説明

架橋性ポリオルガノシロキサン材料

【課題】性能の高い白金触媒により、1成分に調製された付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料のポットライフ及び架橋速度を改善する。
【解決手段】(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、及び(D)白金触媒を含有する架橋性ポリオルガノシロキサン材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族炭素−炭素−多重結合へのSi結合水素の付加により架橋可能なポリオルガノシロキサン材料、その製造方法、そのために使用する白金触媒、シリコーンエラストマーの製造法における架橋性ポリオルガノシロキサン材料の使用、並びにそのようにして得られるシリコーンエラストマーの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料は、典型的には白金化合物の触媒の存在で脂肪族不飽和基がSi結合水素と反応(ヒドロシリル化)することにより架橋する。主要な成分が同時に存在した場合に架橋反応が生じるという事実に基づき、付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料は今までほとんどもっぱら2成分調製物として製造され、その際、個々の成分の組成は、成分の混合後にようやく主要な3成分全てが一緒になるように製造される。通常、一方の成分がアルケニル官能性ポリオルガノシロキサン及び白金触媒を含有し、他方の成分がSiH−官能性架橋剤を、場合によりアルケニル官能性ポリオルガノシロキサンと組み合わせて含有する。個々の成分の混合により、室温でシリコーンエラストマーへの完全な硬化が行われるが、通常は高めた温度で実施される。
【0003】
付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料の場合の2成分系は、必然的に、例えば痕跡量の白金による高い汚染の危険性及び付加的混合工程の事実の多様な欠点を有する。成分の混合後には確かに使用可能な材料が得られるが、この材料は室温で著しく制限されたポットライフを有しているにすぎない。これによって、一方で引き続き迅速な加工が必要となり、他方で例えば逆混合又は壁部付着により残留する材料は最終的に害になるため頻繁に例えばストック容器、供給装置又は加工機械の清浄が必要となる。
【0004】
前記の欠点に基づき、付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料を1成分調製剤(1K−系)として提供するという試みは常に行われていた。1K−系の場合には架橋のために必要な全成分が一緒に存在するため、問題は根本的に通常室温でも生じる架橋反応の早期開始を他の方法で抑制することにある。付加架橋性材料のポットライフを意図的に調節、通常は延長するための方法は、白金触媒の活性を室温で著しく減少させることができる阻害剤、例えばリン化合物を、特許明細書US4,329,275Aに記載されているようにペルオキシドと組み合わせて、又は例えば欧州特許出願公開明細書EP0490523A1に記載されているようにアゾジカルボニル化合物と組み合わせて使用することにより十分に公知である。このような阻害剤の種類及び含有量により確かにポットライフを任意に延長することができるが、ポットライフの延長が架橋挙動に不利に影響を及ぼしてしまうことは避けられない。このことは特にポットライフが高い阻害剤含有量により数ヶ月まで延長される場合に該当し:それにより、高い開始温度でかつ同時に架橋速度が低い場合に過小架橋が生じる。これとは根本的に異なる他の可能性は、白金触媒を、高い温度で初めて白金を放出する微細粒の材料中にカプセル化することにある。これは、例えば欧州特許出願公開明細書EP0363006A1に記載されているように、例えば熱可塑性シリコーン樹脂又は有機熱可塑性樹脂を用いた白金触媒のマイクロカプセル化により行うことができる。これはマイクロカプセル化された触媒の準備に基づき極めて高価である。この場合、樹脂はシリコーンゴム中で溶解してはならず、それというのも、さもなくば触媒が抜け、ポットライフが劇的に減少するためである。従って、マイクロカプセル化された触媒がシリコーン中に不均一に分配されて存在する場合、これは架橋に対してマイナスの作用を及ぼし、それというのも、ポリオルガノシロキサン材料を均一に架橋することができないためである。先行技術の他の実施態様は、例えば欧州特許明細書EP0423588B1及びEP0491509B1に記載されているように、シクロデキストリン中への触媒の封入である。しかしながらこれは、この封入化合物が同様にシリコーン中で不溶性であり、それによりシリコーン中への均一な分配がもたらされないという大きな欠点を有する。それにより、架橋時間は高めた温度であっても極めてゆっくりでありかつこの種の架橋性ポリオルガノシロキサン材料は射出成形における加工に不適当である。もう1つの可能性は、触媒として、確かに高めた温度でヒドロシリル化反応が十分に迅速に進行するが、室温では数ヶ月のポットライフを達成する程度にわずかであるような活性を有する、特別な白金錯体を選択することよりなる。この種の白金錯体を含有しかつUV線により開始されて付加架橋するポリオルガノシロキサン材料は、例えば日本国特許出願公開明細書JP09−040870A2並びにドイツ国特許出願公開明細書DE3635236A1に記載された。他の白金錯体は、特許明細書EP0982370A1、EP0994159A1及びEP1077226A1に開示されている。
【特許文献1】US4,329,275A
【特許文献2】EP0490523A1
【特許文献3】EP0363006A1
【特許文献4】EP0423588B1
【特許文献5】EP0491509B1
【特許文献6】JP09−040870A2
【特許文献7】DE3635236A1
【特許文献8】EP0982370A1
【特許文献9】EP0994159A1
【特許文献10】EP1077226A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記載された材料、殊に最後の2つの特許文献に記載された材料は、部分的に十分に高い架橋速度において明らかに改善されたポットライフを有するが、更に、より性能の高い白金触媒により、上記の先行技術の欠点を甘受することなく、殊に1成分に調製された付加架橋性ポリオルガノシロキサン材料のポットライフ及び架橋速度を改善することが求められている。殊に、比較的低い開始温度を有し、かつそれにもかかわらず室温で長いポットライフを有する材料が求められている。前記課題は本発明により解決される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、以下
(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン
(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、及び
(D)以下
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

並びに、平均的な一般式(VII)、(VIII)又は(IX)
【0009】
【化3】

[式中、
は置換又は非置換のジエンを表し、前記ジエンは少なくとも1個のπ−結合により白金と結合しており、かつ4〜18個の炭素原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖、二環又は6〜28個の炭素原子を有する環式の環を表し、
eは0、1、2又は3を表し、
fは0、1、2又は3を表すが、但し、e+fはシランに関しては4であり、シロキサンに関しては0、1、2又は3であり、1分子当たり、aが0でない単位が少なくとも1つ含まれており、
UはO、NR、N−C(=O)−N(H)Rを表し、
WはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
XはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
YはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(R)−CNを表し、
ZはO、S、Se、NR、CRを表し、
は互いに無関係に水素、1価の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、前記炭化水素基は置換又は非置換であってよく、かつ鎖中のヘテロ原子もしくは環を含んでよく、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜28個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表すが、但し、少なくとも1つの基は−CN、−CO、−C(=O)−R、−NO、−C(=O)−H又はハロゲンであり、
は互いに無関係に2価の置換又は非置換の1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]
の単位を少なくとも1つ含むシラン及びシロキサン
から成る群から選択された白金触媒
を含有する架橋性ポリオルガノシロキサン材料である。
【0010】
一般式(I)〜(IX)の化合物は、前記化合物がN−及び/又はS−化合物を含むという事実に基づいて潜在的な阻害剤であるにもかかわらず、高めた温度で極めて迅速に架橋し、低い開始温度を有し、かつ同時に室温で長いポットライフをもたらす系が得られる。
【0011】
本発明による材料において使用される化合物(A)及び(B)ないし(C)は公知のように架橋が可能であるように選択される。例えば化合物(A)は少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも3つのSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)は少なくとも3つの脂肪族不飽和基を有し、シロキサン(B)は少なくとも2つのSi結合水素原子を有するか、又は化合物(A)及び(B)の代わりに前記の割合で脂肪族不飽和基及びSi結合水素原子を有するシロキサン(C)が使用される。
【0012】
本発明により使用される化合物(A)は、有利に少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有するケイ素不含の有機化合物、並びに有利に少なくとも2つの脂肪族不飽和基を有する有機ケイ素化合物であってもよい。本発明による材料において成分(A)として使用することができる有機化合物のための例は、1,3,5−トリビニルシクロヘキサン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、7−メチル−3−メチレン−1,6−オクタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、メチルシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、ビニル基含有ポリブタジエン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリアリルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン、3−メチル−ヘプタジエン−(1,5)、3−フェニル−ヘキサジエン−(1,5)、3−ビニル−ヘキサジエン−(1,5)及び4,5−ジメチル−4,5−ジエチル−オクタジエン−(1,7)、N,N’−メチレン−ビス−(アクリル酸アミド)、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリアクリレート、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)−プロパン−トリメタクリレート、トリプロピレングリコール−ジアクリレート、ジアリルエーテル、ジアリルアミン、ジアリルカーボネート、N,N’−ジアリル尿素、トリアリルアミン、トリス(2−メチルアリル)アミン、2,4,6−トリアリルオキシ−1,3,5−トリアジン、トリアリル−s−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、ジアリルマロン酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリ−(プロピレングリコール)メタクリレートである。
【0013】
しかしながら、有利に、本発明によるシリコーン材料は成分(A)として、脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を含有し、その際、今までに付加架橋性材料中に使用された全ての脂肪族不飽和有機ケイ素化合物を使用することができ、例えば尿素セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマー、アミド−セグメント及び/又はイミド−セグメント及び/又はエステル−アミド−セグメント及び/又はポリスチレン−セグメント及び/又はシラリーレン(Silarylen)−セグメント及び/又はカルボラン−セグメントを有するシリコーン−ブロックコポリマー及びエーテル基を有するシリコーングラフトコポリマーを使用することもできる。
【0014】
脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基を有する有機ケイ素化合物(A)として、平均的な一般式(X)
SiO(4−a−b)/2 (X)
[式中、
Rは同じ又は異なることができ、脂肪族炭素−炭素−多重結合を含有しない有機基を表し、
は同じ又は異なることができ、脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する1価の置換又は非置換のSiC結合炭化水素基を表し、
aは0、1、2又は3であり、かつ
bは0、1又は2であるが、
但し、a+bの合計が3以下であり、かつ1分子当たり平均して少なくとも2つの基Rが存在する]
の単位からなる有利に直鎖又は分枝鎖のオルガノポリシロキサンが使用される。
【0015】
基Rは1価又は多価の基であってよく、その際、多価の基、例えば2価、3価及び4価の基は複数の、例えば2つ、3つ又は4つの式(X)のシロキシ単位と相互に結合する。
【0016】
Rは1価の基−F、−Cl、−Br、−OR、−CN、−SCN、−NCO及び置換又は非置換のSiC結合炭化水素基(この基は酸素原子又は基−C(O)−で中断されていてもよい)、並びに2価の両側で式(X)によりSi結合した基を包含する。
【0017】
基Rが置換されたSiC結合炭化水素基である場合、置換基としてハロゲン原子、リン含有基、シアノ基、−OR、−NR−、−NR、−NR−C(O)−NR、−C(O)−NR、−C(O)−R、−C(O)OR、−SO−Ph及び−Cであり、その際、Rは上記の意味を表し、Phはフェニル基と同じであるのが有利である。
【0018】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、ドデシル基、例えばn−ドデシル基、及びオクタデシル基、例えばn−オクタデシル基、シクロアルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えばフェニル基、ナフチル基、アントリル基及びフェナントリル基、アルカリール基、例えばo−、m−、p−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、及びアラルキル基、例えばベンジル基、α−及びβ−フェニルエチル基である。
【0019】
置換された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基、−(CH−N(R)C(O)NR、−(CH−C(O)NR、−(CH−C(O)R、−(CH−C(O)OR、−(CH−C(O)NR、−(CH−C(O)−(CH−C(O)CH、−(CH−NR−(CH−NR、−(CH−O−CO−R、−(CH−O−(CH−CH(OH)−CHOH、−(CH−(OCHCH−OR、−(CH−SO−Ph及び−(CH−O−Cであり、その際、Rは前記した意味を表し、n及びmは0〜10の同じ又は異なる整数であり、Phはフェニル基を表す。
【0020】
Rが2価の両側が式(X)によりSi結合している基の例は、前記の基Rについて挙げられた1価の例から、付加的結合が水素原子の置換により行われることにより誘導されたようなものである。この種の基の例は、−(CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−CH−、−C−、−CH(Ph)−CH−、−C(CF−、−(CH−C−(CH−、−(CH−C−C−(CH−、−(CHO)−、−(CHCHO)−、−(CH−O−C−SO−C−O−(CH−であり、その際、xは0又は1であり、m及びnは前記した意味を表し、Phはフェニル基である。
【0021】
基Rは有利に1価の脂肪族炭素−炭素−多重結合を有していない、SiC結合した、置換又は非置換の1〜18個の炭素原子を有する炭化水素基、特に有利に1価の脂肪族炭素−炭素−多重結合を有していない、SiC結合した、1〜6個の炭素原子を有する炭化水素基、特にメチル基又はフェニル基である。
【0022】
基Rは任意の、SiH官能性化合物と付加反応(ヒドロシリル化)することができる基であってよい。
【0023】
基Rが、置換されたSiC結合炭化水素基である場合、置換基としてハロゲン原子、シアノ基及び−ORが有利であり、その際、Rは上記の意味を表す。
【0024】
基Rは有利に2〜16個の炭素原子を有するアルケニル基及びアルキニル基、例えばビニル基、アリル基、メタリル基、1−プロペニル基、5−ヘキセニル基、エチニル基、ブタジエニル基、ヘキサジエニル基、シクロペンテニル基、シクロペンタジエニル基、シクロヘキセニル基、ビニルシクロヘキシルエチル基、ジビニルシクロヘキシルエチル基、ノルボルネニル基、ビニルフェニル基及びスチリル基であるのが有利であり、その際、ビニル基、アリル基及びヘキセニル基が特に有利に使用される。
【0025】
成分(A)の分子量は、例えば10〜10g/molの間で広範囲に変化することができる。成分(A)は例えば比較的低分子量のアルケニル官能性オリゴシロキサン、例えば1,2−ジビニルテトラメチルジシロキサンであることができるが、例えば10g/molの分子量を有する(NMRを用いて測定した数平均)鎖端又は末端のSi結合ビニル基を介して提供される高分子量のポリジメチルシロキサンであることもできる。成分(A)を形成する分子の構造は確定しておらず;特に高分子量の、つまりオリゴマー又はポリマーのシロキサンの構造は直鎖、環式、分枝鎖又は樹脂状、網目状であることができる。直鎖及び環式のポリシロキサンは、式RSiO1/2、RSiO1/2、RRSiO2/2及びRSiO2/2の単位から構成されるのが有利であり、その際、R及びRは前記の意味を表す。分枝鎖及び網目状のポリシロキサンは付加的に3官能性及び/又は4官能性の単位を含有し、その際、式RSiO3/2、RSiO3/2及びSiO4/2のようなものが有利である。もちろん、成分(A)の基準に対して多様なシロキサンの混合物を使用することもできる。
【0026】
成分(A)として、それぞれ25℃で0.01〜500000Pa・s、特に有利に0.1〜100000Pa・sの粘度を有するビニル官能性の、主に直鎖のポリジオルガノシロキサンを使用するのが特に有利である。
【0027】
有機ケイ素化合物(B)として、今までにも付加架橋性材料において使用されてきた全ての水素官能性有機ケイ素化合物を使用することができる。
【0028】
Si結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(B)として、平均的な一般式(XI)
SiO(4−c−d)/2 (XI)
[式中、
Rは同じ又は異なることができ、上記の意味を表し、
cは0、1、2又は3であり、
dは0、1又は2であるが、
但し、c+dの合計は3以下であり、1分子当たり平均して少なくとも2つのSi結合水素原子が存在する]
で示される単位からなる有利に直鎖、環式又は分枝鎖のオルガノポリシロキサンが使用される。
【0029】
有利には本発明により使用されるオルガノポリシロキサン(B)はSi結合水素原子を、オルガノポリシロキサン(B)の総質量に対して0.04〜1.7質量%の範囲内で含有する。
【0030】
成分(B)の分子量は、同様に10〜10g/molの間で広範囲に変化することができる。従って、成分(B)は例えば比較的低分子量のSiH官能性オリゴシロキサン、例えばテトラメチルジシロキサンであることができるが、鎖端又は末端のSiH基を介して提供される高分子量のポリジメチルシロキサン又はSiH基を有するシリコーン樹脂であることもできる。成分(B)を形成する分子の構造も確定してはおらず;特に高分子量の、つまりオリゴマー又はポリマーのSiH含有シロキサンの構造は直鎖、環式、分枝鎖又は樹脂状、網目状であることもできる。直鎖及び環式のポリシロキサンは有利に式RSiO1/2、HRSiO1/2、HRSiO2/2及びRSiO2/2の単位から構成され、その際、Rは前記の意味を有する。分枝鎖及び網目状のポリシロキサンは付加的に3官能性及び/又は4官能性単位を含有することができ、その際、式RSiO3/2、HSiO3/2及びSiO4/2のようなものが有利である。もちろん成分(B)の基準に対して多様なシロキサンの混合物を使用することもできる。特に成分(B)を形成する分子は不可欠なSiH基に対して更に場合により同時に脂肪族不飽和基を含有することもできる。低分子量のSiH官能性化合物、例えばテトラキス(ジメチルシロキシ)シラン及びテトラメチルシクロテトラシロキサン、並びに高分子量のSiH含有シロキサン、例えばポリ(水素メチル)シロキサン及びポリ(ジメチル水素メチル)シロキサン(25℃で粘度10〜10000mPa・sを有する)又は同様にメチル基の部分が3,3,3−トリフルオロプロピル基又はフェニル基により置き換えられているSiH含有化合物を使用するのが特に有利である。
【0031】
成分(B)は有利に本発明による架橋性の全シリコーン材料中で、SiH基対脂肪族不飽和基のモル比が0.1〜20、特に有利に1.0〜5.0の間にあるような量で含有されている。
【0032】
本発明により使用される成分(A)及び(B)は市販の生成物であるかもしくは化学において慣用の方法により製造可能である。
【0033】
成分(A)及び(B)の代わりに、本発明による材料は、脂肪族炭素−炭素−多重結合及びSi結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン(C)を含有することができるが、これは有利ではない。
【0034】
シロキサン(C)を使用する場合、これは有利に式
SiO4−g/2、 RSiO3−h/2 及び RHSiO3−i/2
[式中、
R及びRはこのために上記された意味を表し、
gは0、1、2又は3であり、
hは0、1又は2であり、
iは0、1又は2であるが、
但し、1分子当たり少なくとも2つの基R及び少なくとも2個のSi結合水素原子が存在する]
の単位からなるようなものが挙げられる。
【0035】
オルガノポリシロキサン(C)の例は、SiO4/2単位、RSiO1/2単位、RSiO1/2単位及びRHSiO1/2単位からなるようなもの、いわゆるMQ樹脂であり、その際、この樹脂は付加的にRSiO3/2単位及びRSiO単位を含有することができ、並びに主にRSiO1/2単位、RSiO単位及びRHSiO単位からなる直鎖のオルガノポリシロキサンであり、その際R及びRは上記の意味を表す。
【0036】
オルガノポリシロキサン(C)は有利にそれぞれ25℃で0.01〜500000Pa・s、特に有利に0.1〜100000Pa・sの平均粘度を有する。
【0037】
オルガノポリシロキサン(C)は化学において慣用の方法により製造可能である。
【0038】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−又はp−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基、並びに式−C(R)=CRの基であり;ハロゲン化された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−又はp−クロロフェニル基である。
【0039】
は有利に水素原子、アルキル基及びアリール基であり、その際、水素原子、メチル基及びエチル基は殊に有利である。
【0040】
の例は、ジエン、例えば1,3−ブタジエン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−2,4−ヘキサジエン、α−及びβ−テルピン、(R)−(+)−4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセン、(S)−(−)−4−イソプロペニル−1−メチル−1−シクロヘキセン、4−ビニル−1−シクロヘキセン、2,5−ヘプタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジクロロ−1,5−シクロオクタジエン、5,8−ジヒドロ−1,4−ジオキソシン(dioxocin)、η−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、η−1,3,5−シクロヘプタトリエン、η−1−フルオロ−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、η−1,2,4,7−テトラメチル−1,3,5,7−シクロオクタテトラエン、1,8−シクロテトラデカジエン、1,9−シクロヘキサデカジエン、1,13−シクロテトラコサジエン、η−1,5,9−シクロドデカトリエン、η−1,5,10−トリメチル−1,5,9−シクロドデカトリエン、η−1,5,9,13−シクロヘキサデカテトラエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,3−ドデカジエン、メチルシクロペンタジエン二量体、4,7−メチレン−4,7,8,9−テトラヒドロインデン、ビシクロ[4.2.2]デカ−3,9−ジエン−7,8−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[4.2.2]デカ−3,9−ジエン−7,8−ジカルボン酸アルキルエステル及びビシクロ[4.2.2]デカ−3,7,9−トリエン−7,8−ジカルボン酸アルキルエステルである。
【0041】
有利に、ジエンRは1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1−クロロ−1,5−シクロオクタジエン、1,5−ジクロロ−1,5−シクロオクタジエン、1,8−シクロテトラデカジエン、1,9−シクロヘキサデカジエン、1,13−シクロテトラコサジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、4−ビニル−1−シクロヘキセン及びη−1,3,5,7−シクロオクタテトラエンであり、その際、1,5−シクロオクタジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン、1,5−ジメチル−1,5−シクロオクタジエン、1,6−ジメチル−1,5−シクロオクタジエンが特に有利である。
【0042】
の例はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、ビシクロオクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基及びアダマンチル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−又はp−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基であり;Rの他の例は、置換された基、例えばシアノ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基、並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基である。
【0043】
ハロゲン化された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えば3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−又はp−クロロフェニル基である。
【0044】
有利に、基Rは水素原子、1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基であり、その際、水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基、アダマンチル基、フェニル基並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基は特に有利である。
【0045】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、ビシクロオクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基及びアダマンチル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−又はp−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基であり;Rの他の例は、置換された基、例えばシアノ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基である。ハロゲン化された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−又はp−クロロフェニル基である。
【0046】
有利に、基Rは水素原子及び1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、その際、水素原子、メチル基、エチル基、t−ブチル基及びフェニル基は特に有利である。
【0047】
有利に、基Rは水素原子及び1価の置換又は非置換の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基であるが、但し、−CN、−CO、−C(=O)R、−NO、−C(=O)−H又はハロゲンを含む群から選択された少なくとも1つの基が含まれている。
【0048】
の例は、水素、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、ビシクロオクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基である。
【0049】
有利に、基Rは水素原子及び1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基であり、その際、水素原子、メチル基、フェニル基並びに構造−CO及び−C(=O)−Rを有する基は特に有利である。
【0050】
の例はアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、1,6−ヘキシレン基及び2,5−ヘキシレン基;アリーレン基、例えばフェニレン基、メトキシフェニレン基;アリールアルキレン基、例えば−CH−CH(CH)−C−CH(CH)CH−、−(CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CH(CH)−CH−、−C−、−CH(Ph)−CH−、−C(CF−、−(CH−C−(CH−、−C−(CH−、−C−O−(CH−、−(CH−C−C−(CH−、−(CHO)−、−(CHCHO)−、−(CH−O−C−SO−C−O−(CH−であり、その際、xは0又は1であり、n及びmは0〜10の同じ又は異なる整数であり、Phはフェニル基を表す。
【0051】
有利に基Rは1〜12個の炭素原子を有する2価の炭化水素基、例えば−CH−、−C−、−C−、−C−、−C10−、−C−、−C−(CH−、−C−O−(CH−である。
【0052】
の例はアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、オクチル基、例えばn−オクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基及びアダマンチル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばビニル基、アリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−又はp−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基であり、Rの他の例は、置換された基、例えばシアノ基、ヒドロキシ基、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基及びフェノキシ基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、アセトキシフェニル基及びメトキシヒドロキシフェニル基である。
【0053】
ハロゲン化された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−及びp−クロロフェニル基である。
【0054】
有利に、基Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、その際、メチル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基及びフェニル基は特に有利である。
【0055】
基Rの例は、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、1−n−ブチル基、2−n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、例えばn−ヘキシル基、ヘプチル基、例えばn−ヘプチル基、ノルボルニル基、オクチル基、例えばn−オクチル基、ビシクロオクチル基及びイソオクチル基、例えば2,2,4−トリメチルペンチル基、ノニル基、例えばn−ノニル基、デシル基、例えばn−デシル基及びアダマンチル基、シクロアルキル基、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、不飽和基、例えばアリル基、5−ヘキセニル基、7−オクテニル基、シクロヘキセニル基及びスチリル基、アリール基、例えばフェニル基、o−、m−又はp−トリル基、キシリル基及びエチルフェニル基、アラルキル基、例えばベンジル基及びα−及びβ−フェニルエチル基である。
【0056】
の他の例は、置換された基、例えばアセトキシ基、ヒドロキシアリール基、メトキシアリール基、エトキシアリール基、イソプロポキシアリール基、ブトキシアリール基及びフェノキシアリール基、例えば2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基、2,4−ジメトキシフェニル基、アセトキシフェニル基及びメトキシヒドロキシフェニル基である。ハロゲン化された基Rの例は、ハロゲンアルキル基、例えばトリフルオロメチル基、3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル基、2,2,2,2’,2’,2’−ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基及びハロゲンアリール基、例えばo−、m−、p−クロロフェニル基、o−、m−、p−ブロモフェニル基、o−、m−又はp−フルオロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基及びペンタフルオロフェニル基である。
【0057】
有利に、基Rは1〜10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、その際、t−ブチル基、アセトキシ基及びフェニル基は特に有利である。
【0058】
白金触媒(D)は、有利に式(I)、(V)、(VII)、(VIII)及び(IX)の白金錯体であり、その際、RはCOD又はnbdを表す。CODはこの場合1,5−シクロオクタジエンを表し、nbdはビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンを表す。
【0059】
殊に有利に、白金触媒(D)はCODPt(−N(Ph)−C(=O)−(Ph)N−)、CODPt(−N(−C(=O)CH)−C(=O)−(CH(=O)C−)N−)、(−N(−C(=O)(CH16CH)−C(=O)−(CH(CH16(=O)C−)N−)、CODPt(−N(−C(=O)CH)−C(=O)−(Ph)N−)、CODPt(−N(−C(=O)(CH16CH)−C(=O)−(Ph)N−)、CODPt(−N(−C(=O)CH)−C(=O)−((CHC−)N−)、COD(Pt(−N(C−CH)−C(=O)−(CH−C)N−)、CODPt(−N(Ph)−C(=O)−(C13)N−)、COD(Pt(−N(C−CH)−C(=O)−(C13)N−)、nbdPt(−N(Ph)−C(=O)−(Ph)N−)、nbdPt(−N(Ph)−C(=O)−(C13)N−)、nbdPt(−N(−C(=O)CH)−C(=O)−(CH(=O)C−)N−)、nbdPt(−N(−C(=O)CH)−C(=O)−(Ph)N−)及び式(VII)、(VIII)及び(IX)の化合物(D)である。
【0060】
平均的な一般式(VII)、(VIII)及び(IX)の白金触媒(D)の例は、式(VII)、(VIII)及び(IX)の白金錯体であり、その際、RはCOD又はnbdを表す。CODはこの場合1,5−シクロオクタジエンを表し、nbdはビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンを表す。他の例は、以下
【0061】
【化4】

【0062】
【化5】

であり、ここでgは0であるか又は1〜500の整数であり、その際、1〜100が有利であり、かつ1〜50は特に有利であり、Meはメチル基を表す。
【0063】
がCOD又はnbdである式(VII)及び(VIII)の白金錯体は特に有利である。
【0064】
本発明のもう1つの対象は、以下
(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン
(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、及び
(D)以下
【0065】
【化6】

【0066】
【化7】

並びに、平均的な一般式(VII)、(VIII)又は(IX)
【0067】
【化8】

[式中、
は置換又は非置換のジエンを表し、前記ジエンは少なくとも1個のπ−結合により白金と結合しており、かつ4〜18個の炭素原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖、二環又は6〜28個の炭素原子を有する環式の環を表し、
eは0、1、2又は3を表し、
fは0、1、2又は3を表すが、但し、e+fはシランに関しては4であり、シロキサンに関しては0、1、2又は3であり、1分子当たり、aが0でない単位が少なくとも1つ含まれており、
UはO、NR、N−C(=O)−N(H)Rを表し、
WはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
XはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
YはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(R)−CNを表し、
ZはO、S、Se、NR、CRを表し、
は互いに無関係に水素、1価の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、前記炭化水素基は置換又は非置換であってよく、かつ鎖中のヘテロ原子もしくは環を含んでよく、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜28個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表すが、但し、少なくとも1つの基は−CN、−CO、−C(=O)R、−NO、−C(=O)−H又はハロゲンであり、
は互いに無関係に2価の置換又は非置換の1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]
の単位を少なくとも1つ含むシラン及びシロキサン
から成る群から選択された白金触媒
を含有する架橋性ポリオルガノシロキサン材料の製造法において、少なくとも成分(A)、(B)、(C)及び(D)を混合することを特徴とする、架橋性ポリオルガノシロキサン材料の製造法である。
【0068】
有利に組成を1成分で構成する。そのために、少なくとも成分(A)、(B)及び(D)を1成分で混合する。他の有利な実施態様において、成分(C)及び(D)を1成分で混合する。本発明による架橋性ポリオルガノシロキサン材料は有利に1成分で構成されるが、これを2又は多成分の組成物として使用することもできる。例えば、第一の成分において成分(A)及び(D)を使用し、第二の成分において(B)及び場合により(A)を使用する。
【0069】
本発明による架橋性ポリオルガノシロキサン材料の架橋により得られるシリコーンエラストマーも本発明の対象である。本発明による架橋性材料は、簡単な方法で、容易に入手可能な出発物質を使用して、それにより経済的に製造することができるという利点を有する。
【0070】
更に、本発明による架橋性材料は1成分調製物として25℃で大気圧で良好な貯蔵安定性を示し、より高い温度でようやく極めて迅速に架橋する。
【0071】
更に、本発明による架橋性材料は、長いポットライフに相応する室温貯蔵における良好な貯蔵安定性にもかかわらず、低い開始温度を示すという利点を有する。
【0072】
本発明による架橋性材料は、室温貯蔵における良好な貯蔵安定性(ポットライフ)にもかかわらず、高めた温度において高い架橋速度を示すという利点を有する。
【0073】
本発明によるシリコーン材料は、2成分調製物において両方の成分を混合した後に架橋性シリコーン材料が生じ、その加工性は、極めて長いポットライフに相応して、25℃で、長時間にわたり大気圧で維持され、かつより高い温度でようやく極めて迅速に架橋するという利点を有する。
【0074】
本発明による架橋性材料を製造する際、白金触媒(D)を容易に混入することができることは大きな利点である。
【0075】
本発明による材料は、架橋したシリコーンゴムが優れた透明性を示すという利点を有する。
【0076】
本発明による材料は、架橋したシリコーンゴムが、他の白金触媒を使用した場合にしばしば認められるような黄色味/黄変を示さないという更なる利点を有する。
【0077】
本発明による材料は、白金触媒(D)が架橋反応の最後に白金コロイドを形成しないという利点を有する。
【0078】
更に、本発明による材料は、ヒドロシリル化反応が反応時間と共に速度が落ちないという利点を有する。
【0079】
本発明による白金錯体は、有機ケイ素化学において周知のヒドロシリル化反応のための触媒として、不飽和有機化合物又はポリマーの水素化のための触媒及びアセチレン及び他のアルキンのオリゴマー化のための触媒として有用である。
【0080】
本発明による白金触媒は末端の二重結合がヒドロシリル化の際に内側へ転位せず、それにより弱反応性の異性化された出発生成物が残留するという他の利点を有する。
【0081】
本発明による白金触媒は、更に、白金コロイドが生成されず、その使用により着色が生じないという利点を有する。
【0082】
更に、本発明の対象は、本発明による架橋性ポリオルガノシロキサン材料を有利に熱又は放射線、例えばUV線又はマイクロ波放射線の作用下に架橋させることを特徴とする、シリコーンエラストマーの製造法である。25〜200℃、特に50〜150℃の温度での本発明による架橋性ポリオルガノシロキサン材料の架橋は特に有利である。
【0083】
本発明により得られるシリコーンエラストマーは、今までにもエラストマーへと架橋可能なオルガノポリシロキサン材料ないしエラストマーのために使用されてきた全ての目的のために使用することができる。本発明により得られるシリコーンエラストマーは、特に電気的又は電子的装置のための埋封材料として、鋳造材料、被覆材料として、及び例えば射出成形法、真空押出法、押出法、注型成形及び圧縮成形における成形体の製造のための使用に適当である。
【0084】
本発明による白金化合物の製造は、例えば若干の実施態様に関して、J. Organomet. Chem. 526 (1996) 303-312, J. Organomet. Chem. 556 (1998) 75-88, J. Chem. Soc. Dalton Trans. (1992) 409, J. Chem. Soc. Dalton Trans. (1994) 3085及びChem. Commun. (1996) 211に記載されている。
【0085】
本発明の他の対象は、
a)CODPtCl、相応するリガンド及び酸化銀を溶剤中に装入し、
b)熱供給下に反応混合物を反応させ、かつ
c)反応混合物の冷却後に銀化合物を除去し、
その際、CODPtClはジクロロ−(シクロオクタ−1,5−ジエン)白金(II)を表すことを特徴とする、一般式(VII)、(VIII)及び(IX)の本発明による白金触媒(D)の製造法である。
【0086】
有利な実施態様において、溶液を引き続き濃縮して乾燥させ、生成物を場合により再結晶させる。この場合、全ての反応は有利に保護ガス雰囲気、例えば窒素、ヘリウム又はアルゴン下で実施される。溶剤として、全ての非プロトン性溶剤、殊にジクロロメタン、アセトン及びテトラヒドロフランTHF、殊に塩素化溶剤及び殊にジクロロメタン又はクロロホルムが有利である。有利に、反応は還流を伴う加熱下に行われる。また、塩基として酸化銀の代わりに水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムをジクロロメタンとTHFとからの溶剤混合物中で使用することができる。
【実施例】
【0087】
本発明の原則的な実施可能性を示すが、限定的な特徴を示すわけではない以下の実施例において、反応の際には主に酸化銀(AgO)を塩基として使用したが、他の塩基も可能である。市販の酸化銀(例えばALDRICH BmbH社からのもの)か、又は新たに製造された酸化銀を使用したが、新たに製造された酸化銀を使用した場合には、硝酸銀と水酸化ナトリウムとを保護ガス雰囲気下に反応させることにより製造した。そのために、硝酸銀4.40部を水40部中に溶解させ、水40部中に溶解させた水酸化ナトリウム1.10部からの溶液を滴加した。2時間撹拌させ、一晩放置した後、形成された沈殿物AgOをガラスフリットで濾別し、水100ml、メタノール100ml及びジクロロメタン50mlで後洗浄した。引き続き、酸化銀を真空中で重量が一定となるまで乾燥させた。
【0088】
全ての溶剤を更に乾燥させることなく購入したまま使用した。全ての部の表示は質量部であると解釈すべきである。
【0089】
CODPtCl及びnbdPtClはジクロロ−(シクロオクタ−1,5−ジエン)白金(II)ないしジクロロ−(2,5−ノルボルナジエン)白金(II)を表す。
【0090】
白金錯体のための一般的な製造工程:
全ての反応を保護ガス雰囲気、有利に窒素又はアルゴン下で実施した。CODPtCl、リガンド、酸化銀及びジクロロメタン50〜200部を還流下に4〜18時間加熱した。引き続き、混合物を室温に冷却し、濾過し、銀化合物を除去した。溶液を濃縮して乾燥させ、生成物をジクロロメタン−ジエチルエーテル又はジクロロメタン−ヘプタンから再結晶させた。
【0091】
触媒1:
CODPtCl 0.5部、N,N−ジフェニル尿素0.29部、酸化銀2.1部及びジクロロメタン50部を還流下に7時間加熱した。上記の一般的な後処理の後、式
【0092】
【化9】

の白金錯体0.42部を得た。
【0093】
触媒2:
触媒1の製造と同様に製造したが、但し、CODPtClの代わりにnbdPtClを使用し、目的生成物をソックスレー(Soxhlet)装置を用いた抽出により取得した。構造式
【0094】
【化10】

を有する目的生成物0.2部を得た。
【0095】
触媒3:
CODPtCl 1.0部、N−(n−ヘキシル)−N−フェニル尿素0.60部、前記の方法により新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン200部を還流下に6時間加熱した。上記の一般的な後処理の後、式
【0096】
【化11】

の白金錯体1.3部を得た。
【0097】
触媒4:
CODPtCl 1.5部、N,N−ジアセチル尿素0.61部、前記の方法により新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン200部を還流下に7時間加熱した。上記の後処理の後、式
【0098】
【化12】

の白金錯体0.95部を得た。
【0099】
触媒5:
CODPtCl 1.0部、フェニルリン酸0.45部、市販の酸化銀2.9部及びジクロロメタン50部を還流下に7.5時間加熱した。後処理の後、式
【0100】
【化13】

の白金錯体0.9部を得た。
【0101】
触媒6:
CODPtCl 1.5部、N−アセチル−N’−フェニル尿素0.75部、前記の方法により新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン200部を還流下に7時間加熱した。後処理の後、式
【0102】
【化14】

の白金錯体1.0部を得た。
【0103】
触媒7:
CODPtCl 0.5部、N−アセチルグリシン0.16部、前記の方法により新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン50部を還流下に7時間加熱した。後処理の後、式
【0104】
【化15】

の白金錯体0.46部を得た。
【0105】
触媒8:
CODPtCl 0.102部、D,L−マンデル酸0.042部、酸化銀0.807部及びジクロロメタン200部を還流下に5時間加熱した。後処理の後、式
【0106】
【化16】

の白金錯体0.100部を得た。
【0107】
触媒9:
フェニルイソシアネート2.65部をジエチルエーテル10部中に溶解させ、室温で、アミノプロピルジメチルシロキシ末端基及びジメチルシロキシ基20個を鎖中に有するポリ(ジメチル)シロキサン(前記化合物の製造は当業者に公知である)21.15部とジエチルエーテル50部とからの溶液中に滴加する。2時間後、溶剤を真空中で除去し、以下の式を有する油状物(リガンド1)20.7部を得る:Ph−N(H)−C(=O)−N(H)−(CH−(Si(CH−O)21−Si(CH−(CH−N(H)−C(=O)−N(H)−Ph。
【0108】
CODPtCl一部、リガンド1 3.16部、新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン200部を還流下に3時間加熱した。後処理の後、式
【0109】
【化17】

を有する樹脂状の生成物3.9部を得た。
【0110】
触媒10:
フェニルイソシアネート5.24部をジエチルエーテル20部中に溶解させ、室温で、アミノエチルアミノプロピルジメチルシロキシ末端基及びジメチルシロキシ基47個を鎖中に有するポリ(ジメチル)シロキサン(前記化合物の製造は当業者に公知である)54.4部とジエチルエーテル50部とからの溶液中に滴加する。1時間後、溶剤を真空中で除去し、以下の式を有する油状物(リガンド2)59.3部を得る:Ph−N(H)−C(=O)−N(H)−(CH−N[−C(=O)−N(H)Ph]−(CH−(Si(CH−O)48−Si(CH−(CH−N[−C(=O)N(H)Ph]−(CHN(H)−C(=O)−N(H)−Ph。
【0111】
CODPtCl一部、リガンド2 7.94部、新たに製造された酸化銀2.9部及びジクロロメタン200部を還流下に6時間加熱した。後処理の後、式
【0112】
【化18】

を有する高粘性の生成物8.3部を得た。
【0113】
触媒11:
m−アニシジン6.15部をジエチルエーテル50部中に溶解させ、室温で、ジエチルエーテル130ml中に溶解させたトルイレン−2,4−ジイソシアネート10部からの溶液中に滴加する。反応の間、白色様の沈殿物が生成し、これを濾別し、ヘプタンで洗浄し、真空中で乾燥させる(リガンド3)。
【0114】
リガンド3 6.23部を無水THF80ml中に溶解させ、アミノプロピルジメチルシロキシ末端基及びジメチルシロキシ基20個を鎖中に有するポリ(ジメチル)シロキサン(前記化合物の製造は当業者に公知である)21.15部とTHF30部とからの溶液と混合する。3時間後、溶剤を真空中で除去し、以下の式を有する油状物(リガンド4)25.5部を得る:CHO−C−N(H)−C(=O)−N(H)−C(−CH)−N(H)−C(=O)−N(H)−(CH−(Si(CH−O)21−Si(CH−(CH−N(H)−C(=O)−N(H)−C(−CH)−N(H)−C(=O)−N(H)−C−OCH
【0115】
CODPtCl一部、リガンド4 3.66部、酸化銀3.2部及びアセトン200部を還流下に6時間加熱した。後処理の後、式
【0116】
【化19】

を有する樹脂状の生成物4.4部を得た。
【0117】
実施例1:
粘度20Pa・sを有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン50.0部、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.033部及びSiH架橋剤1部をJanke & Kunkel IKA-Labortechnik社のRE 162型の撹拌機を用いて均質に混合し、その際、SiH架橋剤は、粘度330mPa・s及びSi結合水素の含有量0.46質量%を有するジメチルシロキシ単位及びメチル水素シロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から成るコポリマーであった。引き続き、塩化メチレン0.5ml中に溶解させた触媒1(全材料に対してPt10ppmの含有量に相当する)0.0014部を室温で撹拌混入した。
【0118】
実施例2〜11は実施例1に相応するが、但し、種々の触媒を使用した。混合物を第1a表及び第1b表から引用することができる。使用した触媒の量はその都度全材料中でPt10ppmであった。
【0119】
実施例12:
実施例1に記載した処理方式を繰り返すが、但し、触媒を添加する前に、エチニルシクロヘキサノールの代わりに3−メチル−1−ドデシン−3−オール47mgを撹拌混入するという変更を加える。
【0120】
比較例1:
実施例1に記載した処理方式を繰り返すが、但し、触媒1の代わりに、ビニル末端ポリジメチルシロキサン中の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン−錯体としての白金10ppmを撹拌混入するという変更を加える。
【0121】
比較例2:
実施例1に記載した処理方式を繰り返すが、但し、触媒1の代わりに、1,5−シクロオクタジエン白金ジクロリド0.001部を使用するという変更を加える。
【0122】
実施例13:
実験室ニーダー中に粘度20Pa・sを有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン255質量部を装入し、150℃に加熱し、300m/gのBETによる比表面積及び3.95質量%の炭素含有量を有する疎水性の熱分解法シリカ180質量部と混合した。高粘度の材料が生じ、これを引き続き上記のポリジメチルシロキサン165質量部で希釈した。真空(10mbar)下で150℃で混練することにより、1時間の間に揮発性成分を除去した。
【0123】
こうして製造した基本材料487.29部を、ローラで25℃の温度で、1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.160部、SiH架橋剤10.55部及び触媒バッチ2.0部と混合して均質な材料にし、その場合、SiH架橋剤は、粘度330mPa・s及びSi結合水素の含有量0.46質量%を有するジメチルシロキシ単位及びメチル水素シロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から成るコポリマーであり、触媒バッチは前記のビニルポリジメチルシロキサンと触媒1とから成る混合物であり、その製造は前記されている(全材料に対して白金含有量5ppm)。
【0124】
実施例14:
鎖中に平均して3つのビニル基を有し、かつブラベンダー可塑性630mkp(平均分子量約500000g/mol相当)を有するビニルジメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン589.4部を、300m/gのBETによる比表面積及び炭素含有量3.95質量%を有する疎水性の熱分解法シリカ252.6質量部(少しずつ供給する)とニーダー中で4時間混合して均質な材料にした。
【0125】
こうして得られた基本材料100部をローラで20℃の温度で、1−エチニルシクロヘキサン−1−オール0.05部、SiH架橋剤1.2部及びジクロロメタン1ml中に溶解された触媒1 0.00066部と混合して均質な材料にしたが、その際、SiH架橋剤は、25℃で粘度310mPa・s及びSi結合水素の含有量0.46質量%を有するジメチルシロキシ単位及びメチル水素シロキシ単位及びトリメチルシロキシ単位から成るコポリマーであった。
【0126】
実施例15:
実施例14に記載された処理方式を繰り返すが、但し、触媒として(ジクロロメタン1部中に溶解された)白金錯体6 0.0013部を使用する変更を加える。
【0127】
実施例16:
実施例14に記載された処理方式を繰り返すが、但し、触媒として(ジクロロメタン1部中に溶解された)白金錯体7 0.0011部を使用する変更を加える。
【0128】
実施例1〜12並びに比較例1及び2において製造したポリオルガノシロキサン材料の熱硬化特性を、Dynamic Analyzer RDA II(Rheometrics社)を用いて30〜200℃の加熱曲線を用いて及び5℃/分の加熱速度で測定した。最大トルクの4%値に相当する温度を開始温度aとして定義した。貯蔵性を定量的に測定するために、製造した調製物を室温(RT)で貯蔵し、その際、粘度の出発値が2倍になるまでの時間(その都度日で測定)を測定した。この測定結果を第1a表及び第1b表に示した。
【0129】
【表1】

【0130】
実施例13〜16において製造したポリオルガノシロキサン材料の熱硬化特性を、Goettfert-Elastographで測定した。開始温度aを10℃/分の加熱速度で測定した。この場合、最大トルクの4%値に相当する温度を開始温度aとして定義した。
【0131】
90値の測定をDIN53529T3により行った。最大トルクの90%までの硬化が開始する時間(t90値)をこの場合150℃で測定した。この測定結果を表2に示した。
【0132】
貯蔵性を定量的に測定するために、製造した調製物を室温(RT)及び40℃で貯蔵し、その際、粘度の出発値が2倍になるまでの時間(その都度日で測定)を測定した。この測定結果を表2に示した。
【0133】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下
(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン
(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、及び
(D)以下
【化1】

【化2】

並びに、一般式(VII)、(VIII)又は(IX)
【化3】

【化4】

[式中、
は置換又は非置換のジエンを表し、前記ジエンは少なくとも1個のπ−結合により白金と結合しており、かつ4〜18個の炭素原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖、二環又は6〜28個の炭素原子を有する環式の環を表し、
eは0、1、2又は3を表し、
fは0、1、2又は3を表すが、但し、e+fはシランに関しては4であり、シロキサンに関しては0、1、2又は3であり、1分子当たり、aが0でない単位が少なくとも1つ含まれており、
UはO、NR、N−C(=O)−N(H)Rを表し、
WはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
XはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
YはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(R)−CNを表し、
ZはO、S、Se、NR、CRを表し、
は互いに無関係に水素、1価の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、前記炭化水素基は置換又は非置換であってよく、かつ鎖中のヘテロ原子もしくは環を含んでよく、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜28個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表すが、但し、少なくとも1つの基は−CN、−CO、−C(=O)R、−NO、−C(=O)−H又はハロゲンであり、
は互いに無関係に2価の置換又は非置換の1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]
の単位を少なくとも1つ含むシラン及びシロキサン
から成る群から選択された白金触媒
を含有する架橋性ポリオルガノシロキサン材料。
【請求項2】
白金触媒が以下
【化5】

から成る群から選択されている、請求項1記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料。
【請求項3】
がシクロオクタ−1,5−ジエンである、請求項1又は2記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料。
【請求項4】
がビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンである、請求項1又は2記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料の製造法において、成分
(A)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有する基を有するポリオルガノシロキサン
(B)Si結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、又は(A)及び(B)の代わりに
(C)脂肪族炭素−炭素−多重結合を有するSiC結合基及びSi結合水素原子を有するポリオルガノシロキサン、及び
(D)以下
【化6】

【化7】

並びに、平均的な一般式(VII)、(VIII)又は(IX)
【化8】

[式中、
は置換又は非置換のジエンを表し、前記ジエンは少なくとも1個のπ−結合により白金と結合しており、かつ4〜18個の炭素原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖、二環又は6〜28個の炭素原子を有する環式の環を表し、
eは0、1、2又は3を表し、
fは0、1、2又は3を表すが、但し、e+fはシランに関しては4であり、シロキサンに関しては0、1、2又は3であり、1分子当たり、aが0でない単位が少なくとも1つ含まれており、
UはO、NR、N−C(=O)−N(H)Rを表し、
WはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
XはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
YはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(R)−CNを表し、
ZはO、S、Se、NR、CRを表し、
は互いに無関係に水素、1価の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、前記炭化水素基は置換又は非置換であってよく、かつ鎖中のヘテロ原子もしくは環を含んでよく、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜28個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表すが、但し、少なくとも1つの基は−CN、−CO、−C(=O)R、−NO、−C(=O)−H又はハロゲンであり、
は互いに無関係に2価の置換又は非置換の1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]
の単位を少なくとも1つ含むシラン及びシロキサン
から成る群から選択された白金触媒
を混合することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料の製造法。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料の架橋により得ることができるシリコーンエラストマー。
【請求項7】
請求項6記載のシリコーンエラストマーの製造法において、請求項1から4までのいずれか1項記載の架橋性ポリオルガノシロキサン材料を熱又は放射線の作用により架橋させることを特徴とする、請求項6記載のシリコーンエラストマーの製造法。
【請求項8】
電気的又は電子的装置のための埋封材料として、鋳造材料、被覆材料として、及び射出成形法、真空押出法、押出法、注型成形及び圧縮成形における成形体の製造のための、請求項6記載のシリコーンエラストマーの使用。
【請求項9】
一般式(VII)、(VIII)又は(IX)
【化9】

[式中、
eは0、1、2又は3を表し、
fは0、1、2又は3を表すが、但し、e+fはシランに関しては4であり、シロキサンに関しては0、1、2又は3であり、1分子当たり、aが0でない単位が少なくとも1つ含まれており、
UはO、NR、N−C(=O)−N(H)Rを表し、
WはNR、C(R)−CO、C(R)−C(=Z)−R、S、O、C(Rを表し、
は置換又は非置換のジエンを表し、前記ジエンは少なくとも1個のπ−結合により白金と結合しており、かつ4〜18個の炭素原子を有する非分枝鎖又は分枝鎖、二環又は6〜28個の炭素原子を有する環式の環を表し、
は互いに無関係に水素、1価の1〜24個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、前記炭化水素基は置換又は非置換であってよく、かつ鎖中のヘテロ原子もしくは環を含んでよく、
は互いに無関係に水素、又は1価の置換又は非置換の1〜28個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に2価の置換又は非置換の1〜26個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表し、
は互いに無関係に1価の置換又は非置換の1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基を表す]
の白金触媒。
【請求項10】
がシクロオクタ−1,5−ジエンである、請求項9記載の白金触媒。
【請求項11】
がビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエンである、請求項9記載の白金触媒。
【請求項12】
請求項9記載の白金触媒の製造法において、
a)CODPtCl、相応するリガンド及び酸化銀を溶剤中に装入し、
b)熱供給下に反応混合物を反応させ、かつ
c)反応混合物の冷却後に銀化合物を除去し、
その際、CODPtClはジクロロ−(シクロオクタ−1,5−ジエン)白金(II)を表すことを特徴とする、請求項9記載の白金触媒の製造法。
【請求項13】
請求項9記載の白金触媒の製造法において、
a)nbdPtCl、相応するリガンド及び酸化銀を溶剤中に装入し、
b)熱供給下に反応混合物を反応させ、かつ
c)反応混合物の冷却後に銀化合物を除去し、
その際、nbdPtClはジクロロ−(ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)白金(II)を表すことを特徴とする、請求項9記載の白金触媒の製造法。

【公開番号】特開2006−169537(P2006−169537A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−365089(P2005−365089)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】