説明

植物の搾汁液の処理方法

【課題】植物の搾汁液をさらに効果的に処理する手法を完成することにより、無駄無くより効率的に搾汁液を後処理して、搾汁液をより付加価値の高い製品として実現する。
【解決手段】植物の搾汁液には、繊維質は少ないが、葉や茎の肉質の粒が多量に混在しているため、搾汁液をそのまま又はフィルターで濾過してから蒸留することによって、当該植物の搾汁液の蒸留液を得ると共に、蒸留後に蒸留容器の底部に蒸留残り濃縮液が残るように蒸留を制御することによって、積極的に蒸留残り濃縮液を得て、前記蒸留液と併用して、食品や化粧品、皮膚治療剤などの原料ないし添加物として製品化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、月桃などのハーブその他の植物を圧搾して得た搾汁液の処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者は、特願2003−339844号において、スクリュー構造の固液分離装置を提案した。この装置は、図1のように、スクリュー2の入った筒体1の一端側に原料植物の供給部4を有し、前記筒体1中に供給された生の含水植物を筒体1の一端から他端に向けて押圧移動させるようにスクリュー2を回転可能に支持してあり、水分が搾汁された固形物(カス)の排出口5を筒体1の他端側に開口させてあり、該筒体1の側壁に、搾汁液を通過させる小孔6…が多数開けてある。
【0003】
図1につき、さらに詳述すると、円筒1中に内蔵されたスクリュー2の中心軸3がモータMに連結されている。この図では、円筒1は右上がりに斜めに配置されており、その下端側において、円筒上面にホッパー4が設けられ、傾斜上端の開口5が、搾汁カスである固形物の排出口5となっているが、円筒1を水平にして用いることもできる。
【0004】
円筒1の側壁には、搾汁液通過用の小孔6が無数に開けてあるため、ホッパー4から原料植物を投入し、内部の植物を押し上げる方向に、モータMでスクリュー2を回転させると、円筒1中の植物は、スクリュー2の回転によって徐々に傾斜の上側に押し上げられて行く。
【0005】
こうして、円筒1中で植物が押し上げられて行く際にスクリューや後続の植物で押されて、圧搾される。そして、植物中の水分は円筒1の側壁の小孔6から押し出され、樋状ないしケーシング状の搾汁ガイド8に集められて傾斜の下側に流れ落ち、回収されて有効利用される。スクリュー2の回転によって、含水植物は円筒1中で攪拌・圧搾されながら押し上げられるため、円筒1側壁の小孔6と出会う機会が増え、その結果、植物中の水分は効果的に小孔6から押し出される。すなわち、搾汁脱水が行われ、その搾汁カスは、上端の排出口5から押し出される。
【0006】
この際、初めの間は、排出口5の蓋板7が圧縮スプリング9で弾圧され、排出口5は閉じられているため、円筒1中における排出口5寄りほど、含水植物が蓋板7に加圧されて、水分がさらに絞られて搾汁され、含水率が減少していく。
【0007】
いつまでも蓋板7を閉じておくと、モータが過負荷の状態となるが、被処理植物が脱水されてなる排出口5付近の搾汁カスの圧力が圧縮スプリング9のばね圧より大きくなると、矢印a1方向に蓋板7を押しのけて排出口5を開け、脱水された固形の搾汁カスが排出口5から押し出されて落下し、排出される。以後連続して、ホッパー4から含水植物を投入すると、排出口5からは搾汁された状態の固形カスが連続的に排出される。
【0008】
図1における蓋板7の開閉構造や排出口5の開口量の大小、搾汁脱水率などの選択設定の仕方は種々であり、特に限定されない。図示例では、開閉蓋板7が、別のモータM1で駆動される構造で、モータM1の出力軸でチェーン12を介して駆動される歯車G1が、蓋板7に重ねて固定した歯車G2と噛み合っている。また、蓋板7と一体の歯車G2を弾圧する圧縮スプリング9は、スラストベアリングを介してバネ受け11に支持されている。
【0009】
蓋板7はスクリュー2に対して回転可能となっているので、円筒1中の蓋板7寄りの搾汁カスが十分に脱水され、かつ押し固められて密度が増えると圧力も上昇するため、蓋板7と歯車G2は一体的に、圧縮スプリング9に抗して矢印a1方向に固形物で押され、後退していく。そして、検出スイッチSWの検出レバー20に当たって検出スイッチSWをONし、モータM1に電源が入って始動し、歯車G2と蓋板7がモータで高速回転する。
【0010】
蓋板7のスクリュー2側の面には爪ないし刃13を設けて、月桃などのような植物を固液分離する際の繊維を切断可能にしてある。一方、ホッパー4中に歯車状の破砕器を設けて、含水植物がこの破砕器を通過して円筒1中に供給される構造が可能である。しかしながら、このホッパー4中に破砕器に代えて、ホッパー4中に臨んでいる円筒1の開口縁1eを刃物のように鋭いエッジにして、モータMの小さな駆動力でも月桃17を容易に切断可能にする。あるいは、開口縁1eをジグザグ状ないし段状などのギザギザ状にしておくと、スクリュー2で植物を円筒1中に引き込む際に植物が強引に引き千切られるので、植物の分断部から効果的に搾汁液を発生させることも可能である。このように、原料植物を円筒1中に供給する時点でも種々の前処理が可能である。
【特許文献1】特願2003−339844号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、前記特許文献1の技術では、効果的な搾汁構造や搾汁カスの排出構造並びに搾汁液の利用技術は一応実現できたが、その後の実用化の段階で種々研究した結果、搾汁液の後処理や搾汁カスの後処理の技術として不十分であり、未完成であることが判明した。
【0012】
本発明の技術的課題は、このような問題に着目し、搾汁液をさらに効果的に処理する手法を完成することによって、無駄無くより効率的に搾汁液を後処理して、搾汁液をより付加価値の高い製品として実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の技術的課題は次のような手段によって解決される。請求項1は、植物の搾汁液をそのまま又はフィルターで濾過してから蒸留し、蒸留液と蒸留後に残した蒸留残り液とを併用して製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法である。
【0014】
請求項2は、月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法である。
【0015】
請求項3は、月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を静置して、上澄み液とゼリー状の沈降物に分離させ、それぞれ別々に採取して、そのまま又は後処理して製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法である。
【0016】
請求項4は、月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を製品としたことを特徴とする月桃蒸留製品である。
【発明の効果】
【0017】
植物の搾汁液には、繊維質は少ないが、葉や茎の肉質の粒が多量に混在しているため、請求項1のように、搾汁液をそのまま又はフィルターで濾過してから蒸留することによって、当該植物の搾汁液の蒸留液を得ると共に、蒸留後に蒸留容器の底部に蒸留残り濃縮液が残るように蒸留を制御することによって、積極的に蒸留残り濃縮液を得て、前記蒸留液と併用して、食品や化粧品、皮膚治療剤などの原料ないし添加物として製品化できる。
【0018】
請求項2のように、月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を製造すると、月桃の葉及び/又は茎の搾汁液の濃縮液を得ることができる。したがって、月桃を原料にして、3種類の製品を製造できる。また、用途や目的に応じて、これら3種類の製品を適宜配合することによって、さらに多種類の製品を実現できる。
【0019】
原出願時の段落「0031」に記載のように、蒸留残り濃縮液を1〜2か月という長期間静置しておいて、請求項3のように、上澄み液とゼリー状の沈降物に分離させ、それぞれ別々の製品とする。このゼリー状沈降物は、そのまま製品にしてもよいが、天日乾燥その他の手法で乾燥させて、固形や粉末などの製品にできる。用途は、入浴剤その他の皮膚用品や食品添加に使用できる。前記の蒸留工程で蒸留残りの濃縮液が残らないように全部蒸留して、後に残ったゼリー状又は固形物を乾燥させて製品化してもよい。
【0020】
請求項4や原出願時の段落「0030」に記載のように、蒸留した後に、蒸留残りの濃縮液を積極的に残し、製品として利用する。この蒸留残り濃縮液も種々の用途に有効である。したがって、この濃縮液が多めに残るように、全部完全に蒸留しないで、蒸留残り分を多めに残すことも有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に本発明による植物の搾汁液の処理方法が実際上どのように具体化されるか実施形態で説明する。

〔月桃の搾汁液の処理工程〕
図2は図1の装置で搾汁した後の処理工程を示すようにフローチャートであり、ステップS1が原料となる生の植物すなわち月桃である。この月桃をステップS2で、図1の装置で搾汁すると、無数の小孔6からステップS3のように搾汁液が押し出され、排出口5から、搾汁後の搾汁カスが押し出される。
【0022】
前記の搾汁液は、ステップS4のように、そのまま次の蒸留工程に移行してもよいが、必要に応じて濾過してから蒸留してもよい。濾過した際に残った大きな残渣は、食品への添加物として使用したり、化粧品の原料として使用する。あるいは、後述する乾燥/蒸留工程に移行してもよい。
【0023】
ステップS5のように濾過後又は濾紙せずにそのまま蒸留した場合は、ステップS6において、製品として、蒸留した精製液が得られる。この蒸留精製液は、蒸留初期の製品と中期又は後期の製品として、時間経過ごとに別々に採取することもできる。また、蒸留した後に、蒸留残りの濃縮液を積極的に残し、製品として利用する。この蒸留残り濃縮液も種々の用途に有効である。したがって、この濃縮液が多めに残るように、全部完全に蒸留しないで、蒸留残り分を多めに残すことも有効である。
【0024】
この蒸留残り濃縮液を1〜2か月という長期間静置しておいて、上澄み液とゼリー状の沈降物に分離させ、それぞれ別々の製品とする。このゼリー状沈降物は、そのまま製品にしてもよいが、天日乾燥その他の手法で乾燥させて、固形や粉末などの製品にできる。用途は、入浴剤その他の皮膚用品や食品添加に使用できる。前記の蒸留工程で蒸留残りの濃縮液が残らないように全部蒸留して、後に残ったゼリー状又は固形物を乾燥させて製品化してもよい。
【0025】
ステップS3の搾汁カスは、ステップS41で、乾燥処理する際に発生した蒸気を冷却して蒸留液を得る。そして、ステップS51で乾燥された搾汁カスは、次のステップS61で微粉を篩い分け回収したり粉砕して、ステップS71の月桃粉末を得る。篩い分けして残った大きな繊維や粉砕されずに残った繊維は、枕や紙の原料などとして有効利用する。ステップS51の蒸留液は、ステップS6における蒸留精製液と同様に消臭剤や化粧品などとして製品化できる。
【0026】
〔搾汁液の処理方法〕
次に、以上の各工程ごとに、本発明の実施形態を詳述する。図2のステップS3で得た搾汁液は、ステップS4のように必要に応じて濾過する。濾過しない場合は、搾汁液をそのまま例えば図3のような蒸留装置で蒸留精製する。濾過する場合は、フィルターを通過した濾過液を蒸留し精製する。フィルターに残った残渣は、加熱殺菌して、食品への添加物として、あるいは化粧品の原料などして有効利用する。或いは、乾燥/蒸留して、蒸留液と固形の乾燥製品を得る。
【0027】
図3は、蒸留装置の一例で、原料となる月桃搾汁液24を蒸留容器23に入れた状態で、ガス炎25などで加熱して月桃の蒸気を発生させる。蒸留容器23は直接ガス炎25で加熱してもよいが、加熱液26を介在させて、間接的に加熱することもできる。すなわち、外容器27中に加熱液26を入れ、その中に蒸留容器23を入れる。
【0028】
蒸留容器23中で発生した月桃蒸気は、冷却水28中の凝縮管29に送って冷却して蒸留精製液とし、出口30から回収する。なお、凝縮管29の出口側に真空ポンプ31を設けて負圧にし、蒸留容器23中も負圧にすると、減圧蒸留が可能となり、月桃蒸気を効率的に凝縮管29側に引き出して、生産効率を上げることができる。
【0029】
ところで、図1の小孔6から押し出された搾汁液には、液体だけでなく、原料植物である月桃の細かく破砕された軟質の葉肉や茎の肉質の粒子も混在しているが、図3のように蒸留装置で蒸留した場合、蒸留した後に、蒸留容器23中に葉や茎の肉質分も残留している。しかも、液体成分が全部蒸発しないで、蒸留残り部分として多少残るようにすると、蒸留残りの濃縮液を効果的に採取できる。その結果、蒸留残りの濃縮液と葉や茎の肉質分がどろどろに溶けた状態で残ったゼリー状の濃縮物24aとなって底部に残る。長時間の蒸留工程で葉肉や茎肉成分は充分に煮詰まって軟化しているため、ドロドロのゼリー状製品24aとなる。この蒸留残り濃縮液は、そのまま又は濾過して、あるいは適当に希釈して、パック用その他の化粧品として製品化できる。食品などの添加物としても有効である。この蒸留残り濃縮液を長期間静置して、上澄み液とゼリー状の沈降物に分離させ、それぞれ別々に採取して、そのまま又は後処理して、化粧品や食品添加に使用できる。ゼリー状沈降物は乾燥させてペレット状にしたりサプリメントにしたりもできる。また、月桃粉末と混ぜて乾燥させると、入浴剤等として利用できる。
【0030】
蒸留残り濃縮液が残るように蒸留する工程において、蒸留開始時から蒸留終了時までのすべての蒸留液をまとめて採取して製品にしてもよいが、蒸留初期の蒸留液とその後の蒸留液を別々に採取して、別々の製品や用途に用いることも有効である。例えば、蒸留に60分を要すると仮定した場合、最初の10分間の蒸留液を採取してA製品とし、次の20分間の蒸留液を採取してB製品とする。そして、最後の30分間の蒸留液をC製品とする。
【0031】
このように、時間経過ごとに別々に採取すると、最初のA製品は揮発性の成分を大量に含む高濃度の上質の製品となり、最後に採取したC製品は、最も揮発性成分の少ない下等製品となる。したがって、C製品は、食品などに添加するのに使用し、最初に採取したA製品は、香りも強い良品であるため、化粧品や添加剤、アロマセラピーなどの用途に使用できる。
【0032】
ステップS4で濾過してから蒸留する場合も、蒸留液のほかに、フィルターを通過した葉や茎の肉質の粒子が混在した蒸留残り濃縮液が発生し、製品化される。濾過した際にフィルターに残った残渣分も、そのまま又は加熱殺菌して食品などへの添加物として使用する。あるいは、ステップS3〜S5のように、搾汁カスと同様に乾燥/蒸留することによって、搾汁中に混在する肉質の乾燥粉粒として実用化できると共に、蒸留精製液が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明によると、月桃などの生の植物の葉や茎の搾汁液を処理して蒸留液と蒸留残り濃縮液を製造できる。したがって、月桃等の有効植物のすべてを有効利用して、各種の製品を効率的に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】先に提案した搾汁装置の縦断面図である。
【図2】図1の装置で搾汁した後の処理工程を示すようにフローチャートである。
【図3】月桃搾汁液の蒸留装置の実施形態である。
【符号の説明】
【0035】
1円筒(筒体)
2スクリュー
3スクリュー軸
4ホッパー
5排出口
6搾汁用の小孔
7蓋板(蓋体)
8搾汁ガイド
13爪又は刃

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の搾汁液をそのまま又はフィルターで濾過してから蒸留し、蒸留液と蒸留後に残した蒸留残り液とを併用して製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法。
【請求項2】
月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法。
【請求項3】
月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を静置して、上澄み液とゼリー状の沈降物に分離させ、それぞれ別々に採取して、そのまま又は後処理して製品とすることを特徴とする植物の搾汁液の処理方法。
【請求項4】
月桃の葉及び/又は茎の搾汁液を原料にして製造した蒸留残り液を製品としたことを特徴とする月桃蒸留製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−144557(P2012−144557A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−67212(P2012−67212)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2005−235522(P2005−235522)の分割
【原出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(596018849)
【Fターム(参考)】