説明

枚葉紙オフセット印刷機

【課題】インライン式に両面印刷されて両面塗工された枚葉紙が高い品質で得られる枚葉紙オフセット印刷機を提供する。
【解決手段】枚葉紙の第1の面を印刷するために相前後して配置された第1の列の印刷ユニットと、その後に続く反転装置と、その後に続く他方の枚葉紙面を印刷するために相前後して配置された第2の列の印刷ユニットと、その後に続く1つまたは複数の塗工ユニットとを備える枚葉紙オフセット印刷機において、塗工ユニットもしくはその塗工ブランケット胴は、通過する枚葉紙の表面と裏面が塗工されるように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉紙の第1の面を印刷するために直接相前後して配置された第1の列の印刷ユニットと、その後に続く反転装置と、その後に続く他方の枚葉紙面を印刷するために相前後して配置された第2の列の印刷ユニットと、その後に続く1つまたは複数の塗工ユニットとを備える、特に枚葉紙に両面多色刷りをするための枚葉紙オフセット印刷機に関する。直近に印刷された枚葉紙面を塗工するために機械の最後に配置された1つまたは複数の塗工ユニットを備える、このような種類のタンデム型の枚葉紙印刷機は公知であり、複数の製造者によって提供されている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1でも、冒頭に述べた種類の機械において、印刷された枚葉紙を機械の1回の機械工程で、すなわちインライン式に、両面で塗工することがすでに提案されている。そのためにこの印刷機は、反転装置の手前に塗工ユニットと乾燥機を有している。すなわち、ここで枚葉紙の表側印刷面が塗工されて乾かされてから、裏面印刷の目的のために反転される。
【0003】
枚葉紙の表側印刷面がすでに塗工されており、それに続いて裏面印刷ユニットの印刷間隙を枚葉紙が通過するので、塗工によって生成される枚葉紙表面の光沢は再び低下し、すなわち、裏面印刷ユニットもしくは印刷間隙を多く通過すればするほど低下していく。さらに、特に表側印刷面に塗布された塗料が乾燥機によって完全に乾かされていないときに問題が生じる。というのも、油をベースとするオフセット印刷インキとの接触に備えて最適化されている裏面印刷ユニットの圧胴の表面が、塗料の残滓によって、およびこれに伴って付着する紙粉等によって汚れることがあり、そうすると、高いコストをかけて洗浄しなくてはならないからである。
【0004】
たとえば特許文献2により、用紙搬送経路の上側と下側に配置された印刷ユニットによって、枚葉紙がそれぞれ交互にオフセット印刷インキで順次印刷され、次いで、用紙経路の上側と下側に配置された塗工ユニットによって両面で塗工される印刷機も知られている。このような型式の印刷機は、下側にある印刷ユニットへのアクセス性が悪いために普及しておらず、その点を度外視するとしても、次のような問題が生じる。すなわち、裏側印刷面の最後の色が印刷されるときに、枚葉紙はすでにすべての印刷間隙を通過してしまっている。最初に表側印刷面、次に裏側印刷面が全体として印刷される機械に比べて、通過する印刷間隙の数が2倍になるために、印刷画像が著しく幅広になり、レジスタ調節によってこの現象を補償することは不可能である。
【0005】
そのほか、印刷が完了した枚葉紙が両面で塗工される、別個の塗工機械が知られている。しかし、別個の塗工機械における欠点は、まず最初にパイルを作成し、次いでこれを再び給紙しなくてはならないのが面倒なことである。この時点で、印刷機の排紙パイルからくる枚葉紙はすでに粉かけされており、このことは、引き続いて塗工するときに光沢を低下させ、それ以外にも問題につながりかねない。そのうえ、機械製作に関わるコストが高くなる。インライン型の解決法に比べて、2つの給紙装置と2つの排紙装置が必要になるからである。
【0006】
特許文献3により、枚葉紙搬送経路の上側と下側に配置されたコーティングユニットによって枚葉紙が塗工される、印刷製品の両面仕上処理をする装置が公知である(図5)。同文献に記載された装置では枚葉紙が片面しか印刷されないが、その点を度外視しても、両方の塗工ユニットが異なる構成になっている。
【特許文献1】独国特許出願公開第4213024A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0976555号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102004058596A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、インライン式に両面印刷されて両面塗工された枚葉紙が高い品質で得られる、冒頭に述べた種類の枚葉紙オフセット印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴部に記載された特徴をもつ枚葉紙印刷機によって達成される。すなわち本発明では、枚葉紙が、まず、最初に一方の面で印刷され、反転され、他方の面で印刷されてから塗工され、これらの塗工ユニットは同じ型式であり、枚葉紙搬送経路の上側と下側に配置されている。このようにして、両面塗工された枚葉紙のインライン製作が可能であり、しかも、冒頭に述べた問題点のない枚葉紙印刷機が得られる。枚葉紙の両方の面でいっそう高い光沢度を得ることができ、油をベースとするインキとの接触に合わせて最適化することができる、裏面印刷ユニットの胴表面もしくは胴張りの洗浄工程が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】タンデム型の枚葉紙オフセット印刷機の表面印刷部を示す概略図である。
【図1b】タンデム型の枚葉紙オフセット印刷機の裏面印刷部を示す概略図である。
【図2】図1bの印刷機の裏面印刷部を第2の実施形態で示す図である。
【図3】図1bの印刷機の裏面印刷部を第3の実施形態で示す図である。
【図4】図1bの印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニットに後続する機械端部を第4の実施形態で示す図である。
【図5】図1bの印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニットに後続する機械端部を第5の実施形態で示す図である。
【図6】図1bの印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニットに後続する機械端部を第6の実施形態で示す図である。
【図7】図1bの印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニットに後続する機械端部を第7の実施形態で示す図である。
【図8】図1bの印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニットに後続する機械端部を第8の実施形態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1aは、印刷されていない用紙パイル3がある給紙装置2と、オフセット印刷機1の表面印刷部を形成する、4つの基本色のための4つの印刷ユニット7aから7dとを備える、タンデム型のオフセット印刷機1を示している。第4の印刷ユニット7dの後には、3ドラム式反転の原理に基づいて作動する反転装置4が続いている。この反転装置は、供給ドラム4a、紙渡しドラム4b、および反転ドラム4cで構成されている。反転ドラム4cは、反転装置4の後に続く第1の裏面印刷ユニット8aの側壁18aに支持されている。その圧胴108aに、反転された枚葉紙が引き渡される。オフセット印刷機1の第2の部分は、図1bに示されている。4つの裏面印刷ユニット8aから8dの後に、「チャンバ型ドクター」の型式の塗工ユニット9aが続いており、すなわちこの塗工ユニットは、スクリーンセルローラ19aと、水性の分散性塗料が内部にあるチャンバ型ドクター20aとを有している。符号22aは、セルの大きさが異なる3つの別のスクリーンローラを含む、いわば「星形スクリーンローラ」を示しており、これらのスクリーンローラとスクリーンセルローラ19aを取り替えることができ、そのようにして、塗布されるべき塗料の量を規定する。塗工ユニット9aでは、枚葉紙の裏側印刷面が塗工ブランケット胴17aによって水性の分散性塗料で全面的に覆われる。
【0012】
塗工ユニット9aの後には、乾燥ユニット10aが続いている。この乾燥ユニットでは、これを通過して運ばれる枚葉紙が枚葉紙搬送胴110aの領域で、熱風と赤外放射によって裏側印刷面で乾かされる。
【0013】
枚葉紙進行方向で見て乾燥ユニット10aの後には、第2の塗工ユニット9bが配置されており、この塗工ユニットは塗工ユニット9aと同じ型式であり、スクリーンローラ19b、塗工ブランケット胴17b、およびチャンバ型ドクター20bに関しては、第1の塗工ユニット9aと実質的に同一構造であるが、塗工ブランケット胴17bは、枚葉紙搬送経路の内部で、塗工圧胴として構成された枚葉紙搬送胴109bに当て付けられている。塗工ユニット9bは、枚葉紙の表側印刷面を同じく水性の分散性塗料で全面的に覆う役目をする。
【0014】
塗工ユニット9bの後には、枚葉紙の塗工された表側印刷面が赤外放射および/または熱風で乾かされる第2の乾燥ユニット10bが続いている。この乾燥ユニット10bは、枚葉紙搬送胴120の内部に配置された、すなわち塗工ユニット9bと同様に枚葉紙搬送経路の下側にある、赤外乾燥機113を含んでいる。
【0015】
乾燥ユニット10bの後には、印刷機の排紙装置5が続いている。その内部では、くわえづめブリッジがチェーン案内部15によって循環運動している。これらのくわえづめブリッジ16は両面塗工された枚葉紙を引き取り、これを乾燥差込板11a−hの下を通過させ、そこで枚葉紙の両面が赤外放射および/または熱風によって再度乾かされ、その際に分散性塗料が硬化する。こうして両面で塗工されて乾かされた枚葉紙は、次いで、排紙装置5で枚葉紙パイル6に積み置かれる。
【0016】
印刷された枚葉紙は、印刷ユニット7aから7dおよび8aから8dを通って運ばれる間に、塗料と接触することがない。したがって、印刷ユニット8a−dで枚葉紙を案内する圧胴108a−dの表面、およびその間に配置された渡し胴の案内板は、油をベースとするオフセットインキの特性に合わせて調整もしくは最適化された、インキをはじく層で被覆することができる。粘着性があり、汚れの現象が起こる原因になる分散性塗料は、オフセット印刷インキによる印刷のプロセスが終了した機械の最後になって初めて投入される。このようにして、塗工ユニットが第1の反転装置4の手前にある構成に比べて、胴張りの耐用期間や洗浄のインターバルがはるかに長くなる。
【0017】
図2に示す実施形態では、最後の印刷ユニット8dの後に続く、図1aおよび図1bを参照して上に説明した印刷機の部分が改変されている。ここでは、図1bに示す乾燥ユニット10aが省略されており、すなわち、塗工ユニット9aからくる枚葉紙は第2の塗工ユニット9bへそのまま供給される。表側印刷面が塗工される第2の塗工ユニット9bを通過した後に、乾燥ユニット110bが配置されている。この乾燥ユニットでは、第1の赤外乾燥機112が枚葉紙搬送胴111の上側に配置されており、スケルトン構造で製作された枚葉紙搬送胴111の内部に、第2の赤外乾燥機113が定置に配置されている。その後、チェーン案内部15のくわえづめブリッジ16により保持された両面に塗工された枚葉紙は排紙装置5で4つの乾燥機11a−hを通過し、そこで枚葉紙は両面で、すなわち上側および下側から、赤外放射と熱風によって乾かされる。ここでは、たとえば独国特許出願公開第102005042956A1号明細書に記載されているような、排紙装置5の枚葉紙案内部に組み込まれた乾燥機21eからhを利用することができる。
【0018】
第1の塗工ユニット9aの後で、渡し胴と別個の乾燥ユニットが省略されるので、この機械は相応に短く構成されており、図1bの実施形態によるよりも少ない設置面積しか必要ない。
【0019】
図3の実施形態では、オフセット印刷機1の裏面印刷部の最後の印刷ユニット8dの後に塗工ユニット29aが配置されている。この塗工ユニットは、スクリーンローラ19aが、チャンバ型ドクター20aおよび塗工ブランケット胴17aとともに、交換可能かつ取外し可能な1つの塗工ユニット18aにまとめられており、さらにこのユニットが、塗工圧胴109aへ当て付ける目的のために、矢印で図示しているとおり、上下へスライド可能に塗工ユニット29aに支持されているという点で、図1bおよび図2に示す塗工ユニット9aと異なっている。
【0020】
塗工ユニット29aの後には、図1を参照してすでに説明したように、乾燥ユニット10aが続いており、この中で、裏側印刷面に塗工された枚葉紙が熱風および/または赤外放射によって乾かされてから、枚葉紙搬送胴110によって塗工ユニット29bの塗工圧胴109bへ引き渡される。
【0021】
塗工ユニット29bは、塗工ユニット29aと同じく、塗工ブランケット胴17b、スクリーンローラ19b、およびチャンバ型ドクター20bが収容されている、交換可能かつ取外し可能な1つの塗工ユニット18bを有している。ただしこのユニット18bは、ユニット18aと鏡像反転された状態で製作されており、枚葉紙搬送経路の下側で塗工圧胴109bに当て付けられ、それにより、通過していく枚葉紙の表側印刷面に塗工をする。
【0022】
塗工ユニット29bの後には、渡し胴および第2の乾燥ユニット10bが続いており、その枚葉紙搬送胴125の下側には、枚葉紙の表側印刷面を乾かしてから次の枚葉紙搬送胴128へ供給するために、赤外乾燥機126と熱風乾燥機127が配置されている。枚葉紙搬送胴128は、その軸が、枚葉紙搬送胴125の軸よりも明らかに上に配置されている。これらの胴の両方の軸を結んだ線は、水平線との間で角度α>30°をなしている。このようにして、搬送される枚葉紙は上方に向って、チェーン案内部115に沿って水平方向に循環運動をするくわえづめブリッジ116のレベルまで運ばれ、そうすれば、このチェーン案内部を比較的簡単かつ低コストに構成することができる。その場合、傾いた案内領域から水平な案内領域へチェーンを方向転換させる必要がないからである。
【0023】
搬送される枚葉紙が上に載るほうの枚葉紙搬送胴128の側の上方に、検査カメラ141と粉かけ装置142が配置されている。ここで枚葉紙は、枚葉紙搬送胴128の上に定義された姿勢で載るので、カメラ141で枚葉紙表面を良好に検査することができる。というのも焦点距離が一定であり、検査されるべき枚葉紙のばたつき運動のせいで乱されないからである。さらに、粉かけ装置142から放出されるパウダー噴射を、裏移りの心配なしに、枚葉紙搬送胴128に載っている枚葉紙へ高い速度で当てることができる。というのも、乾燥ユニット10aですでに裏側印刷面で乾かされている枚葉紙は、相対運動をすることなく、相応にインキや塗料をはじく枚葉紙搬送胴128の表面に載るからである。
【0024】
図4に示す実施形態では、最後の裏面印刷ユニット8dの後に塗工ユニット209が続いており、ここで印刷ユニット8dから出た枚葉紙は渡し胴207により、半回転の塗工ブランケット胴208へ供給される。この半回転の塗工ブランケット胴208は、それ自体、塗工ブランケット表面の半径よりも下に配置されたくわえ棒218aおよび218bを支持している。くわえ棒に取り付けられたくえわづめ218aおよび218bは、開いているときにだけ、枚葉紙前端を把持するために塗工ブランケット表面の半径よりも上に上昇し、閉じた後は再びその下に位置する。
【0025】
塗工ブランケット胴208によって運ばれる枚葉紙は、その裏側印刷面で、第2の塗工ブランケット胴218によって全面的に塗工され、その際には、チャンバ型ドクター220aを備えるスクリーンローラ219aが、塗工ブランケット胴218にたとえば分散性塗料を供給する。それと同時に、詳しくは図示しない保持装置によって第1の塗工ブランケット胴208に張り渡された塗工ブランケットは、チャンバ型ドクター220bと連動する第2のスクリーンローラ219bから塗工層を与えられ、この塗工層の上に、くわえづめ218aおよび218bで保持され、印刷間隙もしくは塗工間隙221を通って運ばれる枚葉紙が載る。
【0026】
塗工間隙221を通過した後、このようにして同時に両面塗工された枚葉紙は渡し胴217に引き取られ、この渡し胴が枚葉紙を塗工ブランケット胴208の上の塗工ブランケットから剥がして、乾燥ユニット210へ引き渡す。この乾燥ユニット210は図2の乾燥ユニット110bと同様に構成されており、すなわち、枚葉紙搬送胴211の外側と内側に2つの乾燥機212および213を有しており、それにより、同時に塗工された枚葉紙の両方の面を、同じく同時に乾かすことができ、その後で、枚葉紙は、排紙装置205にあるチェーン案内部215のくわえづめブリッジに渡される。排紙装置205それ自体に、さらに2つの別の乾燥機21aおよび21bが配置されており、これらの乾燥機は、図1および図2に示す実施形態の乾燥機11a−hと同じく、パイル206の上に積み置かれる前に枚葉紙を最終的に乾かす。
【0027】
図5の実施形態は、オフセット印刷機1の裏面印刷部の最後の印刷ユニット8dの後に、チェーン案内部315を備える排紙装置305がそのまま続いていることによって、図4の実施形態と異なっている。すなわち、印刷ユニット8dから出た枚葉紙は、循環運動をするチェーン307へくわえづめブリッジ316によって渡されるとき、それまでにインキでしか印刷されていない。排紙装置には、循環運動をする各組のチェーンによって形成される平面の両側に、それぞれ付属のスクリーンローラ319aおよび319bによってチャンバ型ドクター320aおよび320bとの連携で塗料が塗られる、2つの塗工ブランケット胴309aおよび309bで構成された二重塗工ユニット309が支持されている。
【0028】
塗工ブランケット胴309aおよび309bは、くわえづめブリッジ316が塗工ブランケット胴309aおよび309bと接触することなく通過できるように構成されたクランプ溝を有している。そのために塗工ブランケット胴309aおよび309bは、図示しない伝動装置によって、スプロケット317の駆動装置と同期化される。
【0029】
くわえづめブリッジ316によって塗工ブランケット胴309aおよびbの上の塗工ブランケットを通過するように運ばれ、そのようして表面と裏面で同時に塗工された枚葉紙は、次いで、図4を参照して別の実施形態で説明したように、乾燥機21aおよび21bで再び両面で乾かされる。
【0030】
図4に示す実施形態と比べて、図5に示す実施形態では、塗工に関して明らかに改善された結果が得られる。通過する枚葉紙の両側における塗料塗布ローラが左右対称なので、いつも同じ状況が生じているからである。
【0031】
塗工ブランケット胴309aおよび309bは、両方の二重矢印によって記号で示されているように、それぞれの軸に関して互いに離れるように移動可能に支持されていてもよい。このようにして、塗工ブランケットを支持する部分を交換可能なスリーブとして構成し、厚さや外径の異なるスリーブと交換できるようにすることが可能である。さらに、このスリーブは、特別に長い溝切欠きを有するスリーブと取り替えることもでき、それにより、たとえば場合により二重くわえづめブリッジに前端と後端で同時に保持された枚葉紙を塗工することができ、すなわち、枚葉紙の版型間隔もしくは長さが異なっているときでも、前端ブリッジと後端ブリッジの両方が塗工ブランケット胴309aおよび309bの溝の中に収まる。
【0032】
図6に示す実施形態は、第1に、排紙装置405が、図3の場合と同じく水平方向にのみ延びる単純なチェーン案内部415を備えていることによって、図5に示す実施形態と異なっている。図5に示すチェーン案内部の上昇部分に代えて、ここでは、スケルトン状の構造で3つのくわえづめブリッジ416a,bおよびcを支持する枚葉紙搬送胴425が設けられている。印刷ユニット8dから出た枚葉紙は、渡し胴407によって枚葉紙搬送胴425のくわえづめブリッジ416a,bおよびcに渡される。枚葉紙搬送胴425が、排紙装置405にあるチェーン案内部415の高さレベルまで枚葉紙を運び、図5のチェーン307と同様に、塗工ブランケット胴409aおよび409bの間の塗工間隙422へ挿通する。
【0033】
二重塗工ユニットのチャンバ型ドクター420bとスクリーンローラ419bは枚葉紙搬送胴425の内部にあるが、この枚葉紙搬送胴425には枚葉紙パイル406の側から良好にアクセスすることができる。しかも、各くわえづめブリッジ416a,bおよびcの間の空間が開いているので、用紙搬送経路の上側および下側に配置された赤外乾燥機および熱風乾燥機421aおよび421bによって、塗工された枚葉紙を塗工後に乾かすことができる。
【0034】
枚葉紙搬送胴425の下側には損紙の容器426が配置されている。3つのくわえづめブリッジ416a,bおよびcにあるくわえづめが開く時点を適宜制御することで、合格の枚葉紙は排紙装置405のチェーン案内部415に引き渡され、不合格の枚葉紙は、容器426の上にきたときに初めて放されるようにすることができる。合格の枚葉紙と不合格の枚葉紙を見分けるには、たとえば、枚葉紙搬送経路で見てオフセット印刷機1の最後の印刷ユニット8dの後にあるインライン検査システムが適している。
【0035】
塗工ブランケット胴409aおよび409bについては、塗工ブランケット胴309aおよび309bについてすでに述べたことが当てはまり、すなわち、図5との関連で説明した、厚さや直径の異なるスリーブ、および溝長さの異なるスリーブを備えていてよい。
【0036】
本発明の特別に好ましい別の2通りの実施例が、図7と図8に示されている。この両者に共通するのは、印刷機の裏面印刷部の最後の印刷ユニット8dの後に、塗工ブランケット胴17bと、チャンバ型ドクター20bを備えるスクリーンローラ19bとが塗工圧胴109bの下側に、すなわち枚葉紙搬送経路よりも下側に配置された、塗工ユニット9bが続いていることである。図7に示す実施例では、枚葉紙の表面すなわち枚葉紙の表側印刷面が塗工される第1の塗工ユニットの塗工圧胴109bの後に、2つの乾燥機が続いている。これらの乾燥機はそれぞれ枚葉紙搬送胴111aおよび111bで構成されており、その下側に、すなわち同じく枚葉紙搬送経路よりも下側に、乾燥機112aおよび112bがそれぞれ配置されている。これは、たとえば赤外乾燥機および/または熱風乾燥機であってよい。第1の塗工ユニットの塗工圧胴109bと、第1の乾燥機の枚葉紙搬送胴111aとの間には渡し胴119aが挿入されており、第2の渡し胴119bが、乾燥機の両方の枚葉紙搬送胴111aおよび111bの間にある。乾燥機の後には、枚葉紙の裏側印刷面が塗工される第2の塗工ユニット9aが続いている。この実施例では第2の乾燥機の枚葉紙搬送胴111bは、本例では「直立」した第2の塗工ユニットの塗工圧胴109aに、そのまま引渡を行うことを再度付記しておく。
【0037】
そして、第2の塗工ユニット9aの後に排紙装置が続いており、これについては図1bを参照してすでに説明したとおりであるが、ただし、ここでは枚葉紙の裏側印刷面だけしか、乾燥機11aから11dによって乾かされる必要がないという違いがある。表側印刷面は、すでに乾燥機112aおよび112bで乾かされているからである。
【0038】
図8に示す実施例では、図7に示す実施例と比べて、両方の渡し胴119aおよび119bが省略されており、両方の枚葉紙搬送胴111aおよび111bも同様に省略されている。枚葉紙進行方向で見て、表側印刷面を「下方から塗工する」第1の塗工ユニット9bの塗工圧胴109bの後には、「直立した」第2の塗工ユニット9aの塗工圧胴109aがそのまま続いている。ここでは、枚葉紙経路の下側の中間乾燥機113と、枚葉紙経路の上側の中間乾燥機112が、枚葉紙が排紙装置5に渡される前に枚葉紙を乾かすように作用する。両方の乾燥機113および112は、両方の塗工ユニットの塗工圧胴109bおよび109aの下側と上側に直接配置されている。乾燥機112および113から、熱または放射が塗工ユニットの内部に達して、そこでコンポーネントを過度に熱するのを防止する、塗工ユニットの熱風遮蔽部もしくは放射遮蔽部は図示していない。
【0039】
最後の印刷ユニット8dの直後に下方から塗工をすることで、非常にコンパクトな構造を具体化することができる。特に図8の実施例では、両面の塗工のために用いられるコンポーネントの数は最小限である。回転するドラムの内部から枚葉紙を乾かす必要がないので、乾燥機に関しても、既存のコンポーネントだけで作業を行うことができる。
【0040】
このように、枚葉紙が最後の印刷ユニット8dの後でまず「下方から」塗工されることによって、一方では機械の設置スペースに関して、また他方では開発コストや機械の費用といった観点からも、好都合な配列が得られる。
【0041】
上述した実施形態のほか、これら以外の改良や変形も考えられる。たとえば使用する塗料によっては、チャンバ型ドクターを備える塗工ユニットに代えて、呼出しローラを備える塗工ユニットを用いることもできる。さらに、そもそも印刷機の表面印刷部および裏面印刷部における4つの基本色のための4つの印刷ユニットではなく、たとえば2×2特色インキによる両面印刷のための、追加の印刷ユニットを設けることも当然ながら可能である。印刷機の排紙装置で枚葉紙がその前端で保持されるくわえづめブリッジ316,416a,bおよびcに代えて、たとえば米国特許第6,923,119号明細書に記載されているように、枚葉紙が両方の側方の縁部で把持されるくわえ棒構造を用いることもできる。この場合、塗工ブランケット胴309a,bおよび409a,bの溝は必要なく、塗工ブランケット胴409a,bに張り渡されたスリーブを使用する場合、これをシームレスかつ薄壁に製作することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 オフセット印刷機
2 給紙装置
3 用紙パイル
4 反転装置
4a,14a,24a 供給ドラム
4b,14b,24b 紙渡しドラム
4c,14c,24c 反転ドラム
5,105,205,305,405 排紙装置
6,206,406 枚葉紙パイル
7a−d 印刷ユニット
8a−d 印刷ユニット
9a,b 塗工ユニット
10a,b 乾燥ユニット
11a−h 乾燥差込板、乾燥機
15,115,215,315,415 チェーン案内部
16,116,316 くわえづめブリッジ
17a,b 塗工ブランケット胴
18a,b 取外し可能な塗工ユニット
19a,b スクリーン(セル)ローラ
20a,b チャンバ型ドクター
21a,b 乾燥機
22a,b 星形スクリーンローラ
29a,b 塗工ユニット
31a,b 中間乾燥機
49a アプリケータローラ
59a,b 圧胴
106,110a 渡し胴、枚葉紙搬送胴、
108a−d 圧胴
109a,b 枚葉紙搬送胴、塗工圧胴
110b 乾燥ユニット
111,111a,111b 枚葉紙搬送胴
112,112a,112b (赤外および/または熱風)乾燥機
113 (赤外)乾燥機
119a,b 渡し胴
120 枚葉紙搬送胴
125 枚葉紙搬送胴
126 赤外乾燥機
127 熱風乾燥機
128 枚葉紙搬送胴
129a,b 圧胴
141 検査カメラ
142 粉かけ装置
207,407 渡し胴
208,218 塗工ブランケット胴
209,309,409 二重塗工ユニット
210 乾燥ユニット
211 枚葉紙搬送胴
212,213 赤外乾燥機
217 渡し胴
218a,b くわえづめ
219a,b スクリーンローラ
220a,b チャンバ型ドクター
221 塗工間隙
307 チェーン
309a,b,409a,b 塗工ブランケット胴
317 スプロケット
319a,b,419a,b スクリーンローラ
320a,b,420a,b チャンバ型ドクター
416a−c くわえづめブリッジ
417a−c 支持体
418 ジャーナル
421a,b 乾燥機,赤外乾燥機および熱風乾燥機
422 塗工間隙
425 枚葉紙搬送胴
426 損紙の容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枚葉紙の第1の面を印刷するために相前後して配置された第1の列の印刷ユニット(7a−7d)と、その後に続く反転装置(4)と、その後に続く他方の枚葉紙面を印刷するために相前後して配置された第2の列の印刷ユニット(8a−8d)と、その後に続く1つまたは複数の塗工ユニット(9a,9b,29a,29b)とを備える、特に枚葉紙に両面多色刷りをするための枚葉紙オフセット印刷機において、
同じ型式の少なくとも2つの塗工ユニット(9a,9b;18a,18b)が最後の印刷ユニット(8d)の後に続いており、前記塗工ユニットまたはその塗工ブランケット胴(17a,17b)は通過する枚葉紙の表面と裏面が塗工されるように配置されており、前記塗工ユニットまたはその塗工ブランケット胴のうちの1つは枚葉紙搬送経路の下側に配置されており、少なくとも2つの赤外乾燥機または熱風乾燥機(10a,10b;11a−11h;112/113;212,213;21a,21b;421a,421b)が設けられており、そのうち同じく少なくとも1つは前記枚葉紙搬送経路の下側に配置され、
両面に塗工されるべき枚葉紙はくわえづめブリッジ(316;416a−416c)によって前記両方の塗工ブランケット胴(309a,309b;409a,409b)の間の前記間隙(422)を通って移動/搬送される、
ことを特徴とする枚葉紙オフセット印刷機。
【請求項2】
前記くわえづめブリッジのくわえづめは枚葉紙を両方の側方の縁部でつかむ、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記くわえづめブリッジ(316;416a−416c)のくわえづめは枚葉紙をその前端で保持して前記両方の塗工ブランケット胴(309a,309b;409a,409b)の間の前記間隙を通るように運び、一方または両方の前記塗工ブランケット胴は前記くわえづめもしくは前記くわえづめブリッジ(316;416a−416c)が入り込む軸方向の溝を備えている、請求項1に記載の印刷機。
【請求項4】
前記塗工ブランケット胴の間の前記間隙を通って運ばれる枚葉紙をその前端と後端で把持するくわえづめブリッジを備える複数組のくわえ棒が設けられている、請求項3に記載の印刷機。
【請求項5】
前記くわえづめブリッジ(416a−416c)は、前記印刷ユニット(7a−7d,8a−8d)の版胴と比較して倍数の大きさの直径をもつ枚葉紙搬送胴(425)の一部であり、該枚葉紙搬送胴は枚葉紙面の領域で開いており、前記塗工ユニットの前記塗工ブランケット胴(409b)と前記スクリーンローラ(419b)とチャンバ型ドクター(420b)とが前記枚葉紙搬送胴(425)の内部に配置されている、請求項1に記載の印刷機。
【請求項6】
前記倍数の大きさの枚葉紙搬送胴(425)に損紙の容器(426)が付属している、請求項5に記載の印刷機。
【請求項7】
前記倍数の大きさの枚葉紙搬送胴(425)に乾燥機(421a,421b)が付属している、請求項5に記載の印刷機。
【請求項8】
前記倍数の大きさの枚葉紙搬送胴(425)に、一部は前記枚葉紙搬送胴(425)の内部、一部は前記枚葉紙搬送胴(425)の外部に配置された乾燥機が付属している、請求項7に記載の印刷機。
【請求項9】
前記塗工ブランケット胴(309a,309b;409a,409b)に取り付けられた塗工ブランケットは管状のスリーブであり、または該管状のスリーブに張り渡されている、請求項1から8までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項10】
前記両方の塗工ブランケット胴(309a,309b;409a,409b)の間隔は、厚さの異なる前記スリーブを取り付けるために調節可能もしくは調整可能である、請求項9に記載の印刷機。
【請求項11】
枚葉紙進行方向で見て最後の塗工ユニットの後に、両面で塗工された枚葉紙を両面で乾かすための赤外乾燥機および/または熱風乾燥機(11a−11h,21a,21b;112,113,212,213)が配置されている、請求項1から10までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項12】
前記塗工ユニットの少なくとも1つ(39a)に、枚葉紙を搬送する枚葉紙搬送胴(111,220,425)の内部に配置された乾燥機(113,213,421b)が付属している、請求項1から11までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項13】
前記塗工ユニットの1つまたは複数は水をベースとする塗料もしくは分散性塗料を塗布するために構成されている、請求項1から12までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項14】
前記塗工ユニットの2つまたは3つ以上(9a,9b)はチャンバ型ドクター(20a,20b)を備えるスクリーンローラ(19a,19b)を有している、請求項1から13までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項15】
前記両方の塗工ユニットは呼出しローラの型式である、請求項1から13までのいずれか1項に記載の印刷機。
【請求項16】
前記スリーブは溝なしで構成されている、請求項9に記載の印刷機。
【請求項17】
前記スリーブは溝を備えている、請求項9に記載の印刷機。

【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−179913(P2012−179913A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−104584(P2012−104584)
【出願日】平成24年5月1日(2012.5.1)
【分割の表示】特願2007−181569(P2007−181569)の分割
【原出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【出願人】(390009232)ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト (347)
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten−Anlage 52−60, D−69115 Heidelberg, Germany
【Fターム(参考)】