説明

柔軟なポリ(アリーレンエーテル)組成物及びその物品

柔軟な熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、ポリオレフィン、及びアルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーを含み、上記ポリオレフィンが、(i)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマー、(ii)熱可塑性樹脂加硫物、(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、(iv)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、(v)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、又は(vi)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柔軟な熱可塑性樹脂組成物に関する。特に、本発明は柔軟なポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
被覆電線・ケーブル産業における被覆樹脂としてはポリ塩化ビニル樹脂が古くから用いられている。しかし、ハロゲン化材料の環境に与える影響について懸念が高まっており、非ハロゲン化代替材料が求められている。こうした研究からポリエチレン組成物である程度の成功が得られたものの、有用なポリエチレン組成物は通例高レベルの無機難燃剤を含んでおり、ある種の機械的性質及び加工性を劣化させるおそれがある。
【0003】
さらに、電子デバイスの小型化及び携帯化に伴って、かかるデバイスの付属品の一部として用いられるケーブル・電線の柔軟性及び耐久性を増大させる必要性が増している。
【特許文献1】米国特許第5100947号明細書
【特許文献2】米国特許第4529652号明細書
【特許文献3】欧州特許第0389949号明細書
【特許文献4】欧州特許第0719832号明細書
【特許文献5】欧州特許第0362660号明細書
【特許文献6】欧州特許第0467113号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、機械的性質及び加工性に優れた柔軟な熱可塑性樹脂組成物に対するニーズが存在するが、これは柔軟な熱可塑性樹脂組成物を用いて製造される被覆電線・ケーブルの耐久性及び費用対効果に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のニーズは、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、及びアルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーを含んでなる柔軟な熱可塑性樹脂組成物であって、上記ポリオレフィンが、(i)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマー、(ii)熱可塑性樹脂加硫物、(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(iv)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(v)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、又は(vi)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの混合物を含む、熱可塑性樹脂組成物によって満足される。
【0006】
別の実施形態では、物品が上述の柔軟な熱可塑性樹脂組成物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
柔軟な熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィン、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、及びアルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーを含んでおり、上記ポリオレフィンは、(i)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマー(以下、エチレン/αオレフィンコポリマーという)、(ii)熱可塑性樹脂加硫物、(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(iv)エチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(v)エチレン/αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、又は(vi)エチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの混合物を含む。本組成物は、ポリオレフィン相とポリ(アリーレンエーテル)相の少なくとも2相を含む。ポリオレフィン相は連続相であり、ポリ(アリーレンエーテル)相は不連続相又は共連続相である。
【0008】
本組成物は被覆電線用途に有用であり、ポリ塩化ビニルで用いられるのと同様の条件を用いて加工できるという追加の利点をもつ。別の態様では、本組成物は導線に対して望ましい接着性をもつ。
【0009】
本明細書に記載する熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D2240で測定して、約75〜約95のショアA硬度を有する。この範囲内で、ショアA硬度は約80以上、又は約85以上とし得る。同じくこの範囲内で、ショアA硬度は約94以下、又は約93以下とし得る。実施形態によっては、柔軟組成物が、厚さ6.4mmの短冊状試験片を用いたASTM D790で測定して、約80000psi以下の曲げ弾性率を有するのが望ましいこともある。曲げ弾性率は、約75000psi以下、又は約70000psi以下とし得る。
【0010】
さらに、柔軟組成物は、7.0MPa以上の引張強さ及び約150%以上の引張伸びを有し得る。引張強さ及び伸びはいずれもASTM D638で測定される。
【0011】
ポリ(アリーレンエーテル)という用語には、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)コポリマー、グラフトコポリマー、ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー、アルケニル芳香族化合物とビニル芳香族化合物とポリ(アリーレンエーテル)のブロックコポリマーなど、並びにこれらの1種以上を含む組合せが包含される。ポリ(アリーレンエーテル)自体は次の式(I)の構造単位を複数含んでなる公知のポリマーである。
【0012】
【化1】

式中、各構造単位において、各Qは独立に水素、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、アミノアルキル、炭化水素オキシなどであり、各Qは独立に水素、第一又は第二低級アルキル、フェニル、炭化水素オキシなどである。好ましくは、各Qはアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qは水素である。
【0013】
ホモポリマー及びコポリマーのポリ(アリーレンエーテル)が共に包含される。好ましいホモポリマーは2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものである。適当なコポリマーには、かかる単位を例えば2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と共に含むランダムコポリマー或いは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合で得られるコポリマーが挙げられる。また、ビニルモノマー又はポリスチレンのようなポリマーをグラフトして得られる部分を含むポリ(アリーレンエーテル)、並びに低分子量ポリカーボネートやキノンや複素環式化合物やホルマールのようなカップリング剤を公知の方法で2本のポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と反応させてさらに高分子量のポリマーとしたカップリング化ポリ(アリーレンエーテル)も挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)には、これらの1種以上を含む組合せも包含される。
【0014】
ポリ(アリーレンエーテル)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、一般に約3000〜40000原子質量単位(amu)の数平均分子量及び約20000〜80000amuの重量平均分子量を有する。ポリ(アリーレンエーテル)は、25℃のクロロホルム中で測定して、約0.10〜約0.60dl/g、好ましくは約0.29〜約0.48dl/gの固有粘度を有する。固有粘度の高いポリ(アリーレンエーテル)と固有粘度の低いポリ(アリーレンエーテル)を組合せて使用することも可能である。2つの固有粘度を用いるときの正確な比率の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度及び所望の最終物性にある程度依存する。
【0015】
ポリ(アリーレンエーテル)は通例2,6−キシレノールや2,3,6−トリメチルフェノールのような1種類以上のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングによって合成される。かかる酸化カップリングには概して触媒系が用いられるが、触媒系は通例、銅、マンガン又はコバルト化合物のような1種類以上の重金属化合物を通常はその他様々な物質と共に含んでいる。
【0016】
多くの目的に特に有用なポリ(アリーレンエーテル)は、1以上の含アミノアルキル末端基を有する分子からなるものである。アミノアルキル基は通例ヒドロキシ基に対してオルト位に位置する。かかる末端基を有する生成物は、ジ−n−ブチルアミンやジメチルアミンのような適当な第一又は第二モノアミンを酸化カップリング反応混合物の一成分として導入することで得られる。また、4−ヒドロキシビフェニル末端基が存在していることも多々あり、これらは、通例、副生物のジフェノキノンが特に銅−ハライド−第二又は第三アミン系に存在しているような反応混合物から得られる。かなりの割合のポリマー分子(通例ポリマーの約90重量%にも達する)が上記の含アミノアルキル末端基及び4−ヒドロキシビフェニル末端基の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0017】
以上の説明から当業者には自明であろうが、想定されるポリ(アリーレンエーテル)には、構造単位又は副次的な化学的特徴の変化とは無関係に、現在公知のものの多くが包含される。
【0018】
柔軟組成物は、組成物の総重量を基準にして約10〜約45重量%(wt%)の量のポリ(アリーレンエーテル)を含有し得る。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約15wt%以上、好ましくは約20wt%以上とし得る。同じくこの範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約45wt%以下、好ましくは約40wt%以下、さらに好ましくは約35wt%以下とし得る。
【0019】
ポリオレフィンは、(i)エチレン/αオレフィンコポリマー、(ii)熱可塑性樹脂加硫物、(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(iv)エチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、(v)エチレン/αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との混合物、又は(vi)エチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの混合物を含有し得る。
【0020】
エチレン/αオレフィンコポリマーは、αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーである。エチレン/αオレフィンコポリマーは、エチレンをα不飽和C〜C20オレフィンコモノマー及び複数のα不飽和C〜C20オレフィンコモノマーの組合せからなる群から選択される1種以上のコモノマーと共に重合して得られる。エチレンのコモノマーとして用いるかかるα不飽和オレフィンコモノマーの非限定的な具体例としては、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、スチレン、アルキル置換スチレンなどが挙げられる。最も好ましくは、エチレン/αオレフィンコポリマーはエチレン/1−オクテンである。
【0021】
エチレン/αオレフィンコポリマーのコモノマー含量は通例約10〜約50%(モノマーの合計重量を基準)である。この範囲内で、コモノマー含量は約12%以上、好ましくは約15%以上とし得る。同じくこの範囲内で、コモノマー含量は約45%以下とし得る。コモノマーは好ましくはコポリマー分子内でランダムに分布する。
【0022】
本明細書を通して用いる「コポリマー」という用語は、2種以上のモノマー種の重合で得られる物質をいい、具体的にはターポリマー(例えば3種以上のモノマー種の重合で得られる物質)、セスキポリマー及びこれらのモノマー種のさらに多数の組合せを包含する。
【0023】
本明細書で開示する樹脂の密度又は比重はASTM D−792を用いて測定した。本質的に線状のエチレン/αオレフィンコポリマーは一般に約0.85g/cm〜約0.91g/cm、好ましくは約0.86g/cm〜約0.90g/cmの樹脂密度によって特徴付けられる。
【0024】
「メルトインデックス」(MI)はASTM D−1238に準拠し、低剪断速度条件下での加工性の尺度である。エチレン/αオレフィンコポリマーについては、MIは約0.5〜約20デシグラム/分(dg/min)である。好ましくは、MIは約0.5〜約15dg/min、最も好ましくは約0.5〜約10dg/minである。
【0025】
分子量分布(MWDつまりMw/Mn)は、重量平均分子量と数平均分子量との比である。エチレン/αオレフィンコポリマーは、約4以下、好ましくは約3.5以下、最も好ましくは約3以下のMWDを有し得る。エチレン/αオレフィンコポリマーは、αオレフィン含量及び場合によってはMWDに基づいて、LLDPEと区別できる。
【0026】
エチレン/αオレフィンコポリマーは、好ましくはメタロセン触媒を用いて、気相重合、スラリー重合及び高圧重合を始めとする適当な重合法で製造される。
【0027】
好ましいエチレン/αオレフィンコポリマーは、Exxon Chemical社(米国テキサス州ベイタウン)によってEXACTという商標で商業生産されており、EXACT 8201及びEXACT 8203が挙げられる。別の好ましいエチレン/αオレフィンコポリマーは、Dow Plastics社(米国ミシガン州ミッドランド、又はDuPont/Dow社)からENGAGEという商標で市販されており、ENGAGE 8842、ENGAGE 8180及びENGAGE 8150が挙げられる。
【0028】
他のポリオレフィンと併用しない場合、柔軟組成物は、組成物の総重量を基準にして約10〜約60重量%の量のエチレン/αオレフィンコポリマーを含有し得る。この範囲内で、エチレン/αオレフィンコポリマーの量は、約15重量%以上、好ましくは約20重量%以上、さらに好ましくは約25重量%以上とし得る。同じくこの範囲内で、エチレン/αオレフィンコポリマーの量は、約60重量%以下、好ましくは約55重量%以下、さらに好ましくは約50重量%以下とし得る。他のポリオレフィンと併用する場合、エチレン/αオレフィンコポリマーの量は十分な硬度及び伸びを与えるのに十分な量であり、通例、組成物の総重量を基準にして約3〜約60重量%である。
【0029】
線状低密度ポリエチレンとは、本明細書では、本質的に線状のホモポリエチレン、エチレンと1種以上のC〜C20αオレフィンとの不均一枝分れ(チーグラー重合)コポリマー又はこれらの組合せで密度が約0.91〜約0.93のものをいう。線状低密度ポリエチレンは、不均一に枝分れし、線状低密度ポリエチレンの全重量を基準にしたαオレフィン含量が5重量%未満、好ましくは3重量%未満である点で、上述のエチレン/αオレフィンコポリマーとは異なる。
【0030】
柔軟組成物は、組成物の総重量を基準にして約1〜約35重量%の量の線状低密度ポリエチレンを含有し得る。この範囲内で、線状低密度ポリエチレンの量は約1.5重量%以上とし得る。同じくこの範囲内で、線状低密度ポリエチレンの量は約30重量%以下、好ましくは約25重量%以下とし得る。
【0031】
熱可塑性樹脂加硫物とは、本明細書では、熱可塑性ポリオレフィンと部分的に動的加硫したゴムを含むブレンドをいう。熱可塑性エラストマー組成物に用いられる適当な熱可塑性ポリオレフィンの例は、結晶質及び半結晶質の熱可塑性ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー又はこれらのブレンドである。これらの例は、エチレン又はプロピレンのホモポリマー、エチレンとプロピレンのコポリマー、エチレンと炭素原子数4〜12のαオレフィンのコポリマー、或いはプロピレンと炭素原子数4〜12のαオレフィンのコポリマーである。コポリマーのエチレン又はプロピレン含量はコポリマーが半結晶質となるのに十分高いことが必須である。これは通常約70モル%以上のエチレン又はプロピレン含量で達成される。好ましくは、プロピレンのホモポリマーが使用される。
【0032】
熱可塑性樹脂加硫物に使用できるゴムの例は、動的加硫に適したゴムである。かかるゴムの具体例は、エチレン−プロピレンコポリマー(以下、EPMという。)、エチレン−プロピレン−ジエン−ターポリマー(以下、EPDMという。)、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、スチレン−エチレン/スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、ブチルゴム、イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー又は臭素化イソブチレン−p−メチルスチレンコポリマー、天然ゴム又はこれらのブレンドである。好ましくは、EPDM又はEPMがゴムとして用いられる。最も好ましくは、EPDMがゴムとして用いられる。EPDMは好ましくはエチレンモノマー単位50〜70重量部、αオレフィン由来のモノマー単位48〜30重量部、及び非共役ジエン由来のモノマー単位2〜12重量部を含む。好ましいαオレフィンはプロピレンである。好ましい非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)又はビニルノルボルネン(VNB)が挙げられる。
【0033】
ゴムの動的加硫は、例えば硫黄、亜硫酸化合物、金属酸化物、マレイミド、フェノール樹脂、過酸化物のような適当な加硫剤の存在下で実施される。かかる加硫系は、従来技術で公知であり、米国特許第5100947号に記載されている。シロキサン化合物を加硫剤として使用することもできる。例としては、ヒドロシラン又はビニルアルコキシシランが挙げられる。加硫度はゲル含量で表すことができる。この方法は米国特許第5100947号に記載されている。
【0034】
熱可塑性樹脂加硫物中のゴムは少なくとも部分的に加硫され、例えば約60%〜約100%のゲル含量を有する。さらに好ましくは、ゴムは約80%〜約100%のゲル含量を有する。最も好ましくは、ゴムは完全に加硫され、約95%を超えるゲル含量を有する。
【0035】
熱可塑性樹脂加硫物は市販されている。熱可塑性樹脂加硫物の具体例としては、Monsanto社から市販のSantoprene、DSM社から市販のKelprox及びSarlink、並びにExxon社から市販のTrefsinが挙げられる。
【0036】
柔軟組成物は、組成物の総重量を基準にして約5〜約60重量%の量の熱可塑性樹脂加硫物を含有し得る。この範囲内で、熱可塑性樹脂加硫物の量は、約10重量%以上とし得る。同じくこの範囲内で、熱可塑性樹脂加硫物の量は、約55重量%以下、好ましくは約50重量%以下、さらに好ましくは約45重量%以下とし得る。
【0037】
本組成物は、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーをさらに含む。水素添加ブロックコポリマーは、アルケニル芳香族化合物由来の1以上のブロック(A)と共役ジエン由来の1以上のブロック(B)とを含むコポリマーで、ブロック(B)の脂肪族不飽和基含量を水素添加によって低減したコポリマーである。ブロック(A)及びブロック(B)の配列には、線状構造のもの、及び枝分れ鎖を有するいわゆるラジアルテレブロック構造のものがある。
【0038】
これらの構造のうち好ましいのは、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック又はB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)及びペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック又はB−A−B−A−Bブロック)構造を始めとする線状構造並びにAとBを合計6ブロック以上含有する線状構造のものである。さらに好ましいのは、ジブロック、トリブロック及びテトラブロック構造であり、A−Bジブロック及びA−B−Aトリブロック構造が特に好ましい。
【0039】
ブロック(A)を与えるアルケニル芳香族化合物は次式で表される。
【0040】
【化2】

式中、R及びRは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、R及びRは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基などを表し、R〜Rは各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、或いはRとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよいし、RとRが中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよい。
【0041】
アルケニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなど、さらにこれらのアルケニル芳香族化合物の1種以上を含む組合せがある。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレンが好ましく、スチレンがさらに好ましい。
【0042】
共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらのうち好ましいのは1,3−ブタジエン及び2−メチル−1,3−ブタジエンであり、1,3−ブタジエンがさらに好ましい。
【0043】
共役ジエンに加えて、水素添加ブロックコポリマーは、少量の低級オレフィン系炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、ジシクロペンタジエン、非共役ジエンなどを含んでいてもよい。
【0044】
水素添加ブロックコポリマーにおけるアルケニル芳香族化合物由来の繰返し単位の含量には特段の制限はない。適当なアルケニル芳香族含量は、水素添加ブロックコポリマーの全重量を基準にして約10〜約90重量%とし得る。この範囲内で、アルケニル芳香族含量は約80重量%以下であるのが好ましく、さらに好ましくは約75重量%以下、さらに一段と好ましくは約70重量%以下である。ある実施形態では、アルケニル芳香族含量の異なる2種類の水素添加ブロックコポリマーを使用するのが好ましい。例示的な実施形態は、2種類の水素添加ブロックコポリマーの組合せであって、第一のコポリマーが水素添加ブロックコポリマーの全重量を基準にして約25〜約70重量%のアルケニル芳香族含量を有し、第二のコポリマーが水素添加ブロックコポリマーの全重量を基準にして約10〜約25重量%のアルケニル芳香族含量を有するものである。
【0045】
水素添加ブロックコポリマー主鎖中での共役ジエンの結合様式には特に制限はない。例えば、共役ジエンが1,3−ブタジエンである場合、約1〜約99%が1,2−結合で、残りが1,4−結合で結合していてもよい。
【0046】
水素添加ブロックコポリマーの水素添加は、共役ジエン由来の脂肪族鎖部分中の不飽和結合の50%未満、さらに好ましくは20%未満、特に10%未満が非還元状態で残るような程度とすることができる。アルケニル芳香族化合物由来の芳香族不飽和結合の水素添加度は25%以下とすることができる。
【0047】
水素添加ブロックコポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)でポリスチレン標準を用いて測定して、好ましくは約5000〜約1000000AMUの数平均分子量を有する。この範囲内で、数平均分子量は、好ましくは約10000AMU以上、さらに好ましくは約30000AMU以上、さらに一段と好ましくは約45000AMU以上とし得る。同じくこの範囲内で、数平均分子量は、好ましくは約800000AMU以下、さらに好ましくは約700000AMU以下、さらに一段と好ましくは約650000AMU以下とし得る。
【0048】
水素添加ブロックコポリマーのGPCで測定した分子量分布には、特に制限はない。コポリマーの重量平均分子量/数平均分子量の比はどのような値でもよい。
【0049】
これらの水素添加ブロックコポリマーには、結晶性の原因となる水素添加共役ジエンポリマー鎖を有するものがある。水素添加ブロックコポリマーの結晶性は、示差走査熱量計(DSC)、例えばPerkin−Elmer社製のDSC−IIモデルを用いて求めることができる。融解熱は、窒素のような不活性ガス雰囲気中、例えば10℃/分の昇温速度で測定することができる。例えば、サンプルを予測融点よりも高い温度まで加熱し、温度を10℃/分の速度で下げて冷却し、約1分間放置し、次いで10℃/分の速度で再度加熱すればよい。
【0050】
水素添加ブロックコポリマーはいかなる結晶化度のものであってもよい。得られる樹脂組成物の機械的強度のバランスの点から、上記の技術で測定して約−40〜約200℃の融点を有するか、又は明確な融点をもたない(即ち、非結晶質の)水素添加ブロックコポリマーが好ましい。さらに好ましくは、水素添加ブロックコポリマーは約0℃以上の融点、さらに一段と好ましくは約20℃以上の融点、なお一段と好ましくは約50℃以上の融点を有する。
【0051】
水素添加ブロックコポリマーは、水素添加共役ジエンポリマー鎖に帰因する任意のガラス転移温度(Tg)を有し得る。得られる樹脂組成物の低温での柔軟性及び衝撃強さの観点から、好ましくは約0℃以下、さらに好ましくは約−20℃以下のTを有する。コポリマーのガラス転移温度は、前述のDSC法によって、又は粘弾性スペクトロメーターで観察される温度変化に対する粘弾性挙動から測定することができる。
【0052】
特に好ましい水素添加ブロックコポリマーは、それぞれスチレン−ブタジエン及びスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマーの水素添加によって得られるスチレン−(エチレン−ブチレン)ジブロック及びスチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロックコポリマーである。
【0053】
適当な水素添加ブロックコポリマーとしては、市販品、例えばKraton Polymers社(以前はShell Chemical社の一事業部)から市販のKRATON(登録商標)G1650、G1651、G1652及びG1657、並びに旭化成(株)から市販のTUFTEC(登録商標)H1041、H1043、H1052、H1062、H1141及びH1272が挙げられる。好ましい水素添加ブロックコポリマーとしては、例えば旭化成(株)からTUFTEC(登録商標)H1043として市販されている高度水素添加スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロックコポリマーが挙げられる。
【0054】
柔軟組成物は、組成物の総重量を基準にして約3〜約35重量%の量の水素添加ブロックコポリマーを含有し得る。この範囲内で、水素添加ブロックコポリマーの量は、約3重量%以上、好ましくは約5重量%以上、さらに好ましくは約7重量%以上とし得る。この範囲内で、水素添加ブロックコポリマーの量は、約35重量%以下、好ましくは約30重量%以下、さらに好ましくは約25重量%以下とし得る。
【0055】
可塑剤はアルキル化リン酸エステル化合物を含み、ポリリン酸エステル化合物、モノリン酸化合物又はこれらの組合せとし得る。理論に束縛されるものではないが、アルキル化リン酸エステル化合物のアルキル基の存在によって、オレフィン相に対するアルキル化リン酸エステル化合物の親和性が(特にアルキル基の炭素原子数が3以上のときに)向上する。可塑剤が少なくとも部分的にオレフィン相中に存在すると、柔軟組成物の物性、特にショアA硬度に格段の効果を生ずる。
【0056】
可塑剤は、次の一般式IIIで表されるポリリン酸エステル化合物を含有し得る。
【0057】
【化3】

式中、G、G、G及びGは独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R、R、R及びRは独立にメチル基又は水素原子を表し、nは1以上の整数を表し、n1及びn2は独立に0〜2の整数を表し、m1、m2、m3及びm4は独立に1〜3の整数を表す。
【0058】
、G、G及びGは、オレフィン相に対する混和性又は親和性を高めるために選択すべきである。G1〜4の選択は、ポリオレフィンの種類によってある程度左右されるが、一般式IIIのG、G、G及びGの少なくとも1つがメチル基を表すのが概して好ましい。
【0059】
耐熱性及び加工性がnの値によって左右されることもある。好ましくは、nは1〜5の整数を表す。nの異なるリン酸エステル化合物の混合物を用いてもよい。
【0060】
上記リン酸エステル化合物は、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン由来の特定のリンカーと末端のアルキル置換フェニル部分とを有する。
【0061】
リンカー前駆体として有用な特定のビス(ヒドロキシアリール)アルカンとしては、ビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンのようなビスフェノール類が挙げられる。ただし、ビスフェノール類に限定されるものではない。これらのうち、ビスフェノールAが好ましい。
【0062】
末端アルキル置換フェニル部分の導入に用いられるアルキル置換単官能性フェノールとしては、モノアルキルフェノール、ジアルキルフェノール及びトリアルキルフェノールを単独又は組合せて使用し得る。
【0063】
好ましくは、ポリリン酸エステル化合物は次の一般式IVで表される。
【0064】
【化4】

式中、G、G、G及びGは独立に炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、G1’、G2’、G3’及びG4’は独立に水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、nは1以上の整数を表す。
【0065】
上述のリンカーの存在によって、リン酸エステル化合物の揮発性は極めて低い。さらに、上記リン酸エステル化合物は、2以上のリン酸エステル基がヒドロキシアレーン(例えばレゾルシノール又はヒドロキノン由来のもの)で連結した従来のポリリン酸エステル構造では達成できない高性能を示す。
【0066】
ポリリン酸エステル化合物は、特定の二官能性フェノール及びアルキル置換単官能性フェノールとオキシ塩化リンとの反応で得ることができる。ただし、ポリリン酸エステル化合物を得る方法はこの方法に限られない。
【0067】
可塑剤は、一般式Vで表されるモノリン酸エステル化合物を含有していてもよい。
【0068】
【化5】

式中、G、G、G、G、G及びG10のうちの3以上は独立に炭素原子数1〜18のアルキル基を表し、残りは水素原子又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表し、n3、n4及びn5は独立に0〜3の整数を表し、n3、n4及びn5の合計は3である。モノリン酸エステル化合物としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸トリ(イソプロピルフェニル)、リン酸ジイソプロピルフェニルフェニル、リン酸トリ(トリメチルフェニル)、リン酸トリ(t−ブチルフェニル)、リン酸トリ(n−ブチルフェニル)などが挙げられる。これらのうち、リン酸トリ(n−ブチルフェニル)が好ましい。
【0069】
ある実施形態では、可塑剤は、式IIIで表されるポリリン酸エステル化合物、式IVで表されるポリリン酸エステル化合物、式Vで表されるモノリン酸エステル化合物、又はこれらの2種以上の組合せを含有し得る。
【0070】
可塑剤の使用量は、組成物の総重量を基準にして約5〜約35重量%である。この範囲内で、可塑剤の量は、約6重量%以上、好ましくは約7重量%以上、さらに好ましくは約10重量%以上とし得る。同じくこの範囲内で、可塑剤の量は、約32重量%以下、好ましくは約30重量%以下とし得る。
【0071】
一実施形態では、柔軟な熱可塑性樹脂組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、エチレン/αオレフィンコポリマー、及びアルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーを含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、エチレン/αオレフィンコポリマーは約10〜約60重量%の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0072】
一実施形態では、柔軟組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、及びエチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せを含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、エチレン/αオレフィンコポリマーは約5〜約45重量%の量で存在し、線状低密度ポリエチレンは約30重量%以下の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物は約30重量%以下の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0073】
一実施形態では、柔軟組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、及びエチレン/αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との組合せを含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、エチレン/αオレフィンコポリマーは約5〜約50重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物は約45重量%以下の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0074】
一実施形態では、柔軟組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、及びエチレン/αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せを含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、エチレン/αオレフィンコポリマーは約5〜約50重量%の量で存在し、線状低密度ポリエチレンは約30重量%以下の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0075】
一実施形態では、柔軟組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、及び線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せを含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、線状低密度ポリエチレンは約5〜約35重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物は約5〜約45重量%の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0076】
一実施形態では、柔軟組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、及び熱可塑性樹脂加硫物を含む。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は約10〜約45重量%の量で存在し、可塑剤は約5〜約35重量%の量で存在し、水素添加ブロックコポリマーは約3〜約35重量%の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物は約10〜約45重量%の量で存在するが、上記の量は組成物の総重量を基準にしたものである。
【0077】
柔軟組成物用の成分は、均質ブレンドの形成に適した条件下、通例、押出機やバンバリーミキサーのような高剪断混合装置で混合すればよい。好ましくは、可塑剤は樹脂とは別個に添加される。
【0078】
柔軟組成物を導線と共押出すれば被覆電線を形成することができる。適当な導線としては、特に限定されないが、銅線、アルミニウム線、鉛線、並びにこれらの1種以上を含む合金線が挙げられる。図3に、導線1を柔軟組成物2で囲繞した被覆電線の概略図を示す。導線と柔軟組成物の間に適宜接着促進層3を設けてもよい。本発明では、導線は単線であってもよいし、複線であってもよい。場合によっては、複数の線を、糸やロープと同様に、束ねて撚ったり、編組してもよい。
【0079】
被覆電線をプラグ及び張力緩和部(SR)と組み合わせてコードとしてもよい。プラグは適当な熱可塑性樹脂組成物からなるものでよいが、好ましくはポリ(アリーレンエーテル)を含有する熱可塑性樹脂組成物からなる。一実施形態では、プラグは、ポリ(アリーレンエーテル)約5〜約50重量%、ポリ(アルケニル芳香族)樹脂約0〜約50重量%、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンからなる第一の水素添加ブロックコポリマーであって、アルケニル芳香族化合物の含量が該水素添加ブロックコポリマーの重量を基準にして25%以上である第一の水素添加ブロックコポリマー約1〜約50重量%、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンからなる第二の水素添加ブロックコポリマーであって、アルケニル芳香族化合物の含量が該水素添加ブロックコポリマーの重量を基準にして25%未満である第二の水素添加ブロックコポリマー約1〜約50重量%、鉱油約1〜約50重量%、及び非ハロゲン化難燃剤約3〜約50重量%を含む。ポリ(アルケニル芳香族)樹脂の例としては、ポリスチレン及びゴム改質ポリスチレンが挙げられる。非ハロゲン化難燃剤の例としては、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールジホスフェート、ビスフェノールAジホスフェート、ジフェニルペンタエリトリトールジホスフェート及びこれらの組合せが挙げられる。
【0080】
実施形態によっては、被覆電線に用いる熱可塑性樹脂組成物の曲げ弾性率が、プラグに用いる熱可塑性樹脂組成物の曲げ弾性率以下であるのが好ましいことがある。
【0081】
電線の性能は曲げ試験及び/又は引張試験を用いて評価し得る。図3に示す典型的な曲げ試験は、電線に500gの荷重を加えながら、40サイクル/分の割合でコードのプラグ/電線接合部を60°又は90°に曲げることからなる。コードは、プラグ5、張力緩和部6及び被覆電線7を含む。所望サイクル数(設計及び用途に応じて異なる)後に導線が完全には破断しないとき、ケーブルは曲げ試験に合格する。典型的な引張試験は、図2に概略図を示す通り、ケーブルに90Nの張力を1分以上加えることからなる。
【0082】
柔軟な熱可塑性樹脂組成物及び被覆電線について、以下の非限定的な実施例でさらに例示する。
【実施例】
【0083】
以下の実施例は、表1に記載の材料を用いて製造した。
【0084】
【表1】

実施例1〜10
表2に示す配合物をコンパウンディングし、ペレット化し、適当な試験片に射出成形し、ASTM D2240によるショアA硬度、ASTM D638による引張強さ及び引張伸び、並びにASTM D790による曲げ弾性率について試験した。各実施例のデータを表2に示す。配合量は、組成物の総重量を基準にした重量%である。引張強さの値は、特記しない限り、MPa単位であり、引張伸びの値は%である。曲げ弾性率の値は、特記しない限り、MPa単位であある。
【0085】
【表2】

実施例1〜4及び9は、エチレン/αオレフィンコポリマーを含有する組成物を示す。これらの組成物の引張強さは13以上である。ショアAは91〜93である。引張伸びは235以上である。スチレン含量の異なるブロックコポリマーのブレンドを使用すると、伸びは減少するものの、曲げ弾性率は増大し、ショアA及び引張強さの値は維持される。実施例7及び8は実施例1〜4及び9と同様であるが、少量の線状低密度ポリエチレンも含んでいる。実施例5及び6は熱可塑性樹脂加硫物を含有する。実施例5はさらに線状低密度ポリエチレンも含んでいる。この組成物は、実施例1〜4及び9に比して伸び、引張強さ及び曲げ弾性率は若干低いが、ショアAは同程度である。
【0086】
例11〜23
表3に示す配合物をコンパウンディングし、ペレット化し、適当な試験片に射出成形し、ASTM D2240によるショアA硬度、ASTM D638による引張強さ及び引張伸び、並びにASTM D790による曲げ弾性率について試験した。各例のデータを表3に示す。配合量は、組成物の総重量を基準にした重量%である。引張強さの値は、特記しない限り、MPa単位であり、引張伸びの値は%である。曲げ弾性率の値は、特記しない限り、MPa単位であある。
【0087】
【表3】

比較例11〜15は、ポリオレフィン(RDP)に親和性のない可塑剤を使用すると、添加量をかなり高くしても柔軟性に欠ける組成物(ショアA95超)が生じることを示す。比較例21及び22は、LLDPEを唯一のポリオレフィン成分として含む組成物も95超のショアAを呈することを示しており、これは、柔軟組成物に使用できるのはある種のポリオレフィン材料又はポリオレフィン材料の組合せのみであることを示している。
【0088】
実施例40〜41
ポリ(アリーレンエーテル)、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー、ポリ(エチレン−オクテン)、芳香族リン酸エステル可塑剤、及び添加剤約1重量%をコンパウンディングしてシース用組成物を形成し、ペレット化した。組成を表5に示す。量は、組成物全体を基準にした重量%である。ペレットを70℃で約5時間乾燥した。次いで、シース用組成物を最大約132m/minの巻取り速度で銅線と共押出して、0.4mmのプラスチックシースを有する寸法1.8×3.6mmの被覆銅線を形成した。次いで、電線をプラグ及びSR(応力緩和部)に結合してコードを形成し、曲げ及び引張性能について試験した。曲げ試験は、図1に概略を示す通り、電線に500gの荷重を加えながら、電線を含むケーブルをプラグ/電線接合部で60°に40サイクル/分の割合で曲げることによって実施した。ケーブルは、プラグの設計に応じて少なくとも1000サイクルの試験後に導線が完全には破断しなかった場合に、曲げ試験に合格とする。引張試験は、図2に概略を示す通り、ケーブルに90Nの張力を1分以上加えることによって実施した。結果を表6に示す。
【0089】
【表4】

実施例40及び41は、本明細書に記載した柔軟組成物を用いて製造したコードが所要の1000サイクルを大幅に超える優れた曲げ性能を示し、耐久性に優れることを示している。
【0090】
好ましい実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明の技術的範囲から逸脱せずに様々な変更をなすことができ、本発明の要素を均等物で置換できることは当業者には明らかであろう。さらに、本発明の本質的範囲から逸脱せずに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正をなすことができる。本発明は本発明を実施するための最良の形態として本明細書に開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【0091】
引用した特許、特許出願その他の文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】曲げ試験の概略を示す図。
【図2】引張試験の概略を示す図。
【図3】柔軟な被覆電線の概略を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
ポリオレフィン、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
を含んでなる柔軟な熱可塑性樹脂組成物であって、上記ポリオレフィンが、
(i)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマー、
(ii)熱可塑性樹脂加硫物、
(iii)線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、
(iv)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、
(v)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、又は
(vi)αオレフィン含量約10%以上のエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せ
を含む、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ASTM D2240で測定して、約75〜約95のショアA硬度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ASTM D638で測定して、7.0MPa以上の引張強さを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
ASTM D638で測定して、約150%以上の引張伸びを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
ASTM D790で測定して、約80000psi以下の曲げ弾性率を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリ(アリーレンエーテル)が、当該組成物の総重量を基準にして約10〜約45重量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーが、当該組成物の総重量を基準にして約3〜約35重量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記可塑剤が、当該組成物の総重量を基準にして約5〜約35重量%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマーがスチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレントリブロックコポリマーである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記可塑剤がアルキル化リン酸エステル化合物を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
前記可塑剤がブチル化リン酸トリフェニルである、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記エチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーが約4以下の分子量分布を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記線状低密度ポリエチレンが約0.91〜約0.93g/cmの密度を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記線状低密度ポリエチレンが、線状低密度ポリエチレンの全重量を基準にして5重量%未満のαオレフィンを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記熱可塑性樹脂加硫物が少なくとも部分的に加硫されたゴムを含み、約60%〜約100%のゲル含量を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリオレフィンが、約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーであって、該ポリオレフィンが、当該組成物の総重量を基準にして約10〜約60%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記ポリオレフィンが、線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せであり、線状低密度ポリエチレンが当該組成物の総重量を基準にして約5〜約35%の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物が当該組成物の総重量を基準にして約5〜約45%の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリオレフィンが、約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せであり、エチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーが当該組成物の総重量を基準にして約5〜約45%の量で存在し、線状低密度ポリエチレンが当該組成物の総重量を基準にして約30%以下の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物が当該組成物の総重量を基準にして約30%以下の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
前記ポリオレフィンが、約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との組合せであり、エチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーが当該組成物の総重量を基準にして約5〜約50%の量で存在し、熱可塑性樹脂加硫物が当該組成物の総重量を基準にして約45%以下の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリオレフィンが、約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せであり、エチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーが当該組成物の総重量を基準にして約5〜約50%の量で存在し、線状低密度ポリエチレンが当該組成物の総重量を基準にして約30%以下の量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
導線と、請求項1記載の柔軟な熱可塑性樹脂組成物の被覆又はシースとを含む柔軟な被覆電線。
【請求項22】
導線と、請求項1記載の柔軟な熱可塑性樹脂組成物の被覆又はシースとを含む柔軟な被覆電線、及び
プラグ/SR
を含んでなる柔軟なケーブル。
【請求項23】
前記プラグ/SRがポリ(アリーレンエーテル)組成物を含む、請求項22記載の柔軟なケーブル。
【請求項24】
前記プラグ/SRが、
ポリ(アリーレンエーテル)約5〜約50重量%、
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂0〜約50重量%、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンからなる第一の水素添加ブロックコポリマーであて、アルケニル芳香族化合物の含量が該水素添加ブロックコポリマーの重量を基準にして25%以上である、第一の水素添加ブロックコポリマー約1〜約50重量%、
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンからなる第二の水素添加ブロックコポリマーであって、アルケニル芳香族化合物の含量が該水素添加ブロックコポリマーの重量を基準にして25%未満である第二の水素添加ブロックコポリマー約1〜約50重量%、
鉱油約1〜約50重量%、及び
非ハロゲン化難燃剤約3〜約50重量%
を含む、請求項22記載の柔軟なケーブル。
【請求項25】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマー、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項26】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
熱可塑性樹脂加硫物、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項27】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項28】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項29】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと熱可塑性樹脂加硫物との組合せ、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項30】
ポリ(アリーレンエーテル)、
ポリオレフィンに対して親和性を有する可塑剤、
約10%以上のαオレフィン含量を有するエチレン/C〜C20αオレフィンコポリマーと線状低密度ポリエチレンとの組合せ、及び
アルケニル芳香族化合物と共役ジエンとの水素添加ブロックコポリマー
から本質的になる、柔軟な熱可塑性樹脂組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2007−519782(P2007−519782A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549336(P2006−549336)
【出願日】平成17年1月3日(2005.1.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/000051
【国際公開番号】WO2005/068549
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】