板状体加熱装置および基材の製造方法
【課題】加熱ムラをなくし、加熱時間を短縮して生産性を向上させる。
【解決手段】本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体Wを加熱する予備加熱装置50であって、過熱水蒸気Sを生成する過熱装置54と、過熱水蒸気Sを板状体Wに噴出する複数の噴出部51と、複数の噴出部51が配設されてなる噴出部配管52とを備え、噴出部配管52は、過熱水蒸気Sを一側から他側に送る複数の一側配管52Aと、過熱水蒸気Sを他側から一側に送る複数の他側配管52Bとを備えて構成され、一側配管52Aと他側配管52Bが隣り合って互い違いに並んで配置されている構成としたところに特徴を有する。
【解決手段】本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体Wを加熱する予備加熱装置50であって、過熱水蒸気Sを生成する過熱装置54と、過熱水蒸気Sを板状体Wに噴出する複数の噴出部51と、複数の噴出部51が配設されてなる噴出部配管52とを備え、噴出部配管52は、過熱水蒸気Sを一側から他側に送る複数の一側配管52Aと、過熱水蒸気Sを他側から一側に送る複数の他側配管52Bとを備えて構成され、一側配管52Aと他側配管52Bが隣り合って互い違いに並んで配置されている構成としたところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置および基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の板状体加熱装置として、例えば下記特許文献1に記載のコンタクトヒータが知られている。このコンタクトヒータは、ヒータが内部に埋め込まれた上下一対の加熱体を有しており、両加熱体で板状体を上下方向から挟んで加熱する構成である。熱可塑性樹脂は、その融点以上に加熱されることで溶融し、溶融した熱可塑性樹脂をプレスすることによって所定形状に成形される。この状態から熱可塑性樹脂が冷え固まると、この熱可塑性樹脂がバインダとなって植物性繊維を所定形状に保持することにより、所定形状を有する基材が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−8306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコンタクトヒータでは、例えば基材の生産性向上の観点から加熱装置の設定温度を高くした場合に、加熱体の内部におけるヒータの配置などにより加熱ムラが発生し、基材が局部的に焼け付いたり、あるいはバインダである熱可塑性樹脂の軟化状態がばらつくなどして、基材が不良品となることがあった。かといって、加熱装置の設定温度を低くした場合には、加熱時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、加熱ムラをなくし、加熱時間を短縮して生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置であって、気体状の熱媒体を生成する熱媒体生成装置と、熱媒体を板状体に噴出する複数の噴出部と、複数の噴出部が配設されてなる噴出部配管とを備え、噴出部配管は、熱媒体を一側から他側に送る複数の一側配管と、熱媒体を他側から一側に送る複数の他側配管とを備えて構成され、一側配管と他側配管が隣り合って互い違いに並んで配置されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
噴出部配管においては、一側配管の一側(高温部)から他側(低温部)に熱媒体が送られ、これとは逆に、他側配管の他側(高温部)から一側(低温部)に熱媒体が送られる。さらに、一側配管の高温部が他側配管の低温部と隣り合って互い違いに並んで配置され、一側配管の低温部が他側配管の高温部と隣り合って互い違いに並んで配置されるため、噴出部配管全体として、板状体に与える熱量を均一化することができる。したがって、加熱ムラをなくすことができ、加熱時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
一対の噴出部配管が対向配置されており、噴出部は、対向する側の噴出部配管に向けて熱媒体を噴出するようになっており、一対の噴出部配管の間を板状体が通過するようになっている構成としてもよい。
このような構成によると、板状体を挟む両側に一対の噴出部配管が対向配置されるため、板状体の表裏両面を同時に加熱することができ、加熱時間を短縮することができる。
【0009】
熱媒体によって加熱された板状体をさらに加熱し、その加熱された板状体を所定の温度に保持するとしてもよい。
このようにすると、熱媒体によって加熱された板状体をさらに加熱する際に、短時間で板状体を所定の温度にまで加熱することができ、かつ、所定の温度に保持することができる。
【0010】
また、本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を基材に成形する基材の製造方法であって、熱媒体生成装置によって生成された熱媒体を板状体に噴出することにより、板状体を加熱する工程を含む加熱工程と、加熱工程で加熱された板状体を基材に成形する成形工程とを備えたとしてもよい。
【0011】
このような製造方法によると、熱媒体によって板状体を加熱し(加熱工程)、加熱された板状体を基材に成形する(成形工程)。熱媒体によって加熱しない場合よりも加熱工程における加熱時間を短くすることができ、加熱工程における板状体の仕掛かり枚数を減らすことができる。したがって、例えば設備停止が発生した場合に、加熱工程で不良になる板状体の枚数を減らすことができる。
【0012】
また、熱媒体を過熱水蒸気とすることにより、この過熱水蒸気を板状体に吹き付けることが可能となり、加熱時間をさらに短縮することができることに加えて、環境負荷を低減することができる。過熱水蒸気は空気よりも熱容量が大きく、空気を介さずに板状体を直接加熱できるため、空気を媒体として加熱する熱風循環式の加熱装置よりも熱伝達率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱ムラをなくすことができ、加熱時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における基材の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じる前の状態を示している。
【図3】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じた後の状態を示している。
【図4】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じる前の状態でかつ予備成形体がセット中心に導入された状態を示している。
【図5】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じる前の状態でかつ予備成形体が成形中心側に配置された状態を示している。
【図6】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じた後の状態を示している。
【図7】板状体がハンガーによって吊り下げられた状態を斜め前方から見た斜視図である。
【図8】板状体がハンガーによって吊り下げられた状態を側方から見た側面図である。
【図9】基材製造装置の全体斜視図である。
【図10】基材製造装置の略後半部を示した平面図である。
【図11】基材製造装置の略前半部を示した平面図である。
【図12】予備加熱装置の正面図である。
【図13】予備加熱装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13の図面を参照しながら説明する。
図1は、基材Kの製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、基材Kを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料からなる板状体Wを加熱した後に(予備加熱工程)、加熱した板状体Wをさらに加熱し(本加熱工程)、加熱した板状体Wを予備成形体W1に予備成形し(予備成形工程)、予備成形体W1を基材Kに本成形する(本成形工程)。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる。
【0016】
板状体Wに含まれる植物性繊維とは、植物由来の繊維材料のことである。このような繊維材料は、例えば、綿、麻、サイザル、ジュート、ケナフなどから採取することが可能である。この中では、特にケナフが好ましい。ケナフは、成長が早くしかもCO2を多く吸収することから、地球環境保全にとって有効だからである。また、ケナフの靭皮からは比較的長くて丈夫な繊維を採取することが可能だからである。
【0017】
板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。この中では、特にポリプロピレンが好ましい。
【0018】
板状体Wを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料を混綿させることでマット状とした後に、得られたマット体を熱圧プレスによって板状に成形する。これにより、所定の厚みを有する板状体Wを製造することができる。このような板状体Wの製造方法は、例えば、特開2001−179716号公報、特開2002−371455号公報等に開示されている。なお、板状体Wは、「熱成形用繊維板」、「プレボード」などの別の名称で呼ばれる場合がある。
【0019】
板状体Wを加熱することによって、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。例えば、板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合には、ポリプロピレンの融点は160℃〜170℃であるため、板状体Wをこれ以上の温度(例えば200℃)に加熱することで当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。
【0020】
図2、図3は、板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図である。図2に示すように、予備成形型10は、一対の金型12、14を有している。このうち一方の金型12は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型14は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型12、14は、型面同士が互いに対向するようにして左右に配置されている。そして、金型12、14の型面間に板状体Wが上下方向に吊り下げられた状態で配置される。図3に示すように、予備成形型10を構成するこれら一対の金型12、14は、例えば金型12を金型14側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。これにより、板状体Wは、予備成形体W1に成形される。
【0021】
図4、図5、図6は、板状体Wを本成形するための本成形型20の断面図である。図4に示すように、本成形型20は、一対の金型22、24を有している。このうち一方の金型22は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型24は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型22、24は、型面22a、24a同士が互いに対向するようにして左右に配置されている。図4において両型面22a、24aの中心に配置された予備成形体W1の位置を以下「セット中心」という。
【0022】
図5に示すように、予備成形体W1は、両金型22、24によって行われるプレス加工に先立って、予め他方の金型24の型面24a側(成形中心側)に配置される。次に図6に示すように、本成形型20を構成するこれら一対の金型22、24は、例えば金型22を金型24側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。
【0023】
予備成形体W1を本成形するための本成形型20は、冷間プレス用の成形型が用いられる。ここでいう「冷間プレス」とは、本成形型20の型面を積極的に加熱しないで行うプレス成形のことを意味するが、加工熱や摩擦熱などによって本成形型20の型面22a、24aがある程度加熱される場合も含まれる。加熱した板状体Wを本成形型20(冷間プレス型)でプレスすることによって、板状体Wに含まれている熱可塑性樹脂が冷却されて固化する。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる(図6参照)。図6において両型面22a、24aの中心に配置された基材Kの位置を以下「成形中心」という。
【0024】
このようにして得られた基材Kは、軽量でかつ強度が高いことから、車両用内装材の基材として用いることができる。例えば、基材Kは、ドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリムなどに用いることができる。
【0025】
図2と図4を比較すればわかるように、予備成形型10を構成する一対の金型12、14のクリアランスCL1は、本成形型20を構成する一対の金型22、24のクリアランスCL2よりも大きく設定されている。例えば、CL2が5mmである場合には、クリアランスCL1がそれよりも大きい10mmに設定されている。したがって、板状体Wを一回で基材Kに成形するのではなく、まず、板状体Wを予備成形体W1に成形し、次に、この予備成形体W1を基材Kに成形することにより、段階的に(2段階で)成形することが可能となっている。
【0026】
さらに、本成形工程でセット中心に導入された予備成形体W1を成形中心側に移動させて本成形することにより、両金型22、24を型閉じする途中で予備成形体W1がロックされることを回避し、プレス加工後に基材Kの中央部分が引き延ばされて薄肉となることを規制できる。
【0027】
図7は、板状体Wを吊り下げた状態で保持するためのハンガー30の斜視図である。図8は、ハンガー30の側面図である。
【0028】
図7に示すように、ハンガー30は、鉄やアルミニウムなどの金属製のパイプ状部材からなるシャフト32を備えている。シャフト32の長さは、板状体Wの横幅よりも大きく形成されている。シャフト32の下部には、板状体Wの上縁部を挟むための2つのクランプ34が取り付けられている。シャフト32の上部には、後述するスライドレール62に載置される2つのローラー36が取り付けられている。2つのローラー36は、側面視において略L字形に形成された取付部材38を介してシャフト32の上部に取り付けられている。クランプ34および取付部材38は、図8に示すようにシャフト32を上下方向に貫通するボルト32Aによって連結されている。
【0029】
図8に示すように、クランプ34は、鉄やアルミニウムなどの金属製の板状部材からなる一対の挟持部材を有している。両挟持部材は、ヒンジ35を支点としてその下端部を開閉させることで板状体Wの上縁部を挟むことができるように構成されている。すなわち、両挟持部材の一方は、同他方に対して板状体Wの上縁部を保持する閉じ位置と板状体Wの上縁部を解除する開き位置との間を開閉可能とされている。両挟持部材の上端部間には、ばね部材37が取り付けられており、このばね部材37によって両挟持部材の下端部がヒンジ35を支点として閉じる方向に付勢されている。両挟持部材の下端部の内面側には、板状体Wが下方に落ちることを規制するための滑り止め用の溝部が形成されている。
【0030】
図9は、基材Kを成形するための基材製造装置の全体斜視図であり、図10および図11は、基材製造装置の平面図である。図9ないし図11に示すように、基材製造装置は、板状体Wを加熱する加熱装置を備えている。この加熱装置は、予備加熱装置50と本加熱装置40とから構成されている。予備加熱装置50と本加熱装置40は、基材製造装置の入口側からこの順に配置されており、本加熱装置40は、予備加熱装置50と平面視略垂直かつ略水平に配置されている。すなわち、予備加熱装置50と本加熱装置40は、平面視略L字状に直交する配置で連結されている。板状体Wは、予備加熱装置50で約170℃に加熱され、加熱状態のまま本加熱装置40に投入される。なお、予備加熱装置50の詳細な構成については後述する。
【0031】
本加熱装置40は、板状体Wをその内部に通過させることで均一に加熱することのできる熱風循環式の加熱炉42と、その加熱炉42の内部において板状体Wを搬送することのできる搬送装置44とを備えている。加熱炉42の内部温度は例えば200℃(本発明の「所定の温度」の一例)に設定されており、予め170℃付近に加熱された板状体Wを200℃に加熱し保持することにより、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂の溶融状態を維持させることが可能となっている。
【0032】
搬送装置44は、並列に配置された2台のチェーンコンベヤ46a、46bによって構成されており、この2台のチェーンコンベヤ46a、46bは同期して駆動されている。この2台のチェーンコンベヤ46a、46bの上面には、前述したハンガー30を構成するシャフト32の両端部が載置される。これにより、搬送装置44は、ハンガー30によって吊り下げられた状態で保持される板状体Wを加熱炉42の内部で搬送することができるようになっている。なお、搬送装置44におけるハンガー30の搬送方向を「前方」と表記することとする。
【0033】
加熱炉42の内部には、板状体Wを予備成形するための予備成形型10が設置されている。搬送装置44と予備成形型10は、加熱炉42の内部においてオフセット位置に設置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、搬送装置44の中心軸P1と、予備成形型10の中心軸P2が水平方向に離れた位置という意味である。
【0034】
予備成形型10の下方には、本成形型20が設置されている。予備成形型10と本成形型20は、オフセット位置に配置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、予備成形型10の中心軸P2と、本成形型20の中心軸P3が上下方向に離れた位置という意味である。
【0035】
なお、加熱炉42の略後半部は、平面視において略L字形(図10参照)に形成されており、オフセット位置に配置された搬送装置44と予備成形型10をともに収容できるようになっている。本成形型20は、予備成形型10の下方であって、かつ、加熱炉42の外部に設置されている。
【0036】
図10に示すように、基材製造装置は、搬送装置44からスライドレール62にハンガー30を受け渡すためのハンガー受け渡し機構80を備えている。ハンガー受け渡し機構80は、2つのアーム81を備えており、この2つのアーム81によってハンガー30を構成するシャフト32の両端部を下方から持ち上げることが可能となっている。
【0037】
さらに、基材製造装置は、板状体Wを搬送装置44から予備成形型10へ移送するための板状体移送機構60を備えている。板状体移送機構60は、搬送装置44の前方に搬送装置44と平面視略垂直かつ略水平に配置されたスライドレール62と、そのスライドレール62に載置されたハンガー30を水平方向に移動させることのできる水平方向移動機構64によって構成されている。
【0038】
水平方向移動機構64は、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることが可能である。したがって、スライドレール62及び水平方向移動機構64によって構成される板状体移送機構60は、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることによって、ハンガー30によって保持されている板状体Wを搬送装置44から予備成形型10へ移送することが可能となっている。
【0039】
水平方向移動機構64によって予備成形型10に搬送されたハンガー30は、ハンガー移送機構66に受け取られる。ハンガー移送機構66は、図9に示すように、一対のアーム67を有し、シャフト32の両端部を両アーム67に支持した状態で、板状体Wないし予備成形体W1を移送可能である。予備成形体W1は、ハンガー移送機構66によって予備成形型10から本成形型20へ移送される。
【0040】
次に、予備加熱装置50の構成について図11ないし図13の図面を参照しながら説明する。図11は、予備加熱装置50を上方から見た平面図である。図12は、予備加熱装置50を正面から見た正面図である。図13は、予備加熱装置50を斜め上方から見た斜視図である。
【0041】
図11に示すように、予備加熱装置50は、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bとから構成されている。各加熱炉50A,50Bには、過熱水蒸気Sを噴出する複数の噴出部51が設けられている。これらの噴出部51は噴出部配管52に配設されており、この噴出部配管52は、板状体Wの表裏両側に対向配置されている。このため板状体Wは、対向配置された両噴出部配管52の間を通過し、板状体Wを表裏両側からムラなく加熱することができ、かつ、加熱時間を短縮することができる。噴出部配管52はいずれも、図12に示すように、中継配管53を介して過熱装置(本発明の「熱媒体生成装置」の一例)54と接続されている。この過熱装置54は、ボイラー(図示せず)から送られてきた水蒸気を過熱して過熱水蒸気Sを生成する装置である。
【0042】
第1加熱炉50A(図12の図示右側の加熱炉)は、予備加熱装置50の略前半部を構成し、第2加熱炉50B(図12の図示左側の加熱炉)は、予備加熱装置50の略後半部を構成している。両加熱炉50A,50Bは、これらの中間を通る基準面SPに関して対称に配置されている。すなわち、噴出部51、噴出部配管52、中継配管53、および過熱装置54は、いずれも基準面SPを中心として左右対称に配置されている。以下、噴出部51、噴出部配管52、中継配管53の構成については、両加熱炉50A,50Bで同じであるため、第1加熱炉50Aを代表として説明する。
【0043】
中継配管53は、過熱装置54から噴出部配管52に向かう途中で、第1分岐点53Aで第1支管55Aと第2支管55Bとに分岐している。さらに、第1支管55Aは、第2分岐点53Bで二手に分岐して噴出部配管52の一側(図12の図示右側)に接続されている。このため、過熱装置54で生成された過熱水蒸気Sのうち、第1分岐点53Aで第1支管55A側に分岐して流通された過熱水蒸気Sは、さらに第2分岐点53Bで分岐した後に噴出部配管52の一側に送られる。一方、第2支管55Bは、噴出部配管52の他側(図12の図示左側)に配置された第3分岐点53Cに接続されている。第2支管55Bは、第3分岐点53Cで二手に分岐して噴出部配管52の他側に回り込んでいる。このため、過熱装置54で生成された過熱水蒸気Sのうち、第1分岐点53Aで第2支管55B側に分岐して流通された過熱水蒸気Sは、さらに第3分岐点53Cで分岐した後に噴出部配管52の他側に送られる。
【0044】
また、第1支管55Aは、第1分岐点53Aから上方に延びる形態とされているのに対して、第2支管55Bは、第1分岐点53Aから水平方向に延びた後に上方に延びる形態とされている。つまり、第2支管55Bは、水平方向に延びる長さ分だけ第1支管55Aよりも長くなっている。この構成では第2支管55Bの水平部分を通る間に過熱水蒸気Sの温度が低下し、第1支管55Aを通る過熱水蒸気Sと第2支管55Bを通る過熱水蒸気Sとの間で温度差が発生してしまう。そこで、本実施形態では第1支管55Aおよび第2支管55Bの内部にヒータ(図示せず)が埋め込まれており、温度差をなくすようにしている。
【0045】
噴出部配管52は、第1支管55Aに接続された一対の一側配管52Aと、第2支管55Bに接続された一対の他側配管52Bとから構成されている。一側配管52Aは、第1支管55Aに接続された基端側から先端側に向けて水平方向に延びる形態とされている。このため、第1支管55Aからの過熱水蒸気Sは、一側配管52Aの基端側から先端側へ送られる。一方、他側配管52Bは、第2支管55Bに接続された基端側から先端側に向けて水平方向に延びる形態とされている。このため、第2支管55Bからの過熱水蒸気Sは、他側配管52Bの基端側から先端側へ送られる。さらに、一側配管52Aと他側配管52Bは、上下方向(板状体Wの搬送方向と交差する方向)に並んで配置され、かつ、交互に配置されている。また、一側配管52Aと他側配管52Bは、上下方向に等間隔で配置されている。換言すると、一側配管52Aと他側配管52Bは、それぞれ櫛刃状に形成され、各櫛刃が対向して一方の櫛刃が他方の2つの櫛刃の間の凹みに嵌り合うように配置されている。
【0046】
噴出部51は、各配管52A,52Bにおいて水平方向に等間隔で配置されている。さらに各配管52A,52Bの噴出部51は、上下方向に並んで配置されている。ところで、噴出部51から噴出される過熱水蒸気Sは、基端側ほど高温となり、先端側ほど低温となりやすい。このため、各配管52A,52Bには、高温部と低温部が混在することになる。これでは、各配管52A,52Bの基端側では板状体Wに与える熱量が大きくなり、各配管52A,52Bの先端側では板状体Wに与える熱量が小さくなる。したがって、加熱ムラが発生し、バインダである熱可塑性樹脂の軟化状態がばらつくなどして、基材Kが不良品となる場合がある。
【0047】
その点、本実施形態では一側配管52Aの延出方向が他側配管52Bの延出方向と反対になっているため、一側配管52Aの高温部(基端側)と他側配管52Bの低温部(先端側)が上下方向に隣り合って互い違いに並ぶとともに、一側配管52Aの低温部(先端側)と他側配管52Bの高温部(基端側)が上下方向に隣り合って互い違いに並ぶことになる。このため、高温部から噴出された高温の過熱水蒸気Sと低温部から噴出された低温の過熱水蒸気Sとが混ざり合うことで、高温部と低温部のほぼ中間となる中温の過熱水蒸気Sが生成される。この中温の過熱水蒸気Sが設定温度となるように制御すれば、板状体Wに対して狙いとする熱量を与えることができる。したがって、噴出部配管52全体として、板状体Wに与える熱量を均一化することができ、熱可塑性樹脂の軟化状態も安定し、基材Kが不良品となることもない。
【0048】
さらに、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bは、基準面SPに関して対称に配置されており、板状体Wは、各加熱炉50A,50Bに一枚ずつ搬入され、各加熱炉50A,50Bで所定時間だけ留まって加熱されるようになっている。このことは、第1加熱炉50Aにおいて各配管52A,52Bの高温部で加熱される部位は、第2加熱炉50Bにおいて各配管52A,52Bの低温部で加熱されることを意味し、第1加熱炉50Aにおいて各配管52A,52Bの低温部で加熱される部位は、第2加熱炉50Bにおいて各配管52A,52Bの高温部で加熱されることを意味する。したがって、両加熱炉50A,50B間における加熱ムラもなくなり、予備加熱装置50全体として、板状体Wに与える熱量を均一化することができる。
【0049】
また、過熱水蒸気Sは、噴出部51から板状体Wに対して直接吹き付けられる。このように、過熱水蒸気Sを熱媒体として板状体Wを直接加熱することができるため、板状体Wを効率良く加熱することができる。したがって、本加熱装置40による加熱時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。この結果、本加熱装置40における板状体Wの仕掛かり枚数を少なくできるため、例えば設備停止が発生した場合に本加熱装置40で不良になる板状体Wの枚数を減らすことができる。
【0050】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。板状体Wは、ハンガー30に取り付けられ、予備加熱装置50に投入される。まず、板状体Wは、第1加熱炉50Aで所定時間だけ留まって加熱され、次に、第2加熱炉50Bへ移動し、第2加熱炉50Bで所定時間だけ留まって加熱される。この間、板状体Wは、噴出部51から噴出された過熱水蒸気Sによって約170℃まで急激に加熱される(予備加熱工程)。加熱された板状体Wは、加熱状態のまま第2加熱炉50Bから本加熱装置40へ搬入される。板状体Wは、搬送装置44によって搬送されながら加熱炉42の内部で加熱される(本加熱工程)。
【0051】
加熱された板状体Wは、板状体移送機構60によって搬送装置44から予備成形型10へ移送され、ハンガー30がハンガー移送機構66に受け取られる。予備成形型10に移送された板状体Wは、加熱炉42の内部で予備成形型10によって表裏両面からプレスされ、予備成形体W1に成形される(予備成形工程)。この後、予備成形体W1は、ハンガー移送機構66によって予備成形型10から本成形型20へ移送される。予備成形体W1は、本成形型20によって表裏両面からプレスされ、基材Kに成形される。プレスが完了した後は、本成形型20を型開きし、基材Kを脱型することにより、基材Kを得ることができる(本成形工程)。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、予備加熱装置50によって板状体Wを予備加熱するようにしたから、本加熱装置40における加熱時間を短くすることができる。したがって、生産性を向上させることができるとともに、本加熱装置40における板状体Wの仕掛かり枚数を減らすことができる。また、一側配管52Aの延出方向と他側配管52Bの延出方向を反対にし、一側配管52Aの低温部と他側配管52Bの高温部とが上下方向に隣り合って互い違いに並んで配置されるようにしたから、噴出部配管52全体として板状体Wに与える熱量を均一にすることができる。よって、基材Kの熱可塑性樹脂の軟化状態にばらつきが発生することはなく、基材Kの不良をなくすことができる。
【0053】
また、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bを基準面SPに関して対称に配置し、加熱炉50A,50B毎に所定時間だけ留まって板状体Wを加熱するようにしたから、予備加熱装置50全体として板状体Wに与える熱量を均一にすることができる。また、各加熱炉50A,50Bにおいて対向配置された両噴出部配管52の間を板状体Wが通過するようにしたから、板状体Wを表裏両側から加熱することができ、短時間でムラなく加熱できる。また、熱媒体としての過熱水蒸気Sを板状体Wに直接吹き付けるようにしたから、板状体Wを効率良く加熱することができ、板状体Wを約170℃まで急激に加熱することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では熱媒体として過熱水蒸気Sを例示しているものの、本発明によると、水蒸気や空気を熱媒体をしてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では板状体Wをハンガー30で吊り下げながら搬送しているものの、本発明によると、板状体Wを水平姿勢で搬送ローラ上に載置し、搬送してもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では予備成形工程と本成形工程とによって板状体Wを基材Kに成形しているものの、本発明によると、板状体Wを一度で基材Kに成形してもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では各配管52A,52Bが水平方向に延びる形態としているものの、本発明によると、各配管52A,52Bが斜め方向(水平方向と鉛直方向の双方に対して斜めをなす方向)に延びる形態としてもよい。要するに、各配管52A,52Bが隣り合って互い違いに並んで配置されているものであればよく、各配管52A,52Bの並び方向は問わない。
【0058】
(5)上記実施形態では一対の加熱炉50A,50Bを備える予備加熱装置50としているものの、本発明によると、1つまたは3つ以上の加熱炉を備える予備加熱装置としてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では板状体Wを各加熱炉50A,50Bで所定時間だけ留めて加熱しているものの、本発明によると、板状体Wを搬送しながら各加熱炉50A,50Bで加熱してもよい。
【0060】
(7)上記実施形態では第1支管55Aが第2支管55Bよりも短くなるように第1分岐点53Aを配置しているものの、本発明によると、第1支管55Aと第2支管55Bが同じ長さとなるように第1分岐点を配置してもよい。
【0061】
(8)上記実施形態では対向配置された両噴出部配管52によって板状体Wを表裏両側から加熱しているものの、本発明によると、板状体Wの一方側のみを加熱してもよい。例えば、第1加熱炉50Aで板状体Wの表面側のみを加熱し、第2加熱炉50Bで板状体Wの裏面側のみを加熱してもよい。
【0062】
(9)上記実施形態では予備加熱工程と本加熱工程に分けて板状体Wを加熱しているものの、本発明によると、一つの加熱工程において熱媒体(過熱水蒸気S)と熱風の双方を用いて板状体Wを加熱してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…予備成形型
20…本成形型
40…本加熱装置
50…予備加熱装置
51…噴出部
52…噴出部配管
52A…一側配管
52B…他側配管
54…過熱装置(熱媒体生成装置)
K…基材
S…過熱水蒸気
W…板状体
W1…予備成形体
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置および基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の板状体加熱装置として、例えば下記特許文献1に記載のコンタクトヒータが知られている。このコンタクトヒータは、ヒータが内部に埋め込まれた上下一対の加熱体を有しており、両加熱体で板状体を上下方向から挟んで加熱する構成である。熱可塑性樹脂は、その融点以上に加熱されることで溶融し、溶融した熱可塑性樹脂をプレスすることによって所定形状に成形される。この状態から熱可塑性樹脂が冷え固まると、この熱可塑性樹脂がバインダとなって植物性繊維を所定形状に保持することにより、所定形状を有する基材が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−8306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のコンタクトヒータでは、例えば基材の生産性向上の観点から加熱装置の設定温度を高くした場合に、加熱体の内部におけるヒータの配置などにより加熱ムラが発生し、基材が局部的に焼け付いたり、あるいはバインダである熱可塑性樹脂の軟化状態がばらつくなどして、基材が不良品となることがあった。かといって、加熱装置の設定温度を低くした場合には、加熱時間が長くなり、生産性が低下してしまう。
【0005】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、加熱ムラをなくし、加熱時間を短縮して生産性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置であって、気体状の熱媒体を生成する熱媒体生成装置と、熱媒体を板状体に噴出する複数の噴出部と、複数の噴出部が配設されてなる噴出部配管とを備え、噴出部配管は、熱媒体を一側から他側に送る複数の一側配管と、熱媒体を他側から一側に送る複数の他側配管とを備えて構成され、一側配管と他側配管が隣り合って互い違いに並んで配置されている構成としたところに特徴を有する。
【0007】
噴出部配管においては、一側配管の一側(高温部)から他側(低温部)に熱媒体が送られ、これとは逆に、他側配管の他側(高温部)から一側(低温部)に熱媒体が送られる。さらに、一側配管の高温部が他側配管の低温部と隣り合って互い違いに並んで配置され、一側配管の低温部が他側配管の高温部と隣り合って互い違いに並んで配置されるため、噴出部配管全体として、板状体に与える熱量を均一化することができる。したがって、加熱ムラをなくすことができ、加熱時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【0008】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
一対の噴出部配管が対向配置されており、噴出部は、対向する側の噴出部配管に向けて熱媒体を噴出するようになっており、一対の噴出部配管の間を板状体が通過するようになっている構成としてもよい。
このような構成によると、板状体を挟む両側に一対の噴出部配管が対向配置されるため、板状体の表裏両面を同時に加熱することができ、加熱時間を短縮することができる。
【0009】
熱媒体によって加熱された板状体をさらに加熱し、その加熱された板状体を所定の温度に保持するとしてもよい。
このようにすると、熱媒体によって加熱された板状体をさらに加熱する際に、短時間で板状体を所定の温度にまで加熱することができ、かつ、所定の温度に保持することができる。
【0010】
また、本発明は、植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を基材に成形する基材の製造方法であって、熱媒体生成装置によって生成された熱媒体を板状体に噴出することにより、板状体を加熱する工程を含む加熱工程と、加熱工程で加熱された板状体を基材に成形する成形工程とを備えたとしてもよい。
【0011】
このような製造方法によると、熱媒体によって板状体を加熱し(加熱工程)、加熱された板状体を基材に成形する(成形工程)。熱媒体によって加熱しない場合よりも加熱工程における加熱時間を短くすることができ、加熱工程における板状体の仕掛かり枚数を減らすことができる。したがって、例えば設備停止が発生した場合に、加熱工程で不良になる板状体の枚数を減らすことができる。
【0012】
また、熱媒体を過熱水蒸気とすることにより、この過熱水蒸気を板状体に吹き付けることが可能となり、加熱時間をさらに短縮することができることに加えて、環境負荷を低減することができる。過熱水蒸気は空気よりも熱容量が大きく、空気を介さずに板状体を直接加熱できるため、空気を媒体として加熱する熱風循環式の加熱装置よりも熱伝達率を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱ムラをなくすことができ、加熱時間を短縮して生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態における基材の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じる前の状態を示している。
【図3】板状体を予備成形するための予備成形型の断面図であり、予備成形型が閉じた後の状態を示している。
【図4】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じる前の状態でかつ予備成形体がセット中心に導入された状態を示している。
【図5】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じる前の状態でかつ予備成形体が成形中心側に配置された状態を示している。
【図6】予備成形体を本成形するための本成形型の断面図であり、本成形型が閉じた後の状態を示している。
【図7】板状体がハンガーによって吊り下げられた状態を斜め前方から見た斜視図である。
【図8】板状体がハンガーによって吊り下げられた状態を側方から見た側面図である。
【図9】基材製造装置の全体斜視図である。
【図10】基材製造装置の略後半部を示した平面図である。
【図11】基材製造装置の略前半部を示した平面図である。
【図12】予備加熱装置の正面図である。
【図13】予備加熱装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13の図面を参照しながら説明する。
図1は、基材Kの製造方法を示すフローチャートである。図1に示すように、基材Kを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料からなる板状体Wを加熱した後に(予備加熱工程)、加熱した板状体Wをさらに加熱し(本加熱工程)、加熱した板状体Wを予備成形体W1に予備成形し(予備成形工程)、予備成形体W1を基材Kに本成形する(本成形工程)。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる。
【0016】
板状体Wに含まれる植物性繊維とは、植物由来の繊維材料のことである。このような繊維材料は、例えば、綿、麻、サイザル、ジュート、ケナフなどから採取することが可能である。この中では、特にケナフが好ましい。ケナフは、成長が早くしかもCO2を多く吸収することから、地球環境保全にとって有効だからである。また、ケナフの靭皮からは比較的長くて丈夫な繊維を採取することが可能だからである。
【0017】
板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができる。この中では、特にポリプロピレンが好ましい。
【0018】
板状体Wを製造するためには、植物性繊維と熱可塑性樹脂を混合した材料を混綿させることでマット状とした後に、得られたマット体を熱圧プレスによって板状に成形する。これにより、所定の厚みを有する板状体Wを製造することができる。このような板状体Wの製造方法は、例えば、特開2001−179716号公報、特開2002−371455号公報等に開示されている。なお、板状体Wは、「熱成形用繊維板」、「プレボード」などの別の名称で呼ばれる場合がある。
【0019】
板状体Wを加熱することによって、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。例えば、板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂がポリプロピレンである場合には、ポリプロピレンの融点は160℃〜170℃であるため、板状体Wをこれ以上の温度(例えば200℃)に加熱することで当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂を溶融させることができる。
【0020】
図2、図3は、板状体Wを予備成形するための予備成形型10の断面図である。図2に示すように、予備成形型10は、一対の金型12、14を有している。このうち一方の金型12は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型14は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型12、14は、型面同士が互いに対向するようにして左右に配置されている。そして、金型12、14の型面間に板状体Wが上下方向に吊り下げられた状態で配置される。図3に示すように、予備成形型10を構成するこれら一対の金型12、14は、例えば金型12を金型14側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。これにより、板状体Wは、予備成形体W1に成形される。
【0021】
図4、図5、図6は、板状体Wを本成形するための本成形型20の断面図である。図4に示すように、本成形型20は、一対の金型22、24を有している。このうち一方の金型22は、中央部分が凹んだ形状を有しており、他方の金型24は、中央部分が突出した形状を有している。一対の金型22、24は、型面22a、24a同士が互いに対向するようにして左右に配置されている。図4において両型面22a、24aの中心に配置された予備成形体W1の位置を以下「セット中心」という。
【0022】
図5に示すように、予備成形体W1は、両金型22、24によって行われるプレス加工に先立って、予め他方の金型24の型面24a側(成形中心側)に配置される。次に図6に示すように、本成形型20を構成するこれら一対の金型22、24は、例えば金型22を金型24側に移動させ型閉じすることで上下方向に吊り下げられた状態の板状体Wを表裏両面からプレスすることが可能となっている。
【0023】
予備成形体W1を本成形するための本成形型20は、冷間プレス用の成形型が用いられる。ここでいう「冷間プレス」とは、本成形型20の型面を積極的に加熱しないで行うプレス成形のことを意味するが、加工熱や摩擦熱などによって本成形型20の型面22a、24aがある程度加熱される場合も含まれる。加熱した板状体Wを本成形型20(冷間プレス型)でプレスすることによって、板状体Wに含まれている熱可塑性樹脂が冷却されて固化する。これにより、所定形状に成形された基材Kを得ることができる(図6参照)。図6において両型面22a、24aの中心に配置された基材Kの位置を以下「成形中心」という。
【0024】
このようにして得られた基材Kは、軽量でかつ強度が高いことから、車両用内装材の基材として用いることができる。例えば、基材Kは、ドアトリム、インストルメントパネル、シートバックボード、パーティションボード、コンソールボックス、ピラーガーニッシュ、クォータトリムなどに用いることができる。
【0025】
図2と図4を比較すればわかるように、予備成形型10を構成する一対の金型12、14のクリアランスCL1は、本成形型20を構成する一対の金型22、24のクリアランスCL2よりも大きく設定されている。例えば、CL2が5mmである場合には、クリアランスCL1がそれよりも大きい10mmに設定されている。したがって、板状体Wを一回で基材Kに成形するのではなく、まず、板状体Wを予備成形体W1に成形し、次に、この予備成形体W1を基材Kに成形することにより、段階的に(2段階で)成形することが可能となっている。
【0026】
さらに、本成形工程でセット中心に導入された予備成形体W1を成形中心側に移動させて本成形することにより、両金型22、24を型閉じする途中で予備成形体W1がロックされることを回避し、プレス加工後に基材Kの中央部分が引き延ばされて薄肉となることを規制できる。
【0027】
図7は、板状体Wを吊り下げた状態で保持するためのハンガー30の斜視図である。図8は、ハンガー30の側面図である。
【0028】
図7に示すように、ハンガー30は、鉄やアルミニウムなどの金属製のパイプ状部材からなるシャフト32を備えている。シャフト32の長さは、板状体Wの横幅よりも大きく形成されている。シャフト32の下部には、板状体Wの上縁部を挟むための2つのクランプ34が取り付けられている。シャフト32の上部には、後述するスライドレール62に載置される2つのローラー36が取り付けられている。2つのローラー36は、側面視において略L字形に形成された取付部材38を介してシャフト32の上部に取り付けられている。クランプ34および取付部材38は、図8に示すようにシャフト32を上下方向に貫通するボルト32Aによって連結されている。
【0029】
図8に示すように、クランプ34は、鉄やアルミニウムなどの金属製の板状部材からなる一対の挟持部材を有している。両挟持部材は、ヒンジ35を支点としてその下端部を開閉させることで板状体Wの上縁部を挟むことができるように構成されている。すなわち、両挟持部材の一方は、同他方に対して板状体Wの上縁部を保持する閉じ位置と板状体Wの上縁部を解除する開き位置との間を開閉可能とされている。両挟持部材の上端部間には、ばね部材37が取り付けられており、このばね部材37によって両挟持部材の下端部がヒンジ35を支点として閉じる方向に付勢されている。両挟持部材の下端部の内面側には、板状体Wが下方に落ちることを規制するための滑り止め用の溝部が形成されている。
【0030】
図9は、基材Kを成形するための基材製造装置の全体斜視図であり、図10および図11は、基材製造装置の平面図である。図9ないし図11に示すように、基材製造装置は、板状体Wを加熱する加熱装置を備えている。この加熱装置は、予備加熱装置50と本加熱装置40とから構成されている。予備加熱装置50と本加熱装置40は、基材製造装置の入口側からこの順に配置されており、本加熱装置40は、予備加熱装置50と平面視略垂直かつ略水平に配置されている。すなわち、予備加熱装置50と本加熱装置40は、平面視略L字状に直交する配置で連結されている。板状体Wは、予備加熱装置50で約170℃に加熱され、加熱状態のまま本加熱装置40に投入される。なお、予備加熱装置50の詳細な構成については後述する。
【0031】
本加熱装置40は、板状体Wをその内部に通過させることで均一に加熱することのできる熱風循環式の加熱炉42と、その加熱炉42の内部において板状体Wを搬送することのできる搬送装置44とを備えている。加熱炉42の内部温度は例えば200℃(本発明の「所定の温度」の一例)に設定されており、予め170℃付近に加熱された板状体Wを200℃に加熱し保持することにより、当該板状体Wに含まれる熱可塑性樹脂の溶融状態を維持させることが可能となっている。
【0032】
搬送装置44は、並列に配置された2台のチェーンコンベヤ46a、46bによって構成されており、この2台のチェーンコンベヤ46a、46bは同期して駆動されている。この2台のチェーンコンベヤ46a、46bの上面には、前述したハンガー30を構成するシャフト32の両端部が載置される。これにより、搬送装置44は、ハンガー30によって吊り下げられた状態で保持される板状体Wを加熱炉42の内部で搬送することができるようになっている。なお、搬送装置44におけるハンガー30の搬送方向を「前方」と表記することとする。
【0033】
加熱炉42の内部には、板状体Wを予備成形するための予備成形型10が設置されている。搬送装置44と予備成形型10は、加熱炉42の内部においてオフセット位置に設置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、搬送装置44の中心軸P1と、予備成形型10の中心軸P2が水平方向に離れた位置という意味である。
【0034】
予備成形型10の下方には、本成形型20が設置されている。予備成形型10と本成形型20は、オフセット位置に配置されている。ここでいう「オフセット位置」とは、「互いの中心軸が離れた位置」という意味であり、具体的には、予備成形型10の中心軸P2と、本成形型20の中心軸P3が上下方向に離れた位置という意味である。
【0035】
なお、加熱炉42の略後半部は、平面視において略L字形(図10参照)に形成されており、オフセット位置に配置された搬送装置44と予備成形型10をともに収容できるようになっている。本成形型20は、予備成形型10の下方であって、かつ、加熱炉42の外部に設置されている。
【0036】
図10に示すように、基材製造装置は、搬送装置44からスライドレール62にハンガー30を受け渡すためのハンガー受け渡し機構80を備えている。ハンガー受け渡し機構80は、2つのアーム81を備えており、この2つのアーム81によってハンガー30を構成するシャフト32の両端部を下方から持ち上げることが可能となっている。
【0037】
さらに、基材製造装置は、板状体Wを搬送装置44から予備成形型10へ移送するための板状体移送機構60を備えている。板状体移送機構60は、搬送装置44の前方に搬送装置44と平面視略垂直かつ略水平に配置されたスライドレール62と、そのスライドレール62に載置されたハンガー30を水平方向に移動させることのできる水平方向移動機構64によって構成されている。
【0038】
水平方向移動機構64は、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることが可能である。したがって、スライドレール62及び水平方向移動機構64によって構成される板状体移送機構60は、スライドレール62に載置されているハンガー30を水平方向に移動させることによって、ハンガー30によって保持されている板状体Wを搬送装置44から予備成形型10へ移送することが可能となっている。
【0039】
水平方向移動機構64によって予備成形型10に搬送されたハンガー30は、ハンガー移送機構66に受け取られる。ハンガー移送機構66は、図9に示すように、一対のアーム67を有し、シャフト32の両端部を両アーム67に支持した状態で、板状体Wないし予備成形体W1を移送可能である。予備成形体W1は、ハンガー移送機構66によって予備成形型10から本成形型20へ移送される。
【0040】
次に、予備加熱装置50の構成について図11ないし図13の図面を参照しながら説明する。図11は、予備加熱装置50を上方から見た平面図である。図12は、予備加熱装置50を正面から見た正面図である。図13は、予備加熱装置50を斜め上方から見た斜視図である。
【0041】
図11に示すように、予備加熱装置50は、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bとから構成されている。各加熱炉50A,50Bには、過熱水蒸気Sを噴出する複数の噴出部51が設けられている。これらの噴出部51は噴出部配管52に配設されており、この噴出部配管52は、板状体Wの表裏両側に対向配置されている。このため板状体Wは、対向配置された両噴出部配管52の間を通過し、板状体Wを表裏両側からムラなく加熱することができ、かつ、加熱時間を短縮することができる。噴出部配管52はいずれも、図12に示すように、中継配管53を介して過熱装置(本発明の「熱媒体生成装置」の一例)54と接続されている。この過熱装置54は、ボイラー(図示せず)から送られてきた水蒸気を過熱して過熱水蒸気Sを生成する装置である。
【0042】
第1加熱炉50A(図12の図示右側の加熱炉)は、予備加熱装置50の略前半部を構成し、第2加熱炉50B(図12の図示左側の加熱炉)は、予備加熱装置50の略後半部を構成している。両加熱炉50A,50Bは、これらの中間を通る基準面SPに関して対称に配置されている。すなわち、噴出部51、噴出部配管52、中継配管53、および過熱装置54は、いずれも基準面SPを中心として左右対称に配置されている。以下、噴出部51、噴出部配管52、中継配管53の構成については、両加熱炉50A,50Bで同じであるため、第1加熱炉50Aを代表として説明する。
【0043】
中継配管53は、過熱装置54から噴出部配管52に向かう途中で、第1分岐点53Aで第1支管55Aと第2支管55Bとに分岐している。さらに、第1支管55Aは、第2分岐点53Bで二手に分岐して噴出部配管52の一側(図12の図示右側)に接続されている。このため、過熱装置54で生成された過熱水蒸気Sのうち、第1分岐点53Aで第1支管55A側に分岐して流通された過熱水蒸気Sは、さらに第2分岐点53Bで分岐した後に噴出部配管52の一側に送られる。一方、第2支管55Bは、噴出部配管52の他側(図12の図示左側)に配置された第3分岐点53Cに接続されている。第2支管55Bは、第3分岐点53Cで二手に分岐して噴出部配管52の他側に回り込んでいる。このため、過熱装置54で生成された過熱水蒸気Sのうち、第1分岐点53Aで第2支管55B側に分岐して流通された過熱水蒸気Sは、さらに第3分岐点53Cで分岐した後に噴出部配管52の他側に送られる。
【0044】
また、第1支管55Aは、第1分岐点53Aから上方に延びる形態とされているのに対して、第2支管55Bは、第1分岐点53Aから水平方向に延びた後に上方に延びる形態とされている。つまり、第2支管55Bは、水平方向に延びる長さ分だけ第1支管55Aよりも長くなっている。この構成では第2支管55Bの水平部分を通る間に過熱水蒸気Sの温度が低下し、第1支管55Aを通る過熱水蒸気Sと第2支管55Bを通る過熱水蒸気Sとの間で温度差が発生してしまう。そこで、本実施形態では第1支管55Aおよび第2支管55Bの内部にヒータ(図示せず)が埋め込まれており、温度差をなくすようにしている。
【0045】
噴出部配管52は、第1支管55Aに接続された一対の一側配管52Aと、第2支管55Bに接続された一対の他側配管52Bとから構成されている。一側配管52Aは、第1支管55Aに接続された基端側から先端側に向けて水平方向に延びる形態とされている。このため、第1支管55Aからの過熱水蒸気Sは、一側配管52Aの基端側から先端側へ送られる。一方、他側配管52Bは、第2支管55Bに接続された基端側から先端側に向けて水平方向に延びる形態とされている。このため、第2支管55Bからの過熱水蒸気Sは、他側配管52Bの基端側から先端側へ送られる。さらに、一側配管52Aと他側配管52Bは、上下方向(板状体Wの搬送方向と交差する方向)に並んで配置され、かつ、交互に配置されている。また、一側配管52Aと他側配管52Bは、上下方向に等間隔で配置されている。換言すると、一側配管52Aと他側配管52Bは、それぞれ櫛刃状に形成され、各櫛刃が対向して一方の櫛刃が他方の2つの櫛刃の間の凹みに嵌り合うように配置されている。
【0046】
噴出部51は、各配管52A,52Bにおいて水平方向に等間隔で配置されている。さらに各配管52A,52Bの噴出部51は、上下方向に並んで配置されている。ところで、噴出部51から噴出される過熱水蒸気Sは、基端側ほど高温となり、先端側ほど低温となりやすい。このため、各配管52A,52Bには、高温部と低温部が混在することになる。これでは、各配管52A,52Bの基端側では板状体Wに与える熱量が大きくなり、各配管52A,52Bの先端側では板状体Wに与える熱量が小さくなる。したがって、加熱ムラが発生し、バインダである熱可塑性樹脂の軟化状態がばらつくなどして、基材Kが不良品となる場合がある。
【0047】
その点、本実施形態では一側配管52Aの延出方向が他側配管52Bの延出方向と反対になっているため、一側配管52Aの高温部(基端側)と他側配管52Bの低温部(先端側)が上下方向に隣り合って互い違いに並ぶとともに、一側配管52Aの低温部(先端側)と他側配管52Bの高温部(基端側)が上下方向に隣り合って互い違いに並ぶことになる。このため、高温部から噴出された高温の過熱水蒸気Sと低温部から噴出された低温の過熱水蒸気Sとが混ざり合うことで、高温部と低温部のほぼ中間となる中温の過熱水蒸気Sが生成される。この中温の過熱水蒸気Sが設定温度となるように制御すれば、板状体Wに対して狙いとする熱量を与えることができる。したがって、噴出部配管52全体として、板状体Wに与える熱量を均一化することができ、熱可塑性樹脂の軟化状態も安定し、基材Kが不良品となることもない。
【0048】
さらに、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bは、基準面SPに関して対称に配置されており、板状体Wは、各加熱炉50A,50Bに一枚ずつ搬入され、各加熱炉50A,50Bで所定時間だけ留まって加熱されるようになっている。このことは、第1加熱炉50Aにおいて各配管52A,52Bの高温部で加熱される部位は、第2加熱炉50Bにおいて各配管52A,52Bの低温部で加熱されることを意味し、第1加熱炉50Aにおいて各配管52A,52Bの低温部で加熱される部位は、第2加熱炉50Bにおいて各配管52A,52Bの高温部で加熱されることを意味する。したがって、両加熱炉50A,50B間における加熱ムラもなくなり、予備加熱装置50全体として、板状体Wに与える熱量を均一化することができる。
【0049】
また、過熱水蒸気Sは、噴出部51から板状体Wに対して直接吹き付けられる。このように、過熱水蒸気Sを熱媒体として板状体Wを直接加熱することができるため、板状体Wを効率良く加熱することができる。したがって、本加熱装置40による加熱時間を短縮することができ、生産性を向上させることができる。この結果、本加熱装置40における板状体Wの仕掛かり枚数を少なくできるため、例えば設備停止が発生した場合に本加熱装置40で不良になる板状体Wの枚数を減らすことができる。
【0050】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。板状体Wは、ハンガー30に取り付けられ、予備加熱装置50に投入される。まず、板状体Wは、第1加熱炉50Aで所定時間だけ留まって加熱され、次に、第2加熱炉50Bへ移動し、第2加熱炉50Bで所定時間だけ留まって加熱される。この間、板状体Wは、噴出部51から噴出された過熱水蒸気Sによって約170℃まで急激に加熱される(予備加熱工程)。加熱された板状体Wは、加熱状態のまま第2加熱炉50Bから本加熱装置40へ搬入される。板状体Wは、搬送装置44によって搬送されながら加熱炉42の内部で加熱される(本加熱工程)。
【0051】
加熱された板状体Wは、板状体移送機構60によって搬送装置44から予備成形型10へ移送され、ハンガー30がハンガー移送機構66に受け取られる。予備成形型10に移送された板状体Wは、加熱炉42の内部で予備成形型10によって表裏両面からプレスされ、予備成形体W1に成形される(予備成形工程)。この後、予備成形体W1は、ハンガー移送機構66によって予備成形型10から本成形型20へ移送される。予備成形体W1は、本成形型20によって表裏両面からプレスされ、基材Kに成形される。プレスが完了した後は、本成形型20を型開きし、基材Kを脱型することにより、基材Kを得ることができる(本成形工程)。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、予備加熱装置50によって板状体Wを予備加熱するようにしたから、本加熱装置40における加熱時間を短くすることができる。したがって、生産性を向上させることができるとともに、本加熱装置40における板状体Wの仕掛かり枚数を減らすことができる。また、一側配管52Aの延出方向と他側配管52Bの延出方向を反対にし、一側配管52Aの低温部と他側配管52Bの高温部とが上下方向に隣り合って互い違いに並んで配置されるようにしたから、噴出部配管52全体として板状体Wに与える熱量を均一にすることができる。よって、基材Kの熱可塑性樹脂の軟化状態にばらつきが発生することはなく、基材Kの不良をなくすことができる。
【0053】
また、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bを基準面SPに関して対称に配置し、加熱炉50A,50B毎に所定時間だけ留まって板状体Wを加熱するようにしたから、予備加熱装置50全体として板状体Wに与える熱量を均一にすることができる。また、各加熱炉50A,50Bにおいて対向配置された両噴出部配管52の間を板状体Wが通過するようにしたから、板状体Wを表裏両側から加熱することができ、短時間でムラなく加熱できる。また、熱媒体としての過熱水蒸気Sを板状体Wに直接吹き付けるようにしたから、板状体Wを効率良く加熱することができ、板状体Wを約170℃まで急激に加熱することができる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では熱媒体として過熱水蒸気Sを例示しているものの、本発明によると、水蒸気や空気を熱媒体をしてもよい。
【0055】
(2)上記実施形態では板状体Wをハンガー30で吊り下げながら搬送しているものの、本発明によると、板状体Wを水平姿勢で搬送ローラ上に載置し、搬送してもよい。
【0056】
(3)上記実施形態では予備成形工程と本成形工程とによって板状体Wを基材Kに成形しているものの、本発明によると、板状体Wを一度で基材Kに成形してもよい。
【0057】
(4)上記実施形態では各配管52A,52Bが水平方向に延びる形態としているものの、本発明によると、各配管52A,52Bが斜め方向(水平方向と鉛直方向の双方に対して斜めをなす方向)に延びる形態としてもよい。要するに、各配管52A,52Bが隣り合って互い違いに並んで配置されているものであればよく、各配管52A,52Bの並び方向は問わない。
【0058】
(5)上記実施形態では一対の加熱炉50A,50Bを備える予備加熱装置50としているものの、本発明によると、1つまたは3つ以上の加熱炉を備える予備加熱装置としてもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では板状体Wを各加熱炉50A,50Bで所定時間だけ留めて加熱しているものの、本発明によると、板状体Wを搬送しながら各加熱炉50A,50Bで加熱してもよい。
【0060】
(7)上記実施形態では第1支管55Aが第2支管55Bよりも短くなるように第1分岐点53Aを配置しているものの、本発明によると、第1支管55Aと第2支管55Bが同じ長さとなるように第1分岐点を配置してもよい。
【0061】
(8)上記実施形態では対向配置された両噴出部配管52によって板状体Wを表裏両側から加熱しているものの、本発明によると、板状体Wの一方側のみを加熱してもよい。例えば、第1加熱炉50Aで板状体Wの表面側のみを加熱し、第2加熱炉50Bで板状体Wの裏面側のみを加熱してもよい。
【0062】
(9)上記実施形態では予備加熱工程と本加熱工程に分けて板状体Wを加熱しているものの、本発明によると、一つの加熱工程において熱媒体(過熱水蒸気S)と熱風の双方を用いて板状体Wを加熱してもよい。
【符号の説明】
【0063】
10…予備成形型
20…本成形型
40…本加熱装置
50…予備加熱装置
51…噴出部
52…噴出部配管
52A…一側配管
52B…他側配管
54…過熱装置(熱媒体生成装置)
K…基材
S…過熱水蒸気
W…板状体
W1…予備成形体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置であって、
気体状の熱媒体を生成する熱媒体生成装置と、
前記熱媒体を前記板状体に噴出する複数の噴出部と、
前記複数の噴出部が配設されてなる噴出部配管とを備え、
前記噴出部配管は、前記熱媒体を一側から他側に送る複数の一側配管と、前記熱媒体を前記他側から前記一側に送る複数の他側配管とを備えて構成され、前記一側配管と前記他側配管が隣り合って互い違いに並んで配置されていることを特徴とする板状体加熱装置。
【請求項2】
一対の前記噴出部配管が対向配置されており、前記噴出部は、対向する側の前記噴出部配管に向けて前記熱媒体を噴出するようになっており、前記一対の噴出部配管の間を前記板状体が通過するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の板状体加熱装置。
【請求項3】
前記熱媒体によって加熱された前記板状体をさらに加熱し、その加熱された前記板状体を所定の温度に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の板状体加熱装置。
【請求項4】
前記熱媒体は、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の板状体加熱装置。
【請求項5】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を基材に成形する基材の製造方法であって、
熱媒体生成装置によって生成された熱媒体を前記板状体に噴出することにより、前記板状体を加熱する工程を含む加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記板状体を基材に成形する成形工程とを備えた基材の製造方法。
【請求項6】
前記熱媒体は、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項5に記載の基材の製造方法。
【請求項1】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を加熱する板状体加熱装置であって、
気体状の熱媒体を生成する熱媒体生成装置と、
前記熱媒体を前記板状体に噴出する複数の噴出部と、
前記複数の噴出部が配設されてなる噴出部配管とを備え、
前記噴出部配管は、前記熱媒体を一側から他側に送る複数の一側配管と、前記熱媒体を前記他側から前記一側に送る複数の他側配管とを備えて構成され、前記一側配管と前記他側配管が隣り合って互い違いに並んで配置されていることを特徴とする板状体加熱装置。
【請求項2】
一対の前記噴出部配管が対向配置されており、前記噴出部は、対向する側の前記噴出部配管に向けて前記熱媒体を噴出するようになっており、前記一対の噴出部配管の間を前記板状体が通過するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の板状体加熱装置。
【請求項3】
前記熱媒体によって加熱された前記板状体をさらに加熱し、その加熱された前記板状体を所定の温度に保持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の板状体加熱装置。
【請求項4】
前記熱媒体は、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の板状体加熱装置。
【請求項5】
植物性繊維と熱可塑性樹脂を含む材料からなる板状体を基材に成形する基材の製造方法であって、
熱媒体生成装置によって生成された熱媒体を前記板状体に噴出することにより、前記板状体を加熱する工程を含む加熱工程と、
前記加熱工程で加熱された前記板状体を基材に成形する成形工程とを備えた基材の製造方法。
【請求項6】
前記熱媒体は、過熱水蒸気であることを特徴とする請求項5に記載の基材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−20366(P2011−20366A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167705(P2009−167705)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(591275403)サーモ・エレクトロン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(591275403)サーモ・エレクトロン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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