椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子
【課題】ロック機構を備える背もたれ用反力機構のデザイン性を向上させる。
【解決手段】ベース部材2に後傾可能に連結された背支持部材4と、座支持部材6と、背支持部材4を後傾させる際に座支持部材6を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材4を原位置に復帰させる反力ばね16とを併用する背もたれ用反力機構であって、反力ばね16をベース部材2と背支持部材4との間であって背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、ベース部材2に対して背支持部材4を係止するロック機構31を備え、ロック機構31はベース部材2と背支持部材4の一方に設けられた凹部32と、他方に設けられた凸部33と、凹部32と凸部33を噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部34とを有し、ロック機構31をベース部材2と座支持部材6との間の内部空間35であって背支持部材4の回転軸7よりも前方に配置している。
【解決手段】ベース部材2に後傾可能に連結された背支持部材4と、座支持部材6と、背支持部材4を後傾させる際に座支持部材6を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材4を原位置に復帰させる反力ばね16とを併用する背もたれ用反力機構であって、反力ばね16をベース部材2と背支持部材4との間であって背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、ベース部材2に対して背支持部材4を係止するロック機構31を備え、ロック機構31はベース部材2と背支持部材4の一方に設けられた凹部32と、他方に設けられた凸部33と、凹部32と凸部33を噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部34とを有し、ロック機構31をベース部材2と座支持部材6との間の内部空間35であって背支持部材4の回転軸7よりも前方に配置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後傾可能な背もたれに対して背もたれを原位置に押し戻そうとする力(本明細書ではロッキング反力と呼ぶ)を発生させる椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子に関する。さらに詳述すると、本発明は、椅子の背もたれの後傾に連動して座を上昇させることにより背もたれを押し戻そうとする力を発生させる体重対応式反力機構とばねを利用した反力機構とを併用する椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後傾可能な椅子の背もたれに対して背もたれを原位置に押し戻そうとする力を発生させる背もたれ用反力機構として、ばねを利用した反力機構とガススプリングを利用した反力機構とを併用するものが提案されている(特許文献1)。特許文献1の反力機構は、図12に示すように、脚101に支持されたベース102と、背もたれ103が取り付けられた背支持部材104と、座105が取り付けられた座支持部材106と、ベース102に背支持部材104を後傾可能に連結する軸107と、ベース102に座支持部材106の前方をスライド可能に連結する軸108と、背支持部材104と座支持部材106の後方を連結する軸109とを備え、背もたれ103の後傾に連動して座支持部材106を斜め後ろに沈み込ませるように構成されている。コイルスプリングを使用した反力機構110及びガススプリングを使用した反力機構111はベース102と背支持部材104との間にそれぞれ設けられており、背支持部材104の後傾によってそれぞれ圧縮され、後傾角度に応じた反力を発生させる。
【0003】
かかる構成の背もたれ用反力機構では、後傾させた背もたれ103を引き起こすだけでなく、着座者の体重が掛かっている座105を元の位置に持ち上げる必要があるため、反力機構110,111を併用し、十分な大きさの反力を得るようにしている。
【0004】
これに対して、着座者の体重を反力として利用する体重対応式反力機構が提案されている(特許文献2)。特許文献2の体重対応式反力機構は、図13に示すように、脚208に支持されたベース209と、背もたれ210が取り付けられた背支持部材203と、座211が取り付けられた座支持部材202と、ベース209に背支持部材203を後傾可能に連結する軸212と、ベース209に座支持部材202の前方を連結する軸201と、座支持部材202に背支持部材203を連結する軸213とを備え、背もたれ210が後傾する際に軸213によって座支持部材202を持ち上げると共に軸201をベース209に設けた長孔200内で上昇させて、座211を持ち上げるように構成されたものである。かかる構成の体重対応式反力機構では、背もたれ210を引き起こし座211を元の位置に戻す反力として着座者の体重を利用することができるので、コイルスプリングやガススプリングを使用して発生させる反力を小さなものにすることができ、反力機構の小型化やコイルスプリングとガススプリングとのいずれか一方の省略が可能となり、構成部品の配置スペースに余裕を持たせることができる。
【0005】
ここで、体重対応式反力機構としては、背もたれの後傾角度を固定するロック機構を備えているものは少ないが、特許文献2には、背支持部材203の側板に複数の孔205を円弧状に並べて設け、ベース209側に設けたシャフトの先端206を各孔205のいずれか1つに挿入することでロックを行う多段式のロック機構207が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207765号公報
【特許文献2】特開2008−212622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のロック機構207では、背支持部材203の側板に複数の孔205を設けているので、ロック機構207が露出しており外観に所謂ごちゃごちゃ感を与えてデザイン性を悪化させている。
【0008】
本発明は、ロック機構を備えているにもかかわらずデザイン性に優れた椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、脚に支持されたベース部材と、該ベース部材に回転軸を介して後傾可能に連結されて背もたれを支える背支持部材と、座が取り付けられた座支持部材と、背支持部材を後傾させる際に座支持部材を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばねとを併用する椅子の背もたれ用反力機構において、反力ばねをベース部材と背支持部材との間であって背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、ベース部材に対して背支持部材を係止するロック機構を備え、ロック機構は、ベース部材と背支持部材とのいずれか一方に設けられた凹部と、ベース部材と背支持部材とのいずれか他方に設けられ、凹部に噛み合い可能な凸部と、凹部と凸部のうちいずれか一方を移動させて凹部と凸部とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部とを有し、且つ、ロック機構をベース部材と座支持部材との間の内部空間であって背支持部材の回転軸よりも前方に配置したものである。
【0010】
ここで、反力ばねを起立状態に配置するとは、鉛直方向又は略鉛直方向に立てた状態を含むがこれらに限られず、広義では寝かせた状態を除くという程度の意味であり、背支持部材の回転軸よりも後ろの狭いスペースに配置できる姿勢であって、背支持部材の傾動に伴い該背支持部材を原位置に復帰させるばね力(ロッキング反力)を発揮させることができる姿勢を含むものである。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、凹部及び凸部を内部空間の幅方向中央位置に設けたものである。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、凹部と凸部のうちいずれか一方を複数段設けたものである。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、駆動部が、凹部と凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、移動する側の部材の移動が可能になると蓄えた力で移動する側の部材を移動させるばねを備えるものである。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、凹部は背支持部材側に、凸部はベース部材側にそれぞれ設けられており、駆動部は凹部に対して凸部を挿入し又は引き抜くことで噛み合わせ又は噛み合い解除を行うものである。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、上述の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の椅子の背もたれ用反力機構によれば、反力ばねを背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に配置することで、背支持部材の回転軸よりも前方の内部空間に反力ばねを配置する必要がなくなり、この空きスペースを利用してロック機構を配置することができる。そのため、ロック機構を内部に隠すことができ、外観がすっきりしてデザイン性を向上させることができる。反力ばねは起立状態に配置されているので、背支持部材の回転軸よりも後ろの空間が仮に前後方向に狭いものであったとしても反力ばねの配置が可能になる。また、ロック機構を備えているので、体重対応式反力機構を併用する構造でありながら、所定の角度で背もたれを固定することができる。さらに、ロック機構は凹部と凸部を噛み合わせてロックを行う構造であり、構造が簡単で製造コストの増加を抑えることができると共に、故障し難く、耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項2記載の椅子の背もたれ用反力機構では、ロック機構の凹部及び凸部を内部空間の幅方向中央位置に設けているので、左右のいずれか一方に凹部及び凸部を片寄って設けた場合のように片側のみをロックして反対側がぐらつくような感覚を与えることがなく、座り心地を向上させることができる。
【0018】
また、請求項3記載の椅子の背もたれ用反力機構では、ロック機構の凹部と凸部のうちのいずれか一方を複数段設けているので、背支持部材を複数の後傾角度に固定することができる。このため、椅子の使い勝手をより向上させることができる。
【0019】
また、請求項4記載の椅子の背もたれ用反力機構では、凹部と凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されている場合(例えば、移動する側の部材が凸部であるときを例にあげると、凹部に凸部を挿入して噛み合わせようとする場合即ちロック解除状態からロックしようとする場合に凹部に対して凸部が対向していないとき、凹部から凸部を引き抜いて噛み合わせを解除しようとする場合即ちロック状態からロックを解除しようとする場合に着座者の体重等の荷重が凹部と凸部の噛み合い部分に作用して凸部を引き抜くことができないとき等。移動する側の部材が凹部であるときも同様。)に移動する側の部材を無理に移動させることが無く、構成部材の破損を防止することができる。また、移動する側の部材が移動できない状態でも駆動部による操作が可能である。移動する側の部材が移動できない状態で駆動部が移動する側の部材を移動させようとすると、移動する側の部材の移動が可能になった時に自動的に移動する側の部材が移動される。したがって、背支持体を後傾させているか否かを気にせずにロック機構の操作を行なうことができる。これらのため、椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0020】
また、請求項5記載の椅子の背もたれ用反力機構では、凹部と凸部の配置が最も合理的となって部品点数を少なくすることができる。また、駆動部をベース部材側に設けることができ、背支持部材の後傾に伴って駆動部が動くのを防止することができる。
【0021】
さらに、請求項6記載の発明では、上述の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の椅子の背もたれ用反力機構の実施形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】同背もたれ用反力機構の横断面図である。
【図3】同背もたれ用反力機構の座支持部材を取り除いた状態の平面図である。
【図4】ロック機構のロック解除状態を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図5】ロック機構のロック状態を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図6】ロック機構の凹部と凸部がずれている状態でロック操作を行った様子を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図7】ロック機構の凹部と凸部の噛み合い部分に荷重が作用している状態でロック解除操作を行った様子を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図8】同背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を示す側面図である。
【図9】同背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を示し、背もたれを後傾させた状態の側面図である。
【図10】本発明の椅子の背もたれ用反力機構の他の実施形態を示し、座支持部材の前部をリンクによって支持する様子を拡大して示す側面図である。
【図11】ロック機構の凹部と凸部を示し、(A)は図1のロック機構を示す概略構成図、(B)はロック機構の第1の変形例を示す概略構成図、(C)はロック機構の第2の変形例を示す概略構成図、(D)はロック機構の第3の変形例を示す概略構成図である。
【図12】従来の体重応答式反力機構を採用した椅子の一例を示す概念図である。
【図13】従来の体重応答式反力機構を採用した椅子の他の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図7に本発明の椅子の背もたれ用反力機構の実施形態の一例を示す。また、この背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を図8及び図9に示す。この背もたれ用反力機構は、椅子の背支持部材4を後傾させる際に座支持部材6を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材4を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばね16を利用した反力機構とを併用するものであり、反力ばね16はベース部材2と背支持部材4との間であって背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に起立状態に配置されている。
【0025】
尚、椅子は、脚1と、脚1に支持されたベース部材2と、背もたれ3が取り付けられた背支持部材4と、座5が取り付けられた座支持部材6とを有し、ベース部材2に対して背支持部材4を回転軸7によって後傾可能に連結する一方、ベース部材2に対して座支持部材6を回転スライド機構10を介して連結すると共に、座支持部材6の中央と背支持部材4の前部とを連結ピン9で回転自在に連結し、背支持部材4の回転軸7を中心とする後傾動作によって背支持部材4の前部を座支持部材6の中央を後ろ上斜め方向へ持ち上げるように回転させて、回転スライド機構10によって座支持部材6の前方を持ち上げる体重対応式反力機構を構成している。また、原位置とは、背支持部材4を後傾させていない状態の位置をいう。
【0026】
本実施形態の回転スライド機構10は座支持部材6の前部に設けられた連結ピン8と当該連結ピン8を後ろ上斜め方向に案内する長孔11とによって構成され、長孔11はベース部材2の前部に設けられている。ただし、回転スライド機構10はかかる構成に限られず、例えば長孔11を座支持部材6の前部に設け、ベース部材2の前部に設けられた連結ピン8に対して長孔11を後ろ上斜め方向に案内することで、座支持部材6の前部を持ち上げるようにしても良い。即ち、長孔11:ベース部材2側、連結ピン8:座支持部材6側としても良いし、長孔11:座支持部材6側、連結ピン8:ベース部材2側としても良い。長孔11の周縁には連結ピン8の滑りを良くするためのスリーブ13が嵌め込まれている。
【0027】
背支持部材4は、背もたれ3を支持すると同時に、背もたれ回転軸7を支点として座支持部材6を持ち上げる梃子として機能するものである。背支持部材4の回転軸7よりも後方の位置には反力ばね16の上端を受ける反力ばね受け部12が設けられている。したがって、着座者が背もたれ3に凭り掛かると背支持部材4は座支持部材6を持ち上げると共に反力ばね16を縮めて反力を発生させる。
【0028】
ベース部材2は、背支持部材4と座支持部材6とを支持して脚1に回転可能に搭載させるためのものであり、背支持部材4,座支持部材6,反力ばね16等の各構成部材を支持する部位と剛性を備えれば良く、特定の構造や形状などに限定されるものではない。本実施形態の場合、ベース部材2の底板2aには脚1の支柱の上端部に締まり嵌めによって固定される円錐筒状の軸受け部2cが設けられている。
【0029】
ここで、反力ばね16としては、本実施形態では圧縮コイルばねが用いられている。圧縮コイルばねから成る反力ばね16は起立状態に配置され、上下両端にはスプリングシート17,17が嵌め込まれている。下側のスプリングシート17はベース部材2の底板2aの後部に設けられた反力ばね受け部2dに、上側のスプリングシート17は背支持部材4の反力ばね受け部12にそれぞれ支持されている。下側のスプリングシート17と反力ばね受け部2dとの間には、反力ばね受け部2dのねじ孔に挿入された調節ねじ21が設けられており、調節ねじ21のねじ込み量を変えて突出量を調節することで反力ばね16の初期圧縮量を調節し、発生する反力の強さを調節可能とされている。ただし、調節ねじ21を省略しても良い。
【0030】
回転軸7はベース部材2の左右の側壁2b,2bと背支持部材4の左右の側壁4a,4aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部7aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを背支持部材4の左右の側壁4a,4aの外側に位置させている。
【0031】
連結ピン8はベース部材2の左右の側壁2b,2bと座支持部材6の左右の側壁6a,6aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部8aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを座支持部材6の左右の側壁6a,6aの外側に位置させている。
【0032】
連結ピン9は背支持部材4の左右の側壁4a,4aと座支持部材6の左右の側壁6a,6aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部9aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを座支持部材6の左右の側壁6a,6aの外側に位置させている。
【0033】
以上のように構成された背もたれ用反力機構によれば、着座者が背もたれ3に凭り掛かると、反力ばね16を押し縮めながら背もたれ3及び背支持部材4が回転軸7を中心に仮想線(図9)で示すように後傾する。同時に、背支持部材4の前部によって座支持部材6が持ち上げられようとするため、座5にかかる着座者の体重が背もたれ3を押し戻す力に変換されて背支持部材4に反力として作用する。このため、体重の重い人ほど背もたれを後傾させるのに大きな力が必要になり、体重の軽い人ほど背もたれを後傾させるのに小さな力で済む。つまり、背もたれを後傾させる力に対するロッキング反力として着座者の体重に応じた大きさのものを得ることができる。一方、着座者が上体を起こそうとすると、体重に起因するロッキング反力の作用と共に反力ばね16が伸びて背支持部材4が前方に起こされる。
【0034】
本発明の背もたれ用反力機構は、ベース部材2に対して背支持部材4を係止するロック機構31を備えている。ロック機構31は、ベース部材2と背支持部材4とのいずれか一方に設けられた凹部32と、ベース部材2と背支持部材4とのいずれか他方に設けられ、凹部32に噛み合い可能な凸部33と、凹部32と凸部33のうちいずれか一方を移動させて凹部32と凸部33とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部34とを有し、且つ、ロック機構31をベース部材2と座支持部材4との間の内部空間35であって背支持部材4の回転軸7よりも前方に配置している。本実施形態では、凹部32と凸部33のうち、凸部33を移動する側の部材とし、凹部32に対して凸部33を挿入して噛み合わせ又は引き抜いて噛み合いを解除させるようにしているが、凹部32を移動する側の部材とし、凸部33に対して凹部32を移動させて噛み合わせ又は噛み合いを解除するようにしても良い(図11(B)参照)。また、本実施形態では、ベース部材2側に凸部33を設けると共に、背支持部材4側に凹部32を設けている。このような配置にすることで、凹部32と凸部33の配置が最も合理的なものとなり、構成部品の点数を少なくすることができる。ただし、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、ベース部材2側に凹部32を設けても良い(図11(C)参照)。また、本実施形態では、ベース部材2側に駆動部34を設けているが、背支持部材4側に駆動部34を設けても良い。駆動部34をベース部材2側に設けることで、背支持部材4の後傾に伴って操作レバー46やシャフト45が動くのを防止することができる。
【0035】
本実施形態の凹部32は、背支持部材4に取り付けられて背支持部材4と一体となって回転軸7まわりに回転する回転体36に設けられている。本実施形態では、回転軸7と連結ピン9を回転体36に貫通させることで回転体36を背支持部材4に一体化させている。また、本実施形態では、凹部32形成の容易性等を考慮して回転体36を凹部32となる切り欠きを有する同一形状の複数の板材を重ね合わせて固着させることで形成しているが、回転体36の構成はこれに限られない。さらに、本実施形態では、凹部32は背支持部材4の回転方向に複数段設けられているが、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けても良い(図11(D)参照)。本実施形態では凹部32を3段設けているが、その段数は3段に限られない。
【0036】
本実施形態の凸部33は、両側部がベース部材2に取り付けられたケース部材37にスライド可能に収容されたスライドプレート38の後端部分で構成されている。スライドプレート38は凹部32に向けて突出可能になっている。ケース部材37は2枚の板状部材39,40を重ね合わせることで形成され、下側の板状部材39の中央部分を下方に向けて折り曲げることで上側の板状部材40との間に空間を設け、この空間にスライドプレート38が収容されている。上側の板状部材40の前端部は下方に向けて折り曲げられてばね受け部41を形成している。スライドプレート38の前部中央には切り欠き38aが設けられており、この切り欠き38aとばね受け部41との間に後述する第1のばね42が収容されている。下側の板状部材39とスライドプレート38のほぼ中央には、後述する第2のばね43の先端側延出部43aを挿入するスリット38b,39aが設けられている。
【0037】
本実施形態の駆動部34は、入力側回転体44及びシャフト45を備えている。また、本実施形態の駆動部34は、移動する側の部材である凸部33の移動(凹部32への挿入または凹部32からの引き抜き)が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、凸部33の移動が可能になると蓄えた力で凸部33を移動させるばねを備えており、ロック機構31に自己保持機能を持たせている。
【0038】
本実施形態では、自己保持機能を持たせるためのばねとして、凸部33の凹部32への挿入が制限されているときに弾性変形することでばね力を蓄え、凸部33の凹部32への挿入が可能になると蓄えたばね力で凸部33を移動させる第1のばね42と、凸部33の凹部32からの引き抜きが制限されているときに弾性変形することで凸部33を引き抜こうとする変位を吸収してばね力を蓄え、凸部33の凹部32からの引き抜きが可能になると蓄えたばね力で凸部33を移動させる第2のばね43を備えている。即ち、凸部33挿入側の第1のばね42と、凸部33引き抜き側の第2のばね43とを備えている。第1のばね42は第2のばね43よりも弱く設定されている。
【0039】
第1のばね42は凸部33を凹部32に向けて常時付勢するもので、スライドプレート38とケース部材37との間に設けられている。本実施形態では、第1のばね42としてコイルスプリングを使用し、スライドプレート38に設けた切り欠き38aとばね受け部41との間に若干縮めた状態で配置しているが、必ずしもこの構成に限られない。
【0040】
第2のばね43は着座者による操作力を凸部33に伝達するもので、スライドプレート38と操作レバー46の間に設けられている。本実施形態では、第2のばね43としてコイルスプリングを使用し、操作レバー46によって回転操作されるシャフト45の周囲に同軸状に配置すると共に、基端側の延出部43bをシャフト45に嵌め込まれた入力側回転体44に係止し、先端側の延出部43aを下側の板状部材39のスリット39aを通してスライドプレート38のスリット38bに挿入しているが、必ずしもこの構成に限られない。シャフト45とシャフト45に嵌め込まれた入力側回転体44との間にはキー47が設けられており、シャフト45の回転によって入力側回転体44が回転される。シャフト45は軸受け部48と図示しない軸受け部とによってベース部材2に回転自在に支持されており、ベース部材2から椅子の幅方向に延出させた先端には操作レバー46が取り付けられている。入力側回転体44とベース部材2との間には、入力側回転体44をロック位置(図5(B)の位置)とロック解除位置(図4(B)の位置)とに弱い力で軽く係止する位置決め用の弾性体49が設けられている。
【0041】
凹部32及び凸部33は、内部空間35の幅方向中央位置に設けられている。そのため、背支持部材4のロックについて左右両側のバランスを保つことができ、左右のいずれか一方のみをロックして反対側がぐらつくような感覚を与えることがなく、椅子の座り心地を向上させることができる。本発明では、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置しており、回転軸7よりも前の位置にスペース的な余裕ができるため、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に配置することが可能になる。なお、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に配置する代わりに左右両側位置にそれぞれ設けることでロックの左右のバランスを保つようにしても良い。
【0042】
また、本実施形態では、複数枚の板材を重ね合わせた回転体36に凹部32を形成することで凹部32の幅にある程度の長さを確保すると共に、スライドプレート38の後端部分を凸部33にすることで凸部33の幅にもある程度の長さを確保している。即ち、凹部32と凸部33の噛み合い部分にある程度の幅を持たせることができ、係止構造として十分な強度を確保することができる。本発明では、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置しており、回転軸7よりも前の位置にスペース的な余裕ができるため、幅広の凹部32と凸部33を配置することが可能になる。
【0043】
次に、ロック機構31の作動について説明する。操作レバー46が操作されていないロック解除状態では、入力側回転体44がロック解除位置(図4(B)の位置)に移動しており、第2のばね43の先端側延出部43aを凹部32から離れる方向に移動させているので、先端側延出部43aが第1のばね42のばね力に抗してスライドプレート38を凹部32から離れる方向に移動させ、凸部33を凹部32から引き抜いている(図4)。即ち、ロック機構31のロックが解除されている。この状態では、ばね力の強い第2のばね43がばね力の弱い第1のばね42を押し縮めて凸部33を凹部32から引き抜いている。
【0044】
この状態より、操作レバー46が操作されて入力側回転体44がロック位置(図5(B)の位置)に移動されると、第2のばね43の先端側延出部43aが下側の板状部材39のスリット39a内を凹部32側に移動し、この移動に伴って第1のばね42がスライドプレート38を凹部32に向けて移動させる。このとき、凸部33が凹部32に対向している場合には、凸部33はそのまま凹部32に挿入され、ロック機構31がロックされる(図5)。ロック機構31のロックにより、回転体36及び背支持部材4が回転軸7まわりに回転することができなくなるので、背支持部材4の角度が固定される。
【0045】
一方、凸部33と凹部32の高さがずれており、凸部33が凹部32に対向していない場合(凸部33の凹部32への挿入が制限される場合)には、凸部33(スライドプレート38)は回転体36に当たって停止し、第2のばね43の先端側延出部43aは停止したスライドプレート38のスリット38b内を凹部32側に移動(空移動)する(図6)。この状態では、第1のばね42が弾性変形することで凸部33が凹部32に挿入可能になった時に凸部33を凹部32に挿入させるばね力を蓄えている。したがって、背支持部材4の後傾角度が調整されることで凹部32が移動し、凸部33が凹部32に対向すると、第1のばね42に蓄えられたばね力によってスライドプレート38が移動され、凸部33が凹部32に挿入されてロック機構31がロックされる(図5)。なお、スライドプレート38の移動に伴い、第2のばね43の先端側延出部43aはスライドプレート38のスリット38b内を相対的に移動することになる。このように、ロック機構31をロックすることができない状態でロック操作を行なってもスライドプレート38を無理に移動させることがないので、構成部材の破損を防止することができる。また、スライドプレート38が移動できない状態でも入力側回転体44を回転させることが可能であり、移動可能になった段階でスライドプレート38が自動的に移動されるので、背支持部材4の後傾角度を気にせずに操作を行うことができる。このように入力側(入力側回転体44)の動きに出力側(凸部33)の動きを対応させることができない場合に入力側の動きを吸収して力を蓄えておき、対応可能になった時に蓄えた力を利用して出力側を動かす自己保持機能を有しており、背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0046】
また、ロック機構31のロックを解除するために操作レバー46が操作されて入力側回転体44がロック解除位置(図4(B)の位置)に戻されると、第2のばね43の先端側延出部43aが下側の板状部材39のスリット39a内を凹部32から離れる方向に移動し、第1のばね42のばね力に抗してスライドプレート38を凹部32から離れる方向に移動させる。このとき、凹部32と凸部33の噛み合い部分に着座者の体重等の荷重が作用していない場合又は作用する荷重が小さい場合には、凸部33を凹部32からそのまま引き抜くことができ、ロック機構31のロックが解除される(図4)。ロック機構31のロック解除により、回転体36及び背支持部材4が回転軸7まわりに回転できるようになるので、背支持部材4の後傾角度を調節することができる。
【0047】
一方、凹部32と凸部33の噛み合い部分に大きな荷重が作用しており、凹部32と凸部33との間に発生する摩擦力によって凸部33を凹部32から引き抜くことができない場合(凸部33の凹部32からの引き抜きが制限される場合)には、第2のばね43の先端側延出部43aはスライドプレート38のスリット38b内を凹部32から離れる方向に移動(空移動)する。そして、スリット38bの端まで移動して空移動できなくなると弾性変形し、凸部33を引き抜こうとする入力側回転体44の変位を吸収して凸部33を引き抜き可能になった時に凸部33を凹部32から引き抜くばね力を蓄える(図7)。したがって、凹部32と凸部33の噛み合い部分に作用する大きな荷重が除去されると又は減少すると、第2のばね43の先端側延出部43aに蓄えられたばね力によってスライドプレート38を移動させ、凸部33が凹部32から引き抜かれてロック機構31のロックが解除される(図4)。このように、ロック機構31のロックを解除することができない状態でロック解除操作を行なってもスライドプレート38を無理に移動させることがないので、構成部材の破損を防止することができる。また、スライドプレート38が移動できない状態でも入力側回転体44を回転させる操作が可能であり、移動可能になった段階でスライドプレート38が自動的に移動されるので、背支持部材4の後傾角度を気にせずに操作を行うことができる。このように入力側(入力側回転体44)の動きに出力側(凸部33)の動きを対応させることができない場合に入力側の動きを吸収してばね力を蓄えておき、対応可能になった時に蓄えたばね力を利用して出力側を動かす自己保持機能を有しており、背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0048】
凸部33を挿入する複数の凹部32を代えることで、背支持部材4のロックを行う後傾角度を調節することができる。
【0049】
発明の背もたれ用反力機構によれば、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置することで、回転軸7よりも前方の内部空間35に反力ばね16を配置する必要がなくなり、この空きスペースを利用してロック機構31を配置することができる。そのため、ロック機構31を内部に隠すことができ、外観がすっきりしてデザイン性を向上させることができる。また、ロック機構31を備えているので、体重対応式反力機構を併用する構造でありながら、所定の角度で背支持部材4を固定することができる。さらに、ロック機構31は凹部32に凸部33を挿入させてロックを行う構造であり、構造が簡単で製造コストの増加を抑えることができると共に、故障し難く、耐久性を向上させることができる。
【0050】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0051】
例えば、上述の説明では、凹部32を複数段設けていたが、1段だけ設けるようにしても良い。1段の場合、背支持部材4の原位置に対応する位置に凹部32を設けることが好ましいが、この位置でなくても良い。
【0052】
また、上述の説明では、ロック機構31の凹部32を背支持部材4側に設けると共に、凸部33をベース部材2側に設けていたが、凸部33を背支持部材4側に設けると共に、凹部32をベース部材2側に設けるようにしても良い。この場合にも、上述のロック機構31と同様に、背支持部材4の後傾角度を固定することができると共に、自己保持機能を持たせることもできる。
【0053】
また、上述の説明では、ロック機構31の駆動部34に第1のばね42及び第2のばね43を設けて自己保持機能を持たせていたが、入力側回転体44と凸部33とをリンク等の連結手段で連結し、第1のばね42及び第2のばね43を省略して自己保持機能を省いても良い。この場合には自己保持機能が無いことから使い勝手に若干劣ることになるが、部品点数の減少により製造コストを安くすることができる。
【0054】
また、上述の説明では、操作レバー46の操作力をシャフト45によって入力側回転体44に伝えていたが、必ずしもこの構成に限られるものではなく、例えば、ワイヤ、リンク等の伝達手段によって入力側回転体44に伝達するようにしても良い。
【0055】
さらに、上述の説明では、ベース部材2に対して座支持部材6の前部を回転スライド機構10によって後ろ上斜め方向に持ち上げるようにしていたが、座支持部材6の前部を後ろ上斜め方向に持ち上げる手段としてはこれに限るものではなく、例えば図10に示すようにリンク50によって座支持部材6の前部を後ろ上斜め方向に持ち上げるようにしても良い。
【0056】
また、上述の説明では、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に設けてロックの左右のバランスを保つようにしていたが、必ずしも幅方向中央位置に設けなくても良い。
【0057】
なお、上述の説明では、図11(A)に示すように、ベース部材2側に凸部33を設け、背支持部材4側に凹部32を設けると共に、凸部33を駆動部34による移動する側の部材とし、凹部32を背支持部材4の回転方向に複数段設けていたが、必ずしもこの構成に限られない。例えば、図11(B)に、ベース部材2側に凹部32を設け、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、凹部32を駆動部34による移動する側の部材とし、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【0058】
また、図11(C)に、ベース部材2側に凹部32を設け、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、凸部33を駆動部34による移動する側の部材とし、凹部32を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【0059】
また、図11(D)に、ベース部材2側に凸部33を設け、背支持部材4側に凹部32を設けると共に、凹部32を駆動部34による移動する側の部材とし、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 脚
2 ベース部材
2b ベース部材の側壁
3 背もたれ
4 背支持部材
5 座
6 座支持部材
7 背支持部材の回転軸
16 反力ばね
31 ロック機構
32 凹部
33 凸部
34 駆動部
35 内部空間
42 第1のばね
43 第2のばね
【技術分野】
【0001】
本発明は、後傾可能な背もたれに対して背もたれを原位置に押し戻そうとする力(本明細書ではロッキング反力と呼ぶ)を発生させる椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子に関する。さらに詳述すると、本発明は、椅子の背もたれの後傾に連動して座を上昇させることにより背もたれを押し戻そうとする力を発生させる体重対応式反力機構とばねを利用した反力機構とを併用する椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後傾可能な椅子の背もたれに対して背もたれを原位置に押し戻そうとする力を発生させる背もたれ用反力機構として、ばねを利用した反力機構とガススプリングを利用した反力機構とを併用するものが提案されている(特許文献1)。特許文献1の反力機構は、図12に示すように、脚101に支持されたベース102と、背もたれ103が取り付けられた背支持部材104と、座105が取り付けられた座支持部材106と、ベース102に背支持部材104を後傾可能に連結する軸107と、ベース102に座支持部材106の前方をスライド可能に連結する軸108と、背支持部材104と座支持部材106の後方を連結する軸109とを備え、背もたれ103の後傾に連動して座支持部材106を斜め後ろに沈み込ませるように構成されている。コイルスプリングを使用した反力機構110及びガススプリングを使用した反力機構111はベース102と背支持部材104との間にそれぞれ設けられており、背支持部材104の後傾によってそれぞれ圧縮され、後傾角度に応じた反力を発生させる。
【0003】
かかる構成の背もたれ用反力機構では、後傾させた背もたれ103を引き起こすだけでなく、着座者の体重が掛かっている座105を元の位置に持ち上げる必要があるため、反力機構110,111を併用し、十分な大きさの反力を得るようにしている。
【0004】
これに対して、着座者の体重を反力として利用する体重対応式反力機構が提案されている(特許文献2)。特許文献2の体重対応式反力機構は、図13に示すように、脚208に支持されたベース209と、背もたれ210が取り付けられた背支持部材203と、座211が取り付けられた座支持部材202と、ベース209に背支持部材203を後傾可能に連結する軸212と、ベース209に座支持部材202の前方を連結する軸201と、座支持部材202に背支持部材203を連結する軸213とを備え、背もたれ210が後傾する際に軸213によって座支持部材202を持ち上げると共に軸201をベース209に設けた長孔200内で上昇させて、座211を持ち上げるように構成されたものである。かかる構成の体重対応式反力機構では、背もたれ210を引き起こし座211を元の位置に戻す反力として着座者の体重を利用することができるので、コイルスプリングやガススプリングを使用して発生させる反力を小さなものにすることができ、反力機構の小型化やコイルスプリングとガススプリングとのいずれか一方の省略が可能となり、構成部品の配置スペースに余裕を持たせることができる。
【0005】
ここで、体重対応式反力機構としては、背もたれの後傾角度を固定するロック機構を備えているものは少ないが、特許文献2には、背支持部材203の側板に複数の孔205を円弧状に並べて設け、ベース209側に設けたシャフトの先端206を各孔205のいずれか1つに挿入することでロックを行う多段式のロック機構207が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207765号公報
【特許文献2】特開2008−212622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のロック機構207では、背支持部材203の側板に複数の孔205を設けているので、ロック機構207が露出しており外観に所謂ごちゃごちゃ感を与えてデザイン性を悪化させている。
【0008】
本発明は、ロック機構を備えているにもかかわらずデザイン性に優れた椅子の背もたれ用反力機構及びこれを組み込んだ椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、脚に支持されたベース部材と、該ベース部材に回転軸を介して後傾可能に連結されて背もたれを支える背支持部材と、座が取り付けられた座支持部材と、背支持部材を後傾させる際に座支持部材を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばねとを併用する椅子の背もたれ用反力機構において、反力ばねをベース部材と背支持部材との間であって背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、ベース部材に対して背支持部材を係止するロック機構を備え、ロック機構は、ベース部材と背支持部材とのいずれか一方に設けられた凹部と、ベース部材と背支持部材とのいずれか他方に設けられ、凹部に噛み合い可能な凸部と、凹部と凸部のうちいずれか一方を移動させて凹部と凸部とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部とを有し、且つ、ロック機構をベース部材と座支持部材との間の内部空間であって背支持部材の回転軸よりも前方に配置したものである。
【0010】
ここで、反力ばねを起立状態に配置するとは、鉛直方向又は略鉛直方向に立てた状態を含むがこれらに限られず、広義では寝かせた状態を除くという程度の意味であり、背支持部材の回転軸よりも後ろの狭いスペースに配置できる姿勢であって、背支持部材の傾動に伴い該背支持部材を原位置に復帰させるばね力(ロッキング反力)を発揮させることができる姿勢を含むものである。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、凹部及び凸部を内部空間の幅方向中央位置に設けたものである。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、凹部と凸部のうちいずれか一方を複数段設けたものである。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、駆動部が、凹部と凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、移動する側の部材の移動が可能になると蓄えた力で移動する側の部材を移動させるばねを備えるものである。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、凹部は背支持部材側に、凸部はベース部材側にそれぞれ設けられており、駆動部は凹部に対して凸部を挿入し又は引き抜くことで噛み合わせ又は噛み合い解除を行うものである。
【0015】
また、請求項6記載の発明は、上述の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の椅子の背もたれ用反力機構によれば、反力ばねを背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に配置することで、背支持部材の回転軸よりも前方の内部空間に反力ばねを配置する必要がなくなり、この空きスペースを利用してロック機構を配置することができる。そのため、ロック機構を内部に隠すことができ、外観がすっきりしてデザイン性を向上させることができる。反力ばねは起立状態に配置されているので、背支持部材の回転軸よりも後ろの空間が仮に前後方向に狭いものであったとしても反力ばねの配置が可能になる。また、ロック機構を備えているので、体重対応式反力機構を併用する構造でありながら、所定の角度で背もたれを固定することができる。さらに、ロック機構は凹部と凸部を噛み合わせてロックを行う構造であり、構造が簡単で製造コストの増加を抑えることができると共に、故障し難く、耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、請求項2記載の椅子の背もたれ用反力機構では、ロック機構の凹部及び凸部を内部空間の幅方向中央位置に設けているので、左右のいずれか一方に凹部及び凸部を片寄って設けた場合のように片側のみをロックして反対側がぐらつくような感覚を与えることがなく、座り心地を向上させることができる。
【0018】
また、請求項3記載の椅子の背もたれ用反力機構では、ロック機構の凹部と凸部のうちのいずれか一方を複数段設けているので、背支持部材を複数の後傾角度に固定することができる。このため、椅子の使い勝手をより向上させることができる。
【0019】
また、請求項4記載の椅子の背もたれ用反力機構では、凹部と凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されている場合(例えば、移動する側の部材が凸部であるときを例にあげると、凹部に凸部を挿入して噛み合わせようとする場合即ちロック解除状態からロックしようとする場合に凹部に対して凸部が対向していないとき、凹部から凸部を引き抜いて噛み合わせを解除しようとする場合即ちロック状態からロックを解除しようとする場合に着座者の体重等の荷重が凹部と凸部の噛み合い部分に作用して凸部を引き抜くことができないとき等。移動する側の部材が凹部であるときも同様。)に移動する側の部材を無理に移動させることが無く、構成部材の破損を防止することができる。また、移動する側の部材が移動できない状態でも駆動部による操作が可能である。移動する側の部材が移動できない状態で駆動部が移動する側の部材を移動させようとすると、移動する側の部材の移動が可能になった時に自動的に移動する側の部材が移動される。したがって、背支持体を後傾させているか否かを気にせずにロック機構の操作を行なうことができる。これらのため、椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0020】
また、請求項5記載の椅子の背もたれ用反力機構では、凹部と凸部の配置が最も合理的となって部品点数を少なくすることができる。また、駆動部をベース部材側に設けることができ、背支持部材の後傾に伴って駆動部が動くのを防止することができる。
【0021】
さらに、請求項6記載の発明では、上述の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の椅子の背もたれ用反力機構の実施形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】同背もたれ用反力機構の横断面図である。
【図3】同背もたれ用反力機構の座支持部材を取り除いた状態の平面図である。
【図4】ロック機構のロック解除状態を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図5】ロック機構のロック状態を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図6】ロック機構の凹部と凸部がずれている状態でロック操作を行った様子を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図7】ロック機構の凹部と凸部の噛み合い部分に荷重が作用している状態でロック解除操作を行った様子を示し、(A)はその平面図、(B)は縦断面図である。
【図8】同背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を示す側面図である。
【図9】同背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を示し、背もたれを後傾させた状態の側面図である。
【図10】本発明の椅子の背もたれ用反力機構の他の実施形態を示し、座支持部材の前部をリンクによって支持する様子を拡大して示す側面図である。
【図11】ロック機構の凹部と凸部を示し、(A)は図1のロック機構を示す概略構成図、(B)はロック機構の第1の変形例を示す概略構成図、(C)はロック機構の第2の変形例を示す概略構成図、(D)はロック機構の第3の変形例を示す概略構成図である。
【図12】従来の体重応答式反力機構を採用した椅子の一例を示す概念図である。
【図13】従来の体重応答式反力機構を採用した椅子の他の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の構成を図面に示す形態に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1〜図7に本発明の椅子の背もたれ用反力機構の実施形態の一例を示す。また、この背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子を図8及び図9に示す。この背もたれ用反力機構は、椅子の背支持部材4を後傾させる際に座支持部材6を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と背支持部材4を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばね16を利用した反力機構とを併用するものであり、反力ばね16はベース部材2と背支持部材4との間であって背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に起立状態に配置されている。
【0025】
尚、椅子は、脚1と、脚1に支持されたベース部材2と、背もたれ3が取り付けられた背支持部材4と、座5が取り付けられた座支持部材6とを有し、ベース部材2に対して背支持部材4を回転軸7によって後傾可能に連結する一方、ベース部材2に対して座支持部材6を回転スライド機構10を介して連結すると共に、座支持部材6の中央と背支持部材4の前部とを連結ピン9で回転自在に連結し、背支持部材4の回転軸7を中心とする後傾動作によって背支持部材4の前部を座支持部材6の中央を後ろ上斜め方向へ持ち上げるように回転させて、回転スライド機構10によって座支持部材6の前方を持ち上げる体重対応式反力機構を構成している。また、原位置とは、背支持部材4を後傾させていない状態の位置をいう。
【0026】
本実施形態の回転スライド機構10は座支持部材6の前部に設けられた連結ピン8と当該連結ピン8を後ろ上斜め方向に案内する長孔11とによって構成され、長孔11はベース部材2の前部に設けられている。ただし、回転スライド機構10はかかる構成に限られず、例えば長孔11を座支持部材6の前部に設け、ベース部材2の前部に設けられた連結ピン8に対して長孔11を後ろ上斜め方向に案内することで、座支持部材6の前部を持ち上げるようにしても良い。即ち、長孔11:ベース部材2側、連結ピン8:座支持部材6側としても良いし、長孔11:座支持部材6側、連結ピン8:ベース部材2側としても良い。長孔11の周縁には連結ピン8の滑りを良くするためのスリーブ13が嵌め込まれている。
【0027】
背支持部材4は、背もたれ3を支持すると同時に、背もたれ回転軸7を支点として座支持部材6を持ち上げる梃子として機能するものである。背支持部材4の回転軸7よりも後方の位置には反力ばね16の上端を受ける反力ばね受け部12が設けられている。したがって、着座者が背もたれ3に凭り掛かると背支持部材4は座支持部材6を持ち上げると共に反力ばね16を縮めて反力を発生させる。
【0028】
ベース部材2は、背支持部材4と座支持部材6とを支持して脚1に回転可能に搭載させるためのものであり、背支持部材4,座支持部材6,反力ばね16等の各構成部材を支持する部位と剛性を備えれば良く、特定の構造や形状などに限定されるものではない。本実施形態の場合、ベース部材2の底板2aには脚1の支柱の上端部に締まり嵌めによって固定される円錐筒状の軸受け部2cが設けられている。
【0029】
ここで、反力ばね16としては、本実施形態では圧縮コイルばねが用いられている。圧縮コイルばねから成る反力ばね16は起立状態に配置され、上下両端にはスプリングシート17,17が嵌め込まれている。下側のスプリングシート17はベース部材2の底板2aの後部に設けられた反力ばね受け部2dに、上側のスプリングシート17は背支持部材4の反力ばね受け部12にそれぞれ支持されている。下側のスプリングシート17と反力ばね受け部2dとの間には、反力ばね受け部2dのねじ孔に挿入された調節ねじ21が設けられており、調節ねじ21のねじ込み量を変えて突出量を調節することで反力ばね16の初期圧縮量を調節し、発生する反力の強さを調節可能とされている。ただし、調節ねじ21を省略しても良い。
【0030】
回転軸7はベース部材2の左右の側壁2b,2bと背支持部材4の左右の側壁4a,4aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部7aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを背支持部材4の左右の側壁4a,4aの外側に位置させている。
【0031】
連結ピン8はベース部材2の左右の側壁2b,2bと座支持部材6の左右の側壁6a,6aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部8aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを座支持部材6の左右の側壁6a,6aの外側に位置させている。
【0032】
連結ピン9は背支持部材4の左右の側壁4a,4aと座支持部材6の左右の側壁6a,6aを貫通し、その基端に設けられたヘッド部9aとその先端を係止する抜け止め用リング22とを座支持部材6の左右の側壁6a,6aの外側に位置させている。
【0033】
以上のように構成された背もたれ用反力機構によれば、着座者が背もたれ3に凭り掛かると、反力ばね16を押し縮めながら背もたれ3及び背支持部材4が回転軸7を中心に仮想線(図9)で示すように後傾する。同時に、背支持部材4の前部によって座支持部材6が持ち上げられようとするため、座5にかかる着座者の体重が背もたれ3を押し戻す力に変換されて背支持部材4に反力として作用する。このため、体重の重い人ほど背もたれを後傾させるのに大きな力が必要になり、体重の軽い人ほど背もたれを後傾させるのに小さな力で済む。つまり、背もたれを後傾させる力に対するロッキング反力として着座者の体重に応じた大きさのものを得ることができる。一方、着座者が上体を起こそうとすると、体重に起因するロッキング反力の作用と共に反力ばね16が伸びて背支持部材4が前方に起こされる。
【0034】
本発明の背もたれ用反力機構は、ベース部材2に対して背支持部材4を係止するロック機構31を備えている。ロック機構31は、ベース部材2と背支持部材4とのいずれか一方に設けられた凹部32と、ベース部材2と背支持部材4とのいずれか他方に設けられ、凹部32に噛み合い可能な凸部33と、凹部32と凸部33のうちいずれか一方を移動させて凹部32と凸部33とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部34とを有し、且つ、ロック機構31をベース部材2と座支持部材4との間の内部空間35であって背支持部材4の回転軸7よりも前方に配置している。本実施形態では、凹部32と凸部33のうち、凸部33を移動する側の部材とし、凹部32に対して凸部33を挿入して噛み合わせ又は引き抜いて噛み合いを解除させるようにしているが、凹部32を移動する側の部材とし、凸部33に対して凹部32を移動させて噛み合わせ又は噛み合いを解除するようにしても良い(図11(B)参照)。また、本実施形態では、ベース部材2側に凸部33を設けると共に、背支持部材4側に凹部32を設けている。このような配置にすることで、凹部32と凸部33の配置が最も合理的なものとなり、構成部品の点数を少なくすることができる。ただし、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、ベース部材2側に凹部32を設けても良い(図11(C)参照)。また、本実施形態では、ベース部材2側に駆動部34を設けているが、背支持部材4側に駆動部34を設けても良い。駆動部34をベース部材2側に設けることで、背支持部材4の後傾に伴って操作レバー46やシャフト45が動くのを防止することができる。
【0035】
本実施形態の凹部32は、背支持部材4に取り付けられて背支持部材4と一体となって回転軸7まわりに回転する回転体36に設けられている。本実施形態では、回転軸7と連結ピン9を回転体36に貫通させることで回転体36を背支持部材4に一体化させている。また、本実施形態では、凹部32形成の容易性等を考慮して回転体36を凹部32となる切り欠きを有する同一形状の複数の板材を重ね合わせて固着させることで形成しているが、回転体36の構成はこれに限られない。さらに、本実施形態では、凹部32は背支持部材4の回転方向に複数段設けられているが、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けても良い(図11(D)参照)。本実施形態では凹部32を3段設けているが、その段数は3段に限られない。
【0036】
本実施形態の凸部33は、両側部がベース部材2に取り付けられたケース部材37にスライド可能に収容されたスライドプレート38の後端部分で構成されている。スライドプレート38は凹部32に向けて突出可能になっている。ケース部材37は2枚の板状部材39,40を重ね合わせることで形成され、下側の板状部材39の中央部分を下方に向けて折り曲げることで上側の板状部材40との間に空間を設け、この空間にスライドプレート38が収容されている。上側の板状部材40の前端部は下方に向けて折り曲げられてばね受け部41を形成している。スライドプレート38の前部中央には切り欠き38aが設けられており、この切り欠き38aとばね受け部41との間に後述する第1のばね42が収容されている。下側の板状部材39とスライドプレート38のほぼ中央には、後述する第2のばね43の先端側延出部43aを挿入するスリット38b,39aが設けられている。
【0037】
本実施形態の駆動部34は、入力側回転体44及びシャフト45を備えている。また、本実施形態の駆動部34は、移動する側の部材である凸部33の移動(凹部32への挿入または凹部32からの引き抜き)が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、凸部33の移動が可能になると蓄えた力で凸部33を移動させるばねを備えており、ロック機構31に自己保持機能を持たせている。
【0038】
本実施形態では、自己保持機能を持たせるためのばねとして、凸部33の凹部32への挿入が制限されているときに弾性変形することでばね力を蓄え、凸部33の凹部32への挿入が可能になると蓄えたばね力で凸部33を移動させる第1のばね42と、凸部33の凹部32からの引き抜きが制限されているときに弾性変形することで凸部33を引き抜こうとする変位を吸収してばね力を蓄え、凸部33の凹部32からの引き抜きが可能になると蓄えたばね力で凸部33を移動させる第2のばね43を備えている。即ち、凸部33挿入側の第1のばね42と、凸部33引き抜き側の第2のばね43とを備えている。第1のばね42は第2のばね43よりも弱く設定されている。
【0039】
第1のばね42は凸部33を凹部32に向けて常時付勢するもので、スライドプレート38とケース部材37との間に設けられている。本実施形態では、第1のばね42としてコイルスプリングを使用し、スライドプレート38に設けた切り欠き38aとばね受け部41との間に若干縮めた状態で配置しているが、必ずしもこの構成に限られない。
【0040】
第2のばね43は着座者による操作力を凸部33に伝達するもので、スライドプレート38と操作レバー46の間に設けられている。本実施形態では、第2のばね43としてコイルスプリングを使用し、操作レバー46によって回転操作されるシャフト45の周囲に同軸状に配置すると共に、基端側の延出部43bをシャフト45に嵌め込まれた入力側回転体44に係止し、先端側の延出部43aを下側の板状部材39のスリット39aを通してスライドプレート38のスリット38bに挿入しているが、必ずしもこの構成に限られない。シャフト45とシャフト45に嵌め込まれた入力側回転体44との間にはキー47が設けられており、シャフト45の回転によって入力側回転体44が回転される。シャフト45は軸受け部48と図示しない軸受け部とによってベース部材2に回転自在に支持されており、ベース部材2から椅子の幅方向に延出させた先端には操作レバー46が取り付けられている。入力側回転体44とベース部材2との間には、入力側回転体44をロック位置(図5(B)の位置)とロック解除位置(図4(B)の位置)とに弱い力で軽く係止する位置決め用の弾性体49が設けられている。
【0041】
凹部32及び凸部33は、内部空間35の幅方向中央位置に設けられている。そのため、背支持部材4のロックについて左右両側のバランスを保つことができ、左右のいずれか一方のみをロックして反対側がぐらつくような感覚を与えることがなく、椅子の座り心地を向上させることができる。本発明では、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置しており、回転軸7よりも前の位置にスペース的な余裕ができるため、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に配置することが可能になる。なお、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に配置する代わりに左右両側位置にそれぞれ設けることでロックの左右のバランスを保つようにしても良い。
【0042】
また、本実施形態では、複数枚の板材を重ね合わせた回転体36に凹部32を形成することで凹部32の幅にある程度の長さを確保すると共に、スライドプレート38の後端部分を凸部33にすることで凸部33の幅にもある程度の長さを確保している。即ち、凹部32と凸部33の噛み合い部分にある程度の幅を持たせることができ、係止構造として十分な強度を確保することができる。本発明では、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置しており、回転軸7よりも前の位置にスペース的な余裕ができるため、幅広の凹部32と凸部33を配置することが可能になる。
【0043】
次に、ロック機構31の作動について説明する。操作レバー46が操作されていないロック解除状態では、入力側回転体44がロック解除位置(図4(B)の位置)に移動しており、第2のばね43の先端側延出部43aを凹部32から離れる方向に移動させているので、先端側延出部43aが第1のばね42のばね力に抗してスライドプレート38を凹部32から離れる方向に移動させ、凸部33を凹部32から引き抜いている(図4)。即ち、ロック機構31のロックが解除されている。この状態では、ばね力の強い第2のばね43がばね力の弱い第1のばね42を押し縮めて凸部33を凹部32から引き抜いている。
【0044】
この状態より、操作レバー46が操作されて入力側回転体44がロック位置(図5(B)の位置)に移動されると、第2のばね43の先端側延出部43aが下側の板状部材39のスリット39a内を凹部32側に移動し、この移動に伴って第1のばね42がスライドプレート38を凹部32に向けて移動させる。このとき、凸部33が凹部32に対向している場合には、凸部33はそのまま凹部32に挿入され、ロック機構31がロックされる(図5)。ロック機構31のロックにより、回転体36及び背支持部材4が回転軸7まわりに回転することができなくなるので、背支持部材4の角度が固定される。
【0045】
一方、凸部33と凹部32の高さがずれており、凸部33が凹部32に対向していない場合(凸部33の凹部32への挿入が制限される場合)には、凸部33(スライドプレート38)は回転体36に当たって停止し、第2のばね43の先端側延出部43aは停止したスライドプレート38のスリット38b内を凹部32側に移動(空移動)する(図6)。この状態では、第1のばね42が弾性変形することで凸部33が凹部32に挿入可能になった時に凸部33を凹部32に挿入させるばね力を蓄えている。したがって、背支持部材4の後傾角度が調整されることで凹部32が移動し、凸部33が凹部32に対向すると、第1のばね42に蓄えられたばね力によってスライドプレート38が移動され、凸部33が凹部32に挿入されてロック機構31がロックされる(図5)。なお、スライドプレート38の移動に伴い、第2のばね43の先端側延出部43aはスライドプレート38のスリット38b内を相対的に移動することになる。このように、ロック機構31をロックすることができない状態でロック操作を行なってもスライドプレート38を無理に移動させることがないので、構成部材の破損を防止することができる。また、スライドプレート38が移動できない状態でも入力側回転体44を回転させることが可能であり、移動可能になった段階でスライドプレート38が自動的に移動されるので、背支持部材4の後傾角度を気にせずに操作を行うことができる。このように入力側(入力側回転体44)の動きに出力側(凸部33)の動きを対応させることができない場合に入力側の動きを吸収して力を蓄えておき、対応可能になった時に蓄えた力を利用して出力側を動かす自己保持機能を有しており、背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0046】
また、ロック機構31のロックを解除するために操作レバー46が操作されて入力側回転体44がロック解除位置(図4(B)の位置)に戻されると、第2のばね43の先端側延出部43aが下側の板状部材39のスリット39a内を凹部32から離れる方向に移動し、第1のばね42のばね力に抗してスライドプレート38を凹部32から離れる方向に移動させる。このとき、凹部32と凸部33の噛み合い部分に着座者の体重等の荷重が作用していない場合又は作用する荷重が小さい場合には、凸部33を凹部32からそのまま引き抜くことができ、ロック機構31のロックが解除される(図4)。ロック機構31のロック解除により、回転体36及び背支持部材4が回転軸7まわりに回転できるようになるので、背支持部材4の後傾角度を調節することができる。
【0047】
一方、凹部32と凸部33の噛み合い部分に大きな荷重が作用しており、凹部32と凸部33との間に発生する摩擦力によって凸部33を凹部32から引き抜くことができない場合(凸部33の凹部32からの引き抜きが制限される場合)には、第2のばね43の先端側延出部43aはスライドプレート38のスリット38b内を凹部32から離れる方向に移動(空移動)する。そして、スリット38bの端まで移動して空移動できなくなると弾性変形し、凸部33を引き抜こうとする入力側回転体44の変位を吸収して凸部33を引き抜き可能になった時に凸部33を凹部32から引き抜くばね力を蓄える(図7)。したがって、凹部32と凸部33の噛み合い部分に作用する大きな荷重が除去されると又は減少すると、第2のばね43の先端側延出部43aに蓄えられたばね力によってスライドプレート38を移動させ、凸部33が凹部32から引き抜かれてロック機構31のロックが解除される(図4)。このように、ロック機構31のロックを解除することができない状態でロック解除操作を行なってもスライドプレート38を無理に移動させることがないので、構成部材の破損を防止することができる。また、スライドプレート38が移動できない状態でも入力側回転体44を回転させる操作が可能であり、移動可能になった段階でスライドプレート38が自動的に移動されるので、背支持部材4の後傾角度を気にせずに操作を行うことができる。このように入力側(入力側回転体44)の動きに出力側(凸部33)の動きを対応させることができない場合に入力側の動きを吸収してばね力を蓄えておき、対応可能になった時に蓄えたばね力を利用して出力側を動かす自己保持機能を有しており、背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子の使い勝手をより一層向上させることができる。
【0048】
凸部33を挿入する複数の凹部32を代えることで、背支持部材4のロックを行う後傾角度を調節することができる。
【0049】
発明の背もたれ用反力機構によれば、反力ばね16を背支持部材4の回転軸7よりも後ろの位置に配置することで、回転軸7よりも前方の内部空間35に反力ばね16を配置する必要がなくなり、この空きスペースを利用してロック機構31を配置することができる。そのため、ロック機構31を内部に隠すことができ、外観がすっきりしてデザイン性を向上させることができる。また、ロック機構31を備えているので、体重対応式反力機構を併用する構造でありながら、所定の角度で背支持部材4を固定することができる。さらに、ロック機構31は凹部32に凸部33を挿入させてロックを行う構造であり、構造が簡単で製造コストの増加を抑えることができると共に、故障し難く、耐久性を向上させることができる。
【0050】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【0051】
例えば、上述の説明では、凹部32を複数段設けていたが、1段だけ設けるようにしても良い。1段の場合、背支持部材4の原位置に対応する位置に凹部32を設けることが好ましいが、この位置でなくても良い。
【0052】
また、上述の説明では、ロック機構31の凹部32を背支持部材4側に設けると共に、凸部33をベース部材2側に設けていたが、凸部33を背支持部材4側に設けると共に、凹部32をベース部材2側に設けるようにしても良い。この場合にも、上述のロック機構31と同様に、背支持部材4の後傾角度を固定することができると共に、自己保持機能を持たせることもできる。
【0053】
また、上述の説明では、ロック機構31の駆動部34に第1のばね42及び第2のばね43を設けて自己保持機能を持たせていたが、入力側回転体44と凸部33とをリンク等の連結手段で連結し、第1のばね42及び第2のばね43を省略して自己保持機能を省いても良い。この場合には自己保持機能が無いことから使い勝手に若干劣ることになるが、部品点数の減少により製造コストを安くすることができる。
【0054】
また、上述の説明では、操作レバー46の操作力をシャフト45によって入力側回転体44に伝えていたが、必ずしもこの構成に限られるものではなく、例えば、ワイヤ、リンク等の伝達手段によって入力側回転体44に伝達するようにしても良い。
【0055】
さらに、上述の説明では、ベース部材2に対して座支持部材6の前部を回転スライド機構10によって後ろ上斜め方向に持ち上げるようにしていたが、座支持部材6の前部を後ろ上斜め方向に持ち上げる手段としてはこれに限るものではなく、例えば図10に示すようにリンク50によって座支持部材6の前部を後ろ上斜め方向に持ち上げるようにしても良い。
【0056】
また、上述の説明では、凹部32及び凸部33を内部空間35の幅方向中央位置に設けてロックの左右のバランスを保つようにしていたが、必ずしも幅方向中央位置に設けなくても良い。
【0057】
なお、上述の説明では、図11(A)に示すように、ベース部材2側に凸部33を設け、背支持部材4側に凹部32を設けると共に、凸部33を駆動部34による移動する側の部材とし、凹部32を背支持部材4の回転方向に複数段設けていたが、必ずしもこの構成に限られない。例えば、図11(B)に、ベース部材2側に凹部32を設け、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、凹部32を駆動部34による移動する側の部材とし、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【0058】
また、図11(C)に、ベース部材2側に凹部32を設け、背支持部材4側に凸部33を設けると共に、凸部33を駆動部34による移動する側の部材とし、凹部32を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【0059】
また、図11(D)に、ベース部材2側に凸部33を設け、背支持部材4側に凹部32を設けると共に、凹部32を駆動部34による移動する側の部材とし、凸部33を背支持部材4の回転方向に複数段設けた例を示す。この例でも、凹部32と凸部33との噛み合いにより背支持部材4の後傾に対するロックを良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 脚
2 ベース部材
2b ベース部材の側壁
3 背もたれ
4 背支持部材
5 座
6 座支持部材
7 背支持部材の回転軸
16 反力ばね
31 ロック機構
32 凹部
33 凸部
34 駆動部
35 内部空間
42 第1のばね
43 第2のばね
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚に支持されたベース部材と、該ベース部材に回転軸を介して後傾可能に連結されて背もたれを支える背支持部材と、座が取り付けられた座支持部材と、前記背支持部材を後傾させる際に前記座支持部材を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と前記背支持部材を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばねとを併用する椅子の背もたれ用反力機構において、前記反力ばねを前記ベース部材と前記背支持部材との間であって前記背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、前記ベース部材に対して前記背支持部材を係止するロック機構を備え、前記ロック機構は、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか一方に設けられた凹部と、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか他方に設けられ、前記凹部に噛み合い可能な凸部と、前記凹部と前記凸部のうちいずれか一方を移動させて前記凹部と前記凸部とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部とを有し、且つ、前記ロック機構を前記ベース部材と前記座支持部材との間の内部空間であって前記背支持部材の回転軸よりも前方に配置したことを特徴とする椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項2】
前記凹部及び前記凸部は、前記内部空間の幅方向中央位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項3】
前記凹部と前記凸部のうちいずれか一方は複数段設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項4】
前記駆動部は、前記凹部と前記凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、前記移動する側の部材の移動が可能になると蓄えた力で前記移動する側の部材を移動させるばねを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項5】
前記凹部は前記背支持部材側に、前記凸部は前記ベース部材側にそれぞれ設けられており、前記駆動部は前記凹部に対して前記凸部を挿入し又は引き抜くことで噛み合わせ又は噛み合い解除を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子。
【請求項1】
脚に支持されたベース部材と、該ベース部材に回転軸を介して後傾可能に連結されて背もたれを支える背支持部材と、座が取り付けられた座支持部材と、前記背支持部材を後傾させる際に前記座支持部材を持ち上げる方向に連係動作させる体重対応式反力機構と前記背支持部材を原位置に復帰させるばね力を付与する反力ばねとを併用する椅子の背もたれ用反力機構において、前記反力ばねを前記ベース部材と前記背支持部材との間であって前記背支持部材の回転軸よりも後ろの位置に起立状態に配置すると共に、前記ベース部材に対して前記背支持部材を係止するロック機構を備え、前記ロック機構は、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか一方に設けられた凹部と、前記ベース部材と前記背支持部材とのいずれか他方に設けられ、前記凹部に噛み合い可能な凸部と、前記凹部と前記凸部のうちいずれか一方を移動させて前記凹部と前記凸部とを噛み合わせ又は噛み合いを解除させる駆動部とを有し、且つ、前記ロック機構を前記ベース部材と前記座支持部材との間の内部空間であって前記背支持部材の回転軸よりも前方に配置したことを特徴とする椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項2】
前記凹部及び前記凸部は、前記内部空間の幅方向中央位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項3】
前記凹部と前記凸部のうちいずれか一方は複数段設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項4】
前記駆動部は、前記凹部と前記凸部のうち移動する側の部材の移動が制限されているときに弾性変形することで力を蓄え、前記移動する側の部材の移動が可能になると蓄えた力で前記移動する側の部材を移動させるばねを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項5】
前記凹部は前記背支持部材側に、前記凸部は前記ベース部材側にそれぞれ設けられており、前記駆動部は前記凹部に対して前記凸部を挿入し又は引き抜くことで噛み合わせ又は噛み合い解除を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の椅子の背もたれ用反力機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の背もたれ用反力機構を組み込んだ椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−48828(P2013−48828A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189706(P2011−189706)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】
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