説明

板状部材反転システム及びその反転移送方法

【課題】 高速で板状部材を反転させることができると共に上面を傷つけることなく板状部材を反転することができる板状部材反転システムを提供する。
【解決手段】 複数の板状部材を順次反転して移送する板状部材反転システムは、第2デルタロボット60と、反転装置61と、第2移送装置第2移送装置62とを備えている。第2デルタロボット60は、板状部材12を順次保持して反転装置61に移載するようになっている。反転装置61は、第2デルタロボット60により前記板状部材が水平姿勢で移載され、移載された前記板状部材12をその上面を開放した状態で吸着保持して板状部材12の上下面を反転させるようになっている。また、第2移送装置62は、反転装置61から反転された板状部材12を受取り、その板状部材12を反転された状態で且つ水平状態で移送するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムやガラス板等の板状部材を反転するための板状部材移送システム及びその反転移送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロセス処理において、フィルムやガラス板等の板状部材の両面にプロセス処理を施すことが求められることがある。この場合、板状部材の表面にプロセス処理を施した後に板状部材を反転させる反転装置が適用されている。この反転装置の一例として、例えば特許文献1に記載の移載ロボットがある。
【0003】
特許文献1に記載の反転装置は、板材保持枠体を有しており、板材保持枠体には、移送されてくる板材の片面側の縁部と反対面側の縁部とを支持する固定片と可動片が形成されている。反転装置は、この固定片と可動片とで板材の両面を夫々支持し、板状保持枠体を回動させることで板材を反転させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−1174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の反転装置では、単に板材を当接支持しているだけであるため板状保持枠体内で板材が動く。そのため、板状保持枠体による反転動作を高速で行うと、その時の遠心力で板材が板状保持枠体内で外側に押し付けられ、損傷することがある。また、反転装置では、板材の両面を保持して反転するため、プロセス処理が施された表面が損傷することがあり、プロセス処理設備に適用することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、高速で板状部材を反転させることができると共に、上面を傷つけることなく板状部材を反転することができる板状部材反転システム及びその反転移送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の反転システムは、複数の板状部材を順次反転して移送する板状部材反転システムにおいて、前記複数の板状部材を順次保持して移載する上流側移載動作を実行する上流側移載ロボットと、前記上流側移載ロボットにより保持された前記板状部材が水平姿勢で移載され、移載された前記板状部材をその上面を開放した状態で保持して前記板状部材の上下面を反転させる反転動作を実行する反転装置と、前記反転装置から反転された前記板状部材を受取り、その板状部材を反転された状態で且つ水平状態で移送する移送装置とを備えるものである。
【0008】
本発明に従えば、板状部材を保持することで、反転速度を向上させることができると共に移送装置に受渡す際の板状部材の渡し位置の精度を向上させることができる。また、上面が開放されているので、移載された板状部材の上面を傷つけることなく上下面を反転させて移送装置に渡すことができる。
【0009】
上記発明において、前記上流側移載ロボット、前記反転装置及び前記移送装置を間歇的に動作させるべく制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記反転装置の前記反転動作を停止させて前記上流側移載ロボットに前記上流側移載動作を実行させている間に前記移送装置に移送動作を実行させるよう構成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成に従えば、上流側移載動作と移送動作とを重ねることで反転装置の停止時間を短くすることができる。これにより板状部材を反転して移送する時間を短くすることができる。
【0011】
上記発明において、前記制御装置は、前記上流側移載ロボットに前記上流側移載動作を実行させた後、前記上流側移載ロボットに前記反転装置から退避させる退避動作を実行させると共に前記反転装置に前記反転動作を実行させるよう構成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成に従えば、反転装置の動作を制御することで反転動作と退避動作を同時に行うことができる。これにより、反転装置の停止時間を低減することができ、板状部材を反転して移送する時間を短くすることができる。
【0013】
上記発明において、前記反転装置は、載置された前記板状部材の下面を吸着して保持する吸着パッドと、前記吸着パッドを回動させて前記板状部材を反転させる反転軸とを備えていることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、吸着パッドにより吸着することによって板状部材を保持し、更に吸着パッドを回動させて板状部材を反転させるので、板状部材に不要な力を与えることなく保持して反転させることができる。これにより、様々な形状や材質の板状部材、例えば、厚みの薄いフィルムのような板状部材を反転する場合にも適用することができる。
【0015】
上記発明において、前記制御装置は、前記反転装置に前記反転動作を実行させると共に前記吸着パッドにより吸着動作を実行させるよう構成されていることが好ましい。
【0016】
上記構成に従えば、反転動作と吸着動作とを同時に開始してされるが、反転動作開始直後では板状部材が吸着パッド上に載置されているので、吸着動作開始直後のような小さい吸着力でも板状部材を吸着して保持することができる。それ故、反転動作と吸着動作とを同時に開始することが可能になり、反転装置の停止時間を低減することができる。これにより、板状部材を反転して移送する時間を短くすることができる。
【0017】
上記発明において、前記制御装置に動作を制御され、前記移送装置により移載終了位置まで移送された前記板状部材を保持して移載する下流側移載ロボットを備え、
前記制御装置は、前記移送装置の前記移送動作を停止して前記反転装置に前記反転動作を実行させている際に前記下流側移載ロボットを制御して前記移送装置に前記移送終了位置まで移送された前記板状部材を所定位置に移載する下流移載動作を実行させるよう構成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、反転動作を実行すべく移送装置が停止している際に下流移載動作が実行されるので、移送装置が停止している時間を有効活用することができる。これにより、移送装置の停止時間を短くすることができ、板状部材の移送時間を短くすることができる。
【0019】
上記発明において、前記移送装置は、移送する板状部材の下面を吸着する吸着機構を有し、
前記吸着機構は、前記反転装置から前記板状部材を受取った後に吸着を開始し、前記移送終了位置で吸着解除するよう構成されていることが好ましい。
【0020】
上記構成に従えば、移送時における移送装置上での板状部材のズレを防ぐことができ、所定の姿勢を保ちながら素早く動かすことができる。これにより、移送終了位置へより短時間で移送することができ、且つ板状部材の移送終了位置到着時の位置精度を向上させることができる。
【0021】
本発明の板状部材反転システムの反転移送方法は、前記複数の板状部材を順次保持して移載する上流側移載ロボットと、前記上流側移載ロボットにより保持された前記板状部材が水平姿勢で移載され、移載された前記板状部材をその上面を開放した状態で保持して前記板状部材の上下面を反転させる反転装置と、前記反転装置から反転された前記板状部材を受取り、その板状部材を反転された状態で且つ水平状態で移送する移送装置とを備えている板状部材反転システムの板状部材反転移送方法であって、前記複数の板状部材を前記第2移載ロボットにより順次保持して前記反転装置に移載する移載工程と、前記移載工程で移載された前記板状部材を前記反転装置により保持して反転させて前記移送装置に渡す反転工程と、前記反転工程で反転されて渡された前記板状部材を移送装置で移送する移送工程とを有する方法である。
【0022】
上記構成に従えば、板状部材を保持することで、反転速度を向上させることができると共に、移送装置に渡す際の板状部材の渡し位置の精度を向上させることができる。また、上面が開放されているので、移載された板状部材の上面を傷つけることなく上下面を反転させて移送装置に渡すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の反転システム及びその反転方法によれば、高速で板状部材を反転させることができると共に、上面を傷つけることなく板状部材を反転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の反転システムを備えるプロセス処理設備を示す平面図である。
【図2】図1に示す移送システムを拡大して示す拡大平面図である。
【図3】図2に示す移送システムを右側方から見た右側面図である。
【図4】図2に示す昇降装置を拡大して示す拡大平面図である。
【図5】図4に示す昇降装置を右側方から見た右側面図である。
【図6】図2に示す第1移送装置を拡大して示す拡大平面図であり、(a)は、板状部材を移送している状態を示し、(b)は、(a)から板状部材を取り除いた状態を示している。
【図7】図6(b)に示す第1移送装置を右側方から見た右側面図である。
【図8】図1に示す反転システムを拡大して示す拡大平面図である。
【図9】図8に示す反転システムを後方から見た背面図である。
【図10】図8に示す反転装置を拡大して示す拡大平面図である。
【図11】図10に示す反転装置を後方から見た背面図である。
【図12】図8に示す第2移送装置を拡大して示す拡大平面図である。
【図13】図12に示す第2移送装置を後方から見た背面図である。
【図14】処理設備で実行される設備処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】移送システムで実行される移送処理の手順を示すフローチャートである。
【図16】移送処理中における昇降装置、第1移送装置、及び第1デルタロボットのサイクルタイムを示すグラフである。
【図17】反転システムで実行される反転処理の手順を示すフローチャートである。
【図18A】反転処理における動作中の反転装置を図示した背面図である。
【図18B】反転処理における動作中の反転装置を図示した背面図である。
【図18C】反転処理における動作中の反転装置を図示した背面図である。
【図19】反転処理中における反転装置及び第2移送装置のサイクルタイムを示すグラフである。
【図20】収納システムで実行される収納処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では、前述する図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る板状部材移送システム1(以下、単に「移送システム1」ともいう)、板状部材反転システム2(以下、単に「反転システム2」ともいう)及び板状部材収納システム3(以下、単に「収納システム3」ともいう)を備えるプロセス処理設備4(以下、単に「処理設備4」ともいう)について説明する。以下の説明における上下、左右、及び前後等の方向の概念は、説明の便宜上使用するものであって、処理設備4に関して、それらの構成の配置及び向き等をその方向に限定することを示唆するものではない。また、以下に説明する処理設備4は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0026】
<プロセス処理設備>
処理設備4は、フィルム、ガラス基板、及び半導体ウエハ等の板状部材にプロセス処理を施すための設備である。処理設備4は、図1に示すように、移送システム1と、第1プロセス装置5と、反転システム2と、第2プロセス装置6と、収納システム3とを備えている。移送システム1は、収納カセット11A(図2等参照)に収納されている複数の板状部材12(図2等参照)を一枚ずつ移送して第1トレイ13(図2参照)上に移載するよう構成されている。第1プロセス装置5は、ベルトコンベア等の第1搬送機構14(図2参照)を備えており、移送システム1により板状部材12が移載された第1トレイ13を第1搬送機構14により搬送しながら第1トレイ13上の板状部材12の表面にプロセス処理を施すよう構成されている。
【0027】
反転システム2は、第1プロセス装置5で表面処理された板状部材12を第1トレイ13から取り出して一枚ずつ反転させて裏面を上方に向け、そして第2トレイ15(図8参照)へと移し替えるよう構成されている。第2プロセス装置6は、ベルトコンベア等の第2搬送機構16(図8参照)を備えており、反転システム2により板状部材12が移載された第2トレイ15を第2搬送機構16により搬送しながら第2トレイ15上の板状部材12の裏面にプロセス処理を施すよう構成されている。収納システム13は、第2プロセス装置6により裏面にプロセス処理が施された複数の板状部材12を一枚ずつ移送して収納カセット11B(図6参照)に収納するよう構成されている。
【0028】
このように構成された装置及びシステムを有する処理設備4は、収納カセット11Aに収納された複数の板状部材12をそこから一枚ずつ取り出して両面にプロセス処理を施し、処理済の板状部材12を再び収納カセット11Bに一枚ずつ収納することができる。以下では、移送システム1、反転システム2及び収納システム3の構成について詳述する。
【0029】
[移送システム]
移送システム1は、図2及び3に示すように搬送ロボット20を有している。搬送ロボット20は、6軸ロボットであり、そのハンドの先端部には、ハンド21が取付られている。このハンド21は、収納カセット11を保持可能に構成されている。搬送ロボット20は、保持した収納カセット11を移動させて送出側昇降装置22に装着するよう構成されている。収納カセット11は、大略直方体状の箱体であり、送出側昇降装置22に装着された状態で上下方向に延在するようになっている。
【0030】
更に具体的に説明すると、収納カセット11は、図4及び5に示すように互いに対向し、且つ上下方向に延在する一対の側壁11aを有している。一対の側壁11aには、その対向する面(即ち、内周面)に複数の支持部11gが設けられている。支持部11gは、他方の側壁11aに設けられている支持部11gと夫々対向するように位置している。これにより対向する2つの支持部11gは、板状部材12を水平な状態でその両端部を保持するようになっている。また、一対の側壁11aには、複数の支持部11gが上下方向に所定間隔をあけて夫々設けられており、これにより収納カセット11内で複数の板状部材12を水平姿勢にして上下方向に並べて収納することができるようになっている。
【0031】
また、一対の側壁11aの上端部及び下端部には、天井部11b及び底部11cが設けられている。底部11cは、大略U字状に形成されており、その中央部分に開口溝11dを有している。更に、一対の側壁11aの背面部、即ち収納カセット11の背面側には、そこを塞ぐように背面板11eが設けられている。他方、収納カセット11の前面側は開放されており、底部11cの開口溝11dは、前面側で開いている。このように構成される収納カセット11は、前述の通り送出側昇降装置22に装着されている。
【0032】
送出側昇降装置22は、装着された収納カセット11を上下方向に昇降させるようになっている。本実施形態において送出側昇降装置22は、1つしか設けられていないが、複数の送出側昇降装置22を並設してもよい。送出側昇降装置22は、図4及び5に示すように上下方向に延在しており、昇降用モータ23と、ボールねじ機構24と、昇降台25とを有している。昇降用モータ23は、いわゆるサーボモータであり、その角変位量を制御可能(つまり、位置制御可能)に構成されている。昇降用モータ23の出力軸には、駆動プーリー26が設けられており、この駆動プーリー26を回動させることで、そこに張架されたベルト27がボールねじ機構24を駆動させるようになっている。
【0033】
ボールねじ機構24は、受動プーリー28と、ボールねじ29と、スライド部30とを有している。受動プーリー28は、ベルト27が張架されており、駆動プーリー26を回動させることで回動するようになっている。この受動プーリー28は、回動可能に支持されているボールねじ29に取付けられており、ボールねじ29と共回りするようになっている。ボールねじ29には、スライド部30が取付けられており、ボールねじ29が回動することで昇降するようになっている。さらに、このスライド部30には、昇降台25が取付けられている。
【0034】
昇降台25は、前記スライド部30に取付けられ、二股状に分かれて前方へと延在している基体部25aと、基体部25aの基端部分(後端部分)に設けられ、上方に延在する背凭れ部25bとを有している。基体部25aは、その上面が大略平坦になっており、その上に収納カセット11の底部11cを載置して装着できるようになっている。この際、収納カセット11の背面板11eは、背凭れ部25bに沿うように配置されている。また背面板11eは、その両側面に左右方向に夫々延びるロック片(図示せず)を有している。このロック片は、背面板11eにおいて底部11c側に位置しており、背凭れ部25bに対向している。また、背凭れ部25bには、ロック機構31が設けられている。
【0035】
ロック機構31は、一対のロック部材32とローラー33とを有している。ロック部材32は、背凭れ部25bの左右両側に夫々設けられており、その中間部分が背凭れ部25bに揺動可能に取付けられている。ロック部材32は、ロック状態に位置するとき、その前端部がロック片に上方から覆いかぶせるような姿勢になっている。そのため、ロック部材32がロック状態に位置すると、昇降台25に載置された収納カセット11が上方に持ち上がらないようにロックされる。他方、ロック部材32は、ロック解除状態に位置するとき後端部が下がるようにして揺動し、前端部がロック片の上方から退くようになっている。これにより、昇降台25に載置された収納カセット11を脱着させることができるようになる。
【0036】
また、ロック部材32の後端部には、ローラー33が取付けられており、このローラー33に対向する位置にカム板34が設けられている。カム板34は、送出側昇降装置22の上側部分に位置しており、上下方向に延在する板状部材である。カム板34は、下側部分34aが後方側へと傾斜しており、この下側部分34aにローラー33が乗り上げることでロック部材32の後端部が下方に押下げられていく。そして、ローラー33がカム板34の上側部分34bに乗り上げると前端部が完全に持ち上げられて収納カセット11のロックが外れるようになっている。このように、送出側昇降装置22は、その上側部分まで昇降台25を移動させることで収納カセット11のロックを外すことができる。他方、その上側部分から昇降台25を下降させると、ロック部材32の後端部が持ち上がって収納カセット11がロックされるようになっている。そして、昇降台25の下方には、第1移送装置35が設けられている。
【0037】
送出側移送装置である第1移送装置35は、いわゆるベルトコンベアであり、板状部材12を吸着しながら前方へと移送するようになっている。第1移送装置35は、図6及び7に示すように前後方向に延在しており、基体36と、送出用モータ37と、プーリー38と、コンベア用ベルト39と、複数のローラー40とを備えている。基体36は、前後方向に延在しており、上下方向に立設されている基台41の上に設けられている。基体36は、4つの箱状部36a〜36dを有し、これらを前後方向に並設することによって構成されている。
【0038】
4つの箱状部36a〜36dのうちの1つである本体部36aは、基台41の上に設けられており、その後方に昇降装置側受渡部36bが連結されている。昇降装置側受渡部36bは、平面視で基体部25aの二股に分かれた先端側部分の間に位置するようになっている。また、昇降装置側受渡部36bは、平面視で昇降台25に装着された収納カセット11の一対の側壁11aの間であり、且つ底部11cの開口溝11d内に位置するようになっている。
【0039】
また、本体部36aは、その前方に延在部36cが連結されており、さらにその延在部36cの前方にロボット側受渡部36dが取付けられている。このロボット側受渡部36dは、シリンダ機構42を介して延在部36cに取付けられており、このシリンダ機構42によって、前後方向に位置を微調整できるようになっている。
【0040】
また、基台41には、送出用モータ37が設けられている。第2サーボモータである送出用モータ37は、いわゆるサーボモータであり、角変位量を制御可能(つまり、位置制御可能)に構成されている。送出用モータ37は、ベルト37aを介してプーリー38に接続されている。プーリー38には、コンベア用ベルト39が架けられている。コンベア用ベルト39は、無端状になっており、基体36の上面に沿わせて設けられ、基体36の上面の前端から後端まで延在している。コンベア用ベルト39は、送出用モータ37を駆動することで基体36上を摺動するようになっている。これにより、送出用モータ37を駆動するとコンベア用ベルト39上の板状部材12が基体36に沿って前方に移送されるようになっている。また、基体36の前後端部及び中間部分には、ローラー40が夫々設けられており、このローラー40によってコンベア用ベルト39に張力が与えられている。
【0041】
このように張力が与えられているコンベア用ベルト39の裏面は、基体36の上面と接触するようになっており、低摩擦材料によって構成されている。これにより、コンベア用ベルト39と基体36と摩擦が低減されている。他方、プーリー38は、コンベア用ベルト39が架けられている外周部に摩擦抵抗を大きくすべく歯が形成されており、コンベア用ベルト39との間のすべりを抑えている。これにより、送出用モータ37の駆動を確実にコンベア用ベルト39に伝えることができ、コンベア用ベルト39で移送する板状部材12の位置制御を精度を向上させている。
【0042】
また、コンベア用ベルト39の裏面の幅方向中央部分には、コンベア用ベルトの全周にわたって突起片が形成されている。また4つの箱状部36a〜36dには、コンベア用ベルト39の突起片に対応する位置(即ち、箱状部36a〜36dの中央部分)に溝が形成されており、この溝に突起片が嵌まり込んでいる。これにより、コンベア用ベルト39を大きくずれたり拠れたりすることなく基体36上を摺動させることができる。また、この溝は、突起片より幅広に形成されており、この溝によって箱状部36a〜36d内外が繋がっている。
【0043】
更に、箱状部36a〜36dには、吸入口43a〜43eが夫々設けられており、この吸入口43a〜43eには、図示しないポンプ等の吸引装置が接続されている。なお、本体部36aの中には、隔離壁44が設けられており、その中が前後2つの領域44a,44bに分けられている。そして、これら2つの領域に夫々吸入口43a,43bが接続されている。また、コンベア用ベルト39には、複数の吸気孔39aが形成されている。コンベア用ベルト39は、基体36と、図示しない吸引装置によって吸着機構45を構成しており、吸着機構45は、コンベア用ベルト39上にある板状部材12を吸着することができるようになっている。吸気孔39aは、コンベア用ベルト39の幅方向に2列に並べられて周方向全周にわたって形成されている。なお、移送時において、コンベア用ベルト39上にある板状部材12によって全ての吸気孔39aが隠れるように吸気孔39aを配置することが好ましい。
【0044】
また、各吸入口43a〜43eは、別々に吸引及び解除を切換えることができるようになっており、4つの箱状部36a〜36d内及び各領域44a,44bの圧力状態を別々に切換えることができるようになっている。コンベア用ベルト39は、基体36上において4つの箱状部36a〜36d及び2つの領域44a,44bに応じた領域(具体的には、5つの領域)に分けられ、その各領域毎に吸着及び解除を切換えることができるようになっている。これにより、第1移送装置35は、基体36のロボット側受渡部36d以外の部分の吸着を維持しつつ、ロボット側受渡部36dの吸着を解除することができる。このようにして吸着が解除されるロボット側受渡部36d上の第1移送終了位置には、第1デルタロボット50が設けられている。
【0045】
移載ロボットである第1デルタロボット50は、図2及び3に示すように枠体51の天井部分に設けられており、本体52と、3つのアーム機構53と、取付部54と、吸着ハンド55とを有している。本体52は、その上部が枠体51の天井部分に締結されており、その下部に周方向に等間隔をあけて3つのアーム機構53が取付けられている。この3つのアーム機構53は、同様の構成を有しており、以下では、1つのアーム機構53だけ説明してその他の説明を省略する。
【0046】
アーム機構53は、第1及び第2アーム部53a,53bを有している。第1アーム部53aは、本体52の下部に揺動可能に取付けられ、本体52から離れるように略水平方向に延在している。第1アーム部53aの先端部には、第2アーム部53bが揺動可能に取付られており、第2アーム部53bは、平行リンクによって構成されており、下方に延在している。そして、各アーム機構53の第2アーム部53bは、その下端部が1つの取付部54に連結されている。アーム機構53は、揺動可能に取付けられた関節部分を図示しない駆動モータ(サーボモータ)により動かすことで水平状態に保ったまま取付部54を上下方向、左右方向、及び前後方向に移動させることができるようになっている(例えば、図3の二点鎖線参照)。また、この取付部54には、吸着ハンド55が取付けられている。
【0047】
吸着ハンド55は、ベルヌーイ方式の吸着ハンドであり、その底面に板状部材12を吸着することできるようになっている。吸着ハンド55は、ハンド本体と図示しない4つのガイドとを有している。ハンド本体は、大略直方体状になっており、平面視でその外径寸法が板状部材より若干小さくなっている。ハンド本体は、上側部分を取付部54に取付けて底面にて板状部材12を吸着するようになっている。また、ハンド本体の四側面部に、ガイドが夫々設けられている。ガイドは、ハンド本体の底面より下方に突き出るように延在しており、ハンド本体に対して水平方向に進退可能になっている。ガイドは、それら全てをハンド本体の方へと寄せることで板状部材12を吸着ハンド55の中央付近に寄せて位置決めすることができる。
【0048】
このように構成される第1デルタロボット50の下方には、第1トレイ13が置かれており、第1移送装置35により移送された板状部材12を第1トレイ13に載置するようになっている。第1トレイ13は、板状部材12の形状に合わせて区画され、且つ整列されている複数の区域を有しており、各区域に板状部材12を一枚ずつ載置できるようになっている。この第1トレイ13は、第1搬送機構14に載せられており、第1搬送機構14は、この第1トレイ13を第1プロセス装置5の処理室(図示せず)を通して反転システム2へと搬送するようになっている。
【0049】
<反転システム>
反転システム2は、前後方向に延在する第1プロセス装置5に対して直交する方向、即ち左右方向に延在しており、図8及び9に示すように第2デルタロボット60と、反転装置61と、第2移送装置62と、第3デルタロボット63とを備えている。上流側移載ロボットである第2デルタロボット60は、移送システム1の第1デルタロボット50と同様の構成を有しており、その構成については、第1デルタロボット50の説明を参照し、構造等の説明については一部省略する。第2デルタロボット60は、その下端部にある吸着ハンド64によって板状部材12を吸着して保持するようになっている。第2デルタロボット60は、第1プロセス装置5の処理室から出た先に位置しており、第1搬送機構14上の第1トレイ13上の板状部材12を吸着保持するようになっている。また、第2デルタロボット60には、それに隣接するように反転装置61が設けられている。
【0050】
反転装置61は、第1移載領域65にて移載された板状部材12の上下面を反転させて第2移載領域66へと移動させるようになっている。この反転装置61は、基台67に設けられている。また、反転装置61は、第2デルタロボット60が設けられる枠体68内に位置しており、吸着保持した板状部材12を第2デルタロボット60から受取るようになっている。
【0051】
反転装置61は、図10及び11に示すように反転用モータ69と、反転軸70と、一対の反転台71,72と、複数の吸着パッド73とを備えている。反転用モータ69は、いわゆるサーボモータであり、基台67に取付けられている。反転用モータ69は、その出力軸として反転軸70を有しており、反転軸70を回動するようになっている。反転軸70は、前後方向に延在する軸部材であり、その先端部が軸受部材70aにより回動可能に支持されている。また、反転軸70の中間部分には、一対の反転台71,72が取付けられている。
【0052】
一対の反転台71,72は、反転軸70の外周部に固定されており、反転軸70の軸線に対して軸対称な位置に夫々配置されている。反転台71,72は、反転軸70から互いに反対方向に夫々延在している。つまり、一方の反転台71が反転軸70から第2デルタロボット60の方に延在し、他方の反転台72がその反対方向に延在している。また、反転台71,72は、反転軸70に取付けられた基端部より先端側が二股状に分かれて大略U字状になっており、その中央部分に空間71a,72aを夫々有している。また、反転台71,72の先端側部分には、複数の吸着パッド73(本実施形態では4つの吸着パッド)が取付けられている。
【0053】
吸着パッド73は、チューブ73aを介して吸引装置(図示せず)に接続されており、吸引装置を駆動することで吸着パッド73上の板状部材12の裏面を吸着保持するようになっている。吸着パッド73は、反転軸70を中心とする周方向において反転台72の同一方向に向けて取付けられている。つまり、吸着パッド73は、一方の反転台71において上面に取付けられており、他方の反転台72において下面に取付けられている。つまり、反転台71,72が受取姿勢になっているときには、吸着パッド73が常に上を向き、また、反転台71,72が受渡姿勢になっているときには、吸着パッド73が常に下を向くようになっている。
【0054】
ここで受取姿勢とは、反転台71が水平姿勢にあり、且つ第2デルタロボット60側に延在してる姿勢である(図10及び11の反転台71参照)。また、受渡姿勢とは、反転台72が水平姿勢にあり、且つ第2デルタロボット60と反転軸70を介して反対側に延在してる姿勢である(図10及び11の反転台72参照)。そして、受取姿勢にあるときの反転台71の上方が第1移載領域65であり、受渡姿勢にあるときの反転台72の下方が第2移載領域65である。そして、この第2移載領域66に第2移送装置62が位置している。
【0055】
第2移送装置62は、移送システム1の第1移送装置35と同様の構成を有しており、その構成については、第1移送装置35と異なる点について主に説明し、同一の構成については、第1移送装置35を参照して説明を省略する。第2移送装置62は、反転装置61によって反転された板状部材12を第2移載領域66にて受取り、その板状部材12を吸着保持しながら第3デルタロボット63へと移送するようになっている。
【0056】
第2移送装置62は、図11及び12に示すように基台67に設けられており、第2デルタロボット60と第3デルタロボット63との間に架け渡されるように左右方向に延在している。第2移送装置62は、その一端部(第2デルタロボット60側の端部)62aにて反転装置61から板状部材12を受け取るようになっている。なお、第2移送装置62の一端部62aは、平面視で反転装置61の反転台71,72の空間71a、72a内に収まるようになっている。これにより、反転装置61は、第2移送装置62に当たることなく一回転できるようになっている。また、第2移送装置62は、基体74を有しており、基体74には、それに沿って摺動するコンベア用ベルト75が設けられている。このコンベア用ベルト75を動かすことで、板状部材12を他端部(第3デルタロボット63側の端部)62bの第2移送終了位置まで搬送することができるようになっている。また、反転装置61は、基体74とコンベア用ベルト75及び図示しない吸引装置により吸着機構77を構成し、コンベア用ベルト75上にある板状部材12の下面を吸着するようになっている。また、第2移送終了位置には、第3デルタロボット63が位置している。
【0057】
下流側移載ロボットである第3デルタロボット63は、移送システム1の第1デルタロボット50と同様の構成を有しており、その構成については、第1デルタロボット50の説明を参照し、構造等の説明については一部省略する。第3デルタロボット63は、その下端部にある吸着ハンド76によって第2移送終了位置にある板状部材12を吸着して保持するようになっている。また、第3デルタロボット63の下方には、第2搬送機構16が位置しており、その上に第2トレイ15が載置されている。そして、
第3デルタロボット63は、吸着保持した板状部材12を第2搬送機構16上にある第2トレイ15に一枚ずつ載せるようになっている。第2トレイ15第2搬送機構16は、この第2トレイ15を第2プロセス装置6の処理室(図示せず)を通して収納システム3に搬送するようになっている。
【0058】
<収納システム>
収納システム3は、移送システム1と同じ構成を有しており、その構成については、移送システム1の説明を参照し、構造等の説明については一部省略する。収納システム3は、第2プロセス装置6によりプロセス処理された板状部材12を一枚ずつ上下方向に並べて収納カセット11に収納するようになっている。以下では、収納システム3の具体的な構成について、図2乃至7を参照しながら説明する。収納システム3は、搬送ロボット20を移送システム1と共有し、更に第4デルタロボット81と、第3移送装置82と、収納側昇降装置83とを備えている。
【0059】
移載ロボットである第4デルタロボット81は、第1デルタロボット50と同様の構成を有している。第4デルタロボット81は、第2搬送機構16の終点位置の上方に位置しており、その下端部に取付けられている吸着ハンド84により第2トレイ15上の板状部材12を吸着保持するようになっている。そして、第4デルタロボット81は、吸着保持した板状部材12を第3移送装置82に移載するようになっている。
【0060】
収納側移送装置である第3移送装置82は、第1移送装置35と同様の構成を有している。第3移送装置82は、図6及び7に示すように第4デルタロボット81側の端部である一端部(基体85のロボット側受渡部85a)にて第4デルタロボット81から板状部材12を受取るようになっている。また、第3移送装置82は、その基体85に設けられ、それに沿って摺動するコンベア用ベルト86により受取った板状部材12をコンベア用ベルト86により他端部(基体85の昇降装置側受渡部85b)にある移送完了位置まで移動させるようになっている。なお、第3移送装置82は、移送時においてコンベア用ベルト86側から板状部材12を吸着保持し、コンベア用ベルト86から板状部材12が落ちないようになっている。また、移送完了位置には、収納側昇降装置83が配置されている。
【0061】
収納側昇降装置83は、送出側昇降装置22と同様の構成を有している。収納側昇降装置83は、図4及び5に示すように昇降用モータ87とボールねじ88とにより昇降台89を昇降できるようになっている。昇降台89は、その基体部89aの先端側部分が二股状に分かており、その先端側部分の間に昇降装置側受渡部85bが位置するように配置されている。また、基体部89aは、その上に収納カセット11を載置して装着できるようになっており、装着された収納カセット11は、平面視でその開口溝11dに昇降装置側受渡部85bが位置するようになっている。
【0062】
この収納カセット11は、昇降台89を上昇させてロックを外すことで、搬送ロボット20により昇降台89から着脱できるようになっている。搬送ロボット20は、昇降台89から取外した収納カセット11を搬出台90に搬送するようになっている。また、搬送ロボット20は、移送システム1にて全ての板状部材12が搬出された収納カセット11を移送システム1の送出側昇降装置22から取外して待機台91へと移すようになっている。待機台91へ移された収納カセット11は、搬送ロボット20によりからの昇降台89に載置するようになっている。なお、以下では、未処理の板状部材12が収納されている収納カセット11を収納カセット11Aといい、未処理の板状部材12が収納されていない収納カセット11及び処理済の板状部材12が収納されている収納カセット11を収納カセット11Bと称する場合がある。
【0063】
このように構成される処理設備4は、図1に示すように制御装置92を備えている。制御装置92は、各システム1,2,3に備わる各装置の動作を制御するようになっており、各装置の動作を制御することで板状部材12の表面及び裏面にプロセス処理を施すようになっている。以下では、制御装置92によって制御される各装置の動作について、図14乃至図20を参照しながら説明する。
【0064】
[処理設備の動作]
処理設備4では、移送システム1、第1プロセス装置5、反転システム2、第2プロセス装置6、及び収納システム3が同時に稼動しており、複数の板状部材12が順次送られて連続的に処理されている。以下では、板状部材12の処理過程の流れに沿って処理設備4における各システム1,2,3及び装置5,6の動作について、図14のフローチャートを参照しながら説明する。なお、処理設備4では、以下の全ての動作が制御装置92によって制御されており、複数の収納カセット11Aが載置された搬入台93が搬入されるとプロセス処理が始まる。プロセス処理が始まると、ステップS1に移行する。
【0065】
<移送処理>
移送処理であるステップS1では、制御装置92が移送システム1の各装置を制御して、収納カセット11Aに収納された複数の板状部材12を一枚ずつ取り出して第1トレイ13に整列して載せる。以下、移送処理について図15及び16を参照しながら更に詳しく説明する。
【0066】
移送処理が開始されると、まずステップS11に移行する。装着工程であるステップS11では、制御装置92が搬送ロボット20を動かし、搬入台93に載置されている何れかの収納カセット11Aをハンド21に保持させる。その後、制御装置92は、搬送ロボット20により保持した収納カセット11Aをロックが解除され且つ空になっている昇降台25まで移動させてそこに載せる。このようにして、収納カセット11Aが昇降台25に装着される。その後、制御装置92は、ハンド21の保持を解除させる。ハンド21の保持が解除されると、ステップS12に移行する。
【0067】
下降工程であるステップS12では、制御装置92が送出側昇降装置22を動かして収納カセット11Aが装着された昇降台25を下降させる。具体的には、制御装置92が昇降用モータ23を駆動させることにより、駆動プーリー26、ベルト27及び受動プーリー28を介してボールねじ機構24が所定方向に回動する。これにより、スライド部30が下降して昇降台25が下降する。昇降台25が下降すると、やがてロック機構31のローラー33がカム板34から外れ、ロック部材32が揺動してロック状態に位置する。これにより、収納カセット11Aが昇降台25にロックされる。
【0068】
昇降台25を更に下降させると、昇降台25の二股に分かれた先端側部分の間に昇降装置側受渡部36bが入り、やがて収納カセット11Aの開口溝11dにも昇降装置側受渡部36bが入る。これにより収納カセット11Aの最も下側に収納されている板状部材12が昇降装置側受渡部36b上、つまり第1移送装置35の載置位置に載置される。載置されると、ステップS13へ移行する。
【0069】
第1移送工程であるステップS13では、制御装置92が第1移送装置35を動かして載置位置に載置された板状部材12を第1デルタロボット50の方、つまり第1移送終了位置の方へと移送する。具体的には、制御装置92は、送出用モータ37を駆動することによりベルト37aを介してプーリー38を回動させ、コンベア用ベルト39を回す。載置位置にある板状部材12は、コンベア用ベルト39上に位置しており、コンベア用ベルト39を回すことで第1移送終了位置の方へ移送する。
【0070】
また、移送する際、制御装置92は、吸引装置を駆動しており、吸入口43a〜43eから箱状部36a〜36d内の空気を吸引している。これにより、吸気孔39aが負圧となり、この吸気孔39aにより板状部材12がコンベア用ベルト39に吸着される。吸着機構45は、板状部材12が載置位置に載置されると共に板状部材12を吸着し、板状部材12が第1移送終了位置まで移送されると吸着を解除するようになっている。このように吸着しながら移送することで、載置時の板状部材12の姿勢を保ちながら高速で移送することができる。これにより、移送速度を上げることが可能になり、載置位置から移送終了位置へとより短時間で移送することができ、且つ板状部材12の移載終了位置における到着位置の精度を向上させることができる。このように板状部材12を吸着した状態で第1移送終了位置の方へと所定時間動かして移送して載置位置が空くと、ステップS14へ移行する。なお、制御装置92は、ステップS14へ移行した後も送出用モータ37を駆動し、板状部材12を載置位置から所定距離(例えば、板状部材12の長さ分)移動すると送出用モータ37を停止する。つまり、ステップS14は、第1移送装置35の移送動作に一部ラップして(即ち、重ねて)実行される。
【0071】
載置工程であるステップS14では、制御装置92が送出側昇降装置22を動かし、支持部11gが上下に離されている所定間隔と同じ高さだけ昇降台25を下降させる。昇降台89を下降させることで、次の板状部材12が載置位置に載置され、そして板状部材12が支持部11gから離れる。その後、制御装置92は、送出側昇降装置22の動きを止めるのだが、動きを止める前にステップS13へと戻って第1移送装置35を動かし、再び第1移送終了位置の方へと板状部材12を所定距離移送する(図16参照)。
【0072】
このように、制御装置92は、下降動作が終了する前に第1移送装置35を動作させ、また第1移送装置35の移送動作が終了する前に送出側下降装置22を動作させている。送出側昇降装置22の動作と第1移送装置35の動作とを一部ラップさせることによって、第1移送装置35の駆動停止時間を短くすることができ、移送システム1の移送時間を短くすることができる。また、板状部材12を載置した後に第1移送装置35を動作させている、即ち載置時は第1移送装置35が停止している。それ故、第1移送装置35を動作させて板状部材12を載置する場合よりも制御が簡単であり、また板状部材12を確実に且つ損傷させることなく第1移送装置35に載置することができる。なお、必ずしも昇降装置の動作と第1移送装置35の動作とをラップさせる必要はなく、昇降装置の動作が停止した後に第1移送装置35を動作させるようにしてもよい。
【0073】
また、制御装置92は、送出側昇降装置22により収納カセット11を昇降させる際、停止状態から所定の第1速度まで加速した後、減速して停止させるように昇降用モータ23を制御し、その時の加速度及び減速度を制御する。また、制御装置92は、第1移送装置35により板状部材12を送り出す際、停止状態から所定の第2速度まで加速した後、減速して停止させるように送出用モータ37を制御し、且つその際の加速度及び減速度を制御する。これにより収納カセット11から第1移送装置35へタイミングを合わせながら板状部材12を載置させることができ、板状部材12の載置速度を向上し且つ載置位置の精度を向上することができる。
【0074】
制御装置92は、送出側昇降装置22の下降動作(ステップS14)と第1移送装置35の移送動作(ステップS13)とを交互に繰り返して行ない、下降動作と移送動作とを間歇的に実行する。これにより、収納カセット11Aから板状部材12が次々送り出されて第1移送終了位置の方へと移送される。そして、制御装置92は、ステップS14からステップS13に戻る前に、次のステップS13の移送動作により板状部材12が第1移送終了位置まで到達するか否かを確認する(ステップS15)。第1移送装置35により送り出した板状部材12が第1移送終了位置まで移送されるのを確認すると、ステップS14に同期してステップS16を開始する。
【0075】
第1移載工程であるステップS16では、制御装置92が第1デルタロボット50を駆動して第1移送終了位置にある板状部材12を吸着ハンド55によって吸着保持し、第1トレイ13の何れかの区域へと移載する。具体的に説明すると、制御装置92は、板状部材12が第1移送終了位置に移送されてくると、吸着ハンド55を第1移送終了位置上に移動させ、その後、4つのガイド(図示せず)より内側に板状部材12が入るように吸着ハンド55を下降させる。入れた後、ガイドを内側に寄せて位置決めし、その後、ハンド本体の底面に板状部材12を吸着させる。なお、第1移送装置35の第1移載終了位置での到着位置の精度が高いため、吸着ハンド55の吸着ミスを防いでいる。
【0076】
ステップS16における移載動作は、ステップS14の下降動作と同期して行なうため、ステップS13の移送動作が終了する前に開始される(図16参照)。他方、制御装置92は、第1デルタロボット50により第1移送装置35上の板状部材12を吸着保持するまでに板状部材12を第1移送装置35の動作を停止する。それ故、第1デルタロボット50は、停止している板状部材12を吸着保持するため、動いている板状部材12を吸着保持させる場合に比べて制御が簡単である。また、ラップさせることにより第1移送装置35の停止時間を短くすることができる。これにより、移送システム1の移送時間を短くすることができる。なお、必ずしも第1デルタロボット50の動作と第1移送装置35の動作とをラップさせる必要はなく、第1デルタロボット50の動作が停止した後に第1移送装置35を動作させるようにしてもよい。
【0077】
吸着ハンド55により吸着させた後、制御装置92は、板状部材12を入れたい第1トレイ13の区域の上に吸着ハンド55を移動させ、そこでハンド本体の吸着を解除して前記区域に板状部材12を載置する。なお、制御装置92は、吸着ハンド55により板状部材12を吸着させる際、予めロボット側受渡部36dの吸引を解除しており、第1移送終了位置に移送された板状部材12の吸着は解除されている。それ故、板状部材12を損傷させることなく吸着ハンド55により吸着保持することができる。
【0078】
ステップS13、S14及びS16の各動作は、第1トレイ13の全ての区域に板状部材12が移載されるまで繰り返し行われる(ステップS17参照)。つまり、第1トレイ13の全ての区域に板状部材12が移載されていない場合、ステップS16が終了し、それと共にステップS14が終了すると、再びステップS13に戻って移送動作が行われる。そして、ステップS13の移送動作の終了直前にステップS14の下降動作とステップS16の移載動作が同期して行なわれる。これにより、移載動作と載置動作とが実行されているときだけ第1移送装置35の移送動作を止め、それ以外のときは移送動作を続けることででき、移送装置の停止時間を更に短くすることができる。これにより、移送時間を短縮することができ、移送効率を向上させることができる。なお、ステップS16の移載動作では、制御装置92は第1トレイ13の各区域に所定の順番で板状部材12を一枚ずつ載せるようになっており、各区域に複数の板状部材12が載らないようになっている。
【0079】
このように下降動作と移送動作とを交互に繰り返すことで収納カセット11Aから次々と板状部材12が送り出されると、やがて収納カセット11A内の板状部材12が全てなくなる。そうすると、制御装置92は、昇降台25を上昇させて収納カセット11Bのロックを解除する。解除した後、制御装置92は、搬送ロボット20を動かしてハンド21により収納カセット11Aを把持させ、そしてロボット20に収納カセット11Bを昇降台25から取外させる。その後、制御装置92は、搬送ロボット20により取外した収納カセット11Bを待機台91に載置させ、ハンド21に収納カセット11Bの保持を解除させる。解除させると、ステップS11に移行し、空になった昇降台25に収納カセット11Aを再び装着する。
【0080】
なお、収納カセット11A内から全ての板状部材12が送り出されたか否かの判定は、例えば収納カセット11Aの最上段に収納されている板状部材12が載置位置に載置された時の昇降台25が位置している規定位置(具体的には、昇降用モータの駆動量)により判定される。また、センサを設けて最上段にて板状部材12が支持されているか否かを判定するようにしてもよい。
【0081】
また、ステップS13、S14及びS16の各動作を繰り返し行うことで、やがて第1トレイ13の全ての区域に板状部材12が移載される(ステップS17)。そうすると、その第1トレイ13に関して移送処理であるステップS1が一旦終了し、ステップS2へと移行する。
【0082】
このように移送システム1では、送出側昇降装置22による収納カセット11Aの下降動作と第1移送装置35による板状部材12の移送動作との2つの動作だけで、収納カセット11Aに収納されている複数の板状部材12を水平状態で第1移送終了位置の方に移送することができる。換言すると、収納カセット11Aに収納された複数の板状部材12を直接第1移送装置35に移載して第1移送終了位置の方に送り出すことができる。このように移載に要する動作を最小限に抑えることができるので、板状部材12を高速で順に送り出すことができる。
【0083】
また、移送システム1では、制御装置92が第1移送装置35により板状部材12を移動させて載置位置を空けてから次の板状部材を載置位置に載置するので、板状部材12が互いに重なることなく収納カセット11Aから順次送り出すことができる。また、昇降用モータ23及び移送用モータ37をサーボモータで構成することで、送出側昇降装置22及び第1移送装置35を板状部材12の位置制御が可能な送り出し装置として機能させることができる。これにより、移載ロボットの元へと移送する際の板状部材の移送位置及び到着時刻(タイミング)の精度が向上する。これにより移載ロボットによる移載を高速化できる。
【0084】
<第1プロセス処理>
第1プロセス処理であるステップS2では、板状部材12が移載されている第1トレイ13が第1搬送機構14により第1プロセス装置5の処理室へと搬送される。第1プロセス装置5の処理室を通ることにより板状部材12の表面には、プロセス処理が施される。プロセス処理が施された板状部材12は、第1搬送機構14により第2デルタロボット60の下へと搬送される。第2デルタロボット60の下へと搬送されると第1搬送機構14が停止し、ステップS3へと移行する。
【0085】
<反転処理>
反転処理であるステップS3では、制御装置92が反転システム1の各装置の動作を制御して、第1トレイ13に載せて搬送されてきた板状部材12の上下面を反転させ、更に第2トレイ15に整列して載せる。以下、反転処理について図17乃至図19を参照しながら詳しく説明する。
【0086】
反転処理が開始されると、まずステップS31に移行する。第2移載工程であるステップS31では、制御装置92が第2デルタロボット60を動かし、第2デルタロボット60の下の第1トレイ13上にある何れかの板状部材12を吸着ハンド64によって吸着保持する。そして、その吸着ハンド64を移動させて保持している板状部材12を第1移載領域65まで移動させる。これにより、板状部材12は、水平姿勢で、且つその表面が上側に向いている状態で反転台71の吸着パッド73上に移動する(図18A(a)参照)。その後、制御装置92は、吸着ハンド64による板状部材12の保持を解除して落とし、反転台71の吸着パッド73上に板状部材12を載置させる。保持が解除されて板状部材12が載置されると、ステップS32に移行する。
【0087】
退避工程であるステップS32では、制御装置92が第2デルタロボット60を動かし、吸着ハンド64を第1移載領域65から移動させて吸着ハンド64を反転台71の可動範囲(図18A(b)の2点鎖線内の領域95)から退避させる。退避した後、制御装置92は、次の板状部材12を移載すべく吸着ハンド64を所定の位置へと戻して停止させる。また、退避することで、ステップS33に移行する。
【0088】
反転工程であるステップS33では、制御装置92は、反転用モータ69を駆動して反転装置61の反転軸70を回動させる。回動させると、反転台71が第2移載領域66の方へと移動し、逆に反転台72が第1移載領域67に移動する(図18B(c)参照)。また、制御装置92は、反転用モータ69を駆動すると同時に吸着機構77を駆動して吸着パッド73により板状部材12の下面を吸着する。これにより、反転台71が移動する際に板状部材12が脱落することを防いでいる。また、吸着パッド73により板状部材12の下面(即ち、裏面)だけを吸着しているので、板状部材12の上面(即ち、プロセス処理が施された表面)に触れることなく反転させることができる。
【0089】
そして、制御装置92は、反転台71,72が共に受取姿勢及び受渡姿勢になったところで反転用モータ69の駆動を止めて反転装置61の動きを止める。そうすると、第2移載領域66側にある反転台71の吸着パッド73が下を向き、その吸着パッド73に吸着された板状部材12が第2移載領域66に位置するようになる(図18B(d)参照)。即ち、反転装置61によって、板状部材12をその上下面を反転させて第2移載領域66へ移動させることができる。また、第1移載領域66側にある反転台72の吸着パッド73が上を向き、吸着パッド73が第1移載領域65に位置する。
【0090】
制御装置92は、反転装置61の動きを止めた後、吸着パッド73による板状部材12の吸着を解除させ、板状部材12を第2移送装置62の一端部62a上に載置する。板状部材12を第2移送装置62の一端部62a上に載置すると、ステップS31に戻り、第1移載領域65側に移動した反転台72の吸着パッド73上に板状部材12を載置する。そして、制御装置92は、このステップS31に同期してステップS34を開始する
第2移送工程であるステップS34では、制御装置92が第2移送装置62を動かして第2移送装置62の一端部62a上に載置された板状部材12を第2移送終了位置の方へと移送する。移送を開始する際、制御装置92は、図19に示すように反転装置61の反転軸70の回動が完全に停止する前に第2移送装置62のコンベア用ベルト75を動かすようになっている。つまり、制御装置92は、第2移送装置62の起動に要する無駄時間を補償する、即ち載置後直ぐに板状部材12を移送できるように制御している。これにより、移送時間を短縮している。図19では、上側に反転軸70の速度に関するグラフが示され、下側がコンベア用ベルト75の速度に関するグラフが示されている。上側及び下側のグラフでは、縦軸に速度、横軸にサイクルタイムが示されている。なお、前述する反転動作と移送動作とは、必ずしも一部ラップさせる必要はない。
【0091】
また、移送する際、制御装置92は、吸引機構77を駆動して板状部材12をコンベア用ベルト75に吸着させている。吸着させた状態で板状部材12を第2移送終了位置の方へと移送する。そして、所定時間移送して第2移載領域66が空き、且つステップS32の退避動作が終了したところで、制御装置92は、ステップS33の反転動作を開始して空いた第2移載領域66まで板状部材12を移動させる。そして、制御装置92は、先程コンベア用ベルト75に載置された板状部材12が所定距離(板状部材の長さ分)移送されたところでコンベア用ベルト75の動きを止める。制御装置92は、更にコンベア用ベルト75の動きが止まった後、反転された板状部材12を第2移送装置62の一端部62a上に載置させる。
【0092】
このように反転装置の反転動作61と第2移送装置62の移送動作とを繰り返すことにより、第2デルタロボット60によって順次移載される板状部材12が反転装置61によって反転されて第2移送装置62に移載され、更に第2移送装置62により第2移送終了位置の方へと移送される。そして、板状部材62が第2移送終了位置まで移送される(ステップS35)と、ステップS36が開始される。
【0093】
第3移載工程であるステップS36では、制御装置92が第3デルタロボット63を駆動し、第2移送終了位置にある板状部材12を吸着ハンド76によって吸着保持し、第2トレイ13の何れかの区域へと移載する。この際、制御装置92は、吸着ハンド76により板状部材12を吸着させる前に第2移送終了位置に移送された板状部材12の吸着を解除している。
【0094】
なお、制御装置92は、このステップS36における第3デルタロボット63の移載動作とステップS33の反転装置61の反転動作とを同期させて実行している。この移載動作及び反転動作は、互いに同期している第2デルタロボット60による移載動作(ステップS31)と第2移送装置62による移送動作(ステップS34)と一部ラップしているが、基本的に第2デルタロボット60の移載動作及び第2移送装置62の移送動作が停止している時に第2デルタロボット60及び第2移送装置62に板状部材12を受け渡す。他方、第2デルタロボット60の移載動作及び第2移送装置62の移送動作もまた、ステップS32において反転動作が終了する前、及びステップS36において第3デルタロボット63の移載動作が終了する前であって、反転動作及び第3デルタロボット63の移載動作が開始してから所定時間後に、制御装置92は、ステップS31及びS34を開始するようになっている。即ち、ステップS31及びS34の動作開始は、ステップS32及びS36の動作終了前において一部ラップして実行されており、吸着ハンド64及びコンベア用ベルト75を加速している。これにより、第2デルタロボット60及び第2移送装置62の停止時間を短くすることができ、反転装置61の反転時間を短くすることができる。なお、ラップさせることなく、各ステップS31及びS34の動作が完全に終了した後、ステップS32及びS36を開始するようにしてもよい。
【0095】
また、ステップS36の移載動作は、第2トレイ15の全ての区域に板状部材12が移載されるまで繰り返し行なわれる(ステップS37)。繰り返し行なう場合、制御装置92は、前述の通り、ステップS34の移送動作が完了する直前にステップS36を開始する。そして、ステップS34の動作が完了してコンベア用ベルト75が停止した後に、第2移送終了位置に移送された次の板状部材12を第3デルタロボット63により吸着保持し、その後第2トレイ15に移載する。移載する際、制御装置92は、第2トレイ15の各区域に所定の順番で板状部材12を一枚ずつ載せるようになっており、各区域に複数の板状部材12が載らないようになっている。ステップS36の移載動作を繰り返し行い、第2トレイ15の全ての区域に板状部材12が移載されると、その第2トレイ15に関して反転処理であるステップS3が一旦終了し、ステップS4へと移行する。
【0096】
このように反転処理では、制御装置92は、第2デルタロボット60、反転装置61、第2移送装置62及び第3デルタロボット63を間歇的に動作させるようになっており、第3デルタロボット63が移載動作(下流側移載動作)し、反転装置61が反転動作している際、第2デルタロボット60による移載動作(ステップS31)と第2移送装置62による移送動作(ステップS34)を部分的に止めている。他方、第3デルタロボット63の移載動作(下流側移載動作)と反転装置61の反転動作が停止している際、制御装置92は、第2デルタロボット60による移載動作(上流側移載動作)及び第2移送装置62による移送動作を同期させて実行している。
【0097】
このように装置間での板状部材12の受渡しがない装置を同期させることで、反転システム2における各装置の停止時間を短くすることができ、板状部材12を反転して移送する時間を短くすることができる。また、反転装置61から第2移送装置62に板状部材12を受渡すべく第2移送装置62が止まっている時間に第3デルタロボット63が第2移送装置62から板状部材12を取り去るので、第2移送装置62の停止時間を有効活用することができ、反転システム2における移送時間を短くすることができる。
【0098】
また、反転システム2では、反転時に板状部材12を吸着パッド73で吸着保持することで、反転速度を向上させることができると共に第2移送装置62に渡す際の板状部材12の渡し位置の精度を向上させることができる。また、反転時に上面が開放されているので、移載された板状部材12の上面を傷つけることなく上下面を反転させて第2移送装置62に渡すことができる。また、吸着パッド73で吸着保持しているので、把持する場合に比べて板状部材12に不要な力を与えることなく反転させることができる。これにより、様々な形状や材質の板状部材、例えば、厚みの薄いフィルムのような板状部材を反転する場合にも適用することができる。
【0099】
また、反転システム2では、反転動作と吸着動作とを同時に開始してされるが、反転動作開始直後では板状部材12が吸着パッド73上に載置されているので、吸着動作開始直後のような小さい吸着力でも板状部材12を吸着して保持することができる。それ故、反転動作と吸着動作とを同時に開始することが可能になり、反転装置の停止時間を低減することができる。これにより、板状部材を反転して移送する時間を短くすることができる。
【0100】
<第2プロセス処理>
第2プロセス処理であるステップS4では、板状部材12が移載されている第2トレイ15が第2搬送機構16により第2プロセス装置6の処理室へと搬送される。第2プロセス装置6の処理室を通ることにより板状部材12の裏面には、プロセス処理が施される。プロセス処理が施された板状部材12は、第2搬送機構16により第4デルタロボット81の下へと搬送される。第4デルタロボット81の下へと搬送されると第2搬送機構16が停止し、ステップS5へと移行する。
【0101】
<収納処理>
収納処理であるステップS5では、制御装置92が収納システム3の各装置の動作を制御して、第2トレイ15に載せて搬送されてきた板状部材12を一枚ずつ収納カセット11Bに収納する。以下、収納処理について、図20を参照しながら詳しく説明する。
【0102】
制御装置92は、まず収納処理が実行される前に搬送ロボット20を動かし、待機台91にある収納カセット11Bをハンド21により把持させる。そして、把持した収納カセット11Bを収納側昇降装置83における空の昇降台89に装着させる。その後、収納カセット11B内の最上段にある支持部11gが第3移送装置82の昇降装置側受渡部85b上の移送完了位置に位置するまで、昇降台89を下降させる。そして、収納システム3は、昇降台89を下降させた状態で収納処理が実行されるのを待っている。
【0103】
収納処理が開始されると、まずステップS51に移行する。第3移載工程であるステップS51では、制御装置92が第4デルタロボット81を動かし、第4デルタロボット81の下の第2トレイ15上にある何れかの板状部材12を吸着ハンド84によって吸着保持する。そして、その吸着ハンド64を移動させて保持している板状部材12を第3移送装置82のロボット側受渡部85a上の移載位置まで移動させる。これにより、板状部材12が第3移送装置82上で水平姿勢になる。その後、制御装置92は、吸着ハンド64による板状部材12の保持を解除する。保持が解除されると、ステップS52に移行する。
【0104】
第3移送工程であるステップ52では、制御装置92が第3移送装置82を動かして移載位置に載置された板状部材12を移送完了位置の方へと移送する。この際、制御装置92は、吸着機構94に板状部材12を吸着させている。吸着させた状態で板状部材12を移送完了位置の方へと移送する。その後、制御装置92は、板状部材12を所定距離移送するとコンベア用ベルト86の動きを止める。また、制御装置92は、動きを止める前において移送を開始してから所定時間経過して移載位置が空くと、ステップS51へと戻って移載動作を開始し、空いた移載位置に第4デルタロボット81により別の板状部材12を移載する。この移載動作と移送動作とを繰り返して行なうと、板状部材12がやがて移送完了位置まで移動する。移送完了位置まで移動することで板状部材12が収納カセット11B内に挿入される。また、制御装置92は、板状部材12が移送完了位置まで移動する(ステップS53)直前にステップS52の移載動作に同期してステップS54を開始する。
【0105】
収納工程であるステップS54では、制御装置92が収納側昇降装置83を動かして昇降台89を上昇させる。昇降台89を上昇させると、その後にステップS53にて移送完了位置に到達して停止した板状部材12の両端部が支持部11gにより支持されてそのまま上方に持ち上げられる。これにより板状部材12が第3移送装置82から離れて収納カセット11Bに収納される。制御装置92は、支持部11gが離されている所定間隔と同じ高さだけ昇降台89を上昇させると収納側昇降装置83の動きを止める。また、制御装置92は、止める前にステップS52へと戻って第3移送装置82の動作を開始し、収納側昇降装置83の動きを止めた後、次の板状部材12を移送完了位置に移動させて収納カセット11B内に挿入させる。これを繰り返すことにより、上下方向に並ぶように板状部材12が収納カセット11Bに収納される。このようにステップS54の収納動作とステップS51の移載動作とを同期して行なうことにより、収納システム3の収納時間を短くすることができる。
【0106】
収納カセット11Bの全ての段に板状部材12が収納されるまでステップS54の収納動作が繰り返され(ステップS55)、最下段の支持部11gにまで板状部材12が収納されるとステップS56へと移行する。取外し工程であるステップS56では、制御装置92が第4デルタロボット81及び第3移送装置82の動きを止める。そして、制御装置92は、収納側昇降装置83を動かし、昇降台89を上昇させて収納カセット11Bのロックを外す。ロックを外した後、制御装置92は、搬送ロボット20を動かし、ハンド21により昇降台89に載置された収納カセット11Bを保持して搬出台90の上に載置する。これにより、収納処理が終了し、処理設備4における処理が終了する。なお、昇降台89から収納カセット11Bを取り除くと、制御装置92は、搬送ロボット20を動かして待機台91に載置された別の収納カセット11Bを空になった昇降台89の上に載せる。
【0107】
[その他の実施形態]
本実施形態では、第1乃至第4デルタロボット50,60,63,81において吸着ハンド55,64,76,84にて板状部材12を吸着保持しているが、単に把持可能なハンドを用いてもよい。また、板状部材を移際するロボットは、第1乃至第4デルタロボット50,60,63,81に限らず6軸ロボットや水平3軸ロボット等のロボットであってもよい。
【0108】
また、本実施形態では、反転装置61は、吸着パッド73により板状部材12を吸着保持するようになっているが、ハンド等によって板状部材12を側方から把持するようになっていてもよく、板状部材12の上面が開放されて保持できるようであればよい。
【0109】
また、本実施形態の移送処理(収納処理)では、送出側昇降装置22(収納側昇降装置83)と第1デルタロボット50(第4デルタロボット81)とを同期させているが、必ずしも同期させる必要はない。例えば、まず送出側昇降装置22による下降動作、第1移送装置35による移送動作、及び第1デルタロボット50による移載動作を順番に行なうようにしてもよい。本実施形態の反転処理についても第2デルタロボット60と第2移送装置62を同期させる必要は必ずしもなく、また反転装置61と第3デルタロボット63とを同期させる必要も必ずしもない。移送処理と同様に、例えば各々の装置の動作を順番に行ってもよい。
【符号の説明】
【0110】
2 反転システム
60 第2デルタロボット
61 反転装置
62 第2移送装置
63 第3デルタロボット
65 第1移載領域
66 第2移載領域
70 反転軸
73 吸着パッド
77 吸引機構
92 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材を順次反転して移送する板状部材反転システムにおいて、
前記複数の板状部材を順次保持して移載する上流側移載動作を実行する上流側移載ロボットと、
前記上流側移載ロボットにより保持された前記板状部材が水平姿勢で移載され、移載された前記板状部材をその上面を開放した状態で保持して前記板状部材の上下面を反転させる反転動作を実行する反転装置と、
前記反転装置から反転された前記板状部材を受取り、その板状部材を反転された状態で且つ水平状態で移送する移送装置とを備える、板状部材反転システム。
【請求項2】
前記上流側移載ロボット、前記反転装置及び前記移送装置を間歇的に動作させるべく制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記反転装置の前記反転動作を停止させて前記上流側移載ロボットに前記上流側移載動作を実行させている間に前記移送装置に移送動作を実行させるよう構成されている、請求項1に記載の板状部材反転システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記上流側移載ロボットに前記上流側移載動作を実行させた後、前記上流側移載ロボットに前記反転装置から退避させる退避動作を実行させると共に前記反転装置に前記反転動作を実行させるよう構成されている、請求項2に記載の板状部材反転システム。
【請求項4】
前記反転装置は、載置された前記板状部材の下面を吸着して保持する吸着パッドと、前記吸着パッドを回動させて前記板状部材を反転させる反転軸とを備えている、請求項1乃至3の何れか1つに記載の板状部材反転システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記反転装置に前記反転動作を実行させると共に前記吸着パッドにより吸着動作を実行させるよう構成されている、請求項4に記載の板状部材反転システム。
【請求項6】
前記制御装置に動作を制御され、前記移送装置により移載終了位置まで移送された前記板状部材を保持して移載する下流側移載ロボットを備え、
前記制御装置は、前記移送装置の前記移送動作を停止して前記反転装置に前記反転動作を実行させている際に前記下流側移載ロボットを制御して前記移送装置に前記移送終了位置まで移送された前記板状部材を所定位置に移載する下流移載動作を実行させるよう構成されている、請求項3乃至5の何れか1つに記載の板状部材反転システム。
【請求項7】
前記移送装置は、移送する板状部材の下面を吸着する吸着機構を有し、
前記吸着機構は、前記反転装置から前記板状部材を受取った後に吸着を開始し、前記移送終了位置で吸着解除するよう構成されている、請求項6に記載の板状部材反転システム。
【請求項8】
前記複数の板状部材を順次保持して移載する上流側移載ロボットと、前記上流側移載ロボットにより保持された前記板状部材が水平姿勢で移載され、移載された前記板状部材をその上面を開放した状態で保持して前記板状部材の上下面を反転させる反転装置と、前記反転装置から反転された前記板状部材を受取り、その板状部材を反転された状態で且つ水平状態で移送する移送装置とを備えている板状部材反転システムの板状部材反転移送方法であって、
前記複数の板状部材を前記第2移載ロボットにより順次保持して前記反転装置に移載する移載工程と、
前記移載工程で移載された前記板状部材を前記反転装置により保持して反転させて前記移送装置に渡す反転工程と、
前記反転工程で反転されて渡された前記板状部材を移送装置で移送する移送工程とを有する、板状部材反転システムの反転移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図18C】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−218844(P2012−218844A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84052(P2011−84052)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】