説明

椅子

【課題】 補助脚の使用および収納作業を容易に行うことができるとともに、補助脚の使用位置において背凭れが確実に支持される椅子を提供すること。
【解決手段】 背凭れ4が起立状態と倒伏状態との間で移動自在に設けられるとともに、背凭れ4の背面上部に、該背凭れ4を前記倒伏状態としたときの脚となる補助脚9が、前記背凭れ4の背面と略直角をなす使用位置と、前記背凭れ4の背面に沿う収納位置と、の間で回動自在に設けられた椅子1において、背凭れ4の内部に少なくとも一部を挿通させた状態で取り付けられたチューブ状のカバー27aと、カバー27a内に摺動自在に挿通されるとともに、補助脚9の上端部に一端が取り付けられ、背凭れ4の移動に応じて可動する可動部29に他端が取り付けられたワイヤー27bと、からなるカバー付きワイヤー27により、補助脚9を背凭れ4に連動させて前記使用位置と前記収納位置との間で移動自在とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れを起立状態と倒伏状態とに移動自在な椅子係わり、特には倒伏状態において背凭れの後端部を支持する補助脚を備える椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の椅子としては、背凭れの背面上部に、背凭れを倒伏状態としたときの脚となる補助脚が、背凭れの背面とほぼ直角をなす使用位置と、背面に沿う収納位置とに回動自在に装着されるとともに、背凭れの背面に、補助脚を使用位置と収納位置とにおいて係止しうる係止手段としてのストッパが設けられたもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−282077号公報(第3頁、第1図、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の椅子にあっては、背凭れを起立状態から倒伏状態とする際あるいは倒伏状態から起立状態とする際において、作業者は係止手段としてのストッパを一旦取り外した後に係止させる必要があったため、背凭れの状態の切替作業に手間がかかるばかりか、特に補助脚を使用位置としたときにストッパによる係止を忘れると、倒伏状態にある背凭れに荷重が加わった際に補助脚による支持が解除されて椅子が転倒することがあるといった問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、補助脚の使用および収納作業を容易に行うことができるとともに、補助脚の使用位置において背凭れが確実に支持される椅子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の椅子は、背凭れが略上下方向を向く起立状態と略水平方向を向く倒伏状態との間で移動自在に設けられるとともに、前記背凭れの背面上部に、該背凭れを前記倒伏状態としたときの脚となる補助脚が、前記背凭れの背面と略直角をなす使用位置と、前記背凭れの背面に沿う収納位置と、の間で回動自在に設けられた椅子において、
前記補助脚を前記背凭れに連動させて前記使用位置と前記収納位置との間で移動自在とする連動手段を備え、
前記連動手段は、前記背凭れの内部に少なくとも一部を挿通させた状態で取り付けられたチューブ状のカバーと、前記カバー内に摺動自在に挿通されるとともに、前記補助脚の上端部に一端が取り付けられ、前記背凭れの移動に応じて可動する可動部に他端が取り付けられたワイヤーと、からなるカバー付きワイヤー部材にて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、背凭れを起立状態から倒伏状態まで移動することにより可動部が可動すると、補助脚の上端部がワイヤーにより背凭れの背面に向けて引っ張られて使用位置まで回動するとともに、倒伏状態から起立状態まで移動することにより可動部が可動すると、該ワイヤーによる引っ張り力が解除されて収納位置まで回動するため、背凭れを移動するだけで補助脚を容易に収納位置または使用位置に切り換えることができる。また、背凭れが倒伏状態にある限り補助脚はワイヤーの張力により使用位置に確実に保持されるため、不用意に折れ曲がることが防止されるばかりか、カバー付きワイヤー部材が背凭れの内部に挿通して設けられることで、連動手段が外部に露出して外観体裁が損なわれるのを防止することができる。
【0007】
本発明の請求項2に記載の椅子は、請求項1に記載の椅子であって、前記背凭れを前記倒伏状態から前記起立状態への移動方向に向けて付勢するガススプリングを備え、
前記可動部は、前記背凭れに連動して前記ガススプリングを伸縮させるように前記背凭れと前記ガススプリングとを連係する連係部材に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、ガススプリングの付勢力により、背凭れの後傾時においては後方への急激な転倒が防止され、背凭れの起立時には背凭れを容易に起立させることができるので、背凭れの移動操作性が向上するばかりか、背凭れに連動してガススプリングが伸縮するとともに補助脚が移動するため、部品点数を低減して製造コストを極力抑えることができる。
【0008】
本発明の請求項3に記載の椅子は、請求項1または2に記載の椅子であって、前記補助脚における前記上端部に、前記収納位置において該補助脚の下端部を前記背凭れの背面側に向けて付勢するためのウエイト部材が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用位置において補助脚の下端部を背凭れの背面に沿ってコンパクトに収納することができる。
【0009】
本発明の請求項4に記載の椅子は、請求項1〜3のいずれかに記載の椅子であって、前記補助脚の上部には、前記使用位置において前記背凭れの上部に形成された前側に向けて湾曲する湾曲状部の背面に当接する当接面が設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、使用位置において補助脚はその下端部が若干外方に向けて傾斜した状態で保持され、補助脚の下端部の内側への折れ曲がりが防止されるため、背凭れが安定的に支持される。
【0010】
本発明の請求項5に記載の椅子は、請求項1〜4のいずれかに記載の椅子であって、座の前端部に、該座に対して屈曲自在なフットレストが取り付けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、背凭れを起立状態としたときは椅子として利用でき、背凭れを倒伏状態としたときにフットレストを座の前方に引き出せばベッドとして利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0012】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1には、本発明の実施例としての椅子1が示されている。椅子1は、椅子1の基体を構成する互いに離間配置された左右の側脚2、2’と、該左右の側脚2、2’間に縦方向に回動自在に枢着された座3と、該座3の後方位置に縦方向に回動自在に枢着された背凭れ4と、から主に構成されており、左右の側脚2、2’の下端に取り付けられたロック機構付きキャスター6を介して床面G上を走行自在とされている。
【0013】
座3の先端には、特に図2〜図4に示されるように、使用者の足が載置可能なフットレスト7が、座3の下方に向けて屈曲可能に取り付けられているとともに、フットレスト7の先端には、該フットレスト7に対して直交する方向に向けて屈曲する支持脚8が連設されている。
【0014】
これら座3及びフットレスト7は、図2に示されるように、該フットレスト7が座3の前部と鋭角(本実施例では約45度)をなして屈曲され、フットレスト7及び支持脚8が座の下方に収納されて座3のみが使用可能となる第1の使用位置と、図3及び図4に示されるように、座3が略水平をなすとともに、支持脚8の下端が床面Gに接地されてフットレスト7が座3と略面一をなす第2の使用位置と、の間で移動可能に設けられている。
【0015】
背凭れ4は、略上下方向を向く起立状態(図2参照)と、略水平方向を向く倒伏状態(図4参照)と、の間で移動自在に設けられている。また、該背凭れ4の背面上部には、図4に示されるように前記倒伏状態としたときにおいて該背凭れ4を支持する脚となる補助脚9が、背凭れ4の背面と略直角をなす使用位置(図2参照)と、背凭れ4の背面に沿う収納位置(図4参照)と、の間で回動(移動)自在に設けられている。
【0016】
この椅子1の構造の詳細を図面に基づいて説明していくと、まず、前述した左右の側脚2、2’、座3、背凭れ4、フットレスト7は、図2〜図4に示されるように、枠状に構成された枠状フレーム並びに該枠状フレームを補強するための左右方向を向く補強フレームからなるフレーム部材Fと、フレーム部材F内に配置される補強板Hと、これらフレーム部材F並びに補強板Hを被覆するように設けられるクッション材とから構成されており、支持脚8並びに補助脚9は、フレーム部材F及びクッション材のみで構成されている。
【0017】
座3は、そのフレーム部材Fにおける後方左右端部に形成された回動軸16が左右の側脚2、2’の内面に枢着されており、該回動軸16を中心として縦方向に向けて回動自在に支持されているとともに、その下面を側脚2、2’間に配置された左右方向を向く前後の支持フレーム11、11上に載置することにより略水平方向を向く姿勢に支持されるようになっている。
【0018】
座3とフットレスト7とは、互いに隣接する各々のフレーム部材F同士が、複数(本実施例では2つ)の関節部12a、12aを備えるジョイント12を介して回動自在に連結されている。これにより図2に示されるように座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させるときに、座3とフットレスト7との連結部表面の曲率が緩やかになるため、座3に着座したときにおける使用者の膝裏のクッション性を損ねることなく、かつ、クッション材を押しつぶすことなく座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させることができるようになっている。
【0019】
本実施例におけるフットレスト7及び支持脚8は、側面視略L字状に形成された単一のフレーム部材Fにて一体的に構成されており、フットレスト7の前端に、該フットレスト7に対して直交する方向を向く支持脚8が連設されている。また、支持脚8の先端には、図4に示される第2の使用位置において床面G上に接地されるアジャスタ13が、高さ調整自在に設けられている。
【0020】
フットレスト7の背面には、図2に示される座3及びフットレスト7における第1の使用位置において、フットレスト7及び支持脚8を床面Gから上方に離間した状態で係止するための係止片14が後向きに突設されている。該係止片14は、座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させた状態で、係止部としての前側の支持フレーム11に対して上方から係止することができるようになっている。
【0021】
本実施例における係止片14は、図2及び図3に示されるように、フットレスト7の内部のフレーム部材Fに固着された略コ字状をなすフレーム部材からなり、その上半部は支持脚8側に向けて屈曲形成されており、座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させたときにおいて前記係止片14の上半部が座3の下面と当接することで、座3とフットレスト7との内角が所定角度(約45度)以下とならないように保持するようになっている。
【0022】
また、本実施例においては、座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させた状態で座3の下方に収納される第1の使用位置において、係止片14が支持フレーム11上に係止されるとともに、該支持フレーム11上に係止された係止片14の上部に、座3の下面に設けられた当接部材15が載置されるようになっている。すなわち、前記第1の使用位置において、係止片14が座3の下面と前側の支持フレーム11との間に挟持されるとともに、この挟持される係止片14により座3の前端が若干浮き上がり、図2に示されるように座3が後傾するようになっているため、特に座3に荷重が加わることで係止片14の支持フレーム11からの脱落が防止されるばかりか、第1の使用位置における椅子1の座り心地が向上する。
【0023】
なお、本実施例においては、係止片14を係止する係止部として、座3を下方から支持するための支持フレーム11を適用しているが、係止片14を係止するための係止部を、支持フレーム11とは別個に設けてもよい。
【0024】
左右の側脚2、2’間における下部前方位置には、図5に示されるように、座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させたまま座3の下方から前方に引き出す際または座3の下方に収納する際において、該フットレスト7の表面に当接可能な当接杆17が設けられている。また、当接杆17の周面には、該当接杆17の軸心周りに回動自在なガイドローラ18が装着されている。
【0025】
当接杆17は、図2に示されるように、座3及びフットレスト7が第1の使用位置となる状態においてフットレスト7の表面と離間する位置に設けられており、後述するように座3の下方からフットレスト7を前方に引き出す際や引き出したフットレスト7を座3の下方に収納する際において、該当接杆17と座3との間をフットレスト7並びに支持脚8を挿通させるためのものである。すなわち、図2に示されるように、係止片14の先端部が座3の下面に当接するように座3に対してフットレスト7を鋭角(約45度)に屈曲させた状態としない限り、座3の下方からフットレスト7を前方に引き出したり、引き出したフットレスト7を座3の下方に収納することができないようになっている。
【0026】
これにより、後述するように座3の下方からフットレスト7を前方に引き出す際や引き出したフットレスト7を座3の下方に収納する際において、座3とフットレスト7との内角が大となったとしても、フットレスト7の表面と当接杆17との当接によりフットレスト7を座3に対して屈曲した姿勢が維持されるため、これによりフットレスト7の表面が床面Gに接触して表面が汚れたり破れたりするのが防止されるとともに、第1の使用位置とするときに、フットレスト7の裏面にあって椅子1の前側からは見えない係止片14を支持フレーム11に確実に係止させることができるようになっている。
【0027】
また、フットレスト7を座3の下方から前方に引き出す際や座3の下方に収納する際においてフットレスト7の表面が当接杆17に当接しても、ガイドローラ18によりフットレスト7が移動方向に案内され、これにより座3を円滑に回動させることができるため、座3及びフットレスト7を移動させる際の操作性が向上する。
【0028】
背凭れ4は、図2に示されるように、そのフレーム部材Fの下方左右端部に形成された回動軸19が左右の側脚2、2’の内面に枢着され、該回動軸19を中心として略上下方向を向く起立状態と、略水平方向を向く倒伏状態との間で回動(移動)自在に支持されている。また、背凭れ4の上部には、着座した使用者の頭部を背よりもやや前方に保持して首への負担を軽減させるために、前側に向けて湾曲する湾曲状部4aが形成されている。
【0029】
背凭れ4は、座3の左側下方に配設されたロック機構付きガススプリング20(以下、ガススプリング20と略称する)と、略円弧状をなす連係部材21を介して連係されており、該ガススプリング20により前記倒伏状態から前記起立状態への移動方向(起立させる方向)に向けて常時付勢されている。詳しくは、ガススプリング20は、一端が左側の側脚2の内面所定箇所に縦方向に回動自在に枢着されたシリンダ20aと、該シリンダ20a内に伸縮自在に嵌挿されたピストンロッド20bとから構成されており、該ピストンロッド20bの先端には取付ヒンジ22が設けられている。
【0030】
連係部材21は、一端が回動軸19の左側端部に固着されているとともに、他端が取付ヒンジ22に対して回動自在に枢着されており、背凭れ4が後傾されることにより該連係部材21を介してピストンロッド20bがシリンダ20a内に押し込まれて収縮し、背凭れ4が起立されることによりピストンロッド20bがシリンダ20aに対して伸張するようになっている。つまり、背凭れ4とガススプリング20とは、背凭れ4の移動に連動してガススプリング20が伸縮させるための連係部材21を介して連係されている。
【0031】
取付ヒンジ22には、特に図6中の拡大図に示されるように、シリンダ20aに対するピストンロッド20bの伸縮をロックまたは該ロックを解除可能なロックピン23が出没自在に設けられている。ロックピン23は、常時突出する方向に向けて付勢されており、一端が取付ヒンジ22に回動自在に枢着された押圧片24により押圧されるようになっており、押圧されることによりシリンダ20aに対するピストンロッド20bの伸縮のロックが解除されるようになっている。
【0032】
押圧片24は、左側の側脚2の外面所定箇所に設けられた操作部材25(図3参照)とワイヤー26を介して連係されており、操作部材25の操作に連動して押圧片24が回動してロックピン23が押圧されてガススプリング20が伸縮自在となることで背凭れ4が移動可能となるとともに、操作部材25の操作がないときはガススプリング20が伸縮不可となり背凭れ4がそのままの姿勢で保持されるようになっている。
【0033】
補助脚9は、背凭れ4の背面上部から後方に向けて突設された左右の支持片31に対して左右方向を向く枢軸32を介して回動自在に枢着されているとともに、その枢着部の上方は後向きに屈曲形成され、前記使用位置において湾曲状部4aの背面に形成される傾斜面4bに当接可能な屈曲部9aが形成されている。さらに、この屈曲部9aの上端には、図1に示されるように背凭れ4の起立状態において椅子1を移動させる際の取手となる取手部材30が取り付けられており、椅子1の移動操作を容易に行うことができるようになっているとともに、該取手部材30は所定重量を有する素材にて構成されており、前記収納位置において該補助脚9の下端部を背凭れ4の背面側に向けて付勢するためのウエイト部材として機能するようになっている。また、補助脚9の下端部には、前記使用位置において床面G上に接地されるアジャスタ34が高さ調整自在に設けられている。
【0034】
これら補助脚9と背凭れ4とは、該補助脚9を背凭れ4に連動させて前記使用位置と前記収納位置との間で移動自在とする連動手段としてのカバー付きワイヤー部材27を介して連係されている。カバー付きワイヤー部材27は、背凭れ4の内部に少なくとも一部を挿通させた状態で取り付けられたチューブ状のカバー27aと、該カバー27a内に摺動自在に挿通されるとともに、補助脚9の上端部に一端が取り付けられ、連係部材21と取付ヒンジ22との枢着部29(可動部)に他端が取り付けられたワイヤー27bと、から構成されている。
【0035】
カバー付きワイヤー部材27は、図2、図3及び図6の拡大図に示されるように、背凭れ4の上部に取り付けられた補助脚9と、前記連係部材21と取付ヒンジ22との枢着部との間に配設され、その途中は背凭れ4の内部に上下方向に向けて挿通されている。
【0036】
カバー27aは、下端が左側の側脚2の内面所定箇所に取り付けられた固定部材28に固定され、上端が背凭れ4の内部におけるフレーム部材Fの所定箇所に固定されている。また、ワイヤー27bは、カバー27aよりも長寸とされ、カバー27aの上端から突出した上端は補助脚9の上端部に取り付けられており、カバー27aの下端から突出した下端は前記枢着部29に取り付けられている。そして、図6に示されるように、背凭れ4の傾倒により連係部材21の先端の枢着部29が回動軸19を中心に回動(移動)することでワイヤー27bがカバー27aから引き出され、補助脚9の上端部がワイヤー27bにより背凭れ4の背面側に向けて引っ張られて補助脚9が前記使用位置まで回動するようになっている。
【0037】
よって、背凭れ4を起立状態から倒伏状態まで移動することにより可動部としての枢着部29が移動すると、補助脚9の上端部がワイヤー27bにより背凭れ4の背面に向けて引っ張られて使用位置まで回動するとともに、倒伏状態から起立状態まで移動することにより枢着部29が移動すると、該ワイヤー27bによる引っ張り力が解除されて収納位置まで回動するため、背凭れ4を移動するだけで補助脚9の位置を容易に収納位置(図6(c)参照)または使用位置(図6(a)参照)に切り換えることができる。
【0038】
また、背凭れ4が倒伏状態にある限り補助脚9はワイヤー27bの張力により前記使用位置に確実に保持されるため、不用意に内向きに折れ曲がることが防止されるばかりか、カバー付きワイヤー部材27の一部が背凭れ4の内部に挿通して設けられることで、背凭れ4の上部に設けられた補助脚9と背凭れ4の下方の枢着部29とを連係するための連係手段が外部に露出して外観体裁が損なわれるのを防止することができる。
【0039】
なお、背凭れ4の背面下部には、図2に示されるように、左右の側脚2、2’間に架設された横フレーム35aに一端辺が取り付けられた隠蔽シート35の他端辺が取り付けられており、背凭れ4が起立状態にあるときに張設され、支持脚8と背凭れ4との間に形成される空間を外部から視認不能に隠蔽できるようになっている。
【0040】
次に、このように構成された椅子1における座3及びフットレスト7を第1の使用位置と第2の使用位置との間で移動させる際の作用を、図2及び図5に基づいて説明すると、まず、座3及びフットレスト7が第1の使用位置に位置している状態(図2参照)においては、フットレスト7の裏面に突設された係止片14を支持フレーム11に係止させることで、フットレスト7が、座3に対して鋭角に屈曲させて折り畳んだ状態で座3の下方にコンパクトに収納される。これにより椅子として使用する際においてフットレスト7や支持脚8が邪魔になることがないとともに、フットレスト7の下端が床面Gから離間した状態で係止されるため、フットレスト7の表面が汚れたり損傷することがない。
【0041】
次いで、座3及びフットレスト7を第1の使用位置から第2の使用位置に切り換えるには、まず、座3の後部を中心に座3の前部を上昇させる(図5(a)参照)。このとき、フットレスト7の表面と当接杆17との当接によりフットレスト7を座に対して屈曲した姿勢が維持されるため、座3に対してフットレスト7が開いてしまい、該フットレスト7が床面Gに接触して汚れたり損傷することが防止される。また、当接杆17の周面にはガイドローラ18が設けられていることで、フットレスト7並びに支持脚9の表面が当接杆17に当接することがあっても、フットレスト7の表面がガイドローラ18により上方に向けて案内されるため、座3を円滑に回動させることができ、操作性が向上する。
【0042】
そして、支持脚8が当接杆17の上方に位置するまで座3を回動させたとき(図5(b)参照)、フットレスト7を前方に引き出すことが可能となり、座3とフットレスト7とを互いに略面一となる水平状態とし、支持脚8の下端のアジャスタ13を床面Gに接地させることで、フットレスト7と座3とが略面一をなす第2の使用位置となる。このように座3及びフットレスト7が第2の使用位置となったとき、座3の下面が支持フレーム11により支持されるとともに、フットレスト7の前端が、下端が床面Gに接地される支持脚8を介してしっかりと支持されて椅子1の前倒が防止されるため、椅子1の安定性が確保される。
【0043】
また、座3及びフットレスト7を第2の使用位置から第1の使用位置に切り換えるには、第2の使用位置からフットレスト7を座3に対して屈曲させた状態で、フットレスト7及び支持脚8を当接杆17の上方を通過させるように座3を下方に向けて回動させて係止片14を支持フレーム11に係止させることで、第1の使用位置に切り換えることができる。このときにフットレスト7の表面が当接杆17に当接することがあっても、フットレスト7の表面がガイドローラ18により下方に案内されるため、座3を円滑に回動させることができ、操作性が向上する。
【0044】
このように、座3の前端に屈曲自在に取り付けられたフットレスト7は、座3に対してフットレスト7を鋭角に屈曲させた状態で座3の後部を中心として回動させることで、フットレスト7を座3の下方から引き出したり、座3の下方に収納する操作を、椅子1を持ち上げたりすること等なく容易に行うことができるとともに、第1の使用位置においてフットレスト7は座3の下方にコンパクトに収納されるため、使用時において使用者の足がはみ出すことのない十分な長さを有するフットレスト7を座3の前端に取り付けることができるばかりか、第1の使用位置において邪魔になることがない。また、第2の使用位置においてフットレスト7は支持脚8を介して床面Gにしっかりと支持されるので、引き出されたフットレスト7の前端に荷重が偏って加わった場合でも、椅子1が転倒することがない。
【0045】
次に、このように構成された椅子1における背凭れ4の補助脚9を使用位置と収納位置との間で移動させる際の作用を、図6に基づいて説明すると、まず、背凭れ4が起立状態にあるときは、連係部材21と取付ヒンジ22との枢着部29が固定部材28の鉛直上方に位置し、ワイヤー27bがカバー27aの端部から所定長さL1だけ引き出された状態であり、この状態において補助脚9は、ワイヤー27bに張力がかかっていないことから、上端に設けられたウエイト部材30の自重によりその下半部が背凭れ4の背面に向けて付勢され、背面に沿うように収納された収納位置に保持されている(図6(a)参照)。
【0046】
この状態から操作部材25を操作して背凭れ4を後向きに傾倒させると、連係部材21が回動軸19を中心に回動して枢着部29がガススプリング20側に向けて移動され、ピストンロッド20bがシリンダ20a内に押し込まれて収縮され、背凭れ4の傾倒に抵抗がかかるとともに、枢着部29の移動(可動)によりワイヤー27bの一端がカバー27aの下端から引き出され、これにより補助脚9の上端部がワイヤー27bにより背凭れ4の背面に向けて引っ張られ、背凭れ4に連動して枢軸32を中心として反時計回りに回動する(図6(b)参照)。
【0047】
そして、背凭れ4が略水平となる倒伏状態となるまで傾倒され、補助脚9が背凭れ4に連動して該背凭れ4に対して略直交方向を向く使用位置まで回動された時点では、カバー27aの下端から引き出されたワイヤー27b長さL2は前記所定長さL1よりも長寸となる(L1<L2)。このとき、補助脚9の屈曲部9aは前述した背凭れ4の湾曲状部4aの背面側に形成された傾斜面4bに当接されてワイヤー27bの引っ張り作用による回動が規制されるとともに、その下端に設けられたアジャスタ34が床面G上に接地され、背凭れ4の上部が補助脚9によりしっかりと支持されるので、傾倒された背凭れ4の先端側に荷重が偏って加わった場合でも椅子1が転倒することがない(図6(c)参照)。
【0048】
また、この使用位置において、補助脚9は下端が上端よりも若干外向きに傾斜した姿勢となるとともに、背凭れ4が起立方向に向けて移動されない限り、ワイヤー27bによる引っ張り作用により前記使用位置における姿勢が保持されるため、補助脚9の下端部が不用意に内側へ折れ曲がることが防止されるため、背凭れ4が安定的に支持される。
【0049】
このように、背凭れ4を起立状態から倒伏状態まで傾倒(移動)させることにより枢着部29が回動(移動)すると、補助脚9の上端部がワイヤー27bにより背凭れ4の背面に向けて引っ張られて使用位置まで回動され、また、背凭れ4を倒伏状態から起立状態まで起立(移動)させることにより枢着部29が回動(移動)すると、該ワイヤー27bによる引っ張り力が解除されて収納位置まで回動するため、背凭れ4を移動するだけで補助脚9を容易に収納位置または使用位置に切り換えることができる。また、カバー付きワイヤー部材27が背凭れ4の内部に挿通して設けられることで、背凭れ4に連動して補助脚9を移動させる連動手段が外部に露出して外観体裁が損なわれるのを防止することができる。
【0050】
また、本実施例においては、背凭れ4が連係部材21を介してガススプリング20に連係されているため、ガススプリング20の付勢力により、背凭れ4の傾倒時においては後方への急激な転倒が防止され、起立時には背凭れ4を容易に起立させることができるので、背凭れ4の移動操作性が向上するばかりか、背凭れ4とガススプリング20とを連係する連係部材21に、ワイヤー27bの一端が取り付けられる可動部(枢着部29)が設けられ、背凭れ4に連動してガススプリング20が伸縮するとともに補助脚9が移動するため、部品点数を低減して製造コストを極力抑えることができる。
【0051】
そして、本実施例における椅子1は、図2に示されるように、座3及びフットレスト7を第1の使用位置とすることで椅子として使用することができるとともに、図4及び図6(c)に示されるように、座3及びフットレスト7を第2の使用位置とし、背凭れ4を倒伏状態とすることで、座3、フットレスト7、背凭れ4が略面一となるため、ベッドとして使用することもできる。
【0052】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0053】
例えば、前記実施例においては、フットレスト7の先端に支持脚8が一体的に設けられていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばフットレスト7に対して折り畳み自在に取り付けられていてもよい。
【0054】
また、前記実施例における座3は、基体としての左右の側脚2、2’に後部が枢着されていたが、座3を回動自在に枢着しうるものであれば基体は左右の側脚2、2’に限定されるものではない。
【0055】
また、前記実施例においては、背凭れ4の傾倒(移動)に応じて可動(回動)する可動部が、ガススプリング20と背凭れ4とを連係する連係部材21と取付ヒンジ22との枢着部29と兼用されていたが、背凭れ4に連動して可動する部位であれば、ガススプリング20と背凭れ4との連結部材21に設けられていなくてもよい。さらには、可動部は背凭れ4に設けられた部材でなくてもよく、例えば側脚2、2’等に可動自在に設けられた可動部材に設けてもよい。
【0056】
また、前記実施例における椅子1は、背凭れ4のみならず、フットレスト7も前記第1の使用位置と前記第2の使用位置との間で移動自在に設けられており、フットレスト7と座3と背凭れ4とを略面一としてベッドとして使用できるようになっているが、本発明においては、少なくとも背凭れ4が前記起立状態と前記倒伏状態との間で傾倒(移動)自在とされていれば、フットレスト7を備えていないものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例としての椅子を斜め前方から見た状態を示す斜視図であり、(b)は椅子を斜め後方から見た状態を示す斜視図である。
【図2】図1の椅子を椅子として使用する状態を示す側面図である。
【図3】図1の椅子の平面図である。
【図4】図1の椅子をベッドとして使用する状態を示す側面図である。
【図5】(a)〜(c)は座及びフットレストの移動状態を示す概略側面図である。
【図6】(a)〜(c)は背凭れと補助脚との連動状態を示す概略側面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 椅子
2、2’ 側脚(基体)
3 座
4 背凭れ
7 フットレスト
8 支持脚
9 補助脚
11 支持フレーム
14 係止片
16 回動軸
17 当接杆
18 ガイドローラ
19 回動軸
20 ガススプリング
21 連係部材
22 取付ヒンジ
27 カバー付きワイヤー部材
27a カバー
27b ワイヤー
29 枢着部(可動部)
30 取手部材(ウエイト部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背凭れが略上下方向を向く起立状態と略水平方向を向く倒伏状態との間で移動自在に設けられるとともに、前記背凭れの背面上部に、該背凭れを前記倒伏状態としたときの脚となる補助脚が、前記背凭れの背面と略直角をなす使用位置と、前記背凭れの背面に沿う収納位置と、の間で回動自在に設けられた椅子において、
前記補助脚を前記背凭れに連動させて前記使用位置と前記収納位置との間で移動自在とする連動手段を備え、
前記連動手段は、前記背凭れの内部に少なくとも一部を挿通させた状態で取り付けられたチューブ状のカバーと、前記カバー内に摺動自在に挿通されるとともに、前記補助脚の上端部に一端が取り付けられ、前記背凭れの移動に応じて可動する可動部に他端が取り付けられたワイヤーと、からなるカバー付きワイヤー部材にて構成されていることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記背凭れを前記倒伏状態から前記起立状態への移動方向に向けて付勢するガススプリングを備え、
前記可動部は、前記背凭れに連動して前記ガススプリングを伸縮させるように前記背凭れと前記ガススプリングとを連係する連係部材に設けられている請求項1に記載の椅子。
【請求項3】
前記補助脚における前記上端部に、前記収納位置において該補助脚の下端部を前記背凭れの背面側に向けて付勢するためのウエイト部材が設けられている請求項1または2に記載の椅子。
【請求項4】
前記補助脚の上部には、前記使用位置において前記背凭れの上部に形成された前側に向けて湾曲する湾曲状部の背面に当接する当接面が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の椅子。
【請求項5】
座の前端部に、該座に対して屈曲自在なフットレストが取り付けられている請求項1〜4のいずれかに記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−42929(P2006−42929A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224837(P2004−224837)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】