説明

柔軟性のあるエレクトロニックおよびオプトエレクトロニックデバイスにおける使用に適した改善された表面平滑性を有するコーティングされた重合体基板

【課題】表面平滑性を改善すること。
【解決手段】重合体基板、特に熱安定化されヒートセットされた延伸ポリエステル基板に
(a)シリカと部分的に重合した一般式RSi(OH)3で示される有機シラノールであって、式中、Rはメチルと約40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される有機シラノールとを含む固体、ならびに
(b)水および低級脂肪族アルコールを含む約95〜約50重量パーセントの溶媒、
を含む約3.0〜約8.0のpHを有するコーティング組成物をコーティングするものであり、特に、エレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上にコーティング組成物がコーティングされる基板、特に柔軟性のあるエレクトロニックおよびオプトエレクトロニックデバイス、特にエレクトロルミネセンス(EL)表示デバイス、特に有機発光表示(OLED)デバイスにおける基板としての使用に適した重合体基板の表面平滑性を改善するためのコーティング組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロルミネセンス(EL)表示は、優れた見やすさ(高輝度、高コントラスト、非常に速い応答速度および広い視角を含めた)、きわめて薄い輪郭および非常に低い電力消費量を特徴とする自己発光型の表示モードである。EL表示デバイスは、陰極線管(CRT)、蛍光表示およびプラズマ表示と同様にそれ自体が発光する。液晶表示(LCD)とは異なりバックライトの必要性はない。ELの応答速度はLCDのものより1,000倍も速くすることが可能であり、そのため、このモードは、特に、動画への使用に適している。EL表示は、航空機および船舶の管制、自動車のオーディオ装置、計算器、携帯電話、携帯用コンピュータ、計装、工場モニタおよびエレクトロニック医療機器を含む種々の用途に使用することができる。EL表示の他の主要な用途は光源としての使用であり、特に、暗い周囲の照明条件で読みやすくするための小さなLCDパネルのバックライトとしての使用である。
【0003】
EL表示は、燐光性またはその他のエレクトロルミネセンス物質の薄膜を2個のプレート間にサンドイッチすることにより作動し、そのプレートは、それぞれが、所定のパターンの導電性要素、すなわち、電極を備え、それによって、ディスプレイ上にアドレス指定可能な画素を形成する。電極は、エレクトロルミネセンス基板上または分離した支持体上へのコーティングとして形成される。その電極または各電極に光を透過させようとする場合は、電極は半透明または透明なコーティング、例えば、透明な導電性金属酸化物を用いて形成される。同様に、その支持体または各支持体も必要に応じて半透明または透明とすることができる。一般に、少なくとも陽極は透明である。支持体は一般に電極のベースとしておよび絶縁層として共に機能する。基板もまた、使用中、貯蔵中および輸送中の化学的および物理的な損傷に対する防護を果たす。重合体フィルムと同様に、ガラスが絶縁支持体として使用されてきた。
【0004】
EL表示デバイスは種々の陰極材料を利用してきた。初期の研究ではアルカリ金属が使用された。その他の陰極材料としては、黄銅および導電性金属酸化物(例えばインジウム錫酸化物)など金属の組合せがある。インジウム、銀、錫、鉛、マンガン、およびアルミニウムなど種々の単一金属の陰極も使用されてきた。
【0005】
ELの構成に係る比較的最近の発見には、陽極および陰極を分離する有機ルミネセンス媒体が2つの非常に薄い層(合計厚さが<1.0μm)から構成されるデバイスが含まれる。OLEDデバイスを代表するものとしては、例えば、特許文献1に開示されている。
【0006】
電流を導電性素子中に通過させるとエレクトロルミネセンス材料が発光する。EL表示はLCD表示のように光源をシャッターで閉ざすものではなく放射する技術であるので、すべての照明条件において優れた見やすさとすることが適用において最も重要である。
【0007】
非常に高純度の3種の主要な色を生み出すことができる有機エレクトロルミネセンス材料のあらたな開発により、均一なレベルの輝度および寿命を有するフルカラー表示が可能になった。こうした特性を有する重合体は、溶媒に溶解し溶液から処理することができ、エレクトロニックデバイスへ印刷することが可能である。導電性の共役重合体が特に注目される。本明細書では、「共役導電性重合体」という用語は、その骨格に非局在化したπ電子を有する重合体を意味する。このタイプの重合体は非特許文献1に概説されている。
【0008】
好ましい実施態様では、共役導電性重合体は、
(i)ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p−フェニレンビニレン)などの炭化水素共役重合体、
(ii)ポリチオフェン、ポリピロールおよびポリアニリンなどの主鎖中にヘテロ原子を有する共役複素環重合体、および
(iii)オリゴチオフェン、オリゴポリピロール、オリゴアニリン、オリゴフェニレンおよびオリゴ(フェニレンビニレン)などの、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、好ましくは少なくとも5個、より好ましくは6個以上の繰返しサブユニットを含んだ共役オリゴマー、から選択される。
【0009】
こうした共役導電性重合体は、ELデバイスにおける使用の他に、光電池および半導体デバイス(一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路など)を含めた種々のその他のエレクトロニックおよびオプトエレクトロニックデバイスへの使用が提案されてきた。
【0010】
本発明は、ELデバイス(特にOLED)、光電池および半導体デバイス(一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路など)を含めた、共役導電性重合体を含んだエレクトロニックおよびオプトエレクトロニックデバイスの絶縁性および支持基板に関係するものである。本発明は、特に、オプトエレクトロニックデバイス、特にELデバイス(特にOLED)または光電池デバイス、特にELデバイス(特にOLED)の基板に関係するものである。
【0011】
基板は、透明、半透明または不透明でよいが代表的には透明である。基板は、通常、光学的透明性、平坦性および最小の複屈折に対する厳しい仕様を満たすことが必要である。
代表的には、0.7%未満の散乱可視光(ヘーズ)と共に、400〜800nmにわたる85%の全光線透過度(TLT)が表示用途に望まれる。表面平滑性および平坦性は、続いて塗布される電極導電性コーティングのようなコーティングを完遂させるために必要である。基板は、また、十分なバリア特性、すなわち、ガスおよび溶媒の浸透に対する高い耐性を有しなければならない。エレクトロニック表示用途に使用する基板は、適切には10-6g/m2/日未満の水蒸気透過度、および10-5mL/m2/日未満の酸素透過度を示すものである。柔軟性、耐衝撃性、硬度および耐引っかき性などの機械的性質もまた重要な考慮すべき事項である。
【0012】
以前は光学用ガラスまたは石英がエレクトロニック表示用途に基板として使用されてきた。これらの材料は光学性および平坦性の必要条件を満たすことが可能であり、優れた耐熱性および耐化学薬品性ならびにバリア特性を有する。しかしながら、これらの材料は、いくつかの所定の機械的特性、とりわけ、低密度、柔軟性および耐衝撃性を有していない。
【0013】
機械的性質を改善するために、プラスチック材料が、ガラスまたは石英シートの代替品として提案されてきた。プラスチック基板は、より大きな柔軟性、より一層の耐衝撃性、および同じ厚さのガラスまたは石英シートより軽量である。さらに、柔軟性のあるプラスチック基板は、例えば前述の共役重合体を用いてオープンリール法でエレクトロニックデバイスの印刷を可能にし、これは、コストを下げ、かつ、曲面を有するデバイスの製造を可能にする。しかし、重合体材料を使用する欠点は、その耐化学薬品性がより低く、バリア特性が劣ることである。それにもかかわらず、この問題を最小限に抑えるために様々なバリアコーティングが開発されてきた。これらのコーティングは、代表的には、高温でのスパッタリング法が適用される。バリア層は有機または無機でもよく、その上に堆積される層に対して十分な親和力を示し、平滑な表面の形成が可能となるべきである。バリア層の形成に使用するのに適した材料は、例えば、特許文献2に開示されている。バリア層の完全性を確保するために、かつ、その中に「針刺し傷」ができるのを避けるために、重合体基板の表面は十分な平滑性を示すものでなければならない。
【0014】
現在は、より大きな柔軟性がありより一層の耐衝撃性、ならびに同じ厚さのガラスまたは石英シートより軽量であるバリアコーティングされた重合体材料を含んだエレクトロニック表示デバイスを作製することは可能である。しかし、一部の重合体基板は、表示デバイスの製造中に加工条件により、特に、昇温時に、ねじりのような許容できない寸法のゆがみを受ける。バリア層を堆積させるために使用する高温技術(スパッタリングなど)中に十分な高温寸法安定性を示す重合体基板を提供することが望ましい。1つのこのような部類の重合体基板が本出願人による同時国際特許出願(特許文献3)に開示されている。
【0015】
さらに、重合体基板の表面平滑性は従来のガラス基板よりしばしば劣っている。前述したように、表面平滑性は、続いて塗布されるバリアコーティングおよび導電性コーティングを完遂させ、かつ、針刺し傷を避けるために重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第4,720,432号
【特許文献2】米国特許第6,198,217号
【特許文献3】PCT/GB2002/04112
【特許文献4】米国特許第5,069,942号
【特許文献5】米国特許第5,415,942号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0,419,400号
【特許文献7】英国特許第838,708号
【特許文献8】欧州特許出願公開第0,429,179号
【特許文献9】欧州特許出願公開第0,408,197号
【特許文献10】米国特許第3,443,950号
【特許文献11】特開平06−116487
【特許文献12】特開昭63−37167
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】W.J.Feast、Polymer、37巻(22)、5017〜5047頁、1996年
【非特許文献2】WYKO Surface Profiler Technical Reference Manual(Veeco Process Metrology、Arizona,US;1998年6月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、前述の問題の少なくとも1つを克服するコーティングされた重合体のフィルム基板を提供することにある。詳細には、本発明の目的は、改善された表面平滑性を有するコーティングされた重合体フィルム基板であって、特に、ELデバイス(特にOLED)、光電池および半導体デバイス(有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび一般的に集積回路など)を含む共役導電性重合体からなるエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスの製造に適した柔軟な基板を提供することである。他の目的は、改善された表面平滑性、十分な高温寸法安定性および高い光学的透明度を有する重合体フィルムを提供することである。
【0019】
本明細書では、共役導電性重合体を含んだデバイスは、好ましくはELデバイス(特にOLED)、光電池および半導体デバイス(一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路など)を意味する。本明細書では、共役導電性重合体を含んだオプトエレクトロニックデバイスは、ELデバイス(特にOLED)および光電池デバイス、特にELデバイス(特にOLED)を意味する。本明細書では、共役導電性重合体を含んだエレクトロニックデバイスという用語は、オプトエレクトロニックデバイスを除外した、好ましくは、一般に、有機電界効果トランジスタ、薄膜トランジスタおよび集積回路などの半導体デバイス、特に有機電界効果トランジスタを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、
(a)約10〜約70重量パーセントのシリカと、約90〜約30重量パーセントの部分的に重合した一般式RSi(OH)3で示される有機シラノールであって、式中、Rはメチルと約40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される有機シラノールとを含む、約5〜約50重量パーセントの固体、ならびに
(b)約10〜約90重量パーセントの水および約90〜約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールを含む、約95〜約50重量パーセントの溶媒、
を含む組成物であって、コーティング組成物が約3.0〜約8.0、好ましくは約3.0〜約6.5のpHを有し、重合体基板上に塗布された場合にその表面平滑性を改善する目的での使用を提供するものである。ただし前記使用は、特に、前記重合体基板を含む共役導電性重合体を含んだエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスの製造における使用であり、前記デバイスは、特に、エレクトロルミネセンス表示デバイス、特に、OLEDデバイスである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】200nmを超える極値表面ピーク数(平坦化効果)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
好ましくは、コーティング組成物のpHは6.2未満、好ましくは約6.0以下である。好ましくはコーティング組成物のpHは、少なくとも3.5、好ましくは少なくとも4.0である。一つの実施態様では、コーティング組成物のpHは約4.0〜約5.0、好ましくは約4.1〜約4.8、好ましくは約4.3〜約4.5の範囲にある。コーティング溶液のpHは、酸性または塩基性溶液の添加を含めて、当業者によく知られている技術的手段で調整することができる。例えば、pHの調整に適した酸としては塩酸および酢酸があり、適した塩基としては水酸化ナトリウムがある。
【0023】
コーティング組成物のシリカ成分は、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを加水分解してポリケイ酸を形成することにより得ることができる。加水分解は、従来の手順を用いて、例えば、脂肪族アルコールおよび酸を加えることにより実施することができる。あるいは、このコーティング組成物中に使用されるシリカはコロイドシリカであってもよい。コロイドシリカは、一般的には約5〜25nm、好ましくは7〜15nm径の粒子とすべきである。本発明に使用することができる市販されている代表的なコロイドシリカとしては、「Ludox SM」、「Ludox HS−30」および「Ludox LS」分散物(Grace Davison社)が挙げられる。
【0024】
有機シラノール成分は一般式RSi(OH)3を有する。R基の少なくとも約60%、好ましくは80%〜100%はメチルである。R基の約40%までは、ビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルから選択されるより高級なアルキルまたはアリール基とすることができる。
【0025】
シリカと、部分的に重合した有機シラノールとを含んだコーティング組成物の固体分は、全コーティング組成物の5〜50重量パーセントを構成する。これらの固体分のうち、シリカが約10〜70重量パーセント、より好ましくは約20〜60重量パーセントを構成し、相補的な残り分は有機シロキサノールが構成する。ここでは、有機シロキサノールの重量パーセントをRSiO1.5として計算する。
【0026】
コーティング組成物の溶媒成分は、一般に、水と1種またはそれ以上の低級脂肪族アルコールとの混合物を含む。水は一般に溶媒の約10〜90重量パーセントを構成し、他方、低級脂肪族アルコールは相補的に約90〜10重量パーセントを構成する。脂肪族アルコールは、一般に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびtert−ブタノールのような炭素原子1〜4個のものである。
水とアルコールの基本的な溶媒成分に加えて、該組成物の溶媒部分は、さらに、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルのような適合する極性溶媒を約10重量パーセントまで含むことができる。
【0027】
コーティング組成物中に存在することができる他の成分としては硬化用触媒がある。これらは好ましくは組成物の合計重量に対して約0.01〜0.1%、特に約0.01〜0.3重量パーセントの濃度であることが好ましい。コーティング組成物中で使用し得る硬化用触媒にはさまざまな種類がある。代表的な触媒としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ギ酸ナトリウム、および、ギ酸カリウムなどのカルボン酸のアルカリ金属塩がある。使用することができる他の代表的な硬化用触媒としては、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムなどの四級アンモニウムカルボン酸塩が挙げられる。
【0028】
その他の適当なコーティング組成物については特許文献4および特許文献5に開示されており、これらの開示はここにおいて参照されるものである。そこに開示された組成物は、低いアルカリ金属カチオン含量(アルカリ金属はシリカヒドロゾルを安定化するために使用した)を有し、とりわけ、重合体基板に対し改善された接着性を示している。
【0029】
組成物は、使用した個々の出発材料に応じて広範な技法により調製することができる。例えば、オルガノトリアルコキシシランは、予め加水分解されたポリケイ酸の存在下で加水分解することができる。あるいは、オルガノトリアルコキシシランを予め加水分解し、次いでポリケイ酸の溶液に加えると格別に急速な硬化時間をしばしば得ることができる。これら組成物の調製の他の選択肢は、オルガノトリアルコキシシランとオルトケイ酸テトラエチルを一緒に共加水分解することである。
【0030】
コーティング組成物中のシリカ供給源としてコロイドシリカが使用された場合は、有機シラノールは、オルガノトリアルコキシシランの予め加水分解により、あるいは、酸性化したコロイドシリカ分散物の存在下でオルガノトリアルコキシシランを加水分解することによりシリカと結合させることができる。組成物に必要な成分を調製して組合せるその他の方法は個々の成分を取り扱う当業者には明らかであろう。
【0031】
コーティング組成物は、連続方法や浸せき方法を含めた従来のコーティング技術を用いて塗布することができる。コーティングは、一般に、約1〜約20ミクロン、好ましくは約2〜10ミクロン、特に約3〜約10ミクロンの乾燥厚さに塗布される。コーティング組成物を、フィルム製造とは別のプロセス段階として「非直列型」で、あるいはフィルム製造プロセスに連続して「直列型」で塗布することができる。コーティングされたフィルムの表面平滑性を改善するためには、粉塵粒子等からの汚染を回避することが望ましいので、コーティングを粉塵が含まれない環境中において非直列型で実施することが好ましい。
【0032】
コーティング組成物は、基板に塗布した後で約20〜約200℃、好ましくは約20〜約150℃の温度で硬化させることができる。20℃の周囲温度では数日間の硬化時間が必要であるが、150℃の高温度ではコーティングは数秒間で硬化する。
【0033】
好ましい実施態様では、基板は、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)またはポリ(エチレンナフタレート)(PEN)のようなポリエステルフィルムであり、好ましくはPENである。特に好ましい実施態様として特許文献3に基板について記載されている。このような基板の開示はここにおいて参照されるものである。すなわち、基板は好ましくはポリ(エチレンナフタレート)を含む熱安定化されたヒートセット延伸フィルムである。好ましくは、前記基板は、40×10-6/℃未満、好ましくは30×10-6/℃未満、より好ましくは25×10-6/℃未満、より好ましくは20×10-6/℃未満の、−40℃〜+100℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE)を有する。前記基板は、ここに記載した通りに測定して、230℃、30分で、好ましくは1%未満、好ましくは0.75%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.25%未満、さらに好ましくは0.1%未満の収縮率を有する。好ましくは、前記基板は、フィルムを8℃〜200℃に加熱し次いで8℃に冷却する工程の前後に25℃で測定し、元の寸法の0.75%未満、好ましくは0.5%未満、好ましくは0.25%未満、より好ましくは0.1%未満の残留寸法変化ΔLrを有するものである。特に好ましい実施態様では、基板は、前述の230℃、30分後の収縮特性を有し、かつ好ましくは前述の残留寸法変化ΔLr特性を有する、ポリ(エチレンナフタレート)を含む熱安定化されたヒートセット延伸フィルムである。好ましい基板およびこれらの調製を以下に詳細に説明する。
【0034】
基板が自立しているとは、支持体が存在しなくとも独立して存在することが可能であることを意味する。基板の厚さは、好ましくは約12〜300μmの間、より好ましくは約25〜250μmの間、より好ましくは約50〜250μmの間である。
【0035】
PENポリエステルは従来の方法により合成することができる。代表的な方法としては、直接エステル化するか或いはエステル交換反応があり、それに続いて、重縮合が行われる。したがってPENポリエステルは、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、好ましくは2,6−ナフタレンジカルボン酸、あるいはその低級アルキル(炭素原子6個まで)ジエステルをエチレングリコールと縮合させることにより得ることができる。代表的には、重縮合としては固相重合段階がある。固相重合は、流動層、例えば窒素を用いて流動化するか、または、真空流動層上で回転真空乾燥機を用いて実施することができる。適当な固相重合技術は、例えば、特許文献6に開示されている。この開示はここで参照されるものである。
【0036】
一つの実施態様では、PENは、触媒残渣、望ましくない無機沈殿、その他の重合体製造の副生物のような汚染量を減少した重合体材料を提供するゲルマニウム触媒を用いて調製される。「より清浄な」重合体組成物は、より一層、光学的透明度および表面平滑性を助長させる。
【0037】
基板を調製するために使用されるPENは、適切には0.5〜1.5、好ましくは0.7〜1.5、特に0.79〜1.0のPET当量固有粘度(IV;ここに記載した測定による)を有する。IVが0.5未満では機械的特性などの所望の特性が不足した重合体フィルムが生じるのに対して、IVが1.5を超えると得るのが困難となり原材料の加工が困難となる。
【0038】
基板の形成は当技術分野でよく知られている従来の技術により実施し得る。基板の形成は、以下に述べる手順に従って押出成形により実施することができる。一般的に言えば、この方法は融解した重合体の層を押し出し成形するステップと、押出し物を急冷するステップと、急冷した押出し物を少なくとも1方向に延伸するステップとを含む。
【0039】
基板を一軸延伸してもよいが、好ましくは二軸延伸される。延伸されたフィルムを製造するために当技術分野で知られている任意の方法、例えば管状またはフラットフィルム法により延伸を実施してもよい。二軸延伸は、機械的および物理的性質の満足な組合せを達成するために、フィルム面の相互に垂直な2方向に延伸することにより実施される。
【0040】
管状法では、熱可塑性ポリエステルチューブを押し出し、続いて急冷し、再加熱し、次いで水平方向の延伸をさせるために内部ガス圧力により拡張させ、かつ長さ方向の延伸をさせる速度で引き出すことにより実施することができる。
【0041】
好ましいフラットフィルム法では、支持体形成性ポリエステルをスロットダイに通して押出し、ポリエステルがアモルファス状態に急冷されるようにするために冷却した流延用ドラム上で急冷させる。次いで、急冷した押出し物をポリエステルのガラス転位温度を超える温度で、少なくとも1方向に引き伸ばすことにより、延伸を実施する。連続的延伸は、フラットな急冷された押出し物をまず1方向、通常長さ方向、すなわちフィルム延伸機を通る前方方向に、次いで水平方向に引き伸ばすことにより実施することができる。押出し物の前方延伸を、好都合なことには1組の回転ロールまたは2対のニップロールを用いて実施し、次いでテンタ装置中で横延伸を実施する。あるいは、同時延伸により押出したフィルム中に延伸を引き起こさせてもよい。この場合、フィルムはテンタオーブン中でプロセスの本質的に同じ段階で長さ方向および水平方向に引き伸ばされる。連続的および同時延伸の両方の経路に対して延伸の程度は部分的にはポリエステルの性質により決定される。しかし、フィルムは、通常、延伸されたフィルムの寸法が、延伸のそれぞれの方向でその元の寸法の2〜5倍、より好ましくは2.5〜4.5倍になるように引き伸ばされる。代表的には、延伸は70〜150℃、代表的には70〜140℃の範囲の温度で実施される。1方向だけの延伸が要求される場合は、より大きな延伸比(例えば約8倍まで)を使用してもよい。バランスのとれた特性を有するフィルムを得ることが望ましいが、それは、例えば機械方向および水平方向の延伸条件を制御することにより達成することができる。
【0042】
引き伸ばされたフィルムは、特許文献7に記載されているように、ポリエステルを結晶化させるために、ポリエステルのガラス転位温度を超えるが、その融解温度未満の温度で寸法を拘束しながらヒートセットにより寸法を安定化する。寸法を拘束する張力は、一般に、フィルム幅に対して約19〜約75kg/m、好ましくは、約45〜約50kg/mの範囲であり、これは約2.6mの幅を有するフィルムに対しては、約50〜約190kg、好ましくは120〜130kgの範囲の張力となる。実際のヒートセット温度および時間は、フィルムの組成に応じて異なるが、フィルムの耐引裂性を実質上劣化させないように選択するべきである。これらの制約内では、一般に約135〜250℃のヒートセット温度、より好ましくは235〜240℃が望ましい。加熱持続時間は使用する温度により決まるが、代表的には5〜40秒、好ましくは8〜30秒の範囲である。
【0043】
次いで、フィルムが本来有する収縮の大部分を生起させる(十分に緩和させる)ことにより、残留する収縮を非常に低くし、その結果、高い寸法安定性を有するフィルムを作製するために、フィルムを低張力下で(すなわち、最少の可能な寸法拘束をしながら)ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融点未満の温度で加熱することによりフィルムをさらに熱安定化させる。
この熱安定化工程中にフィルムが受ける張力は、フィルム幅に対し代表的には5kg/m未満、好ましくは3.5kg/m未満、より好ましくは1〜約2.5kg/mの範囲、代表的には1.5〜2kg/mの範囲である。この熱安定化工程中には、フィルムの横断方向の寸法増加はない。熱安定化ステップに使用される温度は、最終フィルムに所望される特性の組合せに応じて変えることができるが、より高い温度ではより優れた、すなわち、低い残留収縮特性をもたらす。一般に135℃〜250℃の温度、好ましくは190〜250℃、より好ましくは200〜230℃、より好ましくは少なくとも215℃、代表的には215〜230℃が望ましい。加熱時間は使用した温度により決まるが、代表的には10〜40秒であり、20〜30秒の時間が好ましい。この熱安定化プロセスは、水平ないし垂直配置、ならびに、フィルム製造プロセスとは別個のプロセスステップとしての「非直列型」、あるいは、それと連続した「直列型」を含めて、種々の方法により実施することができる。一つの実施態様では熱安定化を「非直列型」で実施する。
【0044】
基板は1つまたは複数の別個の層を含んでもよい。それぞれの層の組成は同じであるかまたは異なっていてもよい。例えば、基板は1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つ、あるいはそれ以上の層を含んでいてもよく、代表的な多層構造はAB、ABA、ABC、ABAB、ABABAまたはABCBA型であってもよい。基板は1層のみを含むものが好ましい。基板が複数の層を含む場合は、基板の調製は、好都合なことには当技術分野でよく知られている従来の技術に従って、共押出し成形、積層成形または注入成形により実施される。
【0045】
基板は、好都合なことには、重合体フィルムの製造に通常使用される任意の添加剤を含むことができる。すなわち、架橋結合剤、染料、顔料、空隙形成剤、潤滑剤、抗酸化剤、ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、粘着防止剤、表面活性、すべり助剤、蛍光増白剤、光沢向上剤、分解促進剤、粘度調節剤および分散安定剤などの薬剤を必要に応じて取り込んでもよい。基板の成分は従来の方法で一緒に混合してもよい。
【0046】
好ましい実施態様では、ここに記載したフィルムは光学的に透明であり、散乱可視光(haze)は、規格ASTM D1003に従って測定して、<3.5%、好ましくは<2%、より好ましくは<1.5%、より好ましくは≦1%、特に0.7%未満であることが好ましい。一つの実施態様では散乱可視光(haze)は0.6〜1.0%の範囲である。好ましくは、400〜800nmの範囲の全光線透過度(TLT)は、規格ASTM D1003に従って測定して、少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%である。この実施態様では、充填材は、代表的に少量、一般に、所定の層の0.5重量%未満、より好ましくは0.2重量%未満しか存在しない。
【0047】
別の実施態様では、基板は不透明で、大量に充てんされており、好ましくは0.1〜2.0、より好ましくは0.2〜1.5、より好ましくは0.25〜1.25、より好ましくは0.35〜0.75、特に0.45〜0.65の範囲の透過光学濃度(TOD)(Sakura Densitometer、PDA 65型、透過方式)を示す。フィルムは重合体混合物中に不透明化剤の有効量を取り込むことにより好都合に不透明になる。適当な不透明化剤としては、非相容性樹脂充填剤、粒状の無機充填剤または複数のこうした充填剤の混合物がある。好ましい粒状無機充填剤としては、二酸化チタンおよびシリカがある。適当な非相容性樹脂としては、ポリアミドおよびオレフィン系重合体、特に、その分子中に6個までの炭素原子を含んだモノ−α−オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。所定の層中に存在する充填剤の量は、好ましくは重合体層の重量に対して1重量%〜30重量%、より好ましくは3重量%〜20重量%、特に4重量%〜15重量%、特に5重量%〜10重量%の範囲にある。
【0048】
基板をコーティングする前に、コーティングの接着性を高めるために、基板を前処理することが望ましいことがある。火炎処理、コロナ放電、および/または樹脂コーティングのような様々な接着性向上技術を利用し得ることが当業者に知られている。
【0049】
好ましい実施態様では、基板の平坦化用コーティング組成物への接着性を向上させるために、基板にプライマ層をコーティングする。プライマ層は、当技術分野で知られているポリエステルおよびアクリル樹脂を含んだ任意の適当な接着性向上用重合体の組成物であってもよい。プライマ組成物は、また、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂との混合物であってもよい。アクリル樹脂は任意のオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド連鎖を含むものであってもよい。プライマ組成物の重合体(1つまたは複数)は、好ましくは、水溶性または水分散性である。
【0050】
ポリエステルのプライマ成分としては、以下のジカルボン酸およびジオールから得られたものが含まれる。適当な二酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、二量体酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムが挙げられる。複数のジカルボン酸成分を用いたコポリエステルが好ましい。ポリエステルは、任意選択でマレイン酸またはイタコン酸などの少量の不飽和二酸成分、または、p−ヒドロキシ安息香酸などの少量のヒドロキシカルボン酸成分を含んでもよい。適当なジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、およびポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールが挙げられる。このポリエステルのガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。適当なポリエステルとしては、PETまたはPENと、比較的少量の1つまたは複数のその他のジカルボン酸コモノマー、特にイソフタル酸およびスルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族二酸、ならびに任意の比較的少量の1つまたは複数のジエチレングリコールなどのエチレングリコール以外のグリコールとのコポリエステルを含むものである。
【0051】
一つの実施態様では、プライマ層はアクリレートまたはメタクリレート重合体樹脂を含む。アクリル樹脂は1種または複数のその他のコモノマーを含んでもよい。適当なコモノマーとしては、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル(ただし、アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル等);アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、およびメタクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシを含んだ単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、およびアリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含んだ単量体;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、四級アミン塩等)などのカルボキシル基またはその塩を含んだ単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジメタクリル酸アルキル(ただし、アルキル基は好ましくは上述のものから選択される)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基は好ましくはメトキシ、エトキシ、ブトキシ、イソブトキシ等である)、アクリロイルモルホリン、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、およびN−フェニルメタクリルアミドなどのアミド基を含んだ単量体;無水マレイン酸および無水イタコン酸などの酸無水物;ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、マレイン酸モノアルキル、フマル酸モノアルキル、イタコン酸モノアルキル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、およびブタジエンが挙げられる。好ましい実施態様では、アクリル樹脂は、オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド連鎖を含んだ1種または複数の単量体と共重合される。
【0052】
オキサゾリン基を含んだ単量体としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4メチル−2−オキサゾリン、および2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリンがある。1種または複数のコモノマーを使用してもよい。2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0053】
ポリアルキレンオキシド連鎖を含んだ単量体としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル部分にポリアルキレンオキシドを加えることにより得られた単量体がある。ポリアルキレンオキシド連鎖としては、ポリメチレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、およびポリブチレンオキシドがある。ポリアルキレンオキシド連鎖の繰返し単位は3〜100個が好ましい。
【0054】
プライマ組成物が、ポリエステルおよびアクリル系成分、特にオキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド連鎖を含んだアクリル樹脂を含む場合は、ポリエステルの含量は5〜95重量%、好ましくは50〜90重量%であり、アクリル樹脂の含量は5〜90重量%、好ましくは10〜50重量%であることが好ましい。
【0055】
その他の適当なアクリル樹脂としては、
(i)(a)35〜40モル%のアクリル酸アルキル、(b)35〜40%のメタクリル酸アルキル、(c)10〜15モル%のイタコン酸などの遊離カルボキシル基を含んだコモノマー、および(d)15〜20モル%のp−スチレンスルホン酸などの芳香族スルホン酸および/またはその塩の共重合体であって、例としては、ここで参照するものとして挙げている特許文献8に開示されているように、アクリル酸エチル/メタクリル酸メチル/イタコン酸/p−スチレンスルホン酸および/またはその塩を37.5/37.5/10/15モル%の比で含んだ共重合体が挙げられる。ならびに
(ii)アクリル系および/またはメタクリル系重合体樹脂であって、例としては、ここで参照するものとして挙げている特許文献9に開示されているように、約35〜60モル%のアクリル酸エチル、約30〜55モル%のメタクリル酸メチル、および約2〜20モル%のメタクリルアミドを含んだ重合体が挙げられる。
【0056】
プライマまたは接着層は、また、基板への接着性を高め、また内部の架橋結合が可能である架橋結合剤を含んでもよい。適当な架橋結合剤にはメラミンとホルムアルデヒドとのアルコキシ化された縮合生成物が任意に含まれる。プライマまたは接着層は、また、架橋結合剤の架橋結合を促進するために、硫酸アンモニウムなどの架橋結合触媒を含んでいてもよい。その他の適当な架橋結合剤および触媒はここで参照するものとして挙げている特許文献8に開示されている。
【0057】
プライマコーティングは、特に、平坦化コーティング組成物を非直列型でコーティングするとき、フィルムの取扱い性を助長するために少量の1種または複数の種類の充填剤粒子を含むことができる。一つの実施態様では、充填剤はシリカ、および/またはシリカとチタニアとの複合無機粒子を含むことができる。この微細な粒子の平均粒径は、好ましくは40〜120nmの範囲である。プライマコーティングは、ここに記載された基板の光学的特性に対し有害であってはならない。
【0058】
プライマ層はフィルム表面の取扱い性およびスリップ特性を改善するために、任意に脂肪族ワックスを含んでいてもよい。改善を図るための脂肪族ワックスの含量は、好ましくは少なくとも0.5重量%、より好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。30重量%を超す含量は、プライマ層のポリエステルフィルム基板への接着および続いて塗布される層への接着を悪化させることがあるので望ましくない。適当な脂肪族ワックスとしては、カルナバワックス、カンデリラワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油、ヤシワックス、ロジン変性ワックス、オーリクリーワックス、サトウキビワックス、エスパルトワックス、および、樹皮ろう等の植物ワックス;蜜ろう、羊毛脂、鯨ろう、虫白ろう、および、セラックワックス等の動物ワックス;モンタンワックス、オゼケライト、および、セレシンワックス等のミネラルワックス;パラフィンワックス、ミクロワックス、ワセリン等の石油ワックス;ならびに、フィッシャー−トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリエチレンオキシドワックス、ポリプロピレンワックス、および、ポリプロピレンオキシドワックス等の合成炭化水素ワックスが挙げられる。カルナバワックス、パラフィンワックス、および、ポリエチレンワックスが好ましい。ワックスを水分散系として使用することが好ましい。
【0059】
プライマコーティングは、また、当技術分野で知られているように、静電防止剤および/または湿潤剤を含んでいてもよい。
【0060】
他の適当なプライマはここで参照するものとして挙げている特許文献10に開示されている。
【0061】
プライマ層の基板上へのコーティングは直列型または非直列型で実施してもよいが、好ましくは「直列型」で、好ましくは二軸延伸操作の前方および水平方向の引伸ばしの間に実施される。
【0062】
コーティング組成物を基板上にコーティングした後、次いでコーティングされた基板はその最終用途のための他の加工およびコーティングの準備に備える。ここに記載したエレクトロニックデバイスおよびオプトエレクトロニックデバイスの製造においては、該フィルムはその後前記のとおりバリア層でコーティングされる。こうしたコーティングは当技術分野で知られており、代表的には、高温度でのスパッタリング法が適用される。バリア層を形成するために使用するのに適当な材料はここで参照するものとして挙げている特許文献2に開示されている。有機バリア層は、例えば、光硬化性の単量体またはオリゴマー、或いは熱可塑性樹脂から形成させることができる。光硬化性の単量体またはオリゴマーは、低揮発性および高融点を有するべきである。このような単量体の例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等などのトリメチロールアクリレート;1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート等などの長鎖アクリレート;および、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等などのシクロヘキシルアクリレートが挙げられる。このようなオリゴマーの例としては、アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマー、エーテルアクリレートオリゴマー等が挙げられる。樹脂を硬化させるために、ベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ケタール等などの光開始剤を使用してもよい。適当な熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらの有機材料は真空蒸着などの当技術分野で知られている任意の従来の技術を適用することができる。無機バリア層は水分透過性の低い材料で作られるべきであり水分に対して安定なものである。例としては、SiO2、SiO、GeO、A123等などの酸化物、TiN、Si34等などの窒化物、および、Al、Ag、Au、Pt、Ni等などの金属が挙げられる。無機材料は標準条件下の真空蒸着、スパッタリング等などの気相技術を適用することができる。バリア層は、それ自体、1つまたは複数の個別の層を含むことができ、1つまたは複数の有機層および1つまたは複数の無機層を含んでいてもよい。
【0063】
好ましい実施態様では、バリア層は、オプトエレクトロニックデバイス内の基板の水蒸気透過度を10-6g/m2/日未満に、そして、酸素透過度を10-5mL/m2/日未満に低下させた層である。別の実施態様では、バリア層は、エレクトロニックデバイス内の基板の水蒸気透過度を10-2g/m2/日未満(好ましくは未満10-6g/m2/日未満)に、かつ酸素透過度を10-3mL/m2/日未満(好ましくは10-5mL/m2/日未満)に低下させる層である。
【0064】
バリア層を堆積した後、電極および導電性共役重合体を含めた後続の層を当技術分野で知られている従来の製造技術により適用することができる。電極は当技術分野で知られているいかなるものであってもよく、例えば、ここに記載したものから選沢される電極であってもよい。一つの実施態様では、電極は導電性金属酸化物、好ましくはインジウム錫酸化物である。
【0065】
ここで一般的にいうエレクトロニックデバイスおよびオプトエレクトロニックデバイスは、1つ(または複数)の導電性共役重合体の層、複数の電極、および1つまたは複数の基板層を含む。
【0066】
本発明の一つの実施態様では、エレクトロルミネセンス表示デバイス、特に有機発光表示(OLED)デバイスという用語は、電極をその各々が備えた2つの層の間に配置された、発光性の導電性共役重合体材料の層を含んだ表示デバイスであって、得られた複合構造物が2個の基板(または支持体またはカバー)層の間に配置されている表示デバイスを意味する。
【0067】
本発明の一つの実施態様では、光電池という用語は、電極をその各々が備えた2つの層の間に配置された導電性共役重合体材料の層を含んだデバイスであって、得られた複合構造物が2個の基板(または支持体またはカバー)層の間に配置されているデバイスを意味する。
【0068】
本発明の一つの実施態様では、トランジスタという用語は、少なくとも1つの層の導電性共役重合体、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極、ならびに1つまたは複数の基板層を含むデバイスを意味する。
【0069】
本発明の他の態様によると、基板、好ましくは熱安定化されヒートセットされた延伸ポリエステル基板およびコーティング層を含む複合フィルムであって、コーティング層がここに記載されたコーティング組成物から誘導され、かつ前記コーティングされた基板の表面が、ここで測定された0.7nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.5nm未満、好ましくは0.4nm未満、好ましくは0.3nm未満、理想的には0.25nm未満のRa値、および/または、ここで測定された0.9nm未満、好ましくは0.8nm未満、好ましくは0.75nm未満、好ましくは0.65nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.50nm未満、好ましくは0.45nm以下、好ましくは0.35nm未満、理想的には0.3nm未満のRq値を示す複合フィルムを提供するものである。
【0070】
本発明の他の態様によると、ポリ(エチレンナフタレート)を含んだ熱安定化されヒートセットされた延伸基板およびコーティング層を含む複合フィルムであって、好ましくは前記基板が1つまたは複数の、(i)前述の線膨張係数(CLTE)特性、および/または(ii)前述の収縮特性、および/または(iii)前述の残留寸法変化ΔLr特性を有し、かつ前記コーティングが、Ra値および/またはRq値が上述の限界値を満たすように、前記基板の表面平滑性を改善するのに十分である複合フィルムを提供する。本発明のこの態様の好ましい実施態様によれば、コーティングは、
(a)約10〜約70重量パーセントのシリカと、約90〜約30重量パーセントの部分的に重合した一般式RSi(OH)3で示される有機シラノールであって、式中、Rはメチルと約40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される有機シラノールとを含む、約5〜約50重量パーセントの固体、ならびに
(b)約10〜約90重量パーセントの水および約90〜約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールを含む、約95〜約50重量パーセントの溶媒、
を含む約3.0〜約8.0のpHを有するコーティング組成物から誘導されたポリシロキサンを含むものである。
【0071】
一つの実施態様では、前記コーティングされた基板は、前記基板層、およびその両面に前記コーティング層を含む。このタイプの対称的なフィルムは特に後続の処理中のフィルムカールが最小限に抑えられまたは回避され寸法が安定なフィルムを提供するのに有用である。
【0072】
一つの実施態様では、前記コーティングされた基板は以下に説明する方法により得ることができる。
【0073】
本発明の他の態様では、ここに記載した基板層、およびその表面上にここに記載した平坦化コーティング層、および、コーティング層の表面上に、ここに記載したバリア層を含み、かつ、さらに任意にバリア層の表面の少なくとも一部上に電極層を含み、かつ、さらに任意に共役導電性重合体の層を含んだ複合フィルムを提供する。一つの実施態様では、複合フィルムは、前記基板層、および、その両面上に前記平坦化コーティング層、ならびに、前記コーティングされた基板の両面上にバリア層を含む。
【0074】
本発明の他の態様では、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含んだ層を形成するステップ、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸するステップ、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/m、好ましくは約45〜約50kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットするステップ、
(iv)フィルムの幅に対して低い張力、好ましくは5kg/m未満の張力、より好ましくは3.5kg/m未満の張力、より好ましくは1.0〜2.5kg/mの範囲の張力、代表的には1.5〜2.0kg/mの範囲の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させるステップ、
(v)これに、好ましくはRa値および/またはRq値が前記限界値を満たすように、平坦化コーティング組成物を塗布するステップ
を含むコーティングされた重合体フィルムを製造する方法を提供する。
【0075】
本発明の他の態様では、ここに記載した共役導電性重合体および基板を含むエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造する方法であって、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含んだ層を形成するステップ、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸するステップ、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/m、好ましくは約45〜約50kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットするステップ、
(iv)フィルムの幅に対して低い張力、好ましくは5kg/m未満の張力、より好ましくは3.5kg/m未満の張力、より好ましくは1.0〜2.5kg/mの範囲の張力、代表的には1.5〜2.0kg/mの範囲の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させるステップ、
(v)これに、好ましくはRa値および/またはRq値が上記に説明した限界値を満たすように、平坦化コーティング組成物を塗布するステップ、
(vi)コーティングされ、熱安定化され、ヒートセットされた延伸フィルムを、デバイス中の基板として提供するステップ
を含む方法を提供する。
【0076】
エレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造するステップは、さらに、コーティングされた基板上にバリア層を設けるステップと、バリア層の少なくともの一部上に導電性材料を塗布することにより電極を設けるステップと、導電性共役重合体の層を設けるステップとを含んでいてもよい。
【0077】
ここでは、「平坦化コーティング組成物」という用語は、好ましくはRa値が、ここで測定して0.7nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.5nm未満、好ましくは0.4nm未満、好ましくは0.3nm未満、理想的には0.25nm未満であるように、かつ、好ましくはRq値が、ここで測定して0.9nm未満、好ましくは0.8nm未満、好ましくは0.75nm未満、好ましくは0.65nm未満、好ましくは0.6nm未満、好ましくは0.50nm未満、好ましくは0.45nm以下、好ましくは0.35nm未満、理想的には0.3nm未満であるように、好ましくは表面平滑性が改善されるように、基板に塗布したときその表面平滑性を向上させるようにした重合体コーティング組成物を意味する。好ましい実施態様では、平坦化コーティング組成物は、
(a)約10〜約70重量パーセントのシリカと、約90〜約30重量パーセントの部分的に重合した一般式RSi(OH)3で示される有機シラノールであって、式中、Rはメチルと約40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される有機シラノールとを含む、約5〜約50重量パーセントの固体、ならびに
(b)約10〜約90重量パーセントの水および約90〜約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールを含む、約95〜約50重量パーセントの溶媒、
を含む約3.0〜約8.0のpHを有するコーティング組成物から誘導されたポリシロキサンを含むものである。
【0078】
本発明の他の態様では、重合体基板を含む共役導電性重合体を含む、エレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスの製造において、前記重合体基板の表面平滑性を改善する目的への平坦化コーティング組成物の使用を提供する。
【0079】
重合体フィルムのある特性を決定するために、以下の試験方法を使用することができる。
(i)フィルムの透明度は、ASTM D−1003−61に従って、Gardner XL 211 hazemeterを用いてフィルム全体の厚さを通過した全光線透過度(TLT)および散乱可視光(ヘーズ)[透過可視光の散乱した%]を測定することにより評価することができる。
(ii)フィルムの透過光学濃度(TOD)は、Macbeth Densitometer TR 927(Dent & Woods社、Basingstoke、英国)を透過方式で用いて測定することができる。
(iii)寸法安定性は、(a)線熱膨張係数(CLTE)、または、(b)フィルムを所定の温度に加熱し冷却した後、所定の軸に沿って残留する長さの変化を測定する温度サイクル法により評価することができる。
【0080】
両測定方法は、共に、知られている手順に従って、温度、変位、力、固有歪、基準線、および炉温度調製を較正および点検したThermomechanical Analyser PE−TMA−7(Perkin Elmer社)を用いて実施される。フィルムは伸び分析用クランプで試験された。伸びクランプに必要な基準線は、非常に低い膨張係数の試験片(石英)を用いて求め、CLTEの精度および正確さ(スキャン後の基準線の差し引きに依存する)はCLTE値がよく知られている標準物質、例えば、純粋なアルミニウム箔を用いて評価された。元のフィルム試料のうちで延伸軸が知られているものから選択した試験片を、ほぼl2mmのクランプ間隙でシステム中に取り付け、5mm幅にわたって75mNの力を印加した。印加された力はフィルムの厚さの変化に対して調整された。すなわち、均一な張力およびフィルムが分析する軸に沿ってカーブをしていないことが保証された。試験片の長さを23℃の温度で測定した長さに正規化した。
【0081】
CLTE試験方法(a)では、試験片を8℃に冷却し、安定化させ、次いで8℃〜+240℃まで5℃/分で加熱した。CLTE値(α)を、式
α=ΔL/(L×(T2−T1))
[ただし、ΔLは、温度範囲(T2−T1)にわたる試験片の測定された長さの変化であり、Lは23℃における元の試験片の長さである]から誘導した。CLTE値はTg温度(120℃)まで信頼できるとみなされる。
【0082】
データは、23℃に正規化した試験片長さの温度による変化%の関数としてプロットすることができる。
【0083】
温度サイクル試験法(b)では、方法(a)の手順と類似のものを使用し、ここでは、温度を8℃といくつかの高い温度との間で循環させた。すなわち、フィルム試料を8℃〜140℃、160℃、180℃または200℃に加熱し、次いで8℃に冷却した。水平方向および機械方向の各々に沿った長さを、熱処理の前後に25℃で測定し、長さの変化ΔLを元の長さのパーセントとして計算する。
【0084】
(iv)固有粘度(IV)
IVを以下の手順を用いて溶融粘度測定により測定した。既知の温度および圧力で較正された金型を通過させ、あらかじめ乾燥した押出し物の流量を、コンピュータに接続されたトランスデューサにより測定する。コンピュータプログラムは溶融粘度値(log10粘度)および実験的に決定された回帰方程式から等価IVを計算する。分単位の時間に対するIVのプロットがコンピュータにより作成され低下速度が計算される。グラフをゼロ時間に外挿すると、元のIVおよび等価溶融粘度を得る。金型開口部の直径は0.020インチ(0.51mm)であり、IVが0.80までに対して溶融物温度は284℃、IV>0.80に対して295℃である。
【0085】
(v)収縮
所定の温度の収縮を、試料を加熱したオーブン中に所定の時間入れることにより測定する。収縮の%は、加熱前後の所定の方向のフィルム寸法の変化%として計算される。
【0086】
(vi)表面平滑性
表面平滑性は、当技術分野でよく知られている、通常の非接触式、白色光、移相干渉分光技術を用いて測定される。使用した機器は、波長604nmの光源を用いたWyko NT3300 surface profilerである。ここで参照するものとして挙げられている非特許文献2によれば、その技術を用いて得られるデータ特性には以下のものがある:
平均パラメータ[平均粗さ(Ra)]:平均表面から測定された、評価領域内の測定高さ偏差絶対値の算術平均。
【0087】
平均パラメータ[二乗平均粗さ(Rq)]:平均表面から測定された、評価領域内の測定高さの偏差の二乗平均(二乗の算術平均の平方根)。
【0088】
極値パラメータ[最大輪郭高さ(Rp)]:平均表面から測定された、評価領域内の最大輪郭高さ。
【0089】
平均極値パラメータ[平均最大輪郭高さ(Rpm)]:評価領域内の10個の最大輪郭高さの算術平均値。
【0090】
高さの極値分布:200nmを超える高さのRp値の数の分布。
【0091】
表面積指数:表面の比平面度の測度。
【0092】
粗さパラメータおよびピーク高さを、試料表面領域の平均レベル、すなわち「平均表面」と比較して通常の技術に従って測定する。(重合体フィルム表面は、完全にフラットでない場合があり、しばしば表面を横切って緩やかな起伏がある。平均表面とは、起伏および表面高さ偏差の中心を通り、輪郭を平均表面の上と下に等体積になるように分割する) 表面輪郭分析を、表面観測記録装置の「視野」内の別個の領域を走査することにより実施し、これは1回の測定で走査される領域である。フィルム試料は、個別の視野を用いて、または配列を形成するように連続的な視野を走査することにより分析してもよい。ここで実施する分析では、Wyko NT3300表面観測記録装置の全分解能を利用し、その各視野は480×736画素を構成する。
【0093】
RaおよびRqの測定では、倍率50倍の対物レンズを用いて分解能を高めた。得られた視野は90μm×120μmの寸法を有し、画素サイズは0.163μmである。
【0094】
RpおよびRpmの測定では、「乗数の0.5倍の視野」と倍率10倍の対物レンズを組み合わせて用いて5倍の総合拡大率を得て都合よく視野を拡大した。得られた視野は、0.9mm×1.2mmの寸法を有し、画素サイズは1.63μmである。Rpは好ましくは100nm未満、より好ましくは60nm未満、より好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満、より好ましくは30nm未満、より好ましくは20nm未満である。
【0095】
ここでのRaおよびRqの測定は、表面領域の同じ部分の5回の連続的走査結果を合わせて平均値を得る。Rpに関する下記のデータは、100回の測定値の平均値である。測定を10%の変調限界値(信号:ノイズ比)、すなわち限界値未満のデータポイントは不適当なデータとして識別する。
【0096】
表面トポグラフィもまた、200nmを超える極大値の存在に対して分析することができる。この分析では、合計で5cm2の領域にわたり、1.63μmの画素寸法で一連のRpの測定を行う。結果を、データポイントがピーク高さの所定の範囲に割り当てられたヒストグラムの形態で提示してもよく、例えばヒストグラムは、25nm幅のチャネルのx軸上に等間隔のチャネルを有する。ヒストグラムは、ピーク度数(y軸)対ピーク高さ(x軸)のグラフの形態で提示してもよい。例えば、図1を参照されたい。面積5cm2当たりの300〜600nmの範囲中の表面ピーク数を、Rp値から求めて計算し、N(300−600)として示すことができる。本発明による平坦化コーティングを使用すると、好ましくは、平坦化コーティングの塗布前と後のN(300−600)の比率である減少Fが、少なくとも5、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも30であるようにN(300−600)が減少する。好ましくは、平坦化されたフィルム(コーティング後)のN(300−600)値は、5cm2の面積当たり50ピーク未満、好ましくは35ピーク未満、好ましくは20ピーク未満、好ましくは10ピーク未満、より好ましくは5ピーク未満である。
【0097】
表面積指数は、「3次元表面積」および「水平表面積」から以下のとおり計算される。
試料領域の「3次元(3−D)表面積」は、山および谷を含めた全ての露出した3−D表面積である。「水平表面積」は水平方向に測定した表面積である。3−D表面積を計算するためには、表面高さを有する4個の画素を使用して、その中心に位置し、X、YおよびZ寸法を有する画素を作り出す。次いで、生じた4個の三角形の面積を用いて近似的な体積を生成する。この4個の画素ウインドウは全データセット中を移動する。水平表面積は、各画素のXY寸法を視野中の画素数に掛け合わせることにより計算される。表面積指数は、3−D表面積を水平表面積で除すことにより計算され、表面の平坦性の1つの尺度である。指数が1に非常に近いと、水平面積(XY)が全3−D面積(XYZ)に非常に近く、非常に平坦な表面を表わす。
【0098】
ここでは、山から谷までの値を「PV95」と呼び、表面の平均面を基準とする表面高さを関数とする正および負の表面高さの周波数分布から得ることができる。PV95値は、データポイントの最高および最低の2.5%を切り捨てることにより95%の山から谷の表面高さデータを包含する山から谷の高さの差である。PV95パラメータは、表面高さの山から谷の広がり全体の統計的に重要な尺度である。
【0099】
(vii)酸素透過度は、ASTM D3985を用いて測定することができる。
【0100】
(viii)水蒸気透過度は、ASTM F1249を用いて測定することができる。
【0101】
本発明をさらに以下の実施例により例示する。実施例は、例示目的に過ぎず、前記本発明を拘束するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく詳細な修正を加えることができるものである。
【実施例】
【0102】
(実施例1)
400ppmの酢酸マンガン四水和物触媒の存在下で、ジメチルナフタレートをエチレングリコールと反応させて、標準的なエステル交換反応でビス−(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートおよびその低オリゴマーを得た。エステル交換反応の最後に0.025%のリン酸安定剤を、それに続いて0.04%の三酸化アンチモン重縮合触媒を加えた。ポリエチレンナフタレート(ここでは「ポリエステルA」と呼ぶ)の固有粘度(IV)が、ほぼ0.50〜0.575(真のPEN IV;PET換算IV 0.75〜0.85)になるまで、標準的バッチ式重縮合反応を行った。
【0103】
次いで重合体組成物を押し出し、熱回転鏡面ドラム上に流延した。次いでフィルムを前方延伸ユニットに供給し、そこで一連の温度制御されたローラーを用いて、押出し方向にその元の寸法のほぼ3.34倍まで引き伸ばした。延伸温度はほぼ133℃であった。次いでフィルムを、138℃のテンタオーブン中に送り、そこでフィルムを水平方向にその元の寸法のほぼ4.0倍まで引き伸ばした。次いで二軸延伸されたフィルムを、通常の手段により約238℃までの温度でヒートセットし、その後冷却し、リールに巻き取った。フィルムの合計厚さは125μmであった。
【0104】
次いでヒートセットした二軸延伸フィルムを、巻き戻し、一連の4個の浮上オーブン中を通過させ、膜の搬送の制御と一致する最少のラインの張力を加えることにより緩和させた。次いで熱安定化したフィルムを巻き取った。4個のオーブンの各々は、水平方向に3つの制御された温度区画を有していた(左、中央および右)。
【0105】
左 中央 右
オーブン1 200 213 200
オーブン2 200 213 200
オーブン3 200 213 200
オーブン4 195 213 195
熱安定化ステップ中のフィルムのライン速度は15m/分であった。フィルム(元巻きの幅1360mm)に使用した張力は24〜25Nであった。
【0106】
(実施例2)
400ppmの酢酸マンガン触媒の存在下で、ジメチルナフタレートをエチレングリコール(2.1:1グリコール:エステルモル比)と反応させて、標準的なエステル交換反応でビス−(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートおよびその低オリゴマーを得た。エステル交換反応の最後に0.025%のリン酸安定剤を、それに続いて0.020%の二酸化ゲルマニウム重縮合触媒(133ppm Ge金属)を加えた。ポリエチレンナフタレート(本明細書では「ポリエステルB」と呼ぶ)の固有粘度(IV)が、ほぼ0.50〜0.575(真のPEN IV;PET換算IV 0.75〜0.85)になるまで、標準的バッチ式重縮合反応を行った。次いで、実施例1の手順に従ってフィルムを作製した。
【0107】
(実施例3)
実施例2のフィルムに、フィルム製造中の前方と水平方向の引伸ばしの間に、
(i)アクリル酸エチル(EA;48モル%)、メタクリル酸メチル(MMA;48モル%)およびメタクリルアミド(MA;4モル%)の共重合体(AC201(登録商標);Rohm and Haas社)の18%固体の水性水分散物;18リットル、
(ii)SYNPERONICNP 10(登録商標)(Uniqema社;エトキシ化ノニルフェノール界面活性剤);100ml
(iii)20%硝酸アンモニウム(20%水溶液);300m1
(iv)蒸留水;81リットル
を含んだ第1コーティング組成物をコーティングした。
【0108】
プライマコーティングの乾燥厚さは30nmであった。
【0109】
次いで、フィルムを非直列で、以下のとおり得られた第2コーティング組成物でコーティングした。
【0110】
(i)517cm3のメチルトリメトキシシラン(OSi Specialities社)を1034cm3の脱塩水に室温で加え24時間攪拌した。
【0111】
(ii)54cm3の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Aldrich Chemical社)を108cm3の脱塩水に室温で加え24時間攪拌した。
【0112】
(iii)53cm3の10%酢酸水溶液(Aldrich Chemical社)を、700cm3のLudox LSコロイドシリカ(12nm)に加えた。これに162cm3の加水分解した3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン/水混合物、および1551cm3の加水分解したメチルトリメトキシシラン/水混合物を加えた。この混合物をコーティングの前に12時間攪拌した。組成物の最終pHは6.05であった。コーティングの厚さは2.3±0.2μmであった。
【0113】
(実施例4)
第2コーティング組成物を4.6±0.2μmのコーティング厚さに塗布した以外は、実施例3の手順を反復した。
【0114】
実施例1〜3のフィルムの表面粗さを表1中に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1の結果は、実施例3に対して優れた平滑性が得られたことを示す。
【0117】
平坦化効果はまた、200nmを超える極値表面ピーク数を示す図1を考察することにより例示される。図1中の曲線(3)は、第2コーティング組成物を塗布する前の実施例3の分析により得られた。曲線(2)は、第2コーティング組成物を塗布した後の実施例3の分析により得られた。曲線(1)は実施例4の分析により得られた。図1中に示された曲線のN(300−600)値は、曲線3、曲線2および曲線1に対してそれぞれ、250、31および8である。したがって減少Fは、曲線2に対して8および曲線1に対して31である。
【0118】
(実施例5)
210ppmの酢酸マンガン四水和物触媒の存在下で、ジメチルナフタレートをエチレングリコールと反応させて、標準的なエステル交換反応でビス−(2−ヒドロキシエチル)ナフタレートおよびその低オリゴマーを得た。エステル交換反応の最後に0.025重量%のリン酸安定剤を、それに続いて0.036重量%の三酸化アンチモン重縮合触媒を加えた。標準的バッチ式重縮合反応を行った。
【0119】
重合体組成物を押し出し、熱い回転鏡面ドラム上に流延した。次いでフィルムを前方延伸ユニットに供給し、そこで一連の温度制御されたローラーを用いて、押出し方向にその元の寸法のほぼ3.1倍まで引き伸ばした。延伸温度はほぼ145℃であった。次いでフィルムを、145℃のテンタオーブン中に送り、そこでフィルムを水平方向にその元の寸法のほぼ3.5倍まで引き伸ばした。次いで二軸延伸されたフィルムを、通常の手段により約240℃までの温度でヒートセットし、その後冷却し、リールに巻き取った。フィルムの合計厚さは125μmであった。次いでフィルムを、実施例1に説明した通りに熱安定化した。
【0120】
(実施例6)
水性プライマコーティング組成物を、前方および水平方向の延伸工程の間に、50nmの被膜の厚さを得るように基板上にコーティングしたこと以外は、実施例5の手順に従った。
【0121】
プライマコーティングは以下の固体含量を有する。
(i)67%のコポリエステルエマルジョン(ただし、コポリエステルの酸性成分は、65モル%の2,6−ナフタレンジカルボン酸、30モル%のイソフタル酸および5モル%の5−スルホイソフタル酸ナトリウムを含み、ならびに、グリコール成分は、90モル%のエチレングリコールおよび10moI%のジエチレングリコールを含む;Tg=80℃;平均分子量=13,000;特許文献11の実施例1に記載された方法により生成される)、
(ii)20%のアクリル樹脂水性分散物(30モル%のメタクリル酸メチル、30モル%の2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、10モル%のポリエチレオキシド(n=10)メタクリレートおよび30モルのアクリルアミドを含む;Tg=50℃;特許文献12の実施例1〜3に記載された方法により生成される)、
(iii)3%の不活性粒子(シリカおよびSiO2−TiO2;40〜120nmの範囲の平均粒径)、
(iv)5%のカルナバワックス、
(v)5%のポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル。
【0122】
(実施例7)
実施例6の手順を追従し、次いでフィルムに対し、非直列型で、実施例3の平坦化コーティング組成物をコーティングした。平坦化コーティングの厚さは2.8μm±0.2μmであった。
【0123】
【表2】

【0124】
実施例6と実施例7の表面積指数を比較すると、実施例7の表面は実施例6の表面より約8倍平滑である。
【0125】
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1.コーティング組成物の使用であって、
(a)約10〜約70重量パーセントのシリカと、約90〜約30重量パーセントの部分的に重合した一般式RSi(OH)3で示される有機シラノールとを含み、式中、Rはメチルと約40%までのビニル、フェニル、γ−グリシドキシプロピル、およびγ−メタクリロキシプロピルからなる群から選択される基である、約5〜約50重量パーセントの固体、ならびに
(b)約10〜約90重量パーセントの水と、約90〜約10重量パーセントの低級脂肪族アルコールとを含む、約95〜約50重量パーセントの溶媒、
を含み、約3.0〜約8.0のpHを有することを特徴とするコーティング組成物の重合体基板の表面平滑性を改善する目的への使用。
2.コーティング組成物のpHは3.0〜6.5の範囲にあることを特徴とする上記1に記載の使用。
3.コーティング組成物のpHは約6.0であることを特徴とする上記1に記載の使用。
4.前記基板はポリエステルフィルムであることを特徴とする上記1から3のいずれかに記載の使用。
5.前記基板はポリ(エチレンナフタレート)またはポリ(エチレンテレフタレート)フィルムであることを特徴とする上記4に記載の使用。
6.前記ポリエステルは2,6−ナフタレンジカルボン酸から誘導されることを特徴とする上記4に記載の使用。
7.前記ポリ(エチレンナフタレート)は0.5〜1.5の固有粘度を有することを特徴とする上記5または6に記載の使用。
8.前記基板は熱安定化されヒートセットされた延伸フィルムであることを特徴とする上記1から7のいずれかに記載の使用。
9.前記基板は230℃、30分で1%未満の収縮率を有することを特徴とする上記1から8のいずれかに記載の使用。
10.前記基板において、フィルムを8℃〜200℃に加熱後、8℃に冷却する前後の25℃で測定した残留寸法変化ΔLrが、元の寸法の0.75%未満であることを特徴とする上記1から9のいずれかに記載の使用。
11.前記基板は、−40℃〜+100℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE)が40×10-6/℃未満であるポリ(エチレンナフタレート)フィルムを含む、熱安定化されヒートセットされた延伸フィルムであることを特徴とする上記1から10のいずれかに記載の使用。
12.前記熱安定化されたフィルムは、<1.5%の散乱可視光(ヘーズ)%を有することを特徴とする上記1から11のいずれかに記載の使用。
13.前記熱安定化されたフィルムは、二軸延伸されていることを特徴とする上記1から12のいずれかに記載の使用。
14.前記コーティングされた基板の表面は、0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すことを特徴とする上記1から13のいずれかに記載の使用。
15.共役導電性重合体を含み、かつ前記基板を含んだエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスの製造における、上記1から14のいずれかに記載の使用。
16.前記デバイスはエレクトロルミネセンス表示デバイスであることを特徴とする上記15に記載の使用。
17.前記デバイスは有機発光表示(OLED)デバイスであることを特徴とする上記15に記載の使用。
18.熱安定化されヒートセットされた延伸ポリエステル基板およびコーティング層を含んだ複合フィルムであって、コーティング層は上記1から3のいずれかに記載のコーティング組成物から誘導され、かつ前記コーティングされた基板の表面は0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すことを特徴とする複合フィルム。
19.前記ポリエステルはポリ(エチレンナフタレート)フィルムであることを特徴とする上記18に記載の複合フィルム。
20.前記基板は、1つまたは複数の以下の特性:
(i)230℃、30分で1%未満の収縮率;および/または
(ii)フィルムを8℃〜200℃に加熱し次いで8℃に冷却する、前と後に25℃で測定して、元の寸法の0.75%未満の残留寸法変化ΔLr;および/または
(iii)40×10-6/℃未満の、−40℃〜+100℃の温度範囲内の線熱膨張係数(CLTE);および/または
(iv)<1.5%の散乱可視光(ヘーズ)%
を示すことを特徴とする上記18または19に記載の複合フィルム。
21.熱安定化されヒートセットされた延伸ポリ(エチレンナフタレート)基板、およびコーティング層を含んだ複合フィルムであって、前記基板は、
(i)230℃、30分で1%未満の収縮率;および/または
(ii)フィルムを8℃〜200℃に加熱後、8℃に冷却する前後の25℃で測定して、元の寸法の0.75%未満の残留寸法変化ΔLr;および/または
(iii)−40℃〜+100℃の温度範囲内で、40×10-6/℃未満の線熱膨張係数(CLTE)
の1つまたは複数を示し、かつ前記コーティングされた基板の表面は、0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すことを特徴とする複合フィルム。
22.さらにバリア層を含むことを特徴とする上記18から21のいずれかに記載の複合フィルム。
23.10-6g/m2/日未満の水蒸気透過度、および/または10-5mL/m2/日未満の酸素透過度を示すことを特徴とする上記22に記載の複合フィルム。
24.コーティングされた重合体フィルムを製造する方法であって、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含む基板層を形成する工程と、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットする工程と、
(iv)フィルムの幅に対して5kg/m未満の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させる工程と、
(v)これに、前記コーティングされた基板の表面は0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すように、平坦化コーティング組成物を塗布する工程と、
を含むことを特徴とするコーティングされた重合体フィルムを製造する方法。
25.明細書中に記載した共役導電性重合体および基板を含んだ、エレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造する方法であって、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含んだ基板層を形成する工程と、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットする工程と、
(iv)5kg/m未満の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させる工程と、
(v)これに、前記コーティングされた基板の表面は0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すように、平坦化コーティング組成物を塗布する工程と、
(vi)コーティングされ、熱安定化され、ヒートセットされた延伸フィルムをデバイス中の基板として提供する工程とを含むこと
を特徴とするエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造する方法。
26.前記コーティングされた基板の表面上に、さらにバリア層を提供することを含むことを特徴とする上記25に記載の方法。
27.前記コーティングされた基板およびバリア層を含んだ複合フィルムは、10-6g/m2/日未満の水蒸気透過度、および/または10-5mL/m2/日未満の酸素透過度を示すことを特徴とする上記26に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱安定化されヒートセットされた延伸ポリ(エチレンナフタレート)基板およびコーティング層を含んだ複合フィルムであって、前記基板は、
(i)230℃、30分で1%未満の収縮率;および/または
(ii)フィルムを8℃〜200℃に加熱後8℃に冷却する前後に25℃で測定して元の寸法の0.75%未満の残留寸法変化ΔLr;および/または
(iii)−40℃〜+100℃の温度範囲内で40×10-6/℃未満の線熱膨張係数(CLTE)
の1つまたは複数を示し、かつ前記コーティングされた基板の表面は、0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すことを特徴とする複合フィルム。
【請求項2】
コーティングされた重合体フィルムを製造する方法であって、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含む基板層を形成する工程と、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットする工程と、
(iv)フィルムの幅に対して5kg/m未満の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させる工程と、
(v)これに、前記コーティングされた基板の表面は0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すように、平坦化コーティング組成物を塗布する工程と、
を含むことを特徴とするコーティングされた重合体フィルムを製造する方法。
【請求項3】
明細書に記載した共役導電性重合体および基板を含んだエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造する方法であって、
(i)ポリ(エチレンナフタレート)を含む基板層を形成する工程と、
(ii)この層を少なくとも1つの方向に延伸する工程と、
(iii)フィルムの幅に対して約19〜約75kg/mの範囲の張力で寸法を拘束しながら、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度でヒートセットする工程と、
(iv)5kg/m未満の張力下で、ポリエステルのガラス転位温度を超えるがその融解温度未満の温度で熱安定化させる工程と、
(v)これに、前記コーティングされた基板の表面は0.6nm未満のRa値および/または0.8nm未満のRq値を示すように、平坦化コーティング組成物を塗布する工程と、
(vi)コーティングされ熱安定化されヒートセットされた延伸フィルムをデバイス中の基板として提供する工程と
を含むことを特徴とするエレクトロニックデバイスまたはオプトエレクトロニックデバイスを製造する方法。
【請求項4】
前記コーティングされた基板の表面上に、さらにバリア層を提供することを含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングされた基板およびバリア層を含んだ複合フィルムは、10-6g/m2/日未満の水蒸気透過度、および/または10-5mL/m2/日未満の酸素透過度を示すことを特徴とする請求項4に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−7090(P2010−7090A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237456(P2009−237456)
【出願日】平成21年10月14日(2009.10.14)
【分割の表示】特願2003−584194(P2003−584194)の分割
【原出願日】平成15年3月19日(2003.3.19)
【出願人】(300038826)デュポン テイジン フィルムズ ユー.エス.リミテッド パートナーシップ (36)
【Fターム(参考)】