検出器システムは、詳細な分光学的情報が検索される得る放射線ソースのスペクトルの少なくとも本質的部分にわたって分光学的に多様な反応を示す。望ましくは、検出器システム、又はマルチ要素システムを構成している一部又は全ての別個の検出器素子は、それが直接的な分光学的反応を示すという点で、分光学的分解能を生じさせるように構成され得る。なかでもシステム又は要素が、直接の材料特性、直接の可変の電気的な、例えばソース・スペクトルの様々な部分に対する光電反応として本質的に示す、選択された材料から作られる。
【0055】
例えば、検出器システム又は要素は、半導体材料又は好ましくはバルク結晶、例えばバルク単結晶(この文脈におけるバルク結晶は少なくとも500μm、好ましくは少なくとも1mmの厚さを示す)として形成される材料を含む。半導体を構成している材料は好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、臭化トリウムから選ばれる。II−VI族半導体及び特にそれらのリストは、特にこの点に関しては望ましい。半導体を構成する材料は、好ましくは、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)及びそれらの合金から選ばれ、例えば、結晶構造のCd1−(a+b)MnZnTe(ここでa及び/又はbはゼロであってもよい)を含む。
【0056】
物体の走査の便利さを本文献で述べるが、これが本発明の出願を一つの同質な物体の走査に制限することを考えるべきではないと理解される。実際、多くの想定されたアプリケーションのために、「物体」は多数の異質な材料、及び/又はコンテナあるいはその他多数の物品のかたまりからなり、その結果、あらゆる透過放射線経路は、様々な特性を有する多数の異なる材料を通過すると思われる。本発明の特定の効果のうちの一つは、それがこの種の様々な材料の分解を促進することができるということである。
【0057】
突き詰めれば本発明は、スペクトルの異なる分解された一部にわたる透過/散乱挙動特性に基づいて、収集したデータから材料の識別の改良された指標の数的な導出を可能にする。特定のビーム・ジオメトリは、指示されない。それは、画像を発生させるのに必要ではない。本発明は、本発明が一部を形成する可能性を排除せず、走査式画像化システムによって提供される情報を補充するが、この余分な複雑さを必要としない。
【0058】
場合によっては、本発明が走査式画像化システムによって提供される情報を一部分は形成し、補充することは、望ましいかもしれない。この可能な実施態様に従って、検出器手段で集められる入射放射線に関する情報のデータセットは、走査ゾーンにおける物体の画像を発生させるために用いる。特に、可能な作動モードで、組合せ画像は、ソースのスペクトル範囲内で複数の周波数バンドにわたって分光学的に分解される各々のデータセットを結合して発生する。このような作動モードが要求される場合、画像作成モジュールは、この種の強度データセットから画像を作成するために提供され得、画像ディスプレイは、画像を表示するために提供され得る。
【0059】
所与の走査イベントのための透過データセットに内在する特性材料データに関する情報、及びそれ故、物体の又は透過パスにおける物体の材料構成は、単一の走査イベント、例えばペンシルビーム又は円錐ビームの単一ビームによって走査されている例えば静止物体によって得られる。この種の状況において、本方法は、単に検出器で入射放射線に関する情報のデータのこの種の単一の走査及び一つのデータセットを得るために走査ゾーンにおける物体を配置することを含むだけである。このような簡単な配置は、しばしば好まれる。
【0060】
任意には、装置は、単一の走査位置における物体の透過及び散乱強度データを用いて集めるように構成され、例えば、その内部に又はその上に物体が配置され得るリセプタクル又はプラットフォームのような走査位置の物体を保持する手段を含む。加えて、又はあるいは、それは、このような走査位置内外へ物体を搬送するコンベヤーを含む。
【0061】
本発明のより完全な実施態様において、第1及び更なるエネルギー分解された強度データセットの各々は、予測強度が材料組成を表す出力結果をもたらすために材料組成のある面に関係し得る適切な関係に関連して、数値的に処理される。特に好適な実施態様、方法の数値分析ステップにおいて、そして、類似によって装置の関連モジュールは、より正確な構成の指標を導き出すために、透過データ及び散乱データを同時に処理する。
【0062】
例えば、エネルギー分解された強度データは、材料定数又は特性材料の物理的特性のような材料のデータセットからの抽出を可能とするためにこのような方法で数値的に処理される。このような材料定数又は類似の特性は、例えば相応しい構成材料、特に目的材料その他のためのこの種のデータのライブラリからなる適切なデータライブラリと比較されてもよい。望ましくは、本発明のこの実施態様による装置は、前記数値分析ステップを遂行する数値分析モジュールと、この種のデータライブラリを含むデータレジスタと、材料組成の指標を確立するために、データライブラリの出力結果及びデータの間で比較ステップを遂行するコンパレータ・モジュールと、を含む。
【0063】
本発明は、少なくとも一つそして好ましくは所与の応用、材料内容の表示(指標)において直面しそうな目標材料及び/又は物体の範囲に対し、等価な数値分析に基づくスペクトル的に分解された透過/散乱データの特性の適切なデータライブラリを参照して提供される数値分析に基づいて収集しスペクトルで分解された透過及び散乱データの識別を可能にする。データライブラリは、本発明に従って分解されたエネルギーバンドにわたり集められる強度データの数値分析の成果に数的な形で関連し得るあらゆる適切なフォームにおける情報を含むことができる。データライブラリは、標準プリセット関連材料及び/又はユーザ入力関連材料及び/又は前述の方法に従って周知の材料から生じ得る参照データを含むことができる。すなわち、データのライブラリは、時間とともに材料特性を実質的に「学ぶ」ことのできるシステムによって構築され得る。データライブラリは、電子的に格納されるデータ及び/又は印刷資源など、ハード媒体上に格納されるデータを含み得る。そして、それのいずれも本発明の方法のこの実施態様に直接関連しない、手動で及び/又は自動的に、保持でき局所的に及び/又は遠隔でアクセスされ得る。
【0064】
本発明の方法における数的ステップが、機械読み込み可能な指示又はコードの適切なセットによって実行できることは、一般によく理解されている。これらの機械読み込み可能な指示は、特定される数値的なステップを実行するための手段を作りだすために、汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置に搭載され得る。
【0065】
この種の機械読み込み可能な指示はまた、コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置に特定の方法で機能するように指示することのできるコンピュータ可読媒体に保存され得る。そうすると、コンピュータ可読媒体に保存される指示は、本発明の方法における数値的なステップの一部又は全てを実行するためのインストラクション手段を含む製品を生産する。コンピュータプログラム・インストラクションは、また、本発明の方法における数値的なステップの一部又は全てを実行するためにステップを提供しているコンピュータ又は他のプログラム可能な装置に命令が実行されるようなプロセスが実行されるコンピュータに実装することができる機械を生産するために、コンピュータ又は他のプログラム可能な装置に搭載され得る。専用のハードウェア及び/又はコンピュータ・インストラクションのあらゆる適切な組合せによってステップが実行され得、そしてこの種のステップを実行する装置の手段が構成されると理解される。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明は、現在添付の図面に関してほんの一例として記載されており、
【図1】物体を走査して、透過及び散乱放射線を得るために設定された本発明の実施例に従う装置の概略図である。
【図2】線形アレー検出器の配置可能性を例示する図である。
【図3】線形アレー検出器の配置可能性を例示する図である。
【図4】透過及び前方散乱放射線の検出のための検出ゾーンの配置の可能性を例示する平面図である。
【図5】後方散乱放射線の検出のための検出ゾーンの配置の可能性を例示する平面図である。
【図6】本発明の実施例に従うデータ処理装置の概略図である。
【図7】本発明の実施例に従って、データ処理のためのソース・スペクトル及びエネルギーバンドを示す図である。
【図8】光電効果の影響を比較しているエネルギーの関数として、水に対して光子横断面を示す図であり、トンプソン(コヒーレント)散乱及びコンプトン(インコヒーレント)散乱を示す。
【図9】100mmの水に対して透過カーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
図1を参照すると、適切なX線ソース1は、検出器4の方向に走査ゾーンを経てX線を導くために用いられる。
【0068】
検出器4は、入射X線の分光学的分解ができる材料、当業者は他の材料選択が適当である可能性を認識するが、具体例としてテルル化カドミウムを含む。このスペクトル分解能を利用するために、X線ソース1は、広域のエネルギー・スペクトル全域にX線を放射する。
【0069】
放射線ソース1は、特性散乱のための適切なスペクトル域にわたってエネルギー分布を生成しなければならず、概してX線ソースである。タングステンは最も適当なターゲットである、しかし、その他も使用可能である。
【0070】
あるいは、使用は、複数のソースからなるものでもよい。実施例において、これは、約10〜50keVの動作のスペクトル設計を有するペンシルビームを作り出すためにコリメートされるX線ソース、及び少なくとも一つの例えば100keVを上回るより高いエネルギー放射性同位体ソースであり得、実施例において、122keVのコバルト57ソースが提供される。
【0071】
別個の多数のソース及び検出器が提供され得る。
【0072】
X線ソース1は、一次のペンシルビーム11を作り出すために、最適にコリメートされる。この一次ビーム11は物体9に案内される。検出器装置4は、検出ゾーンDZにおける物体の反対側に準備される。
【0073】
検出ゾーンで受け取られる放射線は、特に例示の実施例の3種類の、物体との相互作用に影響を受ける。第1に、特に下記の方程式(1)に従って、放射線は物体9によって吸収され、特徴的に入射放射線エネルギーによって異なる形で結果として生じる透過ビーム13に影響を及ぼす。
【0074】
第2に、放射線は、概して支配的なトンプソン(コヒーレント)散乱及びコンプトン(インコヒーレント)散乱の一つ又は両方を伴う様々なコヒーレント及びインコヒーレントなメカニズムに従って、物体9を構成する材料により前方散乱される。これは、所与の材料に対し様々な材料特性の特徴を示す形で散乱している入射放射線を有する散乱をもたらす。これは特性エネルギー及び散乱ジオメトリで放射線12の複数の散乱「円錐」の生成によって図において概略的に例示される。各々の散乱円錐の結果は、検出ゾーンDZでの円形のフットプリントである。散乱円錐は、検出円錐DZの複数の散乱角度での散乱強度の検出を例示する手段として示され、必ずしも強度のピークの離散的な円錐を生じる散乱の特定のメカニズムを意味するとしてはならない。
【0075】
第3に、放射線は、主に物体9の材料を構成している低原子番号元素によって、後方散乱される。後方散乱される放射線は、所与の材料に対して入射放射線の特性エネルギー(波長)のための散乱の特性角度を有する。これは特性エネルギー及び散乱ジオメトリで放射線15の複数の散乱「円錐」の生成によって図において概略的に例示される。また、「円錐」の提示は、散乱の特定のメカニズムを意味することを意図せず、概略的に図示するためにある。
【0076】
複数のエネルギー箱に、かつ前方散乱及び後方散乱の異なる角度で分解される前方散乱強度及び後方散乱強度を検出することのできる、本発明に従う検出器システムは、測定された散乱ジオメトリ/強度分布を生成する材料の組成を示す情報から結果を生み出すことができる。
【0077】
図1において、単一のピクセル検出器4は、直接的な透過位置(すなわち、以上に規定されるように第1の検出器手段として働く)において例示される。散乱検出器は図示されない。検出ゾーン・レベルDZで、それぞれ図解される放射線の前方散乱円錐は、この中心の透過ラインを越えて円形のフットプリントを示す。それぞれ図解される放射線の後方散乱円錐は、放射線ソース1と物体9との間で円形のフットプリントを示す。周知の角度の更なる単一のピクセル検出器又は適当な走査パターン上の単一の検出器手段は、後方散乱情報も集めるために使用され得る。
【0078】
代わりの装置が図2及び図3において、同時に3セットのデータを集めることのできる線形アレー検出器について例示される。図2において、線形アレー検出器14は、アレーの一端が主要な透過ビーム13に沿い、透過強度を検出するために位置され、配列の残りの部分は複数の異なる散乱角度での散乱ビーム12を検出するために検出ゾーン・レベルで外側に伸びる。更なる線形アレー16は、放射線ソース1と物体の間の領域において配置され、複数の異なる散乱角度での散乱ビーム15を検出するためにソースと物体9の間のラインは取り除く。
【0079】
図3においては代わりの装置において、線形アレー14は、透過ビーム13を中心とし、複数の異なる散乱位置での散乱ビーム12を検出するために両方向で外側に伸びる。更なる線形アレー16は、ソースから物体を通過する入射ビーム11のためにアレー16間の充分なクリアランスを有するソース1と物体9の間の領域において位置される。検出器16は、複数の異なる散乱位置での散乱ビーム15を検出する。
【0080】
図4において、透過及び前方散乱されたビームを検出するための特に好適な装置が表される。2つの線形アレー検出器18は、示された形における特性前方散乱放射線円19から情報をピックアップするために、走査フットプリント・レベルで直交して配置される。
【0081】
図5において、後方散乱ビーム検出のための特に好適な装置が表され、4つの線形アレー検出器16は、示された形における特性後方散乱放射線円20から情報をピックアップするために、走査フットプリント・レベルで直交して配置される。クリアランスは、ソースから物体まで通過する入射ビームのための領域2において提供される。
【0082】
図6において、上記の装置によって集められるデータの分解の一般の概略図が表されるる。X線ソース1、そして、第1の検出器手段21aと第2の検出器手段21bの形で横に間隔を置かれた検出器、そして、連携する更なる検出器21cはそれらの間で走査ゾーンZを規定する。使用中、走査される物体は、例えば適切なオブジェクト・プラットフォーム又は適切なコンベヤーに配置されるなどの通常の方法で走査ゾーンに持って行かれる。
【0083】
図の例では、材料9の試料は、走査ゾーンZに位置する。X線ソースからの入射ビーム11が例示されている。前方散乱ビーム12は、例えばインコヒーレントなコンプトン散乱かもしれない適切なメカニズムによって散乱され、第1の検出器手段21a上に入射される。透過ビーム13は、検出器手段21bに入射される。後方散乱ビーム15は、検出器手段21cに入射される。好ましい実施例の検出器手段は、テルル化カドミウム検出器ユニットの線形アレーを含む。
【0084】
検出器アレー21a,b,cは、データにおいてプロセッサ22と通信がある。検出器アレーは、よく知られている方法で強度情報のデータセットを生成するために使用される。アレーにおける材料の固有のスペクトル分解は、データレジスタ23に保存されるエネルギーバンド限界を参照することで本発明の原則に従って複数の予め設定された周波数/エネルギーバンドにわたってこのデータセットを差別的に分解するプロセッサ22を割り当てる。
【0085】
ソース1は、エネルギーの比較的広域のスペクトルにわたってX線を発生する。その結果、この分解能が利用され得る。ソース1は好ましくはタングステン・ソースであって、図7に示されているように、X線強度(I)対波長(λ)の描画特性を与える。図7は、このスペクトルが、本発明の原則に従ってシステムを作動するために、連続した比較的広域のバンドb1からb5に、どのように分けられるかについて説明する。
【0086】
計算モジュール24は、強度変化を分光学的に異なる形で透過及び散乱する強度に影響を及ぼす放射線相互作用プロセスの多様性に対して、最初の放射線エネルギー・スペクトルと関連づける、周知の物理的な関係を利用している本発明の一般の原則に従って、数値分析を実行する。これらの周知の関係は、データレジスタ25の前に格納された参照データに関して材料組成に関連する情報を導き出すことが可能である特有の材料特性データを生成するために用いられ得る。そのように発生する結果としてのデータは、あらゆる適切な方法において走査システムのユーザに、例えばディスプレイ27を経て又は他の適切な警報システムによって識別され得る。データ処理のいずれかもしくは装置の記憶要素は、例えばプロセッサ22、データレジスタ23、計算モジュール24及びデータレジスタ25の一つ以上を含んで、例えば専用又は汎用のコンピュータなど、最適にプログラムされたデータ処理装置手段によって提供されることができる。
【0087】
本発明の原則に従う数値分析のためのソースと物体に直系(一直線上)で、透過強度情報の第1のデータセットは、少なくともある程度は、検出器又は検出器アレーのその部分で導き出される入射エネルギー/波長及び透過強度の関係を分解することによって発生する。このデータは、光電吸収に関する特定のものにおいて、透過を入射強度に関連付けることで知られている適切な数的関係を参照して数値的に分析され得る。
【0088】
前方散乱強度情報の第2のデータセットは、少なくともある程度は、検出器で導き出される入射エネルギー/波長及び強度との関係又は本発明の原則に従って数値分析のための直系(一直線上)から離れた検出器アレーのその部分を分解することによって発生される。トンプソン(コヒーレントな)散乱及びコンプトン(インコヒーレントな)散乱効果に関する特定のものにおいて、このデータは、前方散乱を入射強度に関連付けることで知られている適切な数的関係を参照して数値的に分析され得る。
【0089】
後方散乱強度情報の第3のデータセットは、少なくともある程度は、入射エネルギー/波長の関係を分解することによって発生され、強度は本発明の原則に従って検出器21cで導き出した。このデータは、後方散乱を入射強度に関連付けることで知られている適切な数的関係を参照して数値的に分析され得る。
【0090】
それぞれのエネルギー分解されたデータセットは、構成の相関可能な情報を生成するために、単独で又は一緒に、数値的に分析され得る。
【0091】
構成に相関可能な定量的情報の周波数比較のデータセットを得るために強度比率分析に基づいて周波数仕様のデータセットの適切な数値分析を含んでいる本発明のいくつかの可能な実施例は、これから更に詳細に説明される。当然のことながら、これらはほんの例であって、本発明の原則は、単独で画像から得られたそれに代わるものとして多重スペクトル分解されたデータセットから有用なデータを得る手段として構成に相関可能な定量的情報を生じさせるあらゆる数値分析技術に適用できる。
【0092】
第1のデータセットのあり得る数値分析において、エネルギー分解されたデータセットは、例えば所与のバンド全域の透過放射線又は少なくともその十分に代表する部分の平均強度のデータ典型を含む複数のエネルギーバンドでの透過放射線の強度について少なくともデータを含んで導き出される。数値分析は、好ましくは、エネルギー仕様の強度データセット及び特に平均的強度データセットの少なくとも一対に対比機能を適用することによって比較データセットを作り出す少なくともこのような一対のデータセットの実行がなされる。より好ましくは、それでも数値分析ステップは、エネルギーに特有のデータセットの少なくとも一つの一対のために、強度比率及び例えば平均強度比率(すなわち所与のエネルギーバンド全域の平均強度の比率又は既定したとおりのそれの少なくとも一部分)を決定することを含む。
【0093】
強度比率は、特に、特定の材料組成に特徴的でありえる透過放射線のデータセットの特に有用な定量化を表すことができる。
【0094】
適切で、適用できる異なる数的な重み付け係数は、本発明の原則から逸脱することなく、最適に修正された/有意義な結果データセットを作り出すために、その間のあらゆる数的な比較のプロセスの前にあるいはプロセスの一部として、異なる周波数仕様のデータセットにおけるデータに適用され得る。この種の重み付けは、所与のソース・スペクトルにおける強度変化のために、あらゆる種類のノイズのために、又は数的結果を改善するために説明することが望ましいかもしれない他のあらゆる要因のためにも、例えば修正する可能性がある。
【0095】
透過強度は、例えばランベルト・ベールの法則などの質量減衰関係によって次式で表され得る:
I/Io=exp[−(μ/ρ)ρt] (1)
ここで、μ/ρは質量減衰係数であり、材料の重み付けされた元素組成に特徴的である物質的な定数である。Iは最終強度、Ioは初期強度、ρは材料密度、tは材料厚み、である。
【0096】
本発明の装置の第1の検出器手段は、検出器が透過放射線を集めるためにオブジェクト・ソース・ラインに一致するように配置される。これによって、強度データが集められ、そして一部の適切な方法におけるこの法則の適用によってエネルギー分解されたデータセットから数値的に導き出され得る材料組成情報から、複数のエネルギーバンドにわたって第1のデータ処理モジュールによって分解され得る。
【0097】
したがって、本方法は、好ましくは、例えば、上記の方程式(1)のような質量減衰関係を適用している方法を含み;
所与の強度データセット、例えば、強度データセットと関連する質量減衰係数との関数関係の数値的インジケータを得るための各々連続するこのようなエネルギーバンドにおける少なくとも2対のエネルギーバンドに対して強度データ項目間の比率を評価し;
特に例えば、この種の強度データセットを生成している透過パス内の物体の予想される材料内容の表示を得るために、例えば疑わしい材料など目標材料に特有の質量減衰係数を示すデータのライブラリについて同じことを比較する。
【0098】
本実施例における類似によって、適切な装置は、
所与の強度データセット、例えば、強度データセットと関連する質量減衰係数との関数関係の数値的インジケータを得るための各々連続するこのようなエネルギーバンドにおける少なくとも2対のエネルギーバンドに対して強度データ項目間の比率を評価する算出手段と;を含み、
望ましくは更に、この種の数値的インジケータを格納するために、更なるデータレジスタと;
特に、例えば、疑わしい材料などの目標材料の質量減衰係数特性を伴う、特有の質量減衰係数を表すデータのデータライブラリと;
数値的インジケータをライブラリのデータと比較して、そこから、前記強度データセットを作り出している透過パス内の物体の予想される材料内容の表示を導き出すコンパレータと、を含む。
【0099】
実施例に従って、この種の各々の走査イベントのために、この種の分解された強度データ項目測定値、及び例えば連続した強度データ項目測定値の少なくとも2つの対の比率は、この種の強度パターンを作り出すのに必要な質量減衰係数と相関し得る代表的な情報を提供するために、数値的に得られる。所与のスキャン・イベントと関連する大部分の変数は、ソースからの入射放射線の周波数/エネルギーに関して一定である。しかしながら、質量減衰係数は、特徴的な方法でエネルギーによって変動する。少なくとも2つの比率を生み出すために所与の走査イベントのための少なくとも3つの異なるエネルギーバンドにわたる強度データ上のこの種の比率分析を実行することによって、質量減衰係数と入射放射線エネルギーの間の関数関係を代表するデータが取得され得る。このように、所与の走査イベントに対して供試材料を通して透過パスに適用できる特定の質量減衰係数に関する推論は、導き出すことが可能である。比較は、それから、何が走査されているかというより代表的な指標を与えるために、異なる材料及び/又は目標物のための質量減衰係数のデータ典型の適切なデータベースにされる。
【0100】
付加的な項を除去する最も単純な方法のうちの一つは、異なるエネルギーの比率、例えば、複数の連続した異なるエネルギーで連続した読み出し(データ)の比率で、透過の比率をとることである。比率が一定の条件として材料厚み及び材料密度を原則として消去することが分かる。従って、これは質量減衰係数に、透過比率に影響を及ぼす唯一の残留する項を作る。
【0101】
好ましくは、比較は、結果のライブラリに作られる。このように、好ましくは、装置は、更に以下の一つ以上を含む:
この種の比較データを格納する更なるデータレジスタと;
周知の材料のための周知のデータのデータライブラリと;
データレジスタの比較データをライブラリのデータと比較して、そこから透過パス内の物体の予想される材料内容の表示を導き出すコンパレータ。
【0102】
本発明の装置は、周波数比較データセットを作り出すために周波数仕様のデータセットの少なくとも一対に対して強度比率を決定するために、周波数仕様の強度データセットの少なくとも一対に対比機能を適用することによって、少なくとも一対のエネルギー仕様のデータセット間の比較を遂行する計算手段を有する。任意に、更なる装置は、データレジスタの周波数比較のデータをライブラリのデータと比較するために、コンパレータを有している。適切なハードウェア及びソフトウェアを結合し、自動的及びユーザ入力計算ステップを結合している計算手段及び/又はコンパレータ及び/又はライブラリのあらゆる適切な形が想定され得る。例えば、計算手段及び/又はコンパレータ及び/又はライブラリは、例えば、最適にプログラムされた専用又は汎用コンピュータなどの、最適にプログラムされたデータ処理装置を含む。
【0103】
特定の状況下における質量減衰吸収関係の利用は、それの吸収とは対照的に、ビームの過剰散乱のために崩壊する可能性がある。この散乱情報は単に透過強度を識別するのみの単純な装置において失われ、それは材料識別プロセスを妨げる影響を持つ可能性がある。
【0104】
本発明は、散乱イベントがまた、周知の関係に従って供試材料の一般的な特徴であるという事実を利用する。
【0105】
図8及び9は、コヒーレント及びインコヒーレント散乱の透過のための検出及び処理において利用される原理を例示するものである。一般のケースにおいて、10keVと160keVの間のエネルギーを有する光子のために、主に寄与している物理的なプロセスは、光電効果、トンプソン(コヒーレントな)散乱及びコンプトン(インコヒーレントな)散乱である。散乱横断面の相対振幅は図8の水において例示される(これがLogである点に注意する:ログ・プロット線)。光電子の、及び30〜40keV(重元素に対してより高い、例えばHClに対して60KeV)で、コンプトン散乱優位のプロセスの間の移行部がある。この移行をプロービングすることによって、材料特性についてより多くを発見することができる。大まかに言って、光電効果は、原子番号(Z)によって支配され、材料の元素組成に、影響される。コンプトン散乱は、ビームパスの電子の数によって支配され、材料の物理的な密度に、影響される。
【0106】
電子及び光学顕微鏡検査において、材料特性の微妙な違いは、暗視野技術によってしばしば露出される。主に、直線状のビームは止められ(概してレンズ効果を経て、又は機械的なビーム中断を経て)、画像コントラストは、散乱又は回析された放射線によって支配される。システムのための類似した方法は、本発明によって実施される。支配(優位)対照を、吸収から散乱に、形態を切替えることになるかもしれない。
【0107】
図9におけるカーブは、正常化された透過(I/Io)の計算である。透過が光電相互作用として増加すると予想できるかもしれないが、平均自由行程はエネルギーによって増加する。紫のカーブは、任意にコンプトン散乱横断面を増やすことによって、透過強度上のコンプトン散乱の影響を誇張する。緑のカーブは、典型的実験的な液スキャナの散乱支配された出力である。
【0108】
コントラスト・メカニズムが測定値に合うように調整されることのできるそれぞれの方法がある、又は、多数のコントラスト・メカニズムは順番に選択され得る。上記例示のような基本的なレイアウトにおいて、散乱放射線の分布を与える複数の検出器を使用することは、可能である。例えば、円筒状のコリメートビームのために、検出器又はそれについて単独でアドレス可能な部分は、メイン・システム軸及び他の検出器に提供され得、又は、単独でアドレス可能な部分は軸外提供され得る。前者からの信号は吸収優位で、後者は散乱優位であって、差分分析は材料特性上の有用な見識を提供する。この方式は、上記説明のとおり、線形に、又は強度配布のより良好なマッピングのために上記説明のとおり検出器の2次元アレーに、広げられるかもしれない。一般の概略図は、優先的に選択する一次(直接)又は二次(散乱)光子のための検出器コリメータの使用によって、更に改良されるかもしれない。代わりに、個々の検出器又は、検出器の組合せ又は検出器の単独でアドレス可能な領域は、散乱し透過される光子信号をデコンヴォルート(原信号を求める操作)するために切替える電子回路又はソフトウェアによって選択されるかもしれない。これらの実施例は、本発明の原則を例示し、それによって、スペクトル的に分解された透過/散乱データは、可能性をある材料のより良好な識別に提供する数値分析において利用され得る形で集められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る装置であって、
放射線ソースと、その間で走査ゾーンを規定し、走査ゾーンにおける物体との相互作用の後で入射放射線に関する情報を使用中に集めるために間隔を置かれ、入射放射線について分光学的に分解可能な情報を検出して収集することができる放射線検出器システムと、を含み、
前記放射線検出器システムは、物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために位置される第1の検出器手段と、物体との前方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第2の強度データセットを集めるために位置される第2の検出器手段と、物体との後方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の第3の強度データセットを集めるために位置される第3の検出器手段と、
を含み、
そして、前記装置は、前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解するように構成される第1のデータ処理モジュールと、
前記ソースのスペクトルの範囲内で少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって更なる強度データセットを分解するように構成される少なくとも一つの更なるデータ処理モジュールと、
を更に含む装置。
【請求項2】
物体との前方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の少なくとも一つのデータセットを集めるために位置される検出器手段を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
物体との後方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の更なる強度データセットを集めるために位置される更なる検出手段を含む、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
各々のデータ処理モジュールが、少なくとも一部の密接に対応するエネルギーバンドにわたってそれぞれの強度データセットを分解するように構成される、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項5】
各々のデータ処理モジュールは、少なくとも一部の分解されたエネルギーバンドにわたってエネルギー分解されたデータを分析し、そこから被検物体及び/又は被検物体を含む材料の放射線吸収挙動に特有の情報を数値的に導き出す分析モジュールをさらに含む、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記分析モジュールは、被検物体及び/又は被検物体を含む材料の放射線散乱挙動に特有のこの種の組合せ分析情報から数値的に導き出すために、少なくとも一部の分解されたエネルギーバンドにわたって数値的に一緒に複数のエネルギー分解されたデータセットを分析する手段を含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記放射線検出器システムは、線形検出器を含み、前記線形検出器の第1部分は、透過情報を集めるために前記ソースと被検物体に直系(一直線上)であり、前記検出器の残りの部分は、前方散乱放射線を集めるためにこの直系から外れている、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項8】
線形検出器は、両方向におけるソースと被検物体に直系の前記第1部分から外側に伸びる、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記検出器システムが2つの直交する線形検出器を含む、請求項7または8に記載の装置。
【請求項10】
後方散乱放射線を集めるために、前記ソースと物体との間に設けられ、かつ前記ソースと物体との間のこの種の直系から外れた、更なる探知器を含む、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記放射線ソースは、
X線及び/又はガンマ線、亜原子粒子放射線などの、高エネルギー電磁放射から選ばれる高エネルギーの放射線を供給するソースを含み、前記検出器システムは、スペクトルの放射線を検出するように対応して構成されている、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項12】
放出ペンシルビームを生じさせるためにソース放射線をコリメートするコリメータを更に含む、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項13】
前記検出器システムは、前記ソースのスペクトルの少なくとも一部にわたって分光学的に多様な反応を示すことが本質的に可能な材料から作られる、前記いずれかの請求項に記載の装置。
【請求項14】
前記検出器は、テルル化カドミウム、テルル化カドミウム亜鉛(CZT)、テルル化カドミウムマンガン(CMT)、ゲルマニウム、臭化ランタン、臭化トリウムから選択される半導体材料を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記検出器は、半導体材料又はII−VI族半導体材料を含んでいるバルク結晶として形成される材料を含む、請求項13又は14に記載の装置。
【請求項16】
物体の構成に関する情報を決定するために物体から放射線相互作用データを得る方法であって、
放射線ソースと、その間で走査ゾーンを規定するために間隔を置かれ、前記ソースのスペクトルの少なくとも一部分にわたってスペクトル的に分解可能な入射放射線に関する情報を検出し収集することのできる第1の検出器手段及び少なくとも一つの更なる検出器手段を有する放射線検出器システムとを提供するステップと、
被検物体を走査ゾーンに配置するステップと、
物体を通しての透過後、そこで直ちに入射放射線の第1の強度データセットを集めるために第1の検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと、
物体との散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の更なる強度データセットを集めるために少なくとも一つの更なる検出器手段を位置決めし、この種のデータセットを集めるステップと、
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記第1の強度データセットを分解するステップと、
前記ソースのスペクトルの範囲内の少なくとも3つのエネルギーバンドにわたって前記更なる強度データセットを分解するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
物体との前方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の少なくとも一つのデータセットを集めるために、検出器手段を位置決めするステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
物体との後方散乱相互作用の後、そこで直ちに入射放射線の更なる強度データセットを集めるために、更なる検出器手段を位置決めするステップを含む、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記被検物体の放射線の吸収及び/又は散乱挙動に特有の情報をそこから導き出すために、各々の強度データセットの分解されたデータを数値的に処理する更なるステップを含む、請求項16〜18の一つに記載の方法。
【請求項20】
各々分解された強度データセットは、予測強度が材料組成を表す出力結果をもたらすために材料組成のある面に関係し得る適切な関係に関連して、数値的に処理される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
透過データ及び散乱データは、構成のより正確な表示を導き出すために、同時に、数値的に処理される、請求項20に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−513023(P2012−513023A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541594(P2011−541594)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/GB2009/051705
【国際公開番号】WO2010/070327
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(507282783)クロメック リミテッド (23)
【住所又は居所原語表記】NetPark Incubator, Thomas Wright Way, Sedgefield, County Durham TS21 3FD (GB)
【Fターム(参考)】