説明

植物種からのグルコサミンの製造

本発明は、新鮮な植物材料、又は乾燥後の水戻し植物材料若しくは植物抽出物を70〜110℃のある温度で10時間を超えて加熱する、植物からグルコサミンを生成するプロセスであって、グルコサミン前駆体を、前記植物材料、前記水戻し植物材料、又は前記植物抽出物に添加することを特徴とするプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、植物乾物の0.5%(wt)以上のグルコサミン量を含有する植物原材料を生成するプロセスに関する。
【0002】
(発明の背景)
グルコサミンの使用
関節疾患の治療における純グルコサミンの使用は、通常、様々な天然資源からの他の化合物又は抽出物との組合せで、特許並びに科学文献に広く記載されている。純グルコサミンは、グルコサミン塩酸塩又はグルコサミン硫酸塩として添加され、甲殻類の加水分解で得られる。例えば、国際公開第2000/0074696号パンフレットには、「関節組織の炎症又は変性、例えば関節炎を治療するための、グルコサミンとTrypterygium wilfordii、Ligustrum lucidum及び/又はErycibe schmidtiiとを含む薬草組成物」が記述されてあり、この場合、純グルコサミンは、植物調製物と混合される。他の特許は、栄養補助食品としての(EP1172041又はEP923382)植物性炭水化物の組成物に関するが、その中のグルコサミンは、キチン、即ちやはり甲殻類の加水分解に由来する。
【0003】
抗変形性関節症薬としてのグルコサミンの使用は、この10年間で集中的に開発されてきた。グルコサミンは、変形性関節症などの関節疾患に関して唯一の活性化合物であると思われている(最近まで、非ステロイド性抗炎症薬などの対症療法のみが効果があるとして追求されてきた)。
【0004】
グルコサミンは、MMP1、MMP3、MMP13などのMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)の生成を阻害することにより軟骨退化を予防することも示されている。グルコサミンが、皮膚の継続的な弾力性の損失及び水分の損失が主な特徴とされている皮膚の老化プロセスにも関連することは興味深い。皮膚の老化は、主要構造の変化及び組成変化によって反映される。最も顕著な老化皮膚は、若い皮膚と比較してコラーゲン及びグリコサミノグリカンが少ない。皮膚により産生されるグリコサミノグリカン分子には、ヒアルロン酸(ポリd−グルクロン酸−n−アセチル−d−グルコサミン)、コンドロイチン硫酸、及びデルマタン硫酸が挙げられる。ヒアルロン酸は、剥脱に応じて、皮膚細胞によってより大量に産生される。ヒアルロン酸は、高い水和力を有する。
【0005】
MMP−1の阻害は、ポリグリカン/コラーゲン分解の阻害に関連し、したがって、皮膚老化にも関連する。即ち、MMP−1は、UVによって誘発し得るものであり、皮膚老化の指標として認識される。US2002/119107では、この発明は、MMP−1の選択的阻害に基づき、コラーゲンの分解から人間の皮膚を保護するための局所用組成物を請求している。US2004/037901では、メタロプロテアーゼの発現を阻害するローズマリー植物体からの抽出物を含む、皮膚の老化作用の有害兆候を阻害する投与計画を請求している。
【0006】
グルコサミンは、皮膚の乾燥及び剥脱を著しく改善することが示されている。グルコサミンは、皮膚の水分量を増加させ、滑らかさを改善する。これらの知見は、皮膚の水分量及び滑らかさを改善する際にグルコサミンを長期で摂取することが効果的であることを示唆する。
【0007】
グルコサミン含有経口サプリメントにより、このサプリメントを摂取した一群の女性において目立つしわの数が減少し(34%)、小じわの数も減少する(34%)ことが示されている。グルコサミン、ミネラル、及び様々な酸化防止化合物を含有する経口サプリメントの使用により、目立つしわ及び小じわの外観を潜在的に改善し得る。
【0008】
米国特許第6413525号では、皮膚を実質的に剥脱する方法を記載している。特に、この発明は、アミノ糖をN−アセチルグルコサミンの形態で含有し、局所塗布する組成物に関する。即ち、若い皮膚細胞を剥脱後に露出すると、D−グルクロン酸分子及びN−アセチル−D−グルコサミン分子を交互に繰り返す連鎖からなるグリコサミノグリカンであるヒアルロン酸の産生量が増加する。N−アセチル−D−グルコサミンは、生細胞によるヒアルロン酸産生の律速因子であることは公知である。グルコサミンの局所塗布は、ヒアルロン酸の継続的産生を促進する。
【0009】
N−アセチル−D−グルコサミンを含有し、局所塗布する他の組成物も、例えば、日本国特許第59013708号(皮膚の柔軟化及び保湿化)又は米国特許第5866142号(皮膚剥脱用組成物)に開示されている。
【0010】
グルコサミンの由来
グルコサミン、即ち2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースは、果糖の天然誘導体であり、多くの真核生物のタンパク質の重要な構成物質である糖タンパク質及びプロテオグリカンの必須成分である。これは、ムコ多糖及びキチンの必須成分である。グリコサミノグリカン(ムコ多糖)は、結合組織、皮膚、腱、靭帯及び軟骨中に組み込まれる大きな複合体である。
【0011】
グルコサミンの工業的供給源
工業製グルコサミンは、甲殻類からのキチンの酸加水分解、N−アセチル−D−グルコサミンから誘導される複合糖質から得られる純粋な化合物である。例えば、米国特許第6486307号では、キチンを酸加水分解するための改良方法、即ち、キチンを微粉サイズにすりつぶし、これを濃塩酸で分解することによりキチンからグルコサミン塩酸塩を作製する方法を記述している。
【0012】
グルコサミンは、甲殻類の酵素加水分解からも作製できる。例えば、米国特許第5998173号では、甲殻類の殻のキチンを加水分解する酵素のキチナーゼ類の一群を利用してキチンから直接N−アセチル−D−グルコサミンを作製する新規プロセスを記述している。
【0013】
培養微生物がグルコサミンを生合成する微生物発酵プロセスを保護する特許も出願されている。例えば、米国特許第6372457号では、遺伝子組み換え微生物を使用して、発酵によりグルコサミンを作製するための方法及び材料を記載している。
【0014】
これらのプロセスはすべて、甲殻類の抽出物と競合する、抽出した純粋なグルコサミンの作製に関する。
【0015】
国際公開第2005/053710号パンフレットでは、グルコサミンは、数種の植物原材料から、特殊な乾燥プロセスに従うことによって形成され、したがって乾燥重量1kg当たり150〜1000mgのグルコサミン含量を達成し得ることが見出された。
【0016】
(発明の概要)
第1の態様において、本発明では、乾物の0.5%(乾燥重量1kg当たり5g)を超える量のグルコサミンを含有する植物原材料を得るために、植物材料の収穫後及び加熱プロセス前又はその間に、グルコサミン前駆体を添加することにより植物からグルコサミンを得る新規プロセスについて記載する。したがって、本発明は、従来技術で以前に記載された、例えば、国際公開第2005/053710号パンフレットにより示された場合よりずっと多い、植物材料中のグルコサミン含量に達することができる。この結果、この文献に記載のグルコサミンの活性量に達するために必要な植物原材料又は植物の抽出物が減少する。したがって、このプロセスは、工業規模での有用性がより高い。
【0017】
上述の前駆体は、収穫後、新鮮な若しくは乾燥済み植物材料又は誘導植物抽出物に、前記植物材料又は誘導植物抽出物の加熱プロセスの間、又は植物材料からの水性抽出液の調製中に添加することができる。
【0018】
(発明の詳細な説明)
本明細書では、「加熱する」(及び派生の「加熱された」)という語は、70−110℃の温度範囲で10時間を超える、好ましくは一週間未満の加熱プロセスとして理解するものとする。この加熱プロセスは、乾燥プロセスと呼び得る。この加熱プロセスは、液体浸漬にも存在し、乾燥プロセスの代用として、同じ温度及び時間条件で行うことができる。
【0019】
本明細書では、「遊離グルコサミン」とは、未重合グルコサミンとして理解するものとする。
【0020】
本明細書では、「多量のグルコサミン」とは、グルコサミンの量が、微量のグルコサミンより多く、相当する新鮮材料(未乾燥の)の量より多く、文献又は特許に掲載のいずれの含量より多いと理解するものとする。これは、植物原材料の乾物1kg当たり5gを超える、好ましくは植物原材料の乾物1kg当たり20gを超える、最も好ましくは植物原材料の乾物1kg当たり40gを超える量で存在するグルコサミンとして理解するものとする。
【0021】
本明細書では、「植物」及び「植物材料」は、同義語とみなす。「植物」、「植物材料」又は「植物抽出物」は、本発明の加熱プロセスに従ってグルコサミンを生成できる任意の植物材料、及び本発明の加熱プロセスに従ってグルコサミンを生成できる前記植物材料から、当業者に周知の任意の抽出操作により得られる任意の種類の植物抽出物として理解するものとする。例えば、ある特定量のグルコサミンを含む植物は、本発明のプロセスに掛けた後の乾燥した又は水戻しした植物材料であってもよい。ある特定量のグルコサミンを含む植物抽出物は、本発明のプロセスに掛けた後の前記植物から抽出した水溶液でもよい。
【0022】
本発明の第1の目的に対し、植物又は植物抽出物は、天然の遊離グルコサミンを多量に含有するために、本発明に従って処理する。
【0023】
好ましい実施形態では、植物又は植物抽出物は、植物の任意の部分、例えば、葉、塊茎、果実、種子、根、穀粒、又は細胞培養物からのものである。植物原材料の加熱プロセスを制御した後、植物又は植物抽出物は、植物又は新鮮な植物の供給源に応じて、葉、根、及び/又は果実の乾燥、凍結乾燥抽出物、或いはグルコサミン濃縮画分の形態でもよい。
【0024】
植物又は植物抽出物は、本発明のプロセスを通じて遊離グルコサミンを生成する能力で選択され、特に、Cichorium、Daucus、Helianthus、Betaなどの、ショ糖、果糖、又はイヌリンを含有する植物種からなる群から選択し得る。
【0025】
最も好ましい実施形態では、植物材料又は植物抽出物は、例えば、チコリー(Cichorium intybus)の根、ニンジン(Daucus carota)、キクイモ(Helianthus tuberosum)の塊茎、ビート(Beta vulgaris)の根からのものでよい。
【0026】
一実施形態では、新鮮な植物材料又は植物材料は、まず全体的又は部分的に乾燥させ、次いでその後水で戻し、この2工程の後、本新発明に従って処理することにより、高いグルコサミン含量を有する植物材料を得ることができる。
【0027】
好ましい実施形態では、新鮮な植物材料を使用する。
【0028】
国際公開第2005/053710号パンフレットで開示されているように、記載の乾燥プロセスは、植物中に多量のグルコサミンを得る一方法である。チコリーの根の乾物1kg当たり約500mgの量、ニンジンの根の乾物1kg当たり100mg、又はキクイモの塊茎若しくはビートの根の乾物1kg当たり50mgは、国際公開第2005/053710号パンフレットに記載の乾燥プロセスを使用して得ることができる。
【0029】
新鮮な、又は乾燥若しくは水戻しした植物原材料は、植物種及び植物器官に応じて、110℃未満の温度で、好ましくは70〜110℃のある温度で、最も好ましくは70〜91℃で、10時間を超える及び好ましくは1週間未満、好ましくは10〜120時間、例えば12〜50時間液体浸漬又は乾燥プロセスを使用して加熱する。温度及び/又は加熱時間が、低すぎる及び/又は短すぎる場合、グルコサミンの生成が非効率であるか非常に遅くなることにより、経済的に実行不可能と思われるプロセスとなろう。一方、温度及び/又は加熱時間が、高すぎる及び/又は長すぎる場合、グルコサミンは、生成するがその後徐々に分解するであろう。
【0030】
したがって、温度及び時間は、加熱プロセスに掛けた相当する植物材料の乾物1kg当たり少なくとも5gのグルコサミンのグルコサミン含量を得るために選択される。
【0031】
最も好ましい例は、温度85℃のオーブン中での48〜72時間の乾燥を含む。
【0032】
本発明によれば、同様のプロセスを使用するが、その違いは、植物材料又は植物抽出物を、最初にグルコサミンの前駆体と接触する状態に置くことにある。その結果、得られたグルコサミンの量は、国際公開第2005/053710号パンフレットの場合よりずっと多い。実際、本発明による植物のグルコサミン含量は、チコリーの根の乾物1kg当たり10gより多く、ニンジンの根又はビートの根の乾物1kg当たり15gより多い。
【0033】
本発明に従って使用するグルコサミンの前駆体は、グルコサミンを形成するために必要な糖−窒素化合物の縮合体を形成できる化合物である。これらは、アンモニウム塩として存在することが好ましい。このようなアンモニウム塩の例は、とりわけ硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、又はグルタミンである。グルコサミンの好ましい前駆体は、本発明によるプロセスにおいて意外にも良好な結果を示した硫酸アンモニウム及び硝酸アンモニウムである。
【0034】
好ましい実施形態では、前駆体は、加熱プロセスの少し前に収穫した新鮮材料に添加する。当業者なら、植物材料又は植物抽出物に対するグルコサミン前駆体の量を決定する方法を知っていようが、最も好ましい実施形態では、硫酸アンモニウムの最終量は、植物原材料の新鮮重量の1〜8%、好ましくは4%である。
【0035】
最も好ましい実施形態では、グルコサミン前駆体は、スプレー又は浸漬により施される溶液として植物材料又は植物抽出物に添加する。例えば、水溶液(4M)200mlの5〜30分間のスプレー又は同溶液に数分から数時間の浸漬である。これらの例は、本発明をまったく限定しないものとみなす。即ち、当業者なら、本実施例において、広範な処理と、多様な適用に対して本発明の化合物の天然量を合理的に調整する混合とを包含する多くの変更を認識されよう。
【0036】
グルコサミンの形成に至る最終プロセスについては、植物材料を、前駆体を添加しないで調製するための適切なプロセスが、国際公開第2005/053710号パンフレットに記載されている。植物材料を収穫し、植物種及び植物器官に応じて、切断し、オーブン又は工業用乾燥機中で、110℃未満、好ましくは80〜105℃、最も好ましくは91℃以下の温度で、10時間を超えて及び好ましくは1週間未満、好ましくは10〜120時間、例えば12〜50時間乾燥させる。理論で縛られることを望まないが、植物材料を、例えば薄片又はサイコロに切断し、好ましくは5mmの最大幅を有することが好ましいと考えられる。実際、本発明者らは、そうした操作が、最適化された熱力学的交換に達するために本発明にとって重要であると考えている。
【0037】
収穫後、グルコサミン前駆体を加熱プロセス前又はその間に添加すると、前駆体がない場合の、乾燥重量1kg当たり数百mgのグルコサミンから、相当する植物材料の乾物1kg当たり少なくとも5gのグルコサミンへ、上述の反応を著しく高めることができる。
【0038】
本発明のプロセスは、遊離型のグルコサミンを直接生成する。理論で縛られることを望まないが、前記プロセスにより製造されるグルコサミンの少なくとも半分が遊離型であり、更には、作製されるグルコサミンの殆どすべてが遊離型であると考えられる。実際、グルコサミンの少なくとも50%、少なくとも70%、更には少なくとも90%が、本発明のプロセスに従って、遊離型で作製されると考えられる。このことは、例えばキチン、糖タンパク質、又はプロテオグリカンなどの複合体分子から遊離グルコサミンを放出するために加水分解処理が必須である、グルコサミンを作製するために使用する公知の技術と比較して、本発明の別の利点である。
【0039】
加熱処理前に硫酸アンモニウムで原材料を予め抽出することにより、グルコサミンの豊富な抽出物が生成する(実施例8)。
【0040】
グルコサミンは、最初に、単独、又はイヌリン若しくはフルクトオリゴ糖(FOS)などの他の化合物と共に、植物材料から抽出してもよい。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある幾つかの製品及び製品を作製する方法の例示である。これらは、本発明をまったく限定しないものとみなす。本発明に関し、変更及び修正を行ってもよい。即ち、当業者なら、これらの実施例において、多様な適用に対して本発明の化合物の天然量を合理的に調整するための広範な配合、材料、処理及び混合物を包含する変更を認識するであろう。
【0042】
実施例1:新鮮な甜菜
乾燥:収穫後、ビート(Beta Vulgaris)の根200g(新鮮重量)を1×1×1cmのサイコロに切断する。4Mの硫酸アンモニウム(NHSOの溶液(Prolabo、21332.293参照)25mlを、このサイコロの全面上にスプレーし、次いでこのサイコロを、温度91℃のオーブン中で56時間乾燥させる。
【0043】
分析:
グルコサミンの抽出:
粉末にして特別に乾燥させたビートの根2gを、室温で1分間、20mlの水で抽出する。この溶液をSchleicher & Schultz(n°597)のフィルターで濾過又は遠心分離する。カチオン交換カラム(OasisカートリッジWATERS、MCX型、186000776参照)を使用してこの溶液の精製工程を行う。マトリックス上に取り込まれた塩基性化合物は、MeOH/NHOH 2%(v/v)で溶出する。濾過後、一定分量を使用してLCシステム(DIONEX)に直接注入する。
【0044】
分離:
DIONEX DX 500装置で、イオン交換PA1カラム(4250mm)を使用するHPAE/PEDシステムで分析を行う。
【0045】
【表1】

【0046】
これらの条件では、グルコサミンは、約11分の保持時間を有し、容易に検出され、適切に処理したビート抽出物中の定量化を更に行う。前駆体がない場合の300mg/kg未満及び加熱プロセスがない場合の1mg/kg未満とは異なり、本実施例では、この方法によって16g/kg乾燥重量の濃度を定量化した。
グルコサミンの有無の確認:
ビート植物の抽出物中のグルコサミンの有無の確認するために、異なる3つの定量法で評価した。
【0047】
薄層クロマトグラフィー(TLC)
純グルコサミン及び植物抽出物を、酢酸エチル/MeOH/水(50/50/10;V/V/V)を溶離液として使用するHPTLC(高速薄層クロマトグラフィー)シリカゲルプレート(Merck、1.05642参照)で分析した。溶出後、このプレートをニンヒドリン1%の酢酸溶液でスプレーし、120℃で10分間加熱する。1つのスポットが、対照及び抽出物に対して同じ速度係数(Rf)でピンク/青色に現れた。
【0048】
化学分解
ニンヒドリンの存在下では、酸化的脱アミノ作用がグルコサミンと共に生じ、その結果、糖のLCルーチン分析により容易に検出されるアラビノースが放出されることになる。対照及びチコリー抽出物と共にアラビノースの有無を、明確に確認した。
【0049】
グルコサミンの誘導体化
Zhongmingらの「UV HPLCでのプレカラム誘導を使用する、栄養補助食品、原材料中のグルコサミン塩酸塩、剤形、及び血漿の測定、J.of Pharmaceut.and Biomed.Analysis、1999(20)、807−814」に記載の、イソチオシアン酸フェニルでのプレカラム誘導体化及びUV検知(λ=254nm)を使用する逆相クロマトグラフィーは、純粋な化合物及び植物抽出物で使用した。
【0050】
グルコサミン誘導体の相当するピークを、チコリー抽出物中に、並びに純粋な化合物で検知した。
【0051】
質量スペクトル分析
植物抽出物は、グルコサミンの有無を確認するために、エレクトロスプレー質量分析法によって正イオン化状態で分析した。質量分析計は、飛行時間型計器(Z−sprayインターフェースを備えた、Micromass社製LCT)であった。標準グルコサミンは、m/z180.0887のイオンを放出する。このイオンのフラグメントは、分析した植物抽出物中に見られる。
【0052】
実施例2:新鮮なニンジン(Daucus carota)の根
ニンジンの根200g(新鮮重量)を1×1×1cmのサイコロに切断し、次いで実施例1の場合のように硫酸アンモニウム溶液をスプレーする。次いでこのサイコロを、温度91℃のオーブン中で37時間乾燥させる。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、前駆体がない場合の乾燥重量1kg当たり190mg未満、加熱プロセスがない場合の1kg当たり1mg未満とは異なり、乾燥重量1kg当たり15gのグルコサミン濃度となる。
【0053】
実施例3:新鮮なチコリー(Cichorium intybus)の根
チコリーの根200g(新鮮重量)を0.5×0.5×0.5cmのサイコロに切断する。サイコロを硫酸アンモニウム溶液(4M)中に30分間浸漬し、又は硫酸アンモニウム溶液をスプレーし、又はサイコロを硫酸アンモニウム溶液と85℃で8時間混合する。次いで、このサイコロを、温度91℃のオーブン中で40時間乾燥させる。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、前駆体がない場合の乾燥重量1kg当たり900mg未満、加熱プロセスがない場合又は市販の乾燥チコリーの根の場合の1kg当たり10mg未満とは異なり、乾燥重量1kg当たり43gのグルコサミン濃度となる。
【0054】
実施例4:乾燥チコリーの根
新鮮なチコリーの根をサイコロ(1×1×1cm)に切断し、現行手段(流動層乾燥機中、115℃の空気吸入で2時間)を使用して乾燥させ、次いで室温に保管する。グルコサミンの生成が必要である場合、この乾燥サイコロは、硫酸アンモニウム溶液(4M)中に1時間浸漬して該サイコロを水で戻し前駆体を導入する。次いでこのサイコロを、温度85℃のオーブン中で43時間乾燥させる。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、前駆体がない場合の乾燥重量1kg当たり190mg未満、加熱プロセスがない場合の1kg当たり1mg未満とは異なり、乾燥重量1kg当たり11gのグルコサミン濃度となる。
したがって、本発明を、乾燥形態で長期保存させた植物材料に適用することが可能である。
【0055】
実施例5:乾燥粉末のチコリーの根
乾燥粉末1.5gを硫酸アンモニウム(3M)100ml入りの三角フラスコ中に懸濁させ、激しく振って80℃30分間インキュベートする。次いでこの溶液を、温度85℃のオーブン中で50時間乾燥させる。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、乾燥重量1kg当たり110gのグルコサミン濃度となる。
この実施例は、したがって、本発明を、乾燥形態で長期保存させる植物材料に適用することが可能であるもう1つの実施例である。
【0056】
実施例6:乾燥チコリーの根全体
収穫直後のチコリー10個の根全体を室温で3日間保存する。次いで根全体を硫酸アンモニウム溶液(4M)中に24時間浸漬させる。次いでこの根を0.5×0.5×0.5cmのサイコロに切断し、次いで実施例3の場合のように処理し(乾燥させ)、その結果、乾燥重量1kg当たり44gのグルコサミン濃度となる。
【0057】
実施例7:液状媒体中で処理する新鮮チコリー根のサイコロ
新鮮チコリー根100gをサイコロ(0.5×0.5×0.5cm)に切断し、硫酸アンモニウム溶液(4M)200ml入りの三角フラスコ中に懸濁させ、開放状態又はセルロース製プラグで栓をして激しく振る。次いでこの溶液を、温度85℃のオーブン中で60時間加熱する。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、新鮮重量1kg当たり30gのグルコサミン濃度となる。したがって、本発明を、湿潤状態で加熱する条件下で適用することも可能である。
【0058】
実施例8:グルコサミン濃縮抽出物
新鮮チコリー根100gをサイコロ(0.5×0.5×0.5cm)に切断し、硫酸アンモニウム溶液(4M)200ml入りの三角フラスコ中に懸濁させ、激しく振る。次いでこの溶液を濾過し、得られた溶出液を、温度85℃のオーブン中で60時間乾燥させる。実施例1の場合のように抽出及び分析を行い、その結果、乾燥重量1kg当たり100gのグルコサミン濃度となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新鮮な植物材料、又は乾燥後の水戻し植物材料若しくは植物抽出物を70〜110℃のある温度で10時間を超えて加熱する、植物からグルコサミンを生成するプロセスであって、グルコサミン前駆体を、前記植物材料、前記水戻し植物材料、又は前記植物抽出物に添加することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
グルコサミン前駆体が、グルコサミンを形成するために必要な糖−窒素化合物の縮合体を形成できる化合物であり、好ましくはアンモニウム塩である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
グルコサミン前駆体を加熱工程前に加える、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
グルコサミン前駆体を添加する、又は加熱工程中も添加する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
植物種が、Cichorium属、Daucus属、Helianthus属、又はBeta属に属する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
植物が、チコリー(Cichorium intybus)、ニンジン(Daucus carota)、キクイモ(Helianthus tuberosum)、及び/又はビート(Beta vulgaris)である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
植物又は植物抽出物が、植物材料の乾燥重量1kg当たり少なくとも5gの、好ましくは乾物1kg当たり20gを超える、最も好ましくは乾物1kg当たり40gを超えるグルコサミンを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
植物材料(乾燥重量)1kg当たり少なくとも5gの、より好ましくは1kg当たり少なくとも15gのグルコサミンを含む植物又は植物抽出物。
【請求項9】
グルコサミンの少なくとも一部が遊離型であり、好ましくはグルコサミンの少なくとも半分が遊離型である、請求項8に記載の植物又は植物抽出物。
【請求項10】
植物が、Cichorium属、Daucus属、Heliantus属、又はBeta属に属する、請求項8又は9に記載の植物又は植物抽出物。

【公表番号】特表2008−540481(P2008−540481A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510503(P2008−510503)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004472
【国際公開番号】WO2006/120009
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】