説明

梱包構造、梱包方法及び梱包装置

【課題】運搬、保管、荷役などの際に、被梱包機器が受ける衝撃を緩和して損傷や変形を防止することができ、その上梱包作業が容易でコストを低減できる梱包構造、梱包方法及び梱包装置を提供する。
【解決手段】被梱包機器1をターンテーブル5上に回転可能に設置すると共に、被梱包機器1の高さとほぼ等しい幅でロール状に巻かれた梱包材10を回転可能に配置し、梱包材10を引き出してその先端部を被梱包機器1の外周に固定し、被梱包機器1を回転させてその外周に梱包材10を巻き付け、その上端部に天キャップを装着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、貯湯式給湯器などの機器の梱包構造、梱包方法及び梱包装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、貯湯式給湯器は、通常、円筒状の貯湯タンクが金属板からなる直方体状の外装ケース内に収容されており、運搬や荷役時に外装ケースが破損したり変形したりすることのないように、外装ケースの外周を、梱包装置によって梱包している(以下の説明では、外装ケース及びこれに収容された貯湯タンクを一括して貯湯式給湯器という)。そして、梱包された貯湯式給湯器を移動のため運搬車に積み込む場合は、運搬中の転倒防止や荷役作業を容易にするために、貯湯式給湯器の大きさや重量などに応じて、荷台に横積みにするか縦積みにするか、適宜選択される。
【0003】
限られたスペースに設置される貯湯式給湯器は、給湯容量を確保するために、背丈が高く重量が大で大型である。そのため、運搬や荷役の際の横揺れによって転倒したり、周囲の物品と衝突したりすることがあり、これによって貯湯式給湯器(外装ケース)が破損したり変形したりするのを防止するために、通常、運搬車に横積みし、また、運搬車に積み込んだり積み降したりする際は、運搬車の荷台上を滑らしながらずり上げたりずり下げたりする場合が多い。
【0004】
そのため、横積みした貯湯式給湯器の大きい側面上に他の物品が上積みされて、外装ケースが損傷したり変形したりすることがあり、また、運搬車に積み込んだり積み降したりする際に、荷台との摩擦によって外装ケースが損傷したり変形したりするおそれがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、従来の梱包装置に、貯湯式給湯器の如き被梱包機器の外周面を、段ボールからなる梱包用外装箱を構成する四角筒状の胴部(スリーブ)で覆ってその上部を蓋部で閉塞し、胴部の一方の面の両角部に段ボールからなる一対の補強材を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、被包装物の上下面に緩衝材を配置すると共に、被包装物の一方の対向する側面に側面用緩衝材を配設し、これらを締結部材により一体に締結するようにした梱包構造が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−326608号公報(第3−5頁、図1,2)
【特許文献2】特開2002−337924号公報(第3−5頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の梱包装置によれば、運搬車への横積み時、及び積み込みや積み降しなどの際に補強材により外部からの衝撃が緩和されるので、外装ケースの損傷や変形を防止することができる。しかしながら、段ボールからなり被梱包機器の外周を覆う梱包用外装箱の胴部(スリーブ)は、大きさの制約により一体成形ができないため、抜き型によって複数に分割した胴部を製作し、これを連結して構成していた。
【0009】
このため、連結部の強度を高くする必要があり、真鍮素材からなる金属ステープルなどを用いて連結しているが、これらにより製造コストが高くなるばかりでなく、一体成形の場合より緩衝性能が低下するという問題があった。また、連結材料は段ボールと素材が異なるため、梱包材を用済み後廃棄処分する場合に、段ボールと連結部材とを分別しなければならないので、面倒であった。
【0010】
さらに、梱包用外装箱の胴部は四角筒状に形成されているので、梱包時に被梱包機器の上方から嵌合しなければならない。このため、梱包場所の上方に高い空間が確保されていなければならず、梱包場所が制約されるという問題があった。開梱時においても同様である。
【0011】
また、特許文献2の梱包構造は、被梱包物の一方の対向する側面のみを側面用緩衝材で覆うようにしており、他方の対向する側面は開放されているため、運搬時や荷役時に被梱包物の開放された側面が、破損したり変形したりするおそれがある。
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたもので、運搬、保管、荷役などの際に、被梱包機器が受ける衝撃を緩和して損傷や変形を防止することができ、その上梱包作業が容易でコストを低減できる梱包構造、梱包方法及び梱包装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、貯湯式給湯器などの機器の梱包構造であって、前記機器の外周に巻き付けられたシート状の梱包材を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、機器の外周を梱包材により梱包し、運搬、保管、荷役などの際に機器に加わる衝撃を緩和するようにしたので、機器の損傷や変形を防止することができる。
また、機器の外周に梱包材を巻き付けて梱包するようにしたので、梱包材をあらかじめスリーブ状に製造する必要がないため梱包作業が容易で、コストを低減することができ、その上、梱包及び開梱作業に場所的制約を受けることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る機器の梱包構造の説明図である。
【図2】図1の梱包手順の説明図である。
【図3】図2の機器の外周の梱包状態を示す平面図である。
【図4】図2の機器の梱包状態を示す説明図である。
【図5】図2の機器の外周の他の梱包状態を示す平面図である。
【図6】図4の梱包した機器を運搬車に横積みした状態を示す説明図である。
【図7】図4の梱包した機器を運搬車に積み込み又は積み降す状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る機器の梱包構造を説明するための図1において、1は金属板からなる直方体状の外装ケース2内に、円筒状の貯湯タンク(図示せず)が収容された被梱包機器である貯湯式給湯器で、下面には複数の脚部3a,3b,3cが設けられており、この脚部3a〜3cは架台4に固定されている。10は貯湯式給湯器1(外装ケース2)の外周に巻き付けて梱包する梱包材(以下、貯湯式給湯器の外周に巻き付けた四角筒状の梱包材10の状態を、スリーブと云うことがある)、15はスリーブの上端部を覆う天キャップである。
【0017】
次に、図2により貯湯式給湯器1の外周を梱包材10で梱包する手順について説明する。
図2において、貯湯式給湯器1が固定された架台4は、ターンテーブル5上に回転可能に設置される。また、JIS用語で片面段ボールと呼ばれる、柔軟性を有しその幅が外装ケース2の高さとほぼ等しい長尺の梱包材10を、あらかじめ凹凸面を内側にしてロール状に巻いて原反11を形成し、この原反11をターンテーブル5の近傍に配置された基台12上に回転可能に設置したものである(以下、原反11と基台12を合わせて梱包材供給部ということがある)。
【0018】
そして、原反11から梱包材10を引き出し、その先端部10aを貯湯式給湯器1(外装ケース2)の面2aの角部に粘着テープ13などで貼り付ける。ついで、貯湯式給湯器1を回転させ、その外周に梱包材10を巻き付ける。
貯湯式給湯器1を1回転させて全周に梱包材10を巻き付けたのち、さらに90°回転させて、図3に示すように、最初に梱包材10を巻き付けた面2aにさらに梱包材10を巻き付けたのち切断し、その先端部(切断部)を粘着テープ13などで固定する。これにより、貯湯式給湯器1(外装ケース2)の1面2aに緩衝材である梱包材10が2重に巻かれて、補強面14が形成される。
【0019】
次に、図4に示すように、貯湯式給湯器1の外周に四角筒状に巻かれた梱包材10(スリーブ)の上端部に天キャップ15を嵌合し、結束バンド16を周回させて結束することにより、貯湯式給湯器1の梱包が完了する。
【0020】
図5は梱包材10による貯湯式給湯器1の梱包の他の例を示すものである。本例は、貯湯式給湯器1を2回転させて外周に2重に梱包材10を巻き付け、さらに90°回転させて梱包材10が3重に巻かれた補強面14を形成したものである。
【0021】
上記のようにして梱包材10により梱包された貯湯式給湯器1は、図6に示すように、補強面14を下にして運搬車20の荷台21に横積みされる。
また、梱包された貯湯式給湯器1を運搬車20に積み込み又は積み降しするときは、図7に示すように、荷台21の後縁部に補強面14が当るようにして、荷台21にずり上げ又はずり下げる。これにより、少ない人手で荷役を行うことができ、また、貯湯式給湯器1にかかる応力を補強面14で抑制することができるため、損傷や変形を防止することができる。
【0022】
上記の説明では、貯湯式給湯器1を本発明に係る梱包装置10により梱包する場合を示したが、被梱包機器はこれに限定するものではなく、他の機器の梱包にも本発明を実施することができる。
また、外装ケース2内に1台の貯湯タンクを収容した場合を示したが、複数の貯湯タンクを縦方向に配置して外装ケース2内に収容した貯湯式給湯器にも本発明を実施することができる。
【0023】
さらに、貯湯式給湯器1の外周の1つの面に、包装材10を2重又は3重にした補強面14を形成した場合を示したが、梱包する被梱包機器の形状、大きさ、重量などによって、複数の面に補強面14を設けてもよく、また、梱包材10を4重以上に重ね巻きして補強面14を形成してもよい。
【0024】
本発明によれば、被梱包機器である貯湯式給湯器1の外周に、緩衝材である梱包材10を巻き付けてスリーブ状に形成するようにしたので、分割した段ボールを連結して四角筒状のスリーブを形成したり、梱包や開梱の際に貯湯式給湯器の上方に大きな空間部を確保する必要がなく、また、作業者が大型で重いスリーブを扱うこともない。
【0025】
このため、自動化のための大きな設備を必要とせず、ごく簡単な設備で作業場所の制約を受けることなく、容易に梱包、開梱を行うことができるので、作業性が大幅に向上し、コストを低減することができる。また梱包には同じ材料を使用しているので、廃棄の際に分別などの手間を省くことができる。
【0026】
また、貯湯式給湯器1の1面又は複数の面に、梱包材10を2重又はそれ以上に重ねて補強面14を形成したので、運搬、荷役、保管、さらには運搬車への荷積み、積み込み、積み降しの際に、補強面14を下にすることにより貯湯式給湯器1に加わる衝撃が大幅に軽減され、破損や変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 貯湯式給湯器、2 外装ケース、3a〜3b 脚部、4 架台、5 ターンテーブル、10 梱包材、11 梱包材をロール状に巻いた原反、12 基台、13 粘着テープ、14 補強面、15 天キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯式給湯器などの機器の梱包構造であって、
前記機器の外周に巻き付けられたシート状の梱包材を備えたことを特徴とする梱包構造。
【請求項2】
前記機器の外周に巻き付けられた状態の前記梱包材の上端部に嵌合する天キャップを備えたことを特徴とする請求項1記載の梱包構造。
【請求項3】
前記梱包材が、前記機器の外周に重ね巻きされ、この重ね巻きされた梱包材部分により補強面が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の梱包構造。
【請求項4】
前記梱包材が、片面段ボールであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の梱包構造。
【請求項5】
貯湯式給湯器などの機器の梱包方法であって、
前記機器の外周にシート状の梱包材を巻き付け、該梱包材の巻き端部分を固定することを特徴とする梱包方法。
【請求項6】
貯湯式給湯器などの機器の梱包装置であって、
前記機器を回転可能に載置するターンテーブルと、
鉛直方向の軸中心に巻き取り収容されたシート状の梱包材かなるロールを回転さることにより、梱包材を前期ターンテーブル上の機器に向けて供給する梱包材供給部と、
を備え、
前記ターンテーブルを回転させながら、前記梱包材供給部から供給される梱包材を前記機器に巻き付けることを特徴とする梱包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−260558(P2010−260558A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−110588(P2009−110588)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】