説明

杭柱建込装置

【課題】 従来の杭柱建込装置では、建込後の複数の杭柱の高さにばらつきが生じ、また、杭柱の建込位置の精度を確保できない。
【解決手段】 地盤7に固定される固定台2と、杭柱垂直度調整機構6を備えるとともに固定台とは別に設けられた架台3と、固定台に対して架台を固定するとともにその固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構4と、杭柱高さ調整機構5とを備え、杭柱高さ調整機構5が、地盤固定側部位(架台3)と杭柱25とに対応して設けられた能動体(油圧ジャッキ30のピストン30A)と能動体の圧力を受ける受圧体31とにより形成され、受圧体31が能動体の上下方向への移動に追随して杭柱25の高さを変化させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱の建込装置に関する。
【背景技術】
【0002】
杭を建物の柱として利用する工法(例えば「ダイレクトカラム工法」とか呼ばれている工法)が知られている。当該工法は、建物建設用敷地の地盤に掘削機で縦孔を形成し、縦孔内にセメントミルクを充填するとともに杭柱を建て込み、この杭柱の上部を地上に突出させて柱として利用する。当該工法において、杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−140564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の杭柱建込装置は、杭柱の高さを調整するための機構を備えていないため、建込後の複数の杭柱の高さにばらつきが生じる。このため、高さの低い杭柱の上端と屋根下地材との間にパッキンを介挿したりして杭柱の高さを揃えるようにしている。よって、建物の品質、作業性の面で問題があった。また、杭柱建込装置は、建込装置の杭柱通し部の中心を杭柱の設計上の建込位置の中心と一致させて地盤に固定する必要がある。これら中心が一致していなければ、杭柱の建込位置の精度が悪くなる。従来の杭柱建込装置は、一度地盤に固定してしまうと、その固定位置を変更するためには、地盤への固定作業をやり直す必要があるので大変である。また、地盤面は通常は整地されていないことが多く、このような地盤面において、上記中心が互いに一致するように杭柱建込装置を地盤に固定することは困難であり、杭柱の建込位置の精度を確保できない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、下部を地盤に形成された縦孔内に収納するとともに上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置において、杭柱高さ調整機構を備え、杭柱高さ調整機構が、地盤固定側部位と杭柱とに対応して設けられた能動体と能動体の圧力を受ける受圧体とにより形成され、受圧体が能動体の上下方向への移動に追随して杭柱の高さを変化させたことを特徴とする。また、下部を地盤に形成された縦孔内に収納するとともに上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置において、地盤に固定される固定台と、杭柱垂直度調整機構を備えるとともに固定台とは別に設けられた架台と、固定台に対して架台を固定するとともにその固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構とを備えたことを特徴とする。また、上述した杭柱垂直度調整機構と架台固定位置調整機構と杭柱高さ調整機構とを備えたことを特徴とする。また、杭柱垂直度調整機構が、杭柱の周囲における互いに異なる四方向から杭柱の周面に接触可能な互いに別々の面板と、1つ1つの面板を個別に杭柱の周面に向かう方向と周面から離れる方向とに移動させる移動機構と、移動機構を作動させるための移動操作部とを備え、移動操作部が、移動機構を作動させるための操作力を軽減する操作力軽減構造を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の杭柱建込装置は、杭柱垂直度調整機構と杭柱高さ調整機構とを備えるので、杭柱の垂直度を調整できるとともに、複数の杭柱の高さを揃えることができる。本発明の杭柱建込装置は、杭柱垂直度調整機構を備えた架台と地盤に固定される固定台とを別々に備え、固定台に対する架台の固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構を備えるので、杭柱の垂直度を調整できるとともに、架台の横方向の位置調整作業を容易とでき、杭柱の建込位置の精度を容易に確保できる。本発明の杭柱建込装置は、杭柱垂直度調整機構と架台固定位置調整機構と杭柱高さ調整機構とを備えるので、杭柱の垂直度を調整できて、さらに、架台の横方向の位置調整作業を容易とでき、杭柱の建込位置の精度を容易に確保でき、かつ、複数の杭柱の高さを揃えることができる。また、杭柱垂直度調整機構の移動操作部が操作力軽減構造を備えたので、杭柱の垂直度を容易に調整できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1;図2は本形態の杭柱建込装置であって、図1は杭柱建込装置の外観を示し、図2は図1のA−A断面を示す。
図1に示すように、杭柱建込装置1は、固定台2と架台3と架台固定位置調整機構4と杭柱高さ調整機構5と杭柱垂直度調整機構6とを備える。
【0007】
固定台2は、所定の間隔を隔てて並行に地盤7に固定される2本のH形鋼8;8により形成される。H形鋼8は、連結板9の両端に平板10;11が互いに平行に対向するように連結されたもので、一方の平板10の外面12より突出する固定ロッド13を建物建設用敷地の地盤7に突き刺すことで地盤7に固定される。地盤7に固定された2つのH形鋼8;8の他方の平板11;11の外面15;15上には架台3が載置され、当該架台3が架台固定位置調整機構4により固定台2に固定される。
【0008】
架台3は、正四辺形の枠体3Aと枠体3Aの4つの角部3Bから枠体3Aの中心に向けて延長する4つの杭柱垂直度調整機構支持台3Cとを有する。架台3の正四辺形の枠体3Aの1つ1つの辺部16の長さは、互いに平行を保って地盤7に固定された2つのH形鋼8;8の他方の平板11;11同士の対峙する内縁17;17間の距離より長く、他方の平板11;11同士の外縁18;18間の距離より短い。
【0009】
架台固定位置調整機構4は、架台3に設けられた固定用板21と、H形鋼8の他方の平板11と、当該固定用板21とH形鋼8の他方の平板11とを互いに圧力で接触させて固定する万力具22とで形成される。固定用板21は、架台3の相対向する2つの辺部16A;16Aの両端側(角部3B側)の下部側に辺部16Aに沿って形成されて、固定台2の2つのH形鋼8;8の他方の平板11;11の外面15;15に対面する。万力具22で固定用板21と平板11とを互いに接触する方向に締め付けることで架台3を固定台2に固定でき、万力具22を緩めることで固定台2に対する架台3の固定を解除できる。よって、固定台2を地盤7に固定させたまま、万力具22を操作することで、固定台2に対する架台3の固定位置を調整できる。つまり、杭柱垂直度調整機構6を備えた架台3と地盤7に固定される固定台2とを別々に備え、固定台2に対する架台3の固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構4を備える。架台固定位置調整機構4を備えたことで、杭柱建込装置1の杭柱通し部の中心となる架台3の枠体3Aの中心と杭柱25の建込位置の中心とを一致させるための架台3の横方向の位置調整作業が容易となり、杭柱25の建込位置の精度を容易に確保できる。また、従来のように地盤への固定作業をやり直すというような大変な作業も不要とできる。
【0010】
杭柱高さ調整機構5は、固定台2を介して地盤7に固定された地盤固定側部位としての架台3に設けられた2つの油圧ジャッキ30;30と、杭柱25に設けられた受圧体31とにより形成される。油圧ジャッキ30は架台3の相対向する2つの辺部16A;16Aの中央側の相対向する内面32に取付けられる。油圧ジャッキ30のピストン30Aが能動体に相当する。油圧ジャッキ30は内面32への取付部33を備え、図外の取付具で取付部33を内面32に固定することで取付けられる。受圧体31は杭柱25の周囲に固定される環状固定具34と、環状固定具34において180度隔てた位置に設けられた2つの受圧部35とにより形成される。環状固定具34は半円弧状の帯部34a;34a同士が両端側で連結具34bで連結されて杭柱25の周面26に密接状態に接触して固定される。受圧部35は、環状固定具34より外側に延長して油圧ジャッキ30のピストン30Aによる圧力を受ける受圧板36と、受圧板36の上面37と環状固定具34の帯部34aとに連結されて受圧板36を補強する補強板38とを備える。よって、油圧ジャッキ30を操作して能動体であるピストン30Aを上下させると、受圧体31がピストン30Aの上下方向への移動に追随して移動し、杭柱25の高さを変化させる。よって、杭柱高さ調整機構5により、杭柱25の建て込み高さを調整でき、複数の杭柱25の高さを揃えることができる。したがって、従来のように高さの低い杭柱の上端と屋根下地材との間にパッキンを介挿したりして杭柱の高さを揃えたりする場合に比べて、建物の品質、作業性を向上できる。
【0011】
杭柱垂直度調整機構6は、架台3の枠体3Aの4つの角部3Bより枠体3Aの中心方向に延長して設けられた4つの杭柱垂直度調整機構支持台3Cに個別に設けられた4つの垂直度調整具40により形成される。垂直度調整具40は、杭柱垂直度調整機構支持台3C上に立てられた支柱41と、支柱41の上端に設けられた雌ねじ部42と、雌ねじ部42に対応する雄ねじ部43を有する進退軸44と、進退軸44の後端に設けられて進退軸44を雌ねじ部42と雄ねじ部43とのねじ係合により進退移動させるための操作ハンドル45と、進退軸44の先端に設けられて杭柱25の周面26を押圧する面板46とで形成される。杭柱垂直度調整機構6は、すなわち、杭柱25の周囲における互いに90度隔てて異なる四方向から杭柱25の周面26に接触可能な互いに別々の面板46と、雌ねじ部42と進退軸44とのねじ係合により進退軸44を介して1つ1つの面板46を個別に杭柱25の周面26に向かう方向と周面26から離れる方向とに移動させる移動機構47と、面板46を移動させるための移動操作部としての操作ハンドル45とにより形成される。この操作ハンドル45は、進退軸44の後端に連結されて進退軸44の軸中心と直交する方向に伸びる長尺な操作棒48と操作棒48の一端を折曲して形成された把持部49とにより形成される。この長尺な操作棒48と把持部49とにより移動機構47を作動させるための操作力を軽減させる操作力軽減構造が形成される。すなわち、移動機構47における雌ねじ部42と進退軸44とのねじ係合の摩擦力を高めることで面板46の位置保持力を高めることができるとともに、進退軸44を進退させるために必要な力を軽減できる。つまり、長尺な操作棒48及び把持部49により、進退軸44をねじ係合に抗して回転させる力の作用点を進退軸44の中心軸より離れた位置に設定したので、操作者は軽い力で操作ハンドル45を操作でき、作業性を向上できる。この杭柱垂直度調整機構6の垂直度調整具40を個別に操作して、杭柱25の周囲における互いに異なる四方向から杭柱25の周面26に面板46による面圧を加えることで、杭柱25の垂直度を容易に調整できる。
【0012】
次に杭柱建込装置1を用いた杭柱25の建て込み方法を説明する。まず、図外のアースオーガー等の掘削機で建物建設用敷地の地盤7に縦孔50を形成し、縦孔50内に所定時間経過後に固化する固化材としてのセメントミルク51を注入する。杭柱25の設計上の建込位置の近傍、すなわち、縦孔50の近傍の地盤7に固定台2を固定する。固定台2は2本のH形鋼8;8により形成したので、取り扱いが容易で、地盤7への固定作業を容易とできる。その後、図外のクレーン等の揚重機で吊り下げたロープを架台3の吊り部53に固定し、架台3を吊り上げて固定台2の上に載せた後に、架台固定位置調整機構4により架台3を固定台2に固定する。この場合、2本のH形鋼8;8の他方の平板11;11の平坦な外面15上に載せた架台3を外面15上で移動させて架台3の枠体3Aの中心と杭柱25の建込位置の中心とを一致させてから万力具22で架台3の固定用板21とH形鋼8の他方の平板11と互いに締め付けることで、架台3を固定台2に固定できる。よって、杭柱25の建込位置の精度を確保できる。次に、杭柱25を揚重機で吊り上げて杭柱25の下部27を縦孔50内に入れて、杭柱25の上部28を地盤7より上方に突出させるよう杭柱25を建て込む。その後、杭柱高さ調整機構5を設ける。すなわち、受圧体31の環状固定具34により受圧体31を杭柱25の周面26に固定し、油圧ジャッキ30を架台3の辺部16A;16Aの内面32;32に取付ける。そして、杭柱25の垂直度及び高さを測量技術で監視しながら、杭柱高さ調整機構5と杭柱垂直度調整機構6とにより、杭柱25の高さ及び垂直度を調整することで、杭柱25を所定の建込位置に垂直に建て込むことができ、また、複数の杭柱25を所定の高さに揃えて建て込むことができる。
【0013】
尚、能動体は上下に移動可能なものであれば良い。能動体を杭柱25に固定し、架台3に受圧体を固定して、受圧体が能動体の上下方向への移動に追随して杭柱の高さを変化させる杭柱高さ調整機構としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0014】
この装置を用いて建て込まれる杭柱を利用した工法は、大型店舗や倉庫、工場などの平屋建物の建造に適している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】杭柱建込装置を示す斜視図(最良の形態)。
【図2】図1のA−A断面図(最良の形態)。
【符号の説明】
【0016】
1 杭柱建込装置、2 固定台、3 架台、4 架台固定位置調整機構、
5 杭柱高さ調整機構、6 杭柱垂直度調整機構、7 地盤、
25 杭柱、26 杭柱の周面、27 杭柱の下部、28 杭柱の上部、
30 油圧ジャッキ、30A ピストン(能動体)、31 受圧体、
40 垂直度調整具、45 操作ハンドル(移動操作部)、
46 面板、47 移動機構、50 縦孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部を地盤に形成された縦孔内に収納するとともに上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置において、杭柱高さ調整機構を備え、杭柱高さ調整機構が、地盤固定側部位と杭柱とに対応して設けられた能動体と能動体の圧力を受ける受圧体とにより形成され、受圧体が能動体の上下方向への移動に追随して杭柱の高さを変化させたことを特徴とする杭柱建込装置。
【請求項2】
下部を地盤に形成された縦孔内に収納するとともに上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置において、地盤に固定される固定台と、杭柱垂直度調整機構を備えるとともに固定台とは別に設けられた架台と、固定台に対して架台を固定するとともにその固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構とを備えたことを特徴とする杭柱建込装置。
【請求項3】
下部を地盤に形成された縦孔内に収納するとともに上部を地盤より上方に突出させて柱として利用する杭柱を垂直に建て込むための杭柱垂直度調整機構を備えた杭柱建込装置において、地盤に固定される固定台と、杭柱垂直度調整機構を備えるとともに固定台とは別に設けられた架台と、固定台に対して架台を固定するとともにその固定位置を変更可能とする架台固定位置調整機構と、杭柱高さ調整機構とを備え、杭柱高さ調整機構が、地盤固定側部位と杭柱とに対応して設けられた能動体と能動体の圧力を受ける受圧体とにより形成され、受圧体が能動体の上下方向への移動に追随して杭柱の高さを変化させたことを特徴とする杭柱建込装置。
【請求項4】
杭柱垂直度調整機構が、杭柱の周囲における互いに異なる四方向から杭柱の周面に接触可能な互いに別々の面板と、1つ1つの面板を個別に杭柱の周面に向かう方向と周面から離れる方向とに移動させる移動機構と、移動機構を作動させるための移動操作部とを備え、移動操作部が、移動機構を作動させるための操作力を軽減する操作力軽減構造を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の杭柱建込装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−97440(P2006−97440A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288166(P2004−288166)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】