椅子
【課題】着座者の付近に容易に荷物類を位置付けつつ、容易且つ好適に荷物類の出し入れを行い得る椅子を提供する。
【解決手段】椅子は、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部と、この支持基部の上に配された座3と、そして支持基部上に配された棚板6とを具備してなる。そして棚板6上の荷物載置面6aを平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7を設けたものとしている。
【解決手段】椅子は、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部と、この支持基部の上に配された座3と、そして支持基部上に配された棚板6とを具備してなる。そして棚板6上の荷物載置面6aを平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7を設けたものとしている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座を水平方向に回転可能に支持されている椅子のうち、フリーアドレスタイプのオフィスで好適に使用され得る椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリーアドレス形式のオフィスレイアウトを採用したフリーアドレスオフィス(例えば、下記非特許文献を参照)は、1980年代後半に始まったとされる。フリーアドレスオフィスでは、執務者個々人の自席を固定せず、誰でも自由に利用できるデスク及び椅子を配したカフェスタイルのフロアを構築する。
【0003】
そしてこのようなフリーアドレスオフィスの場合、執務者は、必要書類やパーソナルコンピュータ等を予め勤務者に割り当てられたロッカー等から取り出し、それらをオフィス内に持参し、空いている席に着いて仕事をする。
【0004】
また他方、これまでの椅子の中には、上着を掛けておくためのハンガーを背の上端に設けたり、肘掛けの内部や座の下方のスペースを利用して、必要書類と要ったものを含む着座者の所持品を収納したりすることが可能なように構成されている椅子も、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−25855号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】嶋村仁志、山田哲弥、杉山武、岩田美成、「研究執務スペースのフリーアドレス化に関する研究その1:折畳移動机を用いたフリーアドレス・オフィスのユーザー満足度評価による効果分析」、日本建築学会計画系論文集、社団法人日本建築学会、1998年7月30日、No.509、pp.129−134
【非特許文献2】岩切一幸、毛利一平、外山みどり、野瀬かおり、落合孝則、城内博、斉藤進、「フリーアドレス形式オフィスレイアウトでのVDT作業者の姿勢および身体的疲労感」、産業衛生学雑誌、社団法人日本産業衛生学会、2006年1月20日、Vol.48、pp.7−14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のようなフリーアドレスオフィスにおける執務者の実際の作業を考えると、上記のような必要書類等に限られず、様々な荷物類を椅子に近接した位置に位置付けておく事ができる椅子のなかでも、頻繁に出し入れを行い易い椅子が求められている。すなわち、上記特許文献1に挙げたような座の前方に引き出して使用する抽斗を有した椅子においても、同様に上記の要求を満たし得る椅子が求められる。しかしながら同文献に挙げたものでは、例えば着座者の執務中に抽斗内の荷物類を取りだそうとすれば、着座者は一度立ち上がるか、着座者自身の足を一度側方に退避させてから取り出さなければならない。加えて、オフィスでは通常、椅子を使用しない状態では椅子の座をデスクの下肢空間内へ収容した状態とするが、その様な状態から上記の抽斗内の荷物類を取りだそうとすれば、一端椅子の座をデスクの下肢空間から取り出さなければならない。
【0008】
本発明は、このような点に着目したものであり、着座者の付近に容易に荷物類を位置付けつつ、容易且つ好適に荷物類の出し入れを行い得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係る椅子は脚体と、この脚体により回転可能に支持された支持基部と、この支持基部上に配された座とを具備してなる椅子において、前記支持基部と前記座との間に荷物載置面が設けられ、その荷物載置面と座の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間を形成し、前記荷物載置面を平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置と、占有範囲よりも側方又は後方へ突出させた突出位置との間で動作させる載置面動作機構を具備していることを特徴とする。
【0010】
ここで、荷物載置面とは、例えば水平方向からアクセスし得る棚板の上面でも、収容位置ではアクセス不能に構成された抽斗の底板の上面であっても良い。すなわち荷物類を載置し得る面であれば、種々の態様が考えられる。
【0011】
このようなものであれば、着座者の執務中、または椅子の座の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面上の荷物類の出し入れを容易に行うことができる。そうすることにより、フリーアドレスオフィスにおいて、着座者の執務中や着席或いは離席時において荷物類の取り扱いをスムーズに行なわせて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を提供することができる。
【0012】
そして着座者の動作による座などの動作に関わらす安定して荷物類を載せ置き得るものとするためには、荷物載置面を支持基部に支持されたものとしておくことが望ましい。
【0013】
そして、荷物を容易に取り出すための構成としては、載置面動作機構が、前記荷物載置面を前記収容位置と前記突出位置との間でスライド移動させるという態様を挙げることができる。
【0014】
そして、より扱い易い載置面動作機構を実現するためには、収納位置又は突出位置で荷物載置面を位置決めする位置決め手段を設ける事が望ましい。
【0015】
そして載置面動作機構のスムーズな動作を実現するための具体的な構成として、載置面動作機構を前記支持基部及び前記棚板の何れか一方に設けたレールと、他方に設けたスライダとを有するものとして、位置決め手段が、レールに設けられた開口と、スライダに設けられ収納位置又は突出位置で開口に嵌まり得る転動体とを設けたものとしておくことが好ましい。
【0016】
特に着座者の着座・執務中での荷物類の出し入れを容易に行い得るための構成として、載置面動作機構を、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させる態様を挙げることができる。
【0017】
他方、本発明の椅子は、支持基部に支持され前記座の後端部を支持する背凭れをさらに有するとともに、前記背凭れの後傾動作と前記座の後端部の下降動作とを連動させるためのシンクロチルト機構をさらに備えたものであっても、好適に適用することができる。
【0018】
そしてシンクロチルト機構を備えた椅子においては、荷物載置空間が前側の上下寸法よりも後側の上下寸法が大きく形成しておくと、荷物類が座に干渉され難い構成となるため、載置面動作機構の動作が損なわれないものとなる。
【0019】
特に、シンクロチルト機構と載置面動作機構とを併せ備える好適な態様の一つとして、背凭れが前記支持基部に対して傾動可能に支持された背フレームを有するものであり、荷物載置空間を、前記背フレーム、前記支持基部及び前記座に側面視囲まれた左右側方に開口した空間であるものとし、前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させる態様を挙げることができる。
【0020】
そして、背フレームと荷物載置面とが互いに干渉させずにシンクロチルト動作と荷物載置面の動作とをそれぞれスムーズに行い得るものとするためには、背フレームが、前記支持基部から後方へ延出する前後方向部と、この前後方向部の後端から上方へ延出する上下方向部とを有し、前記棚板を前記前後方向部よりも上方に配置したものを挙げることができる。
【0021】
そしてこのような荷物載置面を側方へ動作させる態様の場合、棚板の後端を前記前後方向部の後端よりも前側に位置付け、この棚板が、前記後端に上方へ立ち上がる立ち上がり部を設けておけば不意な後ろ側への荷物類の脱落を有効に回避することができる。
【0022】
また、棚板が、当該棚板の左右縁部から立ち上がる立ち上がり部を設けておけば、荷物載置面の動作時においても、椅子の動作時においても好適に荷物の脱落を回避し得るものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、着座者の執務中、または椅子の座の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面上の荷物類の出し入れを容易に行うことができる。その結果、フリーアドレスオフィスにおいて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る椅子の外観図。
【図2】同平面図。
【図3】同実施形態に係る椅子の構成説明図。
【図4】同実施形態に係る椅子の他の構成説明図。
【図5】同実施形態に係る要部説明図。
【図6】同実施形態に係る他の要部説明図。
【図7】図6を拡大して説明する図。
【図8】同実施形態に係る要部の断面図。
【図9】同実施形態の変形例1に係る平面図。
【図10】同実施形態の変形例2に係る平面図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る椅子の側面図。
【図12】同背面図。
【図13】同実施形態の変形例に係る模式的な図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0026】
この椅子は、図1ないし図7に示すように、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座3と、座3の後端から上方に一体的に延出させて設けられた背凭れ4と、この背凭れ4の側方から左右に延びて設けられた肘掛け5と、そして支持基部2上に配された棚板6とを具備してなる。そして本実施形態に係る椅子は、支持基部2と座3との間に荷物載置面6aが設けられ、その荷物載置面6aと座3の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間Sを形成しているものである。すなわち本実施形態に係る椅子は、支持基部2によって支持された座3を有し、支持基部2から上方に離間して配置された座3との間に空間を有する椅子に対し、その空間に荷物載置面6aを設けることで、その空間を荷物載置空間Sとして有効に活用し得るものである。また本実施形態では、肘掛け5を背凭れ4における、座3よりも上側の所定箇所から前方に略水平に持ち出すことによって形成している。すなわち本実施形態では、肘掛け5を荷物収容空間Sに干渉させない構成として、荷物の出し入れに肘掛け5が邪魔にならない構成を適用している。
【0027】
以下、本実施形態に係る椅子の構成について説明する。
【0028】
脚体1は、同図に示すように、キャスタ11を有した脚羽根タイプの脚ベース12と、この脚ベース12の中心部に立設した脚支柱13とを具備してなる。脚支柱13は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱13の上端部に支持基部2が取り付けられている。
【0029】
支持基部2は、同図に示すように、脚体1によって水平旋回可能に支持されたもので、座3の上下位置を調節するために脚支柱13に設けたガススプリングを操作するための操作レバー24と、上側を平坦に設けた上面25と、この上面から側方から後方において設けられた起立面である外周面26とを具備してなる。そして本実施形態ではこの支持基部2の前側に座3を固着したものとしているが、座3を支持する箇所にトーションバー等の手段を用いて座3及び座3と一体に設けられた背凭れ4をロッキング可能に構成してもよい。なお本実施形態では操作レバー24を上面25から平面視前方又は前側方に突出させて設けることで、荷物載置空間Sの左右を塞ぐことが無く、荷物の出し入れの邪魔にならない構成となっている。
【0030】
座3は、図1に示すように、対をなす座フレーム35間に座張地36を張り設けてなるものである。本実施形態では、座3の前端に正面視U字状の前横梁34を設け、この前横梁34によって座張地36を緊張させた状態で座フレーム35に支持させる態様を適用している。そして本実施形態では座フレーム35は、背凭れ4の背フレーム45と一体に設けられることによりフレームFを構成している。加えて座張地36は、背凭れの背張地46と一体に設けられることにより張地Mを構成してなるものである。
【0031】
背凭れ4は、同図に示すように、対をなす背フレーム45の前面に背凭れ4の前面を構成する背張地46を張り設けたものである。背フレーム45は、その下端側に下横梁47と、上端に上横梁48を介在させることにより、背張地46に適度な張力を付与している。また下横梁47は、肘支柱51を両側からそれぞれ前方へ持ち出し、その肘支柱51の先端側に肘当て52を形成することにより、肘掛け5を一体に設けたものである。他方、上横梁48は、下方に垂下するハンガー48aを一体に形成したものとしている。
【0032】
棚板6は、支持基部2に、後述する載置面動作機構7を介して支持されており、上面側を荷物等を載置し得る荷物載置面6aとしたものである。また本実施形態では当該棚板6の前後4箇所に、後述するスライダ73を固定するためのスライダ取付部65を設けている。棚板6の下面左右方向で、レール72を避けた前後位置に棚板6補強用のリブ66を設けている。このリブ66の高さはレール72よりも低く設定されている。そうすることでこのリブ66は、棚板6自体を撓み難く構成しつつ、棚板6スライド時に取付部71の上面とは干渉しないようにしている。
【0033】
しかして本実施形態に係る椅子は、支持基部2と棚板6との間に、荷物載置面6aを平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7を設けたものとしている。
【0034】
載置面動作機構7は、支持基部2にレール72を取り付けるためのレール取付部71と、棚板6をスライドさせるためのレール72と、レール72に沿って棚板6をスライド移動させるためのスライダ73と、レール72の下面と取付部71側面とをつなぐように設けられたステー74とを有している。レール支持部71は、上面側から突出してレール72に係り合って固定するためのレール取付爪71aと、支持基部2の上面25及び外周面26に嵌合することにより当該支持基部2に固定される取付部71bとを有してなる。
【0035】
レール72は、レール支持部71に固定されるためのスリット72aと、レール72底面における所定の位置に4箇所穿たれた開口たる位置決め穴72bと、両端を上方から内方へ折り返して設けられた折り返し部72cとを有している。具体的に説明するとレール72は、具体的には図7において一部拡大して示すように、断面C字形の樹脂押出材を主体としている。一本のレール72には、左右両端部と棚板6の収納位置を決める場所の合計4箇所に鋼球6が嵌る位置に位置決め穴72bが設けられている。レールの左右両端部には、底面を構成する部分の両端が、レールの高さより大きい寸法で左右に延びるように切り抜かれて形成されており、この切り抜かれた樹脂部分によって折り返し部が形成される。すなわち、この左右に延びる樹脂部分をC字形断面の中に押込むように折り返して、レール左右両端部近傍のC字形断面の向かい合う端縁に設けた一対の切込み72dに嵌め合わせることで押出材に蓋をするように、折り返し部72cを形成している。この折り返し部72cにより、棚板6を左右両端までスライドさせたとき、この折り返し部72cが蓋の役割をすることでスライダ73が当たって止まり、棚板6がレール72より左右外方に抜け出せないようになっている。また、その位置に鋼球73bが嵌る位置決め穴72bを設けており、棚板6を左右両端に引き出した突出位置(Y)で棚板6を仮停止させた状態を維持できるようになっている。
【0036】
スライダ73は、上述した棚板6のスライダ取付部65にねじ止めされるスライダ本体73aと、スライダ本体73a内から下端を露出させた状態で転がり可能に収納された転動体たる鋼球73bとを有している。
【0037】
ステー74は、レール73の下面と取付部71側面とをつなぐように設けられている。そしてこのステー74により、棚板6が左右にスライドした際にレールに掛かる偏荷重に十分耐えられる構造となっている。そしてこのステー74は、正面視及び背面視においてレール72の左右を持ち上げて左右を高くするように形成している。具体的には図8に示すように、ステー74の両端でレール72を下から持ち上げておき、レールの中間部をビス等によって取付部71に固定して下に引き込むようにしている。レール72は押出材を用いているため、そのままでは傾斜が無く一直線状であるが、これによって、レール72が大きく歪まない程度の弾性変形による湾曲を付けている。
【0038】
しかして本実施形態では、レール72に設けられた開口たる位置決め穴72bと、この位置決め穴72bに嵌まり得る転動体たる鋼球73bとによって、収納位置(X)及び突出位置(Y)で荷物載置面6aを位置決めする位置決め手段70を構成している。
【0039】
図8に示すように、棚板6をレール72に沿って側方に動作させると、レール72内を鋼球73bが転がることによって、棚板6すなわち荷物載置面6aがスムーズにスライド移動をすることができる。そして収納位置(X)及び突出位置(Y)では、鋼球73bの下端がそれぞれ位置決め穴72bに嵌ることで、好適に収納位置(X)及び突出位置(Y)に位置決めされる。そして特に突出位置(Y)では、スライダ73はレール72の折り返し部72cを押圧した状態で位置決めされる。すなわち、棚板6を左右いずれかにスライドさせ、スライダ73が、レール72の端部に位置したとき、スライダ73と棚板6の左右いずれかの偏縁までの寸法分だけ棚板6が左右方向に移動することになり、このときには棚板6は平面視座面よりも左右いずれかにはみ出した状態になっていることになる。そのため、例えば使用者が棚板6の側端を軽く押圧して鋼球73bを位置決め穴72bに嵌った状態から解除するのみで、折り返し部72cの弾性反発力と相まって、鋼球73bがレール72内をスムーズに転がるものとなっている。その結果、棚板6すなわち荷物載置面6aは収納位置(X)へ向かってスムーズにスライド動作し、いわば自動的に収納位置(X)まで移動することとなる。当然、棚板6を内方に手で押すことで収納位置(X)にスライドさせても良い。レール72には上述の通り中央部が最も低く、左右両端部が高くなるようにわずかな傾斜が設けられているため、これによって棚板6は、手で操作して左右両端の位置決め孔穴72bから鋼球73bを外してやるとスムーズにスライド移動し、収納位置(X)の位置決め穴72bに鋼球73bが嵌合して収納位置(X)で停止するようになっている。
【0040】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る椅子は、着座者の執務中、または椅子の座3の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面6a上の荷物類の出し入れを容易に行うことができるものとなっている。その結果、フリーアドレスオフィスにおいて、着座者の執務中や着席或いは離席時において荷物類の取り扱いをスムーズに行なわせて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を実現している。
【0041】
そして着座者の動作による座3などの動作に関わらす安定して荷物類を載せ置き得るものとするために本実施形態では、支持基部2に棚板6を取付けるレール支持部71を設けて、荷物載置面6aが支持基部2に支持される態様を適用している。
【0042】
また荷物類を容易に取り出すために本実施形態では、載置面動作機構7にレール72を採用することで、荷物載置面6aを収容位置(X)と突出位置(Y)との間で往復スライド移動させるものとしている。
【0043】
そして、載置面動作機構7をより扱い易いものとするように本実施形態では、収納位置(X)及び突出位置(Y)で荷物載置面6aを位置決めする位置決め手段70をさらに設けたものとしている。
【0044】
そしてレール72内を転がる転動体たる鋼球73bが開口たる位置決め穴72bに嵌るという単純な構成によって、荷物載置面6aの位置決めと、荷物載置面6aのスムーズな動作とを、本実施形態では併せて実現している。また勿論、荷物載置面6aのスムーズな動作を実現するためには上記鋼球73bと穴72bとを用いた構成に限定されることはなく、滑り易い構成をなすスライダのみの構成としても良い。
【0045】
そして本実施形態では特に着座者の着座・執務中での荷物類の出し入れを容易に行うことに着目した結果、載置面動作機構7を、平面視座3の占有範囲から両側のどちらにも荷物載置面6aが突出するものとしている。そうすることにより、着座者が執務中に左右どちらからでも荷物類を容易に取り出すことができるものとなっている。
【0046】
<変形例1>
続いて本実施形態の各変形例について説明するが、同変形例において上記実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
本発明の載置面動作機構は荷物載置面6aをスライド動作する態様のみに限られることはない。すなわち図9に示すように、棚板6の前端部分を支持基部2に対して回転可能に構成することによっても、荷物載置面6aを平面視座3の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7aを構成することができる。
【0048】
<変形例2>
また、上記実施形態では、レール72の左右両端部にストッパ72cを設けた構成とすることにより棚板6の動作端を位置決めし得る態様とした。しかし、レール72の幅寸法が棚板6の幅寸法に対して狭く設定されているような場合には、図10に示すような、棚板6の下面側に、棚板6を左右の動作端までスライドさせた際にレールの左右両端に当接するスライドストッパ67を設けても良い。このスライドストッパ67は、例えば、棚板6の上面からビスなどで取り付けるようにすれば良い。そして本変形例では、この様なスライダストッパ67を設けることによって、このスライドストッパ67とレール72とによって、詳細には、スライドストッパ67とレール72の側端すなわちスライドストッパ67との当接箇所とによって、本実施形態同様の位置決め手段70を構成している。
【0049】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお本実施形態においても上記変形例同様、上記実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
同実施形態に係る椅子は、図11ないし図12に示すように、支持基部2に支持され座3の後端部を支持する背凭れ4の後傾動作と座3の後端部の下降動作とを連動させるシンクロチルト機構を備えた椅子に対し、上記実施形態同様の載置面動作機構7を適用したものである。
【0051】
この椅子は、図11ないし図12に示すように、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座3と、前記座3側方から左右上方に延びて設けられた肘掛け5と、支持基部2に後傾動作可能に設けられた背フレーム40を有する背凭れ4と、そして後に詳述する棚板6とを具備してなる。斯かる構成によりこの椅子は、背フレーム40後傾時に座3も連動して後方に沈み込むシンクロチルト動作をするようになっている。
【0052】
脚体1は上記実施形態同様に、キャスタ11、脚ベース12、脚支柱13とを具備してなり、この脚支柱13の上端部に支持基部2が取り付けられている。
【0053】
支持基部2は、同図に示すように、脚体1によって水平旋回可能に支持されたもので、脚支柱13に装着されたハウジング21と、このハウジング21の前後中間部から両側へ突出させて設けた背凭れ4支持用の延出軸支部たる支軸22とを具備してなる。そして本実施形態ではこの支軸22にトーションバーとしての作用を奏させて傾動反力発生機構としての役割を担わせることにより、支持基部2自体をよりコンパクトに構成したものとしている。また他方支持基部2は、前端部において上下方向リンク23を介して座3の前端部31を支持している。これにより荷物載置空間Sの前側部分の高さ寸法を有効に確保し得るものとなっている。また勿論図示のような上下方向リンク23に限らず、支持基部2の前端部を立ち上がるように隆起させて、その上端部と座3の前部下面とで前後スライドする構成としても良い。さらに支持基部2は、同図では脚支柱13から斜め上方に延出した形状としているが、勿論前方に水平に延びるようにしても良い。そうすれば前から後まで略水平に後述の棚板を確保でき、より大きな荷物載置空間Sを確保できる。
【0054】
座3は、図11に示すように、座受に座面を構成するクッション体を装着してなるものである。本実施形態では、座3の前端部31は、支持基部2に対し前記上下方向リンク23を介して動作可能に支持させており、座3の後端部32は、背フレーム40における座支持部44に前後スライド可能に取り付けている。また当該座3は、後端部32の上方に、後述の張地41の下方を支持するとともに着座者の腰部を支えるためのランバーサポート部33を具備しているが、当該ランバーサポート部33は、斯かる態様に限られることはなく、例えば背フレーム40に設けられたものであるなど、他の構成を適用しても良い。
【0055】
背凭れ4は、同図に示すように、背フレーム40の前面に背凭れ4の前面を構成する張地41を張り設けたものである。背フレーム40は、全体が側面視ほぼL字型であり、基端部を前記支持基部2の支軸22に後傾動作可能に取り付けられた左右対をなす前後方向部42と、この前後方向部42の先端すなわち後端から上方に延出する上下方向部43と、この上下方向部43から前方に突出させて形成され、前記座3の後端部32を支持、詳細には、背フレーム40の後傾に伴って後端部32を前後スライド可能に支持する座支持部44を備えている。本実施形態では、座支持部44を上下方向部43側に設けることにより後述する荷物載置空間Sの後側の上下寸法を大きく設定し得るものとしているが、勿論前後方向部42から上方へ持ち出すことにより構成した構成や、その他の構成により設けたものであって良い。また本実施形態では一対の前後方向部42を支軸22から外嵌するように取り付けることにより、一対の前後方向部42間の離間距離を十分に確保したものとなっている。
【0056】
本実施形態の椅子は上述の通り、座3及び背凭れ4が連動して傾動するシンクロロッキング動作が可能である。すなわち、シンクロロッキング動作では、背フレーム40全体が支軸22回りに回動することで背凭れ4が前後に傾動する。同時に、座3の後端部32が背フレーム40に連動して上下に揺動しつつ前後にスライドし、かつ座3の前端部31が前後に動作する。
【0057】
肘掛け5は、左右対称形状をなしている、所謂T型肘の形状を採用したものであり、基端部を前記座3に取り付けられた肘支柱50と、この肘支柱50に支持された肘当て51とを具備してなる。なお本実施形態に係る肘掛け5は、座3に対して固定され且つ一体的に形成されたT型肘の態様としているが、例えば肘支柱50の長さを適宜変更して肘当て51の高さ寸法を変更し得る可動肘の態様を採用してもよい。また勿論、肘当て51を水平方向に旋回可能に構成した態様を適用してもよい。さらに肘掛け5は、図示の態様の他、背フレーム40の上下方向部43から前方に持ち出して構成しても良い。本実施形態では肘支柱50を座3に取り付けることにより、上記の第1実施形態と同様に、肘掛け5が荷物載置空間Sの側方に位置することで荷物の出し入れに干渉することを有効に回避している。
【0058】
しかして本実施形態に係る椅子は上記の構成のもと、荷物載置空間Sを、背フレーム40、支持基部2及び座3で側面視囲まれ、且つ左右側方に開口したものとしている。そしてこの荷物載置空間S内に、以下に述べる棚板6を配置している。詳細には、支持基部2から載置面動作機構7を介して棚板6を配置している。
【0059】
棚板6は、本実施形態では支持基部2の上側の略全面を覆うことにより荷物載置面6aの全てを構成し得るものであって、支持基部2の上方に位置付けた前部61と、支持基部2の後端よりも後方に迫り出して設けた後部62と、両側を上方に立ち上げた左右立ち上がり部63と、後端を前記左右立ち上がり部63よりもさらに大きな寸法で立ち上げた後端立ち上がり部64とを主に有している。そして本実施形態では、棚板6を背フレーム40の前後方向部42よりも上方に配置することにより、平面視においてより広い荷物載置空間Sの確保を実現しているものである。
【0060】
具体的には、棚板6は、左右の縁部を前後方向部42の外側よりも広く確保している。また当該左右の縁部は、座3の左右縁部よりも正面視又は平面視内側に位置付けられたものとなっている。そして左右立ち上がり部63は同図に示すように、背フレーム40の前後方向部42よりも上方に位置付けてあるとともに、左右両方向外側向きに傾斜させて設けているため、荷物載置面6a上の荷物の出し入れ時に背フレーム40にも引っかからず、好適な使い心地を実現している。荷物載置空間Sは座3と棚板6によって挟まれた、限られた空間であり、この棚板6上に書類などを載置する場合、棚板6を左右いっぱいスライドさせて、座3の左右縁よりも外方に上記立ち上がり部63を位置させることで、書類の縁部を棚板6上に置くと、前記立ち上がり部63によって書類全体が棚板6の中央部に向かって滑るように収まるようになっている。
【0061】
さらに本実施形態に係る椅子は、図11に示すように、背凭れ4を起立状態とした際に棚板6の後端を前後方向部42の後端よりも前側に位置付けている。斯かる構成により、背凭れ4を起立状態とした時に背フレーム40の上下方向部43と棚板6とが互いに干渉しないものとなっている。斯かる構成により、座3の後端部32が沈み込んだとしても、荷物載置空間Sが前側の上下寸法S2よりも後側の上下寸法S1が大きく形成されているので、荷物載置面6a上に載置した荷物に座3が干渉してしまうという不具合を有効に回避している。
【0062】
そして載置面動作機構7は、上記実施形態同様に、支持基部2に取り付けられるレール支持部71と、このレール支持部71に前後方向3箇所において固定されたレール72と、棚板6に取り付けられてレール72内を移動し得るスライダ73とを有している。これらレール支持部71、レール72及びスライダ73の具体的な構成は、上記実施形態と同様であるため、具体的な説明は省略するものとする。
【0063】
この載置面動作機構により、図12に示すように、棚板6が側方に好適にスライド移動することで、好適に収納位置(X)及び突出位置(Y)をとり得るものとなっている。
【0064】
以上のように、オフィスにおいて好適に用いられている背座シンクロチルト機構を備えた椅子に対しても本発明を適用すれば、好適に荷物載置面6aを動作させ得る構成となる。
【0065】
特に本実施形態では、荷物載置空間Sが前側の上下寸法S2よりも後側の上下寸法S1が大きく形成しておくことにより、背凭れ4の後傾に伴う座3の下降により、荷物類が座3に干渉されることも起こり難いので、荷物類を載置した荷物載置面6aの動作を安定して行い得るものとなっている。
【0066】
特に本実施形態では、シンクロチルト機構と載置面動作機構7とを併せ備えるための好適な態様の一例として、支持基部2及び座3で側面視囲まれ左右側方に開口した荷物載置空間S内に荷物載置面6aを位置付けて、載置面動作機構7を、平面視座3の占有範囲から側方へ荷物載置面6aを突出させるという態様を採用することにより、荷物載置空間Sの十分な確保と、載置面動作機構7の安定した動作、すなわち荷物の出し入れのし易さとを有効に両立させている。
【0067】
そして上記の構成のもと、本実施形態では、棚板6を前後方向部42よりも上方に配置することで、より大きな荷物載置面6aの確保と、背凭れ4の動作に拘わらない安定した荷物載置面6aの動作を実現している。
【0068】
そしてこの実施形態では、椅子自体の動作や荷物載置面6a自体の動作によっても荷物類の不意な脱落を有効に抑制すべく、棚板6に後端立ち上がり部64、並びに左右立ち上がり部63を設けたものとしている。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0070】
<変形例>
例えば図13に示すように、上記実施形態とはスライダ73とレール72との配置を逆にした構成、すなわち、棚板6下面にレール72を取り付けるか或いはレール72と棚板6とを一体に成形し、支持基部2上面に、スライダ73を設けた取付部71を装着するものであってもよい。
【0071】
また上記実施形態では荷物載置面を棚板の一部とした態様を開示したが、勿論、抽斗の底板が荷物載置面である態様であってもよい。また荷物載置面自身が伸縮するという態様や、例えばリンク機構などによって収納位置から突出位置へ動作可能となるような態様など、の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。さらにスライダの位置決めは穴だけに限られるものではなく、凹部や磁石による吸着、レールとスライダの凹凸弾性嵌合などを利用したものであっても良い。
【0072】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…脚体
2…支持基部
3…座
4…背凭れ
40…背フレーム
42…前後方向部
43…上下方向部
6…棚板
6a…荷物載置面
63…立ち上がり部(左右立ち上がり部)
64…立ち上がり部(後端立ち上がり部)
7…載置面動作機構
70…位置決め手段
72…レール
72b…開口(位置決め穴)
73…スライダ
73b…転動体(鋼球)
S…荷物収容空間
X…収容位置
Y…突出位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、座を水平方向に回転可能に支持されている椅子のうち、フリーアドレスタイプのオフィスで好適に使用され得る椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フリーアドレス形式のオフィスレイアウトを採用したフリーアドレスオフィス(例えば、下記非特許文献を参照)は、1980年代後半に始まったとされる。フリーアドレスオフィスでは、執務者個々人の自席を固定せず、誰でも自由に利用できるデスク及び椅子を配したカフェスタイルのフロアを構築する。
【0003】
そしてこのようなフリーアドレスオフィスの場合、執務者は、必要書類やパーソナルコンピュータ等を予め勤務者に割り当てられたロッカー等から取り出し、それらをオフィス内に持参し、空いている席に着いて仕事をする。
【0004】
また他方、これまでの椅子の中には、上着を掛けておくためのハンガーを背の上端に設けたり、肘掛けの内部や座の下方のスペースを利用して、必要書類と要ったものを含む着座者の所持品を収納したりすることが可能なように構成されている椅子も、種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−25855号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】嶋村仁志、山田哲弥、杉山武、岩田美成、「研究執務スペースのフリーアドレス化に関する研究その1:折畳移動机を用いたフリーアドレス・オフィスのユーザー満足度評価による効果分析」、日本建築学会計画系論文集、社団法人日本建築学会、1998年7月30日、No.509、pp.129−134
【非特許文献2】岩切一幸、毛利一平、外山みどり、野瀬かおり、落合孝則、城内博、斉藤進、「フリーアドレス形式オフィスレイアウトでのVDT作業者の姿勢および身体的疲労感」、産業衛生学雑誌、社団法人日本産業衛生学会、2006年1月20日、Vol.48、pp.7−14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上述のようなフリーアドレスオフィスにおける執務者の実際の作業を考えると、上記のような必要書類等に限られず、様々な荷物類を椅子に近接した位置に位置付けておく事ができる椅子のなかでも、頻繁に出し入れを行い易い椅子が求められている。すなわち、上記特許文献1に挙げたような座の前方に引き出して使用する抽斗を有した椅子においても、同様に上記の要求を満たし得る椅子が求められる。しかしながら同文献に挙げたものでは、例えば着座者の執務中に抽斗内の荷物類を取りだそうとすれば、着座者は一度立ち上がるか、着座者自身の足を一度側方に退避させてから取り出さなければならない。加えて、オフィスでは通常、椅子を使用しない状態では椅子の座をデスクの下肢空間内へ収容した状態とするが、その様な状態から上記の抽斗内の荷物類を取りだそうとすれば、一端椅子の座をデスクの下肢空間から取り出さなければならない。
【0008】
本発明は、このような点に着目したものであり、着座者の付近に容易に荷物類を位置付けつつ、容易且つ好適に荷物類の出し入れを行い得る椅子を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。すなわち本発明に係る椅子は脚体と、この脚体により回転可能に支持された支持基部と、この支持基部上に配された座とを具備してなる椅子において、前記支持基部と前記座との間に荷物載置面が設けられ、その荷物載置面と座の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間を形成し、前記荷物載置面を平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置と、占有範囲よりも側方又は後方へ突出させた突出位置との間で動作させる載置面動作機構を具備していることを特徴とする。
【0010】
ここで、荷物載置面とは、例えば水平方向からアクセスし得る棚板の上面でも、収容位置ではアクセス不能に構成された抽斗の底板の上面であっても良い。すなわち荷物類を載置し得る面であれば、種々の態様が考えられる。
【0011】
このようなものであれば、着座者の執務中、または椅子の座の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面上の荷物類の出し入れを容易に行うことができる。そうすることにより、フリーアドレスオフィスにおいて、着座者の執務中や着席或いは離席時において荷物類の取り扱いをスムーズに行なわせて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を提供することができる。
【0012】
そして着座者の動作による座などの動作に関わらす安定して荷物類を載せ置き得るものとするためには、荷物載置面を支持基部に支持されたものとしておくことが望ましい。
【0013】
そして、荷物を容易に取り出すための構成としては、載置面動作機構が、前記荷物載置面を前記収容位置と前記突出位置との間でスライド移動させるという態様を挙げることができる。
【0014】
そして、より扱い易い載置面動作機構を実現するためには、収納位置又は突出位置で荷物載置面を位置決めする位置決め手段を設ける事が望ましい。
【0015】
そして載置面動作機構のスムーズな動作を実現するための具体的な構成として、載置面動作機構を前記支持基部及び前記棚板の何れか一方に設けたレールと、他方に設けたスライダとを有するものとして、位置決め手段が、レールに設けられた開口と、スライダに設けられ収納位置又は突出位置で開口に嵌まり得る転動体とを設けたものとしておくことが好ましい。
【0016】
特に着座者の着座・執務中での荷物類の出し入れを容易に行い得るための構成として、載置面動作機構を、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させる態様を挙げることができる。
【0017】
他方、本発明の椅子は、支持基部に支持され前記座の後端部を支持する背凭れをさらに有するとともに、前記背凭れの後傾動作と前記座の後端部の下降動作とを連動させるためのシンクロチルト機構をさらに備えたものであっても、好適に適用することができる。
【0018】
そしてシンクロチルト機構を備えた椅子においては、荷物載置空間が前側の上下寸法よりも後側の上下寸法が大きく形成しておくと、荷物類が座に干渉され難い構成となるため、載置面動作機構の動作が損なわれないものとなる。
【0019】
特に、シンクロチルト機構と載置面動作機構とを併せ備える好適な態様の一つとして、背凭れが前記支持基部に対して傾動可能に支持された背フレームを有するものであり、荷物載置空間を、前記背フレーム、前記支持基部及び前記座に側面視囲まれた左右側方に開口した空間であるものとし、前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させる態様を挙げることができる。
【0020】
そして、背フレームと荷物載置面とが互いに干渉させずにシンクロチルト動作と荷物載置面の動作とをそれぞれスムーズに行い得るものとするためには、背フレームが、前記支持基部から後方へ延出する前後方向部と、この前後方向部の後端から上方へ延出する上下方向部とを有し、前記棚板を前記前後方向部よりも上方に配置したものを挙げることができる。
【0021】
そしてこのような荷物載置面を側方へ動作させる態様の場合、棚板の後端を前記前後方向部の後端よりも前側に位置付け、この棚板が、前記後端に上方へ立ち上がる立ち上がり部を設けておけば不意な後ろ側への荷物類の脱落を有効に回避することができる。
【0022】
また、棚板が、当該棚板の左右縁部から立ち上がる立ち上がり部を設けておけば、荷物載置面の動作時においても、椅子の動作時においても好適に荷物の脱落を回避し得るものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、着座者の執務中、または椅子の座の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面上の荷物類の出し入れを容易に行うことができる。その結果、フリーアドレスオフィスにおいて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る椅子の外観図。
【図2】同平面図。
【図3】同実施形態に係る椅子の構成説明図。
【図4】同実施形態に係る椅子の他の構成説明図。
【図5】同実施形態に係る要部説明図。
【図6】同実施形態に係る他の要部説明図。
【図7】図6を拡大して説明する図。
【図8】同実施形態に係る要部の断面図。
【図9】同実施形態の変形例1に係る平面図。
【図10】同実施形態の変形例2に係る平面図。
【図11】本発明の第2実施形態に係る椅子の側面図。
【図12】同背面図。
【図13】同実施形態の変形例に係る模式的な図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0026】
この椅子は、図1ないし図7に示すように、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座3と、座3の後端から上方に一体的に延出させて設けられた背凭れ4と、この背凭れ4の側方から左右に延びて設けられた肘掛け5と、そして支持基部2上に配された棚板6とを具備してなる。そして本実施形態に係る椅子は、支持基部2と座3との間に荷物載置面6aが設けられ、その荷物載置面6aと座3の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間Sを形成しているものである。すなわち本実施形態に係る椅子は、支持基部2によって支持された座3を有し、支持基部2から上方に離間して配置された座3との間に空間を有する椅子に対し、その空間に荷物載置面6aを設けることで、その空間を荷物載置空間Sとして有効に活用し得るものである。また本実施形態では、肘掛け5を背凭れ4における、座3よりも上側の所定箇所から前方に略水平に持ち出すことによって形成している。すなわち本実施形態では、肘掛け5を荷物収容空間Sに干渉させない構成として、荷物の出し入れに肘掛け5が邪魔にならない構成を適用している。
【0027】
以下、本実施形態に係る椅子の構成について説明する。
【0028】
脚体1は、同図に示すように、キャスタ11を有した脚羽根タイプの脚ベース12と、この脚ベース12の中心部に立設した脚支柱13とを具備してなる。脚支柱13は、ガススプリングを主体に構成された通常のもので、この脚支柱13の上端部に支持基部2が取り付けられている。
【0029】
支持基部2は、同図に示すように、脚体1によって水平旋回可能に支持されたもので、座3の上下位置を調節するために脚支柱13に設けたガススプリングを操作するための操作レバー24と、上側を平坦に設けた上面25と、この上面から側方から後方において設けられた起立面である外周面26とを具備してなる。そして本実施形態ではこの支持基部2の前側に座3を固着したものとしているが、座3を支持する箇所にトーションバー等の手段を用いて座3及び座3と一体に設けられた背凭れ4をロッキング可能に構成してもよい。なお本実施形態では操作レバー24を上面25から平面視前方又は前側方に突出させて設けることで、荷物載置空間Sの左右を塞ぐことが無く、荷物の出し入れの邪魔にならない構成となっている。
【0030】
座3は、図1に示すように、対をなす座フレーム35間に座張地36を張り設けてなるものである。本実施形態では、座3の前端に正面視U字状の前横梁34を設け、この前横梁34によって座張地36を緊張させた状態で座フレーム35に支持させる態様を適用している。そして本実施形態では座フレーム35は、背凭れ4の背フレーム45と一体に設けられることによりフレームFを構成している。加えて座張地36は、背凭れの背張地46と一体に設けられることにより張地Mを構成してなるものである。
【0031】
背凭れ4は、同図に示すように、対をなす背フレーム45の前面に背凭れ4の前面を構成する背張地46を張り設けたものである。背フレーム45は、その下端側に下横梁47と、上端に上横梁48を介在させることにより、背張地46に適度な張力を付与している。また下横梁47は、肘支柱51を両側からそれぞれ前方へ持ち出し、その肘支柱51の先端側に肘当て52を形成することにより、肘掛け5を一体に設けたものである。他方、上横梁48は、下方に垂下するハンガー48aを一体に形成したものとしている。
【0032】
棚板6は、支持基部2に、後述する載置面動作機構7を介して支持されており、上面側を荷物等を載置し得る荷物載置面6aとしたものである。また本実施形態では当該棚板6の前後4箇所に、後述するスライダ73を固定するためのスライダ取付部65を設けている。棚板6の下面左右方向で、レール72を避けた前後位置に棚板6補強用のリブ66を設けている。このリブ66の高さはレール72よりも低く設定されている。そうすることでこのリブ66は、棚板6自体を撓み難く構成しつつ、棚板6スライド時に取付部71の上面とは干渉しないようにしている。
【0033】
しかして本実施形態に係る椅子は、支持基部2と棚板6との間に、荷物載置面6aを平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7を設けたものとしている。
【0034】
載置面動作機構7は、支持基部2にレール72を取り付けるためのレール取付部71と、棚板6をスライドさせるためのレール72と、レール72に沿って棚板6をスライド移動させるためのスライダ73と、レール72の下面と取付部71側面とをつなぐように設けられたステー74とを有している。レール支持部71は、上面側から突出してレール72に係り合って固定するためのレール取付爪71aと、支持基部2の上面25及び外周面26に嵌合することにより当該支持基部2に固定される取付部71bとを有してなる。
【0035】
レール72は、レール支持部71に固定されるためのスリット72aと、レール72底面における所定の位置に4箇所穿たれた開口たる位置決め穴72bと、両端を上方から内方へ折り返して設けられた折り返し部72cとを有している。具体的に説明するとレール72は、具体的には図7において一部拡大して示すように、断面C字形の樹脂押出材を主体としている。一本のレール72には、左右両端部と棚板6の収納位置を決める場所の合計4箇所に鋼球6が嵌る位置に位置決め穴72bが設けられている。レールの左右両端部には、底面を構成する部分の両端が、レールの高さより大きい寸法で左右に延びるように切り抜かれて形成されており、この切り抜かれた樹脂部分によって折り返し部が形成される。すなわち、この左右に延びる樹脂部分をC字形断面の中に押込むように折り返して、レール左右両端部近傍のC字形断面の向かい合う端縁に設けた一対の切込み72dに嵌め合わせることで押出材に蓋をするように、折り返し部72cを形成している。この折り返し部72cにより、棚板6を左右両端までスライドさせたとき、この折り返し部72cが蓋の役割をすることでスライダ73が当たって止まり、棚板6がレール72より左右外方に抜け出せないようになっている。また、その位置に鋼球73bが嵌る位置決め穴72bを設けており、棚板6を左右両端に引き出した突出位置(Y)で棚板6を仮停止させた状態を維持できるようになっている。
【0036】
スライダ73は、上述した棚板6のスライダ取付部65にねじ止めされるスライダ本体73aと、スライダ本体73a内から下端を露出させた状態で転がり可能に収納された転動体たる鋼球73bとを有している。
【0037】
ステー74は、レール73の下面と取付部71側面とをつなぐように設けられている。そしてこのステー74により、棚板6が左右にスライドした際にレールに掛かる偏荷重に十分耐えられる構造となっている。そしてこのステー74は、正面視及び背面視においてレール72の左右を持ち上げて左右を高くするように形成している。具体的には図8に示すように、ステー74の両端でレール72を下から持ち上げておき、レールの中間部をビス等によって取付部71に固定して下に引き込むようにしている。レール72は押出材を用いているため、そのままでは傾斜が無く一直線状であるが、これによって、レール72が大きく歪まない程度の弾性変形による湾曲を付けている。
【0038】
しかして本実施形態では、レール72に設けられた開口たる位置決め穴72bと、この位置決め穴72bに嵌まり得る転動体たる鋼球73bとによって、収納位置(X)及び突出位置(Y)で荷物載置面6aを位置決めする位置決め手段70を構成している。
【0039】
図8に示すように、棚板6をレール72に沿って側方に動作させると、レール72内を鋼球73bが転がることによって、棚板6すなわち荷物載置面6aがスムーズにスライド移動をすることができる。そして収納位置(X)及び突出位置(Y)では、鋼球73bの下端がそれぞれ位置決め穴72bに嵌ることで、好適に収納位置(X)及び突出位置(Y)に位置決めされる。そして特に突出位置(Y)では、スライダ73はレール72の折り返し部72cを押圧した状態で位置決めされる。すなわち、棚板6を左右いずれかにスライドさせ、スライダ73が、レール72の端部に位置したとき、スライダ73と棚板6の左右いずれかの偏縁までの寸法分だけ棚板6が左右方向に移動することになり、このときには棚板6は平面視座面よりも左右いずれかにはみ出した状態になっていることになる。そのため、例えば使用者が棚板6の側端を軽く押圧して鋼球73bを位置決め穴72bに嵌った状態から解除するのみで、折り返し部72cの弾性反発力と相まって、鋼球73bがレール72内をスムーズに転がるものとなっている。その結果、棚板6すなわち荷物載置面6aは収納位置(X)へ向かってスムーズにスライド動作し、いわば自動的に収納位置(X)まで移動することとなる。当然、棚板6を内方に手で押すことで収納位置(X)にスライドさせても良い。レール72には上述の通り中央部が最も低く、左右両端部が高くなるようにわずかな傾斜が設けられているため、これによって棚板6は、手で操作して左右両端の位置決め孔穴72bから鋼球73bを外してやるとスムーズにスライド移動し、収納位置(X)の位置決め穴72bに鋼球73bが嵌合して収納位置(X)で停止するようになっている。
【0040】
以上のような構成とすることにより、本実施形態に係る椅子は、着座者の執務中、または椅子の座3の部分をデスクの下肢空間へ収納した状態であっても、荷物載置面6a上の荷物類の出し入れを容易に行うことができるものとなっている。その結果、フリーアドレスオフィスにおいて、着座者の執務中や着席或いは離席時において荷物類の取り扱いをスムーズに行なわせて着座者の無駄の無い動作に有効に寄与し得る椅子を実現している。
【0041】
そして着座者の動作による座3などの動作に関わらす安定して荷物類を載せ置き得るものとするために本実施形態では、支持基部2に棚板6を取付けるレール支持部71を設けて、荷物載置面6aが支持基部2に支持される態様を適用している。
【0042】
また荷物類を容易に取り出すために本実施形態では、載置面動作機構7にレール72を採用することで、荷物載置面6aを収容位置(X)と突出位置(Y)との間で往復スライド移動させるものとしている。
【0043】
そして、載置面動作機構7をより扱い易いものとするように本実施形態では、収納位置(X)及び突出位置(Y)で荷物載置面6aを位置決めする位置決め手段70をさらに設けたものとしている。
【0044】
そしてレール72内を転がる転動体たる鋼球73bが開口たる位置決め穴72bに嵌るという単純な構成によって、荷物載置面6aの位置決めと、荷物載置面6aのスムーズな動作とを、本実施形態では併せて実現している。また勿論、荷物載置面6aのスムーズな動作を実現するためには上記鋼球73bと穴72bとを用いた構成に限定されることはなく、滑り易い構成をなすスライダのみの構成としても良い。
【0045】
そして本実施形態では特に着座者の着座・執務中での荷物類の出し入れを容易に行うことに着目した結果、載置面動作機構7を、平面視座3の占有範囲から両側のどちらにも荷物載置面6aが突出するものとしている。そうすることにより、着座者が執務中に左右どちらからでも荷物類を容易に取り出すことができるものとなっている。
【0046】
<変形例1>
続いて本実施形態の各変形例について説明するが、同変形例において上記実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
本発明の載置面動作機構は荷物載置面6aをスライド動作する態様のみに限られることはない。すなわち図9に示すように、棚板6の前端部分を支持基部2に対して回転可能に構成することによっても、荷物載置面6aを平面視座3の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置(X)と、占有範囲よりも側方へ突出させた突出位置(Y)との間で動作させる載置面動作機構7aを構成することができる。
【0048】
<変形例2>
また、上記実施形態では、レール72の左右両端部にストッパ72cを設けた構成とすることにより棚板6の動作端を位置決めし得る態様とした。しかし、レール72の幅寸法が棚板6の幅寸法に対して狭く設定されているような場合には、図10に示すような、棚板6の下面側に、棚板6を左右の動作端までスライドさせた際にレールの左右両端に当接するスライドストッパ67を設けても良い。このスライドストッパ67は、例えば、棚板6の上面からビスなどで取り付けるようにすれば良い。そして本変形例では、この様なスライダストッパ67を設けることによって、このスライドストッパ67とレール72とによって、詳細には、スライドストッパ67とレール72の側端すなわちスライドストッパ67との当接箇所とによって、本実施形態同様の位置決め手段70を構成している。
【0049】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態について、図面を参照して説明する。なお本実施形態においても上記変形例同様、上記実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0050】
同実施形態に係る椅子は、図11ないし図12に示すように、支持基部2に支持され座3の後端部を支持する背凭れ4の後傾動作と座3の後端部の下降動作とを連動させるシンクロチルト機構を備えた椅子に対し、上記実施形態同様の載置面動作機構7を適用したものである。
【0051】
この椅子は、図11ないし図12に示すように、脚体1と、この脚体1の上部に支持され水平旋回可能な支持基部2と、この支持基部2の上に配された座3と、前記座3側方から左右上方に延びて設けられた肘掛け5と、支持基部2に後傾動作可能に設けられた背フレーム40を有する背凭れ4と、そして後に詳述する棚板6とを具備してなる。斯かる構成によりこの椅子は、背フレーム40後傾時に座3も連動して後方に沈み込むシンクロチルト動作をするようになっている。
【0052】
脚体1は上記実施形態同様に、キャスタ11、脚ベース12、脚支柱13とを具備してなり、この脚支柱13の上端部に支持基部2が取り付けられている。
【0053】
支持基部2は、同図に示すように、脚体1によって水平旋回可能に支持されたもので、脚支柱13に装着されたハウジング21と、このハウジング21の前後中間部から両側へ突出させて設けた背凭れ4支持用の延出軸支部たる支軸22とを具備してなる。そして本実施形態ではこの支軸22にトーションバーとしての作用を奏させて傾動反力発生機構としての役割を担わせることにより、支持基部2自体をよりコンパクトに構成したものとしている。また他方支持基部2は、前端部において上下方向リンク23を介して座3の前端部31を支持している。これにより荷物載置空間Sの前側部分の高さ寸法を有効に確保し得るものとなっている。また勿論図示のような上下方向リンク23に限らず、支持基部2の前端部を立ち上がるように隆起させて、その上端部と座3の前部下面とで前後スライドする構成としても良い。さらに支持基部2は、同図では脚支柱13から斜め上方に延出した形状としているが、勿論前方に水平に延びるようにしても良い。そうすれば前から後まで略水平に後述の棚板を確保でき、より大きな荷物載置空間Sを確保できる。
【0054】
座3は、図11に示すように、座受に座面を構成するクッション体を装着してなるものである。本実施形態では、座3の前端部31は、支持基部2に対し前記上下方向リンク23を介して動作可能に支持させており、座3の後端部32は、背フレーム40における座支持部44に前後スライド可能に取り付けている。また当該座3は、後端部32の上方に、後述の張地41の下方を支持するとともに着座者の腰部を支えるためのランバーサポート部33を具備しているが、当該ランバーサポート部33は、斯かる態様に限られることはなく、例えば背フレーム40に設けられたものであるなど、他の構成を適用しても良い。
【0055】
背凭れ4は、同図に示すように、背フレーム40の前面に背凭れ4の前面を構成する張地41を張り設けたものである。背フレーム40は、全体が側面視ほぼL字型であり、基端部を前記支持基部2の支軸22に後傾動作可能に取り付けられた左右対をなす前後方向部42と、この前後方向部42の先端すなわち後端から上方に延出する上下方向部43と、この上下方向部43から前方に突出させて形成され、前記座3の後端部32を支持、詳細には、背フレーム40の後傾に伴って後端部32を前後スライド可能に支持する座支持部44を備えている。本実施形態では、座支持部44を上下方向部43側に設けることにより後述する荷物載置空間Sの後側の上下寸法を大きく設定し得るものとしているが、勿論前後方向部42から上方へ持ち出すことにより構成した構成や、その他の構成により設けたものであって良い。また本実施形態では一対の前後方向部42を支軸22から外嵌するように取り付けることにより、一対の前後方向部42間の離間距離を十分に確保したものとなっている。
【0056】
本実施形態の椅子は上述の通り、座3及び背凭れ4が連動して傾動するシンクロロッキング動作が可能である。すなわち、シンクロロッキング動作では、背フレーム40全体が支軸22回りに回動することで背凭れ4が前後に傾動する。同時に、座3の後端部32が背フレーム40に連動して上下に揺動しつつ前後にスライドし、かつ座3の前端部31が前後に動作する。
【0057】
肘掛け5は、左右対称形状をなしている、所謂T型肘の形状を採用したものであり、基端部を前記座3に取り付けられた肘支柱50と、この肘支柱50に支持された肘当て51とを具備してなる。なお本実施形態に係る肘掛け5は、座3に対して固定され且つ一体的に形成されたT型肘の態様としているが、例えば肘支柱50の長さを適宜変更して肘当て51の高さ寸法を変更し得る可動肘の態様を採用してもよい。また勿論、肘当て51を水平方向に旋回可能に構成した態様を適用してもよい。さらに肘掛け5は、図示の態様の他、背フレーム40の上下方向部43から前方に持ち出して構成しても良い。本実施形態では肘支柱50を座3に取り付けることにより、上記の第1実施形態と同様に、肘掛け5が荷物載置空間Sの側方に位置することで荷物の出し入れに干渉することを有効に回避している。
【0058】
しかして本実施形態に係る椅子は上記の構成のもと、荷物載置空間Sを、背フレーム40、支持基部2及び座3で側面視囲まれ、且つ左右側方に開口したものとしている。そしてこの荷物載置空間S内に、以下に述べる棚板6を配置している。詳細には、支持基部2から載置面動作機構7を介して棚板6を配置している。
【0059】
棚板6は、本実施形態では支持基部2の上側の略全面を覆うことにより荷物載置面6aの全てを構成し得るものであって、支持基部2の上方に位置付けた前部61と、支持基部2の後端よりも後方に迫り出して設けた後部62と、両側を上方に立ち上げた左右立ち上がり部63と、後端を前記左右立ち上がり部63よりもさらに大きな寸法で立ち上げた後端立ち上がり部64とを主に有している。そして本実施形態では、棚板6を背フレーム40の前後方向部42よりも上方に配置することにより、平面視においてより広い荷物載置空間Sの確保を実現しているものである。
【0060】
具体的には、棚板6は、左右の縁部を前後方向部42の外側よりも広く確保している。また当該左右の縁部は、座3の左右縁部よりも正面視又は平面視内側に位置付けられたものとなっている。そして左右立ち上がり部63は同図に示すように、背フレーム40の前後方向部42よりも上方に位置付けてあるとともに、左右両方向外側向きに傾斜させて設けているため、荷物載置面6a上の荷物の出し入れ時に背フレーム40にも引っかからず、好適な使い心地を実現している。荷物載置空間Sは座3と棚板6によって挟まれた、限られた空間であり、この棚板6上に書類などを載置する場合、棚板6を左右いっぱいスライドさせて、座3の左右縁よりも外方に上記立ち上がり部63を位置させることで、書類の縁部を棚板6上に置くと、前記立ち上がり部63によって書類全体が棚板6の中央部に向かって滑るように収まるようになっている。
【0061】
さらに本実施形態に係る椅子は、図11に示すように、背凭れ4を起立状態とした際に棚板6の後端を前後方向部42の後端よりも前側に位置付けている。斯かる構成により、背凭れ4を起立状態とした時に背フレーム40の上下方向部43と棚板6とが互いに干渉しないものとなっている。斯かる構成により、座3の後端部32が沈み込んだとしても、荷物載置空間Sが前側の上下寸法S2よりも後側の上下寸法S1が大きく形成されているので、荷物載置面6a上に載置した荷物に座3が干渉してしまうという不具合を有効に回避している。
【0062】
そして載置面動作機構7は、上記実施形態同様に、支持基部2に取り付けられるレール支持部71と、このレール支持部71に前後方向3箇所において固定されたレール72と、棚板6に取り付けられてレール72内を移動し得るスライダ73とを有している。これらレール支持部71、レール72及びスライダ73の具体的な構成は、上記実施形態と同様であるため、具体的な説明は省略するものとする。
【0063】
この載置面動作機構により、図12に示すように、棚板6が側方に好適にスライド移動することで、好適に収納位置(X)及び突出位置(Y)をとり得るものとなっている。
【0064】
以上のように、オフィスにおいて好適に用いられている背座シンクロチルト機構を備えた椅子に対しても本発明を適用すれば、好適に荷物載置面6aを動作させ得る構成となる。
【0065】
特に本実施形態では、荷物載置空間Sが前側の上下寸法S2よりも後側の上下寸法S1が大きく形成しておくことにより、背凭れ4の後傾に伴う座3の下降により、荷物類が座3に干渉されることも起こり難いので、荷物類を載置した荷物載置面6aの動作を安定して行い得るものとなっている。
【0066】
特に本実施形態では、シンクロチルト機構と載置面動作機構7とを併せ備えるための好適な態様の一例として、支持基部2及び座3で側面視囲まれ左右側方に開口した荷物載置空間S内に荷物載置面6aを位置付けて、載置面動作機構7を、平面視座3の占有範囲から側方へ荷物載置面6aを突出させるという態様を採用することにより、荷物載置空間Sの十分な確保と、載置面動作機構7の安定した動作、すなわち荷物の出し入れのし易さとを有効に両立させている。
【0067】
そして上記の構成のもと、本実施形態では、棚板6を前後方向部42よりも上方に配置することで、より大きな荷物載置面6aの確保と、背凭れ4の動作に拘わらない安定した荷物載置面6aの動作を実現している。
【0068】
そしてこの実施形態では、椅子自体の動作や荷物載置面6a自体の動作によっても荷物類の不意な脱落を有効に抑制すべく、棚板6に後端立ち上がり部64、並びに左右立ち上がり部63を設けたものとしている。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0070】
<変形例>
例えば図13に示すように、上記実施形態とはスライダ73とレール72との配置を逆にした構成、すなわち、棚板6下面にレール72を取り付けるか或いはレール72と棚板6とを一体に成形し、支持基部2上面に、スライダ73を設けた取付部71を装着するものであってもよい。
【0071】
また上記実施形態では荷物載置面を棚板の一部とした態様を開示したが、勿論、抽斗の底板が荷物載置面である態様であってもよい。また荷物載置面自身が伸縮するという態様や、例えばリンク機構などによって収納位置から突出位置へ動作可能となるような態様など、の具体的な態様は上記実施形態のものに限定されることはなく、既存のものを含め、種々の態様のものを適用することができる。さらにスライダの位置決めは穴だけに限られるものではなく、凹部や磁石による吸着、レールとスライダの凹凸弾性嵌合などを利用したものであっても良い。
【0072】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1…脚体
2…支持基部
3…座
4…背凭れ
40…背フレーム
42…前後方向部
43…上下方向部
6…棚板
6a…荷物載置面
63…立ち上がり部(左右立ち上がり部)
64…立ち上がり部(後端立ち上がり部)
7…載置面動作機構
70…位置決め手段
72…レール
72b…開口(位置決め穴)
73…スライダ
73b…転動体(鋼球)
S…荷物収容空間
X…収容位置
Y…突出位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚体と、この脚体により回転可能に支持された支持基部と、この支持基部上に配された座とを具備してなる椅子において、前記支持基部と前記座との間に荷物載置面が設けられ、その荷物載置面と座の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間を形成し、
前記荷物載置面を平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置と、占有範囲よりも側方又は後方へ突出させた突出位置との間で動作させる載置面動作機構を具備していることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記荷物載置面が、前記支持基部に支持されたものである請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記載置面動作機構が、前記荷物載置面を前記収容位置と前記突出位置との間でスライド移動させるものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記載置面動作機構が、前記収納位置又は前記突出位置で前記荷物載置面を位置決めする位置決め手段を有している請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【請求項5】
前記載置面動作機構が前記支持基部及び前記棚板の何れか一方に設けたレールと、他方に設けたスライダとを有するものであり、
前記位置決め手段が、前記レールに設けられた開口と、前記スライダに設けられ前記収納位置又は前記突出位置で前記開口に嵌まり得る転動体とを有するものである請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させるものである請求項1、2、3、4又は5記載の椅子。
【請求項7】
前記支持基部に支持され前記座の後端部を支持する背凭れをさらに有するとともに、前記背凭れの後傾動作と前記座の後端部の下降動作とを連動させるためのシンクロチルト機構をさらに備えたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の椅子。
【請求項8】
前記荷物載置空間が前側の上下寸法よりも後側の上下寸法が大きく形成されている請求項7記載の椅子。
【請求項9】
前記背凭れが前記支持基部に対して傾動可能に支持された背フレームを有するものであり、
荷物載置空間を、前記背フレーム、前記支持基部及び前記座に側面視囲まれた左右側方に開口した空間であるものとし、
前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を有する棚板を突出させるものである請求項7又は8記載の椅子。
【請求項10】
前記背フレームが、前記支持基部から後方へ延出する前後方向部と、この前後方向部の後端から上方へ延出する上下方向部とを有し、
前記棚板を前記前後方向部よりも上方に配置している請求項9記載の椅子。
【請求項11】
前記棚板の後端を前記前後方向部の後端よりも前側に位置付け、
この棚板が、前記後端に上方へ立ち上がる立ち上がり部を有している請求項10記載の椅子。
【請求項12】
前記棚板が、当該棚板の左右縁部から立ち上がる立ち上がり部を有している請求項7、8、9、10又は11記載の椅子。
【請求項1】
脚体と、この脚体により回転可能に支持された支持基部と、この支持基部上に配された座とを具備してなる椅子において、前記支持基部と前記座との間に荷物載置面が設けられ、その荷物載置面と座の裏面との間に荷物を出し入れ自在に収容するための荷物収容空間を形成し、
前記荷物載置面を平面視座の占有範囲よりも内側に位置付けた収容位置と、占有範囲よりも側方又は後方へ突出させた突出位置との間で動作させる載置面動作機構を具備していることを特徴とする椅子。
【請求項2】
前記荷物載置面が、前記支持基部に支持されたものである請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記載置面動作機構が、前記荷物載置面を前記収容位置と前記突出位置との間でスライド移動させるものである請求項1又は2記載の椅子。
【請求項4】
前記載置面動作機構が、前記収納位置又は前記突出位置で前記荷物載置面を位置決めする位置決め手段を有している請求項1、2、3又は4記載の椅子。
【請求項5】
前記載置面動作機構が前記支持基部及び前記棚板の何れか一方に設けたレールと、他方に設けたスライダとを有するものであり、
前記位置決め手段が、前記レールに設けられた開口と、前記スライダに設けられ前記収納位置又は前記突出位置で前記開口に嵌まり得る転動体とを有するものである請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を突出させるものである請求項1、2、3、4又は5記載の椅子。
【請求項7】
前記支持基部に支持され前記座の後端部を支持する背凭れをさらに有するとともに、前記背凭れの後傾動作と前記座の後端部の下降動作とを連動させるためのシンクロチルト機構をさらに備えたものである請求項1、2、3、4、5又は6記載の椅子。
【請求項8】
前記荷物載置空間が前側の上下寸法よりも後側の上下寸法が大きく形成されている請求項7記載の椅子。
【請求項9】
前記背凭れが前記支持基部に対して傾動可能に支持された背フレームを有するものであり、
荷物載置空間を、前記背フレーム、前記支持基部及び前記座に側面視囲まれた左右側方に開口した空間であるものとし、
前記載置面動作機構が、平面視座の占有範囲から側方へ前記荷物載置面を有する棚板を突出させるものである請求項7又は8記載の椅子。
【請求項10】
前記背フレームが、前記支持基部から後方へ延出する前後方向部と、この前後方向部の後端から上方へ延出する上下方向部とを有し、
前記棚板を前記前後方向部よりも上方に配置している請求項9記載の椅子。
【請求項11】
前記棚板の後端を前記前後方向部の後端よりも前側に位置付け、
この棚板が、前記後端に上方へ立ち上がる立ち上がり部を有している請求項10記載の椅子。
【請求項12】
前記棚板が、当該棚板の左右縁部から立ち上がる立ち上がり部を有している請求項7、8、9、10又は11記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−172689(P2011−172689A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−38163(P2010−38163)
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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