説明

植生検出装置及び植生検出方法

【課題】座標変換などのシステムの統合を容易にし、またコストや物理的サイズも抑え、夜間など暗い環境にも対応する植生検出装置を提供する。
【解決手段】植物の葉で吸収されにくい波長の第1の3次元レーザレーダ21と、吸収されやすい波長の第2の3次元レーザレーダ22とから出力された計測値(距離、角度、反射率)を取得する第1及び第2の3次元点群取得部11及び12と、第1の3次元レーザレーダ21による第1の計測点と、その第1の計測点に最も近い第2の3次元レーザレーダ22による第2の計測点とを対応づける対応付け部16と、対応づけられた第1及び第2の計測点について、第1の計測点の反射率と第2の計測点の反射率との比を求める反射率比算出部15と、反射率の比に基づいて互いに対応づけられた計測点が植物か否かを判定する判定部17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地上用無人車などに搭載して走行領域における植生の有無を検出する際などに用いて好適な植生検出装置及び植生検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上用無人車などに未舗装路を走行させる場合、走行可能領域を自動で検出させる際には、例えばカメラ撮影などで立体物を検知したときに、その立体物が植物であるか否かを検出することが必要となることがある。それが植物であれば、踏み分けて進むことができる場合があるからである。
【0003】
植物を検出する方法の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載されている植生検出装置では、2つのカメラで、植物の葉で吸収される波長の光と吸収されない波長の光とを用いて撮像対象を撮像し、その2つの波長の輝度(反射率)の比から植物であるか否かを判別するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−44623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている検出方法では、対象となる植物の画像上での位置を知ることはできる。しかし、その植物までの距離は分からない。そのため、例えば背の高い植物が立っている場合と、画像の奥方向に植物が伸びている場合などとの見分けがつきにくい。
【0006】
一方、例えば、植物までの距離を計測するために、3次元レーザレーダを追加することが考えられる。しかし、その場合、レーザレーダとカメラ2台の計3台のセンサが必要になるため、座標変換などのためにシステムの統合が難しく、またコストや物理的サイズも増大する。また、カメラを使った方法では夜間など暗い環境での計測が難しい。
【0007】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、座標変換などの処理負担を軽減することでシステムの統合を容易にし、またコストや物理的サイズも抑えることができ、さらに夜間など暗い環境にも対応することができる植生検出装置及び植生検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、植物の葉で吸収されにくい波長のレーザを用いる第1の3次元レーザレーダと、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザを用いる第2の3次元レーザレーダとから出力された計測値であって、各計測点の距離と角度と反射率とを表す複数の計測値を取得する取得手段と、前記取得手段によって取得された複数の計測値に基づいて、前記第1の3次元レーザレーダによる第1の計測点と、該第1の計測点に最も近い位置を持つ前記第2の3次元レーザレーダによる第2の計測点とを対応づける対応付け手段と、前記対応付け手段によって互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点について、該第1の計測点の反射率と該第2の計測点の反射率との比を求める反射率比算出手段と、前記反射率比算出手段によって算出された反射率の比に基づいて、前記対応付け手段によって互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点が植物か否かを判定する判定手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の植生検出装置では、植物の葉で吸収されにくい波長のレーザを用いる第1の3次元レーザレーダと、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザを用いる第2の3次元レーザレーダとから出力された計測値を用いて植生検出を行うようにした。そのため、植物か否かの検出と植物までの距離とを、2台の3次元レーザレーダ、つまり2台のセンサを用いて知ることができる。すなわち、植物か否かの検出と植物までの距離の把握とが、2台のセンサで行うことができるのであり、3台のセンサを使う場合に比べてシステムの統合が容易になる。よって、コストやサイズを抑えることができる。また、自ら投光するレーザレーダを使うため、暗い環境でも問題なく使える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】図1の植生検出装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】図2のステップS2における処理を説明するための模式図である。
【図4】図2のステップS3における処理を説明するための模式図である。
【図5】図2のステップS4における処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態としての植生検出装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す植生検出装置1は、第1の3次元点群取得部11、第2の3次元点群取得部12、位置検出部13、座標算出部14、反射率比算出部15、対応付け部16、判定部17及び記憶部18を備えている。図1に示す植生検出装置1は、地上用無人車100に搭載されていて、同じく地上用無人車100に搭載されている第1の3次元レーザレーダ21と第2の3次元レーザレーダ22とに接続されている。
【0012】
第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、所定の波長のレーザを利用して、対象物までの距離及び3次元の方向を計測する装置である。なお、以下では、対象物においてレーザの反射点となる点を、計測点と呼ぶこととする。第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、所定の時間間隔で、方向(すなわち水平方向の角度と垂直方向の角度)を所定間隔で変化させながら所定の波長のレーザをパルス状に送信する。そして、計測点からの反射波を受信することで、計測点までの距離及び3次元の方向と、計測点での電磁波の反射率を検知する。第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、検知した各計測点までの距離と角度と反射率とを表すデータを、計測値として計測点毎に順次出力する。
【0013】
本実施形態では、第1の3次元レーザレーダ21が、植物の葉で吸収されにくい波長のレーザを使用し、第2の3次元レーザレーダ22が、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザを使用する。第1の3次元レーザレーダ21が使用する植物の葉で吸収されにくい波長のレーザは、例えば近赤外レーザであり、具体的には800〜1300nmのうちの幅50nm以上の帯域を有するものであるとする。第2の3次元レーザレーダ22が使用する植物の葉で吸収されやすい波長のレーザは、例えば赤色レーザであり、具体的にはクロロフィル吸収波長帯600〜700nmのうちの幅50nm以上の帯域を有するものであるとする。
【0014】
第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、ともに地上用無人車100の前方を向いて、互いに近接するように地上用無人車100に搭載されているものとする。また、第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、所定の同期用の信号を用いることで、レーザの送信方向及び送信時刻が互いに一致するように動作するものとする。
【0015】
植生検出装置1は、CPU(central processing unit)、主記憶装置、補助記憶装置、周辺装置や周辺装置の制御装置などを備えて構成されていて、補助記憶装置に格納されている所定のプログラムを実行することで所定の機能を実現する。図1では、植生検出装置1を表すブロック内に、植生検出装置1が実現する各機能をブロックに分けて表している。以下、図2〜図5を参照して、図1に示す植生検出装置1の各ブロックに係る構成や動作について説明する。
【0016】
第1の3次元点群取得部11は、各計測点の距離と角度と反射率とを表す複数の計測値を第1の3次元レーザレーダ21から順次、取得する。第1の3次元点群取得部11は、取得した計測値を所定の形式のデータに変換した後、座標算出部14に対して出力する。
【0017】
第2の3次元点群取得部12は、各計測点の距離と角度と反射率とを表す複数の計測値を第2の3次元レーザレーダ22から順次、取得する。第2の3次元点群取得部12は、取得した計測値を所定の形式のデータに変換した後、座標算出部14に対して出力する。
【0018】
すなわち、第1の3次元点群取得部11及び第2の3次元点群取得部12は、第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22の計測値(距離、角度、反射率を表すもの)をそれぞれ取得する(図2のステップS1)。
【0019】
座標算出部14は、以下のようにして、第1の3次元点群取得部11及び第2の3次元点群取得部12が取得した各計測点の3次元極座標における各座標値を、共通の3次元直交座標における各座標値に変換する(図2のステップS2)。
【0020】
図3(a)〜(c)を参照して、座標算出部14が、第1の3次元レーザレーダ21の計測点Pa及び第2の3次元レーザレーダ22の計測点Pbの3次元極座標における各座標値(ra、φa、θa)及び(rb、φb、θb)を、共通の3次元直交座標Cにおける座標値(xca、yca、zca)及び(xcb、ycb、zcb)に変換する例について説明する。
【0021】
図3(a)は、地上用無人車100並びに第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22と、第1の3次元レーザレーダ21による計測点Pa及び第2の3次元レーザレーダ22による計測点Pbとの位置関係を模式的に示した図である。図3(b)及び(c)は、計測点Pa及び計測点Pbの位置を表すための3次元極座標と、3次元直交座標Ca及び3次元直交座標Cbとの関係を模式的に示した図である。なお、図3(a)において、第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、それぞれの前方方向を地上用無人車100の直進方向に一致させ、直進方向と直角の水平方向に、左右に並ぶように近接して設置されている。
【0022】
また、図3(b)に示すように、計測点Paを表す3次元極座標値(ra、φa、θa)は、第1の3次元レーザレーダ21におけるレーザの送信点を原点Oaとして、原点Oaから計測点Paまでの距離(動径)ra、原点Oaから計測点Paに対する水平角φa(偏角)、原点Oaから計測点Paに対する垂直角θa(偏角)を用いて3次元極座標値を表したものである。この3次元極座標値(ra、φa、θa)を、点Oaを原点とする3次元直交座標Caの3次元座標値(xa、ya、za)に変換する場合、各座標値xa、ya、zaは、式xa=ra・sinθa・cosφa、ya=ra・sinθa・sinφa、za=ra・cosθaを用いて算出することができる。ただし、3次元直交座標Caは、点Oaを原点とし、y軸を地上用無人車100の直進方向、x軸を水平方向、z軸を垂直方向とする3次元直交座標である。
【0023】
同様に、図3(c)に示すように、計測点Pbを表す3次元極座標値(rb、φb、θb)は、第2の3次元レーザレーダ22におけるレーザの送信点を原点Obとして、原点Obから計測点Pbまでの距離rb、原点Obから計測点Pbに対する水平角φb、原点Obから計測点Pbに対する垂直角θbを用いて3次元極座標値を表したものである。この3次元極座標値(rb、φb、θb)を、点Obを原点とする3次元直交座標Cbの3次元座標値(xb、yb、zb)に変換する場合、各座標値xb、yb、zbは、式xb=rb・sinθb・cosφb、yb=rb・sinθb・sinφb、zb=rb・cosθbを用いて算出することができる。ただし、3次元直交座標Cbは、点Obを原点とし、y軸を地上用無人車100の直進方向、x軸を水平方向、z軸を垂直方向とする3次元直交座標である。
【0024】
そして、点Oaを原点とする3次元直交座標Caの3次元座標値(xa、ya、za)及び点Obを原点とする3次元直交座標Cbの3次元座標値(xb、yb、zb)は、次のようにして、点Ocを原点とする共通の3次元直交座標Cにおける3次元座標値(xca、yca、zca)及び(xcb、ycb、zcb)に変換することができる。ただし、3次元直交座標Cは、点Ocを原点とし、y軸を地上用無人車100の直進方向、x軸を水平方向、z軸を垂直方向とする3次元直交座標である。また、原点Ocは、地上用無人車100に対して固定された点であり、計測点Pa及びPbの位置を表す際の基準となる点である。この原点Ocは、地上からみた場合、地上用無人車100の移動とともに移動する点である。
【0025】
すなわち、3次元座標値(xa、ya、za)は、式xca=xa+oxa、yca=ya+oya、zca=za+ozaを用いて3次元座標値(xca、yca、zca)に変換することができる。ここで、oxaは、原点Ocと原点Oaとの間のx軸方向の差分の値である。また、oyaは、原点Ocと原点Oaとの間のy軸方向の差分の値である。そして、ozaは、原点Ocと原点Oaとの間のz軸方向の差分の値である。
【0026】
同様に、3次元座標値(xb、yb、zb)は、式xcb=xb+oxb、ycb=yb+oyb、zcb=zb+ozbを用いて3次元座標値(xcb、ycb、zcb)に変換することができる。ここで、oxbは、原点Ocと原点Obとの間のx軸方向の差分の値である。また、oyaは、原点Ocと原点Obとの間のy軸方向の差分の値である。そして、ozaは、原点Ocと原点Obとの間のz軸方向の差分の値である。
【0027】
次に、座標算出部14は、各計測点の過去の3次元直交座標における座標値を、現在の3次元直交座標における座標値に変換する(図2のステップS3)。この処理は、地上用無人車100が移動している場合に、例えば時刻t1における3次元直交座標における座標値を、時刻t1よりも後の現在の時刻t2における3次元直交座標における座標値に変換する処理である。
【0028】
第1の3次元レーザレーダ21及び第2の3次元レーザレーダ22は、各1本のレーザ光を送信し、仕様上の水平画角及び垂直画角とで決定される検知範囲210及び220内を所定の周期で水平及び垂直方向に繰り返し走査する。そのため、1走査期間の全ての計測点を取得するには、一定の時間(すなわち上記の所定の周期)が掛かることになる。一方、地上用無人車100が移動している場合、図3(a)に示す3次元直交座標Cも同様に移動することになる。そのため、各計測値を取得した時点の3次元直交座標Cは、地上から見ると異なる場所に位置することになる。したがって、上述したステップS2での固定された各座標間での変換処理だけでは、1走査期間の全ての計測点の極座標値を、同一の3次元直交座標の直交座標値へと変換することができないことになる。そこで、ステップS3では、各計測点の過去の3次元直交座標における座標値を、現在の3次元直交座標における座標値に変換することで、全ての計測点の極座標値を、同一の3次元直交座標の直交座標値へと変換している。
【0029】
図4を参照して、ステップS3の処理内容について説明する。図4は、現在(時刻t2とする)の3次元直交座標C2と過去のある一時点(時刻t1とする)における3次元直交座標C1との位置関係を模式的に示している。ここで、3次元直交座標C2と3次元直交座標C1は、図3(a)に示す3次元直交座標Cに対応するものである。また、図4は、時刻t1での第1の3次元レーザレーダ21の計測点Pa1及び第2の3次元レーザレーダ22の計測点Pb1と、時刻t2での第1の3次元レーザレーダ21の計測点Pa2及び第2の3次元レーザレーダ22の計測点Pb2と、各計測点Pa1、Pa2、Pb1及びPb2に対応する3次元座標Ca1、Ca2、Cb1及びCb2との間の位置関係も示している。
【0030】
図4において、点Oc1、点Oc2、点Oa1、点Oa2、点Ob1及び点Ob2は、それぞれ、座標C1、座標C2、座標Ca1、座標Ca2、座標Cb1及び座標Cb2の原点である。ra1、φa1及びθa1は、点Oa1を原点として計測点Pa1の位置を極座標で表した場合の動径、水平方向の偏角及び垂直方向の偏角である。ra2、φa2及びθa2は、点Oa2を原点として計測点Pa2の位置を極座標で表した場合の動径、水平方向の偏角及び垂直方向の偏角である。rb1、φb1及びθb1は、点Ob1を原点として計測点Pb1の位置を極座標で表した場合の動径、水平方向の偏角及び垂直方向の偏角である。そして、rb2、φb2及びθb2は、点Ob2を原点として計測点Pb2の位置を極座標で表した場合の動径、水平方向の偏角及び垂直方向の偏角である。
【0031】
図4に示す例で、時刻t1から時刻t2までの各座標(すなわち各原点)の移動が3次元ベクトル(dx、dy、dz)で表されるとすると、時刻t1での3次元座標C1上の計測点Pa1及びPb1の3次元座標値(xca1、yca1、zca1)及び(xcb1、ycb1、zcb1)は、次のようにして現在の3次元座標C2上の座標値に変換することができる。すなわち、3次元座標値(xca1、yca1、zca1)の時刻t1の3次元座標C1上の座標値を(xca1(t1)、yca1(t1)、zca1(t1))とし、時刻t2の3次元座標C2上の座標値を(xca1(t2)、yca1(t2)、zca1(t2))とすると、式(xca1(t2)、yca1(t2)、zca1(t2))=(xca1(t1)−dx、yca1(t1)−dy、zca1(t1)−dz)によって、3次元座標C1上の座標値を3次元座標C2上の座標値に変換することができる。同様に、3次元座標値(xcb1、ycb1、zcb1)の時刻t1の3次元座標C1上の座標値を(xcb1(t1)、ycb1(t1)、zcb1(t1))とし、時刻t2の3次元座標C2上の座標値を(xcb1(t2)、ycb1(t2)、zcb1(t2))とすると、式(xcb1(t2)、ycb1(t2)、zcb1(t2))=(xcb1(t1)−dx、ycb1(t1)−dy、zcb1(t1)−dz)によって、3次元座標C1上の座標値を3次元座標C2上の座標値に変換することができる。
【0032】
なお、座標算出部14は、位置検出部13の出力に基づいて3次元ベクトル(dx、dy、dz)を取得することができる。
【0033】
位置検出部13は、車速センサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、GPS(Global Positioning System)受信機などを備えて、あるいはそれらの入力手段を備えて構成されていて、地上用無人車100の位置情報(緯度、経度、高度や、それらの変化量や移動量などの情報)を取得する。位置検出部13は、地上用無人車100の位置情報や、その変化量などを、所定形式のデータとして出力する。
【0034】
次に、対応付け部16は、以下のようにして、第1の3次元レーザレーダ21の計測点群及び第2の3次元レーザレーダ22の計測点群から、同じ位置を計測したもの同士の対応付けを行なう(図2のステップS4)。第1の3次元レーザレーダ21と第2の3次元レーザレーダ22とは、例えば図3(a)に示すように、レーザの送信点が左右にずれて設置されている。そのため、第1の3次元レーザレーダ21によって取得された計測点の位置と第2の3次元レーザレーダ22によって取得された計測点の位置とは完全には一致しない。また、対象物の形状や距離によっては、視差による影響が大きくなる場合がある。一方、後述する反射比率算出部15では、第1の3次元レーザレーダ21の計測点が示す反射率と、第2の3次元レーザレーダ22の計測点が示す反射率との比を、算出する処理が行われる。この処理では、波長による反射率の違いによって対象物が植物であるのか否かが検出されるため、比較される計測点の組は同一の対象物での反射波を計測したものでなければならない。したがって、反射率の比の算出対象となる、第1の3次元レーザレーダ21の計測点と第2の3次元レーザレーダ22の計測点との組を決定するにあたっては、できるだけ近い位置の計測点同士を選択することがのぞましい。そこで、対応付け部16は、計測点間の距離が最小となる計測点の組を抽出して、その情報を反射率比算出部15に対して提供する処理を行う。
【0035】
すなわち、対応付け部16は、例えば図5に示すように、同一の3次元直交座標C2上で、第1の3次元レーザレーダ21の各計測点と、第2の3次元レーザレーダ22の各計測点との距離(すなわち3次元空間で2点間を結ぶ直線の長さ)を求め、距離が最小となる組み合わせとなる第1の3次元レーザレーダ21の計測点と第2の3次元レーザレーダ22の計測点とを対応づける。図5に示す例では、第1の3次元レーザレーダ21の計測点Pa−1〜Pa−4と、第2の3次元レーザレーダ22の計測点Pb−1〜Pb−4とのうち、Pa−1とPb−1、Pa−2とPb−2、Pa−3とPb−3、そしてPa−4とPb−4が互いに対応づけられている。
【0036】
次に、反射比率算出部15は、対応付け部16によって対応付けされた各計測点の反射率の比を求める処理を行う(図2のステップS5)。本実施形態では、第1の3次元レーザレーダ21が、植物の葉で吸収されにくい波長のレーザ(例えば近赤外の帯域すなわち800〜1300nmのうちの幅50nm以上の帯域の波長のレーザ)を使用し、第2の3次元レーザレーダ22が、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザ(例えば可視光赤の帯域すなわちクロロフィル吸収波長帯600〜700nmのうちの幅50nm以上の帯域の波長のレーザ)を使用する。そのため、第1の3次元レーザレーダ21による計測点の反射率と、第2の3次元レーザレーダ22による計測点の反射率とを比較することで、2種類の波長に対する各計測点での反射率の違いをみることができる。特許文献1に記載されているように、このような2種類の波長の光に対する反射率は、特に植物であるか否かによって大きな違いがみられる。
【0037】
表1は、屋外に一般的に存在する材質の近赤外(NIR;800〜1000nmで計測)及び可視光赤(VISR;600〜700nmで計測)の反射率及び反射率の比を示している。表1に示すように、植物の葉は、近赤外の帯域に対して大きい反射率を有している。そして、近赤外の反射率と可視光赤の反射率の比である反射率比の値は、植物の場合に3以上値を示しており、植物以外の場合に2未満の値を示している。
【0038】
【表1】

【0039】
反射比率算出部15は、例えば図5に示す例の場合、第1の3次元レーザレーダ21の計測点Pa−1〜Pa−4と、第2の3次元レーザレーダ22の計測点Pb−1〜Pb−4とのうち、計測点Pa−1の反射率と計測点Pb−1の反射率との比、計測点Pa−2の反射率と計測点Pb−2の反射率との比、計測点Pa−3の反射率と計測点Pb−3の反射率との比、及び計測点Pa−4の反射率と計測点Pb−4の反射率との比を算出する。
【0040】
次に、判定部17が、反射率比算出部15で算出された反射率の比に基づいて各計測点が植物かどうかを判定する(図2のステップS6)。判定部17は、反射率比算出部15で算出された反射率の比と、記憶部18に格納されている閾値181とを比較することで、各計測点が植物であるのか否かを判定する。表1に示す計測結果によれば、閾値の値を「2」前後に設定することで、反射率の比が閾値より大きいときに、当該計測点が植物であると判定することができる。
【0041】
判定部17は、計測点毎に、植物であるか否かの判定結果と、各計測点の位置情報とを組み合わせたデータを出力する。この判定部17の出力は、例えば自律走行制御をおこなうための他のプログラムなどに渡される。
【0042】
なお、記憶部18には、上述した閾値181のほか、所定時間内において計測された各計測値のデータ182なども記憶されるようになっている。
【0043】
本実施形態では、異なる波長のレーザを用いる2台の3次元レーザレーダを用いて、対象物の反射率と方向及び距離を計測するようにしている。したがって、3台以上のカメラやレーザレーダなどのセンサを用いるシステムに比べてシステムの統合が容易になる。また、コストやサイズを抑えることができる。さらに、自ら投光するレーザレーダを使うため、暗い環境でも問題なく使える。
【0044】
なお、本発明の実施の形態は上記のものに限定されない。例えば図1に示す各ブロックを統合したり、分離したりする変更を適宜行うことができる。また、図1の座標算出部14では、図3(a)に示すように座標Ca及び座標Cbとは別の座標Cを共通の座標として用いて座標変換を行うこととしているが、例えば座標Cを用いずに座標Ca又は座標Cbのどちらか一方を共通の座標として用いて座標変換を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 植生検出装置
11 第1の3次元点群取得部
12 第2の3次元点群取得部
13 位置検出部
14 座標算出部
15 反射率比算出部
16 対応付け部
17 判定部
18 記憶部
181 閾値
182 計測値
21 第1の3次元レーザレーダ
22 第2の3次元レーザレーダ
100 地上用無人車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の葉で吸収されにくい波長のレーザを用いる第1の3次元レーザレーダと、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザを用いる第2の3次元レーザレーダとから出力された計測値であって、各計測点の距離と角度と反射率とを表す複数の計測値を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された複数の計測値に基づいて、前記第1の3次元レーザレーダによる第1の計測点と、該第1の計測点に最も近い位置を持つ前記第2の3次元レーザレーダによる第2の計測点とを対応づける対応付け手段と、
前記対応付け手段によって互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点について、該第1の計測点の反射率と該第2の計測点の反射率との比を求める反射率比算出手段と、
前記反射率比算出手段によって算出された反射率の比に基づいて、前記対応付け手段によって互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点が植物か否かを判定する判定手段と
を備えることを特徴とする植生検出装置。
【請求項2】
前記反射率の比が植物を表す場合と植物以外を表す場合の閾値を記憶した記憶手段をさらに備え、
前記判定手段が、前記反射率比算出手段によって算出された反射率の比と、前記記憶手段に記憶されている閾値との比較結果に基づいて、前記第1の計測点及び前記第2の計測点が植物か否かを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の植生検出装置。
【請求項3】
前記植物の葉で吸収されやすい波長が800〜1300nmであり、
前記植物の葉で吸収されにくい波長が600〜700nmである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の植生検出装置。
【請求項4】
植物の葉で吸収されにくい波長のレーザを用いる第1の3次元レーザレーダと、植物の葉で吸収されやすい波長のレーザを用いる第2の3次元レーザレーダとから出力された計測値であって、各計測点の距離と角度と反射率とを表す複数の計測値を取得する取得過程と、
前記取得過程で取得された複数の計測値に基づいて、前記第1の3次元レーザレーダによる第1の計測点と、該第1の計測点に最も近い位置を持つ前記第2の3次元レーザレーダによる第2の計測点とを対応づける対応付け過程と、
前記対応付け過程で互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点について、該第1の計測点の反射率と該第2の計測点の反射率との比を求める反射率比算出過程と、
前記反射率比算出過程で算出された反射率の比に基づいて、前記対応付け過程で互いに対応づけられた前記第1の計測点及び前記第2の計測点が植物か否かを判定する判定過程と
を含むことを特徴とする植生検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−189535(P2012−189535A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55269(P2011−55269)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】