椎間板線維輪の再構築方法及び椎間板線維輪ステント
従来の椎間板手術における失敗率を減少させることを目的として、外科的に浸潤させ、又は、病理上の破裂の後、縫合又はステントを挿入及び固着する他の手段によって、椎間板壁(線維輪)を修復し、再構築する椎間板線維輪修復ステントを提供する。本発明の椎間板線維輪ステントは、通常の修復過程を強化して正常細胞の成長回復を促進することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本願は、1999年10月20日に出願された米国仮出願第60/160,710号の利益を主張する、2001年9月5日に出願された米国特許出願第09/947,078号(2000年1月18日に出願された米国特許出願第09/484,706号の継続出願)の継続出願である2002年4月29日に出願された米国特許出願10/133,339号の継続出願である。また、本願は、2001年7月31日に出願された米国仮出願第60/309,105号の利益を主張するものである。さらに、本願は2002年2月15日に出願された米国特許出願第10/075,615号の継続出願でもある。前述した各出願の全ての内容は、これらを参照することにより、本願に組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般的には椎間板線維輪に生じた開口を閉鎖、封止及び/又は修復するための方法及び植え込み型医療装置に関する。この「開口」との用語は、椎間板線維輪の切開手術の結果として、又は自然に生じた亀裂(又は裂け目)として当該線維輪に形成される孔をいう。また、本発明は、一般的には椎間板壁を修復し又は再構築する外科手術上の装置及び方法に関する。さらに、本発明は、椎間板の線維輪を修復する線維輪修復装置、又はステントに関する。該ステントは天然素材又は合成素材で構成することができる。前記再構築の効果は、椎間板壁を完全に回復させ、及び一般的な外科手術(断片化した椎間板の除去又はヘルニア摘出)の失敗率(3〜21%)を減少させることができる。この外科手術は、米国において、年間約390,000件行われている。
【背景技術】
【0004】
脊柱は多数の椎骨から形成されており、該椎骨は通常の状態において、椎間板により互いに分離されている。この椎間板は線維輪及び髄核で構成されている。線維輪及び髄核は共に軟性組織である。椎間板は、脊柱において、重要な安定装置として、また、隣接する椎体間の力を分布させる機構として機能する。当該椎間板がないと、異常な関節機構及び関節炎変化の早期進展に伴う椎間腔の崩壊が生じる。
【0005】
正常な椎間板は、髄核の周囲を取り囲む線維輪と呼ばれる外側帯状リングを有する。この線維輪は隣接する椎骨を互いに結びつける。また、線維輪は、互いに斜めに交差して、椎骨に付着する膠原繊維で構成されており、その椎骨がいずれかの方向に回転するにつれて、各繊維のうち半分が緊張して、捻り又はねじれ運動に抵抗する。髄核は、その重量の約85%が水分である緩い組織で構成されており、身体を曲げる際に前後左右に移動する。
【0006】
椎間板は老化作用により次第に変化していく。この場合、線維輪は柔軟性及び弾力性を失い、より密度が高くなり、硬い組織になっていく。老化した線維輪には、その線維輪壁にひび割れや亀裂が生じ又は拡大が見られるようになる。同様に、髄核は乾燥して粘度が増大し流動性を失う。老化した椎間板のこれらの特徴が組み合わさることで、つまり、髄核の粘度増大により動的な力の分散が損なわれ、乾燥のため線維輪が力の集中に耐えられなくなり、柔軟性が失われ、亀裂が発生する。この亀裂は病気や他の病的状態によっても生じる。また、亀裂は線維輪壁を貫通する裂け目へと発展することがある。この場合、髄核は、その裂け目を通じて修復の必要な線維輪(subannular)部分の内部から外部へと、時には脊柱管内まで押し出される(脱出する)。押し出された髄核は脊髄や脊髄神経根を機械的に圧迫する。これらによる痛みを伴う状態を、臨床上、椎間板破裂又は椎間板ヘルニアと呼ぶ。
【0007】
線維輪に裂け目が生じると、その線維輪開口部分の髄核は抵抗の最も少ない経路を辿り裂け目へと移動して開口を拡げ、椎間板壁を通る髄核の移動を可能とし、その結果として神経を圧迫し、四股、膀胱、生殖器及びそれぞれに隣接する神経根付近の空間への炎症物質の漏出を引き起こす。神経の圧迫及び炎症の実際的な影響は、背中や首に耐え難い痛みを誘因し、足先に放散するしびれ、衰弱、及び末期には麻痺、筋萎縮を生じさせ、及び/又は膀胱失禁や内臓の失調として発現する。加えて、けがや病気又はその他の変性疾病も、1以上の椎間板を収縮、崩壊、劣化、又は転移、ヘルニア等を引き起こし、その他の損傷や障害を生じさせる。
【0008】
このような椎間板ヘルニア、破裂、又は椎間板の位置がずれた場合等、これらを治療するための外科手術の基準は、環状壁を再構築しない破片の除去や神経減圧術を施すことである。現在でも、これは受け入れられ得るものであるが、最善ではない。様々な著者から3.1〜21%の確率で椎間板ヘルニアが再発することが報告されており、最初の処置が失敗し及び同一症状に対する再手術の必要性を示している。このことから、米国においては、毎年10%の確率で再発し、39,000件の再手術が行われていることが推測される。
【0009】
症状を緩和する方法として、鎮痛を目的とした、痛みを持つがヘルニア状態には至らない椎間板における修復の必要な線維輪領域を加熱する熱的な環状形成はあるが、断裂した不連続な線維輪壁の再構築には至らない。
【0010】
また、髄核を増強させて損傷を受けた椎間板を修復する提案もあり、髄核を置換する様々な試みが報告されている。本発明は、髄核の増強が是認されるか否かに関わらず、直接的な線維輪の修復を目的としている。
【0011】
さらに、線維輪への直接的、外科的な修復を行う又は伴わない様々な外科的な切開を評価するための動物実験が行われてきた。これらの研究は、健康な動物に対して行われており、髄核の除去又は置換を行っていない。この実験の立案者は、線維輪の直接的な修復は椎間板の治癒に影響を与えないことを結論としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現時点は、一時的なものであっても、線維輪ステントにより増強されたものあっても、線維輪の再生に関する方法は、存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、転移し、脱出し、断裂し又は他の損傷を受けた椎間板壁を再構築する方法及び当該方法に関連する器具を提供する。本発明では、環状空間から髄核が移動する経路となる開口を有した、修復の必要な線維輪開口部分がある椎間板を治療し、該椎間板を再構築する方法が開示され、開口を通過し得る寸法が与えられた第1の形状(第1の折り畳み形状)と、少なくと一方向の寸法が開口と同程度又はそれ以上であり、且つ、少なくとも一方向の寸法が第1の形状に対応する寸法よりも大きい第2の開拡形状と、を備えた開拡パッチを提供することと、前記第1の折り畳み形状である開拡パッチを、開口を通じて修復の必要な線維輪部分に挿入することと、前記開拡パッチが修復の必要な線維輪部分内で開拡を原因として又は開拡することで、前記第2の開拡形状により開口をブリッジし、開口を閉塞、開口を通じた髄核の移動を防止及び組織の再接近を介して開口の治癒を促進することができるようにする。
【0014】
本発明の目的及び多数の有利な効果は、以下の説明を考慮することにより明らかとなる。概して、植え込み型医療装置は、開口を通じた髄核の再脱出を減少させるために、線維輪に挿入され、配置され及び付着され、メカニカルバリア(障壁)として機能し、線維輪壁を自然に完全な状態へと再構築し、椎間板壁組織の再接近を通じて線維輪の治癒を促進する。開口の治癒を通じた完全性の増大、及び迅速性の増大及び/又はこれらをそれ以上に増大させることは、椎間板からの髄核の再脱出及び結果として生じる背痛の再発をさらに減少させることを意味する。加えて、開口の修復は、力学的な構造強化を促進し、椎間板が潰れる可能性及び分節性の不安定さを減らすことができるので、結果として外科手術後に背痛が再発することを減少させることができるようになる。
【0015】
さらに、髄核再脱出の可能性を減少させる開口の修復は、神経根周囲の癒着物形成を有利に減少させることができるようになる。椎間板の髄核物質は、神経に対して有毒であり、神経周囲に炎症の増加を引き起こし、回復後には瘢痕形成(癒着又は硬膜外線維症)の増加を引き起こすと考えられている。神経根の周囲に生じる癒着は連続した背痛を引き起こす。癒着形成のあらゆる減少は将来の痛みの再発を減少させると考えられる。
【0016】
本発明の目的の1つは、椎間板からの髄核脱出のメカニカルバリア、線維輪及び開口の周囲組織のためのメカニカルな完全性、及び早期回復の促進、開口のさらなる完全な治癒を促進することである。
【0017】
説明の大部分は、外科手術、例えば、椎間板切除術(discectomy)(ヘルニアを起こした髄核片を除去するために行う外科手術)等の後における椎間板の修復に関して行われるが、本発明による装置は、椎間板線維輪の切開を含む他の処置にも適用することもできる。修復技術が必要とされる他の手術の一例には、本来の髄核が変性した場合に、その機能を置換するのための植え込み型髄核による髄核の置換−椎間板核代替(nucleus replacement)−等が含まれる。この場合、本発明の目的は、置換髄核を椎間板空間内に維持させる点で類似する。
【0018】
本発明によれば、環状補助パッチ/ステントは、椎間板の線維輪を修復するために適用することができる。最も簡易な形態としては、線維輪の修復において、筋膜(fascial)自己移植片のパッチを線維輪補助空間に配置及び固定することが含まれ、開口周りの組織を再接近させる一方で、2以上の縫合を付加的に採用することができる。本発明は、開口を修復するために、修復の必要な線維輪部分及び壁が関連付けられることで、例えば、開口の外側表面のみを封孔処理(シーリング)し又は開口範囲内のみを封孔処理する等の従来技術に比べ、幾つかの有利な効果がある。環状補助面を採用する修復の第1の有利な効果は、椎間板のように放射状に拡がる環状(又は楕円)圧縮室が持つ物理的性質から導かれる。内壁のシーリングは外壁に対する曲率半径を小さくすることができるといった固有の有利な効果を有するので、ラプラスの法則に従い、パッチは、そこに加えられるあらゆる圧力を、他の全てが同等の状態に保たれて低圧として受けることができる。
【0019】
シーリングを完全なものとするために内面を利用する他の有利な効果は、該椎間板内における通常の圧力が、椎間板内の内壁に対する装置のシーリング性を増すことができるといった点にある。他方、線維輪の外面に対して修復を行うと、椎間板は一定の圧力にさらされているので、装置周縁から漏れが生じるといった固有のリスクを伴うことになる。
【0020】
線維輪の内面を利用することによる、従来技術を超えた本発明の他の有利な効果は、線維輪の外面から突出した装置部分の持つリスクを減少させることにある。線維輪の外側から実質的に突出する装置は、神経根及び/又は脊柱管に非常に近接することになるので、当該神経根及び/又は脊柱管に損傷を与えるといったリスクがある。このような構造により引き起こされる損傷は、慢性的な痛み、失禁、大腸機能障害、麻痺症を生じさせる原因となる。
【0021】
また、本発明には、修復による完全性の向上を促進するために、開口周りの組織、並びに線維輪の内面及び外面を引き寄せる概念が取り入れられている。
【0022】
本発明に従う装置の技術(術式)及び配置の一例は以下の通りである:
【0023】
1.図32A、図32B、図33A、図33Bに示すように、ヘルニア摘出処置を施し、椎間板空間内から髄核の一部を除去した後の線維輪壁には、例えば、約6mm×2mm程度の開口が形成される。
【0024】
2.次に、例えば、図34に示したように、2以上の縫合糸を、線維輪表面の上部から後部にかけて通し、椎間板内の空間に押し込んで、筋膜自己移植片を受けるための”スリング(sling)”を形成する。
【0025】
3.患者から、例えば、約10mm×5mm程度の傍脊柱筋膜組織片が取り除かれる。
【0026】
4.図35に示したように、自己移植片は、折り畳まれ及び圧縮されて、線維輪の開口を通過させられる。
【0027】
5.図36に示したように、自己移植片は、スリング内において、修復の必要な線維輪壁に近接させるために、線維輪内で非圧縮状態及び方向付けられて第2形状にされる。自己移植片は、修復の必要な線維輪部分に完全に挿入される。また、図36に示したように、その一部は、裂け目内に伸長してもよい。
【0028】
6.図37に示したように、自己移植片を修復の必要な線維輪壁の近傍に移動させるために縫合糸を締め、自己移植片周りのスリングを締める。一方、線維輪壁の外面と修復の必要な線維輪面にパッチを移動させるために、縫合糸に張力をかけて自己移植片を開口よりも大きな第2形状にすると共に、開口周りにおける線維輪の完全性を向上させる。さらに、縫合糸を締めて最終的に結び、線維輪の外面及び線維輪内における組織の再接近を促進させる。
【0029】
7.縫合糸を結び、その端部を切り取る。
【0030】
8.一般的な外科手術であるような、癒着形成を予防するために、ヘルニア切除箇所を自己移植片の脂肪組織で覆うようにするとよい。
【0031】
9.標準的な手術法により、外科手術での開口箇所を塞ぐ。
【0032】
本発明に従う様々な装置採用して、以上の発明工程を実行し、椎間板を密閉及び/又は修復することができる。この様々な装置のうち代表的な装置には、その使用に際し、椎間板線維輪のうち修復の必要な線維輪に近接する部分を少なくとも備えた開拡(展開)可能なパッチ/ステント(パッチ、ステント及び装置の用語は同義的に使用する)と、パッチを線維輪に近接させて固着する固定手段と、パッチ及び線維輪組織を引き寄せると共に張力をかけて締める手段と、及び固定後に開口面の相対運動の抑制を補助し、治癒を促進する手段とが設けられている。本発明の1つの特徴及び目的によれば、表層の運動が抑制されている間、近接されて塞がれた組織には治癒のための最適な環境が提供されることになる。
【0033】
以下に詳述する概念により、本発明の複数の目的が達成され、同様に、当該概念には処置の数(及び時間)を減少させ、及び/又は手術法を簡素化し、及び/又は椎間板線維輪を修復する場合に生じる合併症のリスクを減少させるために設計された要素が有利且つ付加的に組み込まれている。加えて、以下に詳述する各装置の目的は、周囲組織に取り込まれることができ、及び短期間(3〜6ヶ月)で組織に取り込まれるための足場として機能させることである。
【0034】
本発明の具体例としては、弱く又は細い、1本以上の軽い生体分解性(biodegradable)縫合糸を、椎間板壁(線維輪)が断裂したことで生じる病理学的な開口の側縁に沿って、又は、外科手術により線維輪壁に設けた切開部の側縁に沿って略等間隔に配置する。
【0035】
縫合糸は、開口の両側を引き寄せるように締められ、開口を再接近させ又は閉鎖し、手術により狭められた椎間板線維輪のギャップ(隙間)を横断する本来組織の自然治癒、及びこれに伴う再構築を促進させる。
【0036】
本発明の方法を採用することにより、開口を介した椎間板のヘルニア形成再発率を25〜30%まで低減させることができる。
【0037】
本発明の他の具体例としての方法は、開口の閉鎖前に、人筋筋膜(筋肉結合組織)又はブリッジや足場として機能する他の自己移植片、同種移植片、又は異種移植片を有するパッチを開口内に又は開口を横断するように位置させ、修復の必要な線維輪にバリア形成を促進させることによって、椎間板線維輪の多様な層内に又はその層周囲に存在して修復に寄与する線維芽細胞又は他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。
【0038】
椎間板ヘルニアの再発率を30〜50%に低減させるには、この具体例による上記筋膜促進を採用することによって達成される。
【0039】
本発明の更なる他の具体例では、編みパッチは、第1端部及び第2端部を備え、長手方向に、より大きな寸法(長さ)を有する第1収縮形状を有して形成される。その各端部は、該各端部間にある装置部分の長手方向軸に沿って互いに移動させられ、これにより編みパッチが、外見上、膨張形状を形成するように展開する。
【0040】
以上では、線維輪再構築に適応する人筋筋膜を示したが、ブリッジ、ステント、パッチ又は開口を介した椎間板髄核の連続した移動に対するバリアとして、他の生体適合性(biocompatible)膜を採用することもできる。このような生体適合性素材は、例えば、生体適合性ファブリック(fabric)、生体分解性ポリマーシート、除去又は切除した椎間板の小部分のうち椎間板髄核部分を除去することによって形成された空洞に適合又は不適合な形状のフィラー(filler)等であってもよい。変性した椎間板小部分の除去により形成された椎間板空間内に又は周囲に、補綴素材を配置することができる。
【0041】
本発明の更なる目的及び有利な効果は、部分的に後述され及び該後述から明らかになり、また本発明を実行することによっても確認することができる。本発明の目的及び有利な効果は特許請求の範囲に明記した要素及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
【0042】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、ともに例示及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付図面に基づいて本発明の複数の実施例を説明する。この図面は本明細書の一部に組み込まれ及び本明細書の一部を構成し、本発明の複数の実施例を図示したものであり、本発明の原理を説明するために用いられる。
【0044】
添付の図面は、本発明の各実施例に基づいて詳細に作成してある。全図を通して、同一又は対応する部分には可能な限り同一の符号を付している。
【0045】
図7に示したように、本発明の一実施例では、損傷を受けた線維輪42は縫合糸40を使用して修復される。1以上の縫合糸40が線維輪42に開いた病理学的な開口44の側縁に沿って略等間隔に位置させられる。開口44の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結び、開口44の側縁を互いに引き寄せることで達成される。この開口44の再接近又は閉鎖によって、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒及びこれに伴う再構築を高め、促進することができる。縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解性されないものを採用してもよい。
【0046】
加えて、脆弱化し又は薄くなった椎間板42の壁を修復するために、線維輪42の脆弱化し又は薄くなった部分を外科的に切開し、該切開部分から横方向に略等間隔で1本以上の縫合糸40を位置させる。切開部分の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結び付けて、切り口の側縁を互いに引き寄せることで達成される。また、切開部分の再接近又は閉鎖により、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒力及びこれに伴う再構築を促進させることができる。縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解性されない物質を採用してもよい。
【0047】
他の一実施例では、開口44を横断する人筋筋膜又は他の自己移植片、同種移植片又は異種移植片のパッチを位置させることにより、修復方法を効率化することができる。パッチは、開口44をブリッジし及び横断するように機能し、該開口44の閉鎖前において、椎間板線維輪42の多様な層の内外の線維芽細胞又は修復に寄与する他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。
【0048】
図8A、図8Bは生体適合性膜の一実施例を示している。この生体適合性膜は、開口44の全体をその内側から塞ぐように配置され、線維輪ステントとして使用される。線維輪ステント10は、開口44の全体を内側からブリッジするように機能し、該開口44の閉鎖前において、椎間板線維輪42の多様な層の内側の線維芽細胞又は修復に寄与する、他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。幾つかの実施例において、装置、ステント又はパッチは、線維輪の裂け目を治癒し、組織の成長を促進するための足場として機能する。
【0049】
図1〜図3に示した一実施例では、線維輪ステント10は、上部14及び下部16を有する中央垂直延伸部12を含んで構成される。中央垂直延伸部12は、幅方向に関して台形形状であり、例えば、8mm〜12mmの長さを有することができる。
【0050】
中央垂直延伸部12の上部14は、図4A〜図4Cに示したように、様々な形状を採用することができ、上部14の側面を湾曲又は上部14を円形に形成することができる。線維輪ステント10は、上部14と下部16との間に凹部を備えることができる。また、線維輪ステント10は、多様な形状を呈する開口44の端縁に対し良好に適合することができる。
【0051】
中央垂直延伸部12の上部14には、該上部14を貫通して形成された孔であるスロット18を設けることができる。スロット18は、上部14内において、該上部14の長軸方向を横断する位置に設けられる。スロット18は、縫合糸、テンションバンド、ステープル、その他各種の公知の固定装置を挿通させて、椎間板線維輪42に線維輪ステント10を固定することができる大きさ及び形状である。
【0052】
他の一実施例では、中央垂直延伸部12の上部14を穿孔することができる。この場合、穿孔された上部14には上部14の長軸方向に横断する複数の孔が設けられる。この孔は、縫合糸、テンションバンド、ステープル、その他各種の固定装置を挿通させて、椎間板線維輪42に線維輪ステント10を固定することができる大きさ及び形状である。
【0053】
中央垂直延伸部12の下部16は、左方向延伸部20と右方向延伸部22の一対の横方向延伸部を含んで構成される。横方向延伸部20、22は、内端24、外端26、上面28及び下面30を含んで構成される。内端24は、下部16と略同一長さを有して、当該下部16に取り付けられる。外端26は略8mm〜16mmの長さである。内端24と下部16は、中央垂直延伸部12に対して基本的に垂直な水平面を形成するように接合される。横方向延伸部20、22の上面28は、水平面に対して略0°〜60°の角度を有している。線維輪ステント10の幅は、略3mm〜8mmである。
【0054】
加えて、横方向延伸部20、22の上面28には、椎間板線維輪42の内面に固着するためのバーブ(barb)が形成されており、開口44から外れることを防止する。
【0055】
他の一実施例としては、図4Bに示したように、横方向延伸部20、22において、外端26よりも内端24に厚みを持たせることができる。
【0056】
具体的な一実施例では、線維輪ステント10は、1以上の弾力のあるフレキシブルな公知の生体適合性素材又は生体吸収性(bioresorbable)素材で形成した固形ユニットである。適切なステント素材の選択は、特定のステント構造や、ステントを設置固定した後に、修復が組織を相対的に安定させ及び開口周りの組織の動きを抑制することにより開口における治癒過程を促進するように機能するといった、その素材特性に応じて部分的に決定することができる。
【0057】
例えば、線維輪ステント10は、米国特許第5,108,438号明細書(Stoneによる発明)及び米国特許第5,258,043号明細書(Stoneによる発明)に開示された椎間板組織の再構築及び線維輪の置換のための足場として機能する多孔性マトリックス又は生体適合性線維及び生体吸収性線維のメッシュや、米国特許第4,904,260号明細書(Ray等による発明)に開示された組織の内成長を誘引する生体吸収性(bioresorbable又はbioabsorable)素材を混ぜ合わせた不活性繊維を含む強網状組織などで形成することができる。
【0058】
また、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,964,807号明細書(Gan等による発明)に開示された生体分解性の基質や、血管移植片として一般的に使用されている延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE:expandable polytetrafluoroethylene)(W.L. Gore and Associates, Inc.の下で「GORE-TEX(登録商標)」「PRECLUDE(登録商標)」として販売され又はImpra, Incの下で「IMPRA(登録商標)」として販売されているものがある。)などで形成することもできる。
【0059】
さらに、椎間板に空いた空孔を塞ぎ、線維輪ステント10の膨張を制限制御する吸湿材を線維輪ステント10に包含させることができる。
【0060】
加えて、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)に開示された椎間板組織の再構築を補助するシリカベースの生体活性(bioactive)素材又は公知の組織成長因子など、椎間板組織の再構築を容易にする素材を含んで構成することもできる。
【0061】
開示され及び前述した各実施例の装置に用いる多くの素材は、治癒過程を促進するように機能する。また、必要であれば、他の素材又は処理を選択して、治癒過程における役割を調整し、治癒を促進又は抑制することも可能である。さらに、これら調整因子を装置の素材基質にコーティングし又は類似の被覆処理を行い、コーティングされていない基質とは異なる組織反応を生じさせることもできる。
【0062】
他の一実施例として、図5A、図5B、図6A、図6Bに示したように、左方向延伸部20と右方向延伸部22が、中実のピラミッド又は錐体を形成するために結合される。加えて、左右方向延伸部20、22は、台形形状、楔形状又は銃弾形状に形成することができる。中実の組成物は、横方向延伸部20、22が開口44に挿入される場合の圧縮、及び、挿入後には線維輪42の内壁形状に適合する膨張(開拡)を可能にする。また、中実の組成物には、中実の生体適合性又は生体吸収性の柔軟素材を採用することができる。
【0063】
あるいは、圧縮可能なコアを横方向延伸部20、22の下面30に取り付けて、ピラミッド形状、錐体、台形形状、楔形状又は銃弾形状に形成することもできる。圧縮可能なコアは公知の生体適合性又は生体吸収性の弾性発泡体(resilient foams)で形成してもよい。また、コアは、例えば、バルーンなどの液体膨張膜(fluid-expandable membrane)で構成することもできる。圧縮可能なコアは、横方向延伸部20、22が開口44に挿入される場合の圧縮、挿入後には、線維輪42の内壁形状や椎間板片の病理学的な押し出しにより又は外科手術の切除により形成された開口形状に適合する膨張を可能にする。
【0064】
図11A〜図11Dに示す使用方法では、線維輪ステント10を椎間板42の開口44に挿入するために、横方向延伸部20、22を圧縮して折り畳む。次に、線維輪ステント10を開口44に挿入すると、横方向延伸部20、22が膨張して開拡する。この拡開後の形状において、上面28は椎間板線維輪42の内面形状に実質的に合致する。線維輪ステント10が公知の手段により椎間板線維輪42に固着されるので、上部14を開口44内に位置させることができる。
【0065】
他の方法として、開口44の長さが線維輪ステント10の外端26の長さよりも短い場合、その線維輪ステント10を開口44に対して横向きにして挿入することができる。この場合、横方向延伸部20、22を折り曲げ、線維輪ステント10を開口44の側面に沿って挿入する。次に、線維輪ステント10を椎間板線維輪42内で回転させ、開口44を介して上部14を引っ張り上げる。ここで、横方向延伸部20、22は、開拡し、上面28が椎間板線維輪42内面の輪郭を矯正する。上部14は、修復の必要な線維輪の開口内に又は該開口に近接して位置させられ、線維輪ステント10は公知の手段により椎間板線維輪に固着される。
【0066】
開口44に線維輪ステント10を固着させる他の方法としては、図9に示したように、頭部にアイホール53が設けられた第1外科手術用ネジ50及び第2外科手術用ネジ52を、隣接する椎骨56、54にねじ込む。次に、線維輪ステント10を開口44に挿入する。その後、縫合糸40を、開口44に隣接する椎間板線維輪42を介して第1ネジ50のアイホール53に通し、再び椎間板線維輪42を介して縫い戻し、線維輪ステント10の開口部(スロット)18に通す。同様の手順を第2ネジについても行い、縫合糸40を止着する。1以上の外科手術用の縫合糸40が、椎間板線維輪42の開口44側縁に沿って略等間隔に縫いつけられる。開口44の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結束し開口44のそれぞれの側縁を引き寄せることにより行う。開口44の再接近又は閉鎖により、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒及びこれに伴う再構築を促進する。外科手術用の縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解されない素材を採用してもよい。この方法によれば、開口44に隣接する椎間板線維輪42の損傷が軽減され、椎間板線維輪42を通じた縫合が解かれることを防止することができる。
【0067】
線維芽細胞は、椎間板ステント10のポリマー又はファブリック繊維と係合し、通常の修復過程で見られる現在の治癒状況の2倍に相当する強固な壁を形成する。
【0068】
さらに、他の実施例として、図10A、図10Bに示したように、軟性の嚢60を線維輪ステント10の下面30に取り付ける。この軟性嚢60は膜64によって囲まれた内部キャビティ62を含んで構成される。膜64は、軟性の薄い生体適合性素材で形成されている。軟性嚢60は、線維輪ステント10が開拡していない状態で下面30に取り付けられる。また、軟性嚢60は、公知の生体適合性液体又は膨張性のある発泡体が内部キャビティ62に注入されて膨張させられる。軟性嚢60の詳細な寸法は、個々の形態に応じて異ならせることができる。成人の髄核の典型的な寸法は、半短軸が約2cm、半長軸が約4cmで、厚さが約1.2cmである。
【0069】
他の実施例において、膜64は半透性の生体適合性素材で形成される。注入される素材の機械的性質は、修復パフォーマンスに影響を与える。また、注入される素材には、健全な髄核よりも軟らかく又はより適合する素材だけでなく、これよりも硬く又は適合しない素材も本発明の実施例における範囲に含まれる。一実施例において、修復の必要な線維輪開口部分の大きさは、除去した髄核の容積よりも小さくてもよく又は大きくてもよい。また、移植片の容積を時間変化させるようにしてもよい。
【0070】
本実施例では、ヒドロゲルを軟性嚢60の内部キャビティ62に注入する。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然又は合成)が、ゲルを形成するための水分子を取り込んだ3次元開格子構造(three-dimensional open-lattice structure)を形成するため、共有結合、イオン結合又は水素結合を通じて交差結合した場合に形成される物質である。ヒドロゲルは水和又は脱水したいずれの状態でも使用することができる。
【0071】
線維輪ステント10を前述のように開口44に挿入した場合、その後の操作としては、図12A、図12Bに示したように、軟性嚢60の内部キャビティ62に生体適合性液体又は膨張性のある発泡体を注入する注射器等の公知の注入器具を使用する。生体適合性液体又は膨張性のある発泡体が線維輪ステントを介して軟性嚢60の内部キャビティ62に注入される。椎間板に空いた空孔を埋めるべく、充分な量の素材が、内部キャビティ62に注入され、軟性嚢60を膨らませる。軟性嚢60の使用は、椎間板における髄核の全部又は一部を取り除くことが要求された場合に特に有用である。
【0072】
椎間板の外科的な修復では、椎間板の全髄核を取り除き、移植片と置換することが必要な場合や、椎間板髄核の一部を取り除いて椎間板に形成した空孔を残したままの状態にすることが必要な場合等がある。しかし、本発明では、軟性嚢60を用いるので、損傷を受けた椎間板髄核だけを取り除き、膨らませた軟性嚢60により椎間板に形成した空孔を埋めることができる。軟性嚢60を含んで構成される線維輪ステント10の主要な効果は、線維輪42に形成される切開部のサイズを減少させることができる点にある。これによれば椎間板に形成した空孔に、移植片を挿入する必要がなくなる。
【0073】
他の使用方法では脱水ヒドロゲルを軟性嚢60の内部キャビティ62に注入する。椎間板髄核に入る液体が、半透性膜64を通過して脱水ヒドロゲルを水和する。ヒドロゲルが液体を吸収するにつれて、軟性嚢60がふくらみ、椎間板に形成した空孔を埋めるようになる。
【0074】
図13に示したように、他の実施例では、線維輪ステント10は、実質的に傘形状であり、中央に設けられたハブ66と、放射状に伸長する複数の支柱67を有している。各支柱67は、水掻き(Webbing)素材65によって隣り合う支柱67と連結され、ハブ66を中心にして径方向延伸部76を形成する。径方向延伸部76は、上面68と下面70を備える。上面68は、図17A〜図17Cに示したように、線維輪ステント10が挿入された場合に椎間板線維輪42の内壁形状に適合する。また、下面70も、図16A〜図16Cに示したように、線維輪ステント10が挿入された場合に椎間板線維輪42の内壁形状に適合する。径方向延伸部76は、その平面形状が実質的に円形、楕円形又は矩形であってもよい。さらに、図20に示したように、椎間板線維輪42の内壁に固着して、開口42からの放出に抵抗するためのバーブ82を、径方向延伸部76の上面68に設けることができる。
【0075】
図14、図15に示すように、支柱67は柔軟性素材で形成されており、径方向延伸部76は、開口44への挿入のために折り畳まれ、挿入後には椎間板線維輪42の内壁形状に合致するように開拡する。線維輪ステント10は、折り畳まれた状態では実質的に截頭円錐形又はシャトルコック状であり、第1端部72と第2端部74とを備える中心ハブ66を含んで構成される。
【0076】
他の実施例において、径方向延伸部76を、中心ハブ66の端部でその外端よりも厚く形成するようにしてもよい。
【0077】
この実施例において、線維輪ステント10は、1以上の弾力のあるフレキシブルな公知の生体適合性素材又は生体吸収性素材で形成した固形ユニットである。
【0078】
また、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)に開示された椎間板組織の再構築を補助するシリカベースの生体活性素材又は公知の組織成長因子など、椎間板組織の再構築を容易にする素材を含んで構成することができる。
【0079】
あるいは、図21に示したように、径方向延伸部76の下面70に、圧縮可能なコア84を取り付けるようにしてもよい。圧縮可能なコア84は、公知の生体適合性又は生体吸収性の弾性発泡体で形成することができる。また、圧縮可能なコア84は、径方向延伸部76が開口44に挿入される場合に圧縮され、挿入後には、線維輪42の内壁形状や椎間板片の病理学的な押し出し又は外科手術による切除により形成された開口形状に適合するように膨張する。
【0080】
追加の実施例では、図18A、図18Bに示したように、軟性嚢80が線維輪ステント10の下面70に取り付けられる。この軟性嚢80は、膜88によって囲まれた内部キャビティ86を含んで構成される。膜88は軟性の薄い生体適合性素材で形成されている。この軟性嚢80は、線維輪ステント10が開拡していない状態で下面70に取り付けられる。さらに、軟性嚢80は、公知の生体適合性液体又は膨張性の発泡体が内部キャビティ62に注入されて膨張させられる。軟性嚢80の詳細な寸法は、個々の形態に応じて異ならせることができる。成人の髄核の典型的な寸法は、半短軸が約2cm、半長軸が約4cmで、厚さが約1.2cmである。
【0081】
他の実施例において、膜88は半透性の生体適合性素材で形成される。
【0082】
図16A〜図16Cに示した使用方法では、線維輪ステント10を椎間板線維輪42の開口44に挿入するために、径方向延伸部76が折り畳まれる。径方向延伸部76は、その上面68が円筒側面を形成するように折り畳まれる。線維輪ステント10は、開口44に挿入されると、該線維輪ステント10が椎間板線維輪42内に完全に位置するまでその先端72が挿入される。その後、径方向延伸部76は椎間板44内で解放されて開拡する。線維輪ステント10の下面70は椎間板線維輪42の内壁に係合する。中心ハブ66は、線維輪ステント10が公知の手法で椎間板線維輪42に固着されることにより、開口44の範囲内に位置させられるようになる。
【0083】
線維芽細胞は、線維輪ステント10のポリマー又はファブリック繊維と係合し、通常の修復過程で見られる現在の治癒状況の2倍に相当する強固な壁を形成する。
【0084】
図17A〜図17Cに示す他の使用方法において、径方向延伸部76は椎間板線維輪42の開口44への挿入のために折り畳まれる。径方向延伸部76は、その上面68がステント10の外面を形成するように、すなわち、例えば、図示した截頭円錐形状に折り畳まれる。次に、線維輪ステント10は開口44に挿入される。この場合、後端74から挿入され、線維輪ステント10が完全に椎間板内に位置するまで挿入される。完全に挿入されると、径方向延伸部76が椎間板内で解放されて開拡する。線維輪ステント10の上面68は椎間板線維輪42の内壁に係合する。中心ハブ66は、線維輪ステント10が公知の手法で椎間板線維輪42に固着されることにより、開口44の範囲内に位置させられるようになる。
【0085】
この実施例では、1以上の支柱67の上面68に設けたバーブ82又は径方向延伸部76の他の機能が、椎間板線維輪42の内壁に噛み込みむので、線維輪ステント10は定位置に保持されるようになる。
【0086】
図12A、図12Bに示した使用方法では、線維輪ステント10は前述したように開口44に挿入される。同様に、図18〜図21に示したステントに関しては、例えば注射器などの公知の注入器具が、生体適合性液体又は膨張性のある発泡体を軟性嚢80の内部キャビティ86に注入するために使用される。生体適合性液体又は膨張性のある発泡体は、線維輪ステントを介して軟性嚢80の内部キャビティ86に注入される。椎間板に開いた空孔を埋めるべく充分な量の素材が、軟性嚢80を膨らませるために、内部キャビティ86に注入される。素材は治療可能なもの(例えば、にかわ(glue))とすることができる。軟性嚢60の使用は、椎間板における髄核の全部又は一部を取り除くことが要求される場合に特に有用である。
【0087】
本願明細書で詳述した「嚢」のあらゆる形態において、1枚の壁又は障壁を採用することができ、該1枚の壁又は障壁は他のものよりも堅く及び弾力を抑えて形成することができる。また、その比較的堅い壁部材は、線維輪壁に近接させて位置させることができ、及び、その修復特性に加えて、線維輪内に嚢を良好に封じ込める。
【0088】
本発明の更なる一実施例を図22に示す。図22は、上側の椎体110、下側の椎体112及び椎間板114を含む一対の椎骨の概略的な横断面図を示している。線維輪(AF)における開口又は裂け目116に、チューブ118を近づける。該チューブ118は、本発明の更なる一実施例に従う装置120を送出するために用いられる。修復装置120は、該修復装置120に設けられたリング又は他の固定機能部124が送出具122により把持される。
【0089】
図23は、開口又は裂け目を通じて修復の必要な椎間板114の線維輪開口に挿入されるために直径が小さくされたチューブ118Aを用いる点を除き、図22に類似した送出方法を示している。
【0090】
次に、図25を参照して本発明に従う更なる一実施例を説明する。送出チューブ118又は118Aを介した装置120の送出は、該装置のアーム又は横方向延伸部128、130を折り畳み、チューブ118、118Aの管腔内に収まるように収容される。従って、ステント又は装置120を折り畳み状態で導入できるので操作が容易である。装置120は、送出具122の使用を介してチューブ118又は118Aの管腔を通じて移動させられる。図25は、アーム128、130を送出チューブ118、118Aに挿入するために、遠位、又は前方向に反らされた状態にされている。図24は、アーム128、130を近位位置に反らした状態を示している。図26は、一方のアーム128を遠位又は前方向に突き出させ、他方のアーム130を近位又は後方向に突き出させて巻き付けた装置120を示している。このような装置の横方向延伸部は比較的フレキシブルであるため、該装置が天然素材であるか又は合成素材であるかに関わらず、包含し、ねじり、丸め、圧縮等、本発明の趣旨と整合する折り畳み状態を採用することが可能である。
【0091】
図27は、周端にバーブ132を備えた一連の周縁バーブ構造を有する装置120を示している。該装置120を使用すると、複数のバーブは、図28に示した接続状態のように線維輪に刺さる。装置120が固着するに際し、該装置120に設けられたバーブのうち少なくとも幾つかが固定機構として線維輪組織に達するのであれば、当該バーブは装置120のいかなる位置に配置されてもよい。単純構造の開口又は裂け目であれば、バーブを装置本体の周縁に配置することは合理的な選択であるが、複雑な裂け目の場合には、装置が線維輪組織に固着すると、どのバーブが線維輪組織に刺さるかが不明であるので、複数のバーブを装置上に配置するとよい。
【0092】
図29は、一対のバーブ134、136を線維輪の外部から該線維輪に刺し込む他の固定方法を示している。装置120はテザー(tether)142によって修復の必要な線維輪開口部に保持される。この特定の実施例において多種多様な固定装置が考えられ、テザー142は、修復の必要な線維輪開口部分に装置を固着させるべく、バーブ134、136をバンド144に結びつける結び目145を有するとよい。本図における結び目は、テザー142とバンド144との関係を明らかにするため、その結び目を締め付けていない状態で示している。この方法によれば、テザーの結び目を固く締め付けることにより、修復の必要な線維輪開口部分位置に装置を維持させることができるようになると共に、該装置を引き寄せて線維輪の修復の必要な開口部分を封孔及びブリッジし、線維輪を良好に再接近させてその開口を閉鎖することができる。
【0093】
図30は、装置120を貫通する充分な長さを有し、線維輪を介して装置120まで伸長するバーブ148、150を用いた他の固定方法を示している。この構成によれば、バーブ148、150と繋がれたバンド144は、装置120を修復の必要な線維輪開口部分に徐々に引き寄せ及び配置させるために締められ、或いは開口又は裂け目を再接近させる強い力を持って締められる。
【0094】
図31は、本発明に係る他の態様に従う更なる一実施例を示している。この一実施例において、金属板160は装置120に組み込まれる。この部品は、フラットストック(flat stock)を機械加工して製造することができ、バーブ164と同様にループ162を含んで構成されている。図31に示す構造の装置120は、図27、図28で詳述した方法と同様に用いられる。
【0095】
ステントは、例えば、前述の図4、図8、図9、図11、図12で示したように平らに開拡(展開)することができ、或いは前述の図5、図10で示したように3次元に開拡(展開)することもできる。図34〜図36は、筋膜組織により形成された自己移植片を採用する3次元パッチ/ステントを示している。図34は、修復の必要な開口部分がある線維輪206と髄核203とで構成される椎間板を取り囲む上方椎体202と、下方椎体204とを示している。図示した本発明の一実施例に従えば、縫合糸210を線維輪外部(後方)から線維輪壁に開いた開口208の一方の縁を介して前方へと通す。つまり、縫合糸210は修復の必要な開口部分に通される。次に、縫合糸を線維輪壁に開いた開口208の反対側の縁を介して後方へ戻し、その縫合糸を修復の必要な線維輪開口部分に残してループ又はスリング212を形成する。図34の右図は後面図を示している。この後面図のように2以上の縫合糸を適用することができる。次に、図35に示したように、例えば鉗子216等を用いて、筋膜自己移植片214を、開口208を通じて修正の必要な線維輪開口部分に挿入する。その後、図36に示したように、修復の必要な線維輪開口部分に設けた縫合糸スリング212内に、筋膜ステント/パッチ214を完全に挿入する。開口の閉鎖は、図37に示したように、線維輪壁方向に自己移植片214を引き寄せることで達成される。縫合糸210を固く結び(218)又は縛ることで、この閉鎖状態が維持されて、パッチ/ステントが固定される。
【0096】
パッチは、折り畳まれることができ、及び、単一平面状態又は3次元状態に展開(開拡)することができる。例えば図24、図25及び図41に示したように、パッチは、該パッチが単一素材であるか又は複合素材であるかにかかわらず、横方向に折り畳まれることができる。他の一実施例としては、図1に示したように縦方向に折り畳まれることができ、また、図26に示したように長手方向に折り畳まれることもできる。他の方法としては、図13〜図15及び図16に示したように、3次元的に折り畳まれることができる。3次元状態に開拡する装置は、例えば、ゼラチンシェル、「ジェルキャップ(gelcap)」、生体吸収性(biosorbable)のメッシュ又は溶解性素材等の保持用ジャケットでパッケージ化されて、配置(挿入)及びこれに続く開拡が容易になる。
【0097】
図36に示したように、パッチは、例えばステントがジェルキャップであれば、自己移植片又はDacron(登録商標)等の合成素材で形成された単一要素で構成することができる。また、パッチは複数要素で構成することもできる。ステントの一例(図示略)としては、例えば「球(Bulb)」等、天然の無強制形状を有するように形成することが可能なシリコーンゴム等の高分子材料で形成することができる。球をより薄くして伸長させた第2形状に引き延ばすために、例えば、スタイレット又はプッシュロッドを球の内部に挿入することができる。この第2形状は、線維輪開口内に配置するために充分なものとする。修復の必要な線維輪開口部分に装置を配置した状態でプッシュロッドを取り除くと、球は負荷のない自然な状態に置かれ、修復の必要な線維輪開口部分において、大きな容積を有することができるようになる。本一実施例ではシリコーンを採用したが、天然の無強制形状であって、装置を送出する張力下で第2形状を有するニチノール(Nitinol)を寄り合わせた装置などの金属構成体を、採用することもできる。一方、これとは逆のシナリオにより同一目的を達成することもできる。すなわち、他の一実施例によれば、装置は、負荷がない状態で伸長された第1形状、及び、負荷下で第2のより大きな形状を有することができる。この一実施例において、装置を機械的に移動させるために使用されるスタイレット又はロッドの一部は、開拡要素を負荷がかかった状態に保持するために残される。
【0098】
複数の要素は、装置の開拡を補助するフレームと、生体適合性及び組織の内成長を得るための被覆と、を含んで構成される。種々のフレーム形状としては、例えば、ニチノール又は複数のワイヤ等のワイヤ素材で構成された開拡可能な「蝶」の形状又は「図8」に示した形状を含んで構成される。一実施例としてのフレーム部材502を図41A〜図41Eに示してある。勿論、他の構成として、菱形形状や、他の円形又は多角形形状を採用することも可能である。菱形フレームは、より小さな第1形状を採ることができると共に、より大きなフレームに開拡できるように構成される。菱形要素は一本又は複数のワイヤで構成することができる。また、部材を、開拡可能なようにその各端部が可動可能に固定される要素を持たせて構成することができる。さらに、テザー又は取付装置504には、縫合糸、ワイヤ、ネジ又は公知の他の取付手段を採用することができる。
【0099】
フレームは、例えば図31に示したように、同一目的を達成するためフラットストックのニチノール等の単一素材を切断して形成することができる。このような形状は、公知の方法、例えばレーザ切断等を用いてフラットストックから切り出すことができる。また、公知の熱成形ステップを用いて、例えば図27に示したような、ストック素材の平面から突出させたバーブ132を有する形状を成形することができる。
【0100】
また、他のフレーム構成としては螺旋又はコイル形状がある。「コイル」形状は、例えば、ばね鋼、又は、より小さな第1の「巻回し(wound)」形状により巻き上げられると共に、より大きな巻かれていない形状、又は、ほどかれた形状に開拡する他の生体適合性素材で形成することができる。
【0101】
前述したフレームにおける開口部分のサイズに従って、該開口サイズを覆うカバーを設けることができ、又は設けないようにしてもよい。これは、装置を配置した後に椎間板の内部空間から髄核を再脱出させないようにするため、及び、装置を周囲組織に自然に結合させる基質として機能させるためである。カバーを、ePTFE、ポリエステル、シリコーン又は他の生体適合性素材等を含んで構成することができる。また、カバーは、例えばコラーゲン、セルロース、自己移植片、異種移植片、同種移植片又はその他の類似物質などの天然素材を含むこともできる。さらに、カバーには、例えばポリビニール乳酸等の本来的な生体分解性能を持たせることができる。
【0102】
被覆されていないフレームは、多孔性のパッチのように透過性を有するとよく、液体や栄養素がパッチを介して線維輪内に及び線維輪外に透過する通常の移動を許容すると共に、ステント/パッチの孔よりも大きな髄核片を修復の必要な線維輪開口部分の内側に維持させる。フレームを構成する素材に応じて、パッチに対する組織の内成長を促す表面処理を施すようにするとよい。例えば、装置表面にチタニウムスパッタリングを施すと、該装置と椎間板内部組織との結合をより容易なものとすることができる。また、組織の内成長を促進させるために、パッチ外表面にNiti又はタンタル泡(tantalum foam)を添加することもできる。
【0103】
装置が第1形状から修復の必要な線維輪開口部分を塞ぎ及び髄核の再脱出を減少させる第2形状に開拡することを可能にするパッチの様々な装置設計が存在することは明かである。以下の装置概念には、椎間板線維輪を修復する装置及び/又はシステムの一実施例をさらに追加することが含まれる。
【0104】
前述したように、本発明に従うステント/パッチは多くの筋膜自己移植片で構成され、該自己移植片は、本明細書で記載するところの「嚢」を形成する素材で構成されたカバーに収容される。勿論、この用語は必ずしも5面で閉じたコンテナを指すために使用される必要はなく、パッチ/ステント素材の体積を柔軟に包囲して間隙を介して操作されることを可能にするためものとして使用される。
【0105】
最も簡易な形態として、前述の筋膜移植片を保持する「スリング」を形成するために、縫合糸で構成される組立装置を使用する。このような自己移植片を保持する縫合糸の簡易な配置上の利点は、移植の間及びその後における自己移植片の保持及び制御が優れている点にある。「スリング」又は「嚢」は、筋膜自己移植片を定位置に保持するために、当該筋膜自己移植片を包囲する。なお、筋膜自己移植片の代わりに、例えば、ポリエステルメッシュなどの他の素材を使用するようにしてもよい。
【0106】
図38は本発明の一実施例である組み立て前のスリング300を示している。この一実施例では、3本の縫合糸302、304、306を使用するが、当業者であれば、3本以上又はそれ以下の縫合糸の使用が可能であることを理解するであろう。カラー部材308は、縫合糸を取り付けるための孔又は他の特徴を有している。本一実施例では、第3縫合糸306は、カラー308に沿って又はその内側に通されて、該カラー308の横方向延伸部から伸長するループを形成する。第1縫合糸302及び第2縫合糸304は、カラー308の上部及び下部から伸長するループをそれぞれ形成する。交叉部310は、縫合糸の小ループ又は結び目、小ファブリック取付部品、又は固定を補助するために縫合糸上に設けられる、グロメットに似た小プリフォーム装置等を持つ各ループを相互に固定することができる。また、公知の他の結び目を形成するテクニックを採用することもできる。次に、図39を参照する。カラーは修復の必要な線維輪開口部分にあり、ループは筋膜自己移植片314を包囲している。この閉鎖方法では、縫合糸302、304、306を近位に引き寄せることで、筋膜自己移植片314が修復の必要な線維輪開口壁に接触して圧潰される。本一実施例では、縫合糸を、公知の素材、例えば、生体分解性、生体吸収性(bioresorbable又はbioabsorable)等による合成吸収糸(Vicryl)又は生体適合性ナイロン等で製造することができる。また、カラーを、例えばポリエステルなどのファブリック素材で形成することができる。自己移植片を配置する際、幾つかの又は各々の縫合糸の一端は、線維輪壁の上部に通され、他端は開口側縁壁の下部に通される。線維輪壁にスリングを設けた後、該スリング内に筋膜自己移植片が配置される。その後、縫合糸は、開口周りの組織を引き寄せると共に開口の再接近を補助するために、しっかりと締められる。ここで、カラーのサイズは、必要とされる再接近の程度に従って、外科医の判断に基づき選択される。
【0107】
他の構成として、例えば、図40に示したように、膨張可能なポリテトラフルオルエチレン(PTFE)で形成された「嚢」404を、前述の目的を達成するために採用することができる。嚢は、線維輪402の開口を経て椎間板内に配置される。また、開口408の背後に一方向シール(one way seal)406を配置させる。該シールを該当箇所に配置するために、噴門弁を導入するための縫合テクニックが用いられる。なお、同一目的を達成する多数の構成が存在し、本一実施例はあくまでも一具体例にすぎない。
【0108】
前述したものに加えて、線維輪の修復の必要な開口部分に装置を固定する多様な方法が存在する。以下に詳述する一実施例は、縫合糸を用い及び結び目を形成する場合と比較して、パッチを固定するために要求される時間及びスキルを低減させる様々な種類のテクニックである。該テクニックは、本発明の一実施例を提供するために導入される。前述した各実施例では、例えば、図1では、スロット18を介して線維輪にパッチを固定する、縫合糸、ステープル及び他の固定装置等の使用を詳述した。また、図20では、線維輪への固定を容易にするためにステント上に設けた「バーブ」の使用を示した。シンプルな一実施例としては、図20に示したように、パッチ/ステントが、圧縮され、図22、23に示したチューブ18、18A等のガイドチューブを通過させられ、修復の必要な開口部分で開拡するものがある。図42は、バーブ604を備える開拡パッチ602、着脱可能な送出具608及びガイドチューブ606を示している。図43に示したように、パッチ602が開拡すると、該パッチ602に設けられたバーブ604は、パッチが後方に引っ張られることで、そのパッチを線維輪612の内壁610に固定させる。この場合、バーブ604は、修復の必要な線維輪開口部分に刺さる。ガイドチューブ606を前方に押し進めると、バーブ604が線維輪へと更に刺し込まれ、線維輪の内側及び外側の組織を互いに引き寄せ、椎間板における開口の両周縁を再接近させることができるようになる。パッチの配置後、送出具及びガイドチューブが取り除かれる。
【0109】
この一実施例における利点は、組織を互いに引き寄せる場合、線維輪へのパッチの配置及び固定を、非常に短時間で、かつ少ないスキルで行える点にある。
【0110】
パッチの素材には前述したものと同様のものを採用することができる。アンカリング(anchoring)バーブは、金属素材(例えば、NiTi合金、ステンレス鋼又はチタニウム等)、又は高分子材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等)などの生体適合性素材で形成することができる。また、アンカリングバーブは、ポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)、polylevolactic酸(PPLA:polylevolactic acid)、ポリジオキサノン(PDA:polydioxanone)又はラセミポリ乳酸(PDLLA:racemic polylactic acid)等の生体分解性/生体吸収性素材であってもよい。バーブに生体分解性/生体吸収性素材を含有させると、当該バーブは、治癒過程中に、パッチが線維輪に取り込まれるのに充分な期間について、充分な保持強度を有する。図42、図43の生体分解性/生体吸収性アンカリングバーブが有する有利な効果は、線維輪にパッチが取り込まれた後には、バーブが提供する固定が不要になる点にある。しかし、線維輪の外面に向けて刺し込まれたバーブは、その移動により線維輪の外側を貫通し、場合によっては神経根及び脊髄管に突き当たるといった長期的なリスクを有する。この点に関しては、生体分解性/生体吸収性バーブを用いることにより、前述したように及び有利にその長期的なリスクを低減することができる。
【0111】
バーブは、生体適合性要素及び生体分解性/生体吸収性要素の双方で形成することができる。例えば、バーブの先端のみを生体分解性素材で形成することができる。このバーブによれば、非常に鋭い先端により線維輪壁は貫通されるが、分解が進行すると、バーブ先端は丸みを帯びるようになる。本一実施例によれば、先端は、パッチが取り込まれると瘢痕形成を誘発させることはなく、線維輪を貫通して神経根に至るといったリスクをも回避することができるようになる。
【0112】
他の固定手段は、線維輪壁、椎体(上位、下位、又は双方)、シャーピ線維(Sharpey's Fiber)(線維輪と椎体の接合部分間の膠原線維)を通る「アンカリングバンド」を含む。以下、詳述するアンカーの一実施例では、バーブ又はバンドは線維輪/椎体/シャーピ線維に付着させられる。縫合糸、締付糸又はステープルなどの他の構成要素が、パッチにアンカーバンドを取り付けるために利用され、これによりパッチを線維輪内壁に近接して保持することができる。また、これらバンドは開口組織を再接近させる。
【0113】
前述し図9に示した装置を固着する、バーブを使用する一実施例を再び取り上げる。バーブ又は骨アンカーネジ50、52を、下位又は上位の椎体54、56にそれぞれねじ込む。次に、縫合糸を線維輪外壁から修復の必要な線維輪開口部分に通す。その後、この縫合糸を骨アンカ52の小穴53に通して、線維輪を介して修復の必要な線維輪開口部分から線維輪外壁へと通す。縫合糸の下位端も同様に、線維輪、骨アンカの小穴に通し、線維輪壁を介して再び戻す。縫合糸40の両端は締められて結ばれる。この概念における利点は、ヘルニア摘出処置(椎体)により形成した表面に対し、装置を固着可能とする点にある。他方、自然に生じた裂け目の位置、サイズによっては、装置を線維輪に直接固定するためにアクセス可能な線維輪が充分に存在しない場合もある。従って、この場合には、固定のための位置を提供することに加えて、椎体への固着がより安定した固着面に提供されるとよい。
【0114】
線維輪内壁に装置を固定する他の一実施例を、図29、図44〜図47に示してある。前述したように、図22〜図30に関し、パッチ120は、送出具122に配置され、ガイドチューブ118の内部管腔を通じて、修復の必要な線維輪開口部分に挿入され、その後、開拡する。この過程は図45、図46にも示してある。ここで、パッチ702は、折り畳まれ、ガイドチューブ706に通され、送出具704によって保持されている。アンカーバンド又はステープル709及びアンカーバンド送出装置708も図示してある。ガイドチューブ内又は送出具内には、パッチ702の中央に取り付けられた縫合糸又は締付糸710が存在する。この状態、すなわちガイドチューブ706を取り除いた状態を図44Aに示す。図45C、図46Aに見られるように、ガイドチューブ706は、パッチ702が開拡して配置された後に格納される。次いで、アンカーバンド送出具708が、1以上の「バンド」709を線維輪の外表面上に送出するために使用される。バンド709は、線維輪から抜き出すことができない形状のバーブを有しており、該バーブと共に線維輪壁に固着される。アンカーバンドは「ステープル」に似た構造である。バンドは、実際には、2つのバーブ要素を連結し、又、例えば、該2つのバーブ要素間に縫合糸を設けて構成されたものである。バーブ及びバーブ間の連結バンドを同一素材又は異なる素材で構成することができる。例えば、アンカーバンドのバーブ部分を、生体分解性/生体吸収性素材(例えば、ポリグリコール酸等)や、金属又は高分子材料(例えば、チタニウム、NiTi合金、ステンレス鋼、ポリウレタン、ポリプロピレン等)で形成することができる。一方、複数のバーブを連結するバンドを、バーブと同様の素材で、又は、異なる素材で形成することができる。例えば、連結バンドは、合成吸収糸(Vicryl)等の生体分解性/生体吸収性の縫合糸、又は、ポリプロピレン等の生体適合性素材で形成することができる。さらに、これらの要素は、線維輪に固着して、固定部分を形成し、パッチを修復の必要な線維輪壁付近に引き寄せるといった目的が達成されるように、素材を複合させて形成することも可能である。
【0115】
図44B、図44Cは、アンカーバンド送出具708によって線維輪712に刺し込まれるアンカーバンド709の配置を示している。図46A、図46Bは、アンカーバンド709を線維輪712の壁面に刺し込み、アンカーバンド送出具708を格納し、パッチ702を保持したままのパッチ送出具704のそれぞれの配置を図示したものである。図44Dは、縫合糸709’によって連結された一対のステンレス鋼のバーブ709”を備える代表的なアンカーバンド709を示している。図44Eは、線維輪にあるパッチと組織を互いに引き寄せる前の状態であって、送出具を取り除いた後のパッチ702、アンカーバンド709、締結糸又は縫合糸710の状態を示している。この一実施例では、後述する図47Bに記載された締付糸上にある締め付け前の結び目(pre-fabricated knot)714を図示しているが、他の結び目を使用することもできる。また、図47Aも、この装置における結び目714と、線維輪におけるパッチ形成の後面図を示している。ここでは、ステント/パッチ702における7mmの縫合糸709で構成される一対のループが示されており、該ループは締結糸と引き結びで係合している。これら縫合糸のループは、図44に示したバーブに直接に連結されるか、外科用ステープルを輪にするか、又は線維輪に直接に配置される。締結糸上に締め付け前の結び目を予め設けることで、結び目を作る必要がなくなり、修復過程を迅速なものとすることができるようになる。また、これにより組織を互いに引き寄せることが容易になる。この締結糸及び締め付け前の結び目の使用は、例えば、結び目プッシャー(knot pusher)等の外側チューブを押しつける。図44Eは、前述した図29における結び目145を「しっかりと締め付ける」前の状態と同様のものを示している。図44Fは、矢印A方向に縫合糸を引っ張り、パッチ及び線維輪組織を互いに引き寄せる状態を示している。この場合、結び目プッシャーは、締結糸710から既に取り除かれている。縫合糸710を引っ張ることで、パッチ702が、近位に引き寄せられて、線維輪内壁に係合し、線維輪内部から開口を閉鎖すると共に、線維輪壁が互いに引き寄せられて、線維輪開口が再接近するようになる。図46C、図44Gは、余りの縫合糸を切除した後に、締結糸又は縫合糸710を結び及び線維輪組織が、互いに引き寄せられた状態を示している。また、この装置、固定及び送出システムにより、再接近の間に開口の外面も互いに引き寄せられる。
【0116】
また、バンドとパッチを締め付けて、線維輪壁のサイズ変化に適応可能なように、たるみを縮めることができる。すなわち、開口を囲む線維輪壁の厚さは1mm〜10mmまで変化する。従って、アンカーバンドが一定の長さに設定された場合には、開口内におけるバンドの「たるみ」を引っ張ることにより、締結糸が線維輪壁厚さの種々のサイズに対応することができるようになる。
【0117】
ここでは、パッチ、バンド及び組織をそれぞれ引っ張るための縫合糸と、2つの横方向アンカーバンドと、を含むパッチの配置について詳述したが、この2つのバンドの使用は、単なる一実施例に過ぎず、1以上のバンドを使用することもできる。また、アンカーバンドがバーブにより上下方向に配置される場合についても説明した。当業者は、バンドを開口周囲の異なる位置に配置させることができることを認識可能である。さらに、バンドが線維輪内に配置される場合を説明したが、そのアンカーバンドを、図48Aの符号800として示した椎体に、又は、図48Bの符号804におけるシャーピ線維802に配置することもできる。
【0118】
この一実施例で述べたパッチは、該パッチを線維輪の内壁に取り付けるためのバーブを有していないが、線維輪内壁に対するパッチの固着をさらに強化させるためにバーブを備えることもできる。
【0119】
また、これまでは組織の再接近に適した開口を図示してきたが、該開口が自然に発生又は外科手術により形成されるにせよ、それが比較的大きい場合もあり得る。従って、線維輪内壁上のパッチと外壁上に位置するアンカーバンドとの間に、組織の成長の足場として機能する追加の素材を、その開口内に配置することが必要な場合もある。開口に充填する素材の一例としては、傍脊椎筋膜組織(para-spinal fascial tissue)の自己移植片、異種移植片又はその他の天然膠原素材等を採用することができる。また、この充填材(filler)は、例えばDacron(登録商標)等の生体適合性素材で形成することもできる。図51は、縫合糸710を締める前の状態において、インプラント材716を開口に充填した図を示している。
【0120】
本発明の他の一実施例では、前述したアンカーバンド709(線維輪に刺し込まれるアンカーバンド)は、線維輪を貫通し、さらにパッチをも貫通するように充分に長く形成される。本実施例におけるバーブはパッチと係合関係になる。この概念は図30において詳述した通りである。一方、本実施例によるシステムは図49、図50に示した通りである。本実施例において、バーブがパッチを貫通することは、移植された後にそのバーブの移動可能性を減少させるので、さらなる安全及び安全性を提供する。本願発明では、組織を互いに引き寄せ、開口周縁の組織の動きを抑制するアンカーバンドに加え、縫合締結糸を使用することができ(図50参照)、又は、使用しないこともできる(図30参照)。
【0121】
さらに、図49、図50に示したバンドはバーブ形状を採用しているが、これに、パッチを貫通させた後、該パッチ装置702から抜けない係合関係を備えさせる場合には、図52Eに示したようにシンプルなT字状のバーブ720形状や、C字状の要素を採用することができる。T字状の取付要素は、縫合糸の長手方向に設けられて、パッチを貫通する。その後、T字部分が回転し、縫合糸アンカーがパッチから抜け出ることを防止する。他の一実施例として、超弾性素材で形成された「C」字状の保持具を、縫合糸バンドの終端に採用するようにしてもよい。C字状の保持具は、負荷が加えられて直線状に保たれる針の形態にされる。この針の形態のままC字状の保持具及び縫合糸を、パッチに貫通させ、貫通後には、当該保持具が第2の「C」字状の形状に展開する。
【0122】
また、パッチフレームを覆うファブリックについて、該ファブリックがアンカーの配置及び固定に役立つように機能するパッチ設計が本発明の範囲内で考えられる。すなわち、ニチノール等の金属で形成されたパッチのフレームに、例えば「窓(window)」を設けることができる。つまり、例えば、シリコーンやDacron(登録商標)等のメッシュファブリックで覆われた装置では、アンカリングバーブがパッチフレームの「窓」に通される。この場合、バーブはフレームを覆うファブリック内でパッチに固定されることができるようになる。
【0123】
一方、パッチは、パッチフレームの格子に係合するバーブが貫通することで固定される。本発明のこれらの一実施例では、バーブは垂直、水平又は十字のフレーム構造/部材と係合するように設計される。この場合、バーブは、メッシュ又は格子のフレームを貫通し、そのフレーム構造から後退することはできない。
【0124】
以上では、縫合糸によって連結された2つのアンカーで構成される「アンカーバンド」について説明したが、縫合糸と1つのバーブを配置し、該バーブをパッチに貫させて設置した後、線維輪の外面で、その縫合糸の端部をバーブに結びつけることもできる。
【0125】
前述した設計の目的は、システムにおける「たるみを引っ張り上げる」方法を、縫合糸の長さ調節及びアンカーバンドのために提供することにある。本発明では、アンカーバンドと共に、パッチの設計に組み込まれる縫合糸を引っ張る手段として、「ラッソ締結結び(Lasso Cinch Kno)」を開発した。図53は、ラッソの一実施例の使用を示したものである。本質的には、「パッチを貫通するバーブ」構成が組み込まれたパッチ及びフレーム構造を用いる。一旦、バーブをパッチに貫通させると、内部ラッソ722をアンカーバンドの縫合糸周りにきつく引っ張り、これによりパッチ内の余分な縫合糸(suture material)が引っ張られるようになる。内部ラッソは、バンドの縫合糸を寄せ集め、ラッソが締められると、バンドの縫合を互いに締め付ける。従って、これらが締め付けられ及びたるみが取り除かれることになり、パッチ/ステントが線維輪壁に近接し又はきつく結合されるようになる。また、図53のパッチには菱形形状の格子パターンが設けられている。この格子パターンは、プローブ又はこれに類似する器具を小抵抗で通過させ、バーブ又は他の器具の制止機能に対しては抵抗を与える格子を有利に提供する。図示したフレームは、ニチノールで形成することができ、その配置の際に、図中央に示した係止又は保持窓は、z軸周りの回転を可能にする。例えば、結び目プッシャー等の引き結びテクニックを使用することにより、ラッソによるループの引っ張り過程が補助されるようになる。内部ループ(ラッソ)は、パッチフレームの外縁部でループを保持するために、パッチ/ステントの外側角部に縫いつけることができる。ラッソの結び目を締める場合、ループは、フレームを縫いつけた取付部分の幾つか又は全てから自由に引き寄せられることができ、ラッソを締め付ける際にフレームの平坦形状が変形することを防止する。前述のように、フレームは、メッシュファブリックの幾つかの種類と共に、複合構造又はサンドイッチ形状を採用することができる。近位のメッシュファブリックは、例えば、シリコーンなどの接着剤が使用されて、パッチフレームと完全に接着させられる。接着剤は、プローブの貫通を容易にし及び縫合糸を保護するために、格子パターンの隙間に充填される。縫合糸を保護することは、一群のバンド縫合糸を互いに引っ張り、束ねるために、ラッソを用いた場合に有利である。
【0126】
また、本発明では、縫合糸710’をステント/パッチに予め取り付けることが含まれる。図52Aに示した、線維輪712に刺し込まれた幾つかの分離バーブ709’’’をパッチ702に直接に取り付けることができる。図52Aの各「バーブ」は、パッチを展開させた後、それぞれ独立して線維輪に配置され刺し込まれる。このバーブ709’’’は、図55のバーブ709””を含む一実施例と類似するものである。
【0127】
パッチ902を固着させ、裂け目又は切開部分を再接近させる他の一実施例として、図56に示したように種々の長さを有する縫合糸が結ばれた複数の分離バーブを提供する。各々独立した縫合糸バーブ904は、バーブ送出具908により線維輪906乃至パッチ902に刺し込まれて配置される。この配置後に、パッチ送出具912を出る自由端が引っ張られることにより、全ての縫合糸910が引っ張られる。係止要素914は、ガスケット915及びスレッディングの各機構として用いられる。該係止要素914は、パッチ902に取り付けられており、縫合糸910の遠位端部付近で、ガスケット916を固定するために使用される。次に、パッチ送出具912を取り除き、余分な縫合糸を切り詰める。また、ガスケット機構はパッチに対する縫合糸の固定を提供するために圧入されることも可能である。
【0128】
或いは、図57に示したような係止機構を設けることができる。この場合、係止要素914’における係合はパッチ上で行われる。矢印B方向に縫合糸910を引っ張ることにより、パッチの固着及び再接近を促進する張力がかかり、縫合糸910に締め付け及び係止保持を与える。2つのアンカー間における長さ調節可能な縫合糸バンドによりアンカー916、916間のたるみを取り除くことができるようになる。本一実施例では2つのT字状のアンカーを図示したが、種々異なる形状のアンカーを用いることができる。また、本一実施例では、係止部分を、図示のように特徴のあるバンドに設けたので、アンカー部材を実質的に一方向に係止することができる。この調節機能によれば、様々な患者の線維輪厚さに対応することが可能となる。本一実施例における縫合糸のたるみは、線維輪の欠損箇所を閉鎖するべく、及び/又は、前述したように複数の張力を縫合糸バンドにかける第2の締め付けによりアンカー間におけるバンドを短くするために、取り除かれる。
【0129】
締結糸及びラッソの概念における本質は、迅速且つ単純な手法で互いの組織を再接近及び引き寄せることを容易にすることにある。「張力」要素の他の一実施例には、装置を固定するアンカーバンドの一部として使用される弾性カップラが含まれる。この弾性カップラは配置のために開拡し、解放されると、組織を引き寄せるための張力を形成する。また、カップラは、生体適合性金属、ポリマーで形成することができ、生体分解性/生体吸収性素材で構成することもできる。
【0130】
同様に、アンカーを設置した後、装置に張力を生じさせ、組織を引き寄せる一実施例は、一端がアンカーバンドに取り付けられ、他端がパッチに取り付けられる弾性バンド又はバネ付きバンドを含むことができる。或いは、アンカーバンドを、バーブ間における弾性バンドとして形成し、又はバーブ間におけるバネ付き要素として包含することもできる。このような一実施例は、いわゆる「ボバースプリング(bobber spring)」のように形成することができる。さらに、弾性又はバネ要素は、多様な素材、例えば、高分子材料や生体分解性/生体吸収性素材などで形成することができる。
【0131】
図59はメッシュシール形態を採用したパッチ要素1002の一実施例を示している。固定は、線維輪1006の内部表面に侵入するバーブ要素1004を備えたフックによって行われる。このフック(バーブ)1004の内部結合部は、線維輪外面とパッチに近接する内部表面との間に張力をかけ、線維輪組織を互いに引き寄せるようにして、パッチに取り付けられている。パッチ/ステント1002は、ニチノール又は他のバネ素材等から形成可能なバネリボン要素1008を含んでいる。フック1010は、線維輪を「つかむ(grab)」ために使用され、図示したように開口1012に侵入するか、又は開口1012を把持する。
【0132】
図54A〜図54Fは、各縫合糸をそれぞれ引っ張り、線維輪の内側組織と外側組織間に張力をかける手段についての他の一実施例を示している。アンカーバンド、すなわちT字状のバーブ720’は、線維輪及びパッチに貫通されて設置され、パッチ702に固定される。アンカーバンドの縫合糸における「たるみ」は、送出具704’の取り外し可能部分周りに巻き付けられ、及び、ネジ726がパッチに固定される位置において、係止要素、例えば、図示したネジ要素724が余分な縫合糸を係止するために使用される。その後、送出具704’が取り外される。
【0133】
図58は、縫合糸及び締結糸の異なる構成によって「アンカリングバーブ」を締め付ける他の一実施例を示している。例えば、図58Bにおける各々独立したバーブには、それぞれ縫合糸のループが設けられている。これらループには、結び目のある締結糸が通されている。線維輪内に、或いはパッチに貫通させてバーブを設置した後、締結糸がバーブに設けられたループと共に引っ張られる。この一実施例による有利な効果は、各々独立して配置させた複数のバーブを全て一斉に引っ張ることができる点にある。
【0134】
前述の締結糸は、縫合糸の長さを「固定」するために結び目を利用したが、図57に示したように、他の機構により長さを固定することもできる。縫合糸長さの固定は機械要素を介して達成される。機械要素は、縫合糸に取り付けられた3次元要素と係合するバーブ上に設けられており、縫合糸は、バーブ上の係合要素に機械的に圧入されている。これらにより縫合糸の長さがきちんと固定されるようになる。
【0135】
図57、図58を参照して1つの固定機構(例えば、締結線に設けた結び目)を採用する一実施例を詳述したが、開口周りの組織を再接近させ及び引き寄せる1以上の固定要素を採用するといった多様な構成も可能である。
【0136】
本発明の更なる例示的な一実施例として、例えば、図41Eに図示したような概念を以下に詳述する。図60〜図66に示した、本発明の更なる一実施例である編みパッチ1100は、髄核の脱出に対するバリアとして機能するように、修復の必要な線維輪空間に配置される。
【0137】
「パッチ」1100は、糸状体1102を編み込んだ編み込みチューブから形成される。編み込みチューブの各端部1104は、組ひもがほどけないようにヒートシールされ、このシールにより、パッチを配置した場合に、該パッチの完全な構造が提供される。この構造を形成するために、編み機械が、多数の糸状体1102を編み込んで、編みパッチ1100を形成する。例えば、パッチは、線維輪壁を介して配置された後、欠損した線維輪内で直ちに展開し、装置への細胞内殖を促進し、及び、アンカーを維持する前記構造を形成するために、72本のポリエステル糸状体が編まれて形成される。この場合、パッチにおける糸状体1102の数、糸状体の材質、糸状体の大きさ(例えば、直径)と同様に糸状体の構造(例えば、断面領域)を変更し、又は、編むパターンを変えて、パッチの特性における相違を形成するようにしてもよい。編みパッチは、標準のスティガーブレーダ(Steeger braider)、又は、これに類似する、一度に16本、最高196本の糸状体をどこからでも編むことができるタイプの編み機械で形成することができる。好ましくは、パッチは、32本〜144本の糸状体で編まれて形成されるとよい。
【0138】
パッチの糸状体1102は、種々の材質で形成することができ、又は、糸状体の全てを、パッチの材質及び寸法と同様にして形成することもできる。糸状体は、金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金又は他の金属素材などから形成することができる。また、パッチ1100は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの生体適合性高分子材料から形成することもできる。さらに、パッチには、例えば、ポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)、又は、時間の経過と共に分解して身体に吸収される他の素材等の生体分解性素材を編み込んで形成することも考えられる。
【0139】
さらにまた、複数の素材及び/又は複数の寸法を有する糸状体をパッチ1100に編むことも可能である。例えば、パッチは、線維輪をシーリングするために最適なパッチを形成するために、ポリマーPET素材で形成された32本の糸状体と、ポリエステル糸素材で形成された32本の糸状体と、を編み込んで形成することができる。異なる糸状体素材、サイズ、断面構成、糸状体の数及び編み込みパターンの組み合わせを、修復の必要な線維輪空間に送出されて開口を治癒させる足場として機能する編みパッチの構造に採用することができる。
【0140】
編みパッチは、比較的小さな線維輪壁の開口を通して配置することができ、該配置後には、開口よりも実質的に大きな寸法に膨張することができる点で有利である。例えば、直径5mm未満の編み込みチューブを、完全に膨張した状態では、例えば、20mmより大きくなるように構成することが可能である。
【0141】
図62を参照すると、配置されていない編みパッチ1100は、パッチ送出具1200の遠位端部に取り付けられている。この場合、編みパッチ1100は、送出具の送出部材と同軸上に位置している。この取付メカニズムの詳細を図63に示してある。図63を参照すれば、編みパッチ1100は、内部送出部材1202の遠位端部に配置されている。パッチのヒートセットされた遠位カフ1104は、内部送出部材1216の遠位領域上のくぼんだ範囲に位置させられている。送出部材1216の遠位部は、図65に示したように溝が設けられており、配置されていない状態で、それぞれ離れた内部送出部材が形成する溝部を押圧するように機能する同軸保持部材1208を含み、これにより、パッチの遠位カフ1104を、内部送出部材1202の遠位領域上に固定することができるようになる。パッチの近位部は、アウタープッシャー部材1204に、当接及び接触する。配置されていない状態において、送出装置は、線維輪の開口に挿入される。一旦、線維輪開口に挿入されると、送出装置1200のアウタープッシャー部材1204が、装置の遠位端部方向に押されると共に、内部送出部材1202が、近位に引っ張られる。このような方法により、各部材を作動させることで、図61及び図64に示したように、編みパッチが、チューブ軸に対して略垂直に拡げられるようになる。
【0142】
一旦、パッチ1100が、完全に膨張した状態に拡げられると、パッチの遠位端部及び近位端部に接続された締結糸1212は、締められ及び、例えば、ローダー結び(Roeder knot)などで結ばれ、膨張構造にある編みパッチを保持するために用いられる。なお、締結結び目1214を有する図示した装置は、パッチを線維輪に固定する手段を採用することで、係止要素を不要とすることを可能にする。また、係止手段を不要とすることも可能である。この係止手段の代替としては、編みパッチが膨張した形状を維持できれば、どのような手段であっても可能である。結び目プッシャー1210は、装置を係止している結び目1214を処理するために使用される。
【0143】
一旦、装置パッチが、線維輪及び修復の必要な線維輪空間内で最終形態に膨張すると、保持部材は、該保持部材の近位端部が近位方向に摺動されて引っ張られることにより、遠位部の内部部材から取り除かれる。保持部材を取り除くことによって、パッチの遠位カフを保持している部分の圧力が軽減され、そのパッチが、送出装置の遠位端部から摺動可能なように外されることを可能にする。これにより、パッチは、修復の必要な線維輪空間内で拡がることができるようになる。
【0144】
図66に示したように、パッチ1100は、送出装置によるパッチの配置の前後いずれにおいても内面に固着される。また、このパッチを、本願の他の部分で説明した様々な固定手段によって、線維輪の内面に固着させることもできる。例えば、線維輪及びパッチを貫通する、図29に示したアンカーバンドを、修復の必要な線維輪空間にパッチを固定するために採用することができる。バンド1314(例えば、縫合糸)を有する1つのT字状のアンカー1310が、線維輪1306を通して送出されて、線維輪の外面上における縫合部分にあるパッチ1100を、結び目、外科用綿撒糸、又は、他の固定装置1316によって、その外面に固定させるようにしてもよい。また、パッチを、例えば、シアノアクリレート、フィブリン接着剤、ポリマータンパク質、ポリウレタン、又は、修復の必要な線維輪空間内の位置でパッチを硬化させるために用いる他の物質などの接着剤の使用を通じて、線維輪の内面に固着させることもできる。パス1312は、脊椎骨を貫通して保持される、パッチにおけるT字状のアンカー部材1310の他の縫合可能なパスを示している。
【0145】
ステント又はパッチを線維輪に固着するための適切な装置は、本願の出願人と同一出願人によって、2002年12月24日に出願され、出願継続中の米国特許出願番号10/327,106号に開示されており、ここでの内容は、参照によって本願に組み込まれる。
【0146】
この設計における有利な点は、糸状体の大きさ、構成、素材、編み込みパターン、及び、糸状体の数など、正しい選択が与えられると、線維輪の修復の必要な箇所に容易に送出することができ、椎間板空間内に存続する負荷のために必要とされる機械的一体性を維持すると共に、欠損した線維輪の形状に適合する柔軟性を有することにある。他の利点としては、素材、糸状体の構成、編み込み、寸法の考慮、及び、多数の糸状体の織り方など、適切な選択がなされると、配置された状態で、線維症を取り込み、及び、欠損した線維輪の線維化の治療に貢献するパッチを形成することができることである。最後に、パッチは、配置した状態において、編み込み糸状体を介して1以上のアンカーバンドを容易に受け止めることができると共に、固定装置をパッチに通した後、T字状のアンカーや他の類似形状の固定装置を維持することができるように、設計することができる。
【0147】
以上で言及し又は引用した全ての特許は、本願明細書の明確な教示と共に本願明細書と矛盾しない範囲内で参照よって組み込まれる。それら特許には、米国特許第5,108,438号明細書(Stoneによる発明)、米国特許第5,258,043号明細書(Stoneによる発明)、米国特許第4,904,260号明細書(Ray等による発明)、米国特許第5,964,807号明細書(Gan等による発明)、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)、米国特許第5,122,154号明細書(Rhodes等による発明)、米国特許第5,204,106号明細書(Schepers等による発明)、米国特許第5,888,220号明細書(Felt等による発明)及び米国特許第5,376,120号明細書(Sarver等による発明)が含まれる。
【0148】
本発明の実施に際し、当業者にとって公知である種々の素材を用いることができる。例示に過ぎないが、ステントの本体部分をNiTi合金、ポリプロピレン及びポリエチレンを含むプラスチック、ステンレス鋼及びその他の生体適合性金属、クロムコバルト合金、コラーゲン等で形成することができる。水掻き素材には、シリコーン、コラーゲン、ePTFE、Dacron(登録商標)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及び他の生体適合性素材等を含ませることができ、その水掻き素材を織り込み又は織り込まないようにして形成することができる。膜は、シリコーン、プロピレン、ポリエステル、SURLYN、PEBAX、ポリエチレン、ポリウレタン又は他の生体適合性素材等で形成するようにしてもよい。膜のための膨張流体には、ガス、流体、発泡体、エマルジョンをふくませることができ、生体活性(bioactive)素材で構成するか又は生体活性素材を含んで構成することもでき、さらに、機械的、生化学的及び医療的な目的を持たせて構成することができる。また、ステント本体、水掻き素材及び/又は膜は、医療における移植分野で知られた薬剤溶出性又は生体適合性を持たせることができる。
【0149】
本発明のその他の実施例は、当業者であれば、本願明細書の記載を考慮し及び本明細書に開示された本発明を実施することで明かである。また、本明細書及び各実施例は、単なる例示に過ぎず、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲により定められる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の一実施例に係る線維輪ステントの斜視図。
【図2】図1の線維輪ステントの正面図。
【図3】図1の線維輪ステントの側面図。
【図4A】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図4B】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図4C】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図5A】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図5B】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図6A】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図6B】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図7】椎間板線維輪における開口の第1の閉鎖を示す図。
【図8A】ステントを用いた第1の閉鎖を示す図。
【図8B】ステントを用いた第1の閉鎖を示す図。
【図9】椎体に設けた固定箇所を利用し、線維輪ステントを椎間板線維輪に縫合する方法を示す図。
【図10A】椎間板線維輪内で開拡する、軟性嚢を備えた線維輪ステントの実施例を示す図。
【図10B】椎間板線維輪内で開拡する、軟性嚢を備えた線維輪ステントの実施例を示す図。
【図11A】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11B】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11C】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11D】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図12A】線維輪ステントに設けた柔軟嚢の膨張を示す図。
【図12B】線維輪ステントに設けた柔軟嚢の膨張を示す図。
【図13】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントの斜視図。
【図14】図13に示した線維輪ステントの第1の折り畳み状態を示す図。
【図15】図13に示した線維輪ステントの第2の折り畳み状態を示す図。
【図16A】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図16B】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図16C】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図17A】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図17B】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図17C】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図18A】軟性嚢を備える線維輪ステントの他の実施例を示す図。
【図18B】軟性嚢を備える線維輪ステントの他の実施例を示す図。
【図19A】軟性嚢を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図19B】軟性嚢を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図20】径方向延伸部上にバーブを備える線維輪ステントの開拡した状態を示す図。
【図21】圧縮可能なコアを備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図22】本発明の実施例に係る線維輪ステンの挿入装置を示す図。
【図23】図22に示した装置の変形例を示す図。
【図24】ステントを近位方向に反らし状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図25】ステントを遠位方向に反らし状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図26】線維輪ステントを近位方向及び遠位方向に部分的に反らした状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図27】バーブ形状における、つかむ機能及び固定装置を備えるステント装置を示す図。
【図28】修復の必要な線維輪開口部分に展開させた図27のステント装置を示す図。
【図29】第2のバーブを備えた固定装置を採用する線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図30】第2のバーブを備えた固定装置の他の例を採用する線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図31】フラットストックを機械加工した金属板を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図32A】ヘルニア状態にある椎間板の斜視図。
【図32B】図32Aの椎間板からヘルニアを摘出処置した状態を示す斜視図。
【図33A】椎間板からヘルニアを摘出した状態を示す上面図。
【図33B】切開部を示す椎間板の後方側面図。
【図34】縫合糸を用いて修復の必要な線維輪開口部分にスリングを形成した状態を示す概略図。
【図35】修復の必要な線維輪開口部分に圧縮した自己移植ステント/パッチを導入する概略図。
【図36】線維輪内で膨張させた図35に示した自己移植片の概略図。
【図37】縫合糸を締め付けて線維輪開口を再接近させ、図35に示したステント/パッチを線維輪壁方向に引き寄せた状態を示す概略図。
【図38】椎間板線維輪の修復に用いるカラーの一例を示す図。
【図39】図38に示したカラーを椎間板線維輪の修復に用いた状態を示す概略図。
【図40】本発明の更なる実施例に係るパッチ/ステントを含む嚢の使用状態を示す図。
【図41A】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41B】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41C】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41D】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41E】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図42】バーブを備えた開拡可能なパッチを修復の必要な線維輪開口部分に配置する方法を示す図。
【図43】図42に示したパッチを線維輪の内壁に固定した状態を示す図。
【図44A】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44B】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44C】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44D】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44E】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44F】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44G】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図45A】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図45B】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図45C】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図46A】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図46B】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図46C】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図47A】線維輪にパッチ/ステントを固定する縫合糸の配置の一例を示す図。
【図47B】線維輪にパッチ/ステントを固定する縫合糸の配置の一例を示す図。
【図48A】固定用縫合糸を椎体又はシャーピ線維に配置した状態を示す図。
【図48B】固定用縫合糸を椎体又はシャーピ線維に配置した状態を示す図。
【図49A】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図49B】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図49C】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図50A】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図50B】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図50C】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図51】締結糸によって縛られたパッチ/ステントを配置する際、開口内におけるフィラー組織の使用の一例を示す図。
【図52A】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52B】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52C】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52D】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52E】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図53】フレームを備えるパッチ/ステントの一例を示す図。
【図54A】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54B】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54C】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54D】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54E】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54F】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図55】本発明の更なる実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図59】本発明の更なる実施例に係るバネによる配置を示す図。
【図60】本発明の更なる実施例に係る折り畳まれた形状の編み装置を示す側面図。
【図61】図60に示した実施例の膨張した形状を示す軸方向図。
【図62】図60に示した実施例の折り畳まれた状態の装置を送出装置に取り付けた状態を示す側断面図。
【図63】図60に示した実施例の折り畳まれた状態の装置を示す側断面図。
【図64】図60に示した実施例の膨張した状態の装置を示す側断面図。
【図65】図63及び図64に示した送出装置の側面図。
【図66】本発明の更なる実施例に係る、修復の必要な線維輪に挿入された膨張した状態の装置を示す側面図。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
本願は、1999年10月20日に出願された米国仮出願第60/160,710号の利益を主張する、2001年9月5日に出願された米国特許出願第09/947,078号(2000年1月18日に出願された米国特許出願第09/484,706号の継続出願)の継続出願である2002年4月29日に出願された米国特許出願10/133,339号の継続出願である。また、本願は、2001年7月31日に出願された米国仮出願第60/309,105号の利益を主張するものである。さらに、本願は2002年2月15日に出願された米国特許出願第10/075,615号の継続出願でもある。前述した各出願の全ての内容は、これらを参照することにより、本願に組み込まれる。
【0003】
本発明は、一般的には椎間板線維輪に生じた開口を閉鎖、封止及び/又は修復するための方法及び植え込み型医療装置に関する。この「開口」との用語は、椎間板線維輪の切開手術の結果として、又は自然に生じた亀裂(又は裂け目)として当該線維輪に形成される孔をいう。また、本発明は、一般的には椎間板壁を修復し又は再構築する外科手術上の装置及び方法に関する。さらに、本発明は、椎間板の線維輪を修復する線維輪修復装置、又はステントに関する。該ステントは天然素材又は合成素材で構成することができる。前記再構築の効果は、椎間板壁を完全に回復させ、及び一般的な外科手術(断片化した椎間板の除去又はヘルニア摘出)の失敗率(3〜21%)を減少させることができる。この外科手術は、米国において、年間約390,000件行われている。
【背景技術】
【0004】
脊柱は多数の椎骨から形成されており、該椎骨は通常の状態において、椎間板により互いに分離されている。この椎間板は線維輪及び髄核で構成されている。線維輪及び髄核は共に軟性組織である。椎間板は、脊柱において、重要な安定装置として、また、隣接する椎体間の力を分布させる機構として機能する。当該椎間板がないと、異常な関節機構及び関節炎変化の早期進展に伴う椎間腔の崩壊が生じる。
【0005】
正常な椎間板は、髄核の周囲を取り囲む線維輪と呼ばれる外側帯状リングを有する。この線維輪は隣接する椎骨を互いに結びつける。また、線維輪は、互いに斜めに交差して、椎骨に付着する膠原繊維で構成されており、その椎骨がいずれかの方向に回転するにつれて、各繊維のうち半分が緊張して、捻り又はねじれ運動に抵抗する。髄核は、その重量の約85%が水分である緩い組織で構成されており、身体を曲げる際に前後左右に移動する。
【0006】
椎間板は老化作用により次第に変化していく。この場合、線維輪は柔軟性及び弾力性を失い、より密度が高くなり、硬い組織になっていく。老化した線維輪には、その線維輪壁にひび割れや亀裂が生じ又は拡大が見られるようになる。同様に、髄核は乾燥して粘度が増大し流動性を失う。老化した椎間板のこれらの特徴が組み合わさることで、つまり、髄核の粘度増大により動的な力の分散が損なわれ、乾燥のため線維輪が力の集中に耐えられなくなり、柔軟性が失われ、亀裂が発生する。この亀裂は病気や他の病的状態によっても生じる。また、亀裂は線維輪壁を貫通する裂け目へと発展することがある。この場合、髄核は、その裂け目を通じて修復の必要な線維輪(subannular)部分の内部から外部へと、時には脊柱管内まで押し出される(脱出する)。押し出された髄核は脊髄や脊髄神経根を機械的に圧迫する。これらによる痛みを伴う状態を、臨床上、椎間板破裂又は椎間板ヘルニアと呼ぶ。
【0007】
線維輪に裂け目が生じると、その線維輪開口部分の髄核は抵抗の最も少ない経路を辿り裂け目へと移動して開口を拡げ、椎間板壁を通る髄核の移動を可能とし、その結果として神経を圧迫し、四股、膀胱、生殖器及びそれぞれに隣接する神経根付近の空間への炎症物質の漏出を引き起こす。神経の圧迫及び炎症の実際的な影響は、背中や首に耐え難い痛みを誘因し、足先に放散するしびれ、衰弱、及び末期には麻痺、筋萎縮を生じさせ、及び/又は膀胱失禁や内臓の失調として発現する。加えて、けがや病気又はその他の変性疾病も、1以上の椎間板を収縮、崩壊、劣化、又は転移、ヘルニア等を引き起こし、その他の損傷や障害を生じさせる。
【0008】
このような椎間板ヘルニア、破裂、又は椎間板の位置がずれた場合等、これらを治療するための外科手術の基準は、環状壁を再構築しない破片の除去や神経減圧術を施すことである。現在でも、これは受け入れられ得るものであるが、最善ではない。様々な著者から3.1〜21%の確率で椎間板ヘルニアが再発することが報告されており、最初の処置が失敗し及び同一症状に対する再手術の必要性を示している。このことから、米国においては、毎年10%の確率で再発し、39,000件の再手術が行われていることが推測される。
【0009】
症状を緩和する方法として、鎮痛を目的とした、痛みを持つがヘルニア状態には至らない椎間板における修復の必要な線維輪領域を加熱する熱的な環状形成はあるが、断裂した不連続な線維輪壁の再構築には至らない。
【0010】
また、髄核を増強させて損傷を受けた椎間板を修復する提案もあり、髄核を置換する様々な試みが報告されている。本発明は、髄核の増強が是認されるか否かに関わらず、直接的な線維輪の修復を目的としている。
【0011】
さらに、線維輪への直接的、外科的な修復を行う又は伴わない様々な外科的な切開を評価するための動物実験が行われてきた。これらの研究は、健康な動物に対して行われており、髄核の除去又は置換を行っていない。この実験の立案者は、線維輪の直接的な修復は椎間板の治癒に影響を与えないことを結論としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
現時点は、一時的なものであっても、線維輪ステントにより増強されたものあっても、線維輪の再生に関する方法は、存在していない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本発明は、転移し、脱出し、断裂し又は他の損傷を受けた椎間板壁を再構築する方法及び当該方法に関連する器具を提供する。本発明では、環状空間から髄核が移動する経路となる開口を有した、修復の必要な線維輪開口部分がある椎間板を治療し、該椎間板を再構築する方法が開示され、開口を通過し得る寸法が与えられた第1の形状(第1の折り畳み形状)と、少なくと一方向の寸法が開口と同程度又はそれ以上であり、且つ、少なくとも一方向の寸法が第1の形状に対応する寸法よりも大きい第2の開拡形状と、を備えた開拡パッチを提供することと、前記第1の折り畳み形状である開拡パッチを、開口を通じて修復の必要な線維輪部分に挿入することと、前記開拡パッチが修復の必要な線維輪部分内で開拡を原因として又は開拡することで、前記第2の開拡形状により開口をブリッジし、開口を閉塞、開口を通じた髄核の移動を防止及び組織の再接近を介して開口の治癒を促進することができるようにする。
【0014】
本発明の目的及び多数の有利な効果は、以下の説明を考慮することにより明らかとなる。概して、植え込み型医療装置は、開口を通じた髄核の再脱出を減少させるために、線維輪に挿入され、配置され及び付着され、メカニカルバリア(障壁)として機能し、線維輪壁を自然に完全な状態へと再構築し、椎間板壁組織の再接近を通じて線維輪の治癒を促進する。開口の治癒を通じた完全性の増大、及び迅速性の増大及び/又はこれらをそれ以上に増大させることは、椎間板からの髄核の再脱出及び結果として生じる背痛の再発をさらに減少させることを意味する。加えて、開口の修復は、力学的な構造強化を促進し、椎間板が潰れる可能性及び分節性の不安定さを減らすことができるので、結果として外科手術後に背痛が再発することを減少させることができるようになる。
【0015】
さらに、髄核再脱出の可能性を減少させる開口の修復は、神経根周囲の癒着物形成を有利に減少させることができるようになる。椎間板の髄核物質は、神経に対して有毒であり、神経周囲に炎症の増加を引き起こし、回復後には瘢痕形成(癒着又は硬膜外線維症)の増加を引き起こすと考えられている。神経根の周囲に生じる癒着は連続した背痛を引き起こす。癒着形成のあらゆる減少は将来の痛みの再発を減少させると考えられる。
【0016】
本発明の目的の1つは、椎間板からの髄核脱出のメカニカルバリア、線維輪及び開口の周囲組織のためのメカニカルな完全性、及び早期回復の促進、開口のさらなる完全な治癒を促進することである。
【0017】
説明の大部分は、外科手術、例えば、椎間板切除術(discectomy)(ヘルニアを起こした髄核片を除去するために行う外科手術)等の後における椎間板の修復に関して行われるが、本発明による装置は、椎間板線維輪の切開を含む他の処置にも適用することもできる。修復技術が必要とされる他の手術の一例には、本来の髄核が変性した場合に、その機能を置換するのための植え込み型髄核による髄核の置換−椎間板核代替(nucleus replacement)−等が含まれる。この場合、本発明の目的は、置換髄核を椎間板空間内に維持させる点で類似する。
【0018】
本発明によれば、環状補助パッチ/ステントは、椎間板の線維輪を修復するために適用することができる。最も簡易な形態としては、線維輪の修復において、筋膜(fascial)自己移植片のパッチを線維輪補助空間に配置及び固定することが含まれ、開口周りの組織を再接近させる一方で、2以上の縫合を付加的に採用することができる。本発明は、開口を修復するために、修復の必要な線維輪部分及び壁が関連付けられることで、例えば、開口の外側表面のみを封孔処理(シーリング)し又は開口範囲内のみを封孔処理する等の従来技術に比べ、幾つかの有利な効果がある。環状補助面を採用する修復の第1の有利な効果は、椎間板のように放射状に拡がる環状(又は楕円)圧縮室が持つ物理的性質から導かれる。内壁のシーリングは外壁に対する曲率半径を小さくすることができるといった固有の有利な効果を有するので、ラプラスの法則に従い、パッチは、そこに加えられるあらゆる圧力を、他の全てが同等の状態に保たれて低圧として受けることができる。
【0019】
シーリングを完全なものとするために内面を利用する他の有利な効果は、該椎間板内における通常の圧力が、椎間板内の内壁に対する装置のシーリング性を増すことができるといった点にある。他方、線維輪の外面に対して修復を行うと、椎間板は一定の圧力にさらされているので、装置周縁から漏れが生じるといった固有のリスクを伴うことになる。
【0020】
線維輪の内面を利用することによる、従来技術を超えた本発明の他の有利な効果は、線維輪の外面から突出した装置部分の持つリスクを減少させることにある。線維輪の外側から実質的に突出する装置は、神経根及び/又は脊柱管に非常に近接することになるので、当該神経根及び/又は脊柱管に損傷を与えるといったリスクがある。このような構造により引き起こされる損傷は、慢性的な痛み、失禁、大腸機能障害、麻痺症を生じさせる原因となる。
【0021】
また、本発明には、修復による完全性の向上を促進するために、開口周りの組織、並びに線維輪の内面及び外面を引き寄せる概念が取り入れられている。
【0022】
本発明に従う装置の技術(術式)及び配置の一例は以下の通りである:
【0023】
1.図32A、図32B、図33A、図33Bに示すように、ヘルニア摘出処置を施し、椎間板空間内から髄核の一部を除去した後の線維輪壁には、例えば、約6mm×2mm程度の開口が形成される。
【0024】
2.次に、例えば、図34に示したように、2以上の縫合糸を、線維輪表面の上部から後部にかけて通し、椎間板内の空間に押し込んで、筋膜自己移植片を受けるための”スリング(sling)”を形成する。
【0025】
3.患者から、例えば、約10mm×5mm程度の傍脊柱筋膜組織片が取り除かれる。
【0026】
4.図35に示したように、自己移植片は、折り畳まれ及び圧縮されて、線維輪の開口を通過させられる。
【0027】
5.図36に示したように、自己移植片は、スリング内において、修復の必要な線維輪壁に近接させるために、線維輪内で非圧縮状態及び方向付けられて第2形状にされる。自己移植片は、修復の必要な線維輪部分に完全に挿入される。また、図36に示したように、その一部は、裂け目内に伸長してもよい。
【0028】
6.図37に示したように、自己移植片を修復の必要な線維輪壁の近傍に移動させるために縫合糸を締め、自己移植片周りのスリングを締める。一方、線維輪壁の外面と修復の必要な線維輪面にパッチを移動させるために、縫合糸に張力をかけて自己移植片を開口よりも大きな第2形状にすると共に、開口周りにおける線維輪の完全性を向上させる。さらに、縫合糸を締めて最終的に結び、線維輪の外面及び線維輪内における組織の再接近を促進させる。
【0029】
7.縫合糸を結び、その端部を切り取る。
【0030】
8.一般的な外科手術であるような、癒着形成を予防するために、ヘルニア切除箇所を自己移植片の脂肪組織で覆うようにするとよい。
【0031】
9.標準的な手術法により、外科手術での開口箇所を塞ぐ。
【0032】
本発明に従う様々な装置採用して、以上の発明工程を実行し、椎間板を密閉及び/又は修復することができる。この様々な装置のうち代表的な装置には、その使用に際し、椎間板線維輪のうち修復の必要な線維輪に近接する部分を少なくとも備えた開拡(展開)可能なパッチ/ステント(パッチ、ステント及び装置の用語は同義的に使用する)と、パッチを線維輪に近接させて固着する固定手段と、パッチ及び線維輪組織を引き寄せると共に張力をかけて締める手段と、及び固定後に開口面の相対運動の抑制を補助し、治癒を促進する手段とが設けられている。本発明の1つの特徴及び目的によれば、表層の運動が抑制されている間、近接されて塞がれた組織には治癒のための最適な環境が提供されることになる。
【0033】
以下に詳述する概念により、本発明の複数の目的が達成され、同様に、当該概念には処置の数(及び時間)を減少させ、及び/又は手術法を簡素化し、及び/又は椎間板線維輪を修復する場合に生じる合併症のリスクを減少させるために設計された要素が有利且つ付加的に組み込まれている。加えて、以下に詳述する各装置の目的は、周囲組織に取り込まれることができ、及び短期間(3〜6ヶ月)で組織に取り込まれるための足場として機能させることである。
【0034】
本発明の具体例としては、弱く又は細い、1本以上の軽い生体分解性(biodegradable)縫合糸を、椎間板壁(線維輪)が断裂したことで生じる病理学的な開口の側縁に沿って、又は、外科手術により線維輪壁に設けた切開部の側縁に沿って略等間隔に配置する。
【0035】
縫合糸は、開口の両側を引き寄せるように締められ、開口を再接近させ又は閉鎖し、手術により狭められた椎間板線維輪のギャップ(隙間)を横断する本来組織の自然治癒、及びこれに伴う再構築を促進させる。
【0036】
本発明の方法を採用することにより、開口を介した椎間板のヘルニア形成再発率を25〜30%まで低減させることができる。
【0037】
本発明の他の具体例としての方法は、開口の閉鎖前に、人筋筋膜(筋肉結合組織)又はブリッジや足場として機能する他の自己移植片、同種移植片、又は異種移植片を有するパッチを開口内に又は開口を横断するように位置させ、修復の必要な線維輪にバリア形成を促進させることによって、椎間板線維輪の多様な層内に又はその層周囲に存在して修復に寄与する線維芽細胞又は他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。
【0038】
椎間板ヘルニアの再発率を30〜50%に低減させるには、この具体例による上記筋膜促進を採用することによって達成される。
【0039】
本発明の更なる他の具体例では、編みパッチは、第1端部及び第2端部を備え、長手方向に、より大きな寸法(長さ)を有する第1収縮形状を有して形成される。その各端部は、該各端部間にある装置部分の長手方向軸に沿って互いに移動させられ、これにより編みパッチが、外見上、膨張形状を形成するように展開する。
【0040】
以上では、線維輪再構築に適応する人筋筋膜を示したが、ブリッジ、ステント、パッチ又は開口を介した椎間板髄核の連続した移動に対するバリアとして、他の生体適合性(biocompatible)膜を採用することもできる。このような生体適合性素材は、例えば、生体適合性ファブリック(fabric)、生体分解性ポリマーシート、除去又は切除した椎間板の小部分のうち椎間板髄核部分を除去することによって形成された空洞に適合又は不適合な形状のフィラー(filler)等であってもよい。変性した椎間板小部分の除去により形成された椎間板空間内に又は周囲に、補綴素材を配置することができる。
【0041】
本発明の更なる目的及び有利な効果は、部分的に後述され及び該後述から明らかになり、また本発明を実行することによっても確認することができる。本発明の目的及び有利な効果は特許請求の範囲に明記した要素及び組み合わせによって実現及び達成され得る。
【0042】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、ともに例示及び説明的なものに過ぎず、特許請求の範囲に記載された発明を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、添付図面に基づいて本発明の複数の実施例を説明する。この図面は本明細書の一部に組み込まれ及び本明細書の一部を構成し、本発明の複数の実施例を図示したものであり、本発明の原理を説明するために用いられる。
【0044】
添付の図面は、本発明の各実施例に基づいて詳細に作成してある。全図を通して、同一又は対応する部分には可能な限り同一の符号を付している。
【0045】
図7に示したように、本発明の一実施例では、損傷を受けた線維輪42は縫合糸40を使用して修復される。1以上の縫合糸40が線維輪42に開いた病理学的な開口44の側縁に沿って略等間隔に位置させられる。開口44の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結び、開口44の側縁を互いに引き寄せることで達成される。この開口44の再接近又は閉鎖によって、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒及びこれに伴う再構築を高め、促進することができる。縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解性されないものを採用してもよい。
【0046】
加えて、脆弱化し又は薄くなった椎間板42の壁を修復するために、線維輪42の脆弱化し又は薄くなった部分を外科的に切開し、該切開部分から横方向に略等間隔で1本以上の縫合糸40を位置させる。切開部分の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結び付けて、切り口の側縁を互いに引き寄せることで達成される。また、切開部分の再接近又は閉鎖により、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒力及びこれに伴う再構築を促進させることができる。縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解性されない物質を採用してもよい。
【0047】
他の一実施例では、開口44を横断する人筋筋膜又は他の自己移植片、同種移植片又は異種移植片のパッチを位置させることにより、修復方法を効率化することができる。パッチは、開口44をブリッジし及び横断するように機能し、該開口44の閉鎖前において、椎間板線維輪42の多様な層の内外の線維芽細胞又は修復に寄与する他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。
【0048】
図8A、図8Bは生体適合性膜の一実施例を示している。この生体適合性膜は、開口44の全体をその内側から塞ぐように配置され、線維輪ステントとして使用される。線維輪ステント10は、開口44の全体を内側からブリッジするように機能し、該開口44の閉鎖前において、椎間板線維輪42の多様な層の内側の線維芽細胞又は修復に寄与する、他の正常細胞を横断するプラットフォームを提供する。幾つかの実施例において、装置、ステント又はパッチは、線維輪の裂け目を治癒し、組織の成長を促進するための足場として機能する。
【0049】
図1〜図3に示した一実施例では、線維輪ステント10は、上部14及び下部16を有する中央垂直延伸部12を含んで構成される。中央垂直延伸部12は、幅方向に関して台形形状であり、例えば、8mm〜12mmの長さを有することができる。
【0050】
中央垂直延伸部12の上部14は、図4A〜図4Cに示したように、様々な形状を採用することができ、上部14の側面を湾曲又は上部14を円形に形成することができる。線維輪ステント10は、上部14と下部16との間に凹部を備えることができる。また、線維輪ステント10は、多様な形状を呈する開口44の端縁に対し良好に適合することができる。
【0051】
中央垂直延伸部12の上部14には、該上部14を貫通して形成された孔であるスロット18を設けることができる。スロット18は、上部14内において、該上部14の長軸方向を横断する位置に設けられる。スロット18は、縫合糸、テンションバンド、ステープル、その他各種の公知の固定装置を挿通させて、椎間板線維輪42に線維輪ステント10を固定することができる大きさ及び形状である。
【0052】
他の一実施例では、中央垂直延伸部12の上部14を穿孔することができる。この場合、穿孔された上部14には上部14の長軸方向に横断する複数の孔が設けられる。この孔は、縫合糸、テンションバンド、ステープル、その他各種の固定装置を挿通させて、椎間板線維輪42に線維輪ステント10を固定することができる大きさ及び形状である。
【0053】
中央垂直延伸部12の下部16は、左方向延伸部20と右方向延伸部22の一対の横方向延伸部を含んで構成される。横方向延伸部20、22は、内端24、外端26、上面28及び下面30を含んで構成される。内端24は、下部16と略同一長さを有して、当該下部16に取り付けられる。外端26は略8mm〜16mmの長さである。内端24と下部16は、中央垂直延伸部12に対して基本的に垂直な水平面を形成するように接合される。横方向延伸部20、22の上面28は、水平面に対して略0°〜60°の角度を有している。線維輪ステント10の幅は、略3mm〜8mmである。
【0054】
加えて、横方向延伸部20、22の上面28には、椎間板線維輪42の内面に固着するためのバーブ(barb)が形成されており、開口44から外れることを防止する。
【0055】
他の一実施例としては、図4Bに示したように、横方向延伸部20、22において、外端26よりも内端24に厚みを持たせることができる。
【0056】
具体的な一実施例では、線維輪ステント10は、1以上の弾力のあるフレキシブルな公知の生体適合性素材又は生体吸収性(bioresorbable)素材で形成した固形ユニットである。適切なステント素材の選択は、特定のステント構造や、ステントを設置固定した後に、修復が組織を相対的に安定させ及び開口周りの組織の動きを抑制することにより開口における治癒過程を促進するように機能するといった、その素材特性に応じて部分的に決定することができる。
【0057】
例えば、線維輪ステント10は、米国特許第5,108,438号明細書(Stoneによる発明)及び米国特許第5,258,043号明細書(Stoneによる発明)に開示された椎間板組織の再構築及び線維輪の置換のための足場として機能する多孔性マトリックス又は生体適合性線維及び生体吸収性線維のメッシュや、米国特許第4,904,260号明細書(Ray等による発明)に開示された組織の内成長を誘引する生体吸収性(bioresorbable又はbioabsorable)素材を混ぜ合わせた不活性繊維を含む強網状組織などで形成することができる。
【0058】
また、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,964,807号明細書(Gan等による発明)に開示された生体分解性の基質や、血管移植片として一般的に使用されている延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE:expandable polytetrafluoroethylene)(W.L. Gore and Associates, Inc.の下で「GORE-TEX(登録商標)」「PRECLUDE(登録商標)」として販売され又はImpra, Incの下で「IMPRA(登録商標)」として販売されているものがある。)などで形成することもできる。
【0059】
さらに、椎間板に空いた空孔を塞ぎ、線維輪ステント10の膨張を制限制御する吸湿材を線維輪ステント10に包含させることができる。
【0060】
加えて、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)に開示された椎間板組織の再構築を補助するシリカベースの生体活性(bioactive)素材又は公知の組織成長因子など、椎間板組織の再構築を容易にする素材を含んで構成することもできる。
【0061】
開示され及び前述した各実施例の装置に用いる多くの素材は、治癒過程を促進するように機能する。また、必要であれば、他の素材又は処理を選択して、治癒過程における役割を調整し、治癒を促進又は抑制することも可能である。さらに、これら調整因子を装置の素材基質にコーティングし又は類似の被覆処理を行い、コーティングされていない基質とは異なる組織反応を生じさせることもできる。
【0062】
他の一実施例として、図5A、図5B、図6A、図6Bに示したように、左方向延伸部20と右方向延伸部22が、中実のピラミッド又は錐体を形成するために結合される。加えて、左右方向延伸部20、22は、台形形状、楔形状又は銃弾形状に形成することができる。中実の組成物は、横方向延伸部20、22が開口44に挿入される場合の圧縮、及び、挿入後には線維輪42の内壁形状に適合する膨張(開拡)を可能にする。また、中実の組成物には、中実の生体適合性又は生体吸収性の柔軟素材を採用することができる。
【0063】
あるいは、圧縮可能なコアを横方向延伸部20、22の下面30に取り付けて、ピラミッド形状、錐体、台形形状、楔形状又は銃弾形状に形成することもできる。圧縮可能なコアは公知の生体適合性又は生体吸収性の弾性発泡体(resilient foams)で形成してもよい。また、コアは、例えば、バルーンなどの液体膨張膜(fluid-expandable membrane)で構成することもできる。圧縮可能なコアは、横方向延伸部20、22が開口44に挿入される場合の圧縮、挿入後には、線維輪42の内壁形状や椎間板片の病理学的な押し出しにより又は外科手術の切除により形成された開口形状に適合する膨張を可能にする。
【0064】
図11A〜図11Dに示す使用方法では、線維輪ステント10を椎間板42の開口44に挿入するために、横方向延伸部20、22を圧縮して折り畳む。次に、線維輪ステント10を開口44に挿入すると、横方向延伸部20、22が膨張して開拡する。この拡開後の形状において、上面28は椎間板線維輪42の内面形状に実質的に合致する。線維輪ステント10が公知の手段により椎間板線維輪42に固着されるので、上部14を開口44内に位置させることができる。
【0065】
他の方法として、開口44の長さが線維輪ステント10の外端26の長さよりも短い場合、その線維輪ステント10を開口44に対して横向きにして挿入することができる。この場合、横方向延伸部20、22を折り曲げ、線維輪ステント10を開口44の側面に沿って挿入する。次に、線維輪ステント10を椎間板線維輪42内で回転させ、開口44を介して上部14を引っ張り上げる。ここで、横方向延伸部20、22は、開拡し、上面28が椎間板線維輪42内面の輪郭を矯正する。上部14は、修復の必要な線維輪の開口内に又は該開口に近接して位置させられ、線維輪ステント10は公知の手段により椎間板線維輪に固着される。
【0066】
開口44に線維輪ステント10を固着させる他の方法としては、図9に示したように、頭部にアイホール53が設けられた第1外科手術用ネジ50及び第2外科手術用ネジ52を、隣接する椎骨56、54にねじ込む。次に、線維輪ステント10を開口44に挿入する。その後、縫合糸40を、開口44に隣接する椎間板線維輪42を介して第1ネジ50のアイホール53に通し、再び椎間板線維輪42を介して縫い戻し、線維輪ステント10の開口部(スロット)18に通す。同様の手順を第2ネジについても行い、縫合糸40を止着する。1以上の外科手術用の縫合糸40が、椎間板線維輪42の開口44側縁に沿って略等間隔に縫いつけられる。開口44の再接近又は閉鎖は、縫合糸40を結束し開口44のそれぞれの側縁を引き寄せることにより行う。開口44の再接近又は閉鎖により、外科的に狭めた線維輪42の隙間を本来の組織が横断するようになるので、自然治癒及びこれに伴う再構築を促進する。外科手術用の縫合糸40は、生体分解性であると好ましいが、永久に生体分解されない素材を採用してもよい。この方法によれば、開口44に隣接する椎間板線維輪42の損傷が軽減され、椎間板線維輪42を通じた縫合が解かれることを防止することができる。
【0067】
線維芽細胞は、椎間板ステント10のポリマー又はファブリック繊維と係合し、通常の修復過程で見られる現在の治癒状況の2倍に相当する強固な壁を形成する。
【0068】
さらに、他の実施例として、図10A、図10Bに示したように、軟性の嚢60を線維輪ステント10の下面30に取り付ける。この軟性嚢60は膜64によって囲まれた内部キャビティ62を含んで構成される。膜64は、軟性の薄い生体適合性素材で形成されている。軟性嚢60は、線維輪ステント10が開拡していない状態で下面30に取り付けられる。また、軟性嚢60は、公知の生体適合性液体又は膨張性のある発泡体が内部キャビティ62に注入されて膨張させられる。軟性嚢60の詳細な寸法は、個々の形態に応じて異ならせることができる。成人の髄核の典型的な寸法は、半短軸が約2cm、半長軸が約4cmで、厚さが約1.2cmである。
【0069】
他の実施例において、膜64は半透性の生体適合性素材で形成される。注入される素材の機械的性質は、修復パフォーマンスに影響を与える。また、注入される素材には、健全な髄核よりも軟らかく又はより適合する素材だけでなく、これよりも硬く又は適合しない素材も本発明の実施例における範囲に含まれる。一実施例において、修復の必要な線維輪開口部分の大きさは、除去した髄核の容積よりも小さくてもよく又は大きくてもよい。また、移植片の容積を時間変化させるようにしてもよい。
【0070】
本実施例では、ヒドロゲルを軟性嚢60の内部キャビティ62に注入する。ヒドロゲルは、有機ポリマー(天然又は合成)が、ゲルを形成するための水分子を取り込んだ3次元開格子構造(three-dimensional open-lattice structure)を形成するため、共有結合、イオン結合又は水素結合を通じて交差結合した場合に形成される物質である。ヒドロゲルは水和又は脱水したいずれの状態でも使用することができる。
【0071】
線維輪ステント10を前述のように開口44に挿入した場合、その後の操作としては、図12A、図12Bに示したように、軟性嚢60の内部キャビティ62に生体適合性液体又は膨張性のある発泡体を注入する注射器等の公知の注入器具を使用する。生体適合性液体又は膨張性のある発泡体が線維輪ステントを介して軟性嚢60の内部キャビティ62に注入される。椎間板に空いた空孔を埋めるべく、充分な量の素材が、内部キャビティ62に注入され、軟性嚢60を膨らませる。軟性嚢60の使用は、椎間板における髄核の全部又は一部を取り除くことが要求された場合に特に有用である。
【0072】
椎間板の外科的な修復では、椎間板の全髄核を取り除き、移植片と置換することが必要な場合や、椎間板髄核の一部を取り除いて椎間板に形成した空孔を残したままの状態にすることが必要な場合等がある。しかし、本発明では、軟性嚢60を用いるので、損傷を受けた椎間板髄核だけを取り除き、膨らませた軟性嚢60により椎間板に形成した空孔を埋めることができる。軟性嚢60を含んで構成される線維輪ステント10の主要な効果は、線維輪42に形成される切開部のサイズを減少させることができる点にある。これによれば椎間板に形成した空孔に、移植片を挿入する必要がなくなる。
【0073】
他の使用方法では脱水ヒドロゲルを軟性嚢60の内部キャビティ62に注入する。椎間板髄核に入る液体が、半透性膜64を通過して脱水ヒドロゲルを水和する。ヒドロゲルが液体を吸収するにつれて、軟性嚢60がふくらみ、椎間板に形成した空孔を埋めるようになる。
【0074】
図13に示したように、他の実施例では、線維輪ステント10は、実質的に傘形状であり、中央に設けられたハブ66と、放射状に伸長する複数の支柱67を有している。各支柱67は、水掻き(Webbing)素材65によって隣り合う支柱67と連結され、ハブ66を中心にして径方向延伸部76を形成する。径方向延伸部76は、上面68と下面70を備える。上面68は、図17A〜図17Cに示したように、線維輪ステント10が挿入された場合に椎間板線維輪42の内壁形状に適合する。また、下面70も、図16A〜図16Cに示したように、線維輪ステント10が挿入された場合に椎間板線維輪42の内壁形状に適合する。径方向延伸部76は、その平面形状が実質的に円形、楕円形又は矩形であってもよい。さらに、図20に示したように、椎間板線維輪42の内壁に固着して、開口42からの放出に抵抗するためのバーブ82を、径方向延伸部76の上面68に設けることができる。
【0075】
図14、図15に示すように、支柱67は柔軟性素材で形成されており、径方向延伸部76は、開口44への挿入のために折り畳まれ、挿入後には椎間板線維輪42の内壁形状に合致するように開拡する。線維輪ステント10は、折り畳まれた状態では実質的に截頭円錐形又はシャトルコック状であり、第1端部72と第2端部74とを備える中心ハブ66を含んで構成される。
【0076】
他の実施例において、径方向延伸部76を、中心ハブ66の端部でその外端よりも厚く形成するようにしてもよい。
【0077】
この実施例において、線維輪ステント10は、1以上の弾力のあるフレキシブルな公知の生体適合性素材又は生体吸収性素材で形成した固形ユニットである。
【0078】
また、線維輪ステント10は、例えば、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)に開示された椎間板組織の再構築を補助するシリカベースの生体活性素材又は公知の組織成長因子など、椎間板組織の再構築を容易にする素材を含んで構成することができる。
【0079】
あるいは、図21に示したように、径方向延伸部76の下面70に、圧縮可能なコア84を取り付けるようにしてもよい。圧縮可能なコア84は、公知の生体適合性又は生体吸収性の弾性発泡体で形成することができる。また、圧縮可能なコア84は、径方向延伸部76が開口44に挿入される場合に圧縮され、挿入後には、線維輪42の内壁形状や椎間板片の病理学的な押し出し又は外科手術による切除により形成された開口形状に適合するように膨張する。
【0080】
追加の実施例では、図18A、図18Bに示したように、軟性嚢80が線維輪ステント10の下面70に取り付けられる。この軟性嚢80は、膜88によって囲まれた内部キャビティ86を含んで構成される。膜88は軟性の薄い生体適合性素材で形成されている。この軟性嚢80は、線維輪ステント10が開拡していない状態で下面70に取り付けられる。さらに、軟性嚢80は、公知の生体適合性液体又は膨張性の発泡体が内部キャビティ62に注入されて膨張させられる。軟性嚢80の詳細な寸法は、個々の形態に応じて異ならせることができる。成人の髄核の典型的な寸法は、半短軸が約2cm、半長軸が約4cmで、厚さが約1.2cmである。
【0081】
他の実施例において、膜88は半透性の生体適合性素材で形成される。
【0082】
図16A〜図16Cに示した使用方法では、線維輪ステント10を椎間板線維輪42の開口44に挿入するために、径方向延伸部76が折り畳まれる。径方向延伸部76は、その上面68が円筒側面を形成するように折り畳まれる。線維輪ステント10は、開口44に挿入されると、該線維輪ステント10が椎間板線維輪42内に完全に位置するまでその先端72が挿入される。その後、径方向延伸部76は椎間板44内で解放されて開拡する。線維輪ステント10の下面70は椎間板線維輪42の内壁に係合する。中心ハブ66は、線維輪ステント10が公知の手法で椎間板線維輪42に固着されることにより、開口44の範囲内に位置させられるようになる。
【0083】
線維芽細胞は、線維輪ステント10のポリマー又はファブリック繊維と係合し、通常の修復過程で見られる現在の治癒状況の2倍に相当する強固な壁を形成する。
【0084】
図17A〜図17Cに示す他の使用方法において、径方向延伸部76は椎間板線維輪42の開口44への挿入のために折り畳まれる。径方向延伸部76は、その上面68がステント10の外面を形成するように、すなわち、例えば、図示した截頭円錐形状に折り畳まれる。次に、線維輪ステント10は開口44に挿入される。この場合、後端74から挿入され、線維輪ステント10が完全に椎間板内に位置するまで挿入される。完全に挿入されると、径方向延伸部76が椎間板内で解放されて開拡する。線維輪ステント10の上面68は椎間板線維輪42の内壁に係合する。中心ハブ66は、線維輪ステント10が公知の手法で椎間板線維輪42に固着されることにより、開口44の範囲内に位置させられるようになる。
【0085】
この実施例では、1以上の支柱67の上面68に設けたバーブ82又は径方向延伸部76の他の機能が、椎間板線維輪42の内壁に噛み込みむので、線維輪ステント10は定位置に保持されるようになる。
【0086】
図12A、図12Bに示した使用方法では、線維輪ステント10は前述したように開口44に挿入される。同様に、図18〜図21に示したステントに関しては、例えば注射器などの公知の注入器具が、生体適合性液体又は膨張性のある発泡体を軟性嚢80の内部キャビティ86に注入するために使用される。生体適合性液体又は膨張性のある発泡体は、線維輪ステントを介して軟性嚢80の内部キャビティ86に注入される。椎間板に開いた空孔を埋めるべく充分な量の素材が、軟性嚢80を膨らませるために、内部キャビティ86に注入される。素材は治療可能なもの(例えば、にかわ(glue))とすることができる。軟性嚢60の使用は、椎間板における髄核の全部又は一部を取り除くことが要求される場合に特に有用である。
【0087】
本願明細書で詳述した「嚢」のあらゆる形態において、1枚の壁又は障壁を採用することができ、該1枚の壁又は障壁は他のものよりも堅く及び弾力を抑えて形成することができる。また、その比較的堅い壁部材は、線維輪壁に近接させて位置させることができ、及び、その修復特性に加えて、線維輪内に嚢を良好に封じ込める。
【0088】
本発明の更なる一実施例を図22に示す。図22は、上側の椎体110、下側の椎体112及び椎間板114を含む一対の椎骨の概略的な横断面図を示している。線維輪(AF)における開口又は裂け目116に、チューブ118を近づける。該チューブ118は、本発明の更なる一実施例に従う装置120を送出するために用いられる。修復装置120は、該修復装置120に設けられたリング又は他の固定機能部124が送出具122により把持される。
【0089】
図23は、開口又は裂け目を通じて修復の必要な椎間板114の線維輪開口に挿入されるために直径が小さくされたチューブ118Aを用いる点を除き、図22に類似した送出方法を示している。
【0090】
次に、図25を参照して本発明に従う更なる一実施例を説明する。送出チューブ118又は118Aを介した装置120の送出は、該装置のアーム又は横方向延伸部128、130を折り畳み、チューブ118、118Aの管腔内に収まるように収容される。従って、ステント又は装置120を折り畳み状態で導入できるので操作が容易である。装置120は、送出具122の使用を介してチューブ118又は118Aの管腔を通じて移動させられる。図25は、アーム128、130を送出チューブ118、118Aに挿入するために、遠位、又は前方向に反らされた状態にされている。図24は、アーム128、130を近位位置に反らした状態を示している。図26は、一方のアーム128を遠位又は前方向に突き出させ、他方のアーム130を近位又は後方向に突き出させて巻き付けた装置120を示している。このような装置の横方向延伸部は比較的フレキシブルであるため、該装置が天然素材であるか又は合成素材であるかに関わらず、包含し、ねじり、丸め、圧縮等、本発明の趣旨と整合する折り畳み状態を採用することが可能である。
【0091】
図27は、周端にバーブ132を備えた一連の周縁バーブ構造を有する装置120を示している。該装置120を使用すると、複数のバーブは、図28に示した接続状態のように線維輪に刺さる。装置120が固着するに際し、該装置120に設けられたバーブのうち少なくとも幾つかが固定機構として線維輪組織に達するのであれば、当該バーブは装置120のいかなる位置に配置されてもよい。単純構造の開口又は裂け目であれば、バーブを装置本体の周縁に配置することは合理的な選択であるが、複雑な裂け目の場合には、装置が線維輪組織に固着すると、どのバーブが線維輪組織に刺さるかが不明であるので、複数のバーブを装置上に配置するとよい。
【0092】
図29は、一対のバーブ134、136を線維輪の外部から該線維輪に刺し込む他の固定方法を示している。装置120はテザー(tether)142によって修復の必要な線維輪開口部に保持される。この特定の実施例において多種多様な固定装置が考えられ、テザー142は、修復の必要な線維輪開口部分に装置を固着させるべく、バーブ134、136をバンド144に結びつける結び目145を有するとよい。本図における結び目は、テザー142とバンド144との関係を明らかにするため、その結び目を締め付けていない状態で示している。この方法によれば、テザーの結び目を固く締め付けることにより、修復の必要な線維輪開口部分位置に装置を維持させることができるようになると共に、該装置を引き寄せて線維輪の修復の必要な開口部分を封孔及びブリッジし、線維輪を良好に再接近させてその開口を閉鎖することができる。
【0093】
図30は、装置120を貫通する充分な長さを有し、線維輪を介して装置120まで伸長するバーブ148、150を用いた他の固定方法を示している。この構成によれば、バーブ148、150と繋がれたバンド144は、装置120を修復の必要な線維輪開口部分に徐々に引き寄せ及び配置させるために締められ、或いは開口又は裂け目を再接近させる強い力を持って締められる。
【0094】
図31は、本発明に係る他の態様に従う更なる一実施例を示している。この一実施例において、金属板160は装置120に組み込まれる。この部品は、フラットストック(flat stock)を機械加工して製造することができ、バーブ164と同様にループ162を含んで構成されている。図31に示す構造の装置120は、図27、図28で詳述した方法と同様に用いられる。
【0095】
ステントは、例えば、前述の図4、図8、図9、図11、図12で示したように平らに開拡(展開)することができ、或いは前述の図5、図10で示したように3次元に開拡(展開)することもできる。図34〜図36は、筋膜組織により形成された自己移植片を採用する3次元パッチ/ステントを示している。図34は、修復の必要な開口部分がある線維輪206と髄核203とで構成される椎間板を取り囲む上方椎体202と、下方椎体204とを示している。図示した本発明の一実施例に従えば、縫合糸210を線維輪外部(後方)から線維輪壁に開いた開口208の一方の縁を介して前方へと通す。つまり、縫合糸210は修復の必要な開口部分に通される。次に、縫合糸を線維輪壁に開いた開口208の反対側の縁を介して後方へ戻し、その縫合糸を修復の必要な線維輪開口部分に残してループ又はスリング212を形成する。図34の右図は後面図を示している。この後面図のように2以上の縫合糸を適用することができる。次に、図35に示したように、例えば鉗子216等を用いて、筋膜自己移植片214を、開口208を通じて修正の必要な線維輪開口部分に挿入する。その後、図36に示したように、修復の必要な線維輪開口部分に設けた縫合糸スリング212内に、筋膜ステント/パッチ214を完全に挿入する。開口の閉鎖は、図37に示したように、線維輪壁方向に自己移植片214を引き寄せることで達成される。縫合糸210を固く結び(218)又は縛ることで、この閉鎖状態が維持されて、パッチ/ステントが固定される。
【0096】
パッチは、折り畳まれることができ、及び、単一平面状態又は3次元状態に展開(開拡)することができる。例えば図24、図25及び図41に示したように、パッチは、該パッチが単一素材であるか又は複合素材であるかにかかわらず、横方向に折り畳まれることができる。他の一実施例としては、図1に示したように縦方向に折り畳まれることができ、また、図26に示したように長手方向に折り畳まれることもできる。他の方法としては、図13〜図15及び図16に示したように、3次元的に折り畳まれることができる。3次元状態に開拡する装置は、例えば、ゼラチンシェル、「ジェルキャップ(gelcap)」、生体吸収性(biosorbable)のメッシュ又は溶解性素材等の保持用ジャケットでパッケージ化されて、配置(挿入)及びこれに続く開拡が容易になる。
【0097】
図36に示したように、パッチは、例えばステントがジェルキャップであれば、自己移植片又はDacron(登録商標)等の合成素材で形成された単一要素で構成することができる。また、パッチは複数要素で構成することもできる。ステントの一例(図示略)としては、例えば「球(Bulb)」等、天然の無強制形状を有するように形成することが可能なシリコーンゴム等の高分子材料で形成することができる。球をより薄くして伸長させた第2形状に引き延ばすために、例えば、スタイレット又はプッシュロッドを球の内部に挿入することができる。この第2形状は、線維輪開口内に配置するために充分なものとする。修復の必要な線維輪開口部分に装置を配置した状態でプッシュロッドを取り除くと、球は負荷のない自然な状態に置かれ、修復の必要な線維輪開口部分において、大きな容積を有することができるようになる。本一実施例ではシリコーンを採用したが、天然の無強制形状であって、装置を送出する張力下で第2形状を有するニチノール(Nitinol)を寄り合わせた装置などの金属構成体を、採用することもできる。一方、これとは逆のシナリオにより同一目的を達成することもできる。すなわち、他の一実施例によれば、装置は、負荷がない状態で伸長された第1形状、及び、負荷下で第2のより大きな形状を有することができる。この一実施例において、装置を機械的に移動させるために使用されるスタイレット又はロッドの一部は、開拡要素を負荷がかかった状態に保持するために残される。
【0098】
複数の要素は、装置の開拡を補助するフレームと、生体適合性及び組織の内成長を得るための被覆と、を含んで構成される。種々のフレーム形状としては、例えば、ニチノール又は複数のワイヤ等のワイヤ素材で構成された開拡可能な「蝶」の形状又は「図8」に示した形状を含んで構成される。一実施例としてのフレーム部材502を図41A〜図41Eに示してある。勿論、他の構成として、菱形形状や、他の円形又は多角形形状を採用することも可能である。菱形フレームは、より小さな第1形状を採ることができると共に、より大きなフレームに開拡できるように構成される。菱形要素は一本又は複数のワイヤで構成することができる。また、部材を、開拡可能なようにその各端部が可動可能に固定される要素を持たせて構成することができる。さらに、テザー又は取付装置504には、縫合糸、ワイヤ、ネジ又は公知の他の取付手段を採用することができる。
【0099】
フレームは、例えば図31に示したように、同一目的を達成するためフラットストックのニチノール等の単一素材を切断して形成することができる。このような形状は、公知の方法、例えばレーザ切断等を用いてフラットストックから切り出すことができる。また、公知の熱成形ステップを用いて、例えば図27に示したような、ストック素材の平面から突出させたバーブ132を有する形状を成形することができる。
【0100】
また、他のフレーム構成としては螺旋又はコイル形状がある。「コイル」形状は、例えば、ばね鋼、又は、より小さな第1の「巻回し(wound)」形状により巻き上げられると共に、より大きな巻かれていない形状、又は、ほどかれた形状に開拡する他の生体適合性素材で形成することができる。
【0101】
前述したフレームにおける開口部分のサイズに従って、該開口サイズを覆うカバーを設けることができ、又は設けないようにしてもよい。これは、装置を配置した後に椎間板の内部空間から髄核を再脱出させないようにするため、及び、装置を周囲組織に自然に結合させる基質として機能させるためである。カバーを、ePTFE、ポリエステル、シリコーン又は他の生体適合性素材等を含んで構成することができる。また、カバーは、例えばコラーゲン、セルロース、自己移植片、異種移植片、同種移植片又はその他の類似物質などの天然素材を含むこともできる。さらに、カバーには、例えばポリビニール乳酸等の本来的な生体分解性能を持たせることができる。
【0102】
被覆されていないフレームは、多孔性のパッチのように透過性を有するとよく、液体や栄養素がパッチを介して線維輪内に及び線維輪外に透過する通常の移動を許容すると共に、ステント/パッチの孔よりも大きな髄核片を修復の必要な線維輪開口部分の内側に維持させる。フレームを構成する素材に応じて、パッチに対する組織の内成長を促す表面処理を施すようにするとよい。例えば、装置表面にチタニウムスパッタリングを施すと、該装置と椎間板内部組織との結合をより容易なものとすることができる。また、組織の内成長を促進させるために、パッチ外表面にNiti又はタンタル泡(tantalum foam)を添加することもできる。
【0103】
装置が第1形状から修復の必要な線維輪開口部分を塞ぎ及び髄核の再脱出を減少させる第2形状に開拡することを可能にするパッチの様々な装置設計が存在することは明かである。以下の装置概念には、椎間板線維輪を修復する装置及び/又はシステムの一実施例をさらに追加することが含まれる。
【0104】
前述したように、本発明に従うステント/パッチは多くの筋膜自己移植片で構成され、該自己移植片は、本明細書で記載するところの「嚢」を形成する素材で構成されたカバーに収容される。勿論、この用語は必ずしも5面で閉じたコンテナを指すために使用される必要はなく、パッチ/ステント素材の体積を柔軟に包囲して間隙を介して操作されることを可能にするためものとして使用される。
【0105】
最も簡易な形態として、前述の筋膜移植片を保持する「スリング」を形成するために、縫合糸で構成される組立装置を使用する。このような自己移植片を保持する縫合糸の簡易な配置上の利点は、移植の間及びその後における自己移植片の保持及び制御が優れている点にある。「スリング」又は「嚢」は、筋膜自己移植片を定位置に保持するために、当該筋膜自己移植片を包囲する。なお、筋膜自己移植片の代わりに、例えば、ポリエステルメッシュなどの他の素材を使用するようにしてもよい。
【0106】
図38は本発明の一実施例である組み立て前のスリング300を示している。この一実施例では、3本の縫合糸302、304、306を使用するが、当業者であれば、3本以上又はそれ以下の縫合糸の使用が可能であることを理解するであろう。カラー部材308は、縫合糸を取り付けるための孔又は他の特徴を有している。本一実施例では、第3縫合糸306は、カラー308に沿って又はその内側に通されて、該カラー308の横方向延伸部から伸長するループを形成する。第1縫合糸302及び第2縫合糸304は、カラー308の上部及び下部から伸長するループをそれぞれ形成する。交叉部310は、縫合糸の小ループ又は結び目、小ファブリック取付部品、又は固定を補助するために縫合糸上に設けられる、グロメットに似た小プリフォーム装置等を持つ各ループを相互に固定することができる。また、公知の他の結び目を形成するテクニックを採用することもできる。次に、図39を参照する。カラーは修復の必要な線維輪開口部分にあり、ループは筋膜自己移植片314を包囲している。この閉鎖方法では、縫合糸302、304、306を近位に引き寄せることで、筋膜自己移植片314が修復の必要な線維輪開口壁に接触して圧潰される。本一実施例では、縫合糸を、公知の素材、例えば、生体分解性、生体吸収性(bioresorbable又はbioabsorable)等による合成吸収糸(Vicryl)又は生体適合性ナイロン等で製造することができる。また、カラーを、例えばポリエステルなどのファブリック素材で形成することができる。自己移植片を配置する際、幾つかの又は各々の縫合糸の一端は、線維輪壁の上部に通され、他端は開口側縁壁の下部に通される。線維輪壁にスリングを設けた後、該スリング内に筋膜自己移植片が配置される。その後、縫合糸は、開口周りの組織を引き寄せると共に開口の再接近を補助するために、しっかりと締められる。ここで、カラーのサイズは、必要とされる再接近の程度に従って、外科医の判断に基づき選択される。
【0107】
他の構成として、例えば、図40に示したように、膨張可能なポリテトラフルオルエチレン(PTFE)で形成された「嚢」404を、前述の目的を達成するために採用することができる。嚢は、線維輪402の開口を経て椎間板内に配置される。また、開口408の背後に一方向シール(one way seal)406を配置させる。該シールを該当箇所に配置するために、噴門弁を導入するための縫合テクニックが用いられる。なお、同一目的を達成する多数の構成が存在し、本一実施例はあくまでも一具体例にすぎない。
【0108】
前述したものに加えて、線維輪の修復の必要な開口部分に装置を固定する多様な方法が存在する。以下に詳述する一実施例は、縫合糸を用い及び結び目を形成する場合と比較して、パッチを固定するために要求される時間及びスキルを低減させる様々な種類のテクニックである。該テクニックは、本発明の一実施例を提供するために導入される。前述した各実施例では、例えば、図1では、スロット18を介して線維輪にパッチを固定する、縫合糸、ステープル及び他の固定装置等の使用を詳述した。また、図20では、線維輪への固定を容易にするためにステント上に設けた「バーブ」の使用を示した。シンプルな一実施例としては、図20に示したように、パッチ/ステントが、圧縮され、図22、23に示したチューブ18、18A等のガイドチューブを通過させられ、修復の必要な開口部分で開拡するものがある。図42は、バーブ604を備える開拡パッチ602、着脱可能な送出具608及びガイドチューブ606を示している。図43に示したように、パッチ602が開拡すると、該パッチ602に設けられたバーブ604は、パッチが後方に引っ張られることで、そのパッチを線維輪612の内壁610に固定させる。この場合、バーブ604は、修復の必要な線維輪開口部分に刺さる。ガイドチューブ606を前方に押し進めると、バーブ604が線維輪へと更に刺し込まれ、線維輪の内側及び外側の組織を互いに引き寄せ、椎間板における開口の両周縁を再接近させることができるようになる。パッチの配置後、送出具及びガイドチューブが取り除かれる。
【0109】
この一実施例における利点は、組織を互いに引き寄せる場合、線維輪へのパッチの配置及び固定を、非常に短時間で、かつ少ないスキルで行える点にある。
【0110】
パッチの素材には前述したものと同様のものを採用することができる。アンカリング(anchoring)バーブは、金属素材(例えば、NiTi合金、ステンレス鋼又はチタニウム等)、又は高分子材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリウレタン等)などの生体適合性素材で形成することができる。また、アンカリングバーブは、ポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)、polylevolactic酸(PPLA:polylevolactic acid)、ポリジオキサノン(PDA:polydioxanone)又はラセミポリ乳酸(PDLLA:racemic polylactic acid)等の生体分解性/生体吸収性素材であってもよい。バーブに生体分解性/生体吸収性素材を含有させると、当該バーブは、治癒過程中に、パッチが線維輪に取り込まれるのに充分な期間について、充分な保持強度を有する。図42、図43の生体分解性/生体吸収性アンカリングバーブが有する有利な効果は、線維輪にパッチが取り込まれた後には、バーブが提供する固定が不要になる点にある。しかし、線維輪の外面に向けて刺し込まれたバーブは、その移動により線維輪の外側を貫通し、場合によっては神経根及び脊髄管に突き当たるといった長期的なリスクを有する。この点に関しては、生体分解性/生体吸収性バーブを用いることにより、前述したように及び有利にその長期的なリスクを低減することができる。
【0111】
バーブは、生体適合性要素及び生体分解性/生体吸収性要素の双方で形成することができる。例えば、バーブの先端のみを生体分解性素材で形成することができる。このバーブによれば、非常に鋭い先端により線維輪壁は貫通されるが、分解が進行すると、バーブ先端は丸みを帯びるようになる。本一実施例によれば、先端は、パッチが取り込まれると瘢痕形成を誘発させることはなく、線維輪を貫通して神経根に至るといったリスクをも回避することができるようになる。
【0112】
他の固定手段は、線維輪壁、椎体(上位、下位、又は双方)、シャーピ線維(Sharpey's Fiber)(線維輪と椎体の接合部分間の膠原線維)を通る「アンカリングバンド」を含む。以下、詳述するアンカーの一実施例では、バーブ又はバンドは線維輪/椎体/シャーピ線維に付着させられる。縫合糸、締付糸又はステープルなどの他の構成要素が、パッチにアンカーバンドを取り付けるために利用され、これによりパッチを線維輪内壁に近接して保持することができる。また、これらバンドは開口組織を再接近させる。
【0113】
前述し図9に示した装置を固着する、バーブを使用する一実施例を再び取り上げる。バーブ又は骨アンカーネジ50、52を、下位又は上位の椎体54、56にそれぞれねじ込む。次に、縫合糸を線維輪外壁から修復の必要な線維輪開口部分に通す。その後、この縫合糸を骨アンカ52の小穴53に通して、線維輪を介して修復の必要な線維輪開口部分から線維輪外壁へと通す。縫合糸の下位端も同様に、線維輪、骨アンカの小穴に通し、線維輪壁を介して再び戻す。縫合糸40の両端は締められて結ばれる。この概念における利点は、ヘルニア摘出処置(椎体)により形成した表面に対し、装置を固着可能とする点にある。他方、自然に生じた裂け目の位置、サイズによっては、装置を線維輪に直接固定するためにアクセス可能な線維輪が充分に存在しない場合もある。従って、この場合には、固定のための位置を提供することに加えて、椎体への固着がより安定した固着面に提供されるとよい。
【0114】
線維輪内壁に装置を固定する他の一実施例を、図29、図44〜図47に示してある。前述したように、図22〜図30に関し、パッチ120は、送出具122に配置され、ガイドチューブ118の内部管腔を通じて、修復の必要な線維輪開口部分に挿入され、その後、開拡する。この過程は図45、図46にも示してある。ここで、パッチ702は、折り畳まれ、ガイドチューブ706に通され、送出具704によって保持されている。アンカーバンド又はステープル709及びアンカーバンド送出装置708も図示してある。ガイドチューブ内又は送出具内には、パッチ702の中央に取り付けられた縫合糸又は締付糸710が存在する。この状態、すなわちガイドチューブ706を取り除いた状態を図44Aに示す。図45C、図46Aに見られるように、ガイドチューブ706は、パッチ702が開拡して配置された後に格納される。次いで、アンカーバンド送出具708が、1以上の「バンド」709を線維輪の外表面上に送出するために使用される。バンド709は、線維輪から抜き出すことができない形状のバーブを有しており、該バーブと共に線維輪壁に固着される。アンカーバンドは「ステープル」に似た構造である。バンドは、実際には、2つのバーブ要素を連結し、又、例えば、該2つのバーブ要素間に縫合糸を設けて構成されたものである。バーブ及びバーブ間の連結バンドを同一素材又は異なる素材で構成することができる。例えば、アンカーバンドのバーブ部分を、生体分解性/生体吸収性素材(例えば、ポリグリコール酸等)や、金属又は高分子材料(例えば、チタニウム、NiTi合金、ステンレス鋼、ポリウレタン、ポリプロピレン等)で形成することができる。一方、複数のバーブを連結するバンドを、バーブと同様の素材で、又は、異なる素材で形成することができる。例えば、連結バンドは、合成吸収糸(Vicryl)等の生体分解性/生体吸収性の縫合糸、又は、ポリプロピレン等の生体適合性素材で形成することができる。さらに、これらの要素は、線維輪に固着して、固定部分を形成し、パッチを修復の必要な線維輪壁付近に引き寄せるといった目的が達成されるように、素材を複合させて形成することも可能である。
【0115】
図44B、図44Cは、アンカーバンド送出具708によって線維輪712に刺し込まれるアンカーバンド709の配置を示している。図46A、図46Bは、アンカーバンド709を線維輪712の壁面に刺し込み、アンカーバンド送出具708を格納し、パッチ702を保持したままのパッチ送出具704のそれぞれの配置を図示したものである。図44Dは、縫合糸709’によって連結された一対のステンレス鋼のバーブ709”を備える代表的なアンカーバンド709を示している。図44Eは、線維輪にあるパッチと組織を互いに引き寄せる前の状態であって、送出具を取り除いた後のパッチ702、アンカーバンド709、締結糸又は縫合糸710の状態を示している。この一実施例では、後述する図47Bに記載された締付糸上にある締め付け前の結び目(pre-fabricated knot)714を図示しているが、他の結び目を使用することもできる。また、図47Aも、この装置における結び目714と、線維輪におけるパッチ形成の後面図を示している。ここでは、ステント/パッチ702における7mmの縫合糸709で構成される一対のループが示されており、該ループは締結糸と引き結びで係合している。これら縫合糸のループは、図44に示したバーブに直接に連結されるか、外科用ステープルを輪にするか、又は線維輪に直接に配置される。締結糸上に締め付け前の結び目を予め設けることで、結び目を作る必要がなくなり、修復過程を迅速なものとすることができるようになる。また、これにより組織を互いに引き寄せることが容易になる。この締結糸及び締め付け前の結び目の使用は、例えば、結び目プッシャー(knot pusher)等の外側チューブを押しつける。図44Eは、前述した図29における結び目145を「しっかりと締め付ける」前の状態と同様のものを示している。図44Fは、矢印A方向に縫合糸を引っ張り、パッチ及び線維輪組織を互いに引き寄せる状態を示している。この場合、結び目プッシャーは、締結糸710から既に取り除かれている。縫合糸710を引っ張ることで、パッチ702が、近位に引き寄せられて、線維輪内壁に係合し、線維輪内部から開口を閉鎖すると共に、線維輪壁が互いに引き寄せられて、線維輪開口が再接近するようになる。図46C、図44Gは、余りの縫合糸を切除した後に、締結糸又は縫合糸710を結び及び線維輪組織が、互いに引き寄せられた状態を示している。また、この装置、固定及び送出システムにより、再接近の間に開口の外面も互いに引き寄せられる。
【0116】
また、バンドとパッチを締め付けて、線維輪壁のサイズ変化に適応可能なように、たるみを縮めることができる。すなわち、開口を囲む線維輪壁の厚さは1mm〜10mmまで変化する。従って、アンカーバンドが一定の長さに設定された場合には、開口内におけるバンドの「たるみ」を引っ張ることにより、締結糸が線維輪壁厚さの種々のサイズに対応することができるようになる。
【0117】
ここでは、パッチ、バンド及び組織をそれぞれ引っ張るための縫合糸と、2つの横方向アンカーバンドと、を含むパッチの配置について詳述したが、この2つのバンドの使用は、単なる一実施例に過ぎず、1以上のバンドを使用することもできる。また、アンカーバンドがバーブにより上下方向に配置される場合についても説明した。当業者は、バンドを開口周囲の異なる位置に配置させることができることを認識可能である。さらに、バンドが線維輪内に配置される場合を説明したが、そのアンカーバンドを、図48Aの符号800として示した椎体に、又は、図48Bの符号804におけるシャーピ線維802に配置することもできる。
【0118】
この一実施例で述べたパッチは、該パッチを線維輪の内壁に取り付けるためのバーブを有していないが、線維輪内壁に対するパッチの固着をさらに強化させるためにバーブを備えることもできる。
【0119】
また、これまでは組織の再接近に適した開口を図示してきたが、該開口が自然に発生又は外科手術により形成されるにせよ、それが比較的大きい場合もあり得る。従って、線維輪内壁上のパッチと外壁上に位置するアンカーバンドとの間に、組織の成長の足場として機能する追加の素材を、その開口内に配置することが必要な場合もある。開口に充填する素材の一例としては、傍脊椎筋膜組織(para-spinal fascial tissue)の自己移植片、異種移植片又はその他の天然膠原素材等を採用することができる。また、この充填材(filler)は、例えばDacron(登録商標)等の生体適合性素材で形成することもできる。図51は、縫合糸710を締める前の状態において、インプラント材716を開口に充填した図を示している。
【0120】
本発明の他の一実施例では、前述したアンカーバンド709(線維輪に刺し込まれるアンカーバンド)は、線維輪を貫通し、さらにパッチをも貫通するように充分に長く形成される。本実施例におけるバーブはパッチと係合関係になる。この概念は図30において詳述した通りである。一方、本実施例によるシステムは図49、図50に示した通りである。本実施例において、バーブがパッチを貫通することは、移植された後にそのバーブの移動可能性を減少させるので、さらなる安全及び安全性を提供する。本願発明では、組織を互いに引き寄せ、開口周縁の組織の動きを抑制するアンカーバンドに加え、縫合締結糸を使用することができ(図50参照)、又は、使用しないこともできる(図30参照)。
【0121】
さらに、図49、図50に示したバンドはバーブ形状を採用しているが、これに、パッチを貫通させた後、該パッチ装置702から抜けない係合関係を備えさせる場合には、図52Eに示したようにシンプルなT字状のバーブ720形状や、C字状の要素を採用することができる。T字状の取付要素は、縫合糸の長手方向に設けられて、パッチを貫通する。その後、T字部分が回転し、縫合糸アンカーがパッチから抜け出ることを防止する。他の一実施例として、超弾性素材で形成された「C」字状の保持具を、縫合糸バンドの終端に採用するようにしてもよい。C字状の保持具は、負荷が加えられて直線状に保たれる針の形態にされる。この針の形態のままC字状の保持具及び縫合糸を、パッチに貫通させ、貫通後には、当該保持具が第2の「C」字状の形状に展開する。
【0122】
また、パッチフレームを覆うファブリックについて、該ファブリックがアンカーの配置及び固定に役立つように機能するパッチ設計が本発明の範囲内で考えられる。すなわち、ニチノール等の金属で形成されたパッチのフレームに、例えば「窓(window)」を設けることができる。つまり、例えば、シリコーンやDacron(登録商標)等のメッシュファブリックで覆われた装置では、アンカリングバーブがパッチフレームの「窓」に通される。この場合、バーブはフレームを覆うファブリック内でパッチに固定されることができるようになる。
【0123】
一方、パッチは、パッチフレームの格子に係合するバーブが貫通することで固定される。本発明のこれらの一実施例では、バーブは垂直、水平又は十字のフレーム構造/部材と係合するように設計される。この場合、バーブは、メッシュ又は格子のフレームを貫通し、そのフレーム構造から後退することはできない。
【0124】
以上では、縫合糸によって連結された2つのアンカーで構成される「アンカーバンド」について説明したが、縫合糸と1つのバーブを配置し、該バーブをパッチに貫させて設置した後、線維輪の外面で、その縫合糸の端部をバーブに結びつけることもできる。
【0125】
前述した設計の目的は、システムにおける「たるみを引っ張り上げる」方法を、縫合糸の長さ調節及びアンカーバンドのために提供することにある。本発明では、アンカーバンドと共に、パッチの設計に組み込まれる縫合糸を引っ張る手段として、「ラッソ締結結び(Lasso Cinch Kno)」を開発した。図53は、ラッソの一実施例の使用を示したものである。本質的には、「パッチを貫通するバーブ」構成が組み込まれたパッチ及びフレーム構造を用いる。一旦、バーブをパッチに貫通させると、内部ラッソ722をアンカーバンドの縫合糸周りにきつく引っ張り、これによりパッチ内の余分な縫合糸(suture material)が引っ張られるようになる。内部ラッソは、バンドの縫合糸を寄せ集め、ラッソが締められると、バンドの縫合を互いに締め付ける。従って、これらが締め付けられ及びたるみが取り除かれることになり、パッチ/ステントが線維輪壁に近接し又はきつく結合されるようになる。また、図53のパッチには菱形形状の格子パターンが設けられている。この格子パターンは、プローブ又はこれに類似する器具を小抵抗で通過させ、バーブ又は他の器具の制止機能に対しては抵抗を与える格子を有利に提供する。図示したフレームは、ニチノールで形成することができ、その配置の際に、図中央に示した係止又は保持窓は、z軸周りの回転を可能にする。例えば、結び目プッシャー等の引き結びテクニックを使用することにより、ラッソによるループの引っ張り過程が補助されるようになる。内部ループ(ラッソ)は、パッチフレームの外縁部でループを保持するために、パッチ/ステントの外側角部に縫いつけることができる。ラッソの結び目を締める場合、ループは、フレームを縫いつけた取付部分の幾つか又は全てから自由に引き寄せられることができ、ラッソを締め付ける際にフレームの平坦形状が変形することを防止する。前述のように、フレームは、メッシュファブリックの幾つかの種類と共に、複合構造又はサンドイッチ形状を採用することができる。近位のメッシュファブリックは、例えば、シリコーンなどの接着剤が使用されて、パッチフレームと完全に接着させられる。接着剤は、プローブの貫通を容易にし及び縫合糸を保護するために、格子パターンの隙間に充填される。縫合糸を保護することは、一群のバンド縫合糸を互いに引っ張り、束ねるために、ラッソを用いた場合に有利である。
【0126】
また、本発明では、縫合糸710’をステント/パッチに予め取り付けることが含まれる。図52Aに示した、線維輪712に刺し込まれた幾つかの分離バーブ709’’’をパッチ702に直接に取り付けることができる。図52Aの各「バーブ」は、パッチを展開させた後、それぞれ独立して線維輪に配置され刺し込まれる。このバーブ709’’’は、図55のバーブ709””を含む一実施例と類似するものである。
【0127】
パッチ902を固着させ、裂け目又は切開部分を再接近させる他の一実施例として、図56に示したように種々の長さを有する縫合糸が結ばれた複数の分離バーブを提供する。各々独立した縫合糸バーブ904は、バーブ送出具908により線維輪906乃至パッチ902に刺し込まれて配置される。この配置後に、パッチ送出具912を出る自由端が引っ張られることにより、全ての縫合糸910が引っ張られる。係止要素914は、ガスケット915及びスレッディングの各機構として用いられる。該係止要素914は、パッチ902に取り付けられており、縫合糸910の遠位端部付近で、ガスケット916を固定するために使用される。次に、パッチ送出具912を取り除き、余分な縫合糸を切り詰める。また、ガスケット機構はパッチに対する縫合糸の固定を提供するために圧入されることも可能である。
【0128】
或いは、図57に示したような係止機構を設けることができる。この場合、係止要素914’における係合はパッチ上で行われる。矢印B方向に縫合糸910を引っ張ることにより、パッチの固着及び再接近を促進する張力がかかり、縫合糸910に締め付け及び係止保持を与える。2つのアンカー間における長さ調節可能な縫合糸バンドによりアンカー916、916間のたるみを取り除くことができるようになる。本一実施例では2つのT字状のアンカーを図示したが、種々異なる形状のアンカーを用いることができる。また、本一実施例では、係止部分を、図示のように特徴のあるバンドに設けたので、アンカー部材を実質的に一方向に係止することができる。この調節機能によれば、様々な患者の線維輪厚さに対応することが可能となる。本一実施例における縫合糸のたるみは、線維輪の欠損箇所を閉鎖するべく、及び/又は、前述したように複数の張力を縫合糸バンドにかける第2の締め付けによりアンカー間におけるバンドを短くするために、取り除かれる。
【0129】
締結糸及びラッソの概念における本質は、迅速且つ単純な手法で互いの組織を再接近及び引き寄せることを容易にすることにある。「張力」要素の他の一実施例には、装置を固定するアンカーバンドの一部として使用される弾性カップラが含まれる。この弾性カップラは配置のために開拡し、解放されると、組織を引き寄せるための張力を形成する。また、カップラは、生体適合性金属、ポリマーで形成することができ、生体分解性/生体吸収性素材で構成することもできる。
【0130】
同様に、アンカーを設置した後、装置に張力を生じさせ、組織を引き寄せる一実施例は、一端がアンカーバンドに取り付けられ、他端がパッチに取り付けられる弾性バンド又はバネ付きバンドを含むことができる。或いは、アンカーバンドを、バーブ間における弾性バンドとして形成し、又はバーブ間におけるバネ付き要素として包含することもできる。このような一実施例は、いわゆる「ボバースプリング(bobber spring)」のように形成することができる。さらに、弾性又はバネ要素は、多様な素材、例えば、高分子材料や生体分解性/生体吸収性素材などで形成することができる。
【0131】
図59はメッシュシール形態を採用したパッチ要素1002の一実施例を示している。固定は、線維輪1006の内部表面に侵入するバーブ要素1004を備えたフックによって行われる。このフック(バーブ)1004の内部結合部は、線維輪外面とパッチに近接する内部表面との間に張力をかけ、線維輪組織を互いに引き寄せるようにして、パッチに取り付けられている。パッチ/ステント1002は、ニチノール又は他のバネ素材等から形成可能なバネリボン要素1008を含んでいる。フック1010は、線維輪を「つかむ(grab)」ために使用され、図示したように開口1012に侵入するか、又は開口1012を把持する。
【0132】
図54A〜図54Fは、各縫合糸をそれぞれ引っ張り、線維輪の内側組織と外側組織間に張力をかける手段についての他の一実施例を示している。アンカーバンド、すなわちT字状のバーブ720’は、線維輪及びパッチに貫通されて設置され、パッチ702に固定される。アンカーバンドの縫合糸における「たるみ」は、送出具704’の取り外し可能部分周りに巻き付けられ、及び、ネジ726がパッチに固定される位置において、係止要素、例えば、図示したネジ要素724が余分な縫合糸を係止するために使用される。その後、送出具704’が取り外される。
【0133】
図58は、縫合糸及び締結糸の異なる構成によって「アンカリングバーブ」を締め付ける他の一実施例を示している。例えば、図58Bにおける各々独立したバーブには、それぞれ縫合糸のループが設けられている。これらループには、結び目のある締結糸が通されている。線維輪内に、或いはパッチに貫通させてバーブを設置した後、締結糸がバーブに設けられたループと共に引っ張られる。この一実施例による有利な効果は、各々独立して配置させた複数のバーブを全て一斉に引っ張ることができる点にある。
【0134】
前述の締結糸は、縫合糸の長さを「固定」するために結び目を利用したが、図57に示したように、他の機構により長さを固定することもできる。縫合糸長さの固定は機械要素を介して達成される。機械要素は、縫合糸に取り付けられた3次元要素と係合するバーブ上に設けられており、縫合糸は、バーブ上の係合要素に機械的に圧入されている。これらにより縫合糸の長さがきちんと固定されるようになる。
【0135】
図57、図58を参照して1つの固定機構(例えば、締結線に設けた結び目)を採用する一実施例を詳述したが、開口周りの組織を再接近させ及び引き寄せる1以上の固定要素を採用するといった多様な構成も可能である。
【0136】
本発明の更なる例示的な一実施例として、例えば、図41Eに図示したような概念を以下に詳述する。図60〜図66に示した、本発明の更なる一実施例である編みパッチ1100は、髄核の脱出に対するバリアとして機能するように、修復の必要な線維輪空間に配置される。
【0137】
「パッチ」1100は、糸状体1102を編み込んだ編み込みチューブから形成される。編み込みチューブの各端部1104は、組ひもがほどけないようにヒートシールされ、このシールにより、パッチを配置した場合に、該パッチの完全な構造が提供される。この構造を形成するために、編み機械が、多数の糸状体1102を編み込んで、編みパッチ1100を形成する。例えば、パッチは、線維輪壁を介して配置された後、欠損した線維輪内で直ちに展開し、装置への細胞内殖を促進し、及び、アンカーを維持する前記構造を形成するために、72本のポリエステル糸状体が編まれて形成される。この場合、パッチにおける糸状体1102の数、糸状体の材質、糸状体の大きさ(例えば、直径)と同様に糸状体の構造(例えば、断面領域)を変更し、又は、編むパターンを変えて、パッチの特性における相違を形成するようにしてもよい。編みパッチは、標準のスティガーブレーダ(Steeger braider)、又は、これに類似する、一度に16本、最高196本の糸状体をどこからでも編むことができるタイプの編み機械で形成することができる。好ましくは、パッチは、32本〜144本の糸状体で編まれて形成されるとよい。
【0138】
パッチの糸状体1102は、種々の材質で形成することができ、又は、糸状体の全てを、パッチの材質及び寸法と同様にして形成することもできる。糸状体は、金属、例えば、ステンレス鋼、ニッケルチタン合金又は他の金属素材などから形成することができる。また、パッチ1100は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの生体適合性高分子材料から形成することもできる。さらに、パッチには、例えば、ポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)、又は、時間の経過と共に分解して身体に吸収される他の素材等の生体分解性素材を編み込んで形成することも考えられる。
【0139】
さらにまた、複数の素材及び/又は複数の寸法を有する糸状体をパッチ1100に編むことも可能である。例えば、パッチは、線維輪をシーリングするために最適なパッチを形成するために、ポリマーPET素材で形成された32本の糸状体と、ポリエステル糸素材で形成された32本の糸状体と、を編み込んで形成することができる。異なる糸状体素材、サイズ、断面構成、糸状体の数及び編み込みパターンの組み合わせを、修復の必要な線維輪空間に送出されて開口を治癒させる足場として機能する編みパッチの構造に採用することができる。
【0140】
編みパッチは、比較的小さな線維輪壁の開口を通して配置することができ、該配置後には、開口よりも実質的に大きな寸法に膨張することができる点で有利である。例えば、直径5mm未満の編み込みチューブを、完全に膨張した状態では、例えば、20mmより大きくなるように構成することが可能である。
【0141】
図62を参照すると、配置されていない編みパッチ1100は、パッチ送出具1200の遠位端部に取り付けられている。この場合、編みパッチ1100は、送出具の送出部材と同軸上に位置している。この取付メカニズムの詳細を図63に示してある。図63を参照すれば、編みパッチ1100は、内部送出部材1202の遠位端部に配置されている。パッチのヒートセットされた遠位カフ1104は、内部送出部材1216の遠位領域上のくぼんだ範囲に位置させられている。送出部材1216の遠位部は、図65に示したように溝が設けられており、配置されていない状態で、それぞれ離れた内部送出部材が形成する溝部を押圧するように機能する同軸保持部材1208を含み、これにより、パッチの遠位カフ1104を、内部送出部材1202の遠位領域上に固定することができるようになる。パッチの近位部は、アウタープッシャー部材1204に、当接及び接触する。配置されていない状態において、送出装置は、線維輪の開口に挿入される。一旦、線維輪開口に挿入されると、送出装置1200のアウタープッシャー部材1204が、装置の遠位端部方向に押されると共に、内部送出部材1202が、近位に引っ張られる。このような方法により、各部材を作動させることで、図61及び図64に示したように、編みパッチが、チューブ軸に対して略垂直に拡げられるようになる。
【0142】
一旦、パッチ1100が、完全に膨張した状態に拡げられると、パッチの遠位端部及び近位端部に接続された締結糸1212は、締められ及び、例えば、ローダー結び(Roeder knot)などで結ばれ、膨張構造にある編みパッチを保持するために用いられる。なお、締結結び目1214を有する図示した装置は、パッチを線維輪に固定する手段を採用することで、係止要素を不要とすることを可能にする。また、係止手段を不要とすることも可能である。この係止手段の代替としては、編みパッチが膨張した形状を維持できれば、どのような手段であっても可能である。結び目プッシャー1210は、装置を係止している結び目1214を処理するために使用される。
【0143】
一旦、装置パッチが、線維輪及び修復の必要な線維輪空間内で最終形態に膨張すると、保持部材は、該保持部材の近位端部が近位方向に摺動されて引っ張られることにより、遠位部の内部部材から取り除かれる。保持部材を取り除くことによって、パッチの遠位カフを保持している部分の圧力が軽減され、そのパッチが、送出装置の遠位端部から摺動可能なように外されることを可能にする。これにより、パッチは、修復の必要な線維輪空間内で拡がることができるようになる。
【0144】
図66に示したように、パッチ1100は、送出装置によるパッチの配置の前後いずれにおいても内面に固着される。また、このパッチを、本願の他の部分で説明した様々な固定手段によって、線維輪の内面に固着させることもできる。例えば、線維輪及びパッチを貫通する、図29に示したアンカーバンドを、修復の必要な線維輪空間にパッチを固定するために採用することができる。バンド1314(例えば、縫合糸)を有する1つのT字状のアンカー1310が、線維輪1306を通して送出されて、線維輪の外面上における縫合部分にあるパッチ1100を、結び目、外科用綿撒糸、又は、他の固定装置1316によって、その外面に固定させるようにしてもよい。また、パッチを、例えば、シアノアクリレート、フィブリン接着剤、ポリマータンパク質、ポリウレタン、又は、修復の必要な線維輪空間内の位置でパッチを硬化させるために用いる他の物質などの接着剤の使用を通じて、線維輪の内面に固着させることもできる。パス1312は、脊椎骨を貫通して保持される、パッチにおけるT字状のアンカー部材1310の他の縫合可能なパスを示している。
【0145】
ステント又はパッチを線維輪に固着するための適切な装置は、本願の出願人と同一出願人によって、2002年12月24日に出願され、出願継続中の米国特許出願番号10/327,106号に開示されており、ここでの内容は、参照によって本願に組み込まれる。
【0146】
この設計における有利な点は、糸状体の大きさ、構成、素材、編み込みパターン、及び、糸状体の数など、正しい選択が与えられると、線維輪の修復の必要な箇所に容易に送出することができ、椎間板空間内に存続する負荷のために必要とされる機械的一体性を維持すると共に、欠損した線維輪の形状に適合する柔軟性を有することにある。他の利点としては、素材、糸状体の構成、編み込み、寸法の考慮、及び、多数の糸状体の織り方など、適切な選択がなされると、配置された状態で、線維症を取り込み、及び、欠損した線維輪の線維化の治療に貢献するパッチを形成することができることである。最後に、パッチは、配置した状態において、編み込み糸状体を介して1以上のアンカーバンドを容易に受け止めることができると共に、固定装置をパッチに通した後、T字状のアンカーや他の類似形状の固定装置を維持することができるように、設計することができる。
【0147】
以上で言及し又は引用した全ての特許は、本願明細書の明確な教示と共に本願明細書と矛盾しない範囲内で参照よって組み込まれる。それら特許には、米国特許第5,108,438号明細書(Stoneによる発明)、米国特許第5,258,043号明細書(Stoneによる発明)、米国特許第4,904,260号明細書(Ray等による発明)、米国特許第5,964,807号明細書(Gan等による発明)、米国特許第5,849,331号明細書(Ducheyne等による発明)、米国特許第5,122,154号明細書(Rhodes等による発明)、米国特許第5,204,106号明細書(Schepers等による発明)、米国特許第5,888,220号明細書(Felt等による発明)及び米国特許第5,376,120号明細書(Sarver等による発明)が含まれる。
【0148】
本発明の実施に際し、当業者にとって公知である種々の素材を用いることができる。例示に過ぎないが、ステントの本体部分をNiTi合金、ポリプロピレン及びポリエチレンを含むプラスチック、ステンレス鋼及びその他の生体適合性金属、クロムコバルト合金、コラーゲン等で形成することができる。水掻き素材には、シリコーン、コラーゲン、ePTFE、Dacron(登録商標)、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン及び他の生体適合性素材等を含ませることができ、その水掻き素材を織り込み又は織り込まないようにして形成することができる。膜は、シリコーン、プロピレン、ポリエステル、SURLYN、PEBAX、ポリエチレン、ポリウレタン又は他の生体適合性素材等で形成するようにしてもよい。膜のための膨張流体には、ガス、流体、発泡体、エマルジョンをふくませることができ、生体活性(bioactive)素材で構成するか又は生体活性素材を含んで構成することもでき、さらに、機械的、生化学的及び医療的な目的を持たせて構成することができる。また、ステント本体、水掻き素材及び/又は膜は、医療における移植分野で知られた薬剤溶出性又は生体適合性を持たせることができる。
【0149】
本発明のその他の実施例は、当業者であれば、本願明細書の記載を考慮し及び本明細書に開示された本発明を実施することで明かである。また、本明細書及び各実施例は、単なる例示に過ぎず、本発明の真の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲により定められる。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【図1】本発明の一実施例に係る線維輪ステントの斜視図。
【図2】図1の線維輪ステントの正面図。
【図3】図1の線維輪ステントの側面図。
【図4A】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図4B】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図4C】本発明の他の実施例に係る線維輪ステントの正面図。
【図5A】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図5B】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図6A】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図6B】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントを示す図。
【図7】椎間板線維輪における開口の第1の閉鎖を示す図。
【図8A】ステントを用いた第1の閉鎖を示す図。
【図8B】ステントを用いた第1の閉鎖を示す図。
【図9】椎体に設けた固定箇所を利用し、線維輪ステントを椎間板線維輪に縫合する方法を示す図。
【図10A】椎間板線維輪内で開拡する、軟性嚢を備えた線維輪ステントの実施例を示す図。
【図10B】椎間板線維輪内で開拡する、軟性嚢を備えた線維輪ステントの実施例を示す図。
【図11A】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11B】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11C】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図11D】椎間板線維輪内に挿入されて開拡する線維輪ステントを示す図。
【図12A】線維輪ステントに設けた柔軟嚢の膨張を示す図。
【図12B】線維輪ステントに設けた柔軟嚢の膨張を示す図。
【図13】本発明の更なる他の実施例に係る線維輪ステントの斜視図。
【図14】図13に示した線維輪ステントの第1の折り畳み状態を示す図。
【図15】図13に示した線維輪ステントの第2の折り畳み状態を示す図。
【図16A】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図16B】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図16C】図13に示した線維輪ステントが椎間板線維輪内に挿入される状態を示す図。
【図17A】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図17B】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図17C】図13に示した線維輪ステントを椎間板線維輪内に挿入する方法を示す図。
【図18A】軟性嚢を備える線維輪ステントの他の実施例を示す図。
【図18B】軟性嚢を備える線維輪ステントの他の実施例を示す図。
【図19A】軟性嚢を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図19B】軟性嚢を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図20】径方向延伸部上にバーブを備える線維輪ステントの開拡した状態を示す図。
【図21】圧縮可能なコアを備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図22】本発明の実施例に係る線維輪ステンの挿入装置を示す図。
【図23】図22に示した装置の変形例を示す図。
【図24】ステントを近位方向に反らし状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図25】ステントを遠位方向に反らし状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図26】線維輪ステントを近位方向及び遠位方向に部分的に反らした状態で、図22及び図23の装置と共に使用する送出具を示す図。
【図27】バーブ形状における、つかむ機能及び固定装置を備えるステント装置を示す図。
【図28】修復の必要な線維輪開口部分に展開させた図27のステント装置を示す図。
【図29】第2のバーブを備えた固定装置を採用する線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図30】第2のバーブを備えた固定装置の他の例を採用する線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図31】フラットストックを機械加工した金属板を備える線維輪ステントの更なる他の実施例を示す図。
【図32A】ヘルニア状態にある椎間板の斜視図。
【図32B】図32Aの椎間板からヘルニアを摘出処置した状態を示す斜視図。
【図33A】椎間板からヘルニアを摘出した状態を示す上面図。
【図33B】切開部を示す椎間板の後方側面図。
【図34】縫合糸を用いて修復の必要な線維輪開口部分にスリングを形成した状態を示す概略図。
【図35】修復の必要な線維輪開口部分に圧縮した自己移植ステント/パッチを導入する概略図。
【図36】線維輪内で膨張させた図35に示した自己移植片の概略図。
【図37】縫合糸を締め付けて線維輪開口を再接近させ、図35に示したステント/パッチを線維輪壁方向に引き寄せた状態を示す概略図。
【図38】椎間板線維輪の修復に用いるカラーの一例を示す図。
【図39】図38に示したカラーを椎間板線維輪の修復に用いた状態を示す概略図。
【図40】本発明の更なる実施例に係るパッチ/ステントを含む嚢の使用状態を示す図。
【図41A】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41B】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41C】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41D】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図41E】本発明の更なる実施例に係るフレームを示す図。
【図42】バーブを備えた開拡可能なパッチを修復の必要な線維輪開口部分に配置する方法を示す図。
【図43】図42に示したパッチを線維輪の内壁に固定した状態を示す図。
【図44A】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44B】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44C】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44D】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44E】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44F】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図44G】本発明の更なる実施例に係る、挿入及び開拡した線維輪ステント/パッチを固定し、開口を再接近させる状態を示す図。
【図45A】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図45B】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図45C】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図46A】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図46B】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図46C】外科用ステープル装置を使用して図45に示した締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図47A】線維輪にパッチ/ステントを固定する縫合糸の配置の一例を示す図。
【図47B】線維輪にパッチ/ステントを固定する縫合糸の配置の一例を示す図。
【図48A】固定用縫合糸を椎体又はシャーピ線維に配置した状態を示す図。
【図48B】固定用縫合糸を椎体又はシャーピ線維に配置した状態を示す図。
【図49A】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図49B】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図49C】本発明の更なる実施例に係る、締結糸を使用して定めた場所に開拡可能なステント/パッチを縛る状態を示す概略図。
【図50A】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図50B】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図50C】パッチ/ステントを貫通するバーブのある外科用ステープル装置を使用して図49の締結糸を固定する状態を示す概略図。
【図51】締結糸によって縛られたパッチ/ステントを配置する際、開口内におけるフィラー組織の使用の一例を示す図。
【図52A】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52B】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52C】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52D】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図52E】パッチ/ステントを固定する追加のテクニックの一例を示す図。
【図53】フレームを備えるパッチ/ステントの一例を示す図。
【図54A】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54B】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54C】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54D】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54E】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図54F】固定締め付け機能を備える線維輪ステント/パッチの一例を示す図。
【図55】本発明の更なる実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図56C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図57C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58A】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58B】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図58C】本発明の更なる他の実施例に係る外側固定アンカーを示す図。
【図59】本発明の更なる実施例に係るバネによる配置を示す図。
【図60】本発明の更なる実施例に係る折り畳まれた形状の編み装置を示す側面図。
【図61】図60に示した実施例の膨張した形状を示す軸方向図。
【図62】図60に示した実施例の折り畳まれた状態の装置を送出装置に取り付けた状態を示す側断面図。
【図63】図60に示した実施例の折り畳まれた状態の装置を示す側断面図。
【図64】図60に示した実施例の膨張した状態の装置を示す側断面図。
【図65】図63及び図64に示した送出装置の側面図。
【図66】本発明の更なる実施例に係る、修復の必要な線維輪に挿入された膨張した状態の装置を示す側面図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の椎間板線維輪の開口を治療する装置であって、前記装置は、多数の糸状要素で形成された、放射状の直径を有する円筒体と、該円筒体の長手方向寸法の範囲を定める第1端部及び第2端部と、を備えて、第1形状と第2形状とになり、前記第2形状は、前記装置を使用すると、前記長手方向寸法の少なくとも一部分に沿って相対的に大きな放射状の直径を有するようになることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記円筒体は、前記第1形状では、椎間板の修復の必要な線維輪空間に、前記開口を通じて挿入される大きさであり、前記第2形状では、前記装置が配置されて、前記開口を少なくとも部分的に覆う大きさになることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2形状は、前記第1形状よりも相対的に短い長手方向寸法となることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に軟性の生体適合性素材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に生体吸収性素材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的にナイロンで形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に織られることによって形成されるを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に編まれることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項1】
患者の椎間板線維輪の開口を治療する装置であって、前記装置は、多数の糸状要素で形成された、放射状の直径を有する円筒体と、該円筒体の長手方向寸法の範囲を定める第1端部及び第2端部と、を備えて、第1形状と第2形状とになり、前記第2形状は、前記装置を使用すると、前記長手方向寸法の少なくとも一部分に沿って相対的に大きな放射状の直径を有するようになることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記円筒体は、前記第1形状では、椎間板の修復の必要な線維輪空間に、前記開口を通じて挿入される大きさであり、前記第2形状では、前記装置が配置されて、前記開口を少なくとも部分的に覆う大きさになることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2形状は、前記第1形状よりも相対的に短い長手方向寸法となることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に軟性の生体適合性素材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に生体吸収性素材で形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的にナイロンで形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に織られることによって形成されるを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
ステントの少なくとも一部分が、少なくとも部分的に編まれることによって形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図41D】
【図41E】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図44D】
【図44E】
【図44F】
【図44G】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図47A】
【図47B】
【図48A】
【図48B】
【図49A】
【図49B】
【図49C】
【図50A】
【図50B】
【図50C】
【図51】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図52D】
【図52E】
【図53】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図54F】
【図55】
【図56A】
【図56B】
【図56C】
【図57A】
【図57B】
【図57C】
【図58A】
【図58B】
【図58C】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41A】
【図41B】
【図41C】
【図41D】
【図41E】
【図42】
【図43】
【図44A】
【図44B】
【図44C】
【図44D】
【図44E】
【図44F】
【図44G】
【図45A】
【図45B】
【図45C】
【図46A】
【図46B】
【図46C】
【図47A】
【図47B】
【図48A】
【図48B】
【図49A】
【図49B】
【図49C】
【図50A】
【図50B】
【図50C】
【図51】
【図52A】
【図52B】
【図52C】
【図52D】
【図52E】
【図53】
【図54A】
【図54B】
【図54C】
【図54D】
【図54E】
【図54F】
【図55】
【図56A】
【図56B】
【図56C】
【図57A】
【図57B】
【図57C】
【図58A】
【図58B】
【図58C】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【公表番号】特表2007−501101(P2007−501101A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536505(P2006−536505)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/000211
【国際公開番号】WO2004/069026
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505240260)アヌレックス テクノロジーズ,インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ANULEX TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/000211
【国際公開番号】WO2004/069026
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(505240260)アヌレックス テクノロジーズ,インコーポレーテッド (4)
【氏名又は名称原語表記】ANULEX TECHNOLOGIES,INC.
【Fターム(参考)】
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