説明

架橋性ニトリルゴム組成物およびゴム架橋物

【課題】 引張応力が極めて大きなゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物を提供すること。
【解決手段】 α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)、および、ポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物により上記課題が解決される。好ましくは本発明の架橋性ニトリルゴム組成物はカーボンブラック含有量が2重量%以下のものであり、また好ましくは前記周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)がアミノシランカップリング剤処理されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張応力の極めて大きなゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリロニトリル−ブタジエン共重合体に代表される、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を含有するゴムを水素化してなるニトリル基含有高飽和共重合体ゴム(「高飽和ニトリルゴム」とも言う。)は、耐油性、耐熱性および耐オゾン性に優れたゴムとして知られている。高飽和ニトリルゴムの架橋物は、ガスケット、パッキン、オイルシール、ベルト、ホースなどの種々の用途で産業用ゴム製品に広く用いられている。最近、市場での品質要求が高度化し、殊に産業用ベルトなどにおいて高負荷化が進んだことから、引張応力の極めて大きなゴム架橋物が要求され、しかも可能であれば白色に近い淡色のゴム架橋物が求められるようになった。そのため、該ゴム架橋物を補強性充填剤のカーボンブラックの配合なしに実現することが望まれている。
特許文献1は、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル単量体単位を含有する高飽和ニトリルゴム、ポリアミン系架橋剤および塩基性架橋促進剤を含有する架橋性ゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物が耐熱性、耐屈曲疲労性などに優れ、圧縮永久ひずみが小さいことを報じている。しかしながら、該ゴム架橋物においてカーボンブラックの配合なしに上記高引張応力のニーズに応えることは難しい面があった。
【0003】
【特許文献1】特開2001−55471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、引張応力が極めて大きなゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意研究した結果、α、β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を含有する高飽和ニトリルゴムに、特定の珪酸塩を配合し、特定の架橋剤で架橋することにより上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに到った。
かくして本発明によれば、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、周期表2族または13族の元素の珪酸塩(b)、および、ポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物が提供される。
好ましくは本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、カーボンブラック含有量が2重量%以下のものである。
また本発明の架橋性ニトリルゴム組成物において、好ましくは前記周期表2族または13族の元素の珪酸塩(b)がアミノシランカップリング剤処理されたものである。
そして、本発明によれば、上記のいずれかの架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供され、好ましくは前記ゴム架橋物の100%引張応力が5MPa以上であり、また好ましくは前記ゴム架橋物がベルトまたはシール用ゴム部材である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、引張応力が極めて大きなゴム架橋物を与える架橋性ニトリルゴム組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、周期表2族または13族の元素の珪酸塩(b)、および、ポリアミン系架橋剤(c)を含有してなるものである。
【0008】
高飽和ニトリルゴム(a)のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位を形成する単量体(以下、「α,β−エチレン性不飽和ニトリル」と記すことがある。)は、ニトリル基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物であれば限定されず、アクリロニトリル;α−クロロアクリロニトリル、α−ブロモアクリロニトリルなどのα−ハロゲノアクリロニトリル;メタクリロニトリルなどのα−アルキルアクリロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリルはこれらの複数種を併用してもよい。
【0009】
高飽和ニトリルゴム(a)におけるα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜55重量%、特に好ましくは20〜50重量%である。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量が少なすぎるとゴム架橋物は耐油性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐寒性が低下する可能性がある。
【0010】
高飽和ニトリルゴム(a)のα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を形成する単量体は、架橋のためのフリーのカルボキシル基を1個有している。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有することにより、得られるゴム架橋物は引張応力の優れたものとなる。
【0011】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体のエステル部の、酸素原子を介してカルボニル基と結合する有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基およびアルキルシクロアルキル基が好ましく、アルキル基が特に好ましい。アルキル基の炭素数は好ましくは1〜10、より好ましくは2〜6であり、シクロアルキル基の炭素数は好ましくは5〜12、より好ましくは6〜10であり、アルキルシクロアルキル基の炭素数は好ましくは6〜12、より好ましくは7〜10である。該有機基の炭素数が小さすぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工安定性が低下するおそれがあり、逆に、炭素数が大きすぎると架橋速度が遅くなったり、ゴム架橋物の機械的特性が低下したりする可能性がある。
【0012】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体の例としては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチルなどのマレイン酸モノアルキルエステル;マレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、マレイン酸モノシクロヘプチルなどのマレイン酸モノシクロアルキルエステル;マレイン酸モノメチルシクロペンチル、マレイン酸モノエチルシクロヘキシルなどのマレイン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチルなどのフマル酸モノアルキルエステル;フマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、フマル酸モノシクロヘプチルなどのフマル酸モノシクロアルキルエステル;フマル酸モノメチルシクロペンチル、フマル酸モノエチルシクロヘキシルなどのフマル酸モノアルキルシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのシトラコン酸モノアルキルエステル;シトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、シトラコン酸モノシクロヘプチルなどのシトラコン酸モノシクロアルキルエステル;シトラコン酸モノメチルシクロペンチル、シトラコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのシトラコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノn−ブチルなどのイタコン酸モノアルキルエステル;イタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、イタコン酸モノシクロヘプチルなどのイタコン酸モノシクロアルキルエステル;イタコン酸モノメチルシクロペンチル、イタコン酸モノエチルシクロヘキシルなどのイタコン酸モノアルキルシクロアルキルエステル;などが挙げられる。
これらの中でも、本発明の効果がより一層顕著に現れる点で、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノn−ブチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピル、シトラコン酸モノn−ブチルなどのα,β−エチレン性不飽和結合を形成する二つの炭素原子の各々にカルボキシル基を有するジカルボン酸のモノエステルが好ましく、マレイン酸モノn−ブチル、シトラコン酸モノプロピルなどの該二つのカルボキシル基をシス位(シス配置)に有するジカルボン酸のモノエステルがより好ましく、マレイン酸モノn−ブチルが特に好ましい。
【0013】
高飽和ニトリルゴム(a)におけるα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の含有量が少なすぎるとゴム架橋物の引張り応力が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると架橋性ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性の悪化やゴム架橋物の耐疲労性の低下が起こる可能性がある。
【0014】
高飽和ニトリルゴム(a)は、上記のα,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位の他に、ゴム架橋物がゴム弾性を保有するために、通常、ジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位を有する。
【0015】
ジエン単量体単位を形成するジエン単量体の例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどの炭素数が4以上の共役ジエン単量体;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの好ましくは炭素数が5〜12の非共役ジエン単量体が挙げられる。これらの中では共役ジエン単量体が好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
【0016】
α−オレフィン単量体単位を形成するα−オレフィン単量体としては、好ましくは炭素数が2〜12のものであり、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが例示される。
【0017】
高飽和ニトリルゴム(a)におけるジエン単量体単位および/またはα−オレフィン単量体単位の含有量は、好ましくは20〜89.9重量%、より好ましくは30〜84.8重量%、特に好ましくは40〜79.5重量%である。これらの含有量が少なすぎるとゴム架橋物のゴム弾性が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると耐熱性や耐化学的安定性が損なわれる可能性がある。
【0018】
高飽和ニトリルゴム(a)は、また、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、および、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、と共重合可能なその他の単量体の単位を含有することができる。このようなその他の単量体としては、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物、芳香族ビニル単量体、フッ素含有ビニル単量体、共重合性老化防止剤などが例示される。
【0019】
α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体以外のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル〔アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルの意。以下同様。〕単量体であってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;アクリル酸メトキシメチル、メタクリル酸エトキシメチルなどの (メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体であってアルコキシアルキル基の炭素数が1〜18でアルコキシ基の炭素数が1〜12のもの;アクリル酸2−アミノエチル、メタクリル酸アミノメチルなどのアミノ基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;アクリル酸トリフルオロエチル、メタクリル酸ジフルオロメチルなどのフルオロアルキル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体であってアルキル基の炭素数が1〜16のもの;
【0020】
マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジn−ブチルなどのマレイン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;フマル酸ジメチル、フマル酸ジn−ブチルなどのフマル酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの;マレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシルなどのマレイン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;フマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシルなどのフマル酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジn−ブチルなどのイタコン酸ジアルキルエステルであってアルキル基の炭素数が1〜18のもの:イタコン酸ジシクロヘキシルなどのイタコン酸ジシクロアルキルエステルであってシクロアルキル基の炭素数が4〜16のもの;などが挙げられる。
【0021】
α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸単量体としては、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。
α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸などが挙げられる。
【0022】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0023】
フッ素含有ビニル単量体としては、フルオロエチルビニルエーテル、フルオロプロピルビニルエーテル、o−トリフルオロメチルスチレン、ペンタフルオロ安息香酸ビニル、ジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンなどが挙げられる。
【0024】
共重合性老化防止剤としては、N−(4−アニリノフェニル)アクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)シンナムアミド、N−(4−アニリノフェニル)クロトンアミド、 N−フェニル−4−(3−ビニルベンジルオキシ)アニリン、N−フェニル−4−(4−ビニルベンジルオキシ)アニリンなどが例示される。
【0025】
これらの共重合可能なその他の単量体は、複数種類を併用してもよい。高飽和ニトリルゴム(a)が有するその他の単量体単位の含有量は、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0026】
本発明で使用する高飽和ニトリルゴム(a)におけるカルボキシル基の含有量、すなわち、高飽和ニトリルゴム(a)100g当たりのカルボキシル基のモル数は、好ましくは5×10−4〜5×10−1ephr、より好ましくは1×10−3〜1×10−1ephr、特に好ましくは5×10−3〜6×10−2ephrである。高飽和ニトリルゴム(a)のカルボキシル基含有量が少なすぎると架橋性ニトリルゴム組成物は十分に架橋せず、ゴム架橋物の引張応力が低下するおそれがあり、逆に、多すぎると架橋性ニトリルゴム組成物のスコーチ安定性が悪化したり、ゴム架橋物の耐疲労性が低下したりする可能性がある。
【0027】
上記α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、並びに、その他の単量体単位は置換基を有しても良い。かかる置換基に限定はなく、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルシクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ニトロ基、シアノ基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボキシル基、ハロゲン、アセチル基、アミノ基および水酸基等が挙げられる。また、置換基の結合位置は上記各単量体単位を形成する単量体の重合反応部位のα−炭素ないしβ−炭素のいずれでも良い。さらにはこれらα−炭素ないしβ−炭素にアルキル基、シクロアルキル基またはアルキルシクロアルキル基が結合する場合はそれらの基に結合するものでも良い。
【0028】
高飽和ニトリルゴム(a)は、そのヨウ素価が120以下、好ましくは80以下、より好ましくは25以下、特に好ましくは15以下のものである。高飽和ニトリルゴム(a)のヨウ素価が高すぎると、ゴム架橋物の耐オゾン性が低下するおそれがある。
【0029】
また、高飽和ニトリルゴム(a)のポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は、好ましくは15〜200、より好ましくは20〜150、特に好ましくは30〜120である。高飽和ニトリルゴム(a)のポリマームーニー粘度が低すぎるとゴム架橋物の強度特性が低下するおそれがあり、逆に、高すぎると架橋性ニトリルゴム組成物の加工性が低下する可能性がある。
【0030】
上記高飽和ニトリルゴム(a)の製造方法は、特に限定されない。一般的には、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体、α,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体、ジエン単量体および/またはα−オレフィン単量体、並びに、必要に応じて加えられるこれらと共重合可能なその他の単量体を共重合する方法が便利で好ましい。重合法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法および溶液重合法のいずれをも用いることができるが、重合反応の制御が容易であることから乳化重合法が好ましい。
共重合して得られた共重合体のヨウ素価が120より高い場合は、共重合体の水素化(水素添加反応)を行うと良い。水素化の方法は特に限定されず、公知の方法を採用すればよい。
【0031】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)を含有する。
該珪酸塩(b)は、下記一般式1または2のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0032】
一般式1:MO・xSiO・mHO(式中、xは8以下の正の実数、mは0又は12以下の正の実数、Mは周期表第2族の元素を表す。)
【0033】
一般式2:M・ySiO・nHO(式中、yは8以下の正の実数、nは0又は12以下の正の実数、Mは周期表第13族の元素を表す。)
【0034】
としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどが挙げられるが、マグネシウムが好ましい。
としては、ホウ素、アルミニウムなどが挙げられるが、アルミニウムが好ましい。
【0035】
一般式1で表される珪酸塩(b)としては、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウム水和物、珪酸カルシウム、珪酸カルシウム水和物が好ましく、珪酸マグネシウムが特に好ましい。
一般式2で表される珪酸塩(b)としては、珪酸ホウ素、珪酸ホウ素水和物、珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウム水和物が好ましく、珪酸アルミニウムが特に好ましい。
【0036】
周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)は、アミノシランカップリング剤処理されていることが好ましい。珪酸塩(b)の粒子表面がアミノシランカップリング剤で処理したものであると、高飽和ニトリルゴム(a)に親和性があって均一に分散しやすく、得られるゴム架橋物の引張強さおよび引張応力が向上する。アミノシランカップリング剤のなかでは、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、スチリルアミノエチルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノシランカップリング剤が好ましい。
【0037】
周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)の粒径は、特に限定されないが、0.1〜10μmのものが好ましい。
【0038】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物における周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)の含有量は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対し、好ましくは5〜150重量部、より好ましくは10〜120重量部、特に好ましくは20〜100重量部である。該珪酸塩(b)の含有量が少なすぎると、得られるゴム架橋物の引張り応力が不十分となるおそれがあり、逆に、多すぎると該組成物の加工性が悪くなる可能性がある。
【0039】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物が含有するポリアミン系架橋剤(c)は、2つ以上のアミノ基を有する化合物、または、架橋時に2つ以上のアミノ基を有する化合物の形態になるもの、であれば特に限定されないが、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の複数の水素原子が、アミノ基またはヒドラジド構造(−CONHNHで表される構造、COはカルボニル基を表す。)で置換された化合物が好ましい。その具体例として、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、テトラメチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミンシンナムアルデヒド付加物、ヘキサメチレンジアミンジベンゾエート塩などの脂肪族多価アミン類;2,2−ビス{4−(4−アミノフェノキシ)フェニル}プロパン、4,4’−メチレンジアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−メチレンビス(o−クロロアニリン)などの芳香族多価アミン類;イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどのヒドラジド構造を2つ以上有する化合物;などが挙げられるが、ヘキサメチレンジアミンカルバメートが特に好ましい。
【0040】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物におけるポリアミン系架橋剤(c)の含有量は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部に対し、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.2〜15重量部、特に好ましくは0.5〜10重量部である。ポリアミン系架橋剤(b)の含有量が少なすぎると、引張応力および耐摩耗性に優れ、かつ、圧縮永久ひずみが小さいゴム架橋物が得られないおそれがあり、逆に、多すぎるとゴム架橋物の耐疲労性が低下する可能性がある。
【0041】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、上記高飽和ニトリルゴム(a)、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)、ポリアミン系架橋剤(c)以外に、ゴム加工分野において通常使用される配合剤、例えば、架橋促進剤、架橋助剤、架橋遅延剤、補強性充填材(カーボンブラック、シリカなど)、非補強性充填材(珪藻土など)、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、一級アミンなどのスコーチ防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、粘着剤、潤滑剤、難燃剤、防黴剤、受酸剤、帯電防止剤、顔料等を配合することができる。これらの配合剤の配合量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、目的に応じた量を適宜配合することができる。
【0042】
また、本発明の架橋性ニトリルゴム組成物には、本発明の効果が阻害されない範囲で上記高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合してもよい。高飽和ニトリルゴム(a)以外のゴムを配合する場合は、高飽和ニトリルゴム(a)100重量部当たり30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0043】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して得られるゴム架橋物は、非常に強い補強効果を有する充填剤であるカーボンブラックを含有しなくても、引張応力が極めて大きい。従って、カーボンブラックの含有量が好ましくは2重量%以下、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である架橋性ニトリルゴム組成物を架橋することにより、引張応力が極めて大きな淡色のゴム架橋物を得ることができる。
なお、顔料等の着色剤を配合することにより、容易に所定の色に着色することができる。
【0044】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物は、上記各成分を好ましくは非水系で混合して調製される。本発明の架橋性ニトリルゴム組成物を調製する方法に限定はないが、通常、ポリアミン系架橋剤(c)および熱に不安定な架橋助剤などを除いた成分を、バンバリーミキサ、インターミキサ、ニーダなどの混合機で一次混練した後、ロールなどに移してポリアミン系架橋剤(c)等を加えて二次混練する。
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物の水分含有量は、好ましくは3重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。
【0045】
本発明の架橋性ニトリルゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4、100℃)(コンパウンドムーニー)は、好ましくは15〜150、より好ましくは30〜120である。本発明の架橋性ニトリルゴム組成物が上記コンパウンドムーニーを有すると、成形加工性に優れる。
【0046】
この架橋性ニトリルゴム組成物を架橋して本発明のゴム架橋物を得るには、所望の形状に対応した成形機、例えば押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、架橋反応により架橋物として形状を固定化する。予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜1時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0047】
本発明のゴム架橋物は、耐油性、耐熱性および耐オゾン性に優れる高飽和ニトリルゴムの特性に加えて引張応力が極めて大きい特徴を有する。本発明のゴム架橋物のJIS K6251に基づく測定による100%引張応力は、好ましくは5MPa以上、より好ましくは5.5MPa以上、特に好ましくは6MPa以上である。
【0048】
これらの特徴を有する本発明のゴム架橋物は、平ベルト(フィルムコア平ベルト、コード平ベルト、積層式平ベルト、単体式平ベルト等)、Vベルト(ラップドVベルト、ローエッジVベルト等)、Vリブドベルト(シングルVリブドベルト、ダブルVリブドベルト、ラップドVリブドベルト、背面ゴムVリブドベルト、上コグVリブドベルト等)、CVT用ベルト、タイミングベルト、歯付ベルト、コンベアーベルト、などの各種ベルト;O−リング、パッキン、ダイアフラム、オイルシール、シャフトシール、ベアリングシール、ウェルヘッドシール、空気圧機器用シール、エアコンディショナの冷却装置や空調装置の冷凍機用コンプレッサに使用されるフロン若しくはフルオロ炭化水素または二酸化炭素の密封用シール、精密洗浄の洗浄媒体に使用される超臨界二酸化炭素または亜臨界二酸化炭素の密封用シール、転動装置(転がり軸受、自動車用ハブユニット、自動車用ウォーターポンプ、リニアガイド装置およびボールねじ等)用のシール、バルブおよびバルブシート、BOP(Blow Out Preventar)、プラターなどの各種シール用ゴム部材;インテークマニホールドとシリンダヘッドとの連接部に装着されるインテークマニホールドガスケット、シリンダブロックとシリンダヘッドとの連接部に装着されるシリンダヘッドガスケット、ロッカーカバーとシリンダヘッドとの連接部に装着されるロッカーカバーガスケット、オイルパンとシリンダブロックあるいはトランスミッションケースとの連接部に装着されるオイルパンガスケット、正極、電解質板および負極を備えた単位セルを挟み込む一対のハウジング間に装着される燃料電池セパレーター用ガスケット、ハードディスクドライブのトップカバー用ガスケットなどの各種ガスケット;CVJブーツ、プロペラシャフトブーツ、等速ジョイントブーツ、ラックアンドピニオンブーツなどの各種ブーツ;印刷用ロール、製鉄用ロール、製紙用ロール、工業用ロール、事務機用ロールなどの各種ロール;およびクッション材、ダイナミックダンパ、ゴムカップリング、空気バネ、防振材などの減衰材ゴム部品;として好適に用いられ、ベルトまたはシール用ゴム部材として特に好適に用いられる。
また、本発明のゴム架橋物は、燃料ホース、ターボエアーホース、オイルホース、ラジェターホース、ヒーターホース、ウォーターホース、バキュームブレーキホース、コントロールホース、エアコンホース、ブレーキホース、パワーステアリングホース、エアーホース、マリンホース、ライザー、フローラインなどの各種ホース;ダストカバー、自動車内装部材、タイヤ、被覆ケーブル、靴底、電磁波シールド、フレキシブルプリント基板用接着剤等の接着剤、燃料電池セパレーターの他、化粧品、および医薬品の分野、食品と接触する分野、エレクトロニクス分野など幅広い用途に使用することもできる。
【実施例】
【0049】
以下に製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。ただし本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。以下の配合において「部」は、特に断わりのない限り重量基準である。
試験、評価は下記によった。
(1)カルボキシル基含有量
ゴムのカルボキシル基含有量は、水酸化カリウムの0.02N含水エタノール溶液を用いて、室温でチモールフタレインを指示薬とする滴定により、ゴム100グラムに対するカルボキシル基のモル数として求めた。単位はephrである。
(2)ムーニー粘度(ポリマームーニー、コンパウンドムーニー)
JIS K6300−1に従って測定した。単位は(ML1+4、100℃)。
【0050】
(3)常態物性(引張強さ、伸び、100%引張応力)
架橋性ニトリルゴム組成物を縦15cm、横15cm、深さ0.2cmの金型に入れ、プレス圧10MPaで加圧しながら170℃で20分間プレス成形してシート状架橋物を得た。これをギヤー式オーブンに移して170℃で4時間二次架橋して得られたシート状架橋物を3号形ダンベルで打ち抜いて試験片を作製した。この試験片を用いて、JIS K6251に従い、ゴム架橋物の引張強さ、100%引張応力および伸びを測定した。
(4)常態物性(硬さ)
上記(3)と同様に一次および二次架橋して得たシート状ゴム架橋物につき、JIS K6253に従い、デュロメータ硬さ試験機、タイプAを用いてゴム架橋物の硬さを測定した。
【0051】
(5)ディスク圧縮永久ひずみ
上記(3)と同様に一次および二次架橋して得たシート状ゴム架橋物につき、25%圧縮した状態で150℃にて72時間保持する条件でJIS K6262に従って測定した。
【0052】
(6)O−リング圧縮永久ひずみ
内径30mm、リング径3mmの金型を用いて、架橋性ニトリルゴム組成物を170℃で20分間、プレス圧10MPaで架橋した後、170℃で4時間二次架橋を行ってO−リング試験片を得た。O−リング圧縮永久ひずみは、この試験片を挟んだ二つの平面の距離をリング厚み方向に25%圧縮した状態で150℃にて72時間保持する条件で、JIS K6262に従って測定した。
【0053】
(7)耐燃料油試験(燃料油C浸漬試験)
上記(3)と同様に一次および二次架橋して得たシート状ゴム架橋物より切り取って作製した30mm×20mmの試験片を、JIS K6258に従い、燃料油C(イソオクタンとトルエンとを容積比1:1で混合したもの)の中に40℃で72時間浸漬し、浸漬前後の体積の変化率(単位:%)を測定した。
変化率の値が小さいほど燃料油Cによる膨潤の度合いが小さいことを示す。
【0054】
(製造例1)
金属製ボトルに、イオン交換水180部、濃度10重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液25部、アクリロニトリル37部、マレイン酸モノn−ブチル6部、t−ドデシルメルカプタン(分子量調整剤)0.5部の順に仕込み、内部の気体を窒素で3回置換した後、1,3−ブタジエン57部を仕込んだ。金属製ボトルを5℃に保ち、クメンハイドロパーオキサイド(重合開始剤)0.1部を仕込み、金属製ボトルを回転させながら16時間重合反応した。濃度10重量%のハイドドキノン水溶液(重合停止剤)0.1部を加えて重合反応を停止した後、水温60℃のロータリーエバポレータを用いて残留単量体を除去し、アクリロニトリル単位34重量%、ブタジエン単位60重量%、マレイン酸モノn−ブチル単位6重量%のアクリロニトリル−ブタジエン−マレイン酸モノn−ブチル共重合体ゴムのラテックス(固形分濃度約30重量%)を得た。
【0055】
該ラテックスに含有されるゴム重量に対してパラジウム含有量が1000ppmになるようにオートクレーブにパラジウム触媒(1重量%酢酸パラジウムアセトン溶液と等重量のイオン交換水を混合した溶液)を添加して、水素圧3MPa、温度50℃で6時間水素添加反応を行い、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムラテックスを得た。
得られたニトリル基含有高飽和共重合体ゴムラテックスに2倍容量のメタノールを加えて、ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムを凝固した後、60℃で12時間真空乾燥して高飽和ニトリルゴム(a1)を得た。高飽和ニトリルゴム(a1)のヨウ素価は10、カルボキシル基含有量は3.2×10−2ephr、ポリマームーニー粘度(ML1+4、100℃)は60であった。
【0056】
(実施例1)
バンバリーミキサを用いて高飽和ニトリルゴム(a1)100部に、珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」、白石カルシウム社製)80部、トリメリット酸エステル(商品名「ADK Cizer C−8」、ADEKA社製、可塑剤)5部、ステアリン酸(架橋促進助剤)1部、4,4’−ジ−(α,α’−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン(商品名「Naugard 445」、Crompton社製、老化防止剤)1.5部、2−メルカプトベンズイミダゾール(商品名「ノクラック MB」、大内新興社製、老化防止剤)1.5部およびポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル(製品名「フォスファノールRL―210」、東邦化学工業社製、加工助剤;モノエステル41.6重量%、ジエステル38.4重量%、ポリオキシエチレンアルキルエーテル約20重量%混入)1部を添加して混合し、次いで、混合物をロールに移して1,3−ジ−o−トリルグアニジン(商品名「ノクセラー DT」、大内新興社製、架橋促進剤)2部、および、ヘキサメチレンジアミンカルバメート(商品名「Diak#1」、デュポン・ダウ・エラストマー社製、ポリアミン系架橋剤)2.6部を添加して混練し、架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。
得られた架橋性ニトリルゴム組成物を用いてコンパウンドムーニー粘度、常態物性、ディスク圧縮永久ひずみ、O−リング圧縮永久ひずみおよび耐燃料油試験を試験、評価した結果を表1に記す。
【0057】
(実施例2)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えて焼成珪酸アルミニウム(商品名「サティントン#5」、Engelhard Corp.社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0058】
(実施例3)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えてアミノシランカップリング剤処理珪酸アルミニウム(商品名「Amlok 321」、Kentucky−Tennessee Clay社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0059】
(実施例4)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えて珪酸マグネシウム(商品名「ミストロンベーパー」、Cyprus Ind.社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0060】
(実施例5)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えて超微粉珪酸マグネシウム(商品名「ハイトロン」、竹原化学工業社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0061】
(比較例1)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えて軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「Silver W」、白石工業社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0062】
(比較例2)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)に代えて珪藻土(商品名「セライト#505」、John−Manville社製)を等部数用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0063】
(比較例3)
実施例1において珪酸アルミニウム(商品名「ハードトップクレー」)80部に代えて沈降法シリカ(商品名「Carplex 67」、塩野義製薬社製)40部を用いた他は実施例1と同様にして架橋性ニトリルゴム組成物を調製した。得られた架橋性ニトリルゴム組成物について、実施例1と同様に試験、評価した結果を表1に記す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1が示すように、本発明例の架橋性ニトリルゴム組成物によるゴム架橋物は引張強さが十分に大きく、伸びも200%以上あってバランスが良く、その上100%引張応力が極めて大きかった。また、圧縮永久ひずみはディスク、O−リングとも小さく、かつ、燃料油Cへの浸漬における膨潤度も小さかった(実施例1〜5)。殊に、アミノシランカップリング剤処理された珪酸アルミニウムを用いた時、引張強さおよび引張応力が著しく向上した(実施例3)。
一方、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)に代えて軽微性軽質炭酸カルシウム(商品名「Silver W」)や珪藻土(商品名「セライト#505」を使用すると、得られるゴム架橋物は引張強さおよび引張応力が大きく低下した(比較例1、2)。また、沈降法シリカを用いた場合は、引張強さは顕著に向上したものの100%引張応力が著しく劣るものとなった(比較例3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
α、β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位およびα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル単量体単位を有し、ヨウ素価が120以下である高飽和ニトリルゴム(a)、周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)、および、ポリアミン系架橋剤(c)を含有してなる架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項2】
カーボンブラック含有量が2重量%以下である請求項1に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項3】
前記周期表第2族または第13族の元素の珪酸塩(b)がアミノシランカップリング剤処理されたものである請求項1または2に記載の架橋性ニトリルゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の架橋性ニトリルゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項5】
JIS K6251に基づく100%引張応力が5MPa以上である請求項4に記載のゴム架橋物。
【請求項6】
ベルトまたはシール用ゴム部材である請求項4又は5に記載のゴム架橋物。

【公開番号】特開2008−179671(P2008−179671A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12878(P2007−12878)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】