説明

材料接合部の自動試験方法

材料接合部(4)の自動非接触非破壊試験方法において、最小閾値と最大閾値との間で動的閾値が変動し、動的閾値を超える熱流ダイナミクス値を示す、材料接合部(4)を通過する熱流ダイナミクスの領域が求められる。熱流ダイナミクスのこれらの領域が、周辺部における急激な変化に関して検査される。材料接合部(4)の溶融部(5)と、溶融していないが依然として付着性である部分(6)との間の境界(7)を横断する場合に、周辺部において急激な変化が起こる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分(所謂おいて部分)に記載の少なくとも2つの合わせ部分の材料接合部の自動非接触非破壊試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接点は、工業用途において重要な材料接合部である。溶接点は、溶融部と非溶融部とからなる2区画接合部を通常含む。溶融部は、溶接点の内部領域中にあり、そのためいわゆる溶接ナゲット(weld nugget)を形成する。非溶融部は溶接ナゲットを取り囲んでおり、溶接グルー(weld glue)と呼ばれる。非溶融部においては、合わせ部分は互いに溶接されていない。したがって合わせ部分の間の接合部の強度は、非溶融部においては、ある程度の付着が存在するだけなので不十分である。したがって溶接点の品質は溶接ナゲットによって実質的に決定される。
【0003】
溶接点の品質は、破壊試験または検査によって評価することが知られている。しかしこの種類の検査の1つは、無作為のサンプリングによってのみ行うことができる。すべてのサンプルの100パーセントの検査までのより頻繁な検査は、非破壊検査によってのみ実施可能である。
【0004】
熱流サーモグラフィーは、長い間定評のある非接触非破壊検査方法である。この方法によると、熱流を発生させるために、少なくとも1つの励起源によって試験サンプルが励起される。試験サンプルによって発せられた熱放射は、少なくとも1つの赤外線センサーによって一連の画像で記録される。演算装置によって、記録された一連の画像から様々な種類の結果画像が得られる。これらの種類の結果画像は、たとえば、材料接合部の種々の箇所における熱波の振幅および移動時間をそれぞれ示す振幅画像および位相画像である。位相画像によって、材料接合部の熱伝導率の局所的な差を可視化することができる(非特許文献1)。
【0005】
溶接点の品質が熱流の半減期によって評価される溶接点の自動試験方法の1つが特許文献1に開示されている。個別の画像点における熱流の半減期が短いことは、良好な品質の溶接接合部であることを示している。この方法の欠点は、検出される絶対半減期からは、溶接ナゲットと溶接グルーとの間の境界の位置に関する物体的情報が全く得られないことである。したがって、この方法を使用して、溶接点の大きさおよび位置を自動的に決定することは工業規模では不可能である。
【0006】
特許文献2には、溶接点の自動試験方法が開示されている。使用される位相画像は、検査される一連の画像が取得される前に規定される特定のパラメーターによって得られる。溶接接合部の品質は、明確に規定された閾値によって求められる。この方法の欠点は、工業規模では、明確に規定された閾値によっては、検査される溶接ナゲットが高い信頼性で検出できないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第01/50116A1号パンフレット
【特許文献2】独国特許出願公開第10150633A1号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Theory and Practice of Infrared Technology for Nondestructive Testing,Xavier P.V. Maldague,John Wiley and Sons,Inc., 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、材料接合部の溶融部を高い信頼性で検出および評価することができる材料接合部の自動非接触非破壊試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は請求項1の特徴によって達成される。本発明によると、溶融部と、溶融していないが依然として付着性である部分との間の境界が、熱流のさらなる障害物となることが分かった。この境界によって、熱流ダイナミクスが急激に減少する。この境界のすぐ後ろでは、非溶融部熱流のダイナミクスが再び増加する。材料接合部を通過する熱流ダイナミクスが、結果画像の強度値として示される結果画像において、これは、この箇所で形成される強度ビードによって示される。
【0011】
第1のステップにおいて、この結果画像は、検査される材料接合部の周囲の熱流ダイナミクスを求めるために使用され、そのため前記熱流ダイナミクスは画像背景を形成する。画像背景の熱流ダイナミクスは、たとえばヒストグラムによって求められる。画像背景の熱流ダイナミクスから得られる値の1つは、材料接合部の非溶融部および溶融部の両方が存在できる領域を規定する最小動的閾値として定義される。次のステップにおいて、この領域中で、材料接合部を通過する熱流ダイナミクスのピーク値が求められ、このピーク値は最大動的閾値となる。最小閾値と最大閾値との間で変動する動的閾値は、結果画像上の一連の領域を画定し、これらの領域のそれぞれは、材料接合部を通過する動的閾値を超える熱流ダイナミクス値を表している。これらの領域は、それらの周辺部に関して検査される。強度ビードによって、溶融部と非溶融部との間の境界を横断するときにこれらの領域の外形が急激に増加する。これらの領域周辺部は、特徴ベクトルによって測定され、表され、周辺部は前記領域の外形を表す数値となる。この特徴ベクトルの急激な増加は、関連する領域が非溶融部の一部を取り囲んでいることを示している。特徴ベクトルのこの急激な増加は、たとえば曲線平滑化および曲線検査などの従来方法によって検出することができる。材料接合部の溶融部と非溶融部との間の境界は、動的および物体的に局在化しうる。このように溶融部は高い信頼性で検出可能である。検出された溶融部は次に、その位置および大きさに関して評価される。
【0012】
熱流の励起および検出が材料接合部の同じ側で行われる場合、材料接合部を通過する熱流ダイナミクスは、溶融部と非溶融部との間の境界を横断するときに減少する。この場合、強度ビードによって、境界を通過するときの検査領域の周辺部が急激に減少し、その結果急激な減少を特徴ベクトル中に観察することができる。
【0013】
上記方法はすべての合わせ部分で一般に同じである。したがって、同じまたは異なる材料の合わせ部分の材料接合部を検査することができる。さらに、この方法によって、溶接接合部およびはんだ接合部を検査することができる。これらの材料接合部は、溶接部と非溶接部との間の境界、またははんだ付け部と非はんだ付け部との間の境界をそれぞれ示さしている。したがって、検査される材料接合部の熱伝導率の局所的な差を示す結果画像上に強度ビードが形成される。前記強度ビードは、溶接接合部およびはんだ接合部の検出および評価を行うための従来の信号および画像処理方法によって検出することができる。
【0014】
材料接合部の励起および熱流の検出は、一般に、材料接合部の互いに異なる側または同じ側で行うことができる。したがって、透過および/または反射において時間および空間分解された熱流を示す様々な種類の結果画像が評価される。熱流の測定結果が、励起源の強度のばらつき、材料表面の状態および性質、ならびに合わせ部分の材料厚さの影響があまり大きくないことを保証する必要がある。したがって、熱流の絶対値や検査される材料接合部を熱流が通過する速度の絶対値を表すのではなく、熱流の局所的な速度差を表す結果画像が使用される。この種類の結果画像は、たとえば赤外ロックインサーモグラフィーを使用して得られる位相画像であってよい(Theory and Practice of Infrared Technology for Nondestructive Testing,Xavier P.V. Maldague,John Wiley and Sons,Inc., 2001)。位相画像は、材料接合部を伝播するときの熱波の移動時間を表しており、その結果、結果画像の種々の画像点間で発生する材料接合部の熱伝導率差を見ることができるようになる。熱流の局所的な速度差は熱流ダイナミクスと呼ばれる。
【0015】
請求項2に記載の基準領域によって、画像背景の熱流ダイナミクスから最小閾値が得られる。
【0016】
最大閾値は、請求項3に記載の試験領域によって容易に検出可能である。試験領域は、たとえば検査される領域の中心に位置することができる。試験領域の大きさは実験的に決定することができ、Shannonのサンプリング定理に注意する必要がある(Industrial Image Processing,Christian Demant,Bernd Streicher-Abel,Peter Waszkewitz,Springer-Verlag,1998)。試験領域の大きさは、たとえば3×3ピクセルに規定することができる。
【0017】
請求項4に記載の同じ大きさのいくつかの試験領域による最大閾値の測定は信頼性が高い。規定された大きさの試験領域が、最小閾値を超える熱流ダイナミクス値を示す領域中に移動するような方法で、これらの試験領域が形成される。試験領域の大きさは、たとえば3×3ピクセルに規定することができる。
【0018】
請求項5に記載の反復方法による増分量の決定によって、最適の増分量を見つけることができる。最適の増分量を決定するために、たとえば増分量1で開始することが考えられる。
【0019】
溶接ナゲットと呼ばれる溶融部と、溶接グルーと呼ばれる溶融していないが依然として付着性である部分とを含む請求項6に記載の溶接点は、工業用とにおいて重要な材料接合部の1つであり、したがって本発明による方法の利点は特に明らかである。
【0020】
請求項7に記載の材料特性曲線によって、溶接点の残りの材料厚さ、したがって溶接ガンによって形成された溶接点におけるくぼみの残りの材料厚さを正確に測定することができる。材料接合部を検査するために、検査される合わせ部分の材料の組み合わせの材料特性曲線をあらかじめ作成する必要がある。材料特性曲線は、溶接点の残りの材料厚さからの熱流ダイナミクスのピーク値の非線形依存性を示している。この特性曲線に必要なデータは、同じ材料の組み合わせのさまざまな基準溶接点において得られ、これらの基準溶接点は異なる残りの材料厚さを有する。熱流の透過成分と散逸成分とは、残りの材料厚さの決定において異なる役割を果たす。溶接点の残りの材料厚さが小さい場合には、熱流ダイナミクスのピーク値を決定するのは熱流の透過成分である。残りの材料厚さがより大きい場合には、熱流の散逸成分がより重要となる。したがって溶接ナゲットの領域中で測定されるピーク値を残りの材料厚さの決定に使用することができる。熱流ダイナミクスのピーク値は、溶接点の溶接ナゲットの領域中で測定される最大閾値に対応している。基準溶接点の残りの材料厚さは独立した方法を使用して測定される。
【0021】
請求項8に記載の第1の制限値との比較によって、孔を検出することができる。熱流ダイナミクス値が大きすぎる場合、これは溶接点の中に孔が存在することを示している。第1の制限値は経験的に求められる。
【0022】
請求項9に記載の第2の制限値との比較によって、空隙を検出することができる。熱流ダイナミクス値が小さすぎる場合、これは溶接ナゲット中に空隙が存在することを示している。この種類の溶接ナゲットはバーンアウト(burned out)溶接ナゲットと呼ばれる。第2の制限値は経験的に求められる。
【0023】
請求項10に記載の方法を開発することによって、検出された溶接ナゲットの領域中の表面損傷を特に調べることができる。損傷の検出は溶接ナゲットの領域に限定され、そのためこの方法は間違った結果が得られることから保護される。さらに別の画像は、たとえば記録された熱画像またはさらに別の結果画像の1つであってよい。結果画像は、たとえば赤外ロックインサーモグラフィーを使用して得られた振幅画像であってよい。振幅画像によって、溶接点を通過して伝播する熱波の振幅が示される。起源、大きさ、および位置、ならびに検出される欠陥の組み合わせに依存して、溶接点の品質を厳密に分類し評価することができる。さらに、損傷した溶接点の原因の特定および追跡が可能であり、そのため品質保証の基準となりうる溶接プロセス全体の統計的評価を行うことができる。
【0024】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面による実施形態の説明より明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】溶接点の形態の材料接合部の断面を示している。
【図2】溶接点を通過する熱流ダイナミクスの一次元分布の図である。
【図3】第1の特徴ベクトルの図であり、これによって、検査される領域の周辺部が熱流ダイナミクスの関数として表される。
【図4】第2の特徴ベクトルの図であり、これによって検査される領域の周辺部が熱流ダイナミクスの関数として表される。
【図5】残りの材料厚さの関数としての熱流ダイナミクスのピーク値を表す材料特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
試験サンプル1は、材料接合部4によって相互に連結した第1の合わせ部分2と第2の合わせ部分3とを含む。合わせ部分2、3は、同じまたは異なる材料厚さを有する同じまたは異なる材料から形成することができる。材料接合部4は溶接点である。以下は、溶接点4の形態の材料接合部の説明である。
【0027】
溶接点4は、溶融部5と、前記溶融部5を取り囲む非溶融部6とからなる2区画接合部を形成している。溶融部5と非溶融部6との間には、境界7が存在し、これは、溶融部5を画定し、溶融部5を溶融していないが依然として接着性である部分6から溶融部5を分離している。以降、溶融部を溶接ナゲット5と呼び、一方、非溶融部を溶接グルー6と呼ぶ。試験サンプル1の互いに反対側に励起源8および赤外線センサー9が配置される。
【0028】
検査される試験サンプル1および溶接点4は、励起源8によってパルスで励起される。透過成分11と散逸成分12とからなる熱流10が発生する。散逸成分12は散逸性成分とも呼ばれる。熱流10の透過成分11は、赤外線センサー9によって次々に取得される一連の熱画像として記録される。
【0029】
溶接点4の合わせ部分2、3のそれぞれはくぼみ13を有する。くぼみ13は、溶接点4を形成するために使用される溶接ガンによって形成される。くぼみ13によって、残りの材料厚さMが画定される。
【0030】
記録された一連の熱画像を評価するために演算装置14が設けられており、演算装置14は励起源8および赤外線センサー9に接続されている。一連の熱画像から、様々な種類の結果画像が得られる。位相画像の形態の結果画像によって、溶接点4を通過する熱流ダイナミクスWが示される。熱流ダイナミクスWは、溶接点4を通って伝播する熱流10の局所的な速度差を表しており、したがって熱伝導率の局所的な差を表している。
【0031】
図2は、断面座標xに沿った熱流ダイナミクスWの一次元分布15を示している。熱流ダイナミクスWは、一般に二次元分布を示す。定性的な観点から、前記二次元分布は一次元分布15に対応しているが、二次元分布は、溶接点4の形状に対応して非対称で不規則な形状を有する場合がある。
【0032】
熱流ダイナミクスWの二次元分布は、溶接点4の形状によって実質的に決定される。溶接点4の形状は、溶接ガンのくぼみ13によって形成される。以下は、熱流ダイナミクスWの一次元分布15のより詳細な説明である。しかし、溶接ナゲットを正確に検出するためには、評価が必要となるのは熱流ダイナミクスWの二次元分布であり、したがって以下の説明は二次元分布にも同様に適用される。
【0033】
溶接点4の中心において、熱流ダイナミクスWはピーク値を有し、溶接点4の周囲に向かうと熱流ダイナミクスWはこのピーク値から減少する。本発明によると、溶接ナゲット5と溶接グルー6との間の境界7で熱流ダイナミクスWのさらなる局所的減少が起こり、この境界7のすぐ後ろで熱流ダイナミクスWは再び増加することが分かった。この効果の結果として、熱流ダイナミクスWの一次元分布15に関して図2に示されるように強度ビード16が得られる。溶接ナゲット5の周囲に強度ビード16が形成される効果は、非対称および不規則である場合があり、そのため、溶接ナゲット5を正確に検出するために評価が必要となるのは熱流ダイナミクスWの二次元分布である。
【0034】
溶接ナゲット5を検出するために、第1のステップで最小閾値Wminが求められる。最小閾値Wminは、画像背景Hの熱流ダイナミクスWよりも大きい。最小閾値Wminは、画像背景Hの熱流ダイナミクスWの基準領域Rから求められ、基準領域Rは画像背景Hの一部を形成している。
【0035】
さらに、溶接点4を通過する熱流ダイナミクスWのピーク値に対応する最大閾値Wmaxが求められる。最大ピーク値Wmaxは、最小閾値Wminを超える熱流ダイナミクスWの値を示す領域Sの中心に位置する試験領域Tから求められる。最大閾値Wmaxは、試験領域Tから得られる熱流ダイナミクスWの値の平均値である。
【0036】
あるいは、最大閾値Wmaxは、領域S中で互いに対してずれた位置にある同じ大きさの数箇所の試験領域Tから求めることもでき、それぞれの試験領域Tについて、熱流ダイナミクスWの値の平均値が試験領域Tから得られる。最大閾値Wmaxはこれらの平均値の最大値である。
【0037】
溶接ナゲット5を検出するために、動的閾値Wdynを最小閾値Wminと最大閾値Wmaxとの間で変動させる。変動する動的閾値はWdyn,iと記載され、i=1〜nである。動的閾値Wdynは増分量ΔWdynで変動する。これは、2つの連続する動的閾値Wdyn,iおよびWdyn,i+1が増分量ΔWdynだけ互いに離れていることを意味する。最適増分量ΔWdynは反復的に求めることができる。
【0038】
溶接点4を通過する熱流ダイナミクスWの関連領域Bが各動的閾値Wdyn,iについて求められ、この領域Bは、動的閾値Wdyn,iを超える熱流ダイナミクスWの値を示す。各領域Bは、特徴ベクトルによって求められそれによって表される関連周辺部Uを有する。次に、すべての領域Bについて、周辺部の急激な変化ΔUに関して検査する。動的閾値Wdynが最大閾値Wmaxと最小閾値Wminとの間で変動する場合、検査される領域B溶接ナゲット5と溶接グルー6との間の境界7を横断する場合に周辺部Uの急激な増加が起こる。図2は、領域Bがまだ境界7を横断する前の周辺部Uを有する領域Bを示している。図2は、領域Bi+1が境界7を既に横断した場合の周辺部Ui+1を有する領域Bi+1をさらに示している。したがって領域Bi+1は溶接グルー6の一部を取り囲んでいる。溶接グルー6の取り囲まれた部分は、境界7よりも大きな熱流ダイナミクスWを示す。したがって、領域Bは境界7をまだ横断していない最大の領域であり、したがって溶接グルー6の一部を取り囲んでいない。したがって領域Bは、実質的に溶接ナゲット5に相当する。したがって溶接ナゲット5の位置および大きさは、領域Bおよびその関連する周辺部Uによって評価することができる。
【0039】
検査される領域Bの外形の状態に依存して、周辺部の急激な変化ΔUの後には、図4に示されるような周辺部の急激な減少、または図3に示されるような周辺部Uのさらなる増加が起こりうる。これは、明確な外形を有する物体は、前記物体の表面積が増加すると、理想的な円からのその形状のずれがなくなるかさらに増加するかのいずれかとなる傾向にあることを示すPoisson効果の結果である(Gerthsen Physik,23rd edition,130頁以下,Springer Verlag,2006)。物体の大きさが増加するときにこれらのずれがなくなる場合、これによって周辺部が減少する。ずれが実質的になくなるとすぐに、その物体の周辺部は再び持続的に増加する。
【0040】
検査される領域Bの周辺部の急激な変化ΔUは、従来の信号および画像処理方法によって検出可能である。それらによって、溶接ナゲット5の周囲の非対称で不規則な強度ビード16の形成を検出することができる。動的および適応性であり、従って自動的な溶接ナゲット5の検出が保証される。
【0041】
最大閾値Wmaxである熱流ダイナミクスWのピーク値から、溶接点4の残りの材料厚さMの無接触非破壊検査を行うことができる。残りの材料厚さMを求めるために、検査される合わせ部分2、3の材料の組み合わせに関してあらかじめ材料特性曲線Kが作成される。特性曲線Kは、種々の残りの材料厚さを有する基準溶接点によって求められ、これらの基準溶接点は、後に検査される対応の合わせ部分2、3を相互に連結している。各基準溶接点について、残りの材料厚さMは独立した方法によって測定される。さらに熱流ダイナミクスWのピーク値が基準溶接点について測定される。特性曲線Kは、残りの材料厚さMからの熱流ダイナミクスWのピーク値の非線形依存性を表している。
【0042】
特性曲線Kによって、検査される溶接点4と、溶接ガンによって形成された溶接点4におけるくぼみ13との残りの材料厚さMを調べることができる。検査される溶接点4の最大ピーク値Wmaxは第1の制限値Gと比較され、この制限値Gより大きい場合、これは溶接点4の中に孔が存在することを示している。さらに、検査される溶接点4の最大ピーク値Wmaxが第2の制限値Gと比較され、前記最大ピーク値Wmaxがこの制限値Gより小さい場合、これは溶接点4の中に空隙が存在することを示している。制限値G、Gは経験的に求められる。
【0043】
さらに、本発明の方法によって、溶接点4の種々の表面損傷の検出および評価を行うことができる。表面損傷の検出および評価は、溶接ナゲット5の検出される領域B中で行われる。表面損傷は、溶接ナゲット5の検出に使用される結果画像の座標系と同じ座標系を備える別の画像によって検出される。この種類の画像は、たとえば、熱画像、または赤外ロックインサーモグラフィーによって得られる振幅画像であってよい(Theory and Practice of Infrared Technology for Nondestructive Testing,Xavier P.V. Maldague,John Wiley and Sons,Inc., 2001)。欠陥の検出は溶接ナゲット5の領域B中で排他的に行われ、そのため間違った結果は回避される。たとえば溶接ナゲット5と溶接グルー6との間の境界7は欠陥として識別されない。欠陥の評価および検出は、たとえば従来の信号および画像処理方法を使用して行うことができる。
【0044】
溶接点4は、起源、大きさ、および位置、ならびに検出される欠陥の組み合わせに依存して分類することができる。これによって溶接点4の品質を正確に評価することができる。
【0045】
本発明による方法によって、溶接点4の自動非接触非破壊検査を工業規模で行うことが可能となる。本発明の方法は欠陥の広範な検出を提供し、それによって、検査される溶接点4の正確で信頼性の高い分類が保証される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの合わせ部分(2、3)の材料接合部(4)の自動非接触非破壊試験方法であって、
a.前記材料接合部(4)は、
i.溶融部(5)と
ii.前記溶融部(5)を取り囲む非溶融部(6)と
からなる2区画接合部であり;
b.赤外線画像の検査が、
i.少なくとも1つの励起源(8)が試験サンプル(1)を励起し;
ii.少なくとも1つの赤外線センサー(9)が、発生した熱流を一連の熱画像で検出し;
iii.前記一連の熱画像から結果画像を取得し;
iv.前記熱画像および前記結果画像を検査することで行われる;
自動非接触非破壊試験方法において、
c.前記材料接合部(4)を通過する熱流ダイナミクス(W)を示す結果画像からの前記溶融部(5)の検出が、
i.画像背景(H)の熱流ダイナミクス(W)を超える最小閾値(Wmin)を求め;
ii.前記材料接合部(4)を通過する前記熱流ダイナミクス(W)のピーク値に対応する最大閾値(Wmax)を求め;
iii.前記最小閾値(Wmin)と前記最大閾値(Wmax)との間で動的閾値(Wdyn)が変動し;
iv.前記動的閾値(Wdyn)を超える前記熱流ダイナミクス(W)の値を示す、前記材料接合部(4)を通過する前記熱流ダイナミクス(W)の一連の領域(B)を求め;
v.周辺部における急激な変化(ΔU)に関して、前記熱流ダイナミクス(W)の前記領域(B)を検査し;
vi.前記領域(B)から領域(B)として前記溶融部(5)を求め、前記周辺部における急激な変化(ΔU)は、前記溶融部(5)と前記非溶融部(6)との間の境界(7)を横断したことを示しており;
vii.前記溶融部(5)の位置および大きさを評価する、ことで行われることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記最小閾値(Wmin)が、前記画像背景(H)の前記熱流ダイナミクス(W)の基準領域(R)から求められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記最大閾値(Wmax)が試験領域(T)から求められ、
a.前記試験領域(T)が、前記最小閾値(Wmin)を超える前記熱流ダイナミクス(W)の値を示す領域(S)の中心に位置し;
b.前記最大閾値(Wmax)が、前記試験領域(T)からの前記熱流ダイナミクス(W)の値の平均値であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記最大閾値(Wmax)が、同じ大きさの数箇所の試験領域(T)から求められ、
a.前記試験領域(T)が、前記最小閾値(Wmin)を超える前記熱流ダイナミクス(W)の値を示す領域(S)に位置し、
b.各試験領域(T)に対して、前記熱流ダイナミクス(W)の値の平均値が前記試験領域(T)から求められ、
c.前記最大閾値(Wmax)が前記平均値の最大値であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記動的閾値(Wdyn)が増分量(ΔWdyn)で変動し、前記増分量(ΔWdyn)が反復的に求められることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記材料接合部(4)が溶接点であり、前記溶融部(5)が溶接ナゲットと称され、前記非溶融部(6)が溶接グルーと称されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記溶接点が材料特性曲線(K)を用いて評価され、
a.種々の残りの材料厚さ(M)を有し少なくとも2つの合わせ部分(2、3)を相互に連結する基準溶接点によって、前記特性曲線(K)が求められ;
b.前記残りの材料厚さ(M)が各基準溶接点について測定され;
c.熱流ダイナミクス(W)のピーク値が各基準溶接点について測定され;
d.前記熱流ダイナミクス(W)の前記ピーク値および関連する残りの材料厚さ(M)から前記特性曲線(K)が作成されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記最大閾値(Wmax)が第1の制限値(G)と比較され、前記最大閾値(Wmax)が前記制限値(G)を超える場合、前記溶接点に孔が存在することを意味することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記最大閾値(Wmax)が第2の制限値(G)と比較され、前記最大閾値(Wmax)が前記第2の制限値(G)未満である場合、前記溶接点に空隙が存在することを意味することを特徴とする請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記溶接点の表面損傷が別の画像を用いて検出され、
a.前記画像が、前記溶接ナゲットを検出した前記結果画像の座標系と同じ座標系を備え;
b.前記溶接ナゲットの検出された領域(B)で表面損傷の検出および評価が行われることを特徴とする、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−513883(P2010−513883A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541830(P2009−541830)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/010800
【国際公開番号】WO2008/077479
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509174473)テルモゼンゾリーク ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】