説明

梁構造体

【課題】独立したジョイント部材やボルト&ナットおよび溶接工程さらには特段の後加工を要さず、曲げモーメントに対する十分な強度と横倒れ座屈強度を発揮でき、生産コストや組み立て工数および組み立てスペースも僅かで済み、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の力に対しても十分な強度を発揮することのできる梁構造体を提供する。
【解決手段】同じ断面形状の上梁部2と下梁部3に、凹凸嵌合する係止部2c,3cと、クリンチ式のカシメ4で固定される接合フランジ部2d,3dを設け、下梁部3上でウェブ形成部2b,3bの面と直交する方向に上梁部2を滑らせることで係止部2c,3cを嵌合させて上梁部2と下梁部3を上下に固定してから、接合フランジ部2d,3dをクリンチ式のカシメ4で固定して上梁部2と下梁部3を前後左右に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出形材により形成された上梁部と下梁部を上下に接合して構成される梁構造体の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上梁部と下梁部を上下あるいは左右に接合して構成される梁構造体としては、例えば、特許文献1に開示される複合ビーム,特許文献2に開示される複合アールビーム,特許文献3に開示される複合ビーム,特許文献4に開示される複合梁部材等が既に公知となっている。
【0003】
特許文献1に開示された複合ビームは、小型の押出機の利用や材料および加工工数の削減および低コスト化を目的としてビームの構造を上下に分割し、上部分割ビームと下部分割ビームの接合部分に雇いざね継ぎの一種であるあり継ぎ式のジョイント部材を内嵌して上部分割ビームと下部分割ビームを接合した構造を有するものである。
しかし、横倒れ方向の外力が作用した場合にジョイント部材に応力が集中し易く、十分な横倒れ座屈強度を発揮することが難しいといった不都合があり、同時に、ジョイント部材の生産コストや取り付け工数の増大といった弊害も生じる。
また、この複合ビームを梁として使用した際に、両端支持の状態で中央部に強い荷重が作用しても上部分割ビームと下部分割ビームの当接面に滑りが生じないように、両分割ビームの接合部の歯車状の凹凸を形成してかみ合わせ滑りを防いでいた。しかし、鋸刃状の凹凸部を形成するための後加工を要した。
しかも、長尺のジョイント部材を上部分割ビームや下部分割ビームの長手方向に沿って押し込む構成であるため、複合ビームのスパンが長くなればなるほど複合ビームの組み立てが困難になる。
【0004】
特許文献2に開示された複合アールビームや特許文献3に開示された複合ビームは、特許文献1に開示された複合ビームの雇いざね式のジョイント部材を外側に配置した点が相違するが他は特許文献1と同様のものである。
しかも、長尺のジョイント部材を上部分割ビームや下部分割ビームの長手方向に沿って押し込む点に関しては前述の特許文献1に開示された複合ビームと同様であり、やはり、ビームのスパンが長くなればなるほど、ビームの組み立てに要する作業が困難になる。
【0005】
特許文献4に開示される複合梁部材は、折り曲げ加工された2つの溝形梁部材のウェブを左右方向から重ね合わせてクリンチ式のカシメを利用して一体化する構造を適用しているが、この種のカシメの特性上、2つの溝形梁部材を引き剥がす方向の力に対しては十分な強度を発揮することができない。また、押出形材にて複合梁部材を形成しようとした場合に梁成が大きい場合には製造が困難である。
【0006】
なお、クリンチ式のカシメ自体に関しては特許文献5等で既に公知であり、一般に、引張せん断強度に優れるものの剥離強度が弱いといったことが知られている。
【0007】
また、これらとは別に、ボルト&ナット等を利用して上梁部と下梁部を固定するようにした梁構造体や上梁部と下梁部を溶接で固着するようにした梁構造体が従来からある。
しかし、前者の場合には、ボルトの有効径に比べてボルト孔が大きいことから、この梁構造体を梁として使用した際に、両端支持の状態で中央部に強い荷重が作用すると、上梁部と下梁部の当接面に面方向の微小な滑りが生じ、上梁部と下梁部とが独立的に撓む場合があり、完全一体型の梁構造体と比較して曲げモーメントに対する十分な強度が発揮できなくなる問題がある。
この問題に関しては、上梁部と下梁部の当接面にブラスト加工等を施して摩擦係数を増大させることで滑りを防止するといったことも可能ではあるが、製造コストや加工工数の増大は免れない。
また、アルミ押出成形された上梁部と下梁部を鋼材のボルトで固定するような場合にあっては、特に、湿気の高い環境化において素材のイオン化傾向の違いによって電気的な腐食が発生し易くなるといった不都合を生じる。
一方、後者の溶接式のものにあっては、溶接の過程で上梁部と下梁部の接合部が著しく加熱されるため、素材自体に恒常的な歪が生じたり熱によって強度が低下したりする不都合があり、また、高熱によって腐食防止のための酸化皮膜が損傷するといった弊害が生じる場合が多い。
アルミ材料は熱膨張率が高いため、溶接に際し熱による溶接部変形と残留ひずみへの影響も大きい。結果的に、梁材の全体の変形に至る。このように、熱による金属自体の特性の変化による機械的な強度の低下と梁材の全体変形によって、曲げモーメントに対する梁の強度が大幅に低下するといった恐れがある。
【0008】
なお、梁構造体の中央部で長手方向に沿って延びる水平補剛材を座屈防止のための補強材として利用する点に関しては、特許文献6および特許文献7等で既に公知である。
【0009】
【特許文献1】特開2006−307601号公報(図1,図2,図3)
【特許文献2】特開2007−23721号公報(図1,図3)
【特許文献3】特開2006−336451号公報(図1,図3)
【特許文献4】特開2002−4495号公報(図2,図3,図5)
【特許文献5】特開2001−321856号公報(図12,表1,表2)
【特許文献6】特開2006−37577号公報(段落0021,図4)
【特許文献7】特開平10−82134号公報(段落0013,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、独立したジョイント部材やボルト&ナットおよび溶接工程さらには特段の後加工を要さず、曲げモーメントに対する十分な強度と横倒れ座屈強度を発揮でき、生産コストや組み立て工数および組み立てスペースも僅かで済み、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の力に対しても十分な強度を発揮することのできる梁構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上梁部と下梁部を上下に接合して構成される梁構造体であり、前記課題を達成するため、特に、
上梁部は梁の上側のフランジを形成するフランジ部と、下梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
下梁部は梁の下側のフランジを形成するフランジ部と、上梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
上梁部の接合部と下梁部の接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
前記上梁部側の接合部と下梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記上梁部と下梁部の係止部同士を嵌合させた状態で、
前記上梁部の左右の接合フランジ部と下梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されていることを特徴とした構成を有する。
【0012】
梁構造体の組み立てに際しては、まず、上梁部の接合部と下梁部の接合部との関係において、上梁部の接合部を各梁部のウェブ形成部の面に対して直交する方向に僅かにオフセットした状態で、下梁部の接合部の上に上梁部の接合部を密着させて載置する。
次いで、上梁部と下梁部の中心軸が一致するまで上梁部と下梁部をオフセットの方向と逆向きに滑らせるようにして相対移動させることによって、上梁部の接合部と下梁部の接合部の各々に形成されている係止部を上梁部と下梁部の重合方向に重なり合わせるようにして相互に嵌合させ、これらの係止部を介して上梁部と下梁部を其の重合方向つまり上下方向に固定する。
更に、上梁部の接合部の両側から各梁部のウェブ面と直交する方向に延出した上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合部の両側から各梁部のウェブ面と直交する方向に延出した下梁部の接合フランジ部に対してクリンチ式のカシメを施すことによって、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部とを該接合フランジ部の面に沿った方向つまり前後左右の方向に確実に固定する。
梁構造体の使用状態においては上梁部と下梁部に作用荷重を受けて、曲げ変形による梁中立面のせん断荷重は、下梁部側の接合部と上梁部側の接合部との当接面によって支えられる。一方、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の引張力は、上梁部の係止部と下梁部の係止部との嵌合面、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部とを接合するクリンチ式のカシメ部分によって支えられる。既に述べたように、クリンチ式のカシメは引張せん断強度に優れ、剥離強度は相対的に弱いが、上梁部と下梁部は、各々の係止部を嵌合されて上下方向に固定されているので、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の力に対しても十分な強度を発揮することができる。
また、クリンチ式のカシメは引張せん断強度に優れているので、上梁部の接合部が下梁部の接合部に対し、接合フランジ部の面に沿った方向で不用意に前後左右に移動するといった不都合が確実に解消される。従って、この梁構造体を梁として使用した際に、両端支持の状態で荷重を受けても、上梁部と下梁部の当接面に不用意な滑りが生じることはなく、上梁部と下上梁部とが常に一体化したまま撓むことになるので、完全一体型の梁構造体と比較しても同等あるいは其れ以上に、曲げモーメントに対する十分な強度と剛性を発揮することができる。
更に、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部は、梁部のウェブ面と直交するかたちでウェブ面の両側に大きく延出しているので、弱軸の曲げ2次モーメントが大きくなり、十分な横倒れ座屈強度を確保することが可能となる。
更に、梁部のウェブ面と直交するかたちでウェブ面の両側に十分に延出した接合フランジ部それ自体が、梁構造体の上下方向の中央部で長手方向に沿って延びる水平補剛材として機能することになるので、水平補剛材を備えない同等の寸法の梁構造体に比べ、ウェブ面板においてはより高い局部座屈強度を得ることができる。水平補剛材による局部座屈強度の向上によってウェブ板を薄型化してもよい。
また、梁構造体の組み立てに際しては、下梁部の接合部の上で上梁部の接合部を僅かに滑るように移動させて上梁部の係止部を下梁部の係止部に嵌合させて上下方向に固定し、然る後に、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部に対してクリンチ式のカシメを施すだけでよいので、長尺のジョイント部材を上梁部や下梁部の長手方向に沿って押し込む従来構造のものと比べ、組み立てに要する作業スペースも僅かなもので済む。しかも、組み立てに際してはボルト&ナットや溶接工程さらには特段の後加工も必要ないので、ボルト&ナットや梁構造体を構成する素材のイオン化傾向の違いによって生じる電気的な腐食、および、加熱に伴う素材自体の恒常的な歪の発生や熱による強度の低下および歪の発生に伴う梁全体の変形も未然に防止することができ、生産コストや組み立て工数も軽減化することができる。
【0013】
前記と同様の課題を達成するため、上梁部と中間梁部と下梁部を上下に接合して構成される梁構造体を採用し、
上梁部は梁の上側のフランジを形成するフランジ部と、中間梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
下梁部は梁の下側のフランジを形成するフランジ部と、中間梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
中間梁部は上梁部と接合される上接合部と、下梁部と接合される下接合部とこれらの接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
上梁部の接合部と中間梁部の上接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
下梁部の接合部と中間梁部の下接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
前記上梁部側の接合部と中間梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記下梁部側の接合部と中間梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記上梁部と中間梁部の係止部同士並びに前記下梁部と中間梁部の係止部同士を嵌合させた状態で、
前記上梁部の左右の接合フランジ部と中間梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されると共に、前記下梁部の左右の接合フランジ部と中間梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されるようにしてもよい。
【0014】
上梁部と下梁部の間に中間梁部を介装した点を除き、全体的な構成に関しては、前述の梁構造体と同様である。また、中間梁部は1つのみとすることも、また、2以上とすることも可能である。中間梁部を1つのみとした場合、各梁部のウェブ面と直交するかたちでウェブ面の両側に延出して梁構造体の長手方向に沿って延びる水平補剛材として機能する接合フランジ部の重なり箇所は都合2箇所、また、中間梁部を2つとした場合では、水平補剛材として機能する接合フランジ部の重なり箇所が都合3箇所に形成されることになるので、局部座屈強度の更なる向上が期待できる。水平補剛材によるウェブ面板の局部座屈強度によってウェブ板を更に薄型化してもよい。
【0015】
ここで、重合する接合フランジ部どうしは、梁構造体の長手方向に沿って一定の間隔を空けて、複数の箇所で、クリンチ式のカシメによって固定されていることが望ましい。
【0016】
複数の箇所でクリンチ式のカシメを施すことで、上梁部と下梁部の当接面、また、中間梁部がある場合には、更に、上梁部と中間梁部の当接面および下梁部と中間梁部の当接面に生じる不用意な滑りの発生を完全に防止することができる。これにより、曲げモーメントに対する梁構造体の強度が更に向上する。
【0017】
更に、各梁部をアルミ押出成形によって形成する場合にあっては、少なくとも、上梁部の係止部と下梁部の係止部、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部の断面形状を同一とすることが望ましい。
【0018】
上梁部の係止部と下梁部の係止部、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部を同じ押出ダイスを使用して形成することができるので、梁構造体の製造コストの低減化の面で有利である。
【0019】
更に、各梁部の各々には接合前の段階で予め腐食防止のための陽極酸化皮膜を形成しておくとよい。
【0020】
各梁部の係止部や接合フランジ部およびクリンチ式のカシメを利用した梁構造体の組み立て工程にあっては、ボルト孔の穿設作業や溶接工程が不要である。従って、加熱や切削加工による酸化皮膜の損傷が防止され、当初形成された酸化皮膜を温存することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の梁構造体によれば、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の引張力が、上梁部の係止部と下梁部の係止部との嵌合面、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部を接合するクリンチ式のカシメ部分によって支えられ、このうち、特に、上梁部と下梁部を固定する係止部の強度がカシメ部分の強度に比べて著しく高いので、上梁部と下梁部を引き剥がす方向の力に対して十分な強度を発揮することができる。
また、クリンチ式のカシメは引張せん断強度に優れているので、上梁部の接合部が下梁部の接合部に対して不用意に滑って前後左右方向に移動するといった不都合が確実に解消される。この結果、梁構造体を梁として使用した際に両端支持の状態で中央部に強い荷重が作用したとしても、上梁部と下梁部の当接面に不用意な滑りが生じることはなく、上梁部と下上梁部とが常に一体化したまま撓むことになるので、完全一体型の梁構造体と比較しても同等あるいは其れ以上に、曲げモーメントに対する十分な強度と剛性を発揮することができる。
各梁部のウェブ面と直交するかたちでウェブ面の両側に十分に延出した接合フランジ部それ自体が、梁構造体の上下方向の中央部で長手方向に沿って延びる水平補剛材として機能することになるので、水平補剛材を備えない同等の寸法の梁構造体に比べ、より高い局部座屈強度と横倒れ座屈強度を得ることができる。水平補剛材によるウェブ面板の局部座屈強度の向上によってウェブ板を薄型化してもよい。
また、梁構造体の組み立てに際しては、下梁部側の接合部の上で上梁部側の接合部を滑らせるように僅かに移動させて上梁部側の係止部を下梁部側の係止部に嵌合させ、然る後、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部に対してクリンチ式のカシメを施すだけでよいので、長尺のジョイント部材を上梁部や下梁部の長手方向に沿って押し込む従来構造のものと比べ、組み立てに要する作業スペースが僅かなもので済む。しかも、組み立てに際してはボルト&ナットや溶接工程さらには特段の後加工も必要がないので、ボルト&ナットや梁構造体を構成する素材のイオン化傾向の違いによって生じる電気的な腐食、および、加熱に伴う素材自体の恒常的な歪の発生や熱による強度の低下および歪の発生に伴う梁全体の変形も未然に防止することができ、生産コストや組み立て工数も軽減化することができる。
【0022】
更に、上梁部と下梁部との間に中間梁部を介装した構成を適用することが可能であり、そうした場合には、各梁部のウェブ面と直交するかたちでウェブ面の両側に延出して梁構造体の長手方向に沿って延びる水平補剛材として機能する接合フランジ部の重ね合わせ部分が、相互に間隔を置いて複数箇所に形成されることになるので、局部座屈強度と横倒れ座屈強度の更なる向上が期待できる。水平補剛材によるウェブ板の局部座屈強度の向上によってウェブ板を更に薄型化することも可能である。
【0023】
また、重合する接合フランジ部どうしを梁構造体の長手方向に沿って一定の間隔を空けて複数の箇所でクリンチ式のカシメによって固定することにより、各梁部の当接面に生じる不用意な滑りの発生を完全に防止して、曲げモーメントに対する梁構造体の強度を一層向上させることができる。
【0024】
クリンチ式のカシメの縦横比を異ならせる場合には、カシメ部の形状を梁構造体の長手方向に沿って長く、また、各梁部のウェブ面と直交する方向に沿って短い形状とするようにしているので、接合フランジ部の張り出し幅をあまり大きく取らずともよく、クリンチ式のカシメの加工工具へのセットも容易である。
なお、実験によれば通常の範囲の場合であればカシメの縦横比を異ならせても引っ張りせん断強度はあまり変わらないので、各梁部の当接面に生じる不用意な滑りの発生を確実に防止して曲げモーメントに対する梁構造体の強度を向上させることができる。
【0025】
更に、各梁部をアルミ押出成形によって形成する場合にあっては、上梁部の係止部と下梁部の係止部、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部の断面形状を同一としているので、上梁部の係止部と下梁部の係止部、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部を同じ押出ダイスを使用して形成することができ、梁構造体の製造コストの低減化の面で有利である。
【0026】
しかも、各梁部の係止部や接合フランジ部およびクリンチ式のカシメを利用した梁構造体の組み立て工程にあってはボルト孔の穿設作業や溶接工程が不要であるから、各梁部の各々に接合前の段階で予め形成された酸化皮膜が加熱や切削加工によって損傷することもなく、長期間に亘って腐食防止の効果が維持される。
これらにより押出成型による押出限界より大きい梁構造体が必要な場合にあっても押出形材を組み合わせることにより容易に梁構造体を得ることが可能になる。
また押出成型によるためにたとえばウェブ部を2枚として中空部を形成する等自由な断面構造が形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して具体的に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明を適用した一実施形態の梁構造体の構成例について梁構造体の長手方向に直交する方向の切断面を示す正面図、図2は梁構造体を構成する上梁部と下梁部の接合箇所について拡大して示した部分正面図、図3は上梁部や下梁部の構成を単独で示した正面図、図4は梁構造体の組み立て工程の概略について示した図、図5は梁構造体を短く切断して全体を示した斜視図である。
【0029】
図1に示した梁構造体1は、上梁部2と下梁部3を上下に接合して構成される梁構造体である。
【0030】
図1に示されるように、上梁部2は、梁の上側のフランジを形成するフランジ部2eと、下梁部3との接合部2aと、フランジ部2eと接合部2aを繋ぐウェブ形成部2b,2bとよりなり、また、下梁部3は、梁の下側のフランジを形成するフランジ部3eと、上梁部1との接合部3aと、フランジ部3eと接合部3aを繋ぐウェブ形成部3b,3bとよりなる。
【0031】
そして、上梁部2の接合部2aには、上梁部2のウェブ形成部2b,2bの面と直交して該ウェブ形成部2b,2bの左右に延出する接合フランジ部2d,2dが形成される一方、下梁部3の接合部3aには、下梁部3のウェブ形成部3b,3bの面と直交して該ウェブ形成部3b,3bの左右に延出する接合フランジ部3d,3dが形成されて、上梁部2の接合フランジ部2d,2dと下梁部3の接合フランジ部3d,3dが互いに重合するようになっている。
【0032】
更に、上梁部2の接合部2aには係止部2c,2cが一体に形成され、下梁部3の接合部3aには係止部3c,3cが一体に形成されている。
図4(a)に示されるように、上梁部2の接合部2aと下梁部3の接合部3aを、各梁部2,3の長手方向およびウェブ形成部2b,3bの面に対して直交する方向に僅かにオフセットした状態にあっては、係止部2c,2cと係止部3c,3cが干渉することはなく、上梁部2の接合部2aと下梁部3の接合部3aとの密着状態が許容される。
また、図4(b)のように、上梁部2と下梁部3を前述のオフセットの方向と逆向き、つまり、図4中で上梁部2が右に向かうようにして、下梁部3に対して上梁部2を相対移動させ、上梁部2と下梁部3の中心軸を一致させた状態にあっては、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cが、上梁部2と下梁部3の重合方向、つまり、図4(b)中の上下方向に重なり合って相互に嵌合し、上梁部2と下梁部3を上下方向に固定する。
【0033】
この実施形態にあっては、上梁部2および下梁部3は共にアルミニウム合金を押出成形した押出形材によって形成されており、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3c、および、上梁部2の接合フランジ部2d,2dと下梁部3の接合フランジ部3d,3dの断面形状は完全に同一であり、更には、上梁部2も下梁部3も共に同じ幅の中空部を相互間に形成された2枚のウェブ形成部2b,2bあるいはウェブ形成部3b,3bを備えた構造を有するものである。
従って、上梁部2と下梁部3は同じ押出ダイスを使用して形成することができ、梁構造体1の製造コストの低減化の面で有利である。
【0034】
上梁部2と下梁部3は完全に同一形状であるから、ここでは、上梁部2を例にとって其の詳細な形状を図3に示している。
【0035】
上梁部2と下梁部3との結合部の状態を拡大して図2に示す。この実施形態では、上梁部2の係止部2cと下梁部3の係止部3cを断面略L字型のものとし、それぞれを2列に亘って形成しているが、上梁部2の係止部2cと下梁部3の係止部3cは1列のみであってもよく、あるいは、3列以上とすることも可能である。
【0036】
上梁部2と下梁部3の各々には、組み立て前の段階で、予め、腐食防止のための陽極酸化皮膜が形成されている。
【0037】
梁構造体1の組み立てに際しては、まず、図4(a)に示されるように、下梁部3の接合部3aとの関係において、上梁部2の接合部2aを各梁部2,3のウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面に対して直交する方向、つまり、図4(a)中の左方向にオフセットした状態で、下梁部3の接合部3aの上に上梁部2の接合部2aを密着させて載置する。
【0038】
次いで、図4(b)に示されるようにして上梁部2と下梁部3の中心軸が一致するまで、前述のオフセットの方向と逆向き、つまり、右側に向けて上梁部2の方を相対移動させることにより、上梁部2の接合部2aに形成されている係止部2c,2cと下梁部3の接合部3aに形成されている係止部3c,3cとを各梁部2,3の重合方向、つまり、図4(b)中の上下方向に重なり合わせる。
この結果、図2に示されるように、これらの係止部2c,2cと係止部3c,3cが相互に嵌合し、係止部2c,2cと係止部3c,3cを介して、上梁部2と下梁部3が互いに係合される。
【0039】
このように、ウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面に対して直交する方向に向けて上梁部2を僅かに相対移動させるだけで係止部2c,2cと係止部3c,3cを嵌合させることができるので、長尺のジョイント部材を上梁部や下梁部の長手方向つまり図4(b)中の紙面垂直方向に向けて押し込むようにした従来構造のものと比べ、組み立てに要する組み立て工数が軽減され、作業スペースも低減される(従来型のジョイント部材は全体として梁構造体1の全長と同程度のスパンを有するので、ジョイント部材の押し込み作業に際しては、仮に、ジョイント部材を分割構造としたとしても、相当の作業スペースが必要であった)。
【0040】
次に、上梁部2の接合部2aの両側から上梁部2のウェブ形成部2b,2bの面と直交する方向に延出した上梁部2の接合フランジ部2d,2dと下梁部3の接合部3aの両側から下梁部3のウェブ形成部3b,3bの面と直交する方向に延出した下梁部3の接合フランジ部3d,3dとの重合部に対し、クリンチ式のカシメ4を施す。
これにより、上梁部2の接合フランジ部2d,2dと下梁部3の接合フランジ部3d,3dとが、接合フランジ部の面に沿った方向、つまり、図4(b)中の前後左右方向で確実に固定される。
【0041】
図6は図1の梁構造体1を示した右側面図、また、図7は図1の梁構造体1を示した平面図である(但し、平面図は時計方向に90°回転させた状態で記載している)。
【0042】
この実施形態では、上下に重合する接合フランジ部2dと接合フランジ部3dが、梁構造体1の長手方向、つまり、図6および図7の左右方向に沿って一定の間隔を空けて、複数の箇所でクリンチ式のカシメ4によって固定されている。
【0043】
クリンチ式のカシメ4は引張せん断強度に優れており、しかも、複数の箇所で接合フランジ部2dと接合フランジ部3dを固定しているので、上梁部2の接合部2aや接合フランジ部2dが下梁部3の接合部3aや接合フランジ部3dに対して接合フランジ部の面に沿った方向、特に、図6および図7の左右方向に不用意に移動するといった不都合が確実に解消される。
従って、この梁構造体1を梁として使用した際に、両端支持の状態で梁構造体1に荷重が作用したとしても、上梁部2と下梁部3の当接面に不用意な滑りが生じることはなく、上梁部2と下上梁部3とが常に一体化したまま撓むことになるので、他の条件が同一の完全一体型の梁構造体と比較しても同等、あるいは、其れ以上に曲げモーメントに対する十分な強度と剛性が発揮され得る。
【0044】
しかも、この実施形態で採用しているクリンチ式のカシメ4は、梁構造体1の長手方向、つまり、図6および図7の左右方向に沿って相対的に長く、各梁部2,3のウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面と直交する方向つまり図7の上下方向に沿って短く形成された略矩形状のものであって、特に、梁構造体1の長手方向すなわち図6および図7の左右方向に沿って作用する引張せん断荷重を受けた場合の引張せん断強度に優れているので、上梁部2と下梁部3の当接面に生じる長手方向の不用意な滑りの発生を防止するのに効果的である。
【0045】
クリンチ式のカシメ4の断面形状を図8(a)の拡大図(図1のA−A断面)に示す。なお、図8(a)の方向性は図6の方向性と同じである。また、図8(b)は図6のB−B拡大断面であり、カシメ4に関わる各部の具体的な寸法については図8(c)および図8(d)に示す。なお、図8(d)にも図8(a)、図8(b)の切断方向を参考にA−A、B−Bにて示した。
クリンチ式のカシメ4を成形するためのパンチ&ダイの構成等に関しては既に公知であるので、ここでは特に説明しない。
【0046】
以上に述べた通り、梁構造体1の組み立てに際しては、ボルト&ナットや溶接工程さらには特段の後加工も必要がないので、ボルト&ナットや梁構造体を構成する素材のイオン化傾向の違いによって生じる電気化学的な腐食、および、加熱に伴う素材自体の恒常的な歪の発生や熱による強度の低下、更には、歪の発生に伴う機械的な強度の低下も未然に防止することができ、生産コストや組み立て工数の軽減化も容易である。
【0047】
また、ボルト孔の穿設作業や溶接工程が不要であることから、加熱や切削加工による酸化皮膜の損傷が防止され、当初に形成された酸化皮膜を長期間に亘って温存することができる。
【0048】
組み立てを終えた梁構造体1の使用状態において上梁部2と下梁部3に作用する力のうち、梁構造体1を上下に押圧する方向の力は、下梁部3の接合部3aと上梁部2の接合部2aとの当接面、および、上梁部2の接合フランジ部2dと下梁部3の接合フランジ部3dとの当接面が上記に通り一体化されているので梁構造体1の全体が完全な1つの梁構造体として支えられる。
【0049】
また、上梁部2と下梁部3を引き剥がす方向の引張力は、図2に示されるような上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cとの嵌合面、および、上梁部2の接合フランジ部2dと下梁部3の接合フランジ部3dを接合するクリンチ式のカシメ部分4によって支えられる。
クリンチ式のカシメ4の構造を示した図8(a),(b)の拡大断面図からも分かるように、クリンチ式のカシメ4それ自体は、剥離強度つまり上下方向の引張力に関して必ずしも十分な強度を備えないが、上梁部2と下梁部3は、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cを重合させて嵌合することによって上下方向に固定されているので、梁構造体1を全体としてみると、専ら、係止部2c,2cと係止部3c,3cの強度に依存するかたちで、上梁部2と下梁部3を引き剥がす方向の力に対しても十分な強度を発揮することができる。
【0050】
また、上梁部2の接合フランジ部2dと下梁部3の接合フランジ部3dは、各梁部2,3のウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面と直交するかたちで各ウェブ形成部の左右両側に大きく延出しており、梁の弱軸断面2次モーメントが大きくなったため、梁の全体の横倒れ座屈強度も大きくなる。
【0051】
しかも、各梁部2,3のウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面と直交するかたちで各ウェブ形成部の両側に十分に延出した接合フランジ部2d,3dそれ自体が、図6に示されるように、梁構造体1の上下方向の中央部で長手方向に沿って延びる水平補剛材として機能することになるので、水平補剛材を備えていない同等の寸法の梁構造体と比べ、より高い局部座屈強度と横倒れ座屈強度を得ることができる。この際、水平補剛材による局部座屈強度と横倒れ座屈強度の向上にあわせてウェブ板を薄型化することができるので、材料の節約にもなる。
【0052】
次に、梁構造体1の各部の強度試験および耐久試験等の結果について簡単に説明する。
【0053】
図9および図10は、実施形態の梁構造体1において接合フランジ部2dと接合フランジ部3dを固定するクリンチ式のカシメ4の引張せん断強度を試験するために、各梁部2,3と同一材料によって形成された試験片5,6について示した図である。
試験片5は上梁部2の接合フランジ部2dに相当し、また、試験片6は下梁部3の接合フランジ部3dに相当する。
試験片5,6の厚さは実施形態の接合フランジ部2d,3dと同じく3.8mmであり、試験片5,6の縦横の長さは図9および図10に示される通り150mm×40mmであって、試験片5,6の長手方向の端部を50mmだけ重合させて、この重合部分にクリンチ式のカシメ4が施されている。
カシメ4の寸法は実施形態の梁構造体1のものと同じく図8(c),(d)に示される通り、表面における矩形部の長手方向の寸法が15.5mm、これと直交する方向の幅が6mm(以上、図8(d)参照)、表面から底の部分までの寸法が6mm、底の部分の長手方向の寸法が8.6mm(以上、図8(c)参照)となっている。
このうち、図9の試験片5,6は引張方向(図9の上下方向)に対してクリンチ式のカシメ4の長手方向が直交するようにしてクリンチ式のカシメ4を施され、また、図10の試験片5,6は引張方向(図10の上下方向)に対してクリンチ式のカシメ4の長手方向が一致するようにしてクリンチ式のカシメ4を施されている。
従って、この実施形態の梁構造体1の長手方向、つまり、図6および図7の左右方向に沿って長く、各梁部2,3のウェブ形成部2b,2bおよびウェブ形成部3b,3bの面と直交する方向つまり図7の上下方向に沿って短く形成された縦横比を有する本実施形態のカシメ4と同等の条件にあるカシメ4は、図10で示される方のカシメ4ということになる。
なお、試験片5,6の端部を挾持して引張方向の荷重を測定する試験機については既に公知である。
【0054】
また、図11は本実施形態の梁構造体1において接合フランジ部2dと接合フランジ部3dを固定するクリンチ式のカシメ4の剥離強度を試験するために、各梁部2,3と同一材料によって形成された試験片7,8によって構成される十字引張試験体ついて示した図である。
試験片7は上梁部2の接合フランジ部2dに相当し、また、試験片8は下梁部3の接合フランジ部3dに相当する。
試験片7,8の厚さは実施形態の接合フランジ部2d,3dと同じく3.8mmであり、試験片7,8の縦横の長さは図11に示される通り、共に150mm×50mmであって、試験片7,8の中央部を直交させた状態で重合して、この重合部分にクリンチ式のカシメ4が施されている。
カシメ4の寸法は前記と同様に表面における矩形部の長手方向の寸法が15.5mm、これと直交する方向の幅が6mm、表面から底の部分までの寸法が6mm、底の部分の長手方向の寸法が8.6mmである。
試験片8を固定した状態で試験片7を図11の紙面垂直方向に引き上げることによって剥離方向の荷重を測定する試験機については公知である。なお、試験片7,8の孔は、これらの試験片7,8を試験機に取り付ける際に使用するもので、試験の内容それ自体とは無関係である。
【0055】
まず、図9の試験片5,6を利用した引張せん断試験の結果と図10の試験片5,6を利用した引張せん断試験の結果、および、図11の十字引張試験体(試験片7,8)を利用した剥離強度試験の結果を纏めて図12の表に示す。
図12の表において垂直方向のかしめは図9の試験体にてカシメの長手方向と直交方向に引張力を加えて引張せん断試験の結果で、平行方向のかしめは図10の試験体にてカシメの長手方向と平行方向に引張力を加えての引張せん断試験の結果である。
表よりカシメの長手方向とそれに垂直な方向とでは引張せん断強度に大きな相違は見られなかった。
なお、何れの試験結果も、同様の試験片を3組ずつ用意して繰り返し行なった3回の試験の平均値である。
【0056】
図13はクリンチ式のカシメ4継手に対する一面せん断疲労試験の結果を示したP−N線図であり、図10と同様の試験片を使用した。
横軸が疲労試験の繰り返し回数、そして、縦軸が疲労破壊荷重である。荷重比(R)は0.1とした。
試験片が10回の繰返し数を超えて破壊しない場合,試験を中断し,10回の疲労強度とする。つまり、クリンチ式カシメ4継手の10回に対応する疲労強度は2444Nである。
【0057】
図14は本実施形態の梁構造体1を構成する上梁部2および下梁部3に対して曲げ試験を行なうための試験機の構成について簡略化して示した模式図である。
この曲げ試験機9は、梁構造体1を両端単純支持の梁として使用した場合の状況を再現するための装置である。
曲げ試験を行なった梁構造体1は図1に示されるような断面形状を有する梁構造体1であって、上梁部2および下梁部3の高さが共に125mmつまり全高が250mmであり、接合フランジ部2d,3dと上梁部2のフランジ部2eおよび下梁部3のフランジ部3eの横幅が共に100mm、ウェブ形成部2b,3bの厚さは左右共に2.5mm、接合フランジ部2d,3dの厚さは共に3.8mm、上梁部2のフランジ部2eと下梁部3のフランジ部3eの厚さは共に5mmであり、図14に示されるように、実際に曲げられる部分の長さは3800mmであって、その中央部に荷重が加えられる。
クリンチ式のカシメ4は、梁構造体1の長手方向つまり図14の左右方向に沿って100mmの間隔を置いて断続的に設けられている。
ローラ10,11は梁構造体1の両端部を支えて水平状態を保持すると共に、梁構造体1の両端部に無用な外力や抵抗あるいは拘束力が作用するのを防止するためのコロとして機能する。
また、押圧具12は、梁構造体1の中央部に無用な抵抗や拘束力が作用するのを防止した状態で梁構造体1の中央部に鉛直方向の荷重を加えるための手段である。
【0058】
曲げ試験の結果を図15の線図に示す。横軸が梁構造体1における中央部の撓み、そして、縦軸が荷重であり、比較の都合上、同等の形状および寸法を有する完全一体型の梁構造体の理論上の撓み量を併せて記載している。
図15から分かるように、同一の荷重に対する撓み量は、完全一体型の梁構造体も上梁部2および下梁部3からなる実施形態の梁構造体1も同等である。
つまり、この実施形態の梁構造体1は、曲げ荷重に関する限り、同等の形状および寸法を有する完全一体型の梁構造体に比して何らの遜色もない。
【0059】
図16は梁構造体1の3点曲げ疲労試験前後の荷重とたわみの関係を示した線図である。比較の都合上、油圧サーボパルサーを使用して10万回の3点曲げ疲労試験を繰り返した後の梁構造体1と、図14に示したものと同じ条件で未使用の梁構造体1と、図14に示したものと同じ条件を有する完全一体型の梁構造体の各々について、荷重と中央部のたわみの関係を独立的に記載している。
10万回の3点曲げ疲労試験を繰り返した梁構造体1および未使用の梁構造体1の寸法は、前記と同様、上梁部2および下梁部3の高さが共に125mmで全高が250mm、接合フランジ部2d,3dと上梁部2のフランジ部2eおよび下梁部3のフランジ部3eの横幅が共に100mm、ウェブ形成部2b,3bの厚さは左右共に2.5mm、接合フランジ部2d,3dの厚さは共に3.8mm、上梁部2のフランジ部2eと下梁部3のフランジ部3eの厚さは共に5mmであり、クリンチ式のカシメ4は、梁構造体1の長手方向に沿って100mmの間隔を置いて断続的に設けられており、実際に屈曲される部分の長さは3800mm(全長は4000mm)である。完全一体型の梁構造体の寸法もこれと同様である。
10万回の疲労試験では最大荷重を2000kgf、また、荷重比(R)は0.1とし、繰返し速度は0.6Hzとしている。
図16から分かる通り、10万回の3点曲げ疲労試験を繰り返した後の梁構造体1の曲げ強度は、未使用の梁構造体1や完全一体型の梁構造体の曲げ強度と同等であり、梁構造体1を上梁部2および下梁部3からなる分割構成としても、交番荷重による曲げ剛性の劣化が生じ難いことが窺える。
【0060】
次に、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cの嵌合で得られる上梁部2と下梁部3の固定効果、および、上梁部2の接合フランジ部2d,2dと下梁部3の接合フランジ部3d,3dを接合するクリンチ式のカシメ4で得られる上梁部2と下梁部3の固定効果を確認するために行なった剥離試験について説明する。
この剥離試験で用いた梁構造体1は図1,図4(b)ないし図5に示されるもので、その寸法は、上梁部2および下梁部3の高さが共に125mmで全高が250mm、接合フランジ部2d,3dと上梁部2のフランジ部2eおよび下梁部3のフランジ部3eの横幅が共に100mm、ウェブ形成部2b,3bの厚さは左右共に2.5mm、接合フランジ部2d,3dの厚さは共に3.8mm、上梁部2のフランジ部2eと下梁部3のフランジ部3eの厚さは共に5mmであり、上梁部2の係止部2cと下梁部3の係止部3cの板厚は3mmであって、両者の嵌合幅は4.5mmである。また、長手方向つまり図4(b)ないし図5の紙面奥行き方向の寸法が100mmである。
この試験では、同寸法の前記梁構造体1を3個用意し、その内の1つにはクリンチ式のカシメ4を施さず、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cとの嵌合のみによって上梁部2と下梁部3を固定して試験体Aとした。他の1つには、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cとを嵌合させた状態で、更に、左右で対を成す一方の接合フランジ部2d,3dともう一方の接合フランジ部2d,3dの中央部の各々1箇所にクリンチ式のカシメ4を施して試験体Bとした(従って、カシメ4の総数は都合2箇所)。最後の1つには、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cとを嵌合させた状態で、更に、左右で対を成す一方の接合フランジ部2d,3dともう一方の接合フランジ部2d,3dの長手方向を長手方向に3等分する位置にクリンチ式のカシメ4を施して試験体Cとした(従って、カシメ4の総数は左右各2箇所で都合4箇所)。
そして、試験体A,B,Cの各々に対し、上梁部2と下梁部3を相対的に離間させる方向、つまり、図4(b)ないし図5の上下方向に引張して剥離試験を行ない、その結果を図17の表に示した。
図17に示される通り、試験体Bの剥離強度は試験体Aの剥離強度の約1.3倍、また、試験体Cの剥離強度は試験体Aの剥離強度の約1.4倍となっている。また、試験体Aの剥離強度と試験体Bの剥離強度の差分を2で割った値(4640N/1カシメ箇所)と試験体Aの剥離強度と試験体Cの剥離強度の差分を4で割った値(3176N/1カシメ箇所)とは近似せず、このことから、クリンチ式のカシメ4の数を無闇に増やしても、其の増加分に応じて比例的に剥離強度を増大するとは考え難い。何れにしても、剥離に対する強度の大半は、専ら、上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cとの嵌合で生じる固定力(32644N)に依存するものと推定される。
つまり、前述のように、クリンチ式のカシメ4それ自体は、剥離強度つまり上下方向の引張に関して必ずしも十分な強度は備えないが、上梁部2と下梁部3は上梁部2の係止部2c,2cと下梁部3の係止部3c,3cを重合させるようにして嵌合固定されているので、梁構造体1を全体としてみると、専ら、係止部2c,2cと係止部3c,3cの強度に依存するかたちで、上梁部2と下梁部3を引き剥がす方向の力に対して強度を発揮しているということができる。
【実施例2】
【0061】
図18は本発明を適用した他の一実施形態の梁構造体13の構成について梁構造体13の長手方向に直交する方向の切断した断面で示した正面図である。
【0062】
この実施形態は、中空部を形成された二枚板状のウェブ形成部に代えて中空部のない一枚板状のウェブ形成部を採用した点、および、上梁部と下梁部の接合部の夫々に2列に亘って形成された係止部に代えて単列の係止片を各接合部に一組のみ採用した点で前述の実施形態と異なる。
【0063】
この梁構造体13は、上梁部14と下梁部15で構成される。上梁部14は、梁の上側のフランジを形成するフランジ部14eと、下梁部15との接合部14aと、フランジ部14eと接合部14aを繋ぐウェブ形成部14bとよりなり、また、下梁部15は、梁の下側のフランジを形成するフランジ部15eと、上梁部14との接合部15aと、フランジ部15eと接合部15aを繋ぐウェブ形成部15bとよりなる。
【0064】
そして、上梁部14の接合部14aには、上梁部14のウェブ形成部14bの面と直交して該ウェブ形成部14bの左右に延出する接合フランジ部14d,14dが形成される一方、下梁部15の接合部15aには、下梁部15のウェブ形成部15bの面と直交して該ウェブ形成部15bの左右に延出する接合フランジ部15d,15dが形成されて、上梁部14の接合フランジ部14d,14dと下梁部15の接合フランジ部15d,15dが互いに重合するようになっている。
【0065】
更に、上梁部14の接合部14aには係止部14cが一体に形成され、下梁部15の接合部15aには係止部15cが一体に形成されている。
上梁部14の接合部14aと下梁部15の接合部15aを各梁部14,15のウェブ形成部14b,15bに対して直交する方向に僅かにオフセットした状態にあっては、係止部14cと係止部15cが干渉することはなく、上梁部14の接合部14aと下梁部15の接合部15aとの密着状態が許容される(以上、図示略)。
また、図18のように、上梁部14と下梁部15の中心軸を一致させた状態にあっては、上梁部14の係止部14cと下梁部15の係止部15cが、上梁部14と下梁部15の重合方向、つまり、図18中の上下方向に重なり合って相互に嵌合し、上梁部14と下梁部15を上下方向に固定する。
【0066】
上梁部14および下梁部15は共にアルミニウム合金の押出形材によって形成されており、上梁部14の係止部14cと下梁部15の係止部15c、および、上梁部14の接合フランジ部14d,14dと下梁部15の接合フランジ部15d,15dの断面形状は完全に同一であり、同じ断面形状の押出形材を使用して形成することができる。
【0067】
上梁部14と下梁部15は同一形状であるから、ここでは、上梁部14を例にとって其の詳細な形状を図19に示している。つまり、図19に示される上梁部14を図19の平面内で180°回転させたものと図18に示される下梁部15とは同じである。
【0068】
以上のように、図1の実施形態で示した梁構造体1との相違は、中空部を形成された二枚板状のウェブ形成部2b,2bおよび3b,3bに代えて中空部のない一枚板状のウェブ形成部14bおよびウェブ形成部15bを採用した点、および、上梁部と下梁部の接合部の夫々に2列に亘って形成された係止部に代えて単列の係止片14c,15cを一組のみ採用した点にある。
その他の構成,組み立て方法,効果に関しては、図1で示した前述の実施形態の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
なお、図18中の符号14eは上梁部14が備える上側のフランジを形成するフランジ部、符号15eは下梁部15が備える下側のフランジを形成するフランジ部であり、符号16はクリンチ式のカシメである。
【実施例3】
【0069】
図20は本発明を適用した更に別の一実施形態の梁構造体17の構成について梁構造体17の長手方向に直交する方向の切断面を示す正面図である。
【0070】
この梁構造体17は、3つの梁構成体、すなわち上梁部18と中間梁部19と下梁部20を上下に接合して構成される梁構造体であり、上梁部と下梁部との間に中間梁部が介装されている点で、前述した2つの実施形態とは構成が異なる。
【0071】
上梁部18,中間梁部19,下梁部20を分割した状態で各部の形状の詳細を図21に示す。
【0072】
上梁部18の構造(寸法は除く)は、図1に示した実施形態の上梁部2と同様であり、ウェブ形成部18b,18bと接合部18a、および、係止部18c,18cと接合フランジ部18d,18d、ならびに、上側のフランジを形成するフランジ部18eを備える。
【0073】
また、下梁部20の構造(寸法は除く)は、図1に示した実施形態の下梁部3と同様であり、ウェブ形成部20b,20bと接合部20a、および、係止部20c,20cと接合フランジ部20d,20d、ならびに、下側のフランジを形成するフランジ部20eを備える。
【0074】
中間梁部19に関しては、本実施形態に固有の構成である。この中間梁部19は、図21に示すように、上梁部18と接合される上接合部19auと、下梁部20と接合される下接合部19alと、これらの接合部19au,19alを繋ぐウェブ形成部19b,19bとよりなる。このウェブ形成部19b,19bは、中空部を形成された二枚板状のウェブ形成部である。
そして、上梁部18と接合する上接合部19auには、上梁部18の接合部18aと中間梁部19の上接合部19auを各梁部18,19のウェブ形成部18b,19bの面に対して直交する方向にオフセットした状態にあっては上梁部18の接合部18aと中間梁部19の上接合部19auとの密着を許容する一方(以上、図示略)、上梁部18と中間梁部19の中心軸を一致させた状態で上梁部18と中間梁部19の重合方向つまり図20の上下方向に重なり合って上梁部18の係止部18c,18cと嵌合する係止部19cu,19cuが一体に設けられている。
また、中間梁部19の上接合部19auの両側には、中間梁部19のウェブ形成部19b,19bの面と直交して該ウェブ形成部19b,19bの両側に延出する接合フランジ部19du,19duが一体に設けられている。
【0075】
これらと同様、中間梁部19において下梁部20と接合する下接合部19alには、中間梁部19の下接合部19alと下梁部20の接合部20aを各梁部19,20のウェブ形成部19b,20bの面に対して直交する方向にオフセットした状態にあって中間梁部19の下接合部19alと下梁部20側の接合部20aとの密着を許容する一方(以上、図示略)、中間梁部19と下梁部20の中心軸を一致させた状態で中間梁部19と下梁部20の重合方向つまり図20の上下方向に重なり合って下梁部20の係止部20c,20cと嵌合する係止部19cl,19clが一体に設けられている。
また、中間梁部19の下接合部19alの両側には、中間梁部19のウェブ形成部19b,19bの面と直交して該ウェブ形成部面19b,19bの両側に延出する接合フランジ部19dl,19dlが一体に設けられている。
【0076】
この実施形態にあっては、上梁部18および下梁部20と中間梁部19は共にアルミ押出成形によって形成されており、上梁部18の係止部18c,18cと下梁部20の係止部20c,20c、および、上梁部18の接合フランジ部18d,18dと下梁部20の接合フランジ部20d,20dの断面形状が完全に同一であり、更には、上梁部18も下梁部20も共に同じ幅の中空部を間に形成された2枚のウェブ形成部18b,18bあるいはウェブ形成部20b,20bを備えた構造を有するものであるので、上梁部18と下梁部20を同じ形状の押出形材を使用して形成することができ、梁構造体17の製造コストの低減化の面で有利である。
【0077】
つまり、上梁部18と下梁部20は同じ形状であって、図21に示される上梁部18を図21の平面内で180°回転させたものと、図21に示される下梁部20とは同じ形状である。
【0078】
梁構造体17の組み立て方法は、基本的には、図1で示した実施形態の場合と同様であるが、本実施形態の梁構造体17にあっては、上梁部18,中間梁部19,下梁部20といった3つの構成要素が存在するので、最初に下梁部20と中間梁部19を組み立て、然る後に、中間梁部19の上に改めて上梁部18を組み付けるようにするとよい。
下梁部20に対する中間梁部19の組み付け作業は、図4(a)および図4(b)に示したような手順で行うことができ、同様に、下梁部20に対する組み付け作業を終えた中間梁部19に対する上梁部18の組み付け作業も、図4(a)および図4(b)に示したような手順で行うことができる。
【0079】
図20中の符号21はクリンチ式のカシメである。
【0080】
図20に示した梁構造体17は、上梁部18,中間梁部19,下梁部20を一体的に組み合わせることにより、全体として2組の水平補剛材、つまり、上梁部18の接合フランジ部18dおよび中間梁部19の接合フランジ部19duからなる第一の水平補剛材と、中間梁部19の接合フランジ部19dlおよび下梁部20の接合フランジ部20dからなる第二の水平補剛材とを備えることになるので、ウェブ面板の局部座屈強度と梁全体の横倒れ座屈強度の向上が期待できる。これにより、ウェブ板の更なる薄型化も可能である。
梁構造体を上下に3以上に分割して構成しても曲げ強度や疲労強度が低下しないことは、曲げ荷重に関する図15の試験結果や疲労強度に関する図16の試験結果からも明らかである。
つまり、図15や図16の試験結果から分かる通り、完全一体型の梁構造体と上下に2分割して構成された梁構造体1との間では、曲げ強度や疲労強度に関する明確な差異は生じていないので、上下に3分割して構成された梁構造体17の性能が、上下に2分割して構成された梁構造体1と同等と考えられる。
【0081】
この実施形態にあっては、上梁部18,下梁部20の断面形状と中間梁部19の断面形状とが相違するので、上梁部18と下梁部20は同じ形状の押出形材を利用できるが、中間梁部19は別の形状の押出形材となる。しかしながら全体を3分割する結果として、用意された押出機で可能な大きさより大きな梁を製造することが可能である。
【0082】
梁構造体17が奏する其の他の効果に関しては図1で示した実施形態の場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0083】
この実施形態では1つの中間梁部19のみを上梁部18と下梁部20の間に介装しているが、必要とあれば、上梁部18と下梁部20の間に、同形状・同寸法の中間梁部19を複数個まとめて介装するといったこともできる。
【0084】
更には、高さ寸法の異なる複数種の中間梁部19を規格化して製造しておき、梁構造体17として必要とされる全高に応じ、高さ寸法の異なる中間梁部19、もしくは、中間梁部19の組み合わせを適宜に選択して、上梁部18と下梁部20の間に介装して所望する高さの梁構造体17を得るといったことも可能である。
【0085】
上記説明にあっては上梁部と下梁部を同じ形状の押出形材にて形成したが別の形状とすることも可能である。
また、梁構造体17のフランジ部を平面以外の形状とすることも可能である。
またこの場合、押出形材にて形成するためにその断面形状は自由に設計できウェブ形成部を平板でない形状とし他の部品を取り付けやすい形状とする等の変形も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明を適用した一実施形態の梁構造体の構成例について梁構造体の長手方向に沿った向きで示した正面図である。
【図2】同実施形態の梁構造体を構成する上梁部と下梁部の接合箇所について拡大して示した部分正面図である。
【図3】同実施形態の梁構造体を構成する上梁部や下梁部の構成を単独で示した正面図である。
【図4】同実施形態の梁構造体の組み立て工程の概略について示した組み立て工程図である。
【図5】同実施形態の梁構造体を短く切断して全体を示した斜視図である。
【図6】同実施形態の梁構造体を示した図1の右側面図である。
【図7】同実施形態の梁構造体を示した図1の平面図である(但し、時計方向に90°回転させた状態で平面図を記載している)。
【図8】同実施形態の梁構造体において接合フランジ部どうしを固定するクリンチ式のカシメの構造について拡大して示した断面図であり、図8(a)および図8(c)は図1のA−A断面について、図8(b)は図6のB−B断面について、図8(d)はカシメの平面形状について示している。
【図9】同実施形態の梁構造体において接合フランジ部を固定するクリンチ式のカシメの引張せん断強度を試験するために同一材料によって形成された試験片について示した図で、図9(a)は其の正面図、また、図9(b)は其の右側面図である。
【図10】同実施形態の梁構造体において接合フランジ部を固定するクリンチ式のカシメの引張せん断強度を試験するために同一材料によって形成された試験片について示した図で、図10(a)は其の正面図、また、図10(b)は其の右側面図である。
【図11】同実施形態の梁構造体において接合フランジ部を固定するクリンチ式のカシメの剥離強度を試験するために同一材料によって形成された試験片によって構成される十字引張試験体について示した正面図である。
【図12】引張せん断試験の結果と剥離強度試験の結果を纏めて示した図表である。
【図13】同実施形態の梁構造体において接合フランジ部を固定するクリンチ式のカシメに対する疲労試験の結果を示した線図である(最大荷重と繰り返し回数の関係)。
【図14】同実施形態の梁構造体を構成する上梁部および下梁部に対して曲げ試験を行なうための試験機の構成について簡略化して示した模式図である。
【図15】完全一体型の梁構造体の理論上のたわみ量と曲げ試験の結果を併せて示した線図である。
【図16】同実施形態の梁構造体の3点曲げ疲労試験前後における荷重とたわみの関係について示した線図であり、比較の都合上、10万回の3点曲げ疲労試験後の梁構造体と、疲労試験前の梁構造体と、完全一体型の梁構造体の理論値の各々について、荷重と中央部のたわみの関係を独立的に記載している。
【図17】同実施形態の梁構造体に関する剥離強度の試験結果について示した図表である。
【図18】本発明を適用した他の一実施形態の梁構造体の構成について梁構造体の長手方向に沿った向きで示した正面図である。
【図19】同実施形態の梁構造体を構成する上梁部や下梁部の構成を単独で示した正面図である。
【図20】本発明を適用した更に別の一実施形態の梁構造体の構成について梁構造体の長手方向に沿った向きで示した正面図である。
【図21】同実施形態の梁構造体を構成する上梁部,中間梁部,下梁部の形状の詳細を示した正面図である。
【符号の説明】
【0087】
1 梁構造体
2 上梁部
2a 接合部
2b ウェブ形成部
2c 係止部
2d 接合フランジ部
2e フランジ部
3 下梁部
3a 接合部
3b ウェブ形成部
3c 係止部
3d 接合フランジ部
3e フランジ部
4 クリンチ式のカシメ
5,6,7,8 試験片
9 曲げ試験機
10,11 ローラ
12 押圧具
13 梁構造体
14 上梁部
14a 接合部
14b ウェブ形成部
14c 係止部
14d 接合フランジ部
14e フランジ部
15 下梁部
15a 接合部
15b ウェブ形成部
15c 係止部
15d 接合フランジ部
15e フランジ部
16 クリンチ式のカシメ
17 梁構造体
18 上梁部
18a 接合部
18b ウェブ形成部
18c 係止部
18d 接合フランジ部
18e フランジ部
19 中間梁部
19au 上接合部
19al 下接合部
19b ウェブ形成部
19cu 係止部
19cl 係止部
19du 接合フランジ部
19dl 接合フランジ部
20 下梁部
20a 接合部
20b ウェブ形成部
20c 係止部
20d 接合フランジ部
20e フランジ部
21 クリンチ式のカシメ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上梁部と下梁部を上下に接合して構成される梁構造体であって、
上梁部は梁の上側のフランジを形成するフランジ部と、下梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
下梁部は梁の下側のフランジを形成するフランジ部と、上梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
上梁部の接合部と下梁部の接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
前記上梁部側の接合部と下梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記上梁部と下梁部の係止部同士を嵌合させた状態で、
前記上梁部の左右の接合フランジ部と下梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されていることを特徴とした梁構造体。
【請求項2】
上梁部と中間梁部と下梁部を上下に接合して構成される梁構造体であって、
上梁部は梁の上側のフランジを形成するフランジ部と、中間梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
下梁部は梁の下側のフランジを形成するフランジ部と、中間梁部との接合部と、フランジ部と接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
中間梁部は上梁部と接合される上接合部と、下梁部と接合される下接合部とこれらの接合部を繋ぐウェブ形成部とよりなり、
上梁部の接合部と中間梁部の上接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
下梁部の接合部と中間梁部の下接合部の各々には、
両梁部材の長手方向と直交し、ウェブ形成部の面に対して直交する方向に相対移動させることによって相互に嵌合する係止部が形成されると共に、
前記上梁部側の接合部と中間梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記下梁部側の接合部と中間梁部側の接合部の両側には、各梁部のウェブ面と直交して該ウェブ面の左右に延出し互いに重合する接合フランジ部が形成され、
前記上梁部と中間梁部の係止部同士並びに前記下梁部と中間梁部の係止部同士を嵌合させた状態で、
前記上梁部の左右の接合フランジ部と中間梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されると共に、前記下梁部の左右の接合フランジ部と中間梁部の左右の接合フランジ部とがそれぞれクリンチ式のカシメによって互いに固定されていることを特徴とした梁構造体。
【請求項3】
重合する前記接合フランジ部どうしが、前記梁構造体の長手方向に沿って一定の間隔を空けて、複数の箇所で、クリンチ式のカシメによって固定されていることを特徴とした請求項1または請求項2のうち何れか一項に記載の梁構造体。
【請求項4】
前記クリンチ式のカシメが、相対的に、前記梁構造体の長手方向に沿って長く、前記各梁部のウェブ面と直交する方向に沿って短く形成されていることを特徴とした請求項1,請求項2または請求項3のうち何れか一項に記載の梁構造体。
【請求項5】
前記各梁部がアルミ押出形材によって形成され、少なくとも、上梁部の係止部と下梁部の係止部、および、上梁部の接合フランジ部と下梁部の接合フランジ部の断面形状が同一であることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3または請求項4のうち何れか一項に記載の梁構造体。
【請求項6】
前記各梁部の各々に接合前の段階で酸化皮膜が形成されていることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3,請求項4または請求項5のうち何れか一項に記載の梁構造体。
【請求項7】
前記各梁部を形成するウェブ形成部は中空部が間に形成される2枚のウェブ形成部によりなる請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6のうち何れか一項に記載の梁構造体。
【請求項8】
少なくとも、前記接合フランジ部が、梁構造体の水平補剛材を兼ねていることを特徴とした請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5,請求項6または請求項7のうち何れか一項に記載の梁構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−90603(P2010−90603A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261226(P2008−261226)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】