説明

柔軟食材への保形性付与方法

【課題】流動性食品に保形性を与える。
【解決手段】この発明の柔軟食品への保形性付与方法は、少なくとも製造過程において成形不可能な柔軟性を有する柔軟食材に対し、精製されたグルコマンナン0.3〜50w%と、一種又は二種以上の増粘多糖類とを含むゲル化剤を添加することにより、上記柔軟食材に保形性を付与するものであり、ゲル化剤が増粘多糖類の他に食物繊維を添加し、増粘多糖類と食物繊維の割合が50〜99.7w%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は例えばマヨネーズやジャム等のように流動性を持ち又は加熱加工時に単体では軟化するため期待する内部性情が得られない柔軟食材に対し一定の形状を保持するように保形性を付与する柔軟食材への保形性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来一般に多量の油脂や糖質を含むマヨネーズやジャム等はゲル化させ難いので料理への盛り付けや惣菜への添付時には小容器に小分けして用いられることが多い。
【0003】
また菓子類やパン等のように主としてデンプンを主材として加熱加工する食材ではつなぎ(バインダー)として又はバインダーを兼ねた食材成分としてグルテン,卵,油脂類が添加される場合が多く、これらの食材添加は加熱の際にデンプンが軟化することによる部分的な発泡その他による不均一な内部性情になるのを防止するという効果もある。
【0004】
尚、デンプン質が主材ではないものの、チョコレートも保形性を付与するためにカカオバターや乳脂肪分等の油脂類を添加することが知られている。
その他油調等の加熱加工又は調理食品に衣側への水分の浸出を防止し又は保形性を与えるためにゼリーやグルコマンナン又はコンニャクゼリー等のゲル化剤が添加されることもある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−172985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしマヨネーズやジャム等のように油脂や糖質を多く含む食材は盛り付けや惣菜類への添付時に小容器に小分けする以外にそれ自体に保形性を与えて小容器に小分けすることなく使用することが望まれている。
【0007】
またケーキ等の菓子類やパン等の焼成時の保形性又はチョコレートの保形性を与えるために使用するグルテン,卵,油脂類はアレルギーを引起したり高カロリーである等の欠点があり、この分野でも保形性付与方法の改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の方法は、第1に少なくとも製造過程において成形不可能な柔軟性を有する柔軟食材に対し、精製されたグルコマンナン0.3〜50w%と、一種又は二種以上の増粘多糖類とを含むゲル化剤を添加することにより、上記柔軟食材に保形性を付与することを特徴としている。
【0009】
第2に、ゲル化剤が増粘多糖類の他に食物繊維を添加し、増粘多糖類と食物繊維の割合が50〜99.7w%であることを特徴としている。
【0010】
第3に、増粘多糖類が、プランタゴオバタ種皮(サイリューム)・カラギーナン・キサンタンガム・カードラン・ペクチン・アラビアガム・アルギン酸・キチン・キトサン・グアガム・寒天ジェランガム・タラガム・タマリンドガム・トラガントガム・プルラン・カルボキシメチルセルロースナトリウム・カルボキシメチルセルロースカルシウム・メチルセルロース・ポリアクリル酸ナトリウム・澱粉・加工澱粉・澱粉分解物の一種又は二種以上からなり、食物繊維が海藻類・果実類・穀物類・豆類・野菜類・茸類やセルロースの一種又は二種以上からなることを特徴としている。
【0011】
第4に、糖類として砂糖・ブドウ糖・オリゴ糖・果糖・トレハロース・還元糖・麦芽糖及びエリスリトール・スクラロースの一種又は二種以上からなる高甘味剤を添加してなることを特徴としている。
【0012】
第5に、ゲル化剤の組成が
グルコマンナン 0.3〜50w%
寒天 10〜60w%
キサンタンガム 3〜50w%
ローストビーンガム 3〜30w%
であることを特徴としている。
【0013】
第6に、必要に応じてデキストリンその他の分散剤を75w%以下添加することを特徴としている。
【0014】
第7に、柔軟食材がマヨネーズでありグルコマンナン水和物を添加することを特徴としている。
【0015】
第8に、柔軟食材がジャムでありグルコマンナン水和物を添加することを特徴としている。
【0016】
第9に、柔軟食材が油脂及びグルテンを用いない米粉製ケーキ素材であり、ゲル化剤添加後焼成することを特徴としている。
【0017】
第10に、柔軟食材がスイートチョコレートでありグルコマンナン水和物を添加することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上の如く構成される本発明の方法によれば、加工食品製造に際して、グルコマンナンとゲル化剤の添加による乳化機能を付与し、水分の動きを緩やかにするので、流動性が強いために所定の形状に成形不能な柔軟食材に保形性を付与することができ、成形によって所定の外形を与え又は焼成時には均一な断面形状(又は構造)を得ることができる。
【0019】
またゲル化剤としてグルコマンナンと共に寒天,キサンタンガムその他の多糖類を選んで組合わせることにより、アレルゲンや高カロリー物質である従来の食品添加物なしで、対象食材の種類に合わせた適度な食感又は成形性を得ることができるほか、砂糖等の糖類の添加によりゲル強度が上昇し、加熱によりさらに強化される。
【0020】
柔軟食材がマヨネーズ,ジャムの場合は共に外形的な成形が可能となるので食材への盛り付けや付添え,携帯性,流通性等の点で便利になり、ジャムに海藻や果実ペースト等を用いた場合でも変色が生じない等の利点がある。
【0021】
焼成加工されるデンプン質の食材の場合、油脂や卵,グルテンの代わりに使用できるために低カロリーでアレルギーフリーの食品が得られるほか、特にスポンジケーキの場合、気泡安定剤なしで断面内の発泡も均一で発泡状態での保形性も保持できる。
【0022】
柔軟食材がチョコレートの場合も保形性を与えるための油脂類が不要又は減量できるので、低カロリーチョコレートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明では、前述の課題を解決するために種々研究を重ねた結果、増粘多糖類特にグルコマンナンを添加することで機能性の有効性が高いことが判明した。
すなわち、増粘多糖類にグルコマンナン、さらには糖類との組合せにより、従来の配合では困難であった問題を解決したり、従来の配合では考えられない機能を付与することが可能となった。
【0024】
言い換えれば、乳化剤などの添加物を加えなくても同等の保形機能又は成形機能を保持できることが可能となった。このことは、グルコマンナンと増粘多糖類との組合せによってなされるものである。本発明に用いるグルコマンナンは、コンニャクイモの塊茎に存在する貯蔵性の多糖類でコンニャクイモの中に約8%程度存在している。
【0025】
一般に、コンニャクイモを水洗後、スライスして乾燥し澱粉質などを分離したものがこんにゃく精粉と呼ばれるものであるが、本発明において、直接コンニャクイモを擂り潰してゾル状にして用いることも出来、さらにはこんにゃく精粉を水に溶解(膨潤)して使用することも可能である。特に限定するものではないが、精製されたグルコマンナン(商品名:レオレックスRS,清水化学株式会社)を用いるとよい。
【0026】
まず、本発明ではゲル化剤の検討を行った。一般的にゲル化剤に用いられている代表的なものとしてはカラギーナン製剤が多いが、あらゆる角度から検討した結果、カラギーナンを添加しないでゲル化剤の検討を行い、そのゲル化剤を用いて油分の多い食品など通常ゲル形成しないものをゲル化させたりすることが可能となり、機能を保持した食品への応用が可能となった。
【0027】
本発明に係るゲル化剤は、ゲル化剤濃度0.9%でゲル強度が30g以上で、砂糖などの糖類を添加するとゲル強度が上昇する。なお、本発明のゲル化剤は、加熱することによってその効果が十分期待出来る。
【0028】
次に、実施例により具体的に発明の詳細を説明する。グルコマンナンと二種類以上の増
粘多糖類を混合したゲル化剤製剤を用いて各種の食品に添加し、その物性評価を行った。
【実施例1】
【0029】
(マヨネーズへの添加)
グルコマンナンと二種類以上の増粘多糖類を混合したゲル化剤3〜4部に対して、市販のマヨネーズを69部及びグルコマンナン水和物を21部と糖類を残部加え型に入れて加熱殺菌した。
【0030】
対照として、上記ゲル化剤を添加してないものとの比較を行った結果、前記ゲル化剤を添加したものは、ゲル化しており冷凍解凍を繰り返しても離水等の変化は認められなかった。
【0031】
これに対して、前記ゲル化剤を添加してないものについてはゲル化が起きなかった。一般に、マヨネーズのような油脂を多く含むものはゲル化しにくいが、本発明によってゲル化という新しい機能が見出された。またグルコマンナンの添加量が少ない場合は冷解凍等により水分の動きが良くなり離水等の変化が生じ、夛過ぎる場合はゲル化し過ぎてマヨネーズの風味、食感を損なう。
【実施例2】
【0032】
(ジャムへの添加)
上記ゲル化剤0.1〜0.5部に糖類22部と水57部及びグルコマンナン水和物残部加え、Brix約45度になるまで煮詰めた後、海藻(海苔)粉末2部を加えた。
一般に、海藻(海苔)や茶(緑茶)を加え煮詰めると変色が生じるが、本発明では変色のない新規の機能が確認された。また、上記ゲル化剤を添加してないものについては、変色が生じ商品価値としては低かった。
【0033】
この実施例では、海藻(海苔)や粉末を用いたジャムを示すが、ここでは加熱による変色防止や離水防止に有効で、更にジャムがダレない(保形性)等の特徴がある。また、海藻(海苔)の代わりに水分含量の高い果実ペーストや茶等を用いても同様の効果が期待出来るものと考えられる。
【実施例3】
【0034】
(油脂やグルテンを用いない米粉ケーキへの添加)
前記ゲル化剤の水和物21部に米粉23部に糖類、澱粉を23部、水21部を加えて生地を作成する。型に流し、オーブンで焼成する(130〜160℃,30〜60分)。また、前記ゲル化剤を添加してないものについては、全く膨らみが無いものとなった。
このケーキは、グルテンや卵、油脂を全く使用しないもので、アレルギーフリーで新たな機能を有する食品を得ることが出来た。
【実施例4】
【0035】
(低カロリーチョコレートへの添加)
上記ゲル化剤1部にチョコレート(スイートチョコ)46部及び生クリーム及び糖類19部及びグルコマンナン水和物残部加えて、低カロリーチョコレートを得た。
これに対しゲル化剤を添加してないものについては、成型性も悪くベタツキがあって食感も悪かった。グルコマンナンが所定量を超えると口融けが悪くなり食感を損う。
【0036】
尚、前述したゲル化剤を添付し又はゲル化剤に分散剤を添加する場合の配合例について示すと次の通りである。
(配合例1)
グルコマンナン+増粘多糖類
グルコマンナン 0.3% 〜50%
寒天 10% 〜50%
キサンタンガム 10% 〜50%
ローカストビーンガム 3% 〜30%
(必要に応じ分散剤(デキストリン等)を0%〜75%を添加する)
上記原料を100%となるよう配合し機能を保持した食品素材とする。
【0037】
(配合例2)・・・発明者において実施した内の最適と考えられる例
グルコマンナン 15%〜30%
寒天 30%〜60%
キサンタンガム 15%〜30%
ローカストビーンガム 12%〜30%
上記原料を100%となるよう配合し機能を保持した食品素材とする。
【0038】
(配合例3)
グルコマンナン 0.3%〜50%
寒天 10% 〜30%
キサンタンガム 3% 〜20%
ローカストビーンガム 3% 〜20%
デキストリン 20% 〜80%
上記原料を100%となるよう配合し機能を保持した食品素材とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも製造過程において成形不可能な柔軟性を有する柔軟食材に対し、精製されたグルコマンナン0.3〜50w%と、一種又は二種以上の増粘多糖類とを含むゲル化剤を添加することにより、上記柔軟食材に保形性を付与する柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項2】
ゲル化剤が増粘多糖類の他に食物繊維を添加し、増粘多糖類と食物繊維の割合が50〜99.7w%である請求項1の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項3】
増粘多糖類が、プランタゴオバタ種皮(サイリューム)・カラギーナン・キサンタンガム・カードラン・ペクチン・アラビアガム・アルギン酸・キチン・キトサン・グアガム・寒天ジェランガム・タラガム・タマリンドガム・トラガントガム・プルラン・カルボキシメチルセルロースナトリウム・カルボキシメチルセルロースカルシウム・メチルセルロース・ポリアクリル酸ナトリウム・澱粉・加工澱粉・澱粉分解物の一種又は二種以上からなり、食物繊維が海藻類・果実類・穀物類・豆類・野菜類・茸類・茶類やセルロースの一種又は二種以上からなる請求項2の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項4】
糖類として砂糖・ブドウ糖・オリゴ糖・果糖・トレハロース・還元糖・麦芽糖及びエリスリトール・スクラロースの一種又は二種以上からなる高甘味剤を添加してなる請求項1,2又は3の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項5】
ゲル化剤の組成が
グルコマンナン 0.3〜50w%
寒天 10〜60w%
キサンタンガム 3〜50w%
ローストビーンガム 3〜30w%
である請求項1,2又は4の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項6】
必要に応じてデキストリンその他の分散剤を75w%以下添加する請求1,2,3,4又は5の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項7】
柔軟食材がマヨネーズでありグルコマンナン水和物を添加する請求項1,2,3,4,5又は6の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項8】
柔軟食材がジャムでありグルコマンナン水和物を添加する請求項1,2,3,4,5又は6の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項9】
柔軟食材が油脂及びグルテンを用いない米粉製ケーキ素材であり、ゲル化剤添加後焼成する請求項1,2,3,4,5又は6の柔軟食材への保形性付与方法。
【請求項10】
柔軟食材がスイートチョコレートでありグルコマンナン水和物を添加する請求項1,2,3,4,5又は6の柔軟食材への保形性付与方法。

【公開番号】特開2010−259356(P2010−259356A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112090(P2009−112090)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(598171210)株式会社 スミヨシ (1)
【出願人】(591050822)清水化学株式会社 (10)
【Fターム(参考)】