説明

架空用開閉器用穴あけ工具

【課題】 迅速かつ確実に架空用開閉器から水抜き可能な架空用開閉器用穴あけ工具を提供する。
【解決手段】 開閉器10の底板14を円環状に切削して水抜き用穴を開ける円筒形状のドリル3と、ドリル3の円筒内に設けられて、円環状に切削された前記底板14の円環内断片を、押動により前記底板14から切り離す押動子1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に水が侵入した架空用開閉器の水抜きに使用する架空用開閉器用穴あけ工具に関する。
【背景技術】
【0002】
配電用の架空用開閉器は、気圧差や錆等の影響により、その内部に水が侵入する場合がある。このため、架空用開閉器への水の浸入の有無を浸水測定器により定期的に測定し、水が浸入した架空用開閉器の取り替え工事を行っている。この場合、工事の振動により、架空用開閉器に侵入した水が飛び散り、開閉器内部の短絡、地絡が生じるおそれがある。このような短絡、地絡を回避するため、事前工事としてバイパスケーブルを施設して取り替え工事を行っている。
【0003】
取り替え工事前に架空用開閉器に穴を開けて水を除去すれば、短絡、地絡の発生が回避されて、架空用開閉器の取り替え工事を行うことができるため、必らずしもバイパスケーブルを施設する必要はない。穴あけ工具については、原子炉容器内の炉心シュラウド支持板に遠隔操作で穴を開ける工具が知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−123286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1の穴あけ工具は、穴あけ作業中に発生した切りくずを多量の高圧水により、切りくずバスケットに流して原子炉容器への悪影響を防止するものであり、水が浸入した架空用開閉器に穴を開けて水を除去する穴あけ工具を示唆するものではない。
【0005】
上述のようにバイパスケーブルを施設することなく、迅速かつ低コストで架空用開閉器の取り替え工事が可能であることが望まれており、そのためには、予め架空用開閉器に穴を開けて水を除去すればよい。本発明は、このような事情に鑑み、迅速、確実に架空用開閉器に穴を開けることができる穴あけ工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る架空用開閉器用穴あけ工具は、架空用開閉器の底板を円環状に切削して水抜き用穴を開ける円筒形状のドリルと、ドリルの円筒内に設けられて、円環状に切削された前記底板の円環内断片を、押動により前記底板から切り離す押動子とを備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ドリルにより円環状に切削された架空用開閉器の底板の円環内断片は、押動子により押動されて前記底板から切り離された状態で、水抜き用穴が形成される。このため、円環内断片が架空用開閉器内の水圧により水抜き用穴を塞ぐことがなく、前記水抜き用穴が全開状態に維持される。その結果、架空用開閉器内部に侵入した水を水抜き穴を通してスムース、かつ確実に外部に除去することができる。
【0008】
押動子を架空用開閉器の底板に向け付勢するバネを有するように構成すると、簡単な構成で押動子の押動切り離し動作を可能とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、架空用開閉器の水抜きを、迅速、確実に行うことができる架空用開閉器用穴あけ工具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1、図2は架空用開閉器用穴あけ工具100の全体を概略的に示している。架空用開閉器用穴あけ工具100は、架空用開閉器10に本工具100を取付けるための取付部材13と、架空用開閉器10の底板14に水抜き穴を開けるための切削機構部12と、この切削機構部12を前記取付部材13に支持させるためのボックス部21とを有している。
【0011】
取付部材13は、図1〜図4に示すように、所定の間隔をあけて互いに平行に配置されて架空用開閉器10の底板14に沿って設けられた1対の支柱16、16を有する。1対の支柱16、16の一端には、架空用開閉器10の一方の側板15に接する押え板19が取付けられ、他端には架空用開閉器10の他方の側板15Aに所定の間隔をあけて対向する取付ネジ板17が取付けられている。取付ネジ板17にはネジ軸18が螺合され、このネジ軸18を締付けることにより、架空用開閉器10の両側板15、15Aが前記押え板19とネジ軸18との間に挟持されるようになっている。上記のような構成の取付部材13によって本工具100は、架空用開閉器10に固定される。
【0012】
1対の支柱16、16には、上方開放形状のボックス部21が支柱16、16の軸方向に位置調整可能に取付られている。このボックス部21の底部には、排水口22が設けられている。
【0013】
前記ボックス部21には、モータ9、差動機構8、ドリル3を先端部に有する回転体77等からなる切削機構部12が支持されている。
【0014】
前記回転体77の先端部は、図5〜図8に示すように、円筒形状に形成され、その先端面および外周面に切刃2、5を有するドリル3を構成している。外周面に螺旋状に形成された切刃5、5間には、排水溝部6が形成されている。前記回転体77の基端部の外周にはネジ23が形成され、また基端部の軸心位置には、下方開放の六角穴78が形成されている。
【0015】
前記回転体77の先端部における円筒内部43の空間には、圧縮バネ7で付勢される押動子1が配置されている。押動子1はピン形状部1aとスカート部1bとからなり、スカート部1bはガイド筒39によって摺動可能に案内されている。前記ガイド筒39は前記円筒内部43に圧入固定され、前記押動子1のピン形状部1aはガイド筒39によって突出位置を規制されている。前記押動子1は、ドリル3によって円環状に切削された前記底板14の円環内断片を、押動により前記底板14から切り離す機能を有し、水抜き用穴からスムースに水が排出されるようにしている。
【0016】
前記モータ9は、内部に減速装置を有し、その減縮部41から突出する断面六角形状の出力軸79は前記六角穴78に挿入され、出力軸79の回転が回転体77の回転、ひいてはドリル3の回転となるようにしている。またモータ9の出力軸79の回転は回転体77(ドリル3)の前進動に変換されているが、そのために差動機構8が用いられている。この差動機構8は、前記モータ9の出力軸79の回転をギヤ32を介して、ギヤ31に伝え、このギヤ31と一体関係にあるギヤ30を介してギヤ28に伝え、このギヤ28を備えたナット体24の内周のネジ26に前記回転体77のネジ23を螺合させて構成される。ナット体24は軸方向位置が拘束されることによって、回転体77(ドリル3)を前進動させることができる。
【0017】
前記モータ9の出力軸79の回転数をαとし、ギヤ32の歯数をa、ギヤ31の歯数をb、ギヤ30の歯数をc、ギヤ28の歯数をd、ネジ26、ネジ23のピッチをeとすると、
ドリル3(回転体77)の回転数はαであり、ドリル3(回転体77)の前進速度vは下記のとおりである。
【0018】
v=α×e{1−(a/b)×(c/d)}
上記歯数a、b、c、dを選ぶことにより、ドリル3(回転体77)の前進速度vを大幅に減速した適正なものとすることができる。
【0019】
図1〜図4に示すようにボックス部21の下面側には、略扁平円筒形状をした把持部材20が取り付けられる。ドリル3を備えた回転体77は、ボックス部21の開口の底面に形成された貫通穴を通って、その先端が架空用開閉器10の底板14に対向するように挿入される。前記切削機構部12の取付部42は図2に示すように、その突出耳部42aが、前記ボックス部21と前記把持部材20との間に挟持されることによって、前記ボックス部21に支持される。穴あけ工具100は、切削機構部12の動作を制御するためのリモコン40を備える。
【0020】
このように構成された穴あけ工具100の動作を説明する。まず、リモコン40を操作して切削機構部12のモータ9を駆動すると、モータ9の出力軸79(図6参照)の回転が、ドリル3の回転と矢印Aの方向の前進動に変換され、ドリル3は架空用開閉器10の底板14を円環状に切削して水抜き用穴を開ける。そして、押動子1は圧縮バネ7の付勢力により突出動し、ドリル3により円環状に切削されて切り離された断片を突き飛ばして反転状態で横方向に移動させ、全開状態の水抜き用穴から除去する。
【0021】
これにより水抜き用穴からドリル3の排出溝6を通って水が流れ出す。このときリモコン40を操作してモータ9を逆方向に回転させ、ドリル3を下げて水抜き用穴から抜くと、架空用開閉器10内の水が一気に外部に流れ出す。
【0022】
本実施の形態では、圧縮バネ7の付勢力により押動子1をドリル3の先端面から突出動させる例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えばソレノイド等の電気的手段により押動子1を突出動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、内部に水が侵入した架空用開閉器から水を排除するために使用する架空用開閉器用穴あけ工具に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具の正面図である。
【図2】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具の正面部分断面図である。
【図3】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具の取付部材を上側から見た斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具の取付部材を下側から見た斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具の切削機構部を上側から見た斜視図である。
【図6】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具のドリル及び差動機構の一部断面斜視図である。
【図7】本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具のドリル及び差動機構の模式的な正面断面図である。
【図8】(a)は本実施の形態に係る架空用開閉器用穴あけ工具のドリルの平面図であり、(b)はその正面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 押動子
3 ドリル
7 圧縮バネ
10 架空用開閉器
14 底板
100 穴あけ工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空用開閉器の底板を円環状に切削して水抜き用穴を開ける円筒形状のドリルと、ドリルの円筒内に設けられて、円環状に切削された前記底板の円環内断片を、押動により前記底板から切り離す押動子とを備えたことを特徴とする架空用開閉器用穴あけ工具。
【請求項2】
押動子を架空用開閉器の底板に向け付勢するバネを有する請求項1記載の架空用開閉器用穴あけ工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−346826(P2006−346826A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−178032(P2005−178032)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】