説明

植物の自動制御型室内栽培装置

【課題】人の生活空間で植物を栽培し、身近な場所での栽培の愉しみや収穫の喜びを得るばかりでなく、室内インテリアとして心を癒してくれる自動制御型室内栽培装置を提供する。
【解決手段】自動制御型室内栽培装置は、人工光源が内蔵されているライト部1と、植物と植物の栽培皿や養液タンク、養液を供給する揚水ポンプや水位センサー、温度センサー等が内蔵され、3×2で栽培装置6台が連結されている栽培部3と、ライト部1を栽培部3から離れた位置で固定する支柱部2とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人と緑の共存による生活品質向上の目的で、人の生活空間で植物を栽培する自動制御型室内栽培装置を提供するものである。省スペース、省エネ、かつ、手間のかからない、植物の自動制御型室内栽培装置に関する。植物の室内栽培は、身近な場所での栽培の愉しみや収穫の喜びを得るばかりでなく、室内インテリアとして心を癒してくれる重要な生活用品の一つとなる。さらには、栽培品種によっては収穫して食することもできる。

【背景技術】
【0002】
従来の一般的な植物の栽培装置は、上部が開口しており、単独では多段に積み重ねることができなかった。その為、棚などを用意して、多段構成にするが、多段構成にした場合には、設置面積が大きくなり、また、養液の補給や装置のメンテナンスがしづらくなる問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−95143号公報
【0003】
室内では、自然光の入射量が不足するので、植物を育成する上では人工光源が不可欠になる。従来、植物工場では光量の多い高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ等が使われてきた。しかし、消費電力や発熱量が多く寿命も短く、費用がかさむ問題があった。

【0004】
近年、安価なLED電球が普及してきておき、より省エネルギーで大光量を得ることができるようになってきている。LEDは、寿命も非常に長く、1日8時間程の通常利用に置いては10年の寿命があるとされている。また、LEDの発光波長は、青色や赤色で、植物の葉緑素の吸収波長帯に近いので、効率のよい植物育成ライトとなる。また、紫外域の光がでないので、虫が寄り付きにくいといった望ましい効果もある。さらに、LEDは、非常に早く点灯、消灯を繰り返すことができる。例えば、参考文献1では5kHzでLEDを点滅させた場合と連続点灯の場合とでは、植物の生長には変化がないことが知られている。これは、LEDによる消費電力を半減させ、ひいては、LEDの発熱を半減させることができ、LEDをの寿命を倍増できることを示唆している。

(参考文献1) 栗原勇次 他,”LEDを用いた植物育成システムの研究”, 電気・情報関連学会中国支部連合大会講演論文集 57巻444頁, 2008年11月.

【0005】
人工光により植物を室内で栽培する植物工場の普及も進んできている。植物工場では、成長速度を高めることに重点がおかれている野菜の生産工場であるために、人工光や養液の供給を制御することで植物の生長を制御するような試みはなされていない。

【0006】
養液の供給方法は、毛細管現象やフローバルブを使って、減少した分だけ養液を補充する方法の他に、ポンプを使って養液を供給する方法がある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献2】特開2006−158383号公報
【0007】
特許文献2では、所定の時間間隔で給水する方法が開示されている。しかし、環境の湿度や温度、植物の生長ステージや室内温度によっては、常に一定の時間間隔ではなく、植物の生長に応じた養液の供給が望ましい。

【0008】
さらに、植物は水分不足にさらすなどのストレスを与えることで、植物体や果実の味が変化することが知られている。例えば、トマトでは水ストレスにさらすことで高糖度化することや、からし菜等では、辛味成分が凝縮することがよく知られている。

【0009】
しかし、過度の水ストレスを与えすぎると、植物が枯れてしまうことがあるために、植物の状態を見極めながら、水ストレスを与えなければならない。これには、経験と勘と多大な手間が必要とされている。

【0010】
また、従来の植物栽培装置はライトを有せず、主に自然光に依存した栽培を行うために、室内では日当たりのよい場所でしか使えず、また、季節により太陽の日射時間に変動があるために、植物を栽培できる期間も限定されていた。

【0011】
植物は、呼吸と光合成を行っており、光合成による獲得エネルギーが呼吸による消費エネルギーを上回ると生長する。しかし、室内栽培においては、あまり丈が大きくならないように管理したいという要求があるので、植物の生長制御技術が求められている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
植物の自動制御型室内栽培装置において、本発明が解決しようとする課題は、次のようになる。

【0013】
ベランダなどの屋外で太陽光により植物を栽培する場合、収穫は季節の変化に影響されるだけでなく、強風や長雨等の自然環境や、害虫、害鳥、害獣等の被害を受けることがある。また、緑がある気持ちの良い生活をしたいという理由から、人の生活空間内で植物を栽培したいという要望が強くある。

【0014】
植物を室内で栽培する場合の問題は、光不足を如何に補うかにある。室内照明だけでは、光要求度の低い陰陽植物しか育たない問題がある。この問題を解決するには、人工光源による補光が必要となる。さらに、植物の自動制御型室内栽培装置は可能な限り省エネ型でなければならない。

【0015】
また、室内で植物栽培を行う場合には、設置スペースの大きさに制限がでてくる。特に、複数の栽培装置を設置する場合、設置面積は深刻な問題となる。室内栽培装置においては、限り有る室内空間を有効利用することが課題となる。

【0016】
限り有る室内空間を有効利用するために、多段重ね可能であり、かつ、多段重ねした場合であっても、一つの装置のように扱うことができる室内栽培装置に対する要望がある。

【0017】
栽培装置が複数ある場合には、栽培装置に養液を補充するなどのメンテナンスに手間がかかってしまう問題がある。複数の栽培装置がある場合においても、養液を補充する手間を増やしたくないという要望がある。

【0018】
また、従来の室内栽培では、自然光による栽培であるために、室内では日当たりのよい場所でしか使えず、植物を栽培できる季節も限定されるという問題もあった。室内であっても、通年栽培が可能であり、かつ、天候などの環境変化に影響を受けないようにすることが課題となる。

【0019】
さらには、室内栽培にあっては、植物の大きさも制限される。室内空間が限られるために、あまり大きくなりすぎても不都合である。そこで、栽培植物の草丈をあまり大きくしすぎないようにするには、栽培植物の生長をどのようにして制御するればよいかが課題となる。

【0020】
一方で、植物の栽培に置いては、水の供給を制限することにより、植物に水ストレスを与え続けることにより、植物内の栄養分が濃縮されることがある。例えば、トマトなどは、水ストレスを与えることにより高糖度トマトを収穫することができる。トマトに限らず、他の植物でも同様の作用が認められ、より味の濃い作物を収穫することができる。

【0021】
しかしながら、過度に水ストレスを与えると植物を枯らせてしまうことがある。植物を枯らさない程度に水ストレスを与えるには、経験が必要であり、また、多大な手間もかかる作業となる。このために、自動的に適度な水ストレスを与える機構が必要となる。

【0022】
植物を室内で栽培するには、土を使わない水耕栽培が適している。土を使わないことにより、雑菌の繁殖を抑えることができ、また、虫の発生も抑えることができる。しかし、水耕栽培では、養液に藻が発生する問題が起きる。室内用栽培装置に置いては、藻の発生を抑制する機構が必要になる。

【0023】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、植物の室内用栽培装置とその制御方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0024】
発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意、努力を重ね、以下の課題を解決するための手段の発明に至った。

【0025】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の光合成の為の光源や養液供給の為の揚水ポンプ及びそれらの制御装置を有し、複数の栽培装置を左右または上下に連結可能であって、連結時には電源や養液、制御信号も連結され、複数の栽培装置を一体的に利用可能な装置において、二段階の養液オーバーフロー部を構成することにより、栽培皿の取外しを可能にすることを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0026】
個々の栽培装置に内蔵されている揚水ポンプは、栽培皿に養液を供給するためのものであるが、意図的に、栽培皿に養液を過剰に供給することにより、栽培皿上で養液を溢れさせ、その溢れた養液を他の栽培装置へと伝達する。この時、栽培皿から溢れた養液を、栽培皿とは独立した二段階目の受け皿に流した後、二段階目の受け皿から他の栽培装置に養液を伝達することにより、栽培皿を栽培装置から取外し可能にする。栽培装置はチェーン状に接続され、他方からは養液要求信号が発信され、当該栽培装置では、養液要求信号を送液受付信号として受信する。送液受付信号が受信されている間は、養液を溢れさせ続けることにより養液を伝達し続ける。送液受付信号の発信がなくなれば、揚水ポンプを停止して養液伝達を止める。また、養液を伝達して欲しい場合には、他の栽培装置へ養液要求信号を発信することにより、他の栽培装置から養液の伝達を受けることができる。当該栽培装置の養液タンクが満水状態になれば、養液要求信号の発信を止めることで、他の栽培装置からの養液の伝達を止めることができる。また、伝達先の栽培装置が満水の場合には、に段階目の受け皿から養液が溢れ出して養液タンクに戻ることで、養液漏れを防止している。

【0027】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、静電容量を測定することにより、養液の水位を非接触で測定することで、外部光が入ることなく養液の水位及び残存養液量を測定し、残存養液が既定値よりも不足の場合には通知機能により、養液供給を促すことを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0028】
養液に光が入ると養液中に藻が発生する。藻が発生すると、見栄えが悪くなるだけでなく、藻が養液の栄養分を使ってしまい植物に栄養が届かなくなる。また、藻が植物の根に絡みつき、植物の生長を阻害する、さらには、揚水ポンプに絡まり故障の原因ともなる。藻の発生を抑制するためには、養液中への酸素の供給量を増やすことと光の侵入を防ぐことが必要である。養液に溶けこむ酸素の量には限界があるので、光の侵入を防ぐことの有効である。通常、養液の水位を測定する場合、最も簡易な方法は、水位を目視することである。しかし、この方法では外部からの光の侵入を許してしまい、藻が発生する原因となる。直接水位を目視するのではなく、浮きを養液中に浮かべて、浮きの高さから間接的に水位を測定する方法もある。この方法でも、浮きを設置する穴の隙間からの光の侵入が起こるために藻の発生の原因となる。最も確実な方法は、完全に遮光した中で水位を測定することである。本発明では、静電容量を測定することにより、養液の水位を非接触で測定することで、外部光が入ることなく養液の水位及び残存養液量を検知している。

【0029】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の光合成の為の光源や養液供給の為の揚水ポンプ等の制御装置と植物の生長状態や光量などの外部環境を検出するセンサーを有し、センサーからの外部情報と植物の生長計算モデルにより植物の生長を予測し、光源や揚水ポンプの制御により植物の生長状態を制御することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0030】
請求項3の植物栽培装置であって、入射光量を測定する光センサー(S1)と中心波長450nmのブルーフィルターを有する光センサー(S2)からなり、両出力の比の変化から植物の生長量を検出することを特徴とする、植物の室内用栽培装置。

【0031】
植物の室内栽培装置であって、複数の植物栽培装置を左右または上下に連結可能であって、連結時には電源や養液、制御信号なども連結され複数の栽培装置を一体的に利用可能になり、光源や揚水ポンプ等の制御装置と植物の生長状態や温度や光量などの外部環境を検出するセンサーを有し、センサー情報から植物の生長を予測し、光源や揚水ポンプの制御で、植物の生長状態を制御することを特徴とする、植物の室内用栽培装置。

【0032】
請求項5の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の生長観察を可能にする光学式センサーを有し、当該センサーからのBRG値からなる信号から、B/(R+G+B) < Th の条件を満たす領域を植物領域と認識し、植物の生長量を検出することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0033】
生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の根が呼吸しやすいように酸素を供給し、根腐れを防止し植物の生長を促進する目的で、または、植物に水ストレスを与える目的で、根が乾き、十分な呼吸が可能な程度の時間差(1時間〜6時間)を設けて、間欠して養液を供給することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0034】
請求項1の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、前面パネルを開くことにより栽培皿を引き出し、栽培装置から分離した栽培皿から収穫できることを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0035】
植物の頭上にライトがある構成の場合、栽培皿を引き上げる場合には、ライトと植物が接触し植物を傷つけることが起きることがあるので、ライトと植物が接触しないように、栽培皿を引き出す機構が必要となる。

【0036】
請求項3の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、前面パネルを開いて養液を満タン状態にまで供給した後に前面パネルを閉めた時に、前面パネルの開閉検出スチッチの状態を監視して水位センサーの満水レベルを設定することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0037】
静電容量式水位センサーを使った場合、養液の静電容量は、養分濃度により変化する為に、絶対値による水位計測は不可能になる。つまり、養液が空になったことは測定値の絶対値で検出できるが、満水時の測定値が変化する為に、絶対値では水位計測ができない。この問題を解決するために、養液供給の終了を検出して、養液供給時の水位を満水レベルに設定するキャリブレーション機能を発明した。

【0038】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、揚水ポンプの負荷電流を検出することにより揚水した養液量を検出することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【0039】
DC駆動型ポンプを使った場合、揚水ポンプの駆動電流と揚水量が比例する特性を利用して、駆動電流の積分値から揚水した水量を検出する。養液が空になっており、揚水できない場合には、揚水ポンプの駆動電流はゼロになる。


【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、室内の限られた空間でより多くの植物を、また、より多種類の植物を自動的かつ計画的に栽培でき、光と緑にあふれた生活を楽しむことができる。植物は、適度な湿気と酸素を放出し、室内の二酸化炭素を吸収し、また、騒音の吸収効果も高いために室内環境が改善される。また、無農薬で栽培できるために、清潔で安心安全な野菜を収穫して食することができる。照射される紫外線が少ないために、柔らかく苦味も少ない野菜が作れる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明に係る一実施形態について、図1を参照して説明する。

【0042】
図1は、植物の室内栽培装置の基本構成図である。栽培装置は、3つの部分に分かれる。1はライト部であり、LED光源等の人工光源が内蔵されている。2は支柱部であり、ライト部を栽培部から離れた位置で固定する。3は栽培部であり、植物と植物の栽培皿や養液タンク、さらには、養液を供給する揚水ポンプや水位センサー、温度センサー等が内蔵されている。4では栽培装置が3×2で6台が連結された状態を示している。

【0043】
図2は、実施形態のバリエーションを示している。(A)は、積み重ね連結形態であり、この場合には、栽培装置を上下左右に連結して利用できる。(B)は、上部開放形態であり、この場合には、植物の生長を観察しやすく、また、植物の生長に合わせて光源の高さを変えることができる。(C)は、栽培部だけを利用する形態であり、自然光を使った栽培が可能となる。これらの形態は、栽培部を共通利用することで実現できる。

【0044】
図3は、栽培部の鳥瞰図と側面図による説明である。1が栽培皿であり、栽培する植物を配置する。2は養液タンクであり、水耕栽培用肥料の希釈液が貯められている。3は開閉型全面パネルであり、開くと栽培皿を引き出すことができる。栽培皿を引き出すことで、植物を傷めることなく収穫できる。栽培皿を引き出した後には、養液タンクも取り出すことができ、洗浄等のメンテナンス性が高い構成になっている。4は、支柱取付部であり、ライト部を支える支柱が取り付けられる穴が開いている。5は給水パイプであり、揚水された養液を栽培皿に流す。6は揚水ポンプであり、養液タンクの養液を給水パイプを通じて栽培皿に揚水する。7は揚水ポンプやライト等を制御する制御回路部であり、養液で濡れることのないように独立ブロック内に収められている。

【0045】
図4は、養液の給排水を説明する図である。(1)供給前の状態では、栽培皿に養液はなく、植物の根部は乾燥した状態になっている。乾燥した状態では、植物の根部は空気中から大量の酸素を摂取できる。(2)は、養液の供給が始まった状態を示している。揚水ポンプにより揚水された養液が植物の根部を濡らす。(3)は、ポンプが停止し、栽培皿の底部に開けられた穴から栽培皿に移動した養液が落下して排水されている状態を示している。このように、本栽培装置では、給水と排水を繰り返すことにより、非常に水はけの良い畑を構成している。重要な点は、根部を養液中につけっぱなしにするのではなく、排水することにより、根部に大量の酸素を供給するところにある。植物の根が呼吸しやすいように酸素を供給し、根腐れを防止し植物の生長を促進する目的で、または、植物に水ストレスを与える目的で、根が乾く程度の時間差(1時間〜4時間)を設けて、間欠して養液を供給する。

【0046】
図5は、栽培部の詳細な構成を示している。1の栽培皿は、2のレールに載せられており、引き出しが可能になっている。つまり、前面パネルを開くことにより栽培皿を引き出すことができ、また、栽培パネルを押し入れることで、栽培皿に養液が供給され、連結されている他の栽培器へも養液伝達が可能となり、さらに、養液温度や室温が測定可能になる。3は養液水面である、11の水位センサーにより計測される。4は養液タンクであり養液が貯められている。通常状態では、養液には光が当たらないように遮光される。これは、光により藻が発生し、養液が混濁することを防止するためである。5が栽培する植物であり、20株〜25株程度が同時に栽培可能である。6は、遮光板であり植物の根元から光が漏れ込むのを防止する。7は、温度センサーであり、養液が栽培皿部分にある時には液温が計測でき、栽培皿に養液がない時には室温が計測できる。8は給水パイプ、9が揚水ポンプ、10が制御回路部となっている。制御回路部には、水位センサーや温度センサーが接続される。

【0047】
図6は、ライト部の構成を示している。1はLEDアレイであり、LEDが100個近く、マトリックス状に配置されている。2が植物であり、3が植物皿、4が天井板、5が支柱である。天井板は、植物の観察を容易にする目的で透明板が使われることが望ましい。

【0048】
図7は、支柱部の構成図を示している。1が支柱とライト部、及び、栽培部とをつなぐ接続部であり、2は接続爪であり、支柱を接続部の穴に差し込んで、90ひねれば接続爪により固定される仕組みになっている。3が電極であり、支柱が連結された時に、ライト部と栽培部を電気的につなげる。5は支柱内部に配置された電線であり、栽培部からライト部に電力を供給する。

【0049】
図8は、オーバーフローによる養液の伝達機構を示している。室内栽培装置が複数、連結されている場合には、養液が伝達されるので1ヶ所から養液を補充するだけでよく、手間が少なくなる。(1)が養液の供給前の状態であり、(2)が養液を供給しているところである。(3)では、養液が第一の栽培皿に過剰に供給され、オーバーフローが発生しているところを示している。(4)は、オーバーフロー部分の拡大であり、オーバーフローした養液は、先ず、第二段階目の受け皿であるバッファ部分に流れる。(5)は、養液伝搬時には、バッファ部分から、他の栽培装置の養液タンクに養液が伝搬される。もし、他の栽培装置が接続されていない場合や、他の栽培装置の養液タンクが満水状態である場合には、バッファ部分に貯められた養液は、さらにオーバーフローによって流れ出し、養液タンクに戻ることになる。また、バッファからオーバーフローした養液を連結先に伝達するパイプ部分に、小さな空気穴を開けておくと、養液が流れる為の高低差が小さい場合でも養液が円滑に伝達し、かつ、養液と空気が混合した状態になるので、より望ましい。

【0050】
図9は、制御回路部のブロック図を示している。図中のRTCは時計(Real Time Clock)である。製品出荷時に時間設定されており、製品の購入者は自分で時間の設定をする必要はない。RTCの時刻設定は、パソコンを接続することで実施できる。

【0051】
図10は、植物領域と背景領域のRGBH値ヒストグラム図である。R値(Red値)、G値(Green値)、H値(Hue値:色相値)では、植物領域と背景領域の分離が難しいが、B値では容易に、植物領域と背景領域が分離できることが分かる。植物の葉の中に葉緑素が含まれており青色の光を吸収するため、葉の面積に比例してB値の低下が生じるためである。これにより、B/(R+G+B)の値が閾値(この例では0.05に設定)より大きい場合を背景領域、それ以外を植物領域とした。つまり、B/(R+G+B) < Th (Th = 0.05 )の条件の時に植物領域とみなしている。なお、この時の背景は白色である。

【0052】
本手法を応用すれば、RGBのセンサーを使わずとも、入射光量を測定する光センサー(S1)と中心波長450nmのブルーフィルターを有する光センサー(S2)からなり、両出力の比の変化から植物の生長量を検出することでも、植物領域と背景領域が分離された結果が得られ、植物の生長量が検出できる。


【0053】
図11は、B値分離による生長曲線とH値分離による生長曲線である。H値(色相値)分離では、成長曲線にノイズが見えるが、B値分離による成長曲線では、ノイズが消えていることが分かる。

【0054】
生長シミュレーションを行うことで、植物の生長を予測し、養液供給やライトの照射時間を制御することにより、植物の生長を制御することができる。先ず、植物の生長シミュレーションについて述べる。生長シミュレーションには、次の仮定を採用している。
仮定1 葉は一様方向に一定速度で生長する。
葉の中の細胞数は変化せず、各細胞が膨張すると考える。
仮定2 葉は楕円で近似表現できる。
葉1枚の生長を楕円の拡大で表現する。葉を楕円形状で近似表現するのは、葉の形状に近いことの他に、長軸方向と生長方向を一致させることができるからである。
仮定3 葉は互いに重なりあわないよう配置される。
葉の生長方向を存在する葉の半角方向(理想的な最充填)と定める。理想的生長形態をとる。先端がドーム状の葉を持つ植物は受光面積を最大化のため、この生長形態をとろうとする。
仮定4 葉は2枚ずつ発生し生長する。
同時期に発生した二枚の葉はほぼ同数の分裂細胞を持つとし、葉一対に同じ生長パラメータを適用する。面積の時間変化は(1)式となる。
n
S(t) = 2πkΣ {aj(0)+dgj(t)} {aj(0)+dgj(t)}……(1)
j=0
ここでS(t)は葉の総面積、kは楕円の縦横比、aj(0)は発生時の葉の初期面積、dは単位時間あたりの成長量、gj(t)は葉の生長関数であり、図12に示すように発生時ti0から生長完了時tieの区間が単位傾きの直線になる関数である。この関数は、一般に成長曲線と呼ばれるもので、ゴンペルツ曲線やロジスティック曲線が使われることが多いが、ここでは簡単化のために直線近似にしている。

【0055】
今、推定すべきパラメータは、生長開始時間tj0、生長完了時間tje、単位時間あたりの生長量dの3つである。設定した推定値によるパラメータでシミュレーションし生長曲線を算出、観測した生長曲線と比較を行う。両者の二乗誤差が最小となるパラメータをニュートン法により求めた。図13に生長開始点の予測の説明図を示す。これより、葉の隠蔽で設定しにくい生長開始時間も設定できるようになった。

【0056】
図14は、撮影画像(上)と楕円形モデル(下)の比較である。楕円モデルの形状は、理想的な形状になるので、撮影画像とは一致しないが、葉の面積は両者で一致する。

【0057】
図15は、実測値と生長シミュレーション結果の生長曲線の比較である。観察された成長曲線と(1)式による生長シミュレーション結果はよく一致していることが分かる。比較のために、人間が目で見て設定した生長曲線も合わせて示す。3つとも、よく一致しており、本手法による生長シミュレーションの有効性が確認できる。

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明によれば、一般家庭における生活者が室内にて、実益を兼ねた趣味として、1年を通して、無農薬で安全安心、清潔で柔らかくて美味しい野菜を栽培することができる。

【0059】
さらに、心を愉ませる光とグリーンの室内インテリアとして活用できる。また、種から苗を栽培するための苗育成装置としても活用でき、室内栽培装置で育てた苗を、屋外の畑に移植して、大きく育てることもできる。

【0060】
室内栽培装置を多数、上下左右に組み合わせれば、野菜を量産するための植物工場として利用できる。例えば、10列5段で50機の栽培装置になり、約5kgの野菜が収穫できる。これの構成が、10行10列あれば、約500kgの野菜が収穫できる植物工場となる。

【0061】
レストラン等の飲食店に設置すれば、安全、安心な食材を宣伝することができ、店のイメージアップになる。また、鮮烈な香りのする、フレッシュハーブを栽培し、直前に収穫して提供することが可能になる。必要な度に、必要な料だけ収穫するので、使い残しの発生がないので経済的である。また、生ごみの量も減る。

【0062】
植物に与える養液量を少量に制限して、強い水ストレスを与えると、植物の水分が減少し、その結果、濃い味になる。例えば、トマトを栽培している場合、水を制限して水ストレスを与えると、高糖度トマトができることが知られている。本発明は、このような植物栽培も簡単に実施できるので、高付加価値作物栽培の目的で利用することもできる。

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る基本構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る実施形態図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る栽培部構成図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る栽培分養液供給過程図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る栽培部構成図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るライト分構成図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る支柱部構成図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るオーバーフローによる養液伝搬図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る制御回路部のブロック図である。
【図10】植物領域と背景領域のRGBH値ヒストグラム図である。
【図11】B値分離による生長曲線とH値分離による生長曲線である。
【図12】葉の生長関数である。
【図13】生長開始点の予測の説明図である。
【図14】撮影画像(上)と楕円形モデル(下)の比較である。
【図15】実測値と生長シミュレーション結果の生長曲線の比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の光合成のための光源と必須栄養素を含んだ養液と養液供給のための揚水ポンプ、及び、それらの制御装置を有し、複数の栽培装置を左右または上下に連結可能であって、連結時には電源や養液、制御信号も連結され、複数の栽培装置を一体的に利用可能な装置において、二段階の養液オーバーフロー部を構成することにより、栽培皿の取外しを可能にすることを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項2】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、静電容量を測定することにより、養液の水位を非接触で測定することで、外部光が入ることなく養液の水位及び残存養液量を測定し、残存養液が既定値よりも不足の場合には通知機能により、養液供給を促すことを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項3】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の光合成の為の光源や養液供給の為の揚水ポンプ等の制御装置と植物の生長状態や光量などの外部環境を検出するセンサーを有し、センサーからの外部情報と植物の生長計算モデルにより植物の生長を予測し、光源や揚水ポンプの制御により植物の生長状態を制御することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項4】
請求項3の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、入射光量を測定する光センサー(S1)と中心波長450nmのブルーフィルターを有する光センサー(S2)からなり、両出力の比の変化から植物の生長量を検出することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項5】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、光源や揚水ポンプ等の制御装置と植物の生長状態や温度、光量などの外部環境を検出するセンサーを有し、センサー情報に基づいて植物の生長を予測し、光源や揚水ポンプの制御で、植物の生長状態を制御することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項6】
請求項5の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の生長観察を可能にする光学式センサーを有し、当該センサーからのBRG値からなる信号から、B/(R+G+B) < Th の条件を満たす領域を植物領域と認識し、植物の生長量を検出することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項7】
生活空間で植物を栽培する装置であって、植物の根が呼吸しやすいように酸素を供給し、根腐れを防止し植物の生長を促進する目的で、または、植物に水ストレスを与える目的で、根が乾き、十分な呼吸が可能な程度の時間差(1時間〜6時間)を設けて、間欠して養液を供給することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。

【請求項8】
請求項1の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、前面パネルを開くことにより栽培皿を引き出し、栽培装置から分離した栽培皿から収穫できることを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項9】
請求項3の人の生活空間で植物を栽培する装置であって、前面パネルを開いて養液を満タン状態にまで供給した後に前面パネルを閉めた時に、前面パネルの開閉検出スチッチの状態を監視して水位センサーの満水レベルを設定することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。


【請求項10】
人の生活空間で植物を栽培する装置であって、揚水ポンプの負荷電流を検出することにより揚水した養液量を検出することを特徴とする、植物の自動制御型室内栽培装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−24011(P2012−24011A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−164870(P2010−164870)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(710007984)
【Fターム(参考)】