説明

梱包構造

【課題】梱包箱およびこれに入れられた製品を含む梱包体の重心位置を容易に調整できるようにすること。
【解決手段】梱包ユニット1は、製品2を入れるための梱包箱3と、梱包箱3の耐圧強度向上用の支柱8とを備えている。支柱8は、梱包箱3のベース9の底面12の四隅のそれぞれに配置されている。支柱8の内部の空間が収容空間25とされている。収容部25には、製品2の同梱物26を収容することができる。
【効果】支柱8内に同梱物26を収容したり収容しなかったりするという簡易な作業で、梱包箱3内において、支柱8が配置されている部分の荷重を増減することができる。その結果、梱包ユニット1、ならびに、梱包ユニット1の梱包箱3内に収容された製品2および同梱物26を含む梱包体27の重心の位置を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、製品を保管・輸送する際に用いられる梱包構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、工場などで製作された製品は、直方体状の梱包箱に入れられた状態で、保管されたり輸送されたりする(たとえば、特許文献1参照)。
また、製品は、緩衝材を取り付けられた状態で梱包される場合がある(たとえば、特許文献2〜4参照)。このうち、特許文献4では、製品を通常の姿勢に対して傾斜させて梱包することにより、製品の重心を梱包箱の底面の中心側に寄せている。上記緩衝材の形状は、たとえば、特許文献5に示すような設計装置を用いて設計されている。
【特許文献1】特開2003−237780号公報
【特許文献2】実用新案登録第2604154号公報
【特許文献3】特開平6−329173号公報
【特許文献4】特開平11−130142号公報
【特許文献5】特開平5−81382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、複写機などの製品には、平面視において、重心が中心から側方にずれている(偏心している)ものがある。通常、製品は、直方体状の梱包箱の中央に配置されるが、このように重心が偏心した製品を、直方体状の梱包箱の中央に配置すると、梱包箱および梱包箱に入れられた製品を含む梱包体の重心も、同様に偏心したものとなる。このため、偏重心の製品を含む梱包体は、輸送時にバランスを崩し易く、倒れを生じるおそれがある。さらに、製品を複数段(たとえば、5段)に重ねて保管しているときにも、バランスを崩して、荷崩れを起こすおそれがある。特に、複写機などの重量物を含む梱包体において、上記の問題が生じやすい。
【0004】
そこで、梱包体を輸送する際に、梱包体の持ち場所を調整して偏重心でも運びやすくすることが考えられる。また、特許文献4に示すように、緩衝材の形状を変更して梱包箱内での製品の位置を変更し、梱包体の重心位置を調整することが考えられる。
しかしながら、製品を輸送する度に梱包体の持ち場所を調整したり、製品の種類ごとに緩衝材の形状をわざわざ変更して梱包体の重心位置を調整するのは、手間がかかってしまう。
【0005】
また、通常、梱包体は複数段に積み重ねられた状態で保管されたり輸送されたりするので、梱包箱に十分な耐圧強度を持たせる必要がある。
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、梱包箱およびこれに入れられた製品を含む梱包体の重心位置を容易に調整することのできる梱包構造を提供することを目的とする。
【0006】
また、この発明の他の目的は、梱包箱の耐圧強度が十分に確保された梱包構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、梱包箱(3)に入れられた製品(2)と当該梱包箱との隙間(S)に挿入される梱包箱の耐圧強度向上用の支柱(8)を有し、当該支柱は、その中に、上記製品と一緒に梱包箱内に入れられる同梱物(26)を収容できる収容空間(25)を有することを特徴とする梱包構造である。
なお、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0008】
この構成によれば、支柱内に同梱物を収容したり収容しなかったりすることで、梱包箱内において、支柱が配置されている部分の荷重を増減することができる。これにより、梱包箱、ならびに、梱包箱に入れられた支柱、製品および同梱物を含む梱包体の重心の位置を調整することができる。したがって、たとえば、重心が中心から側方にずれている(偏心している)製品を梱包した場合でも、梱包体の重心の位置を調整して、梱包体の重心を中心により近づけることができる。その結果、梱包体の荷重バランスをより安定させることができ、たとえば、梱包体を積み重ねて置いたときに、荷崩れが生じることを防止でき、また、梱包体の輸送時にバランスを崩して倒れてしまうことを防止できる。
【0009】
しかも、支柱内に収容する同梱物の数などを調整するという簡易な作業で、上記の効果を奏することができ、手間が掛からない。また、支柱によって梱包箱が補強されて、梱包箱の耐圧強度が向上されている。これにより、たとえば、梱包体が複数段に積み重ねられても、下側に置かれた梱包体の梱包箱が押しつぶされることを防止できる。
請求項2記載の発明は、上記梱包箱は直方体状であり、上記支柱は、梱包箱の四隅に、底面(12)と上面(19)との間に延びるように上下方向に挿入される形態であることを特徴とする請求項1記載の梱包構造である。
【0010】
この構成によれば、支柱が梱包箱の上面の四隅を支持することで、梱包箱の上面に荷重が作用したときの、上面の撓みをより少なくすることができる。これにより、たとえば、上記の梱包体を複数段積み重ねたときでも、下側に置かれた梱包体の梱包箱が変形することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態にかかる梱包構造を備えた梱包ユニットの概略構成を示す図解的な斜視図である。梱包ユニット1は、たとえば、プリンタや複写機などの略直方体状の外形を有する製品2を梱包するためのものである。この梱包ユニット1は、製品2を入れるための梱包箱3と、梱包箱3と製品2との間に介装される緩衝材4,5,6,7と、梱包箱3の上下方向の耐圧強度を向上するための支柱8とを備えている。
【0012】
梱包箱3は、段ボールなどを用いて直方体状に形成されており、ベース9と、本体10と、蓋11とを備えている。
ベース9は、矩形状に形成された底面12を有している。底面12の4辺のそれぞれからは、矩形状の側片13が延設されている。これら各側片13は、底面12に対して上方に屈曲可能となっている。
【0013】
本体10は、ベース9の底面12の上方に配置されており、一体的に形成された4つの側面壁14を有している。各側面壁14は、矩形状に形成されており、隣り合う側面壁14同士は、互いに直交するように接続されている。これにより、本体10は、横断面が矩形状とされている。
ベース9と本体10とは、ジョイント15を用いて互いに連結されている。具体的には、ベース9の各側片13の中央部と、各側面壁14の下端の中央部に、ジョイント15を挿入するための孔16,17が形成されている。ベース9の底面12の4辺と、本体10の下端の4辺(各側面壁14の下端縁)とを当接させた際、上記各孔16と、対応する孔17とは連通している。これら互いに連通する孔16,17にジョイント15が挿入されている(図1において、1つのジョイント15のみを図示)。
【0014】
蓋11は、本体10の上端の開口18を覆うためのものであり、矩形状に形成された上面19を有している。上面19は、本体10の開口18の上方に配置されている。上面19の4辺のそれぞれからは、矩形状の側片20が延設されている。これら各側片20は、上面19に対して下方に折り曲げられている。
ベース9と本体10とを連結する場合と同様に、本体10と蓋11とは、ジョイント21を用いて互いに連結されている。具体的には、本体10の各側面壁14の上端の中央部と、蓋11の各側片20の中央部に、ジョイント21を挿入するための孔22,23が形成されている。本体10の開口18の縁部(各側面壁14の上端縁)と、蓋11の上面19の4辺とを沿わせて開口18を塞いだ状態において、上記各孔22と、対応する孔23とは連通している。これら互いに連通する孔22,23にジョイント21が挿入されている(図1において、1つのジョイント21のみを図示)。
【0015】
緩衝材4,5,6,7は、梱包箱3の内部の形状や、製品2の外形に応じた形状に適宜形成されており、たとえば、製品2の上側および下側のそれぞれに2つ取り付けられている。
図2は、梱包ユニット1の要部の平面図であり、蓋11を取り外した状態を示している。図1および図2に示すように、製品2の上側に取り付けられた2つの緩衝材4,5は、互いに対称な形状に形成されており、製品2の上面および4つの側面の一部を受けている。これら2つの緩衝材4,5は、梱包箱3の本体10の側面壁14に取り囲まれており、側面壁14と製品2とに挟まれている。
【0016】
同様に、製品2の下側に取り付けられた2つの緩衝材6,7は、互いに対称な形状に形成されている。これら2つの緩衝材6,7は、梱包箱3のベース9の底面12上に配置されており、製品2の底面および4つの側面の一部を受けている。また、これら2つの緩衝材6,7は、梱包箱3の本体10の側面壁14に取り囲まれており、側面壁14と製品2とに挟まれて、ベース9の底面12上を滑らないようにされている。
【0017】
支柱8は、上下方向に長手に延びる円筒状の部材であり、たとえば、厚紙を用いて形成されている。支柱8は、梱包箱3の内部に挿入されており、梱包箱3のベース9の底面12の四隅のそれぞれに配置されている。支柱8は、梱包箱3の側面壁14と、梱包箱3に入れられた製品2との間の隙間Sに位置している。また、支柱8は、緩衝材4,5,6,7の長手方向の両端部に形成された切欠き24を通っている。
【0018】
支柱8の全長は、梱包箱3の本体10の上下方向の全長と略等しくされている。支柱8の下端部が梱包箱3のベース9の底面12に受けられているとともに、支柱8の上端部が蓋11の上面19を受けている。
支柱8の内部には、十分な大きさの空間が形成されており、この空間は収容空間25とされている。収容空間25には、製品2と一緒に梱包箱3内に入れられる同梱物26を収容することができる。同梱物26としては、複写機の画像形成時に使用される現像材を収容した現像材ボトルや、現像材カートリッジや、水などの液体を充填したペットボトルを例示することができる。同梱物26は、支柱8の上端の開口を通して、収容空間25内に収容されるようになっている。
【0019】
上記梱包ユニット1、ならびに梱包ユニット1の梱包箱3内に収容された製品2および同梱物26を含む梱包体27が形成されている。製品2は、梱包体27の状態で、保管・輸送されるようになっている。
図2に示すように、平面視において、製品2は、梱包箱3の底面12の中央に配置されている。これにより、梱包箱3の中心HCと製品2の中心SCとは略一致している。しかしながら、製品2の重心SGは、当該製品2の中心SCから側方にずれて(偏心して)おり、このままでは、梱包体27の中心TCに対して、梱包体27の重心TGがずれたものとなってしまう。
【0020】
そこで、この実施形態では、1つの支柱8の収容空間25に、同梱物26が1つ収容されており、梱包箱3の4隅のうち1箇所の荷重が増大されている。これにより、梱包箱3内での荷重のバランスを調整して、梱包体27の中心TCと重心TGとを略一致させている。
以上説明したように、この実施形態によれば、支柱8内に同梱物26を収容したり収容しなかったりすることで、梱包箱3内において、支柱8が配置されている部分の荷重を増減することができる。
【0021】
これにより、梱包体27の重心TGの位置を調整することができる。したがって、偏重心の製品2、すなわち、重心SGが中心SCから側方にずれている製品2を梱包した場合でも、梱包体27の重心TGの位置を調整して、梱包体27の重心TGを中心TCにより近づけることができる。
その結果、梱包体27の荷重バランスをより安定させることができ、たとえば、梱包体27を積み重ねて置いたときに、荷崩れが生じることを防止でき、また、梱包体27の輸送時にバランスを崩して倒れてしまうことを防止できる。
【0022】
しかも、支柱8内に収容する同梱物26の数などを調整するという簡易な作業で、上記の効果を奏することができるので、手間が掛からない。すなわち、製品の種類に応じて緩衝材の形状を変更して梱包箱内での製品の位置を調整することで、梱包体の重心を調整するといった、従来の手間の掛かる構成を採用する必要がない。さらに、梱包体27を輸送するときの持ち場所をわざわざ調整して運び易くする必要がない。
【0023】
また、支柱8によって梱包箱3が補強されて、梱包箱3の上下方向の耐圧強度が向上されている。これにより、たとえば、梱包体27が複数段に積み重ねられても、下側の梱包体27の梱包箱3が押しつぶされることを防止できる。
さらに、支柱8を、梱包箱3の四隅に配置して、梱包箱3の底面12と上面19との間に延びるように上下方向に挿入しているので、支柱8が梱包箱3の上面19の四隅を支持することができ、梱包箱3の上面19に荷重が作用したときの、上面19の撓みをより少なくすることができる。これにより、たとえば、梱包体27を複数段積み重ねたときでも、下側の梱包体27の梱包箱3が変形することを防止できる。
【0024】
なお、この発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。たとえば、2つ、3つ、または4つの支柱8に同梱物26を収容してもよい。また、1つの支柱8に収容される同梱物26の数は、2つ以上でもよい。
さらに、支柱8の数は、1本、2本または3本でもよいし、5本以上でもよい。また、支柱8の形状は、円筒状のものに限らず、多角柱状のものでもよい。さらに、梱包箱3の形状は、直方体状以外の多角柱状でもよいし、円柱状でもよい。
【0025】
また、偏重心していない製品を収容する場合には、支柱8に同梱物を収容しなくてもよいし、各支柱8に収容される同梱物の質量を均一にしてもよい。さらに、製品2の外形は、直方体状のものに限らず、他の形状を有するものであってもよい。
また、製品2を、梱包箱3の底面12の中央に配置していなくてもよい。さらに、製品2は、プリンタや複写機以外の他の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の一実施形態にかかる梱包構造を備えた梱包ユニットの概略構成を示す図解的な斜視図である。
【図2】梱包ユニットの要部の平面図であり、蓋を取り外した状態を示している。
【符号の説明】
【0027】
2 製品
3 梱包箱
8 支柱
12 底面
19 上面
25 収容空間
26 同梱物
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梱包箱に入れられた製品と当該梱包箱との隙間に挿入される梱包箱の耐圧強度向上用の支柱を有し、
当該支柱は、その中に、上記製品と一緒に梱包箱内に入れられる同梱物を収容できる収容空間を有することを特徴とする梱包構造。
【請求項2】
上記梱包箱は直方体状であり、上記支柱は、梱包箱の四隅に、底面と上面との間に延びるように上下方向に挿入される形態であることを特徴とする請求項1記載の梱包構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−51994(P2006−51994A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236101(P2004−236101)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】