架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法及び成形金型
【課題】側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造する。
【解決手段】ベース体11上に第1〜第4分割スライド体21〜24をスライド可能に設け、第1〜第4分割スライド体21〜24を枠形状に組み合わせて第1〜第4分割スライド体21〜24内に発泡性樹脂組成物48を充填し、上蓋体で第1〜第4分割スライド体21〜24に蓋をして加熱、加圧することにより発泡性樹脂組成物の発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に第1〜第4分割スライド体21〜24から上蓋体を離すと共に、第1〜第4分割スライド体21〜24を分離させて枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形金型から取り出す。
【解決手段】ベース体11上に第1〜第4分割スライド体21〜24をスライド可能に設け、第1〜第4分割スライド体21〜24を枠形状に組み合わせて第1〜第4分割スライド体21〜24内に発泡性樹脂組成物48を充填し、上蓋体で第1〜第4分割スライド体21〜24に蓋をして加熱、加圧することにより発泡性樹脂組成物の発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に第1〜第4分割スライド体21〜24から上蓋体を離すと共に、第1〜第4分割スライド体21〜24を分離させて枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を成形金型から取り出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法とそれに用いられる成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法として、加圧一段発泡法がある。加圧一段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤を配合して混練機で混練し、得られた発泡性樹脂組成物を成形金型に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、次に成形金型を開放することにより一気に膨張させて成形金型から架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を飛び出させるものである。
【0003】
前記成形金型は、開放時における架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の膨張により架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が取り出せなくなるのを防ぐため、図16に示すように、下型61の側壁63にテーパー(外方へ傾斜した面)を形成して上型71を開けた際に、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体81が自然に下型から飛び出すように構成されている。
しかし、側壁にテーパーを有する成形金型を用いて製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体81は、図17に示すように、側面83がテーパーとなっているため、側面が垂直な正寸のブロックとするためには、側面83の不要なテーパー部分84を除去しなければならず、後加工が面倒のみならず、材料のロスが多くなる問題がある。
【0004】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法には、一段発泡法以外に二段発泡法がある。二段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を金型に充填し、加圧下、加熱して発泡剤の分解を抑え、あるいは分解ガスをポリオレフィン系樹脂に保持させた状態で架橋反応を進め、冷却固化した後、常圧下でさらに加熱して膨張発泡させるものである。前記二段発泡法によれば、発泡を二段に分けることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の側面のテーパー部分を少なくすることが可能であるが、一段発泡法に比べて製造作業が複雑になると共に製造設備費が高価になる問題があり、製品コストが上昇する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−146510号公報
【特許文献2】特開昭62−21526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造する方法及びその製造方法に用いる成形金型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、前記成形金型は、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状とされた分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、前記枠形状に組み合わされた分割スライド体内の成形部に前記発泡性樹脂組成物を充填し、前記上蓋体で蓋をして加熱、加圧することにより前記発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体を離すと共に、複数の前記分割スライド体を分離させて前記枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を前記成形金型から取り出すことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して、複数の前記分割スライド体が分離し前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除されて、複数の前記分割スライド体を分離可能にすると共に前記枠形状の外方へスライド可能とする係合手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられる成形金型において、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状の分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除され、前記係合状態では複数の前記分割スライド体が分離して前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記係合解除により複数の前記分割スライド体が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3において、前記枠形状が長方形又は正方形からなり、複数の前記分割スライド体は、対向する第1分割スライド体及び第2分割スライド体と、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体に対して直交する方向で対向する第3分割スライド体及び第4分割スライド体とで構成され、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体とにより前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が挟まれた状態となり、前記係合手段は、前記第1〜前記第4分割スライド体において前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられ、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされることにより係合して前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを阻止し、一方、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることにより係合が解除されて前記第3及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向へスライドすることを可能にする第1の係合手段と、前記上蓋体と前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体とに設けられ、前記枠形状に組み合わされた前記第1〜前記第4分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記上蓋体が前記枠形状の前記第1〜前記第4分割スライド体から離れることにより係合が解除されて前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを可能にする第2の係合手段と、よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び2の発明によれば、成形金型内の成形部に発泡性樹脂組成物を充填して加熱、加圧し、発泡性樹脂組成物の発泡剤の分解及び架橋反応を進行させた後に、枠形状の分割スライド体から上蓋体を離し、複数の分割スライド体を枠形状の外方へスライドさせ、分離させるため、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、分割スライド体にテーパーを設けなくても成形金型から取り出すことができ、側面にテーパーによる無駄部分の無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造することができる。
【0012】
請求項3及び4の発明によれば、簡単な型構造で側面にテーパーによる無駄部分の無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形金型の平面図である。
【図2】図1の成形金型の第1〜第4分割スライド体が枠形状に組み合わされた状態について、上蓋体を除いて示す平面図である。
【図3】図1の成形金型の第1〜第4分割スライド体が枠形状の外方へスライドして分離した状態について、上蓋体を除いて示す平面図である。
【図4】図1の成形金型の上蓋体を離した状態のA1〜A3の各断面を示す図である。
【図5】図1の成形金型の上蓋体を離した状態のB1〜B3の各断面を示す図である。
【図6】図1の成形金型の上蓋体を閉じた状態のA1〜A3の各断面を示す図である。
【図7】図1の成形金型の上蓋体を閉じた状態のB1〜B3の各断面を示す図である。
【図8】図1の成形金型に発泡性樹脂組成物を充填した状態を示す平面図である。
【図9】図1の成形金型に発泡性樹脂組成物を充填後上蓋体を閉じた状態を示す平面図である。
【図10】図9のC1〜C3の各断面を示す図である。
【図11】図9のD1〜D3の各断面を示す図である。
【図12】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態のC1〜C3の各位置の断面を示す図である。
【図13】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態のD1〜D3の各位置の断面を示す図である。
【図14】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態を上蓋を除去して示す平面図である。
【図15】図1の成形金型を用いて製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の斜視図である。
【図16】従来の成形金型を示す断面図である。
【図17】従来の製造方法で得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、本発明の一実施形態の成形金型10について図1〜図7を用いて説明する。
成形金型10は、底面に対して側面が略直角となってテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、公知の加圧一段発泡法を利用して製造するための成形金型であり、ベース体11と複数の分割スライド体21、22、23、24と上蓋体31とよりなる。
ベース体11は、成型金型10の下型に相当するものであり、上面が略平坦な平板からなる。前記ベース体11には、図示しない加熱手段が設けられ、所定温度に加熱可能となっている。前記加熱手段としては、例えば、前記ベース体11に蒸気流路を形成し、外部の蒸気供給手段に前記ベース体の蒸気流路を接続してベース体11を加熱する方法や、前記ベース体に電熱ヒータ等を設けて加熱する方法が挙げられる。図示のベース体11は、略長方形からなり、上面111に前記分割スライド体21〜24がスライド可能に設けられる。
【0015】
複数の前記分割スライド体21〜24は、前記成形金型10において、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の側面を形成する枠型に相当するものであり、互いに対向する第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22と、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22に対して直交する方向で互いに対向する第3分割スライド体23及び第4分割スライド体24とで構成され、組み合わされることによって枠形状となる。前記第1分割スライド体21の内側側面211、前記第2分割スライド体22の内側側面221、前記第3分割スライド体23の内側側面231及び前記第4分割スライド体24の内側側面241は、それぞれ前記ベース体11の上面111に対して垂直になっている。
【0016】
前記枠形状に組み合わされた前記第1〜第4分割スライド体21〜24によって包囲される部分が成形部26となる。前記枠形状は、正方形又は長方形が好ましく、図示の例では、図2に示すように所定寸法の長方形となっている。前記第1〜第4分割スライド体21〜24は、前記枠形状に組み合わされた際に前記ベース体11の上面中央上に前記成形部26が形成されるように前記ベース体11上に配置される。また、図示の例は、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体21の一端部21aと前記第2分割スライド体22の一端部22a間に、前記第3分割スライド体23が挟まれて位置すると共に、前記第1分割スライド体21の他端部21bと前記第2分割スライド体22の他端部22b間に、前記第4分割スライド体24が挟まれて位置する。なお、前記第1分割スライド体21の一端部21aと前記第2分割スライド体22の一端部22aは互いに対向する端部であり、一方、前記第1分割スライド体21の他端部21bと前記第2分割スライド体22の他端部22bは、互いに対向する端部である。
【0017】
また、前記第1〜第4分割スライド体21〜24は、互いに対向する分割スライド体間の間隔(すなわち第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22の間隔、及び前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24の間隔)を広げる方向K1〜K4からなる前記枠形状の外方へスライド可能に、前記ベース体11の上面111に設けられる。なお、前記第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22のスライド方向と前記第3分割スライド体23及び第4分割スライド体24のスライド方向は、直交方向となっている。前記第1〜第4分割スライド体21〜24の底面には、スライドガイド用突部21c〜24cが形成され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライド範囲と対応する前記ベース体11の上面111に形成されたスライドガイド用溝111c〜114cに、前記スライドガイド用突部21c〜24cがスライド可能に嵌り、前記スライドガイド用溝111c〜114cによって前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライド方向を規制している。なお、前記スライドガイド用溝111c〜114cの内端111d〜114dは、対応する分割スライド体が前記スライドガイド用溝の内端111d〜114dに衝突し、それ以上内方(互いに対向する分割スライド体の間隔を狭める方向)へスライド不能となったときに、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が前記枠形状に組み合わされるように形成されている。
【0018】
前記上蓋体31は、前記成型金型10の上型に相当するものであり、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置された際に前記成形部26に蓋をすることが可能な大きさからなる。なお、前記上蓋体31は、公知のプレス装置によって昇降可能とされており、下降によって前記第1〜第4分割スライド体21〜24内の成形部26に蓋をすると共に加圧することができ、一方、上昇によって前記第1〜第4分割スライド体21〜24から離れることができるようになっている。
【0019】
前記上蓋体31と前記第1〜第4分割スライド体21〜24には、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24から前記上蓋体31が離れた際に係合が解除され、係合状態では前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離して前記枠形状の外方(すなわち、互いに対向する分割スライド体の間隔を広げる方向K1〜K4)へスライドするのを阻止し、一方、係合解除により前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段が設けられている。前記係合手段は第1係合手段41と第2係合手段45で構成されている。
【0020】
前記第1係合手段41は、前記第1〜前記第4分割スライド体21〜24において、前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられている。図示の例では、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211b及び前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bに形成された係合凹部41a、41b、41c、41dと、前記第3分割スライド体23の端面23a、23b及び前記第4分割スライド体24の端面24a、24bに形成された係合凸部41e、41f、41g、41hで構成されている。
【0021】
前記第1分割スライド体21に形成された係合凹部41a、41bと、前記第3分割スライド体23に形成された係合凸部41e及び前記第4分割スライド体24に形成された係合凸部41gは、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いに接近する方向にスライドして、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211bと前記第3分割スライド体23の端面23a及び前記第4分割スライド体24の端面24aが当接することにより、前記係合凹部41a、41bに前記係合凸部41e、41gが嵌って係合し、一方、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライドして、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211bと前記第3分割スライド体23の端面23a及び前記第4分割スライド体24の端面24aが離れることにより、前記係合凹部41a、41bから前記係合凸部41e、41gが外れて係合が解除される。
【0022】
同様に、前記第2分割スライド体22に形成された係合凹部41c、41dと、前記第3分割スライド体23に形成された係合凸部41f及び前記第4分割スライド体24に形成された係合凸部41hは、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いに接近する方向にスライドして、前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bと前記第3分割スライド体23の端面23b及び前記第4分割スライド体24の端面24bが当接することにより、前記係合凹部41c、41dに前記係合凸部41f、41hが嵌って係合し、一方、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)にスライドして、前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bと前記第3分割スライド体23の端面23b及び前記第4分割スライド体24の端面24bが離れることにより、前記係合凹部41c、41dから前記係合凸部41f、41hが外れて係合が解除される。
【0023】
前記第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22と前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24に形成されている前記第1係合手段41の全ての係合が解除されることにより、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向(前記K3方向及びK4方向)へスライド可能になる。
【0024】
前記第2係合手段45は、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の上面212、222に形成された段部45a、45bと、前記上蓋体31の下面31aに形成された段部45c、45dとで構成されている。前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bは、図4のA2−A2断面図に示すように、分割スライド体の内方側451a、451bが高くなった階段状からなり、一方、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記上蓋体31の内方側451c、451dが高くなった(窪んだ)階段状からなる。前記第2係合手段45は、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bにおける高くなった内方側451a、451b部分が、前記上蓋体31の段部45c、45dにおける高くなった(窪んだ)内方側451c、451dの部分に位置することにより係合し、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライドするのを阻止する。一方、前記上蓋体31が、前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離れることによって、前記第2係合手段45の係合が解除され、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライド可能になる。
【0025】
前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bと、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記枠形状に組み合わされた第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置されて前記成形部26を塞いだ際に係合する位置に設けられている。また、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bと、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記上蓋体31が、前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離れる際に、係合解除がスムーズに行われるように、図示の例では、段差部分がテーパーとなっている。
【0026】
前記の構成からなる成形金型10においては、枠形状に組み合わされた前記第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置された状態では、前記第2係合手段45が係合して、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライドするのが阻止され、また、前記第1係合手段41が係合して、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(すなわち枠形状の外方)へスライドするのが阻止され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が組み合わされた枠形状も維持される。一方、前記枠形状に組み合わされた第1〜第4分割スライド体21〜24から前記上蓋体31が上方へ離れた状態では、前記第2係合手段45の係合が解除されて、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライド可能となり、また、第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライドすることにより、前記第1係合手段41の係合が解除されて、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(すなわち枠形状の外方)へスライド可能となり、前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライドにより前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離した状態になる。
【0027】
次に、前記成形金型10を用いる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法について説明する。
まず、前記上蓋体31を前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離した状態で、図2及び図4、図5に示すように、前記成形金型10の前記第1〜第4分割スライド体21〜24を枠形状に組み合わせ、前記第1〜第4分割スライド体21〜24で包囲される成形部26を形成する。
【0028】
前記枠形状にする際、最初に、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24を、互いの間隔を狭くする方向(すなわち接近する方向)へスライドさせて、前記第3分割スライド体23を、前記スライドガイド用突部23cが前記ベース体11のスライドガイド用溝113cの内端113dと衝突してスライドが阻止される位置にすると共に、前記第4分割スライド体24を、前記スライドガイド用突部24cが前記ベース体11のスライドガイド用溝114cの内端114dと衝突して停止する位置とする。次に、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22を、互いの間隔を狭くする方向(すなわち接近する方向)にスライドさせて、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24の端部と当接させ、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の係合凹部41a、41b、41c、41dと、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24の係合凸部41e、41f、41g、41hからなる第1係合手段41を係合させる。
【0029】
次に、前記第1〜第4分割スライド体で包囲された前記成形部26に、図8に示すように混練した発泡性樹脂組成物48を充填する。前記発泡性樹脂組成物48は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤、さらには必要に応じて添加剤を配合して、混練機で混練したものである。なお、前記発泡性樹脂組成物は、押出機に供給して混練し、押し出されたものを使用することができる。
【0030】
前記発泡性樹脂組成物におけるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等、公知のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0031】
前記発泡剤は、従来より架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に使用されている熱分解型発泡剤を使用することができ、特に限定されるものではない。前記発泡剤として、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラジンカルボンアミド等を挙げることができる。前記発泡剤の配合量は、製造する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に求められる発泡倍率との関係で決定される。通常は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜8重量部とされる。
【0032】
前記架橋剤は、従来より架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではない。前記架橋剤として、例えば、イソブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。前記架橋剤の配合量は、配合量が多いと発泡が困難となり、一方、少ないと架橋度が不足して発泡時に気泡が破裂しやすくなるため、通常は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.3〜3.0重量部とされる。
必要に応じて配合される添加剤としては、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の用途等に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0033】
混練された発泡性樹脂組成物48を前記成形部26に充填した後、図9〜図11に示すように、前記上蓋31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置し、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22と前記上蓋体31に形成されている前記第2係合手段45を係合させる。前記第2係合手段45の係合により、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドすることが阻止され、また、前記第1係合手段41の係合によって、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(枠形状の外方)へスライドすることが阻止され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24による枠形状が維持される。
【0034】
前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置した後、前記上蓋体31に接続されているプレス装置によって、前記上蓋体31を下方に押して前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24に充填されている発泡性樹脂組成物48を加圧すると共に、前記ベース体11に設けられている加熱手段によって前記発泡性樹脂組成物48を加熱する。前記加熱温度は、前記架橋剤が架橋反応を起こすことができ、かつ前記発泡剤が分解する温度とされる。通常の加熱温度として130〜170℃を挙げる。また、前記加圧の程度は、前記発泡性樹脂組成物48の発泡圧で上蓋体が押し上げられない圧力とされる。通常の加圧として510mm角熱盤使用の場合で2〜15MPaを挙げる。
【0035】
前記加熱、加圧下における前記架橋剤の分解及び発泡反応の進行によって、前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24内では、前記発泡性樹脂組成物から架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が形成され、前記加圧により、圧縮された状態で前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24内に閉じ込められた状態となる。
【0036】
その後、前記加熱を停止すると共に前記加圧を解除し、図12及び図13に示すように前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24の上方へ離す。それによって、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22と前記上蓋体31に形成されている前記第2係合手段45の係合が解除され、前記加圧解除による架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張によって、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドする。また、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22における互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へのスライドによって、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24から分離するため、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドするのとほぼ同時に、前記第1〜第4分割スライド体21〜24に形成されている前記第1係合手段41の係合が全て解除され、前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張に応じて、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K3、K4(枠形状の外方)へスライドする。
【0037】
前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法においては、前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離すことによって、前記第1係合手段41の係合及び第2係合手段45の係合が解除されて、図12〜図14に示すように、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張に応じて四方へスライドし、前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49が成形金型10から取り出される。
また、製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49は、図15に示すように、側面49aにテーパーが無いものであり、テーパー形状による無駄な部分を除去する作業が不要であり、材料コストを低減することができる。
【0038】
このように、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法によれば、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造することができる。また、本発明の成型金型によれば、金型に高価な複雑な装置を設ける必要がないため、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、容易、安価に製造することができるようになる。
【0039】
なお、前記分割スライド体21〜24が架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張によって外方へスライドする際に、前記分割スライド体21〜24のスライド速度を低減(遅く)するための弾性バネや油圧ダンパなどの膨張スライド速度低減手段51(図14に示す)を、前記ベース体11と各分割スライド体21〜24の間に設けてもよい。これにより、成形金型の疲労を低減して耐久性を高めることができ、また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の急激な膨張によって架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に亀裂が生じるおそれを低減することできる。
【符号の説明】
【0040】
10 成形金型
11 ベース体
21〜24 第1〜第4分割スライド体
26 成形部
31 上蓋体
41 第1係合手段
45 第2係合手段
48 発泡性樹脂組成物
49 架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法とそれに用いられる成形金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法として、加圧一段発泡法がある。加圧一段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤を配合して混練機で混練し、得られた発泡性樹脂組成物を成形金型に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、次に成形金型を開放することにより一気に膨張させて成形金型から架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を飛び出させるものである。
【0003】
前記成形金型は、開放時における架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の膨張により架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が取り出せなくなるのを防ぐため、図16に示すように、下型61の側壁63にテーパー(外方へ傾斜した面)を形成して上型71を開けた際に、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体81が自然に下型から飛び出すように構成されている。
しかし、側壁にテーパーを有する成形金型を用いて製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体81は、図17に示すように、側面83がテーパーとなっているため、側面が垂直な正寸のブロックとするためには、側面83の不要なテーパー部分84を除去しなければならず、後加工が面倒のみならず、材料のロスが多くなる問題がある。
【0004】
なお、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法には、一段発泡法以外に二段発泡法がある。二段発泡法は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤、架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を金型に充填し、加圧下、加熱して発泡剤の分解を抑え、あるいは分解ガスをポリオレフィン系樹脂に保持させた状態で架橋反応を進め、冷却固化した後、常圧下でさらに加熱して膨張発泡させるものである。前記二段発泡法によれば、発泡を二段に分けることで、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の側面のテーパー部分を少なくすることが可能であるが、一段発泡法に比べて製造作業が複雑になると共に製造設備費が高価になる問題があり、製品コストが上昇する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−146510号公報
【特許文献2】特開昭62−21526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造する方法及びその製造方法に用いる成形金型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、前記成形金型は、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状とされた分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、前記枠形状に組み合わされた分割スライド体内の成形部に前記発泡性樹脂組成物を充填し、前記上蓋体で蓋をして加熱、加圧することにより前記発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体を離すと共に、複数の前記分割スライド体を分離させて前記枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を前記成形金型から取り出すことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して、複数の前記分割スライド体が分離し前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除されて、複数の前記分割スライド体を分離可能にすると共に前記枠形状の外方へスライド可能とする係合手段を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられる成形金型において、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状の分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除され、前記係合状態では複数の前記分割スライド体が分離して前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記係合解除により複数の前記分割スライド体が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項3において、前記枠形状が長方形又は正方形からなり、複数の前記分割スライド体は、対向する第1分割スライド体及び第2分割スライド体と、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体に対して直交する方向で対向する第3分割スライド体及び第4分割スライド体とで構成され、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体とにより前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が挟まれた状態となり、前記係合手段は、前記第1〜前記第4分割スライド体において前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられ、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされることにより係合して前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを阻止し、一方、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることにより係合が解除されて前記第3及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向へスライドすることを可能にする第1の係合手段と、前記上蓋体と前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体とに設けられ、前記枠形状に組み合わされた前記第1〜前記第4分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記上蓋体が前記枠形状の前記第1〜前記第4分割スライド体から離れることにより係合が解除されて前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを可能にする第2の係合手段と、よりなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1及び2の発明によれば、成形金型内の成形部に発泡性樹脂組成物を充填して加熱、加圧し、発泡性樹脂組成物の発泡剤の分解及び架橋反応を進行させた後に、枠形状の分割スライド体から上蓋体を離し、複数の分割スライド体を枠形状の外方へスライドさせ、分離させるため、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、分割スライド体にテーパーを設けなくても成形金型から取り出すことができ、側面にテーパーによる無駄部分の無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造することができる。
【0012】
請求項3及び4の発明によれば、簡単な型構造で側面にテーパーによる無駄部分の無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る成形金型の平面図である。
【図2】図1の成形金型の第1〜第4分割スライド体が枠形状に組み合わされた状態について、上蓋体を除いて示す平面図である。
【図3】図1の成形金型の第1〜第4分割スライド体が枠形状の外方へスライドして分離した状態について、上蓋体を除いて示す平面図である。
【図4】図1の成形金型の上蓋体を離した状態のA1〜A3の各断面を示す図である。
【図5】図1の成形金型の上蓋体を離した状態のB1〜B3の各断面を示す図である。
【図6】図1の成形金型の上蓋体を閉じた状態のA1〜A3の各断面を示す図である。
【図7】図1の成形金型の上蓋体を閉じた状態のB1〜B3の各断面を示す図である。
【図8】図1の成形金型に発泡性樹脂組成物を充填した状態を示す平面図である。
【図9】図1の成形金型に発泡性樹脂組成物を充填後上蓋体を閉じた状態を示す平面図である。
【図10】図9のC1〜C3の各断面を示す図である。
【図11】図9のD1〜D3の各断面を示す図である。
【図12】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態のC1〜C3の各位置の断面を示す図である。
【図13】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態のD1〜D3の各位置の断面を示す図である。
【図14】加圧、加熱後に上蓋を上昇させた状態を上蓋を除去して示す平面図である。
【図15】図1の成形金型を用いて製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の斜視図である。
【図16】従来の成形金型を示す断面図である。
【図17】従来の製造方法で得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。まず、本発明の一実施形態の成形金型10について図1〜図7を用いて説明する。
成形金型10は、底面に対して側面が略直角となってテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、公知の加圧一段発泡法を利用して製造するための成形金型であり、ベース体11と複数の分割スライド体21、22、23、24と上蓋体31とよりなる。
ベース体11は、成型金型10の下型に相当するものであり、上面が略平坦な平板からなる。前記ベース体11には、図示しない加熱手段が設けられ、所定温度に加熱可能となっている。前記加熱手段としては、例えば、前記ベース体11に蒸気流路を形成し、外部の蒸気供給手段に前記ベース体の蒸気流路を接続してベース体11を加熱する方法や、前記ベース体に電熱ヒータ等を設けて加熱する方法が挙げられる。図示のベース体11は、略長方形からなり、上面111に前記分割スライド体21〜24がスライド可能に設けられる。
【0015】
複数の前記分割スライド体21〜24は、前記成形金型10において、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の側面を形成する枠型に相当するものであり、互いに対向する第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22と、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22に対して直交する方向で互いに対向する第3分割スライド体23及び第4分割スライド体24とで構成され、組み合わされることによって枠形状となる。前記第1分割スライド体21の内側側面211、前記第2分割スライド体22の内側側面221、前記第3分割スライド体23の内側側面231及び前記第4分割スライド体24の内側側面241は、それぞれ前記ベース体11の上面111に対して垂直になっている。
【0016】
前記枠形状に組み合わされた前記第1〜第4分割スライド体21〜24によって包囲される部分が成形部26となる。前記枠形状は、正方形又は長方形が好ましく、図示の例では、図2に示すように所定寸法の長方形となっている。前記第1〜第4分割スライド体21〜24は、前記枠形状に組み合わされた際に前記ベース体11の上面中央上に前記成形部26が形成されるように前記ベース体11上に配置される。また、図示の例は、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体21の一端部21aと前記第2分割スライド体22の一端部22a間に、前記第3分割スライド体23が挟まれて位置すると共に、前記第1分割スライド体21の他端部21bと前記第2分割スライド体22の他端部22b間に、前記第4分割スライド体24が挟まれて位置する。なお、前記第1分割スライド体21の一端部21aと前記第2分割スライド体22の一端部22aは互いに対向する端部であり、一方、前記第1分割スライド体21の他端部21bと前記第2分割スライド体22の他端部22bは、互いに対向する端部である。
【0017】
また、前記第1〜第4分割スライド体21〜24は、互いに対向する分割スライド体間の間隔(すなわち第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22の間隔、及び前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24の間隔)を広げる方向K1〜K4からなる前記枠形状の外方へスライド可能に、前記ベース体11の上面111に設けられる。なお、前記第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22のスライド方向と前記第3分割スライド体23及び第4分割スライド体24のスライド方向は、直交方向となっている。前記第1〜第4分割スライド体21〜24の底面には、スライドガイド用突部21c〜24cが形成され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライド範囲と対応する前記ベース体11の上面111に形成されたスライドガイド用溝111c〜114cに、前記スライドガイド用突部21c〜24cがスライド可能に嵌り、前記スライドガイド用溝111c〜114cによって前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライド方向を規制している。なお、前記スライドガイド用溝111c〜114cの内端111d〜114dは、対応する分割スライド体が前記スライドガイド用溝の内端111d〜114dに衝突し、それ以上内方(互いに対向する分割スライド体の間隔を狭める方向)へスライド不能となったときに、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が前記枠形状に組み合わされるように形成されている。
【0018】
前記上蓋体31は、前記成型金型10の上型に相当するものであり、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置された際に前記成形部26に蓋をすることが可能な大きさからなる。なお、前記上蓋体31は、公知のプレス装置によって昇降可能とされており、下降によって前記第1〜第4分割スライド体21〜24内の成形部26に蓋をすると共に加圧することができ、一方、上昇によって前記第1〜第4分割スライド体21〜24から離れることができるようになっている。
【0019】
前記上蓋体31と前記第1〜第4分割スライド体21〜24には、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状とされた第1〜第4分割スライド体21〜24から前記上蓋体31が離れた際に係合が解除され、係合状態では前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離して前記枠形状の外方(すなわち、互いに対向する分割スライド体の間隔を広げる方向K1〜K4)へスライドするのを阻止し、一方、係合解除により前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段が設けられている。前記係合手段は第1係合手段41と第2係合手段45で構成されている。
【0020】
前記第1係合手段41は、前記第1〜前記第4分割スライド体21〜24において、前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられている。図示の例では、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211b及び前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bに形成された係合凹部41a、41b、41c、41dと、前記第3分割スライド体23の端面23a、23b及び前記第4分割スライド体24の端面24a、24bに形成された係合凸部41e、41f、41g、41hで構成されている。
【0021】
前記第1分割スライド体21に形成された係合凹部41a、41bと、前記第3分割スライド体23に形成された係合凸部41e及び前記第4分割スライド体24に形成された係合凸部41gは、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いに接近する方向にスライドして、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211bと前記第3分割スライド体23の端面23a及び前記第4分割スライド体24の端面24aが当接することにより、前記係合凹部41a、41bに前記係合凸部41e、41gが嵌って係合し、一方、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライドして、前記第1分割スライド体21の端部21a、21bにおける内側側面211a、211bと前記第3分割スライド体23の端面23a及び前記第4分割スライド体24の端面24aが離れることにより、前記係合凹部41a、41bから前記係合凸部41e、41gが外れて係合が解除される。
【0022】
同様に、前記第2分割スライド体22に形成された係合凹部41c、41dと、前記第3分割スライド体23に形成された係合凸部41f及び前記第4分割スライド体24に形成された係合凸部41hは、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いに接近する方向にスライドして、前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bと前記第3分割スライド体23の端面23b及び前記第4分割スライド体24の端面24bが当接することにより、前記係合凹部41c、41dに前記係合凸部41f、41hが嵌って係合し、一方、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)にスライドして、前記第2分割スライド体22の端部22a、22bにおける内側側面221a、221bと前記第3分割スライド体23の端面23b及び前記第4分割スライド体24の端面24bが離れることにより、前記係合凹部41c、41dから前記係合凸部41f、41hが外れて係合が解除される。
【0023】
前記第1分割スライド体21及び第2分割スライド体22と前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24に形成されている前記第1係合手段41の全ての係合が解除されることにより、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向(前記K3方向及びK4方向)へスライド可能になる。
【0024】
前記第2係合手段45は、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の上面212、222に形成された段部45a、45bと、前記上蓋体31の下面31aに形成された段部45c、45dとで構成されている。前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bは、図4のA2−A2断面図に示すように、分割スライド体の内方側451a、451bが高くなった階段状からなり、一方、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記上蓋体31の内方側451c、451dが高くなった(窪んだ)階段状からなる。前記第2係合手段45は、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bにおける高くなった内方側451a、451b部分が、前記上蓋体31の段部45c、45dにおける高くなった(窪んだ)内方側451c、451dの部分に位置することにより係合し、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライドするのを阻止する。一方、前記上蓋体31が、前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離れることによって、前記第2係合手段45の係合が解除され、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向(前記K1方向及びK2方向)へスライド可能になる。
【0025】
前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bと、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記枠形状に組み合わされた第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置されて前記成形部26を塞いだ際に係合する位置に設けられている。また、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の段部45a、45bと、前記上蓋体31の段部45c、45dは、前記上蓋体31が、前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離れる際に、係合解除がスムーズに行われるように、図示の例では、段差部分がテーパーとなっている。
【0026】
前記の構成からなる成形金型10においては、枠形状に組み合わされた前記第1〜第4分割スライド体21〜24に前記上蓋体31が載置された状態では、前記第2係合手段45が係合して、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライドするのが阻止され、また、前記第1係合手段41が係合して、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(すなわち枠形状の外方)へスライドするのが阻止され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が組み合わされた枠形状も維持される。一方、前記枠形状に組み合わされた第1〜第4分割スライド体21〜24から前記上蓋体31が上方へ離れた状態では、前記第2係合手段45の係合が解除されて、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライド可能となり、また、第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(すなわち枠形状の外方)へスライドすることにより、前記第1係合手段41の係合が解除されて、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(すなわち枠形状の外方)へスライド可能となり、前記第1〜第4分割スライド体21〜24のスライドにより前記第1〜第4分割スライド体21〜24が分離した状態になる。
【0027】
次に、前記成形金型10を用いる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法について説明する。
まず、前記上蓋体31を前記第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離した状態で、図2及び図4、図5に示すように、前記成形金型10の前記第1〜第4分割スライド体21〜24を枠形状に組み合わせ、前記第1〜第4分割スライド体21〜24で包囲される成形部26を形成する。
【0028】
前記枠形状にする際、最初に、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24を、互いの間隔を狭くする方向(すなわち接近する方向)へスライドさせて、前記第3分割スライド体23を、前記スライドガイド用突部23cが前記ベース体11のスライドガイド用溝113cの内端113dと衝突してスライドが阻止される位置にすると共に、前記第4分割スライド体24を、前記スライドガイド用突部24cが前記ベース体11のスライドガイド用溝114cの内端114dと衝突して停止する位置とする。次に、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22を、互いの間隔を狭くする方向(すなわち接近する方向)にスライドさせて、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24の端部と当接させ、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22の係合凹部41a、41b、41c、41dと、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24の係合凸部41e、41f、41g、41hからなる第1係合手段41を係合させる。
【0029】
次に、前記第1〜第4分割スライド体で包囲された前記成形部26に、図8に示すように混練した発泡性樹脂組成物48を充填する。前記発泡性樹脂組成物48は、ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤、さらには必要に応じて添加剤を配合して、混練機で混練したものである。なお、前記発泡性樹脂組成物は、押出機に供給して混練し、押し出されたものを使用することができる。
【0030】
前記発泡性樹脂組成物におけるポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等、公知のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。
【0031】
前記発泡剤は、従来より架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に使用されている熱分解型発泡剤を使用することができ、特に限定されるものではない。前記発泡剤として、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラジンカルボンアミド等を挙げることができる。前記発泡剤の配合量は、製造する架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に求められる発泡倍率との関係で決定される。通常は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して2〜8重量部とされる。
【0032】
前記架橋剤は、従来より架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に使用されているものを使用することができ、特に限定されるものではない。前記架橋剤として、例えば、イソブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等を挙げることができる。前記架橋剤の配合量は、配合量が多いと発泡が困難となり、一方、少ないと架橋度が不足して発泡時に気泡が破裂しやすくなるため、通常は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.3〜3.0重量部とされる。
必要に応じて配合される添加剤としては、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の用途等に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を挙げることができる。
【0033】
混練された発泡性樹脂組成物48を前記成形部26に充填した後、図9〜図11に示すように、前記上蓋31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置し、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22と前記上蓋体31に形成されている前記第2係合手段45を係合させる。前記第2係合手段45の係合により、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドすることが阻止され、また、前記第1係合手段41の係合によって、前記第3分割スライド体23と前記第4分割スライド体24が互いの間隔を広げる方向K3、K4(枠形状の外方)へスライドすることが阻止され、前記第1〜第4分割スライド体21〜24による枠形状が維持される。
【0034】
前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24上に載置した後、前記上蓋体31に接続されているプレス装置によって、前記上蓋体31を下方に押して前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24に充填されている発泡性樹脂組成物48を加圧すると共に、前記ベース体11に設けられている加熱手段によって前記発泡性樹脂組成物48を加熱する。前記加熱温度は、前記架橋剤が架橋反応を起こすことができ、かつ前記発泡剤が分解する温度とされる。通常の加熱温度として130〜170℃を挙げる。また、前記加圧の程度は、前記発泡性樹脂組成物48の発泡圧で上蓋体が押し上げられない圧力とされる。通常の加圧として510mm角熱盤使用の場合で2〜15MPaを挙げる。
【0035】
前記加熱、加圧下における前記架橋剤の分解及び発泡反応の進行によって、前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24内では、前記発泡性樹脂組成物から架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が形成され、前記加圧により、圧縮された状態で前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24内に閉じ込められた状態となる。
【0036】
その後、前記加熱を停止すると共に前記加圧を解除し、図12及び図13に示すように前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24の上方へ離す。それによって、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22と前記上蓋体31に形成されている前記第2係合手段45の係合が解除され、前記加圧解除による架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張によって、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドする。また、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22における互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へのスライドによって、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、前記第3分割スライド体23及び前記第4分割スライド体24から分離するため、前記第1分割スライド体21及び前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K1、K2(枠形状の外方)へスライドするのとほぼ同時に、前記第1〜第4分割スライド体21〜24に形成されている前記第1係合手段41の係合が全て解除され、前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張に応じて、前記第1分割スライド体21と前記第2分割スライド体22が、互いの間隔を広げる方向K3、K4(枠形状の外方)へスライドする。
【0037】
前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法においては、前記上蓋体31を前記枠形状の第1〜第4分割スライド体21〜24から上方へ離すことによって、前記第1係合手段41の係合及び第2係合手段45の係合が解除されて、図12〜図14に示すように、前記第1〜第4分割スライド体21〜24が架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張に応じて四方へスライドし、前記架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49が成形金型10から取り出される。
また、製造された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49は、図15に示すように、側面49aにテーパーが無いものであり、テーパー形状による無駄な部分を除去する作業が不要であり、材料コストを低減することができる。
【0038】
このように、本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法によれば、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を容易、安価に製造することができる。また、本発明の成型金型によれば、金型に高価な複雑な装置を設ける必要がないため、側面にテーパーの無い架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を、容易、安価に製造することができるようになる。
【0039】
なお、前記分割スライド体21〜24が架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体49の膨張によって外方へスライドする際に、前記分割スライド体21〜24のスライド速度を低減(遅く)するための弾性バネや油圧ダンパなどの膨張スライド速度低減手段51(図14に示す)を、前記ベース体11と各分割スライド体21〜24の間に設けてもよい。これにより、成形金型の疲労を低減して耐久性を高めることができ、また、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の急激な膨張によって架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に亀裂が生じるおそれを低減することできる。
【符号の説明】
【0040】
10 成形金型
11 ベース体
21〜24 第1〜第4分割スライド体
26 成形部
31 上蓋体
41 第1係合手段
45 第2係合手段
48 発泡性樹脂組成物
49 架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、
前記成形金型は、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状とされた分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、
前記枠形状に組み合わされた分割スライド体内の成形部に前記発泡性樹脂組成物を充填し、前記上蓋体で蓋をして加熱、加圧することにより前記発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、
その後に前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体を離すと共に、複数の前記分割スライド体を分離させて前記枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を前記成形金型から取り出すことを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して、複数の前記分割スライド体が分離し前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除されて、複数の前記分割スライド体を分離可能にすると共に前記枠形状の外方へスライド可能とする係合手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられる成形金型において、
ベース体と、
前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、
前記枠形状の分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、
前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除され、前記係合状態では複数の前記分割スライド体が分離して前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記係合解除により複数の前記分割スライド体が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段を設けたことを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形金型。
【請求項4】
前記枠形状が長方形又は正方形からなり、
複数の前記分割スライド体は、対向する第1分割スライド体及び第2分割スライド体と、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体に対して直交する方向で対向する第3分割スライド体及び第4分割スライド体とで構成され、
前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体とにより前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が挟まれた状態となり、
前記係合手段は、前記第1〜前記第4分割スライド体において前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられ、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされることにより係合して前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを阻止し、一方、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることにより係合が解除されて前記第3及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向へスライドすることを可能にする第1の係合手段と、
前記上蓋体と前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体とに設けられ、前記枠形状に組み合わされた前記第1〜前記第4分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記上蓋体が前記枠形状の前記第1〜前記第4分割スライド体から離れることにより係合が解除されて前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを可能にする第2の係合手段と、
よりなることを特徴とする請求項3に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形金型。
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において、
前記成形金型は、ベース体と、前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、前記枠形状とされた分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、
前記枠形状に組み合わされた分割スライド体内の成形部に前記発泡性樹脂組成物を充填し、前記上蓋体で蓋をして加熱、加圧することにより前記発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、
その後に前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体を離すと共に、複数の前記分割スライド体を分離させて前記枠形状の外方へスライドさせることにより、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を前記成形金型から取り出すことを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して、複数の前記分割スライド体が分離し前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除されて、複数の前記分割スライド体を分離可能にすると共に前記枠形状の外方へスライド可能とする係合手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法。
【請求項3】
ポリオレフィン系樹脂に発泡剤及び架橋剤を配合して混練した発泡性樹脂組成物を成形金型内の成形部に充填し、加熱、加圧することにより発泡剤の分解及び架橋反応を進行させ、その後に前記成形金型を開放し、膨張した架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を得る架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造に用いられる成形金型において、
ベース体と、
前記ベース体の上面にスライド可能に設けられて枠形状に組み合わせ可能とされると共に前記枠形状の状態から分離して外方へスライド可能とされた複数の分割スライド体と、
前記枠形状の分割スライド体上に載置されて前記分割スライド体で包囲される成形部に蓋をする上蓋体とよりなり、
前記分割スライド体と前記上蓋体には、前記枠形状の分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合し、一方、前記枠形状の分割スライド体から前記上蓋体が離れた際に前記係合が解除され、前記係合状態では複数の前記分割スライド体が分離して前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記係合解除により複数の前記分割スライド体が分離及び前記枠形状の外方へスライド可能になる係合手段を設けたことを特徴とする架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形金型。
【請求項4】
前記枠形状が長方形又は正方形からなり、
複数の前記分割スライド体は、対向する第1分割スライド体及び第2分割スライド体と、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体に対して直交する方向で対向する第3分割スライド体及び第4分割スライド体とで構成され、
前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされた状態では、前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体とにより前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が挟まれた状態となり、
前記係合手段は、前記第1〜前記第4分割スライド体において前記枠形状に組み合わされた際に互いに当接する部位に設けられ、前記第1〜前記第4分割スライド体が前記枠形状に組み合わされることにより係合して前記第3分割スライド体及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを阻止し、一方、前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることにより係合が解除されて前記第3及び前記第4分割スライド体が前記第3分割スライド体と前記第4分割スライド体の間隔を広げる方向へスライドすることを可能にする第1の係合手段と、
前記上蓋体と前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体とに設けられ、前記枠形状に組み合わされた前記第1〜前記第4分割スライド体に前記上蓋体が載置された際に互いに係合して前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドするのを阻止し、一方、前記上蓋体が前記枠形状の前記第1〜前記第4分割スライド体から離れることにより係合が解除されて前記第1分割スライド体及び前記第2分割スライド体が前記第1分割スライド体と前記第2分割スライド体の間隔を広げる方向からなる前記枠形状の外方へスライドすることを可能にする第2の係合手段と、
よりなることを特徴とする請求項3に記載の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の成形金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−178005(P2011−178005A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43664(P2010−43664)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
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