板材印刷装置
【課題】圧延まま鋼板のような板材に対し、はみ出しを抑制した印刷エリアを設定できる板材印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷領域39に搬入された鋼板27に印刷する印刷装置7と、鋼板27の有無を検知する鋼板検知部材20と、印刷装置7の印刷動作を制御する制御部45と、を備えている鋼板両面印刷装置1であって、制御部45には、鋼板検知部材20が検知する印刷が開始される側の辺に交差する辺および辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、辺に近い辺の検知点および辺の検知点の中点と辺から遠い辺の検知点および辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として鋼板27の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モード46が備えられている。
【解決手段】印刷領域39に搬入された鋼板27に印刷する印刷装置7と、鋼板27の有無を検知する鋼板検知部材20と、印刷装置7の印刷動作を制御する制御部45と、を備えている鋼板両面印刷装置1であって、制御部45には、鋼板検知部材20が検知する印刷が開始される側の辺に交差する辺および辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、辺に近い辺の検知点および辺の検知点の中点と辺から遠い辺の検知点および辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として鋼板27の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モード46が備えられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の建造は、船体を形成する船殻工事と艤装品を取り付ける艤装工事とに大別される。船殻工事は、鋼板(板材)を所定形状に切断し、必要に応じて曲げあるいは穿孔加工をした後、互いを溶接等によって接合してブロックを造り上げる。多数のブロックは、ドック(船渠)または船台の上で電気溶接して船のかたち(船体)に仕上げられる。船の形になると進水され、船体は水上に浮かべられる。
進水後に、艤装品である各機器、部材等を船体に取付・据付する艤装工事が行われる。
なお、艤装工事では、工期短縮や工程削減を目的に、進水前の段階で先行して船内配管や居住設備の多くがあらかじめブロックに作り付けられる先行艤装が行われている。
【0003】
ブロックあるいは船体への艤装品の取付工事を正確にかつ容易に行うために、ミルメーカから納入された鋼板の段階で鋼板の加工用情報に加えて艤装品の種類、取付位置、取付方法等の情報を表示しておくことが行われている。
この表示を効率的に行うものとして、鋼板に印字を行う鋼板印刷装置が種々提案されている。
鋼板印刷装置としては、固定された印刷装置の下を搬送される鋼板に印刷するもの、停止している鋼板の上を印刷装置が走行しながら印刷するもの、あるいは、特許文献1に示されるように、搬送される鋼板に対し、印刷装置が同期して走行しつつ鋼板に印刷するもの等、種々の形式が提案されている。
【0004】
このような鋼板印刷装置で鋼板に印刷する場合、印刷情報が鋼板からはみ出さないように印刷することが重要である。
船殻工事で用いられる鋼板は、略矩形状に切り出されることが多く、それに合わせて印刷情報も短形形状をしている。
従来の鋼板印刷装置では、鋼板の片側の形状情報、たとえば、長手方向における片側の辺における2点を結ぶ直線を基準として印刷情報を印刷する印刷エリアの基点・傾きを決定し、それに基づいて印刷を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−010142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ミルメーカから納入される鋼板は、圧延まま鋼板で入荷してくることがあり、幅および長さは指定した寸法が確保されているものの、外形については不規則な形状となっている場合がある。特に長手方向の形状が不規則であることが多い。
このような不規則な形状の鋼板の場合、従来の鋼板印刷装置のように鋼板の片側の形状情報に基づいて印刷エリアを設定するものでは、形状情報の取得位置によって印刷位置が鋼板からはみ出すおそれがある。
また、鋼板の表裏両面に印刷を施す場合、表裏両面に取り付けられる艤装品の位置関係がずれないように印刷エリアを設定することが要求される。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、圧延まま鋼板のような板材に対し、はみ出しを抑制した印刷エリアを設定できる板材印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、印刷領域に搬入された板材に印刷する印刷装置と、前記板材の有無を検知する板材検知部材と、前記印刷装置の印刷動作を制御する制御部と、を備えている板材印刷装置であって、前記制御部には、前記板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、前記印刷開始辺に近い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点と前記印刷開始辺から遠い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として前記板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられている板材印刷装置である。
【0009】
本発明によれば、印刷領域に搬入された板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、板材検知部材が検知した印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺、言い換えると、板材の両側におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得する。印刷エリア設定モードは、取得した検知点の位置情報から印刷開始辺に近い側における一辺の検知点および他辺の検知点の中点、すなわち、二分する中間位置を算出する。印刷エリア設定モードは、前記印刷開始辺から遠い側における一辺の検知点および他辺の検知点の中点、すなわち、二分する中間位置を算出する。印刷エリア設定モードは、これらの2つの中点位置を結んだ中点線を算出する。
印刷エリア設定モードは、この中点線を幅方向の基準として板材の印刷エリアを設定する。具体的には、たとえば、印刷エリアの幅方向中心線と中点線とが略一致するように印刷エリアが設定される。
【0010】
中点線は、板材の両側における2箇所の幅方向を二分する中間位置を結んで形成されるので、板材の略中央位置に位置していることになる。したがって、印刷エリアは、板材の幅方向の中央位置を基準としてその両側に設定されることになるので、印刷エリアを板材の中央に収めることができる。
印刷エリアが板材の中央に収まると、圧延まま鋼板のような板材でも幅方向の寸法は指定した寸法が確保されているので、印刷エリアが板材からはみ出すことを抑制することができる。
印刷装置は、設定された印刷エリア内に所定の印刷情報を印刷する。
【0011】
上記態様では、前記印刷エリア設定モードは、前記板材検知部材が検知する前記印刷開始辺の間隔をあけた2検知点を通る直線を算出し、前記検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定するようにしてもよい。
【0012】
印刷エリア設定モードは、板材検知部材が検知した印刷が開始される側の印刷開始辺の間隔をあけた2検知点位置情報を取得する。印刷エリア設定モードは、取得した検知点を通る直線を算出する。この直線によって印刷開始辺の傾斜方向を判定することができる。
印刷エリア設定モードは、検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定する。
このようにすると、印刷エリアが印刷開始辺から外にはみ出すことを抑制することができる。
【0013】
上記態様では、前記印刷領域に搬入される前記板材を特定する特定情報を検出する特定情報検出手段と、該特定情報検出手段が検出した特定情報に基づいて前記板材に印刷する印刷情報を前記制御部に送る印刷情報指示手段と、が備えられていてもよい。
【0014】
特定情報検出手段は、搬入される板材に表示された特定情報、たとえば、部品名、部品記号を表す情報を検出し、印刷内容指示手段へ送信する。印刷内容指示手段は、この特定情報に基づいて板材を特定し、特定された板材に印刷する印刷情報を印刷装置に送る。制御部は、送られた印刷情報に基づいて印刷される範囲を設定する。
制御部は、板材検知部材の検知情報に基づき設定された基準と印刷情報の範囲とにより、この印刷情報を印刷する印刷エリアを設定する。
【0015】
上記態様では、前記一辺側の前記印刷領域の側部に設定された反転領域と前記印刷領域との間で、前記板材を選択的に搬送する搬送装置と、前記印刷領域の前記反転領域側に前記板材に対して選択的に係合可能に設けられ、前記板材の位置を規制する第1の規制部材と、前記印刷領域の幅方向で前記第1の規制部材とは反対側に設けられ、前記板材の位置を規制する第2の規制部材と、前記反転領域に設置され、前記板材を前記一辺の回りに回転し、表裏反転させる反転装置と、が備えられていてもよい。
【0016】
第1の規制部材が板材と係合する状態とされる。この状態で印刷領域内に搬入された板材は搬送装置によって反転領域側に向けて搬送される。これにより、板材は、印刷領域の反転領域側に設けられた第1の規制部材に押し付けられるので、第1の規制部材によって板材における反転領域側の一辺の位置が規制される。この状態で、板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、上述したように板材検知部材による検知情報に基づいて印刷エリアを設定する。印刷装置はこの印刷エリア内に所定の情報を印刷する。
板材の両面に印刷する場合には、第1の規制部材を板材に対し係合しないようにし、搬送装置によって板材を反転領域に搬送する。反転領域に搬入された板材は、反転装置によって反転領域側の一辺の回りに回転し、表裏反転させられる。すなわち、板材は他面が上になるとともに搬入時における反転領域側の一辺が印刷領域側に位置することになる。
【0017】
第2の規制部材が板材と係合する状態とされる。この状態で板材は第2の搬送装置によって印刷領域側に向けて搬送される。これにより、板材は、印刷領域の幅方向で第1の規制部材とは反対側に設けられた第2の規制部材に押し付けられるので、第2の規制部材によって板材における先の印刷時における反転領域側の一辺の位置が規制される。この状態で、板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、上述したように板材検知部材による検知情報に基づいて印刷エリアを設定する。印刷装置はこの印刷エリア内に所定の情報を印刷する。
このようにして、板材は両面に所定の印刷情報を印刷することができる。
印刷領域の両側にある第1の規制部材および第2の規制部材によって一面および他面の印刷時の基準位置となる辺を規制する間に、反転装置によって反転領域側の一辺の回りに回転し、表裏反転させられるので、第1の規制部材および第2の規制部材は板材の同じ一辺の位置を確実に規制することができる。すなわち、一面および他面の板材検知部材によるセンシング時の板材は、第1の規制部材および第2の規制部材の間の中心線に対して線対称となるので、板材における印刷開始辺、一辺および他辺の板材検知部材に対する相対的位置関係は略同一となる。このため、板材検知部材のセンシングによって設定される印刷エリアは略同一となるので、両面に印刷される情報は正確な位置関係で印刷することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、印刷開始辺に近い一辺の検知点および他辺の検知点の中点と印刷開始辺から遠い一辺の検知点および他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられているので、設定される印刷エリアが板材からはみ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる鋼板両面印刷装置の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる第1横送りコンベアの平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる第2横送りコンベアの平面図である
【図4】本発明の一実施形態にかかる反転部材の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる内側倣いローラ群が鋼板を規制している状態を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる鋼板検知部材の検知点を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで中点線の傾きを示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷情報を傾かせた状態を示す模式図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで鋼板角点を算出する状態を示す模式図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで傾きを0とした状態を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードでデータ基準点を算出する状態を示した模式図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷基準点を算出する状態を示した模式図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷基準点を基準として印刷情報を配置した状態を示した模式図である。
【図14】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで設定された印刷エリアと従来手法で設定された印刷エリアとを示す模式図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかる外側倣いパネル群が鋼板を規制している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる鋼板両面印刷装置(板材印刷装置)1について図1〜図15を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる鋼板両面印刷装置1の全体概略構成を示す平面図である。
鋼板両面印刷装置1には、縦送りコンベア3と、横送りコンベア(搬送装置)5と、印刷装置7と、反転装置9と、内側倣いローラ群(第1の規制部材)11と、外側倣いパネル群(第2の規制部材)13と、バーコードリーダ(特定情報検出手段)15と、印刷情報取得用パソコン(印刷内容指示手段)17と、鋼板検知部材(板材検知部材)20と、が備えられている。
【0021】
縦送りコンベア3は、屋外23から屋内25に亘って配置されている複数のローラ19によって構成されたローラコンベアである。ローラ19は、たとえば、径165.2mmで長さが略4600mmとされ、搬送方向21に沿って所定のピッチ、たとえば、500mmで略44mに亘って配置されている。ローラ19は図示しない駆動手段によって回転駆動される。鋼板(板材)27は、一般に長手方向が搬送方向21に沿うように縦送りコンベア3に載置されて搬送される。
ローラ19は、ピッチよりも小さい径であるので、ローラ19間には、間隔が空けられていることになる。
【0022】
縦送りコンベア3の側部には、鋼板(板材)27を仮置きする仮置場29が備えられている。縦送りコンベア3の海側31には、運搬船から鋼板27の荷揚げを行う水切り場33が備えられている。
運搬船を含む水切り場33、仮置場29および屋外23に位置する縦送りコンベア3の範囲でマグネットによって鋼板27の搬送、載置等の取扱いを行える屋外マグネットクレーン35が備えられている。
【0023】
運搬船で搬送される鋼板27には、一般に鋼板番号等の鋼板27を特定する特定情報が表示されている。屋外マグネットクレーン35が鋼板27を荷揚げし、たとえば、仮置場29に仮置きしたときに、この特定情報である鋼板番号に対応するバーコードが鋼板27に貼付される。
【0024】
縦送りコンベア3における屋内25へ入った位置には、鋼板乾燥装置37が備えられている。鋼板乾燥装置37は、縦送りコンベア3で搬送される鋼板27に熱風を吹きかけ、水分を除去、すなわち、乾燥するものである。吹きかけられる熱風の温度は、たとえば、常温から350℃までの範囲で状況によって選択されるように構成されている。
鋼板乾燥装置37は、たとえば、縦送りコンベア3の中途に設けられた鋼板感知センサ38によって鋼板27が検知されると、鋼板27が進入してくると判断して設定された温度の熱風を吹きかけるようにされている。
鋼板感知センサ38としては、たとえば、磁気感知式のセンサが用いられる。
なお、鋼板感知センサ38としては、公知のセンサを用いることができ、屋外使用が可能なものであれば、特にそのセンサを限定するものではない。
【0025】
バーコードリーダ15は、鋼板乾燥装置37の搬送方向21の下流側に設置されている。バーコードリーダ15としては、たとえば、可視光半導体レーザを用いる長距離レーザタイプが用いられる。
バーコードリーダ15には、鋼板27の存在を検知する鋼板感知センサ38が付属されていてもよい。鋼板感知センサ38としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、バーコードリーダ15および鋼板感知センサ38としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0026】
屋内25に位置する縦送りコンベア3には、図1に示されるように印刷領域39が設定されている。印刷領域39は、印刷する鋼板27の大きさに対応して設定される。
印刷領域39の両側には、印刷領域39の全長よりも長い範囲に亘り、搬送方向に延在するようにレール41が施設されている。印刷装置7は、図示しない走行部材によってこのレールに沿って移動するように構成されている。
印刷装置7には、印刷部材42と、制御部45とが備えられている。印刷部材42はドット印字方式であり、搬送方向に略直交する方向(以下、幅方向43という。)にインクを噴射する複数、たとえば、29個の印字ヘッド(図示省略)が間隔を空けて並んで取り付けられている。各印字ヘッドは、幅方向に移動可能とされている。
制御部45は、印刷部材42および走行部材の動作を制御するものである。制御部45には、鋼板27への印刷範囲である印刷エリアA設定する印刷エリア設定モード46が備えられている。
【0027】
鋼板検知部材20は、印刷装置7に取り付けられている。鋼板検知部材20は、幅方向43に延在するように配置されている。鋼板検知部材20としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、鋼板検知部材20としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0028】
屋内25の縦送りコンベア3に近い場所に、鋼板27への印刷等を管理する管理室47が備えられている。
印刷情報取得用パソコン17は、管理室47内に設置されている。印刷情報取得用パソコン17は、バーコードリーダ15が読み取ったバーコード、すなわち、鋼板番号情報を受け取る。印刷情報取得用パソコン17は、受け取った鋼板番号に基づいて鋼板番号毎に印刷情報を保管している図示しない設計サーバーから受け取った鋼板番号の鋼板27に印刷されるべき印刷情報を取得し、印刷装置7の制御部45に送信する。
【0029】
印刷領域39の入口部分に、鋼板27の有無を検出する鋼板感知センサ49が備えられている。鋼板感知センサ49が鋼板27を検知しなくなると、鋼板27が印刷領域39に進入したと判定できる。
鋼板感知センサ49としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、鋼板感知センサ49としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0030】
印刷情報を受け取った制御部45は、鋼板27が印刷領域39に入ったことを検知した後、印刷情報と鋼板27の印刷エリアAとを考慮して印刷動作を調整するようにされている。
制御部45は、印刷装置7の搬送方向21への移動速度と同期して印刷部材42の各印字ヘッドのインク噴射動作、幅方向43への移動速度および位置を制御して所定の印刷を行うようにされている。
なお、印刷部材42としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0031】
印刷領域39の側部に反転領域55が設けられている。
内側倣いローラ群11は、印刷領域39の反転領域55側に配置されている。内側倣いローラ群11は、軸線が上下方向(図1の紙面に直交する方向)に延在する円筒形状をした複数の内側倣いローラ51を備えている。
各内側倣いローラ51の軸線中心は、幅方向43の位置が略同一とされている。各内側倣いローラ51は、ローラ19と略同位置に、ローラ19の上端位置よりも上方に位置するように固定して設置されている。
【0032】
外側倣いパネル群13は、印刷領域39の反転領域55側と反対側に配置されている。外側倣いパネル群13は、軸線が上下方向(図1の紙面に直交する方向)に延在する角形状をした複数の外側倣いパネル53を備えている。
各外側倣いパネル53の軸線中心は、幅方向43の位置が略同一とされている。各外側倣いパネル53は、後述する第1横送りコンベア57の側部に配置され、第1横送りコンベア57と一体的に上下方向に移動するように設置されている。外側倣いパネル53は、第1横送りコンベア57よりも上方へ突出するように取り付けられている。
なお、 内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の搬送方向21における設置位置は、これに限らない。
【0033】
横送りコンベア5には、印刷領域39のローラ19の間に幅方向43に延在するように設置されている複数の第1横送りコンベア57と反転領域に幅方向43に延在するように設置されている複数の第2横送りコンベア59とが備えられている。
図2は、第1横送りコンベア57の平面図である。図3は、第2横送りコンベア59の平面図である。
第1横送りコンベア57には、第1チェーン支持部61と、第1チェーン63と、第1駆動スプロケット65と、第1従動スプロケット67と、第1駆動モータ69とが備えられている。
【0034】
第1チェーン支持部61は、略矩形断面をした中空の柱状体である。第1チェーン支持部61は、幅方向43に延在し、上下方向に移動可能にされている。第1チェーン支持部61の上面には、略全長に亘り第1チェーン63を案内する第1チェーンガイド71が取り付けられている。
第1駆動スプロケット65は、第1チェーン支持部61の反転領域55側の端部に突出するように取り付けられている。第1駆動スプロケット65は、第1駆動モータ69によって回転駆動されるように構成されている。
第1従動スプロケット67は、第1チェーン支持部61の第1駆動スプロケット65とは反対側の端部に突出するように取り付けられている。
【0035】
第1チェーン63は、周回するように第1駆動スプロケット65と第1従動スプロケット67とに掛け渡されている。第1チェーン63の上方通路は、第1チェーン支持部61の上部を通り、下方通路は第1チェーン支持部61の内部空間を通っている。第1チェーン63は、第1チェーン支持部61の上部を通る際、第1チェーンガイド71によって搬送方向21の動きを制限されるとともに下方への移動を抑制されている。
第1チェーン63は、鋼板27に作用する力を低減させるため、プレートの中央部が外側に延び、そこに自由に回転するフリーローラが取り付けられているものとしてもよい。
【0036】
第1チェーン支持部61は、図示しない駆動源によって上下方向に移動させられる。第1チェーン支持部61は、第1フリーローラ75の上端位置がローラ19の上端位置よりも下方位置から内側倣いローラ51の上端位置よりも上方位置までの間に、位置するようにされている。
縦送りコンベア3、言いかえるとローラ19が鋼板27を搬送しているときには、第1チェーン63の上端位置がローラ19の上端位置よりも下方に位置させられている。この位置から第1チェーン支持部61が上方に移動し、第1チェーン63の上端位置がローラ19の上端位置よりも上方になると、ローラ19に替わり第1チェーン63が鋼板27を支持することになる。
【0037】
このとき、第1チェーン63の位置によって第1チェーン63に支持された鋼板27が内側倣いローラ51と係合する、すなわち、内側倣いローラ51に当て込むことができる状態になる。また、外側倣いパネル53は第1横送りコンベア57よりも上方に突出して設けられているので、第1チェーン63に支持された鋼板27が外側倣いパネル53と係合する、すなわち、外側倣いパネル53に当て込むことができる状態である。
言い換えると、第1横送りコンベア57の上下方向の移動によって、内側倣いローラ51は鋼板27に係合する状態と、鋼板27と係合しない状態と、になる。すなわち、内側倣いローラ51は鋼板27に選択的に係合可能に設けられている。
【0038】
第1チェーン支持部61の反転領域55側の端部分における両側面には、それぞれ略矩形断面をした中空の柱状体である一対の第1支持部材73が、搬送方向21に沿って延在するように固定して取り付けられている。各第1支持部材73の先端上部には、搬送方向21に沿う軸線回りに自由に回転する第1サイドローラ(支持ローラ)75が取り付けられている。第1サイドローラ75の上端位置は、第1チェーン63の上端位置と略同一位置とされている。
【0039】
複数の第2横送りコンベア59は、間隔を空けて反転領域55の略全域をカバーするように設置されている。
第2横送りコンベア59には、第2チェーン支持部77と、第2チェーン79と、第2駆動スプロケット81と、第2従動スプロケット83と、第2駆動モータ85と、第2チェーンガイド87と、補助ローラ89と、が備えられている。
なお、第1横送りコンベア57と第2横送りコンベア59との間隔が小さくされている場合には、補助ローラ89を備えなくてもよい。
【0040】
第2チェーン支持部77は、第1チェーン支持部61と基本的構成は略同じである。第2チェーン支持部77は、第1チェーン支持部61の長さの略2倍の長さとされている。
第2駆動スプロケット81は、第2チェーン支持部77における印刷領域39と反対側の端部に突出するように取り付けられ、第2駆動モータ85によって回転駆動される。
第2従動スプロケット83は、第2チェーン支持部77の印刷領域39側の端部に突出するように取り付けられている。
【0041】
第2チェーン79は、周回するように第2駆動スプロケット81と第2従動スプロケット83とに掛け渡されている。第2チェーン79は、第1チェーン63と長さが異なるだけで、他の構成は基本的に同じである。第2チェーン79は、鋼板27に作用する力を低減させるため、プレートの中央部が外側に延び、そこに自由に回転するフリーローラが取り付けられているものとしてもよい。
【0042】
補助ローラ89は、第2チェーン支持部77の印刷領域39側の端部に、搬送方向21に沿う軸線回りに回転自在に取り付けられている。
補助ローラ89は、上端位置は、第2チェーン79の上端位置と略同一位置とされる投入位置と、待機位置との間を移動するように構成されている。
【0043】
第2チェーン支持部77は、図示しない駆動源によって上下方向に移動させられる。第2チェーン支持部77が上方位置に移動したとき、第2チェーン79の上端位置はローラ19および後述する第1アーム部材99の上端位置よりも上側に位置するようにされている。
第2チェーン支持部77の両側面には、第1支持部材73と同じ構成をした一対の第2支持部材91が、第2チェーン支持部77の略全長に亘り間隔を空けて複数対取り付けられている。各第2支持部材91の先端上部には、搬送方向21に沿う軸線回りに自由に回転する第2サイドローラ93が取り付けられている。第2サイドローラ93の上端位置は、第2チェーン79の上端位置と略同一位置とされている。
【0044】
反転装置9には、第2横送りコンベア59の間に幅方向43に延在するように設置されている複数の反転部材95が備えられている。
図4は、反転部材95の正面図である。
反転部材95には、アーム支持部材97と、第1アーム部材99と、第2アーム部材101と、第1アーム駆動部材103と、第2アーム駆動部材105とが備えられている。
【0045】
アーム支持部材97は、反転領域55の略全幅に亘り幅方向43に延在するように基礎に固定されて設置されている。
第1アーム部材99および第2アーム部材101は、略矩形断面をした棒状体である。第1アーム部材99および第2アーム部材101は、アーム支持部材97の上部に、長手方向に隣り合って配置されている。言い換えると、第1アーム部材99は、アーム支持部材97の印刷領域39側に配置され、第2アーム部材101はアーム支持部材97の印刷領域39の反対側に配置されている。
【0046】
アーム支持部材97の長手方向略中央位置には、それぞれ軸線が搬送方向21に延在する第1支持軸107および第2支持軸109が隣り合って対向するように取り付けられている。
第1アーム部材99の印刷領域39の反対側端部は、第1支持軸107に揺動可能に取り付けられている。第2アーム部材101の印刷領域39側端部は、第2支持軸109に揺動可能に取り付けられている。
第1アーム部材99および第2アーム部材101には、鋼板27の移動を防止する手段、たとえば、ストッパ、電磁石等が備えられている。
【0047】
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、モータ駆動されるウォームギア機構によってネジ軸が伸縮されるスクリュージャッキ方式が用いられている。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、アーム支持部材97の下方に取り付けられている。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、基礎に揺動可能に取り付けられ、伸縮するネジ軸の先端は第1アーム部材99および第2アーム部材101に揺動可能に取り付けられている。
【0048】
なお、第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、隣り合う複数の第1アーム部材99および第2アーム部材101に対して1個設けるようにしてもよい。このようにすると制御対象の数が減少するので、動作の制御が簡単になる。
また、第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0049】
以上のように構成された鋼板両面印刷装置1の動作について説明する。
鋼板27は、屋外マグネットクレーン35によって運搬船から荷揚げされ、仮置場29に荷揚げされる。鋼板27に表示された、たとえば、鋼板番号に対応するバーコードが鋼板27に貼付される。
仮置場29に載置された1枚の鋼板27が、図1に示されるように屋外マグネットクレーン35によって屋外23に位置する縦送りコンベア3の上に載置される。
【0050】
鋼板27が縦送りコンベア3に載置されると、縦送りコンベア3のローラ19が回転され、鋼板27を搬送方向21に搬送する。
鋼板感知センサ38が鋼板27の先頭を感知すると、鋼板乾燥装置37を作動させる。縦送りコンベア3によって継続して搬送される鋼板27は、屋外23から屋内25に入り、鋼板乾燥装置37を通過する。この際、鋼板乾燥装置37が予め設定された温度の熱風を吹きかけ、鋼板27に付着した水分を除去し、乾燥する。
【0051】
バーコードリーダ15は、通過する鋼板27に貼付されたバーコードを読み取る。読み取られたバーコードの内容、すなわち、鋼板番号は、印刷情報取得用パソコン17に送られる。
印刷情報取得用パソコン17は、受け取った鋼板番号に基づいて鋼板番号毎に印刷情報を保管している図示しない設計サーバーから当該鋼板番号の鋼板27に印刷されるべき印刷情報を取得し、印刷装置7の制御部45に送信する。
【0052】
鋼板感知センサ49が、搬送されている鋼板27を感知した後、感知しなくなると、鋼板27が印刷領域39に進入したと判断し、縦送りコンベア3は停止される。
このとき、鋼板27は、印刷領域39内で図1に示されるような位置に停止する。
非係合位置に位置する内側倣いローラ群11が上方へ移動し、係合位置とされる。その後、第1横送りコンベア57の第1チェーン支持部61が上方へ移動させられ、鋼板27は、複数の第1チェーン63によって支持される。
【0053】
第1チェーン支持部61が、上部に移動し、第1チェーン63に支持された鋼板27が内側倣いローラ51に当て込まれる位置になると、第1チェーン支持部61の上昇を止める。次いで、第1駆動モータ69が作動し、第1チェーン63を上部通路が反転領域55側に移動するように駆動する。これに伴い複数の第1チェーン63によって支持された鋼板27は反転領域55側に移動し、鋼板27の反転領域55側の辺111(一辺)が内側倣いローラ51に当て込まれる。
鋼板27が、内側倣いローラ51に当接すると、反転領域55側への移動を阻止されるので、内側倣いローラ群11によって辺111の位置が規制される。
【0054】
制御部45は、第1横送りコンベア57が予め設定された時間作動すると、鋼板27の辺111が内側倣いローラ51に十分当て込まれたと判断する。すなわち、内側倣いローラ群11による位置の規制が終了したと判断し、印刷工程に入る。
なお、鋼板27が内側倣いローラ群11による位置規制された状態を検出するセンサを設けて、印刷工程に入るタイミングを判断するようにしてもよい。
【0055】
印刷工程では、鋼板検知部材20によるセンシング作業と、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業と、印刷部材42による印刷作業とが行われる。
制御部45は、印刷情報取得用パソコン17から取得した鋼板情報から得ている鋼板長さ分だけ走行すると、鋼板27の端部を通り越したと判断し、走行部材を逆転させて印刷装置7を図1に示される印刷装置7の待機位置に戻す。
【0056】
次に、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業について図6〜図13により説明する。
印刷エリア設定モード46では、鋼板検知部材20が検知結果から図6に示されるように、辺113(印刷開始辺)における間隔をあけた点(検知点)P1,P2、辺111における間隔をあけた点P3,P4および辺115(他辺)における間隔をあけた点P5,P6の位置情報を取得する。
この位置情報は、適宜設定した原点からの搬送方向21に沿うX軸の座標と、幅方向に沿うY軸の座標と、で特定される。
【0057】
点P3(XP3,YP3)および点P5(XP5,YP5)の位置情報から中点C1(XC1,YC1)の位置情報を算出する。このXC1,YC1は、XC1=(XP3+XP5)/2、YC1=(YP3+YP5)/2となる。
点P4(XP4,YP4)および点P6(XP6,YP6)の位置情報から中点C2(XC2,YC2)の位置情報を算出する。このXC2,YC2は、XC2=(XP4+XP6)/2、YC1=(YP4+YP6)/2となる。
中点C1と中点C2とを結んだ中点線CのX軸に対する傾きθを算出する。この傾きθは、θ=tan=1{(YC2−YC1)/(XC2−XC1)}によって算出する。
【0058】
次に、後で使用するため、図8に示されるように、印刷情報取得用パソコン15から取得した印刷情報Dを角度θだけ回転させたデータを作成する。
次に、図9に示されるように、辺113の想定される角である鋼板角点α,βを算出する。鋼板角点αは、点P1および点P2を結ぶ直線L1と点P5および点P6を結ぶ直線L3との交点を算出して求める。鋼板角点βは、点P1および点P2を結ぶ直線L1と点P3および点P4を結ぶ直線L2との交点を算出して求める。
【0059】
次に、図10に示されるように、先に計算した傾きθがθ=0となる、すなわち、中点線CがX軸と平行となるように回転させる。このときの点P1,P2,P3,P4,P5,P6、および鋼板角点α,βの回転後の位置である点P1rot,P2rot,P3rot,P4rot,P5rot,P6rot、および鋼板角点αrot,βrotの座標を計算する。
【0060】
図11に示されるように回転させた後の中点線Cに基づいて印刷情報Dを幅方向に展開する。すなわち、印刷情報Dの幅方向中心線が中点線Cに一致するように、印刷情報Dを設定する。
鋼板角点αrot,βrotの内、X座標の大きい方である鋼板角点βrotを選択し、鋼板角点βrotのX座標に所定量、たとえば、10mm加えたX座標を持つ基点線SSを設定する。基点線SSは、Y軸に平行であるので、中点線Cと直交している。
印刷情報Dの設定位置の端部は基点線SSに合わされる。基点線SS上の印刷情報Dの内、直線L1に最も近い点、この場合鋼板角点βrot側の端部にデータ基点Srotを設定する。
【0061】
次に、図12に示されるようにデータ基点Srotを中点線CがX軸に対して傾きθとなるように回転し、印刷基点Sを算出する。
したがって、図7の状態で印刷基点Sが設定されたことになる。
次に、図13に示されるように、図8で作成した角度θだけ回転させた印刷情報Dの端部を印刷基点Sに合わせ、鋼板27上に印刷情報Dを展開する。この印刷情報Dが展開された範囲が印刷エリアAとして設定される。
【0062】
図14は、鋼板27に本実施形態のように中点線を基準として設定された印刷エリアAと従来の一辺を基準として設定された印刷エリアAとを示している。
従来は辺111をセンシングし、2点の位置情報から基準線Kを設定する。印刷エリアAはその一辺が基準線Kに平行し、所定量間隔をあけるようにして設定されている。したがって、図14の鋼板27のような形状では、印刷エリアAが鋼板27の外側にはみ出す恐れがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、印刷エリアAは、その幅方向中心線が中点線Cと一致するようにして設定される。
中点線Cは、鋼板27の両側の辺111および辺115を結ぶ2箇所の線分の中点C1,C2を結んで形成されるので、鋼板27の幅方向の略中央位置に位置していることになる。
したがって、印刷エリアAは、鋼板27の幅方向の中央位置を基準としてその両側に設定されることになるので、印刷エリアAを鋼板27の中央に収めることができる。
【0064】
印刷エリアAが鋼板27の中央に収まると、圧延まま鋼板のような不規則な外形形状をした鋼板27でも幅方向の寸法は指定した寸法が確保されているので、印刷エリアAが鋼板27からはみ出すことを抑制することができる。
印刷エリア設定モード46による印刷エリアAの設定作業が完了すると、制御部45は印刷部材42による印刷作業を実施する。
制御部45は、印刷装置7をレール41に沿って移動させ、鋼板27の一面に印刷する。制御部45は、印刷装置7の搬送方向21への移動速度と同期して印刷部材42の各印字ヘッドのインク噴射動作、幅方向43への移動速度および位置を制御して所定の印刷を行う。
【0065】
片面に印刷するだけの鋼板27は、反転領域55の奥側に搬送される。
すなわち、第1横送りコンベア57が、さらに上昇し、第1チェーン63で支持された鋼板27が内側倣いローラ51と係合しない最大高さまで上昇し、同時に、第2横送りコンベア59が上方位置に上昇され、補助ローラ89が投入位置に設定される。
この状態で、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59を作動する。鋼板27は、第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59に受け渡され、反転領域55へ搬入される。補助ローラ89が、第1横送りコンベア57との間に存在しているので、たとえば、幅方向43の長さが短い鋼板27であっても隙間から落下することなく確実に第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59へ鋼板27を受け渡すことができる。
鋼板27は反転領域の奥側へ搬入され、屋内マグネットクレーン117によって次工程へ搬送される。
【0066】
反転領域55では、鋼板27は、回転自在な複数の第2サイドローラ93によって支持されているので、第2横送りコンベア59によって支持する荷重が小さくできる。第2横送りコンベア59によって支持する荷重が小さくできると、第2横送りコンベア59から鋼板27に作用する力が小さくできるので、鋼板27が傷つくことを抑制できる。
なお、第1チェーン63および第2チェーン79の荷重支持部にフリーローラを用いると、鋼板27に作用する力を一層小さくできるので、鋼板27への傷入りを一層抑制することができる。
【0067】
鋼板27の両面に印刷する場合、鋼板27は上述の片面印刷の場合と同様にして反転領域55へ搬入される。
鋼板27の辺111が第1アーム部材の所定位置に至った時点で、第2横送りコンベア59は停止される。第2横送りコンベア59は、下方に移動され、鋼板27は複数の第1アーム部材99によって図4の実線位置に支持される。
鋼板27の反転は以下のように所定のシーケンスによって行われる。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材117が作動され、ネジ軸が伸長する。
【0068】
ネジが伸長すると、第1アーム部材99および第2アーム部材101は、それぞれ第1支持軸107あるいは第2支持軸109を軸線中心として上方へ揺動する。
鋼板27が第1アーム部材99によって保持された状態で、図4に二点鎖線で示されるように第2アーム部材101は、その先端部が第2支持軸109を越えて第1アーム部材99側に揺動され、鋼板27を第1アーム部材99と共同して挟持する。
この状態で、鋼板27が第2アーム部材101側に位置するように移動させると、鋼板27は第2アーム部材101によって支持されることになる。
この状態から第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105のネジ軸が短縮され、第1アーム部材99および第2アーム部材101がそれぞれ元の略水平位置に戻ると、鋼板27は辺111が印刷領域39側に位置するように反転される。
このように、鋼板27は安全かつ確実に搬入時の反転領域55側の辺111の回りに回転し、表裏反転させられる。
【0069】
補助ローラ89が投入位置に設定された第2横送りコンベア59および第1横送りコンベア57が上方位置に上昇し、外側倣いパネル53が係合位置となる。
鋼板27は、複数の第2チェーン79および第2サイドローラ93によって支持される。
【0070】
この状態で、第1駆動モータ69および第2駆動モータ85を印刷領域39から反転装置9側へ送る際に駆動させた際と逆方向に回転させると、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59が作動し、鋼板27は印刷領域39側へ搬送される。鋼板27は、第2横送りコンベア59から第1横送りコンベア57に受け渡され、印刷領域39へ搬入される。
印刷領域39に搬入された鋼板27は、第1横送りコンベア57によってさらに搬送され、図15に示されるように、辺111が外側倣いパネル53に当て込まれる。
鋼板27が外側倣いパネル53に当接すると、移動を阻止されるので、外側倣いパネル群13によって辺111の位置が規制される。
【0071】
印刷エリア39に入り、一定時間を過ぎると、鋼板27は図15に示される位置となり、外側倣いパネル群13による位置の規制が終了したと判断し、印刷工程に入る。
印刷工程では、上述の手順と同様にして鋼板検知部材20によるセンシング作業と、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業と、印刷部材42による印刷作業とが行われる。
このように、印刷領域39の側部に鋼板27を反転できる反転装置9が備えられているので、鋼板27の両面に印刷をおこなうことができる。
【0072】
このとき、鋼板27は、辺111の回りに回転されて表裏反転され、かつ、先の印刷時に内側倣いローラ群11によって辺111の位置が規制されていたのと同様に、外側倣いパネル群13によって辺111の位置が規制されている。
このため、鋼板27の形状と、先の印刷時の際の鋼板27の形状とは、内側倣いローラ群11および外側倣いパネル群13の間隔の中心線に対して線対称の関係となるので、辺111,113,115の鋼板検知部材20に対する相対的位置関係は略同一となる。
したがって、印刷エリア設定モード46によって設定される印刷エリアAは、先の印刷時に設定された印刷エリアAと線対称の位置関係となるので、両面に印刷される印刷情報Dは正確な位置関係で印刷することができる。
これにより、ブロックあるいは船体への艤装品の取付工事を正確にかつ容易に行うことができる。
【0073】
印刷が完了すると、第1駆動モータ69および第2駆動モータ85を反転装置9側から印刷領域39へ送る際に駆動させた際と逆方向に回転させ、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59を作動させ、鋼板27を反転領域55側へ搬送する。鋼板27は、第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59に受け渡され、反転領域55の奥側へ搬入される。奥側へ搬送された鋼板27は屋内マグネットクレーン117によって次工程へ搬送される。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
たとえば、第1の規制部材および第2の規制部材として、本実施形態では内側倣いローラ群11および外側倣いパネル群13のように点状に規制するようにしているが、板状、棒状の規制部材としてもよい。板状あるいは棒状の場合、印刷領域39の全長に亘り連続的に規制するものであってもよい。
内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の形状は、断面形状が円状、楕円状あるいは矩形等の任意の多角形状とされてもよい。
また、内側倣いローラ51は、上下方向に移動可能に取り付けられ、上下方向の移動によって鋼板27と選択的に係合するようにしてもよい。外側倣いパネル53は、固定して取り付けるようにしてもよい。
【0075】
さらに、内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の搬送方向21における設置位置は、ローラ19と同じ位置に限らず、相対的にずれた位置としてもよい。
また、鋼板27の縦送りコンベア3から第1横送りコンベア57への支持替えの際、第1横送りコンベア57を上昇させるようにしているが、縦送りコンベア3の印刷領域39にあるローラ19を下降させるようにしてもよい。
また、反転装置9は、上述の構成に限定されるものではなく、鋼板27を表裏反転できるものであれば適宜構成のものが用いられる。
【符号の説明】
【0076】
1 鋼板両面印刷装置
5 横送りコンベア
7 印刷装置
9 反転装置
11 内側倣いローラ群
13 外側倣いパネル群
15 バーコードリーダ
17 印刷情報取得用パソコン
20 鋼板検知部材
27 鋼板
39 印刷領域
43 幅方向
45 制御部
46 印刷エリア設定モード
55 反転領域
111,113,115 辺
A 印刷エリア
C 中点線
C1,C2 中点
P1,P2,P3,P4,P5,P6 点
α,β 鋼板角点
【技術分野】
【0001】
本発明は、板材印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の建造は、船体を形成する船殻工事と艤装品を取り付ける艤装工事とに大別される。船殻工事は、鋼板(板材)を所定形状に切断し、必要に応じて曲げあるいは穿孔加工をした後、互いを溶接等によって接合してブロックを造り上げる。多数のブロックは、ドック(船渠)または船台の上で電気溶接して船のかたち(船体)に仕上げられる。船の形になると進水され、船体は水上に浮かべられる。
進水後に、艤装品である各機器、部材等を船体に取付・据付する艤装工事が行われる。
なお、艤装工事では、工期短縮や工程削減を目的に、進水前の段階で先行して船内配管や居住設備の多くがあらかじめブロックに作り付けられる先行艤装が行われている。
【0003】
ブロックあるいは船体への艤装品の取付工事を正確にかつ容易に行うために、ミルメーカから納入された鋼板の段階で鋼板の加工用情報に加えて艤装品の種類、取付位置、取付方法等の情報を表示しておくことが行われている。
この表示を効率的に行うものとして、鋼板に印字を行う鋼板印刷装置が種々提案されている。
鋼板印刷装置としては、固定された印刷装置の下を搬送される鋼板に印刷するもの、停止している鋼板の上を印刷装置が走行しながら印刷するもの、あるいは、特許文献1に示されるように、搬送される鋼板に対し、印刷装置が同期して走行しつつ鋼板に印刷するもの等、種々の形式が提案されている。
【0004】
このような鋼板印刷装置で鋼板に印刷する場合、印刷情報が鋼板からはみ出さないように印刷することが重要である。
船殻工事で用いられる鋼板は、略矩形状に切り出されることが多く、それに合わせて印刷情報も短形形状をしている。
従来の鋼板印刷装置では、鋼板の片側の形状情報、たとえば、長手方向における片側の辺における2点を結ぶ直線を基準として印刷情報を印刷する印刷エリアの基点・傾きを決定し、それに基づいて印刷を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−010142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ミルメーカから納入される鋼板は、圧延まま鋼板で入荷してくることがあり、幅および長さは指定した寸法が確保されているものの、外形については不規則な形状となっている場合がある。特に長手方向の形状が不規則であることが多い。
このような不規則な形状の鋼板の場合、従来の鋼板印刷装置のように鋼板の片側の形状情報に基づいて印刷エリアを設定するものでは、形状情報の取得位置によって印刷位置が鋼板からはみ出すおそれがある。
また、鋼板の表裏両面に印刷を施す場合、表裏両面に取り付けられる艤装品の位置関係がずれないように印刷エリアを設定することが要求される。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、圧延まま鋼板のような板材に対し、はみ出しを抑制した印刷エリアを設定できる板材印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の一態様は、印刷領域に搬入された板材に印刷する印刷装置と、前記板材の有無を検知する板材検知部材と、前記印刷装置の印刷動作を制御する制御部と、を備えている板材印刷装置であって、前記制御部には、前記板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、前記印刷開始辺に近い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点と前記印刷開始辺から遠い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として前記板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられている板材印刷装置である。
【0009】
本発明によれば、印刷領域に搬入された板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、板材検知部材が検知した印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺、言い換えると、板材の両側におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得する。印刷エリア設定モードは、取得した検知点の位置情報から印刷開始辺に近い側における一辺の検知点および他辺の検知点の中点、すなわち、二分する中間位置を算出する。印刷エリア設定モードは、前記印刷開始辺から遠い側における一辺の検知点および他辺の検知点の中点、すなわち、二分する中間位置を算出する。印刷エリア設定モードは、これらの2つの中点位置を結んだ中点線を算出する。
印刷エリア設定モードは、この中点線を幅方向の基準として板材の印刷エリアを設定する。具体的には、たとえば、印刷エリアの幅方向中心線と中点線とが略一致するように印刷エリアが設定される。
【0010】
中点線は、板材の両側における2箇所の幅方向を二分する中間位置を結んで形成されるので、板材の略中央位置に位置していることになる。したがって、印刷エリアは、板材の幅方向の中央位置を基準としてその両側に設定されることになるので、印刷エリアを板材の中央に収めることができる。
印刷エリアが板材の中央に収まると、圧延まま鋼板のような板材でも幅方向の寸法は指定した寸法が確保されているので、印刷エリアが板材からはみ出すことを抑制することができる。
印刷装置は、設定された印刷エリア内に所定の印刷情報を印刷する。
【0011】
上記態様では、前記印刷エリア設定モードは、前記板材検知部材が検知する前記印刷開始辺の間隔をあけた2検知点を通る直線を算出し、前記検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定するようにしてもよい。
【0012】
印刷エリア設定モードは、板材検知部材が検知した印刷が開始される側の印刷開始辺の間隔をあけた2検知点位置情報を取得する。印刷エリア設定モードは、取得した検知点を通る直線を算出する。この直線によって印刷開始辺の傾斜方向を判定することができる。
印刷エリア設定モードは、検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定する。
このようにすると、印刷エリアが印刷開始辺から外にはみ出すことを抑制することができる。
【0013】
上記態様では、前記印刷領域に搬入される前記板材を特定する特定情報を検出する特定情報検出手段と、該特定情報検出手段が検出した特定情報に基づいて前記板材に印刷する印刷情報を前記制御部に送る印刷情報指示手段と、が備えられていてもよい。
【0014】
特定情報検出手段は、搬入される板材に表示された特定情報、たとえば、部品名、部品記号を表す情報を検出し、印刷内容指示手段へ送信する。印刷内容指示手段は、この特定情報に基づいて板材を特定し、特定された板材に印刷する印刷情報を印刷装置に送る。制御部は、送られた印刷情報に基づいて印刷される範囲を設定する。
制御部は、板材検知部材の検知情報に基づき設定された基準と印刷情報の範囲とにより、この印刷情報を印刷する印刷エリアを設定する。
【0015】
上記態様では、前記一辺側の前記印刷領域の側部に設定された反転領域と前記印刷領域との間で、前記板材を選択的に搬送する搬送装置と、前記印刷領域の前記反転領域側に前記板材に対して選択的に係合可能に設けられ、前記板材の位置を規制する第1の規制部材と、前記印刷領域の幅方向で前記第1の規制部材とは反対側に設けられ、前記板材の位置を規制する第2の規制部材と、前記反転領域に設置され、前記板材を前記一辺の回りに回転し、表裏反転させる反転装置と、が備えられていてもよい。
【0016】
第1の規制部材が板材と係合する状態とされる。この状態で印刷領域内に搬入された板材は搬送装置によって反転領域側に向けて搬送される。これにより、板材は、印刷領域の反転領域側に設けられた第1の規制部材に押し付けられるので、第1の規制部材によって板材における反転領域側の一辺の位置が規制される。この状態で、板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、上述したように板材検知部材による検知情報に基づいて印刷エリアを設定する。印刷装置はこの印刷エリア内に所定の情報を印刷する。
板材の両面に印刷する場合には、第1の規制部材を板材に対し係合しないようにし、搬送装置によって板材を反転領域に搬送する。反転領域に搬入された板材は、反転装置によって反転領域側の一辺の回りに回転し、表裏反転させられる。すなわち、板材は他面が上になるとともに搬入時における反転領域側の一辺が印刷領域側に位置することになる。
【0017】
第2の規制部材が板材と係合する状態とされる。この状態で板材は第2の搬送装置によって印刷領域側に向けて搬送される。これにより、板材は、印刷領域の幅方向で第1の規制部材とは反対側に設けられた第2の規制部材に押し付けられるので、第2の規制部材によって板材における先の印刷時における反転領域側の一辺の位置が規制される。この状態で、板材は、板材検知部材によって形状がセンシングされる。制御部の印刷エリア設定モードは、上述したように板材検知部材による検知情報に基づいて印刷エリアを設定する。印刷装置はこの印刷エリア内に所定の情報を印刷する。
このようにして、板材は両面に所定の印刷情報を印刷することができる。
印刷領域の両側にある第1の規制部材および第2の規制部材によって一面および他面の印刷時の基準位置となる辺を規制する間に、反転装置によって反転領域側の一辺の回りに回転し、表裏反転させられるので、第1の規制部材および第2の規制部材は板材の同じ一辺の位置を確実に規制することができる。すなわち、一面および他面の板材検知部材によるセンシング時の板材は、第1の規制部材および第2の規制部材の間の中心線に対して線対称となるので、板材における印刷開始辺、一辺および他辺の板材検知部材に対する相対的位置関係は略同一となる。このため、板材検知部材のセンシングによって設定される印刷エリアは略同一となるので、両面に印刷される情報は正確な位置関係で印刷することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、印刷開始辺に近い一辺の検知点および他辺の検知点の中点と印刷開始辺から遠い一辺の検知点および他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられているので、設定される印刷エリアが板材からはみ出すことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態にかかる鋼板両面印刷装置の全体概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる第1横送りコンベアの平面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる第2横送りコンベアの平面図である
【図4】本発明の一実施形態にかかる反転部材の正面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかる内側倣いローラ群が鋼板を規制している状態を示す模式図である。
【図6】本発明の一実施形態にかかる鋼板検知部材の検知点を示す模式図である。
【図7】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで中点線の傾きを示す模式図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷情報を傾かせた状態を示す模式図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで鋼板角点を算出する状態を示す模式図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで傾きを0とした状態を示す模式図である。
【図11】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードでデータ基準点を算出する状態を示した模式図である。
【図12】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷基準点を算出する状態を示した模式図である。
【図13】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで印刷基準点を基準として印刷情報を配置した状態を示した模式図である。
【図14】本発明の一実施形態にかかる印刷エリア設定モードで設定された印刷エリアと従来手法で設定された印刷エリアとを示す模式図である。
【図15】本発明の一実施形態にかかる外側倣いパネル群が鋼板を規制している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態にかかる鋼板両面印刷装置(板材印刷装置)1について図1〜図15を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる鋼板両面印刷装置1の全体概略構成を示す平面図である。
鋼板両面印刷装置1には、縦送りコンベア3と、横送りコンベア(搬送装置)5と、印刷装置7と、反転装置9と、内側倣いローラ群(第1の規制部材)11と、外側倣いパネル群(第2の規制部材)13と、バーコードリーダ(特定情報検出手段)15と、印刷情報取得用パソコン(印刷内容指示手段)17と、鋼板検知部材(板材検知部材)20と、が備えられている。
【0021】
縦送りコンベア3は、屋外23から屋内25に亘って配置されている複数のローラ19によって構成されたローラコンベアである。ローラ19は、たとえば、径165.2mmで長さが略4600mmとされ、搬送方向21に沿って所定のピッチ、たとえば、500mmで略44mに亘って配置されている。ローラ19は図示しない駆動手段によって回転駆動される。鋼板(板材)27は、一般に長手方向が搬送方向21に沿うように縦送りコンベア3に載置されて搬送される。
ローラ19は、ピッチよりも小さい径であるので、ローラ19間には、間隔が空けられていることになる。
【0022】
縦送りコンベア3の側部には、鋼板(板材)27を仮置きする仮置場29が備えられている。縦送りコンベア3の海側31には、運搬船から鋼板27の荷揚げを行う水切り場33が備えられている。
運搬船を含む水切り場33、仮置場29および屋外23に位置する縦送りコンベア3の範囲でマグネットによって鋼板27の搬送、載置等の取扱いを行える屋外マグネットクレーン35が備えられている。
【0023】
運搬船で搬送される鋼板27には、一般に鋼板番号等の鋼板27を特定する特定情報が表示されている。屋外マグネットクレーン35が鋼板27を荷揚げし、たとえば、仮置場29に仮置きしたときに、この特定情報である鋼板番号に対応するバーコードが鋼板27に貼付される。
【0024】
縦送りコンベア3における屋内25へ入った位置には、鋼板乾燥装置37が備えられている。鋼板乾燥装置37は、縦送りコンベア3で搬送される鋼板27に熱風を吹きかけ、水分を除去、すなわち、乾燥するものである。吹きかけられる熱風の温度は、たとえば、常温から350℃までの範囲で状況によって選択されるように構成されている。
鋼板乾燥装置37は、たとえば、縦送りコンベア3の中途に設けられた鋼板感知センサ38によって鋼板27が検知されると、鋼板27が進入してくると判断して設定された温度の熱風を吹きかけるようにされている。
鋼板感知センサ38としては、たとえば、磁気感知式のセンサが用いられる。
なお、鋼板感知センサ38としては、公知のセンサを用いることができ、屋外使用が可能なものであれば、特にそのセンサを限定するものではない。
【0025】
バーコードリーダ15は、鋼板乾燥装置37の搬送方向21の下流側に設置されている。バーコードリーダ15としては、たとえば、可視光半導体レーザを用いる長距離レーザタイプが用いられる。
バーコードリーダ15には、鋼板27の存在を検知する鋼板感知センサ38が付属されていてもよい。鋼板感知センサ38としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、バーコードリーダ15および鋼板感知センサ38としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0026】
屋内25に位置する縦送りコンベア3には、図1に示されるように印刷領域39が設定されている。印刷領域39は、印刷する鋼板27の大きさに対応して設定される。
印刷領域39の両側には、印刷領域39の全長よりも長い範囲に亘り、搬送方向に延在するようにレール41が施設されている。印刷装置7は、図示しない走行部材によってこのレールに沿って移動するように構成されている。
印刷装置7には、印刷部材42と、制御部45とが備えられている。印刷部材42はドット印字方式であり、搬送方向に略直交する方向(以下、幅方向43という。)にインクを噴射する複数、たとえば、29個の印字ヘッド(図示省略)が間隔を空けて並んで取り付けられている。各印字ヘッドは、幅方向に移動可能とされている。
制御部45は、印刷部材42および走行部材の動作を制御するものである。制御部45には、鋼板27への印刷範囲である印刷エリアA設定する印刷エリア設定モード46が備えられている。
【0027】
鋼板検知部材20は、印刷装置7に取り付けられている。鋼板検知部材20は、幅方向43に延在するように配置されている。鋼板検知部材20としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、鋼板検知部材20としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0028】
屋内25の縦送りコンベア3に近い場所に、鋼板27への印刷等を管理する管理室47が備えられている。
印刷情報取得用パソコン17は、管理室47内に設置されている。印刷情報取得用パソコン17は、バーコードリーダ15が読み取ったバーコード、すなわち、鋼板番号情報を受け取る。印刷情報取得用パソコン17は、受け取った鋼板番号に基づいて鋼板番号毎に印刷情報を保管している図示しない設計サーバーから受け取った鋼板番号の鋼板27に印刷されるべき印刷情報を取得し、印刷装置7の制御部45に送信する。
【0029】
印刷領域39の入口部分に、鋼板27の有無を検出する鋼板感知センサ49が備えられている。鋼板感知センサ49が鋼板27を検知しなくなると、鋼板27が印刷領域39に進入したと判定できる。
鋼板感知センサ49としては、たとえば、照射されたレーザの反射光量を測定するCMOSレーザセンサが用いられる。
なお、鋼板感知センサ49としては、公知のセンサを用いることができ、特にそのセンサを限定するものではない。
【0030】
印刷情報を受け取った制御部45は、鋼板27が印刷領域39に入ったことを検知した後、印刷情報と鋼板27の印刷エリアAとを考慮して印刷動作を調整するようにされている。
制御部45は、印刷装置7の搬送方向21への移動速度と同期して印刷部材42の各印字ヘッドのインク噴射動作、幅方向43への移動速度および位置を制御して所定の印刷を行うようにされている。
なお、印刷部材42としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0031】
印刷領域39の側部に反転領域55が設けられている。
内側倣いローラ群11は、印刷領域39の反転領域55側に配置されている。内側倣いローラ群11は、軸線が上下方向(図1の紙面に直交する方向)に延在する円筒形状をした複数の内側倣いローラ51を備えている。
各内側倣いローラ51の軸線中心は、幅方向43の位置が略同一とされている。各内側倣いローラ51は、ローラ19と略同位置に、ローラ19の上端位置よりも上方に位置するように固定して設置されている。
【0032】
外側倣いパネル群13は、印刷領域39の反転領域55側と反対側に配置されている。外側倣いパネル群13は、軸線が上下方向(図1の紙面に直交する方向)に延在する角形状をした複数の外側倣いパネル53を備えている。
各外側倣いパネル53の軸線中心は、幅方向43の位置が略同一とされている。各外側倣いパネル53は、後述する第1横送りコンベア57の側部に配置され、第1横送りコンベア57と一体的に上下方向に移動するように設置されている。外側倣いパネル53は、第1横送りコンベア57よりも上方へ突出するように取り付けられている。
なお、 内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の搬送方向21における設置位置は、これに限らない。
【0033】
横送りコンベア5には、印刷領域39のローラ19の間に幅方向43に延在するように設置されている複数の第1横送りコンベア57と反転領域に幅方向43に延在するように設置されている複数の第2横送りコンベア59とが備えられている。
図2は、第1横送りコンベア57の平面図である。図3は、第2横送りコンベア59の平面図である。
第1横送りコンベア57には、第1チェーン支持部61と、第1チェーン63と、第1駆動スプロケット65と、第1従動スプロケット67と、第1駆動モータ69とが備えられている。
【0034】
第1チェーン支持部61は、略矩形断面をした中空の柱状体である。第1チェーン支持部61は、幅方向43に延在し、上下方向に移動可能にされている。第1チェーン支持部61の上面には、略全長に亘り第1チェーン63を案内する第1チェーンガイド71が取り付けられている。
第1駆動スプロケット65は、第1チェーン支持部61の反転領域55側の端部に突出するように取り付けられている。第1駆動スプロケット65は、第1駆動モータ69によって回転駆動されるように構成されている。
第1従動スプロケット67は、第1チェーン支持部61の第1駆動スプロケット65とは反対側の端部に突出するように取り付けられている。
【0035】
第1チェーン63は、周回するように第1駆動スプロケット65と第1従動スプロケット67とに掛け渡されている。第1チェーン63の上方通路は、第1チェーン支持部61の上部を通り、下方通路は第1チェーン支持部61の内部空間を通っている。第1チェーン63は、第1チェーン支持部61の上部を通る際、第1チェーンガイド71によって搬送方向21の動きを制限されるとともに下方への移動を抑制されている。
第1チェーン63は、鋼板27に作用する力を低減させるため、プレートの中央部が外側に延び、そこに自由に回転するフリーローラが取り付けられているものとしてもよい。
【0036】
第1チェーン支持部61は、図示しない駆動源によって上下方向に移動させられる。第1チェーン支持部61は、第1フリーローラ75の上端位置がローラ19の上端位置よりも下方位置から内側倣いローラ51の上端位置よりも上方位置までの間に、位置するようにされている。
縦送りコンベア3、言いかえるとローラ19が鋼板27を搬送しているときには、第1チェーン63の上端位置がローラ19の上端位置よりも下方に位置させられている。この位置から第1チェーン支持部61が上方に移動し、第1チェーン63の上端位置がローラ19の上端位置よりも上方になると、ローラ19に替わり第1チェーン63が鋼板27を支持することになる。
【0037】
このとき、第1チェーン63の位置によって第1チェーン63に支持された鋼板27が内側倣いローラ51と係合する、すなわち、内側倣いローラ51に当て込むことができる状態になる。また、外側倣いパネル53は第1横送りコンベア57よりも上方に突出して設けられているので、第1チェーン63に支持された鋼板27が外側倣いパネル53と係合する、すなわち、外側倣いパネル53に当て込むことができる状態である。
言い換えると、第1横送りコンベア57の上下方向の移動によって、内側倣いローラ51は鋼板27に係合する状態と、鋼板27と係合しない状態と、になる。すなわち、内側倣いローラ51は鋼板27に選択的に係合可能に設けられている。
【0038】
第1チェーン支持部61の反転領域55側の端部分における両側面には、それぞれ略矩形断面をした中空の柱状体である一対の第1支持部材73が、搬送方向21に沿って延在するように固定して取り付けられている。各第1支持部材73の先端上部には、搬送方向21に沿う軸線回りに自由に回転する第1サイドローラ(支持ローラ)75が取り付けられている。第1サイドローラ75の上端位置は、第1チェーン63の上端位置と略同一位置とされている。
【0039】
複数の第2横送りコンベア59は、間隔を空けて反転領域55の略全域をカバーするように設置されている。
第2横送りコンベア59には、第2チェーン支持部77と、第2チェーン79と、第2駆動スプロケット81と、第2従動スプロケット83と、第2駆動モータ85と、第2チェーンガイド87と、補助ローラ89と、が備えられている。
なお、第1横送りコンベア57と第2横送りコンベア59との間隔が小さくされている場合には、補助ローラ89を備えなくてもよい。
【0040】
第2チェーン支持部77は、第1チェーン支持部61と基本的構成は略同じである。第2チェーン支持部77は、第1チェーン支持部61の長さの略2倍の長さとされている。
第2駆動スプロケット81は、第2チェーン支持部77における印刷領域39と反対側の端部に突出するように取り付けられ、第2駆動モータ85によって回転駆動される。
第2従動スプロケット83は、第2チェーン支持部77の印刷領域39側の端部に突出するように取り付けられている。
【0041】
第2チェーン79は、周回するように第2駆動スプロケット81と第2従動スプロケット83とに掛け渡されている。第2チェーン79は、第1チェーン63と長さが異なるだけで、他の構成は基本的に同じである。第2チェーン79は、鋼板27に作用する力を低減させるため、プレートの中央部が外側に延び、そこに自由に回転するフリーローラが取り付けられているものとしてもよい。
【0042】
補助ローラ89は、第2チェーン支持部77の印刷領域39側の端部に、搬送方向21に沿う軸線回りに回転自在に取り付けられている。
補助ローラ89は、上端位置は、第2チェーン79の上端位置と略同一位置とされる投入位置と、待機位置との間を移動するように構成されている。
【0043】
第2チェーン支持部77は、図示しない駆動源によって上下方向に移動させられる。第2チェーン支持部77が上方位置に移動したとき、第2チェーン79の上端位置はローラ19および後述する第1アーム部材99の上端位置よりも上側に位置するようにされている。
第2チェーン支持部77の両側面には、第1支持部材73と同じ構成をした一対の第2支持部材91が、第2チェーン支持部77の略全長に亘り間隔を空けて複数対取り付けられている。各第2支持部材91の先端上部には、搬送方向21に沿う軸線回りに自由に回転する第2サイドローラ93が取り付けられている。第2サイドローラ93の上端位置は、第2チェーン79の上端位置と略同一位置とされている。
【0044】
反転装置9には、第2横送りコンベア59の間に幅方向43に延在するように設置されている複数の反転部材95が備えられている。
図4は、反転部材95の正面図である。
反転部材95には、アーム支持部材97と、第1アーム部材99と、第2アーム部材101と、第1アーム駆動部材103と、第2アーム駆動部材105とが備えられている。
【0045】
アーム支持部材97は、反転領域55の略全幅に亘り幅方向43に延在するように基礎に固定されて設置されている。
第1アーム部材99および第2アーム部材101は、略矩形断面をした棒状体である。第1アーム部材99および第2アーム部材101は、アーム支持部材97の上部に、長手方向に隣り合って配置されている。言い換えると、第1アーム部材99は、アーム支持部材97の印刷領域39側に配置され、第2アーム部材101はアーム支持部材97の印刷領域39の反対側に配置されている。
【0046】
アーム支持部材97の長手方向略中央位置には、それぞれ軸線が搬送方向21に延在する第1支持軸107および第2支持軸109が隣り合って対向するように取り付けられている。
第1アーム部材99の印刷領域39の反対側端部は、第1支持軸107に揺動可能に取り付けられている。第2アーム部材101の印刷領域39側端部は、第2支持軸109に揺動可能に取り付けられている。
第1アーム部材99および第2アーム部材101には、鋼板27の移動を防止する手段、たとえば、ストッパ、電磁石等が備えられている。
【0047】
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、モータ駆動されるウォームギア機構によってネジ軸が伸縮されるスクリュージャッキ方式が用いられている。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、アーム支持部材97の下方に取り付けられている。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、基礎に揺動可能に取り付けられ、伸縮するネジ軸の先端は第1アーム部材99および第2アーム部材101に揺動可能に取り付けられている。
【0048】
なお、第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105は、隣り合う複数の第1アーム部材99および第2アーム部材101に対して1個設けるようにしてもよい。このようにすると制御対象の数が減少するので、動作の制御が簡単になる。
また、第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105としては、公知の構成を用いることができ、特にその構成を限定するものではない。
【0049】
以上のように構成された鋼板両面印刷装置1の動作について説明する。
鋼板27は、屋外マグネットクレーン35によって運搬船から荷揚げされ、仮置場29に荷揚げされる。鋼板27に表示された、たとえば、鋼板番号に対応するバーコードが鋼板27に貼付される。
仮置場29に載置された1枚の鋼板27が、図1に示されるように屋外マグネットクレーン35によって屋外23に位置する縦送りコンベア3の上に載置される。
【0050】
鋼板27が縦送りコンベア3に載置されると、縦送りコンベア3のローラ19が回転され、鋼板27を搬送方向21に搬送する。
鋼板感知センサ38が鋼板27の先頭を感知すると、鋼板乾燥装置37を作動させる。縦送りコンベア3によって継続して搬送される鋼板27は、屋外23から屋内25に入り、鋼板乾燥装置37を通過する。この際、鋼板乾燥装置37が予め設定された温度の熱風を吹きかけ、鋼板27に付着した水分を除去し、乾燥する。
【0051】
バーコードリーダ15は、通過する鋼板27に貼付されたバーコードを読み取る。読み取られたバーコードの内容、すなわち、鋼板番号は、印刷情報取得用パソコン17に送られる。
印刷情報取得用パソコン17は、受け取った鋼板番号に基づいて鋼板番号毎に印刷情報を保管している図示しない設計サーバーから当該鋼板番号の鋼板27に印刷されるべき印刷情報を取得し、印刷装置7の制御部45に送信する。
【0052】
鋼板感知センサ49が、搬送されている鋼板27を感知した後、感知しなくなると、鋼板27が印刷領域39に進入したと判断し、縦送りコンベア3は停止される。
このとき、鋼板27は、印刷領域39内で図1に示されるような位置に停止する。
非係合位置に位置する内側倣いローラ群11が上方へ移動し、係合位置とされる。その後、第1横送りコンベア57の第1チェーン支持部61が上方へ移動させられ、鋼板27は、複数の第1チェーン63によって支持される。
【0053】
第1チェーン支持部61が、上部に移動し、第1チェーン63に支持された鋼板27が内側倣いローラ51に当て込まれる位置になると、第1チェーン支持部61の上昇を止める。次いで、第1駆動モータ69が作動し、第1チェーン63を上部通路が反転領域55側に移動するように駆動する。これに伴い複数の第1チェーン63によって支持された鋼板27は反転領域55側に移動し、鋼板27の反転領域55側の辺111(一辺)が内側倣いローラ51に当て込まれる。
鋼板27が、内側倣いローラ51に当接すると、反転領域55側への移動を阻止されるので、内側倣いローラ群11によって辺111の位置が規制される。
【0054】
制御部45は、第1横送りコンベア57が予め設定された時間作動すると、鋼板27の辺111が内側倣いローラ51に十分当て込まれたと判断する。すなわち、内側倣いローラ群11による位置の規制が終了したと判断し、印刷工程に入る。
なお、鋼板27が内側倣いローラ群11による位置規制された状態を検出するセンサを設けて、印刷工程に入るタイミングを判断するようにしてもよい。
【0055】
印刷工程では、鋼板検知部材20によるセンシング作業と、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業と、印刷部材42による印刷作業とが行われる。
制御部45は、印刷情報取得用パソコン17から取得した鋼板情報から得ている鋼板長さ分だけ走行すると、鋼板27の端部を通り越したと判断し、走行部材を逆転させて印刷装置7を図1に示される印刷装置7の待機位置に戻す。
【0056】
次に、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業について図6〜図13により説明する。
印刷エリア設定モード46では、鋼板検知部材20が検知結果から図6に示されるように、辺113(印刷開始辺)における間隔をあけた点(検知点)P1,P2、辺111における間隔をあけた点P3,P4および辺115(他辺)における間隔をあけた点P5,P6の位置情報を取得する。
この位置情報は、適宜設定した原点からの搬送方向21に沿うX軸の座標と、幅方向に沿うY軸の座標と、で特定される。
【0057】
点P3(XP3,YP3)および点P5(XP5,YP5)の位置情報から中点C1(XC1,YC1)の位置情報を算出する。このXC1,YC1は、XC1=(XP3+XP5)/2、YC1=(YP3+YP5)/2となる。
点P4(XP4,YP4)および点P6(XP6,YP6)の位置情報から中点C2(XC2,YC2)の位置情報を算出する。このXC2,YC2は、XC2=(XP4+XP6)/2、YC1=(YP4+YP6)/2となる。
中点C1と中点C2とを結んだ中点線CのX軸に対する傾きθを算出する。この傾きθは、θ=tan=1{(YC2−YC1)/(XC2−XC1)}によって算出する。
【0058】
次に、後で使用するため、図8に示されるように、印刷情報取得用パソコン15から取得した印刷情報Dを角度θだけ回転させたデータを作成する。
次に、図9に示されるように、辺113の想定される角である鋼板角点α,βを算出する。鋼板角点αは、点P1および点P2を結ぶ直線L1と点P5および点P6を結ぶ直線L3との交点を算出して求める。鋼板角点βは、点P1および点P2を結ぶ直線L1と点P3および点P4を結ぶ直線L2との交点を算出して求める。
【0059】
次に、図10に示されるように、先に計算した傾きθがθ=0となる、すなわち、中点線CがX軸と平行となるように回転させる。このときの点P1,P2,P3,P4,P5,P6、および鋼板角点α,βの回転後の位置である点P1rot,P2rot,P3rot,P4rot,P5rot,P6rot、および鋼板角点αrot,βrotの座標を計算する。
【0060】
図11に示されるように回転させた後の中点線Cに基づいて印刷情報Dを幅方向に展開する。すなわち、印刷情報Dの幅方向中心線が中点線Cに一致するように、印刷情報Dを設定する。
鋼板角点αrot,βrotの内、X座標の大きい方である鋼板角点βrotを選択し、鋼板角点βrotのX座標に所定量、たとえば、10mm加えたX座標を持つ基点線SSを設定する。基点線SSは、Y軸に平行であるので、中点線Cと直交している。
印刷情報Dの設定位置の端部は基点線SSに合わされる。基点線SS上の印刷情報Dの内、直線L1に最も近い点、この場合鋼板角点βrot側の端部にデータ基点Srotを設定する。
【0061】
次に、図12に示されるようにデータ基点Srotを中点線CがX軸に対して傾きθとなるように回転し、印刷基点Sを算出する。
したがって、図7の状態で印刷基点Sが設定されたことになる。
次に、図13に示されるように、図8で作成した角度θだけ回転させた印刷情報Dの端部を印刷基点Sに合わせ、鋼板27上に印刷情報Dを展開する。この印刷情報Dが展開された範囲が印刷エリアAとして設定される。
【0062】
図14は、鋼板27に本実施形態のように中点線を基準として設定された印刷エリアAと従来の一辺を基準として設定された印刷エリアAとを示している。
従来は辺111をセンシングし、2点の位置情報から基準線Kを設定する。印刷エリアAはその一辺が基準線Kに平行し、所定量間隔をあけるようにして設定されている。したがって、図14の鋼板27のような形状では、印刷エリアAが鋼板27の外側にはみ出す恐れがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、印刷エリアAは、その幅方向中心線が中点線Cと一致するようにして設定される。
中点線Cは、鋼板27の両側の辺111および辺115を結ぶ2箇所の線分の中点C1,C2を結んで形成されるので、鋼板27の幅方向の略中央位置に位置していることになる。
したがって、印刷エリアAは、鋼板27の幅方向の中央位置を基準としてその両側に設定されることになるので、印刷エリアAを鋼板27の中央に収めることができる。
【0064】
印刷エリアAが鋼板27の中央に収まると、圧延まま鋼板のような不規則な外形形状をした鋼板27でも幅方向の寸法は指定した寸法が確保されているので、印刷エリアAが鋼板27からはみ出すことを抑制することができる。
印刷エリア設定モード46による印刷エリアAの設定作業が完了すると、制御部45は印刷部材42による印刷作業を実施する。
制御部45は、印刷装置7をレール41に沿って移動させ、鋼板27の一面に印刷する。制御部45は、印刷装置7の搬送方向21への移動速度と同期して印刷部材42の各印字ヘッドのインク噴射動作、幅方向43への移動速度および位置を制御して所定の印刷を行う。
【0065】
片面に印刷するだけの鋼板27は、反転領域55の奥側に搬送される。
すなわち、第1横送りコンベア57が、さらに上昇し、第1チェーン63で支持された鋼板27が内側倣いローラ51と係合しない最大高さまで上昇し、同時に、第2横送りコンベア59が上方位置に上昇され、補助ローラ89が投入位置に設定される。
この状態で、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59を作動する。鋼板27は、第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59に受け渡され、反転領域55へ搬入される。補助ローラ89が、第1横送りコンベア57との間に存在しているので、たとえば、幅方向43の長さが短い鋼板27であっても隙間から落下することなく確実に第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59へ鋼板27を受け渡すことができる。
鋼板27は反転領域の奥側へ搬入され、屋内マグネットクレーン117によって次工程へ搬送される。
【0066】
反転領域55では、鋼板27は、回転自在な複数の第2サイドローラ93によって支持されているので、第2横送りコンベア59によって支持する荷重が小さくできる。第2横送りコンベア59によって支持する荷重が小さくできると、第2横送りコンベア59から鋼板27に作用する力が小さくできるので、鋼板27が傷つくことを抑制できる。
なお、第1チェーン63および第2チェーン79の荷重支持部にフリーローラを用いると、鋼板27に作用する力を一層小さくできるので、鋼板27への傷入りを一層抑制することができる。
【0067】
鋼板27の両面に印刷する場合、鋼板27は上述の片面印刷の場合と同様にして反転領域55へ搬入される。
鋼板27の辺111が第1アーム部材の所定位置に至った時点で、第2横送りコンベア59は停止される。第2横送りコンベア59は、下方に移動され、鋼板27は複数の第1アーム部材99によって図4の実線位置に支持される。
鋼板27の反転は以下のように所定のシーケンスによって行われる。
第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材117が作動され、ネジ軸が伸長する。
【0068】
ネジが伸長すると、第1アーム部材99および第2アーム部材101は、それぞれ第1支持軸107あるいは第2支持軸109を軸線中心として上方へ揺動する。
鋼板27が第1アーム部材99によって保持された状態で、図4に二点鎖線で示されるように第2アーム部材101は、その先端部が第2支持軸109を越えて第1アーム部材99側に揺動され、鋼板27を第1アーム部材99と共同して挟持する。
この状態で、鋼板27が第2アーム部材101側に位置するように移動させると、鋼板27は第2アーム部材101によって支持されることになる。
この状態から第1アーム駆動部材103および第2アーム駆動部材105のネジ軸が短縮され、第1アーム部材99および第2アーム部材101がそれぞれ元の略水平位置に戻ると、鋼板27は辺111が印刷領域39側に位置するように反転される。
このように、鋼板27は安全かつ確実に搬入時の反転領域55側の辺111の回りに回転し、表裏反転させられる。
【0069】
補助ローラ89が投入位置に設定された第2横送りコンベア59および第1横送りコンベア57が上方位置に上昇し、外側倣いパネル53が係合位置となる。
鋼板27は、複数の第2チェーン79および第2サイドローラ93によって支持される。
【0070】
この状態で、第1駆動モータ69および第2駆動モータ85を印刷領域39から反転装置9側へ送る際に駆動させた際と逆方向に回転させると、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59が作動し、鋼板27は印刷領域39側へ搬送される。鋼板27は、第2横送りコンベア59から第1横送りコンベア57に受け渡され、印刷領域39へ搬入される。
印刷領域39に搬入された鋼板27は、第1横送りコンベア57によってさらに搬送され、図15に示されるように、辺111が外側倣いパネル53に当て込まれる。
鋼板27が外側倣いパネル53に当接すると、移動を阻止されるので、外側倣いパネル群13によって辺111の位置が規制される。
【0071】
印刷エリア39に入り、一定時間を過ぎると、鋼板27は図15に示される位置となり、外側倣いパネル群13による位置の規制が終了したと判断し、印刷工程に入る。
印刷工程では、上述の手順と同様にして鋼板検知部材20によるセンシング作業と、印刷エリア設定モード46による印刷エリア設定作業と、印刷部材42による印刷作業とが行われる。
このように、印刷領域39の側部に鋼板27を反転できる反転装置9が備えられているので、鋼板27の両面に印刷をおこなうことができる。
【0072】
このとき、鋼板27は、辺111の回りに回転されて表裏反転され、かつ、先の印刷時に内側倣いローラ群11によって辺111の位置が規制されていたのと同様に、外側倣いパネル群13によって辺111の位置が規制されている。
このため、鋼板27の形状と、先の印刷時の際の鋼板27の形状とは、内側倣いローラ群11および外側倣いパネル群13の間隔の中心線に対して線対称の関係となるので、辺111,113,115の鋼板検知部材20に対する相対的位置関係は略同一となる。
したがって、印刷エリア設定モード46によって設定される印刷エリアAは、先の印刷時に設定された印刷エリアAと線対称の位置関係となるので、両面に印刷される印刷情報Dは正確な位置関係で印刷することができる。
これにより、ブロックあるいは船体への艤装品の取付工事を正確にかつ容易に行うことができる。
【0073】
印刷が完了すると、第1駆動モータ69および第2駆動モータ85を反転装置9側から印刷領域39へ送る際に駆動させた際と逆方向に回転させ、第1横送りコンベア57および第2横送りコンベア59を作動させ、鋼板27を反転領域55側へ搬送する。鋼板27は、第1横送りコンベア57から第2横送りコンベア59に受け渡され、反転領域55の奥側へ搬入される。奥側へ搬送された鋼板27は屋内マグネットクレーン117によって次工程へ搬送される。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
たとえば、第1の規制部材および第2の規制部材として、本実施形態では内側倣いローラ群11および外側倣いパネル群13のように点状に規制するようにしているが、板状、棒状の規制部材としてもよい。板状あるいは棒状の場合、印刷領域39の全長に亘り連続的に規制するものであってもよい。
内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の形状は、断面形状が円状、楕円状あるいは矩形等の任意の多角形状とされてもよい。
また、内側倣いローラ51は、上下方向に移動可能に取り付けられ、上下方向の移動によって鋼板27と選択的に係合するようにしてもよい。外側倣いパネル53は、固定して取り付けるようにしてもよい。
【0075】
さらに、内側倣いローラ51および外側倣いパネル53の搬送方向21における設置位置は、ローラ19と同じ位置に限らず、相対的にずれた位置としてもよい。
また、鋼板27の縦送りコンベア3から第1横送りコンベア57への支持替えの際、第1横送りコンベア57を上昇させるようにしているが、縦送りコンベア3の印刷領域39にあるローラ19を下降させるようにしてもよい。
また、反転装置9は、上述の構成に限定されるものではなく、鋼板27を表裏反転できるものであれば適宜構成のものが用いられる。
【符号の説明】
【0076】
1 鋼板両面印刷装置
5 横送りコンベア
7 印刷装置
9 反転装置
11 内側倣いローラ群
13 外側倣いパネル群
15 バーコードリーダ
17 印刷情報取得用パソコン
20 鋼板検知部材
27 鋼板
39 印刷領域
43 幅方向
45 制御部
46 印刷エリア設定モード
55 反転領域
111,113,115 辺
A 印刷エリア
C 中点線
C1,C2 中点
P1,P2,P3,P4,P5,P6 点
α,β 鋼板角点
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷領域に搬入された板材に印刷する印刷装置と、
前記板材の有無を検知する板材検知部材と、
前記印刷装置の印刷動作を制御する制御部と、を備えている板材印刷装置であって、
前記制御部には、
前記板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、
前記印刷開始辺に近い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点と前記印刷開始辺から遠い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として前記板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられている板材印刷装置。
【請求項2】
前記印刷エリア設定モードは、前記板材検知部材が検知する前記印刷開始辺の間隔をあけた2検知点を通る直線を算出し、前記検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定する請求項1に記載の板材印刷装置。
【請求項3】
前記印刷領域に搬入される前記板材を特定する特定情報を検出する特定情報検出手段と、
該特定情報検出手段が検出した特定情報に基づいて前記板材に印刷する印刷情報を前記制御部に送る印刷情報指示手段と、
が備えられている請求項1または請求項2に記載の板材印刷装置。
【請求項4】
前記一辺側の前記印刷領域の側部に設定された反転領域と前記印刷領域との間で、前記板材を選択的に搬送する搬送装置と、
前記印刷領域の前記反転領域側に前記板材に対して選択的に係合可能に設けられ、前記板材の位置を規制する第1の規制部材と、
前記印刷領域の幅方向で前記第1の規制部材とは反対側に設けられ、前記板材の位置を規制する第2の規制部材と、
前記反転領域に設置され、前記板材を前記一辺の回りに回転し、表裏反転させる反転装置と、
が備えられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の板材印刷装置。
【請求項1】
印刷領域に搬入された板材に印刷する印刷装置と、
前記板材の有無を検知する板材検知部材と、
前記印刷装置の印刷動作を制御する制御部と、を備えている板材印刷装置であって、
前記制御部には、
前記板材検知部材が検知する印刷が開始される側の印刷開始辺に交差する一辺および他辺におけるそれぞれ間隔をあけた2検知点の位置情報を取得し、
前記印刷開始辺に近い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点と前記印刷開始辺から遠い前記一辺の検知点および前記他辺の検知点の中点とを結んだ中点線を幅方向の基準として前記板材の印刷エリアを設定する印刷エリア設定モードが備えられている板材印刷装置。
【請求項2】
前記印刷エリア設定モードは、前記板材検知部材が検知する前記印刷開始辺の間隔をあけた2検知点を通る直線を算出し、前記検知点の内より板材の内側にある検知点側を基準として印刷開始位置を設定する請求項1に記載の板材印刷装置。
【請求項3】
前記印刷領域に搬入される前記板材を特定する特定情報を検出する特定情報検出手段と、
該特定情報検出手段が検出した特定情報に基づいて前記板材に印刷する印刷情報を前記制御部に送る印刷情報指示手段と、
が備えられている請求項1または請求項2に記載の板材印刷装置。
【請求項4】
前記一辺側の前記印刷領域の側部に設定された反転領域と前記印刷領域との間で、前記板材を選択的に搬送する搬送装置と、
前記印刷領域の前記反転領域側に前記板材に対して選択的に係合可能に設けられ、前記板材の位置を規制する第1の規制部材と、
前記印刷領域の幅方向で前記第1の規制部材とは反対側に設けられ、前記板材の位置を規制する第2の規制部材と、
前記反転領域に設置され、前記板材を前記一辺の回りに回転し、表裏反転させる反転装置と、
が備えられている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の板材印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−116539(P2011−116539A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277744(P2009−277744)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000185374)小池酸素工業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】
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