説明

柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法

【課題】熱膨張係数が低く、気孔径が大きく、かつ機械的強度が高い焼結体を得ることができる柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムの焼結体の提供。
【解決手段】平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.5以上であり、好ましくは、マグネシウムの含有量が、チタン及びアルミニウムの合計に対してそれぞれの酸化物換算で、0.5〜2.0重量%の範囲内であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムを用いた焼結体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウムは、低熱膨張性で耐熱衝撃性に優れ、かつ融点が高いため、自動車の排ガス処理用触媒担体や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)等に用いる多孔質材料として期待され、種々の開発が行われている。
【0003】
特許文献1においては、高温で安定なチタン酸アルミニウム焼結体を得るため、チタン酸アルミニウムからなる成形体の表面を、マグネシウム、鉄、ケイ素、チタン及びアルミニウムの内から選ばれる1種または2種以上の金属酸化物または固溶体で被覆することが提案されている。
【0004】
特許文献2においては、高温で安定なチタン酸アルミニウム焼結体を製造するため、チタン酸アルミニウムに、マグネシウム化合物及びケイ素化合物を添加した後成形し、これを焼結することが提案されている。
【0005】
特許文献3においては、チタン酸アルミニウムが有する高融点、低熱膨張性を損なうことなく、高強度を有し、繰り返しの熱履歴に対して機械的強度の劣化が少ないチタン酸アルミニウム焼結体を得るため、チタン酸アルミニウムに、酸化マグネシウム及び酸化ケイ素を添加したものを焼結することが提案されている。
【0006】
特許文献4及び5においては、マグネシウムが、マグネシウムとアルミニウムの合計量に対し10モル%以上100モル%未満含まれるチタン酸アルミニウムマグネシウム焼結体を製造する方法が提案されている。
【特許文献1】特開昭56−41883号公報
【特許文献2】特開昭57−3767号公報
【特許文献3】特開平1−249657号公報
【特許文献4】国際公開第2004/039747号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2005/105704号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、熱膨張係数が低く、気孔径が大きく、かつ機械的強度が高い焼結体を得ることができる柱状チタン酸アルミニウム及びその製造方法並びに該柱状チタン酸アルミニウムの焼結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.5以上、好ましくは1.6以上であることを特徴としている。
【0009】
平均アスペクト比が1.5以上、好ましくは1.6以上である本発明の柱状チタン酸アルミニウムを用いることにより、熱膨張係数が低く、気孔径が大きく、かつ機械的強度が高いチタン酸アルミニウム焼結体を得ることができる。
【0010】
平均アスペクト比の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、5以下である。
【0011】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、マグネシウムが含まれることが好ましい。マグネシウムの含有量は、チタン及びアルミニウムの合計に対してそれぞれの酸化物換算で0.5〜2.0重量%の範囲内であることが好ましい。マグネシウムの含有量が酸化物換算で0.5未満であると、低い熱膨張係数及び高い機械的強度が得られない場合がある。また、マグネシウムの含有量が酸化物換算で2.0重量%を超えると、柱状形状が得られない場合がある。
【0012】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、個数平均長軸径が17μm以上であり、個数平均短軸径が15μm以下であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、熱膨張係数がより低く、気孔径がより大きく、かつ機械的強度がより高い焼結体を得ることができる。個数平均長軸径の上限値は特に限定されるものではないが、一般には50μm以下である。また、個数平均短軸径の下限値は、特に限定されるものではないが、一般には3μm以上である。個数平均長軸径及び個数平均短軸径は、例えば、フロー式粒子像分析装置により測定することができる。
【0013】
本発明の製造方法は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる方法であり、チタン源、アルミニウム源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0014】
本発明の製造方法によれば、チタン源、アルミニウム源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合した粉砕混合物を用いている。このような粉砕混合物を焼成することにより、平均アスペクト比が1.5以上、好ましくは1.6以上である柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0015】
粉砕混合物を焼成する温度としては、1300〜1600℃の範囲内の温度であることが好ましい。このような温度範囲内で焼成することにより、本発明の柱状チタン酸アルミニウムをより効率的に製造することができる。
【0016】
焼成時間は、特に限定されるものではないが、0.5時間〜20時間の範囲内で行うことが好ましい。
【0017】
本発明の製造方法において、メカノケミカルな粉砕としては、物理的な衝撃を与えながら粉砕する方法が挙げられる。具体的には、振動ミルによる粉砕が挙げられる。振動ミルによる粉砕処理を行うことにより、混合粉体の摩砕による剪断応力により、原子配列の乱れと原子間距離の減少が同時に起こり、異種粒子の接点部分の原子移動が起こる結果、準安定相が得られると考えられる。これにより、反応活性の高い粉砕混合物が得られ、この反応活性の高い粉砕混合物を焼成することにより、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0018】
本発明におけるメカノケミカルな粉砕は、一般に、水や溶剤を用いない乾式処理として行われる。
【0019】
メカノケミカルな粉砕による混合処理の時間は特に限定されるものではないが、一般には0.1時間〜6時間の範囲内であることが好ましい。
【0020】
本発明において用いる原料には、チタン源、アルミニウム源、及びマグネシウム源が含まれる。チタン源としては、酸化チタンを含有する化合物を用いることができ、具体的には、酸化チタン、ルチル鉱石、水酸化チタンウェットケーキ、含水チタニアなどが挙げられる。
【0021】
アルミニウム源としては、加熱により酸化アルミニウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に酸化アルミニウムが好ましく用いられる。
【0022】
チタン源とアルミニウム源の混合割合としては、Ti:Al=1:2(モル比)の割合を基本とするが、それぞれ±10%程度であれば変化させても支障はない。
【0023】
マグネシウム源としては、加熱により酸化マグネシウムを生じる化合物を用いることができ、具体的には、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが挙げられる。これらの中でも、特に水酸化マグネシウム及び酸化マグネシウムが好ましく用いられる。
【0024】
マグネシウム源は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれ酸化物換算で0.5〜2.0重量%の範囲内となるように原料中に含まれていることが好ましい。0.5重量%未満であると、低い熱膨張係数及び高い機械的強度を有する焼結体が得られない場合がある。また、2.0重量%より多くなると、平均アスペクト比が1.5以上である柱状チタン酸アルミニウムが得られない場合がある。
【0025】
また、本発明の製造方法においては、原料中にケイ素源がさらに含まれていても良い。
【0026】
ケイ素源が含有させることにより、チタン酸アルミニウムの分解を抑制することができ、高温安定性に優れた柱状チタン酸アルミニウムを製造することができる。
【0027】
ケイ素源としては、酸化ケイ素、ケイ素などが挙げられる。これらの中でも、特に酸化ケイ素が好ましく用いられる。ケイ素源の原料中における含有量は、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれの酸化物換算で、0.5〜10重量%の範囲内であることが好ましい。このような範囲内とすることにより、柱状チタン酸アルミニウムをより安定して製造することができる。
【0028】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウム、または上記本発明の製造方法により製造された柱状チタン酸アルミニウムを含む成形体を焼結することにより得られることを特徴としている。
【0029】
本発明のチタン酸アルミニウム焼結体は、上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムまたは上記本発明の方法により製造された柱状チタン酸アルミニウムを含む成形体を焼結させて得られるものであるので、熱膨張係数が低く、気孔径が大きく、かつ機械的強度が高い。
【0030】
上記本発明の柱状チタン酸アルミニウムまたは上記本発明の方法により製造された柱状チタン酸アルミニウムは、熱膨張係数が低く、マイナスの熱膨張係数を有するものもある。マイナスの熱膨張係数を有する柱状チタン酸アルミニウムを用いる場合には、プラスの熱膨張係数を有するチタン酸アルミニウムを混合して用い、得られる焼結体の熱膨張係数がゼロに近づくように調整することができる。また、本発明のチタン酸アルミニウム焼結体においては、熱膨張係数調整の目的に限定されることなく、他の目的で、異なる種類の本発明の柱状チタン酸アルミニウムを混合して用いたり、あるいは本発明の柱状チタン酸アルミニウムと本発明以外のチタン酸アルミニウムとを混合して用いてもよい。さらには、本発明の柱状チタン酸アルミニウムと、チタン酸アルミニウム以外の化合物とを混合して焼結体としてもよい。
【0031】
本発明におけるチタン酸アルミニウム焼結体は、チタン酸アルミニウムに、例えば、造孔剤、バインダー、分散剤、及び水を添加した混合組成物を作製し、これを、例えば押出成形機を用いてハニカム構造体となるように成形し、セルの開口が市松模様となるように片側の目封止を行った後、乾燥して得られた成形体を焼成して製造することができる。焼成温度としては、例えば、1400〜1600℃が挙げられる。
【0032】
造孔剤としては、黒鉛、グラファイト、木粉、ポリエチレンが挙げられる。また、バインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコールが挙げられる。分散剤としては、脂肪酸石鹸、エチレングリコールが挙げられる。造孔剤、バインダー、分散剤、及び水の量は適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の柱状チタン酸アルミニウムは、低い熱膨張係数を有し、かつアスペクト比が1.5以上であるので、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを用いることにより、熱膨張係数が低く、気孔径が大きく、かつ機械的強度が高い焼結体を得ることができる。
【0034】
本発明の製造方法によれば、本発明の柱状チタン酸アルミニウムを効率良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明を具体的な実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
〔柱状チタン酸アルミニウムの製造方法〕
(実施例1)
酸化チタン360.0g、酸化アルミニウム411.1g、水酸化マグネシウム9.7g、及び酸化ケイ素19.2gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0037】
以上のようにして得られた粉砕混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0038】
得られた生成物のX線回折チャートを図13に示す。図13に示すように、得られた生成物は、AlTiOであった。図13の下方に示すピークは、JCPDSのAlTiOのピークである。
【0039】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図1は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図1から明らかなように、柱状のチタン酸アルミニウムが得られている。
【0040】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図7は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は21.7μmであり、個数平均短軸径は12.6μmであり、平均アスペクト比は1.72であった。
【0041】
本実施例における、水酸化マグネシウムの添加量及びチタン酸アルミニウム中のマグネシウム含有量は、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計に対して、酸化マグネシウム換算で0.87重量%である。
【0042】
(実施例2)
酸化チタン355.7g、酸化アルミニウム406.1g、水酸化マグネシウム18.8g、及び酸化ケイ素19.0gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0043】
以上のようにして得られた粉砕混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0044】
得られた生成物のX線回折チャートを図14に示す。図14に示すように、得られた生成物は、AlTiOであった。図14の下方に示すピークは、JCPDSのAlTiOのピークである。
【0045】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図2は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図2から明らかなように、柱状のチタン酸アルミニウムが得られている。
【0046】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図8は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は19.5μmであり、個数平均短軸径は11.8μmであり、平均アスペクト比は1.65であった。
【0047】
本実施例における、水酸化マグネシウムの添加量及びチタン酸アルミニウム中のマグネシウム含有量は、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計に対して、酸化マグネシウム換算で1.71重量%である。
【0048】
(比較例1)
酸化チタン351.5g、酸化アルミニウム401.3g、水酸化マグネシウム28.5g、及び酸化ケイ素18.7gを振動ミルにて粉砕しながら、2.0時間混合した。
【0049】
以上のようにして得られた粉砕混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0050】
得られた生成物のX線回折チャートを図15に示す。図15に示すように、得られた生成物は、AlTiOであった。図15の下方に示すピークは、JCPDSのAlTiOのピークである。
【0051】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図3は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図3から明らかなように、この比較例で得られたチタン酸アルミニウムは、実施例1及び実施例2のような柱状ではなく、粒状であることがわかる。
【0052】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図9は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は12.3μmであり、個数平均短軸径は8.3μmであり、平均アスペクト比は1.48であった。
【0053】
本比較例における、水酸化マグネシウムの添加量及びチタン酸アルミニウム中のマグネシウム含有量は、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計に対して、酸化マグネシウム換算で2.62重量%である。
【0054】
(比較例2)
酸化チタン360.0g、酸化アルミニウム411.1g、水酸化マグネシウム9.7g、及び酸化ケイ素19.2gをヘンシェルミキサーにて、0.5時間混合した。
【0055】
以上のようにして得られた混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0056】
得られた生成物のX線回折チャートを図16に示す。図16に示すように、得られた生成物は、AlTiOとTiOとAlの混合物であった。図16の下方に示すピークは、JCPDSのピークであり、下から順に、Al(酸化アルミニウム)、TiO(ルチル型酸化チタン)、及びAlTiO(チタン酸アルミニウム)を示している。
【0057】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図4は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図4から明らかなように、この比較例で得られたチタン酸アルミニウムは、実施例1及び実施例2のような柱状ではなく、粒状であることがわかる。
【0058】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図10は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は11.5μmであり、個数平均短軸径は7.9μmであり、平均アスペクト比は1.46であった。
【0059】
本比較例における、水酸化マグネシウムの添加量及びチタン酸アルミニウム中のマグネシウム含有量は、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計に対して、酸化マグネシウム換算で0.87重量%である。
【0060】
(比較例3)
酸化チタン355.7g、酸化アルミニウム406.1g、水酸化マグネシウム18.8g、及び酸化ケイ素19.0gをヘンシェルミキサーにて、0.5時間混合した。
【0061】
以上のようにして得られた混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0062】
得られた生成物のX線回折チャートを図17に示す。図17に示すように、得られた生成物は、AlTiOとTiOとAlの混合物であった。図17の下方に示すピークは、JCPDSのピークであり、下から順に、Al(酸化アルミニウム)、TiO(ルチル型酸化チタン)、及びAlTiO(チタン酸アルミニウム)を示している。
【0063】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図5は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図5から明らかなように、この比較例で得られたチタン酸アルミニウムは、実施例1及び実施例2のような柱状ではなく、粒状であることがわかる。
【0064】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図11は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は11.4μmであり、個数平均短軸径は7.8μmであり、平均アスペクト比は1.47であった。
【0065】
本比較例における、水酸化マグネシウムの添加量及びチタン酸アルミニウム中のマグネシウム含有量は、酸化チタン及び酸化アルミニウムの合計に対して、酸化マグネシウム換算で1.71重量%である。
【0066】
(比較例4)
酸化チタン302.3g、酸化アルミニウム423.2g、酸化ケイ素29.6g、及び水323.7gをボールミルで粉砕しながら、3時間混合した。
【0067】
以上のようにして得られた粉砕混合物を110℃で乾燥し、乾燥した混合物500gをルツボに充填し、電気炉にて1500℃で4時間焼成した。
【0068】
得られた生成物のX線回折チャートを図18に示す。図18に示すように、得られた生成物は、AlTiOとTiOとAlの混合物であった。図18の下方に示すピークは、JCPDSのピークであり、下から順に、Al(酸化アルミニウム)、TiO(ルチル型酸化チタン)、及びAlTiO(チタン酸アルミニウム)を示している。
【0069】
得られたチタン酸アルミニウムについて、走査型電子顕微鏡で観察した。図6は、得られたチタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。図6から明らかなように、この比較例で得られたチタン酸アルミニウムは、実施例1及び実施例2のような柱状ではなく、粒状であることがわかる。
【0070】
また、得られたチタン酸アルミニウムについて、フロー式粒子像分析装置により、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)を測定した。図12は、フロー式粒子像分析装置で測定された粒子像である。個数平均長軸径は11.7μmであり、個数平均短軸径は8.1μmであり、平均アスペクト比は1.44であった。
【0071】
以上のようにして得られた実施例1、実施例2、及び比較例1、比較例2、比較例3、比較例4のチタン酸アルミニウムについて、X線回折結果、個数平均長軸径、個数平均短軸径、及び平均アスペクト比を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
〔チタン酸アルミニウム焼結体の製造〕
(実施例3)
実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウム粒子100重量部に対し、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0074】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、チタン酸アルミニウム焼結体を得た。
【0075】
(実施例4)
実施例2で得られた柱状チタン酸アルミニウム粒子100重量部に対し、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0076】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、チタン酸アルミニウム焼結体を得た。
【0077】
(実施例5)
実施例1で得られた柱状チタン酸アルミニウム粒子70重量部、及び比較例4で得られた粒状チタン酸アルミニウム粒子30重量部を混合し、この混合したチタン酸アルミニウム100重量部に対して、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0078】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、チタン酸アルミニウム焼結体を得た。
【0079】
(比較例5)
比較例4で得られた粒状チタン酸アルミニウム粒子100重量部に対し、黒鉛20重量部、メチルセルロース10重量部、脂肪酸石鹸0.5重量部配合し、さらに水を適当量添加して混練し、押出成形可能な坏土を得た。
【0080】
得られた坏土を押出成形機にてハニカム構造体となるように押し出して成形し、次に、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機で乾燥した後、得られた成形体を1500℃で焼成し、チタン酸アルミニウム焼結体を得た。
【0081】
〔チタン酸アルミニウム焼結体の評価〕
実施例3〜5及び比較例5で得られたチタン酸アルミニウム焼結体について、気孔率、気孔径、曲げ強度、及び熱膨張係数を測定した。気孔率は、JIS R1634に準拠し、気孔径は、JIS R1655に準拠し、曲げ強度はJIS R1601に準拠し、熱膨張係数は、JIS R1618に準拠してそれぞれ測定した。測定結果を表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2に示すように、本発明に従う柱状チタン酸アルミニウムを用いて製造した実施例3〜5のチタン酸アルミニウム焼結体は、比較例5のチタン酸アルミニウム焼結体に比べ、気孔径が大きく、機械的強度が高く、熱膨張係数が低いことがわかる。従って、本発明に従うチタン酸アルミニウム焼結体は、低熱膨張性で耐衝撃性に優れ、かつ機械的強度が高く、微粒子の補集効率に優れていることがわかる。
【0084】
また、実施例5から明らかなように、柱状チタン酸アルミニウムに、従来の粒状のチタン酸アルミニウムを混合することにより、焼結体の熱膨張率を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に従う実施例1の柱状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図2】本発明に従う実施例2の柱状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図3】比較例1の粒状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図4】比較例2の粒状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図5】比較例3の粒状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図6】比較例4の粒状チタン酸アルミニウムを示す走査型電子顕微鏡写真。
【図7】本発明に従う実施例1のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図8】本発明に従う実施例2のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図9】比較例1のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図10】比較例2のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図11】比較例3のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図12】比較例4のフロー式粒子像分析装置で測定された粒子像を示す図。
【図13】本発明に従う実施例1の柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図14】本発明に従う実施例2の柱状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図15】比較例1の粒状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図16】比較例2の粒状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図17】比較例3の粒状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。
【図18】比較例4の粒状チタン酸アルミニウムのX線回折チャートを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均アスペクト比(=個数平均長軸径/個数平均短軸径)が1.5以上であることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項2】
マグネシウムの含有量が、チタン及びアルミニウムの合計に対してそれぞれの酸化物換算で、0.5〜2.0重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項3】
個数平均長軸径が17μm以上であり、個数平均短軸径が15μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載に記載の柱状チタン酸アルミニウム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱状チタン酸アルミニウムを製造する方法であって、
チタン源、アルミニウム源、及びマグネシウム源を含む原料をメカノケミカルに粉砕しながら混合する工程と、
粉砕した混合物を焼成する工程とを備えることを特徴とする柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項5】
1300〜1600℃の範囲内の温度で焼成することを特徴とする請求項4に記載の柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項6】
マグネシウム源が、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれ酸化物換算で、0.5〜2.0重量%の範囲内となるように原料中に含まれていることを特徴とする請求項4または5に記載の柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項7】
原料中にケイ素源がさらに含まれていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項8】
ケイ素源が、チタン源及びアルミニウム源の合計に対してそれぞれ酸化物換算で、0.5〜10重量%の範囲内となるように原料中に含まれていることを特徴とする請求項7に記載の柱状チタン酸アルミニウムの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱状チタン酸アルミニウム、または請求項4〜8のいずれか1項に記載の方法により製造された柱状チタン酸アルミニウムを含む成形体を焼結させることにより得られることを特徴とするチタン酸アルミニウム焼結体。



【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−116290(P2010−116290A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290237(P2008−290237)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000206901)大塚化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】