説明

架橋性ケイ素化合物、その製造方法、架橋性組成物、シロキサンポリマー、シリコーン膜、該架橋性ケイ素化合物の原料となるケイ素化合物、及びその製造方法

【課題】シルセスキオキサン骨格をケイ素系重合体の主鎖に含み、かつ耐熱性に優れるシリコーン膜、及びそれに係る技術を提供する。
【解決手段】
他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基を有していてもよいシルセスキオキサン基と前記架橋性官能基を有していてもよいシロキサン基とからなる、架橋性官能基を有する架橋性ケイ素化合物を提供し、この化合物における架橋によるポリマーを提供する。また前記架橋性ケイ素化合物の原料となるシルセスキオキサン基を含むケイ素化合物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性ケイ素化合物、その製造方法、それを含有する架橋性組成物、それの架橋によるシロキサンポリマー及びシリコーン膜、その原料となるケイ素化合物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シルセスキオキサン骨格を含むポリマーは、特異な構造を有し、またそれによる特異な効果が期待されるため、様々な分野から注目されている。このようなシルセスキオキサン骨格を含むポリマーには、シルセスキオキサン骨格を主鎖に含むケイ素系重合体が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このケイ素系重合体は、透明性、皮膜形成性等に優れるフィルム、シート及び成形体に使用することができる。しかしながら前記ケイ素系重合体は、熱可塑性を有することから、成形体の耐熱性を要する分野への応用が制限される。このように前記ケイ素系重合体には、成形体の耐熱性において検討の余地が残されている。
【特許文献1】特開2006−22207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、シルセスキオキサン骨格をケイ素系重合体の主鎖に含み、かつ耐熱性に優れるシリコーン膜、及びそれに係る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、シルセスキオキサン骨格又はこれを含むケイ素系重合体に反応性官能基を持たせることにより、二次架橋を可能とさせた架橋性シロキサンポリマー、及び前記架橋性シロキサンポリマーの末端が架橋した、全シロキサンポリマーで形成されるシリコーン膜を提供する。すなわち本発明は下記[1]〜[22]で表される発明を提供する。
【0005】
[1] 下記式(1)又は(2)で表されるシルセスキオキサン基と、下記式(3)で表される基及び下記式(4)で表される基の一方又は両方と、からなる架橋性ケイ素化合物。
【0006】
【化1】

【0007】
式(1)及び式(2)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表し;
式(1)〜式(4)中、R1は独立して、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
式(4)中、R2は独立して水酸基、前記架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
前記アリール又はアリールアルキルの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O
−、炭素数5〜20のシクロアルキレン又はフェニレンで置き換えられてもよく;
前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、その炭素数は1〜10であり、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;かつ、R1及びR2の一方又は両方が1個以上の前記架橋性官能基を含む。
【0008】
[2] 下記式(5)で表される[1]記載の架橋性ケイ素化合物。
【0009】
【化2】

【0010】
式(5)中、mは独立して0〜300の整数を表し;nは1〜1,000の整数を表し;R0は前記式(1)及び(2)のR0と同じであり;R1は前記式(1)〜(4)のR1と同じであり;かつ、R1が1個以上の前記架橋性官能基を含む。
【0011】
[3] 前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の架橋性ケイ素化合物。
【0012】
[4] R0がフェニルであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物。
【0013】
[5] 下記式(6)で表される化合物に、下記式(7)で表される化合物及び下記式(8)で表される化合物の一方又は両方を反応させることを含む[1]に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。ただし下記式(6)〜(8)中のR1及びR2の一方又は両方が1個以上の前記架橋性官能基を含む。
【0014】
【化3】

【0015】
式(6)中、
0は炭素数5〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表し;
3は独立して水素、−Si−(R22−OH、又は−(Si−(R22−O)l−Si−(R22−OH(lは独立して0〜30の整数を表す)を表し;
1及びR2は独立して前記架橋性官能基、又は炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
前記アリール又はアリールアルキルの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、炭素数5〜20のシクロアルキレン又はフェニレンで置き換えられてもよく;
前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、その炭素数は1〜10であり、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
【0016】
【化4】

【0017】
式(7)中、
kは独立して0〜30の整数を表し;
1は前記式(6)のR1と同じであり;
4は、独立して、前記架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、ハロゲン、炭素数1〜15のアシル、炭素数1〜15のアルコキシル、炭素数1〜15のオキシム、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアミド、置換基を有していてもよいアミノキシ、又は置換基を有していてもよい炭素数2〜15のビニルアルコール残基を表し;
置換基を有するアミノ及びアミノキシにおける置換基の炭素数は1〜15である。
【0018】
【化5】

【0019】
式(8)中、hは3〜6を表し;R1は前記式(6)のR1と同じである。
【0020】
[6] 前記式(6)で表される化合物に、前記式(7)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする[5]に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【0021】
[7] 前記式(6)で表される化合物に、前記式(8)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする[5]に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【0022】
[8] 前記式(6)で表される化合物に、前記式(7)で表される化合物及び前記式(8)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする[5]に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【0023】
[9] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物と、この架橋性ケイ素化合物と架橋反応を生じることができる架橋性化合物とから得られるシロキサンポリマー。
【0024】
[10] 前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有し、前記架橋性化合物が前記架橋性ケイ素化合物中の水酸基と縮合反応を生じる基又は原子を3以上有する縮合架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする[9]に記載のシロキサンポリマー。
【0025】
[11] 前記架橋性ケイ素化合物が、前記架橋性官能基としての水素を有する第一の架橋性ケイ素化合物であり、前記架橋性化合物が、前記架橋性官能基としての炭素数2〜40のアルケニルを有する第二の架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする[9]に記載のシロキサンポリマー。
【0026】
[12] [1]〜[4]のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物と、この架橋性ケイ素化合物と架橋反応を生じることができる架橋性化合物とを含有する架橋性組成物。
【0027】
[13] 前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有し、前記架橋性化合物が前記架橋性ケイ素化合物中の水酸基と縮合反応を生じる基又は原子を3以上有する縮合架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする[12]に記載の架橋性組成物。
【0028】
[14] 前記架橋性ケイ素化合物が、前記架橋性官能基としての水素を有する第一の架橋性ケイ素化合物であり、前記架橋性化合物が、前記架橋性官能基としての炭素数2〜40のアルケニルを有する第二の架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする[12]に記載の架橋性組成物。
【0029】
[15] ヒドロシリル化触媒をさらに含有することを特徴とする[14]に記載の架橋性組成物。
【0030】
[16] [12]〜[15]のいずれか一項に記載の架橋性組成物の膜が硬化してなるシリコーン膜。
【0031】
[17] 下記式(10)で表されるケイ素化合物。
【0032】
【化6】

【0033】
式(10)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロア
ルキルを表し;R5は独立して前記架橋性官能基を表す。
【0034】
[18] 前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする[17]に記載のケイ素化合物。
【0035】
[19] R0がフェニルであることを特徴とする[17]又は[18]に記載のケイ素化合物。
【0036】
[20] 下記式(11)で表される化合物と、下記式(12)で表される化合物を反応させることを含む[17]〜[19]のいずれか一項に記載のケイ素化合物を製造する方法。
【0037】
【化7】

【0038】
式(11)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表す。
【0039】
【化8】

【0040】
式(12)中、R5は前記架橋性官能基を表し、Xはハロゲン又は水素を表す。
【0041】
[21] 前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする[20]に記載のケイ素化合物の製造方法。
【0042】
[22] R0がフェニルであることを特徴とする[20]又は[21]に記載のケイ素化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0043】
本発明は、シルセスキオキサン骨格又はこれを含むケイ素系重合体に反応性官能基を持たせることにより、二次架橋を可能とさせた架橋性ケイ素化合物、及び前記架橋性ケイ素化合物が架橋して硬化したシリコーン膜を提供する。本発明は、シルセスキオキサン骨格をケイ素系重合体の主鎖に含み、かつ耐熱性に優れるシリコーン膜を提供することができ
る。また本発明では、実用化の観点で優れている架橋性ケイ素化合物の製造方法を提供し、これにより、この架橋性ケイ素化合物の架橋によるシロキサンポリマー及びシリコーン膜の実材料への応用が容易となる。前記シロキサンポリマー及びシリコーン膜の用途としては、光学用途(樹脂、フィルム、LED封止材、コンタクトレンズ)が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
本発明の架橋性ケイ素化合物は、下記式(1)又は(2)で表されるシルセスキオキサン基と、下記式(3)で表される基及び下記式(4)で表される基の一方又は両方と、からなる。前記架橋性ケイ素化合物は、一種でも二種以上でもよい。
【0045】
【化9】

【0046】
式(1)及び式(2)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表す。R0のうちの任意の2つは同じであっても異なっていてもよい。R0は、光学特性等の諸特性を得る観点、及び合成の容易性の観点から、フェニルであることが好ましい。
【0047】
式(1)〜式(4)中、R1は独立して、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数
1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表す。
【0048】
前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。また、前記アリール又はアリールアルキルの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、炭素数5〜20のシクロアルキレン又はフェニレンで置き換えられてもよい。さらに、前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、その炭素数は1〜10であり、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。
【0049】
前記架橋性官能基は、他の化合物中のケイ素に付加することができる、架橋性ケイ素化合物中のケイ素に結合している官能基である。前記架橋性官能基は、一つの架橋性ケイ素化合物において、全て同じであってもよいし異なっていてもよい。前記架橋性官能基としては、例えば水素又は炭素数2〜40のアルケニルが挙げられ、このときの特定の基としては、例えば炭素数2〜40のアルケニル又は水素が挙げられる。前記架橋性官能基は、合成の容易性の観点から、水素又はビニルであることが好ましい。
【0050】
1は、全て同じであってもよいし異なっていてもよい。前記架橋性官能基を除くR1としては、例えば合成の容易性の観点から、メチルであることが好ましい。
【0051】
式(4)中、R2は独立して水酸基、前記架橋性官能基、前記炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい前記炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい前記炭素数7〜20のアリールアルキルを表す。R2もR1と同様に、全て同じであってもよいし異なっていてもよい。また、前記架橋性官能基を除くR2としては、例えば合成の容易性の観点から、メチルであることが好ましい。
【0052】
1及びR2の一方又は両方が1個以上の前記架橋性官能基を含む。前記架橋性官能基は、前記架橋性ケイ素化合物において、均等に配置されていてもよいし、偏って配置されていてもよい。前記架橋性ケイ素化合物における前記架橋性官能基の数は、架橋性官能基による架橋物であるシロキサンポリマーの所望の物性や用途に応じて適宜決めることができる。例えば前記架橋性官能基の数は、前記シロキサンポリマーの膜の機械的強度を高める観点から、分子量10,000あたり1〜60であることが好ましく、1〜30であることがより好ましく、1〜16であることがさらに好ましい。
【0053】
前記架橋性ケイ素化合物としては、例えば、前記架橋性官能基を有するシルセスキオキサン基と前記架橋性官能基を有さないシロキサン基とからなる化合物、前記架橋性官能基を有さないシルセスキオキサン基と前記架橋性官能基を有するシロキサン基とからなる化合物、前記架橋性官能基を有するシルセスキオキサン基と前記架橋性官能基を有するシロキサン基とからなる化合物、が挙げられる。前記架橋性官能基を有するシロキサン基としては、例えば、前記架橋性官能基を有する式(3)の基と前記架橋性官能基を有さない式(4)の基とからなる基、前記架橋性官能基を有さない式(3)の基と前記架橋性官能基を有する式(4)の基とからなる基、及び、前記架橋性官能基を有する式(3)の基と前記架橋性官能基を有する式(4)の基とからなる基、が挙げられる。
【0054】
前記架橋性ケイ素化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)で2,000〜200,000であることが好ましく、5,000〜100,000であることがより好ましく、10,000〜50,000であることがさらに好ましい。また前記架橋性ケイ素化合物におけるシルセスキオキサン基の数は、架橋によって高い硬度のシロキサンポリマーを得る観点から、分子量10,000あたり1〜8であることが好ましく、4〜8であることがより好ましく、6〜8であることがさらに好ましい。
【0055】
より具体的に、前記架橋性ケイ素化合物としては、例えば下記式(5)で表される化合物が挙げられる。式(5)中のR1は1個以上の前記架橋性官能基を含む。
【0056】
【化10】

【0057】
式(5)中、mは独立して0〜300の整数を表し、nは1〜1,000の整数を表す。mは、合成の容易さ、及びシルセスキオキサン部分とシロキサン部分の比率が式(5)の化合物の物性に与える影響の観点から、0〜300であることが好ましく、1〜100であることがより好ましく、2〜30であることがさらに好ましい。また、nは、合成の容易さ、及び架橋後のシロキサンポリマーの物性の観点から、1〜1,000であることが好ましく、3〜200であることがより好ましく、5〜100であることがさらに好ましい。
【0058】
前記架橋性ケイ素化合物は、下記式(6)で表される化合物に、下記式(7)で表される化合物及び下記式(8)で表される化合物の一方又は両方を反応させることで得られる。
【0059】
【化11】

【0060】
式(6)中、R0は前記式(1)及び2のR0と同じである。また式(6)中、R3は独立して水素、−Si−(R22−OH、又は−(Si−(R22−O)l−Si−(R22−OH(lは独立して0〜30の整数を表す)を表す。さらに式(6)中、R1及びR2は、それぞれ、前記式(1)〜(4)のR1及びR2と同じである。式(6)のR3におけるlは、合成の容易さ等の観点から、1〜9であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
【0061】
前記式(7)中、kは独立して0〜30の整数を表し、R1は前記式(6)のR1と同じであり、R4は、独立して、前記架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、ハロゲン、炭素数1〜15のアシル、炭素数1〜15のアルコキシル、炭素数1〜15のオキシム、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアミド、置換基を有していてもよいアミノキシ、又は置換基を有していてもよい炭素数2〜15のビニルアルコール残基を表す。置換基を有するアミノ及びアミノキシにおける置換基の炭素数は1〜15である。
【0062】
式(7)のR3におけるkは、化合物としての入手の容易さの観点から、0〜9であることが好ましく、0〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。
【0063】
4が有していてもよい置換基とは、前記架橋性ケイ素化合物を式(6)及び式(7)で表される化合物の、又は式(6)〜(8)で表される化合物の平衡化反応によって合成する場合の平衡化反応時に末端停止剤として働く置換基、もしくは加水分解によりシラノー
ルを生成してシルセスキオキサン部分とシロキサン結合により結合することが出来る置換基である。このような置換基としては、例えば、末端停止剤として働く置換基としては、前記架橋性官能基、及びアルキルが挙げられ、加水分解によりシラノールを生成する置換基としては、例えばアシル、メトキシ等のアルコキシル、及びオキシムが挙げられる。
【0064】
前記式(8)中、hは3〜6を表し;R1は前記式(6)のR1と同じである。式(8)のhは、化合物の入手の容易さの観点から、3又は4であることが好ましい。
【0065】
例えば、前記式(6)で表される化合物と、前記式(7)で表される化合物との反応は、前記式(5)の架橋性ケイ素化合物を生成する。この反応は下記反応式で表される。この反応は、通常、強酸の存在下、又はトリエチルアミン等の塩基の存在下、50〜150℃で行われる。前記式(5)中のmは、前記鎖状シロキサンの種類によって決めることができる。前記式(5)中のnは、反応条件(温度、式(6)で表される化合物の濃度など)によって調整される。この反応によれば、架橋性官能基を有していてもよいシルセスキオキサン基と、架橋性官能基を有していてもよいシロキサン基とが交互に配置する架橋性ケイ素化合物(5)を得ることができる。
【0066】
【化12】

【0067】
上記の反応において、溶媒を用いて行うことは好ましい。溶媒として、前記式(6)で表される化合物と、前記式(7)で表される化合物の両方を溶解し得る溶媒であって、これらの化合物又は前記架橋性官能基と縮合しない溶媒であれば何でもよい。このような溶媒としては、例えばヘキサンやヘプタン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、及び酢酸エチル等のエステル系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のラクタム系溶媒が挙げられる。前記溶媒は単一の溶媒でもよいし、二以上の溶媒であってもよい。
【0068】
また、前記架橋性ケイ素化合物は、前記式(6)で表される化合物と、前記式(8)で表される化合物とを、50〜150℃で、系内に発生する水を分離しながら反応させることでも得られる。前記式(6)で表される化合物と、前記式(8)で表される化合物との反応は、下記反応式で表される。この反応によれば、架橋性官能基を有していてもよいシルセスキオキサン基と、架橋性官能基を有していてもよいシロキサン基とが非規則的に配置した架橋性ケイ素化合物を得ることができる。
【0069】
【化13】

【0070】
また、この反応においては、末端停止剤としてジシロキサン化合物を用いて行うことができる。この場合、前記架橋性ケイ素化合物は、前記式(6)で表される化合物と、前記式(8)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物とを、50〜150℃で反応させることによって得られる。前記式(6)で表される化合物と、前記式(8)で表される化合物及び前記式(7)で表される化合物との反応は下記反応式で表される。この反応によれば、架橋性官能基を有していてもよいシルセスキオキサン基と、架橋性官能基を有していてもよいシロキサン基とが非規則的に配置し、末端に架橋性官能基を有していてもよい架橋性ケイ素化合物を得ることができる。
【0071】
【化14】

【0072】
前記式(8)で表される化合物を原料として用いる上記の反応は平衡化反応と呼ばれる反応であり、触媒として強酸もしくは強塩基が通常用いられる。本発明における架橋性ケイ素化合物の製造方法では、前述したそれぞれの反応において、シルセスキオキサンの反応中の安定性を考慮すると、触媒としては強酸の方が好ましい。このような触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、フルオロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、活性白土、スルホン酸系イオン交換樹脂が挙げられる。このうち、トリフルオロメタンスルホン酸、活性白土、スルホン酸系イオン交換樹脂がより好ましい。
【0073】
上記の反応において、溶媒を用いて行うことは好ましい。溶媒として、前記式(6)で表される化合物と、前記式(8)で表される化合物の両方を溶解し得る溶媒であって触媒として用いる酸、塩基化合物と反応しない溶媒であれば何でもよい。このような溶媒としては、例えばヘキサンやヘプタン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、が挙げられる。前記溶媒は単一の溶媒でもよいし、二以上の溶媒であってもよい。
【0074】
前記式(6)で表される化合物のうち、R1が前記架橋性官能基である化合物である下記式(10)で表される化合物は、下記式(11)で表される化合物と、下記式(12)で表される化合物とを反応させることで得られる。式(10)及び(11)中、R0は、それぞれ前記式(1)及び(2)のR0と同じであり、式(10)及び(12)中、R5は独立して前記架橋性官能基を表す。
【0075】
【化15】

【0076】
この反応は、通常、トリエチルアミン等の塩基の存在下、−10〜30℃で行われる。これらの反応において、溶媒を用いて行うことは好ましい。溶媒としては、前記式(11)で表される化合物と、前記式(12)で表される化合物の両方を溶解し得る溶媒であっ
て、前記式(10)のケイ素化合物又は前記架橋性官能基と縮合しない溶媒であれば何でもよい。このような溶媒としては、例えば、ヘキサンやヘプタン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)、ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、及び酢酸エチル等のエステル系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のラクタム系溶媒、が挙げられる。前記溶媒は単一の溶媒でもよいし、二以上の溶媒であってもよい。
【0077】
本発明のシロキサンポリマーは、前記架橋性ケイ素化合物と、この架橋性ケイ素化合物と架橋反応を生じることができる架橋性化合物とから得られる。
【0078】
前記架橋性化合物は、一種でも二種以上でもよいし、ケイ素化合物であってもよいし、通常の有機化合物のような非ケイ素化合物であってもよい。また前記架橋性化合物は、架橋性ケイ素化合物の前記架橋性官能基と架橋反応する化合物であってもよいし、架橋性珪素化合物における他の部分と架橋反応する化合物であってもよい。前記架橋性化合物は、前記架橋性ケイ素化合物の種類や前記架橋性ケイ素化合物との架橋の形態に基づいて決めることができる。
【0079】
例えば、前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有する(例えばR2が水酸基であったり、前記式(5)で表される化合物である)場合では、前記架橋性化合物には、前記架橋性ケイ素化合物中の水酸基と縮合反応を生じる基又は原子を3以上有する縮合架橋性ケイ素化合物を用いることができる。このような縮合架橋性ケイ素化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシム)シラン、及びメチルトリアセトキシシランが挙げられる。前記縮合架橋性ケイ素化合物を用いる場合では、例えば、通常の空気等の水存在雰囲気中に室温で架橋性組成物を置くことによって架橋性ケイ素化合物と架橋させることができる。
【0080】
また、例えば、架橋性ケイ素化合物が、架橋性官能基として水素を有する第一の架橋性ケイ素化合物である場合では、前記架橋性化合物には、架橋性官能基として炭素数2〜40のアルケニルを有する第二の架橋性ケイ素化合物を用いることができる。
【0081】
さらに、前記架橋性化合物は、架橋性ケイ素化合物における架橋性官能基やその他の部分と、ラジカル重合等の他の反応機構によって反応する化合物であってもよい。このような架橋性化合物としては、例えば、架橋性ケイ素化合物が架橋性官能基として炭素数2〜40のアルケニルを有する場合における、ビニル基等の不飽和炭化水素基を有する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリルモノマー、及び酢酸ビニル等のビニル系モノマーが挙げられる。
【0082】
前記シロキサンポリマーの構成要素としての前記架橋性ケイ素化合物に対する前記架橋性化合物との比は、得られるシロキサンポリマー及びシリコーン膜の物性の観点から、前記架橋性ケイ素化合物100重量部に対して1〜100であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、5〜20であることがさらに好ましい。
【0083】
前記シロキサンポリマーの重量平均分子量は、原料化合物の合成の容易さ及び得られる前記シロキサンポリマーの物性の観点から、2,000〜1,000,000であることが好ましく、3,000〜200,000であることがより好ましく、5,000〜100,000であることがさらに好ましい。
【0084】
本発明の架橋性組成物は、前記架橋性ケイ素化合物と前記架橋性化合物とを含有する。前記架橋性ケイ素化合物は前記架橋性官能基を有していることから、例えば架橋性官能基としての水素及びアルケニル基の一方及び他方をそれぞれ1つ以上有する二種以上の架橋性ケイ素化合物の混合物は、ヒドロシリル化反応等の架橋反応により硬化させることができる。
【0085】
また、例えば、前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有する場合では、前記縮合架橋性ケイ素化合物を用いることにより架橋硬化させることができる。縮合架橋性ケイ素化合物を用いる場合では、この縮合架橋性ケイ素化合物による縮合反応による架橋のみによって架橋性ケイ素化合物と架橋性化合物とを架橋させてもよいし、ヒドロシリル化反応等の架橋反応に加えてさらに縮合架橋性ケイ素化合物による縮合反応によって、架橋性ケイ素化合物と架橋性化合物とを架橋させてもよい。
【0086】
前記架橋性組成物における前記架橋性ケイ素化合物に対する前記架橋性化合物との比は、架橋、硬化により得られるシロキサンポリマーやシリコーン膜の特性の観点から、前記架橋性ケイ素化合物100重量部に対して1〜40であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、5〜15であることがさらに好ましい。
【0087】
前記架橋性組成物は、さらに溶媒を含有していてもよい。このような溶媒には、前記架橋性ケイ素化合物及び前記架橋性化合物の両方を溶解し得る溶媒であって架橋性ケイ素化合物又は架橋性化合物と縮合しない溶媒が好ましい。このような溶媒としては、例えばヘキサンやヘプタン等の炭化水素系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒、及び酢酸エチル等のエステル系溶媒が挙げられる。前記溶媒は単一の溶媒でもよいし、二以上の溶媒であってもよい。
【0088】
前記溶媒の含有量は、例えば塗布性の観点から、前記架橋性ケイ素化合物及び前記架橋性化合物の含有量が20〜80重量%となる量であることが好ましく、30〜70重量%となる量であることがより好ましく、40〜60重量%となる量であることがさらに好ましい。
【0089】
また前記架橋性組成物は、架橋性官能基による架橋のための助剤をさらに含有していてもよい。このような助剤は、架橋性官能基の種類に基づいて決めることができる。例えば、水素を架橋性官能基として有する第一の架橋性ケイ素化合物と、炭素数2〜40のアルケニルを架橋性官能基として有する第二の架橋性ケイ素化合物とを含有する架橋性組成物である場合は、前述した溶媒に加えて、ヒドロシリル化触媒をさらに含有していてもよい。
【0090】
前記ヒドロシリル化触媒としては、通常、ヒドロシリル反応で用いられる白金触媒を用いることができる。このような白金触媒としては、例えば塩化白金酸、及びカルステッド触媒が挙げられる。前記ヒドロシリル化触媒の含有量は、前記架橋性組成物において、0.1〜1,000ppmであることが好ましく、0.5〜200ppmであることがより好ましく、1〜50ppmであることがさらに好ましい。
【0091】
本発明のシリコーン膜は、前記架橋性組成物の膜が硬化してなる。架橋性組成物の膜は、基板やシートに塗布する公知の方法によって形成することができる。また、架橋性組成物の膜の硬化は、前記架橋性官能基による架橋の条件に基づいて決めることができる。例えば架橋性官能基が水素及び炭素数2〜40のアルケニルである場合では、架橋性組成物又はその膜を50〜150℃に1〜15時間加熱することによってシリコーン膜を形成す
ることができる。
【0092】
例えば前記架橋性ケイ素化合物が前記式(5)の化合物である場合では、本発明のシリコーン膜は、シロキサン鎖とシルセスキオキサンとが交互に配列した、全てシラノールから形成される主鎖を有する架橋性シロキサンポリマーの架橋物によって構成されている。このようなシリコーン膜は、溶解性、耐熱性、機械強度、光学透過性、ガス透過性、誘電率、難燃性、接着性、加工性等の諸物性における優れた効果と、幅広い用途への利用とが期待される。
【0093】
例えば本発明のシリコーン膜における電気・電子材料の用途としては、金属溶出防止膜、ガスバリア膜、反射防止膜等の基板用コーティング剤、液状封止剤、発光ダイオード封止材、層間絶縁膜、汚れ防止用コーティング剤、マイクロレンズ、導光板、光導波路材料等の光学素子、ディスプレイ基板及びプリント配線用基板等が挙げられる。また、光学用樹脂、光学用フィルム、コンタクトレンズ等への利用も期待される。
【0094】
本発明における前記架橋性ケイ素化合物及びケイ素化合物は、GPCによる分子量、あるいはNMRによるシルセスキオキサン部分とシロキサン部分のピークの存在によって確認することができる。また、本発明におけるシロキサンポリマー及びシリコーン膜は、例えば前記架橋性ケイ素化合物を含む原料から製造したときの耐熱性や溶剤に対する溶解性の変化によって確認することができる。例えば本発明におけるシロキサンポリマー及びシリコーン膜の生成は、120℃に加熱したときに融解しなくなることによって、又は生成物がアセトンに対して不溶であることによって確認することができる。
【0095】
また本発明における前述の各化合物の重量平均分子量は、GPCによって求めることができ、より具体的には下記の条件で求めることができる。
<GPC測定条件>
GPC測定の測定条件を以下に示す。<測定条件>
カラム:東ソー(株)製 TSKgel G4000HXL+TSKgel G3000HXL+TSKgel G2000HXL+TSKgel G2500HXL、4本直列接続
移動相:THF
流速:1.0ml/min
温度:40℃
検出器:RI
分子量標準サンプル:分子量既知のポリスチレン
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例を示す、以下の式中、「Ph」はフェニルを表している。
【0097】
[実施例1]DD(Vi)OH(式(III))の合成
【0098】
【化16】

【0099】
2Lフラスコにサンプリング管、温度計保護管、滴下ロートを接続し、フラスコ内部を窒素置換後、テトラヒドロフラン1Lとトリエチルアミン36.5gをフラスコ内に入れた。ビニルトリクロロシラン(式(II))53gをフラスコ内に入れた後、氷水浴にて内温を5℃付近に冷却した。フラスコの内温が15℃を超えないように注意しながら、あらかじめ乾燥させたDD−ONa(式(I))a68.7g粉体を少量ずつ加えた。DD−ONa添加終了後、そのまま2時間攪拌した後、室温にて終夜攪拌を行った。再度氷水浴にて冷却しフラスコの内温が15℃を超えないように注意しながら、フラスコに純水250mLを加えて反応を停止させた。
【0100】
得られた反応液を抜き出し、3Lフラスコに移し、酢酸エチル500mLを加えて攪拌し、下層を抜き出した。純水を加えて攪拌後、下層を抜き出した。この水洗操作を、上層のpHが6〜7になるまで行い、さらに3回、有機相の水洗を行った。水洗操作中に、酢酸エチルを適宜加えて層分離を良好に保った。上層を抜き出し、エバポレーターにより溶媒を留去することにより、ペースト状の粗生成物88.4gを得た。
【0101】
粗生成物に酢酸エチル80mLを加えて粗生成物を溶解させた。得られた溶液にヘプタン200mLを加え、エバポレーターにて該溶液から酢酸エチルを留去し、析出した固体をろ過により回収した。得られた固体をヘプタンで洗浄し、減圧下にて乾燥させ、白色固体59.5gを得た。NMR分析等により、得られた白色固体が目的物(式(III))であることを確認した。
【0102】
[実施例2]DD(H)OH(式(V))の合成
【0103】
【化17】

【0104】
2Lフラスコにサンプリング管、温度計保護管、滴下ロートを接続し、フラスコ内部を窒素置換後、テトラヒドロフラン1Lとトリエチルアミン21.9gをフラスコ内に入れた。トリクロロシラン(式(IV))22.6gをフラスコ内に入れた後、氷水浴にてフラスコの内温を5℃付近に冷却した。フラスコの内温が15℃を超えないように注意しながら、あらかじめ乾燥させたDD−ONa(式(I))71.0g粉体を少量ずつ加えた。DD−ONa添加終了後、そのまま2時間攪拌した後、室温にて終夜攪拌を行った。再度氷水浴にて冷却し、フラスコの内温が15℃を超えないように注意しながら、フラスコに純水250mLを加えて反応を停止させた。
【0105】
得られた反応液を抜き出し、3Lフラスコに移し、酢酸エチル500mLを加えて攪拌し、下層を抜き出した。純水を加えて攪拌後、下層を抜き出した。この水洗操作を、上層のpHが6〜7になるまで行い、さらに3回、得られた有機相の水洗を行った。水洗操作中に、アセトンを適宜加えて層分離を良好に保った。上層及びエマルジョン層を抜き出し、エバポレーターにより溶媒を留去することにより、ペースト状の粗生成物127.3gを得た。
【0106】
粗生成物を酢酸エチルに溶解させて、不溶分をろ過により除き、エバポレーターにて酢酸エチルを留去することにより、白色固体49.2gを得た。NMR分析等により、得られた白色固体が目的物(式(V))であることを確認した。
【0107】
[合成例1]DD(Me)シロキサンポリマー(式(VIII))の合成
【0108】
【化18】

【0109】
200mLフラスコに冷却管、撹拌子、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)OH(式(VI)) 20g、D4(式(VII)) 15g、RCP−160M(強酸性陽イオン交換樹脂、三菱化学(株)製) 1.75g、脱水トルエン 200mLをフラスコに入れた。110℃で72時間加熱攪拌を行い、冷却し、冷却後、RCP−160Mをろ別し、得られたろ液に活性炭を加えて攪拌後、ろ別した。その後、得られたろ液から、エバポレーターで溶媒及び低沸分を留去することにより、白色粘調液体27.7gを得た。NMR及びGPC分析により、得られた白色粘調液体は目的物(式(VIII))であり、式(VIII)中の各構成単位がランダムに結合してなるポリマーであることがわかった。目的物の数平均分子量Mn=33,000、重量平均分子量Mw=41,900であった。また、目的物のSi−NMRより、n/mは9.6であった。この比と数平均分子量Mnとから計算すると、nは17であり、mは167であった。
【0110】
[実施例3]DD(Vi)−Si3(式(IX))の合成
【0111】
【化19】

【0112】
500mLフラスコに温度計保護管、サンプリング管を接続し、フラスコ内部を窒素置換した。フラスコ内に、実施例1で得られたDD(Vi)OH(式(III)) 20g、シクロペンチルメチルエーテル(CPME) 80g、トリエチルアミン20gを入れた。フラスコの内温を0℃付近に保ちながら、1,5−ジクロロヘキサメチルトリシロキサン(DCHMTS)4.6gを滴下した。室温で24時間攪拌後、純水200mLを加えて反応停止させた。得られた反応液に塩酸水を加えて中和し、アセトンを加えて水洗操作を行った。上層を抜き出し後、エバポレーターにより溶媒を留去し、粗生成物を得た。
【0113】
粗合成物にアセトンを加え、生じた不溶分を減圧ろ過により除いた後、得られたろ液にCPMEを加えてエバポレーターによりアセトンを留去した。この溶液をヘキサンに加えて沈殿させ、沈殿した白色粘調物をアセトンで溶解、エバポレーターで溶媒留去することにより、白色アメ状粉体 12.3gを得た。NMR分析により、得られた白色アメ状粉体は目的物(式(IX))であることがわかった。GPC分析により、得られた白色アメ状粉体のMwは8,350であることがわかった。
【0114】
[実施例4]DD(Me)OH+SiH含有シロキサンポリマー(式(XII))の合成
【0115】
【化20】

【0116】
200mLフラスコに冷却管、撹拌機、温度計保護管をセット、フラスコ内部を窒素置換した。Mwが41,900のDD(Me)OH(式(VIII)) 5.34g、D’4(式(X)) 0.52g、M’M’(式(XI)) 0.05g、RCP−160M
0.29g、脱水トルエン 30mLをフラスコ内に入れ、100℃で15時間加熱攪拌を行った。冷却後、RCP−160Mをろ過し、得られたろ液からエバポレーターにて
溶媒及び低沸分を留去することにより、白色粘調液体6.75gを得た。NMR分析及びGPC分析より、得られた白色粘調液体は目的物(式(XII))であり、式(XII)中の各構成単位がランダムに結合してなるポリマーであり、式(XII)中、p=293、q=46、r=31であることがわかった。GPC分析により、得られた白色粘調液体のMn=61,000、Mw=116,000であることがわかった。
【0117】
[実施例5]DD(Me)OH+SiH含有シロキサンポリマー(式(XV))の合成
【0118】
【化21】

【0119】
200mLフラスコに冷却管、撹拌機、温度計保護管をセット、フラスコ内部を窒素置換した。Mwが41,900のDD(Me)OH(式(VIII)) 5.35g、DV4(式(XIII)) 0.69g、DVDS(式(XIV)) 0.06g、RCP−160M 0.36g、脱水トルエン 50mLをフラスコ内に入れ、110℃で15時間加熱攪拌を行った。冷却後、RCP−160Mをろ過し、得られたろ液からエバポレーターにて溶媒及び低沸分を留去することにより、白色粘調液体6.0gを得た。NMR分析より、得られた白色粘調液体は目的物(式(XV))であり、式(XV)中の各構成単位がランダムに結合してなるポリマーであり、式(XV)中、p=288、q=54、r=36であることがわかった。GPC分析により、得られた白色粘調液体のMn=69,900、Mw=146,000であることがわかった。
【0120】
[実施例6]DD(Me)OH+Vi基含有シロキサンポリマー(式(XVIII))の合成
【0121】
【化22】

【0122】
50mLのフラスコを窒素置換し、式(VIII)中のmが1であり、nが2であるDD(Me)−SiOH(式(XVII)) 0.50g(0.37mmol)、側鎖ビニルシリコーン(式(XVI)、Mw=約6000)2.25g(0.18mmol)、触媒としてRCP−160M 0.0275g(基質の1重量%)、あらかじめモレキュラーシーブで脱水したトルエン5mLをフラスコの中に入れた。フラスコの内温を80℃に昇温し、そのまま15時間加熱攪拌を行った。
【0123】
反応終了後、RCP−160Mをろ過により除き、得られたろ液から減圧下で溶媒を留去することにより、ポリマーを得た。GPC分析より、得られたポリマーのMn=3,840、Mw=6,000であることがわかった。得られたポリマーのNMRより、得られたポリマーは目的物(式(XVIII))であり、式(XVIII)中の各構成単位がランダムに結合してなるポリマーであり、DD部位がシロキサンポリマーに1つ入った、すなわち式(XVIII)中、r=1であり、さらに式(XVIII)中、p=17及びq=16であるポリマーであることわかった。
【0124】
[実施例7]DD含有硬化物の作製
スクリュー管中に、実施例4で得られたポリマー(式(XII)) 1g、実施例5で得られたポリマー(式(XV)) 1g、トルエン 2g、白金触媒 (カルステッド触媒) 5μLを入れて均一に溶解させた。テフロン(登録商標)製のペトリ皿に得られた溶液を入れ、オーブン中で80℃でトルエンを揮発させた後、150℃で1時間加熱させることにより硬化させ、無色透明の架橋フィルムを得た。
【0125】
[熱安定性試験]
実施例4で得られたポリマー、実施例5で得られたポリマー、実施例7にて得られた架橋フィルムの熱分解に対する安定性について、TG(熱重量)−DTA(示差熱分析)測定を行い、5%重量減少量温度(Td5)及び800℃における重量減少を調べた。TG−DTA測定の条件を以下に示す。また、結果を下表に示す。
測定装置:示差熱熱重量同時測定装置EXSTAR6000 TG/DTA6300(セイコーインスツル株式会社製)
パン:Pt
標準試料:酸化アルミニウム(10mg)
サンプル質量:約10mg
温度プログラム:25〜800℃
昇温速度:10℃/min
雰囲気:窒素
【0126】
【表1】

【0127】
実施例4で得られたポリマーの水素基と、実施例5で得られたポリマーのビニル基とのヒドロシリル化反応により硬化させることにより、熱安定性に優れた架橋フィルムが得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0128】
シルセスキオキサン基を有する硬化性のケイ素化合物による硬化物には、シロキサン及びそのポリマーのような通常のケイ素化合物に比べて、光学的な特性、電気的な特性、耐熱性、気体の透過性、機械的強度等の種々の特性においてユニークな特性を発現することがある。したがって、シルセスキオキサン基を有する硬化性のケイ素化合物及びそれによる硬化物は、特にレンズや保護膜等の透明な膜、や電気的、光学的な封止材の分野への利用がより一層期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)又は(2)で表されるシルセスキオキサン基と、下記式(3)で表される基及び下記式(4)で表される基の一方又は両方と、からなる架橋性ケイ素化合物。
【化1】

(式(1)及び式(2)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表し;
式(1)〜式(4)中、R1は独立して、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
式(4)中、R2は独立して水酸基、前記架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
前記アリール又はアリールアルキルの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、炭素数5〜20のシクロアルキレン又はフェニレンで置き換えられてもよく;
前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、その炭素数は1〜10であり、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;かつ、R1及びR2の一方又は両方が1個以上の前記架橋性官能基を含む。)
【請求項2】
下記式(5)で表される請求項1記載の架橋性ケイ素化合物。
【化2】

(式(5)中、mは独立して0〜300の整数を表し;nは1〜1,000の整数を表し;R0は前記式(1)及び(2)のR0と同じであり;R1は前記式(1)〜(4)のR1と同じであり;かつ、R1が1個以上の前記架橋性官能基を含む。)
【請求項3】
前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする請求項1又は2に記載の架橋性ケイ素化合物。
【請求項4】
0がフェニルであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物。
【請求項5】
下記式(6)で表される化合物に、下記式(7)で表される化合物及び下記式(8)で表される化合物の一方又は両方を反応させることを含む請求項1に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法(ただし下記式(6)〜(8)中のR1及びR2の一方又は両方が1個以上の、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基を含む)。
【化3】

(式(6)中、
0は炭素数5〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表し;
3は独立して水素、−Si−(R22−OH、又は−(Si−(R22−O)l−Si−(R22−OH(lは独立して0〜30の整数を表す)を表し;
1及びR2は独立して前記架橋性官能基、又は炭素数1〜40のアルキル、任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数6〜
20のアリール、又はアリールにおける任意の水素が独立してハロゲン若しくは炭素数1〜20のアルキルで置き換えられてもよい炭素数7〜20のアリールアルキルを表し;
前記炭素数1〜40のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよく;
前記アリール又はアリールアルキルの置換基である炭素数1〜20のアルキルにおいて、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、任意の−CH2−は独立して−O−、炭素数5〜20のシクロアルキレン又はフェニレンで置き換えられてもよく;
前記アリールアルキルのアルキレンにおいて、その炭素数は1〜10であり、任意の水素は独立してフッ素で置き換えられてもよく、そして任意の−CH2−は独立して−O−、−CH=CH−又は炭素数5〜20のシクロアルキレンで置き換えられてもよい。)
【化4】

(式(7)中、
kは独立して0〜30の整数を表し;
1は前記式(6)のR1と同じであり;
4は、独立して、前記架橋性官能基、炭素数1〜40のアルキル、ハロゲン、炭素数1〜15のアシル、炭素数1〜15のアルコキシル、炭素数1〜15のオキシム、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよい炭素数1〜15のアミド、置換基を有していてもよいアミノキシ、又は置換基を有していてもよい炭素数2〜15のビニルアルコール残基を表し;
置換基を有するアミノ及びアミノキシでは、置換基の炭素数は1〜15である。)
【化5】

(式(8)中、hは3〜6を表し;R1は前記式(6)のR1と同じである。)
【請求項6】
前記式(6)で表される化合物に、前記式(7)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【請求項7】
前記式(6)で表される化合物に、前記式(8)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【請求項8】
前記式(6)で表される化合物に、前記式(7)で表される化合物及び前記式(8)で表される化合物を反応させることを含むことを特徴とする請求項5に記載の架橋性ケイ素化合物の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物と、この架橋性ケイ素化合物と架橋反応を生じることができる架橋性化合物とから得られるシロキサンポリマー。
【請求項10】
前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有し、前記架橋性化合物が前記架橋性ケイ素化合物中の水酸基と縮合反応を生じる基又は原子を3以上有する縮合架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする請求項9に記載のシロキサンポリマー。
【請求項11】
前記架橋性ケイ素化合物が、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基としての水素を有する第一の架橋性ケイ素化合物であり、前記架橋性化合物が、前記架橋性官能基としての炭素数2〜40のアルケニルを有する第二の架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする請求項9に記載のシロキサンポリマー。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の架橋性ケイ素化合物と、この架橋性ケイ素化合物と架橋反応を生じることができる架橋性化合物とを含有する架橋性組成物。
【請求項13】
前記架橋性ケイ素化合物が水酸基を有し、前記架橋性化合物が前記架橋性ケイ素化合物中の水酸基と縮合反応を生じる基又は原子を3以上有する縮合架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする請求項12に記載の架橋性組成物。
【請求項14】
前記架橋性ケイ素化合物が、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基としての水素を有する第一の架橋性ケイ素化合物であり、前記架橋性化合物が、前記架橋性官能基としての炭素数2〜40のアルケニルを有する第二の架橋性ケイ素化合物であることを特徴とする請求項12に記載の架橋性組成物。
【請求項15】
ヒドロシリル化触媒をさらに含有することを特徴とする請求項14に記載の架橋性組成物。
【請求項16】
請求項12〜15のいずれか一項に記載の架橋性組成物の膜が硬化してなるシリコーン膜。
【請求項17】
下記式(10)で表されるケイ素化合物。
【化6】

(式(10)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表し;R5は独立して、他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基を表す。)
【請求項18】
前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする請求項17に記載のケイ素化合物。
【請求項19】
0がフェニルであることを特徴とする請求項17又は18に記載のケイ素化合物。
【請求項20】
下記式(11)で表される化合物と、下記式(12)で表される化合物を反応させるこ
とを含む請求項17〜19のいずれか一項に記載のケイ素化合物を製造する方法。
【化7】

(式(11)中、R0は独立して炭素数6〜20のアリール又は炭素数5又は6のシクロアルキルを表す。)
【化8】

(式(12)中、R5は他の化合物のケイ素に付加することができる架橋性官能基を表し、Xはハロゲン又は水素を表す。)
【請求項21】
前記架橋性官能基が、水素及び炭素数2〜40のアルケニルの一方又は両方であることを特徴とする請求項20に記載のケイ素化合物の製造方法。
【請求項22】
0がフェニルであることを特徴とする請求項20又は21に記載のケイ素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−116464(P2010−116464A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289840(P2008−289840)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】